説明

濁水用回転装置

【課題】濁水用回転装置においては、シール部のシール機能および耐久性を向上させることが重要である。
【解決手段】この発明は、容器2と、容器2を貫通する回転軸4と、固定側の容器2と回転側の回転軸4との間に設けられているシール部5と、スラグホッパ水8(濁水)中の異物としての微細なスラグがシール部5に入り込むのを防止する異物進入防止部7(ポンプ25、高圧水供給ライン26、流出口27)と、を備える。この結果、この発明は、流出口27から流出する高圧水により、微細なスラグがシール部5に入り込むのを防止することができる。これにより、この発明は、シール部5のシール機能および耐久性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シール部を有する濁水用回転装置に関するものである。特に、この発明は、シール部のシール機能および耐久性を向上させることができる濁水用回転装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シール部を有する濁水用回転装置は、従来からある(たとえば、特許文献1、特許文献2、特許文献3)。従来の濁水用回転装置は、濁水が収容されている容器と、容器を貫通する回転軸と、固定側の容器と回転側の回転軸との間に設けられているシール部と、を備えるものである。ここで、濁水用回転装置とは、たとえば、燃焼設備や石炭ガス化複合発電設備における石炭ガス化炉のスラグ排出装置、あるいは、汚水処理設備における汚泥掻揚装置、あるいは、各種の建設機器などにおける濁水用回転装置、などを言う。かかる濁水用回転装置においては、シール部のシール機能および耐久性を向上させることが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−104835号公報
【特許文献2】特開2005−238114号公報
【特許文献3】特開2007−139030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明が解決しようとする課題は、濁水用回転装置において、シール部のシール機能および耐久性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明(請求項1にかかる発明)は、濁水が収容されている容器と、容器を貫通する回転軸と、固定側の容器と回転側の回転軸との間に設けられているシール部と、濁水中の異物がシール部に入り込むのを防止する異物進入防止部と、を備える、ことを特徴とする。
【0006】
この発明(請求項2にかかる発明)は、異物進入防止部が、容器内の圧力よりも大きい圧力の水を容器内であってシール部に対して反対側に流出させる高圧パージライン系統から構成されている、ことを特徴とする。
【0007】
この発明(請求項3にかかる発明)は、高圧パージライン系統が、容器の外側に配置されていて容器内の圧力よりも大きい圧力の水を供給するポンプと、一端がポンプに接続されていて他端が容器の内側面に位置する高圧水供給ラインと、高圧水供給ラインの他端に設けられていて高圧水を容器内であってシール部に対して反対側に流出させる流出口と、を有する、ことを特徴とする。
【0008】
この発明(請求項4にかかる発明)は、高圧パージライン系統が、容器の外側に配置されていて容器内の圧力よりも大きい圧力の水を供給するポンプと、一端がポンプに接続されていて他端が容器の内側面に位置する高圧水供給ラインと、高圧水供給ラインの他端に設けられていて高圧水を容器内であってシール部に対して反対側に流出させる流出口と、高圧水供給ラインの途中に設けられていて高圧水をポンプから流出口側に流し一方濁水が流出口からポンプ側に流れるのを止める逆止弁と、回転軸の回転停止を検出する検出器と、検出器とポンプとにそれぞれ接続されていて検出器からの検出信号に基づいてポンプに駆動停止信号を出力するコントローラと、を有する、ことを特徴とする。
【0009】
この発明(請求項5にかかる発明)は、流出口が、シール部の全周に亘って対向するように設けられている、ことを特徴とする。
【0010】
この発明(請求項6にかかる発明)は、異物進入防止部が、容器内の回転軸にシール部に対向して設けられているフランジと、容器の内側面にフランジの外周側を覆うように設けられているガイドと、から構成されている、ことを特徴とする。
【0011】
