説明

濾過カートリッジおよびそれを備える浄水器

【課題】活性炭を密に充填することが可能で長寿命化が実現された濾過カートリッジおよびそれを備えた浄水器を提供する
【解決手段】活性炭の充填時には、外筒29の開口端部が上方に向けられる。内筒26の一端部は、キャップ27により閉塞されている。この内筒26の一端部を覆うように、外筒29内に活性炭40が充填される。このとき、加振機等を用いて振動を与えつつ活性炭40を充填してもよい。続いて、外筒29の開口端部から閉塞部材30が押し込まれる。これにより、充填された活性炭40全体が押圧され、より密な状態となる。そして、外筒29の上端部が閉塞部材30の縁部で内方に折曲され、閉塞部材30の上面に押し付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に水道水を浄化するための濾過カートリッジおよびそれを備える浄水器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水道水等を浄化するための浄水器が、飲食店または一般家庭等において広く利用されている。浄水器としては、交換可能な濾過カートリッジを内蔵したものが一般的である。濾過カートリッジには、例えば不純物を吸着して除去するための活性炭が充填されている。
【0003】
特許文献1に記載される濾過カートリッジにおいては、筒状のカートリッジケース内に筒状の第1の通水部材が収容され、第1の通水部材の内側には第1の通水部材の内周面と離間するように筒状の第2の通水部材が配置されている。第1および第2の通水部材の一端部に第1の保持板が設けられており、第1の保持板により第1および第2の通水部材の一端部が保持されている。
【0004】
第1および第2の通水部材の他端部には、中心に中空部が形成された第2の保持板が設けられている。第2の保持板により第1および第2の通水部材の他端部が保持されている。第1の通水部材と第2の通水部材との間の円筒状の空間内に、粒状の活性炭または円筒状に成型された活性炭(成型体状の活性炭)が充填され、活性炭層が設けられている。
【特許文献1】特開2005−199219号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
濾過カートリッジに充填する活性炭は、成型体状よりも粒状である方が好ましい。成型体状の活性炭は一定量のバインダーを含むので、単位体積あたりの吸着量が粒状の活性炭より小さくなるためである。
【0006】
ところで、上記特許文献1の濾過カートリッジでは、第1の通水部材、第2の通水部材、第1の保持板および第2の保持板により形成される一定容積の空間内に活性炭が充填される。このような一定容積の空間内に粒状の活性炭を最密に充填することは困難であり、通常、割れ目等の空隙が形成されやすい。この場合、空隙の周囲の通水抵抗が小さくなり、その部分に水が偏って流れ込む。それにより、空隙の周囲の活性炭の性能が集中的に低下し、濾過カートリッジの寿命が短くなる。
【0007】
本発明の目的は、活性炭を密に充填することが可能で長寿命化が実現された濾過カートリッジおよびそれを備えた浄水器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)第1の発明に係る濾過カートリッジは、通液性を有する外筒と、外筒内に挿入される通液性を有する内筒と、外筒の一端部が内筒の一端部よりも軸方向に突出するように外筒の他端部および内筒の他端部を保持しかつ内筒の他端部の開口の位置に連通孔を有する第1保持部材と、内筒の一端部の開口を閉塞する第1閉塞部材と、内筒の一端部との間に間隔をおいて外筒の一端部の開口を閉塞するように外筒の内側に嵌め込まれる第2閉塞部材とを備え、外筒の内周面、内筒の外周面、第1閉塞部材および第2閉塞部材により囲まれる内部空間に活性炭が充填されるものである。
【0009】