この発明(請求項7にかかる発明)は、ガイドが、フランジの全周に亘って覆うように設けられている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明(請求項1にかかる発明)の濁水用回転装置は、異物進入防止部により、容器内に収容されている濁水中の異物がシール部に入り込むのを防止することができる。この結果、この発明(請求項1にかかる発明)の濁水用回転装置は、シール部のシール機能および耐久性を向上させることができる。
【0013】
この発明(請求項2にかかる発明)の濁水用回転装置は、異物進入防止部の高圧パージライン系統により、容器内の圧力よりも大きい圧力の水が容器内であってシール部に対して反対側に流出する。このために、この発明(請求項2にかかる発明)の濁水用回転装置は、高圧水により、容器内に収容されている濁水中の異物であってシール部に入り込もうとする異物をシール部と反対側に押し戻すことができ、異物がシール部に入り込むのを防止することができる。この結果、この発明(請求項2にかかる発明)の濁水用回転装置は、シール部のシール機能および耐久性を向上させることができる。
【0014】
この発明(請求項3にかかる発明)の濁水用回転装置は、ポンプから供給される容器内の圧力よりも大きい圧力の水が高圧水供給ラインを経て流出口から容器内であってシール部に対して反対側に流出する。このために、この発明(請求項3にかかる発明)の濁水用回転装置は、高圧水により、容器内に収容されている濁水中の異物であってシール部に入り込もうとする異物をシール部と反対側に押し戻すことができ、異物がシール部に入り込むのを防止することができる。この結果、この発明(請求項3にかかる発明)の濁水用回転装置は、シール部のシール機能および耐久性を向上させることができる。
【0015】
この発明(請求項4にかかる発明)の濁水用回転装置は、前記の発明(請求項3にかかる発明)の濁水用回転装置と同様に、ポンプから供給される容器内の圧力よりも大きい圧力の水が高圧水供給ラインを経て流出口から容器内であってシール部に対して反対側に流出する。このために、この発明(請求項4にかかる発明)の濁水用回転装置は、高圧水により、容器内に収容されている濁水中の異物であってシール部に入り込もうとする異物をシール部と反対側に押し戻すことができ、異物がシール部に入り込むのを防止することができる。この結果、この発明(請求項4にかかる発明)の濁水用回転装置は、シール部のシール機能および耐久性を向上させることができる。
【0016】
しかも、この発明(請求項4にかかる発明)の濁水用回転装置は、検出器とコントローラとにより、回転軸が回転しているときには、ポンプを駆動させて異物がシール部に入り込むのを防止することができ、一方、回転軸が停止しているときには、ポンプを停止させることができる。すなわち、ポンプを間欠的に運転することができる。この結果、この発明(請求項4にかかる発明)の濁水用回転装置は、シール部のシール機能および耐久性を向上させることができると共に、高圧水(異物パージ用の水)の使用を低減することができ、かつ、ポンプの耐久性を向上させることができる。
【0017】
この発明(請求項5にかかる発明)の濁水用回転装置は、高圧水をシール部の全周に亘って流出させることができるので、異物がシール部に入り込むのをシール部の全周に亘って防止することができ、シール部のシール機能および耐久性をさらに確実に向上させることができる。
【0018】
この発明(請求項6にかかる発明)の濁水用回転装置は、ガイドとフランジとにより、容器内のシール部までの間に迷路が形成され、この迷路により、異物がシール部に入り込むのを防止することができる。この結果、この発明(請求項6にかかる発明)の濁水用回転装置は、シール部のシール機能および耐久性を向上させることができる。
【0019】
この発明(請求項7にかかる発明)の濁水用回転装置は、ガイドをフランジの全周に亘って設けたので、異物がシール部に入り込むのをシール部の全周に亘って防止することができ、シール部のシール機能および耐久性をさらに確実に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、この発明にかかる濁水用回転装置の実施例1を示す要部の一部縦断面図(一部垂直断面図)である。
【図2】図2は、同じく、要部を示す一部概略縦断面図(一部概略垂直断面図)である。
【図3】図3は、同じく、図2におけるIII−III線概略断面図である。
【図4】図4は、同じく、流出口の第1変形例を示す概略断面図である。
【図5】図5は、同じく、流出口の第2変形例を示す概略断面図である。
【図6】図6は、同じく、燃焼設備や石炭ガス化複合発電設備における石炭ガス化炉のスラグ排出装置を示す一部概略縦断面図(一部概略垂直断面図)である。