この濾過カートリッジにおいては、外筒内に内筒が挿入され、外筒の一端部が内筒の一端部よりも軸方向に突出するように外筒の他端部および内筒の他端部が第1保持部材により保持される。内筒の一端部の開口は第1閉塞部材により閉塞される。また、内筒の一端部との間に間隔をおいて外筒の一端部の開口を閉塞するように、第2閉塞部材が外筒の内側に嵌め込まれる。外筒の内周面、内筒の外周面、第1閉塞部材および第2閉塞部材により囲まれる内部空間に活性炭が充填される。
【0010】
組立時には、外筒の内周面、内筒の外周面、第1閉塞部材および第2閉塞部材により囲まれる内部空間に活性炭が充填された後、第2閉塞部材が外筒の内側に嵌め込まれる。このとき、第2閉塞部材により活性炭を押圧することができる。それにより、活性炭の充填密度を高めることができ、割れ目等の空隙の形成を防止することができる。
【0011】
外部から供給される液体は、外筒を通して、活性炭が充填された空間内に浸入する。そして、液体に含まれる不純物が活性炭により吸着して除去される。不純物が除去された液体は、内筒を通して内筒の内部の空間に導かれ、第1保持部材の連通孔から排出される。
【0012】
この場合、活性炭が高密度に充填されていることにより、活性炭が充填された空間内に浸入した液体が、活性炭の一部に偏って流れ込むことが防止される。それにより、使用される活性炭の領域が均一に分散するので、活性炭の局所的な性能の低下を抑制することができる。その結果、濾過カートリッジの長寿命化を実現することができる。
【0013】
また、外筒の一端部が内筒の一端部よりも軸方向に突出しているので、外筒の突出した一端部の内部にも活性炭が充填される。それにより、液体が外筒の突出した一端部から内筒の一端部近傍の領域を通過して内筒の内部に流入することができる。そのため、内筒の一端部近傍に液体が通過しにくい領域が生じない。その結果、充填された活性炭を有効に使用することができる。
【0014】
(2)内筒の一端部は外筒の半径方向における中央部に配置され、内筒の一端部と第2閉塞部材との間の間隔は、内筒と外筒との間の半径方向における間隔の0.5〜1倍であってもよい。
【0015】
この場合、内筒の一端部と第2閉塞部材との間の間隔が内筒と外筒との間の半径方向における間隔の0.5倍以上であることにより、液体が外筒の突出した一端部から内筒の一端部近傍の領域を通過して内筒の内部に流入することができる。そのため、内筒の一端部近傍に液体が通過しにくい領域が生じない。その結果、充填された活性炭を有効に使用することができる。
【0016】
また、内筒の一端部と第2閉塞部材との間の間隔が内筒と外筒との間の半径方向における間隔の1倍以下であることにより、外筒の突出した一端部内において、液体が通過せずに有効に使用されない活性炭の量が抑制される。したがって、コストの増大を抑制しつつより多くの液体を浄化することが可能となる。
【0017】
(3)濾過カートリッジは、内筒の一端部を外筒の半径方向における中央位置で保持する第2保持部材をさらに備えてもよい。
【0018】
この場合、第2の保持部材によって内筒の一端部を外筒の半径方向における中央位置で保持することにより、活性炭の充填領域が周方向において均一に確保される。それにより、効率よく液体を浄化することができる。
【0019】
(4)濾過カートリッジは、第1保持部材の連通孔から排出される液体が導かれる第1収容空間を有する第1収容部材と、第1収容部材内に収容される中空糸膜とをさらに備えてもよい。
【0020】
この場合、第1収容部材の第1収容空間において、第1保持部材の連通孔から排出される液体に含まれる細菌および鉄さび等の粒子類を中空糸膜により除去することができる。
【0021】
(5)濾過カートリッジは、第1保持部材の連通孔から排出される液体が導かれる第2収容空間を有する第2収容部材と、第2収容部材内に収容されるイオン交換材料とをさらに備えてもよい。
【0022】
この場合、第2収容部材の第2収容空間において、第1保持部材の連通孔から排出される液体に含まれる鉛イオン等の金属イオンをイオン交換材料により除去することができる。
【0023】
(6)第1保持部材および第2収容部材は一体的に形成されてもよい。この場合、第1保持部材と第2収容部材とが別個に設けられる場合と比べて、濾過カートリッジの組立が容易になる。また、濾過カートリッジの小型化が可能となる。