【図7】図7は、この発明にかかる濁水用回転装置の実施例2を示す要部の一部概略縦断面図(一部概略垂直断面図)である。
【図8】図8は、この発明にかかる濁水用回転装置の実施例3を示す要部の一部概略縦断面図(一部概略垂直断面図)である。
【図9】図9は、同じく、図8におけるIX−IX線概略断面図である。
【図10】図10は、同じく、ガイドの変形例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明にかかる濁水用回転装置の実施例のうちの3例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0022】
図1〜図6は、この発明にかかる濁水用回転装置の実施例1を示す。以下、この実施例1における濁水用回転装置の構成について説明する。
【0023】
図6中における符号「1」は、この実施例1にかかる濁水用回転装置である。前記濁水用回転装置1は、この例では、燃焼設備や石炭ガス化複合発電設備における石炭ガス化炉のスラグ排出装置である。
【0024】
前記スラグ排出装置1は、容器2と、ロールクラッシャ3の回転軸4と、シール部5および軸受部6と、異物進入防止部7と、を備えるものである。すなわち、前記スラグ排出装置1は、濁水8が収容されている前記容器2と、前記容器2を貫通する前記ロールクラッシャ3の前記回転軸4と、固定側の前記容器2と回転側の前記回転軸4との間に設けられている前記シール部5および前記軸受部6と、前記濁水8中の異物(図示せず)が前記シール部5および前記軸受部6に入り込むのを防止する前記異物進入防止部7と、を備えるものである。
【0025】
前記容器2は、たとえば円筒形状をなす圧力容器であって、上部容器9と、径が上部容器9よりも小さい下部容器10と、から構成されている。前記上部容器9は、石炭ガス化炉(図示せず)の容器と兼用する。前記下部容器10の底部には、スラグ排出口11が設けられている。
【0026】
前記容器2(前記上部容器9および前記下部容器10)内には、前記濁水8すなわちスラグホッパ水8が収容されている。前記容器2内は、高圧たとえば約3PMaの高圧に密閉保持されている。この結果、前記スラグホッパ水8は、約3PMaの高圧である。
【0027】
前記下部容器10の上部には、前記ロールクラッシャ(スラグ粉砕機、スラグ破砕機)3が配置されている。前記ロールクラッシャ3は、前記下部容器10内に配置されている回転歯12および固定歯13と、前記下部容器10外に配置されているモータ14と、から構成されている。前記回転歯12は、前記回転軸4の中間部に固定されていて、前記回転軸4を介して前記下部容器10に回転可能に取り付けられている。前記固定歯13は、前記下部容器10に前記回転歯12に対向して固定されている。前記モータ14は、前記回転軸4の一端に減速機構や回転力伝達機構(図示せず)を介して連結されていて、前記回転軸4を介して前記回転歯12を回転させる。
【0028】
前記石炭ガス化炉内においては、石炭のガス化に伴って溶融したスラグ(図示せず)が生成される。溶融したスラグは、前記石炭ガス化炉の本体から前記上部容器9内に落下して前記上部容器9内の前記スラグホッパ水8により冷却固化される。固化されたスラグは、前記ロールクラッシャ3の回転する前記回転歯12と前記固定歯13とにより粉砕(破砕)される。粉砕されたスラグは、前記下部容器10の前記スラグ排出口11から外部に排出される。固化されたスラグが前記ロールクラッシャ3により粉砕された際に、微細なスラグが発生する。このために、前記スラグホッパ水8中には、前記の微細なスラグ(異物)が存在する。
【0029】
前記回転軸4は、前記下部容器10の壁部を水平方向(前記容器2内のスラグの落下方向に対して垂直方向もしくは直交方向)に貫通する。前記回転軸4の両端は、前記下部容器10の壁部に前記軸受部6を介して回転可能に取り付けられている。前記回転軸4の中間部は、前記回転歯12と共に前記下部容器10内に位置している。前記回転軸4の両端部は、前記下部容器10の外側に位置している。
【0030】
前記軸受部(軸受機構、軸受構造)6は、前記の特許文献2および特許文献3の自動調芯ころ軸受と同様である。前記軸受部6は、図1に示すように、筒形状の軸受箱15と、リング形状の内側軸受カバー(シールハウジング)16と、同じくリング形状の外側軸受カバー(シールハウジング)17と、軸受外輪18と、軸受内輪19と、複数個の自動調芯ころ20と、から構成されている。前記軸受部6には、潤滑油室21が形成されている。前記潤滑油室21には、潤滑油(図示せず)が潤滑油供給ライン系統(図示せず)を介して充填されている。前記軸受部6は、固化されたスラグを前記ロールクラッシャ3の回転する前記回転歯12と前記固定歯13とにより粉砕する際に、前記回転軸4において発生する半径方向の曲げ応力を支持するものである。
【0031】
前記シール部5は、前記の特許文献2および特許文献3のシール部と同様である。前記シール部5は、図1に示すように、前記内側軸受カバー16の内周面に設けられている容器側シール(内側シール)22と軸受側シール(外側シール)23と中間シール24とから構成されている。前記中間シール24は、前記内側軸受カバー16に設けられているシール水室にシール水(図示せず)をシール水供給ライン系統(図示せず)を介して充填してなるものである。なお、前記外側軸受カバー17の内周面には、外側シール28が設けられている。前記外側シール28は、前記軸受部6の前記潤滑油室21内の潤滑油が前記外側軸受カバー17の内周面と前記回転軸4の外周面との間から外側に漏れるのを防止するものである。
【0032】
前記容器2内の前記スラグホッパ水8の圧力は、約3PMaである。前記潤滑油室21内の潤滑油の圧力は、前記容器2内の前記スラグホッパ水8の圧力よりも高く、たとえば、約4PMaである。前記中間シール24の前記シール水室内のシール水の圧力は、前記容器2内の前記スラグホッパ水8の圧力よりも高く、かつ、前記潤滑油室21内の潤滑油の圧力と同じもしくは低く、たとえば、約3.5PMaである。この結果、前記中間シール24のシール水は、前記容器側シール22を経て前記下部容器10内に漏れている。これにより、前記容器側シール22の前記回転軸4との摺動面を正常に保ち、前記シール部5の信頼性が向上される。一方、前記中間シール24のシール水が前記軸受部6の前記潤滑油室21内に浸入するのを防止することができる。これにより、前記軸受部6の信頼性が向上される。
【0033】
前記異物進入防止部7は、図2中の実線矢印に示すように、前記容器2内の圧力、すなわち、前記容器2内の前記スラグホッパ水8の圧力よりも大きい圧力の水(図示せず)を、前記容器2の前記下部容器10内であって前記シール部5の前記容器側シール22に対して反対側に、流出させる高圧パージライン系統から構成されている。
【0034】
前記高圧パージライン系統は、ポンプ25と、高圧水供給ライン26と、流出口27と、を有するものである。前記高圧パージライン系統と、前記シール水供給ライン系統と、前記潤滑油供給ライン系統とは、それぞれ、相互に干渉しないように独立して設けられている。
【0035】
前記ポンプ25は、前記容器2の外側に配置されていて、前記容器2内の圧力よりも大きい圧力の水を供給するものである。
【0036】
前記高圧水供給ライン26は、前記ポンプ25の吐出口と、前記容器2すなわち前記下部容器10の内側面であって前記軸受部6の前記内側軸受カバー16の内周面と、の間に設けられている。すなわち、前記高圧水供給ライン26は、前記軸受部6の前記軸受箱15および前記内側軸受カバー16および前記外側軸受カバー17に設けられ、かつ、前記外側軸受カバー17の外側面の流入口と前記ポンプ25の突出口との間に設けられている。前記高圧水供給ライン26の一端は、前記ポンプ25の吐出口に接続されている。前記高圧水供給ライン26の他端は、前記容器2すなわち前記下部容器10の内側面であって前記軸受部6の前記内側軸受カバー16の内周面に位置する。
【0037】
前記流出口27は、前記高圧水供給ライン26の他端に設けられている。すなわち、前記流出口27は、前記内側軸受カバー16の内周面に、前記回転軸4の外周面に対向するように、設けられている。前記流出口27は、前記ポンプ25から供給される高圧水を、図2中の実線矢印に示すように、前記容器2すなわち前記下部容器10内であって、前記内側軸受カバー16の内周面と前記回転軸4の外周面との間の隙間29に、前記シール部5に対して反対側に流出させるものである。前記流出口27は、図3に示すように、前記シール部5の前記内側軸受カバー16の内周面の全周に亘って設けられている。
【0038】
なお、図1〜図3に詳細に示す前記シール部5および前記軸受部6および前記異物進入防止部7は、前記回転軸4の一端(右端)に配置したものである。前記シール部5および前記軸受部6および前記異物進入防止部7は、図6に示すように、前記回転軸4の両端にそれぞれ配置されている。
【0039】
この実施例1における濁水用回転装置は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0040】
石炭ガス化炉内において生成された溶融スラグは、石炭ガス化炉の本体から上部容器9内に落下し、その上部容器9内のスラグホッパ水8により冷却固化される。固化されたスラグは、ロールクラッシャ3のモータ14により回転する回転歯12と固定歯13とにより粉砕される。粉砕されたスラグは、下部容器10のスラグ排出口11から外部に排出される。固化されたスラグがロールクラッシャ3により粉砕された際に、微細なスラグが発生する。このために、スラグホッパ水8中には、微細なスラグが異物として存在する。
【0041】
そして、異物進入防止部7において、容器2(下部容器10)内のスラグホッパ水8の圧力よりも高い圧力の水は、ポンプ25から供給される。この高圧水は、高圧水供給ライン26を通って流出口27に供給される。この高圧水は、流出口27から、図2中の実線矢印に示すように、容器2(下部容器10)内であって、内側軸受カバー16の内周面と回転軸4の外周面との間の隙間29に、シール部5に対して反対側に流出する。また、この高圧水は、図3に示すように、内側軸受カバー16の内周面の全周に亘って、流出する。
【0042】
この流出口27から流出する高圧水のウオータカーテン作用により、スラグホッパ水8中の微細なスラグであって内側軸受カバー16の内周面と回転軸4の外周面との間の隙間29に入り込もうとする微細なスラグは、シール部5と反対側に容器2(下部容器10)内に押し戻される。
【0043】
この実施例1における濁水用回転装置は、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0044】
この実施例1における濁水用回転装置は、流出口27から流出する高圧水により、スラグホッパ水8中の微細なスラグであって内側軸受カバー16の内周面と回転軸4の外周面との間の隙間29に入り込もうとする微細なスラグを、シール部5と反対側に容器2(下部容器10)内に押し戻すことができる。この結果、この実施例1における濁水用回転装置は、微細なスラグがシール部5(容器側シール22の回転軸4との摺動面)に入り込むのを防止することができるので、シール部5のシール機能および耐久性を向上させることができる。
【0045】
この実施例1における濁水用回転装置は、高圧水をシール部5の全周に亘って流出させることができるので、異物としての微細なスラグがシール部5に入り込むのをシール部5の全周に亘って防止することができ、シール部5のシール機能および耐久性をさらに確実に向上させることができる。
【0046】
この実施例1における濁水用回転装置は、高圧水により、スラグホッパ水8中の微細なスラグであってシール部5に入り込もうとする微細なスラグを、シール部5と反対側に容器2内に押し戻すことができ、微細なスラグがシール部5に入り込むのを防止することができるので、容器2内の圧力がたとえば約3MPaと高圧であるスラグ排出装置に最適である。
【0047】
ここで、異物進入防止部7の代わりに、リップシールを使用した場合ついて説明する。この実施例1の濁水用回転装置のスラグ排出装置1においては、スラグの粉砕時の荷重により回転軸4が常時変動しており、また、容器2内が約3MPaと高圧である。このために、リップシールでは、微細なスラグがシール部5に入り込むのを防止することが困難である。これに対して、この実施例1における濁水用回転装置は、高圧水により、微細なスラグがシール部5に入り込むのを防止することができるものである。
【0048】
図4は、流出口の第1変形例を示す概略断面図である。図中、図1〜図3と同符号は、同一のものを示す。第1変形例の流出口30は、シール部5の内側軸受カバー16の内周面のうち、上側半周に設けられているものである。第1変形例の流出口30は、シール部5の内側軸受カバー16の内周面の全周に亘って設けられている流出口27(図3参照)と、ほぼ同様作用効果を達成することができる。
【0049】
図5は、流出口の第2変形例を示す概略断面図である。図中、図1〜図4と同符号は、同一のものを示す。第2変形例の流出口31は、シール部5の内側軸受カバー16の内周面のうち、上側と左側と右側との3箇所に設けられているものである。第2変形例の流出口31は、図3に示す流出口27および図4に示し流出口30と、ほぼ同様作用効果を達成することができる。
【実施例2】
【0050】
図7は、この発明にかかる濁水用回転装置の実施例2を示す。以下、この実施例2における濁水用回転装置について説明する。図中、図1〜図6と同符号は、同一のものを示す。
【0051】
この実施例2における濁水用回転装置は、図7に示すように、高圧パージライン系統が、前記の実施例1における濁水用回転装置の高圧パージライン系統のポンプ25および高圧水供給ライン26および流出口27(あるいは30または31)と、逆止弁32と、検出器33と、コントローラ34と、を有するものである。
【0052】
前記逆止弁32は、高圧水供給ライン26の途中に設けられている。前記逆止弁32は、高圧水をポンプ25から流出口27側に流し、一方、スラグホッパ水8が流出口27からポンプ25側に流れるのを止めるものである。前記検出器33は、回転軸4の回転停止を検出して、その検出信号を出力するものである。前記コントローラ34は、検出器33とポンプ25とにそれぞれ接続されている。前記コントローラ34は、検出器33からの検出信号に基づいてポンプ25に駆動停止信号を出力するものである。
【0053】
この実施例2における濁水用回転装置は、以上のごとき構成からなるので、前記の実施例1における濁水用回転装置とほぼ同様の作用効果を達成することができる。しかも、この実施例2における濁水用回転装置は、検出器33とコントローラ34とにより、回転軸4が回転しているときには、ポンプ25を駆動させて異物としての微細なスラグがシール部5に入り込むのを防止することができる。一方、回転軸4が停止しているときには、ポンプ25を停止させることができる。すなわち、ポンプ25を間欠的に運転することができる。この結果、この実施例2における濁水用回転装置は、シール部5のシール機能および耐久性を向上させることができると共に、高圧水(異物パージ用の水)の使用を低減することができ、かつ、ポンプ25の耐久性を向上させることができる。また、高圧水を節約することができ、運転コストを安価にすることができる。
【実施例3】
【0054】
図8、図9は、この発明にかかる濁水用回転装置の実施例3を示す。以下、この実施例3における濁水用回転装置について説明する。図中、図1〜図7と同符号は、同一のものを示す。
【0055】
この実施例3における濁水用回転装置は、図8、図9に示すように、異物進入防止部7が、フランジ35と、ガイド36と、から構成されている。前記フランジ35および前記ガイド36は、耐腐食性の部材、たとえば、ステンレスから構成されている。
【0056】
前記フランジ35は、容器2(下部容器10)内の回転軸4に、シール部5の容器側シール22および軸受部6の内側軸受カバー16に対向して設けられている。前記フランジ35は、図9に示すように、円板形状をなす。前記フランジ35の径は、軸受部6の内側軸受カバー16の径よりも小さい。前記ガイド36は、容器2(下部容器10)の内側面であって、軸受部6の内側軸受カバー16の内側面に、前記フランジ35の外周側を覆うように設けられている。前記ガイド36は、図9に示すように、円筒形状をなしていて、前記フランジ35の全周に亘って覆うように設けられている。
【0057】
この実施例3における濁水用回転装置は、以上のごとき構成からなるので、前記の実施例1、2における濁水用回転装置とほぼ同様の作用効果を達成することができる。すなわち、この実施例3における濁水用回転装置は、ガイド36とフランジ35とにより、容器2(下部容器10)内のシール部5までの間に迷路が形成される。迷路は、ガイド36のフランジ35よりも容器2(下部容器10)の内側に突出する部分と、フランジ35の外周端面とガイド36の内周面の中央部との間と、フランジ35の外側面と軸受部6の内側軸受カバー16の内側面との間、回転軸4の外周面と軸受部6の内側軸受カバー16の内周面との間の隙間29と、からなる。この迷路により、異物としての微細なスラグがシール部5に入り込むのを防止することができ、シール部5のシール機能および耐久性を向上させることができる。
【0058】
しかも、この実施例3における濁水用回転装置は、前記の実施例1、2における濁水用回転装置の高圧パージライン系統(ポンプ25、高圧水供給ライン26、流出口27、30、31、逆止弁32、検出器33、コントローラ34)の代わりに、フランジ35、ガイド36を使用するものであるから、製造コストが安価である。
【0059】
さらに、この実施例3における濁水用回転装置は、ガイド36をフランジ35の全周に亘って設けたので、異物としての微細なスラグがシール部5に入り込むのをシール部5の全周に亘って防止することができ、シール部5のシール機能および耐久性をさらに確実に向上させることができる。
【0060】
図10は、ガイドの変形例を示す概略断面図である。図中、図1〜図9と同符号は、同一のものを示す。変形例のガイド37は、フランジ35の上側半周を覆うように設けられているものである。変形例のガイド37は、フランジ35の全周を覆うように設けられているガイド36(図9参照)と、ほぼ同様作用効果を達成することができる。
【0061】
なお、前記の実施例1、2、3においては、濁水用回転装置として、燃焼設備や石炭ガス化複合発電設備における石炭ガス化炉のスラグ排出装置1について説明するものである。ところが、この発明においては、濁水用回転装置として、スラグ排出装置1以外の装置、たとえば、汚水処理設備における汚泥掻揚装置、あるいは、各種の建設機器などにおける濁水用回転装置であっても良い。
【符号の説明】
【0062】
1 スラグ排出装置(濁水用回転装置)
2 容器
3 ロールクラッシャ
4 回転軸
5 シール部
6 軸受部
7 異物進入防止部
8 スラグホッパ水(濁水)
9 上部容器
10 下部容器
11 スラグ排出口
12 回転歯
13 固定歯
14 モータ
15 軸受箱
16 内側軸受カバー
17 外側軸受カバー
18 軸受外輪
19 軸受内輪
20 自動調芯ころ
21 潤滑油室
22 容器側シール
23 軸受側シール
24 中間シール
25 ポンプ
26 高圧水供給ライン
27 流出口
28 外側シール
29 隙間
30 流出口
31 流出口
32 逆止弁
33 検出器
34 コントローラ
35 フランジ
36 ガイド
37 ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール部を有する濁水用回転装置において、
濁水が収容されている容器と、
前記容器を貫通する回転軸と、
固定側の前記容器と回転側の前記回転軸との間に設けられているシール部と、
前記濁水中の異物が前記シール部に入り込むのを防止する異物進入防止部と、
を備える、ことを特徴とする濁水用回転装置。
【請求項2】
前記異物進入防止部は、
前記容器内の圧力よりも大きい圧力の水を、前記容器内であって前記シール部に対して反対側に、流出させる高圧パージライン系統から構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の濁水用回転装置。
【請求項3】
前記高圧パージライン系統は、
前記容器の外側に配置されていて、前記容器内の圧力よりも大きい圧力の水を供給するポンプと、
一端が前記ポンプに接続されていて、他端が前記容器の内側面に位置する高圧水供給ラインと、
前記高圧水供給ラインの他端に設けられていて、高圧水を前記容器内であって前記シール部に対して反対側に流出させる流出口と、
を有する、
ことを特徴とする請求項2に記載の濁水用回転装置。
【請求項4】
前記高圧パージライン系統は、
前記容器の外側に配置されていて、前記容器内の圧力よりも大きい圧力の水を供給するポンプと、
一端が前記ポンプに接続されていて、他端が前記容器の内側面に位置する高圧水供給ラインと、
前記高圧水供給ラインの他端に設けられていて、高圧水を前記容器内であって前記シール部に対して反対側に流出させる流出口と、
前記高圧水供給ラインの途中に設けられていて、高圧水を前記ポンプから前記流出口側に流し、一方、濁水が前記流出口から前記ポンプ側に流れるのを止める逆止弁と、
前記回転軸の回転停止を検出する検出器と、
前記検出器と前記ポンプとにそれぞれ接続されていて、前記検出器からの検出信号に基づいて前記ポンプに駆動停止信号を出力するコントローラと、
を有する、
ことを特徴とする請求項2に記載の濁水用回転装置。
【請求項5】
前記流出口は、前記シール部の全周に亘って設けられている、
ことを特徴とする請求項3または4に記載の濁水用回転装置。
【請求項6】
前記異物進入防止部は、
前記容器内の前記回転軸に、前記シール部に対向して設けられているフランジと、
前記容器の内側面に、前記フランジの外周側を覆うように設けられているガイドと、
から構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の濁水用回転装置。
【請求項7】
前記ガイドは、前記フランジの全周に亘って覆うように設けられている、
ことを特徴とする請求項6に記載の濁水用回転装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−102806(P2012−102806A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252061(P2010−252061)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】