【0024】
(7)内筒は不織布からなってもよい。この場合、活性炭が内筒を通過することを確実に阻止することができるとともに、液体が内筒を容易に通過することができる。また、熱成形された不織布は保形性を有するので、組立作業が容易になるとともに信頼性が向上する。
【0025】
(8)外筒は不織布からなってもよい。この場合、活性炭が外筒を通過することを確実に阻止することができるとともに、液体が外筒を容易に通過することができる。また、熱成形された不織布は保形性を有するので、組立作業が容易になるとともに信頼性が向上する。
【0026】
(9)外筒の一端部は、内方に折曲されてもよい。この場合、第2閉塞部材の脱落またはずれ等が確実に防止される。それにより、活性炭が高密度な状態で維持される。
【0027】
(10)第2の発明に係る浄水器は、第1の発明に係る濾過カートリッジと、液体入口および液体出口を有し、濾過カートリッジを収容する収容ケースとを備え、収容ケース内に、収容ケースの液体入口から供給される液体を外筒の外周領域に導く第1の流路と、濾過カートリッジの第1保持部材の連通孔から排出される液体を液体出口に導く第2の流路とが形成され、第1流路と第2流路とが分離されたものである。
【0028】
この浄水器においては、収容ケースの液体入口から浄化前の液体が供給され、第1流路を通して、濾過カートリッジの外筒の外周領域に導かれる。濾過カートリッジにより浄化された液体は、第1保持部材の連通孔から排出され、第2流路を通して液体出口に導かれる。
【0029】
濾過カートリッジにおいては、外筒内に内筒が挿入され、外筒の一端部が内筒の一端部よりも軸方向に突出するように外筒の他端部および内筒の他端部が第1保持部材により保持される。内筒の一端部の開口は第1閉塞部材により閉塞される。また、内筒の一端部との間に間隔をおいて外筒の一端部の開口を閉塞するように、第2閉塞部材が外筒の内側に嵌め込まれる。外筒の内周面、内筒の外周面、第1閉塞部材および第2閉塞部材により囲まれる内部空間に活性炭が充填される。
【0030】
組立時には、外筒の内周面、内筒の外周面、第1閉塞部材および第2閉塞部材により囲まれる内部空間に活性炭が充填された後、第2閉塞部材が外筒の内側に嵌め込まれる。このとき、第2閉塞部材により活性炭を押圧することができる。それにより、活性炭の充填密度を高めることができ、割れ目等の空隙の形成を防止することができる。
【0031】
外部から供給される液体は、外筒を通して、活性炭が充填された空間内に浸入する。そして、液体に含まれる不純物が活性炭により吸着して除去される。不純物が除去された液体は、内筒を通して内筒の内部の空間に導かれ、第1保持部材の連通孔から排出される。
【0032】
この場合、活性炭が高密度に充填されていることにより、活性炭が充填された空間内に浸入した液体が、活性炭の一部に偏って流れ込むことが防止される。それにより、使用される活性炭の領域が均一に分散するので、活性炭の局所的な性能の低下を抑制することができる。その結果、濾過カートリッジの長寿命化を実現することができる。
【0033】
また、外筒の一端部が内筒の一端部よりも軸方向に突出しているので、外筒の突出した一端部の内部にも活性炭が充填される。それにより、液体が外筒の突出した一端部から内筒の一端部近傍の領域を通過して内筒の内部に流入することができる。そのため、内筒の一端部近傍に液体が通過しにくい領域が生じない。その結果、充填された活性炭を有効に使用することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、活性炭の充填密度を高めることができ、割れ目等の空隙の形成を防止することができる。それにより、活性炭が充填された空間内に浸入した液体が、活性炭の一部に偏って流れ込むことが防止される。したがって、使用される活性炭の領域が均一に分散するので、活性炭の局所的な性能の低下を抑制することができる。その結果、濾過カートリッジの長寿命化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の一実施の形態に係る濾過カートリッジおよびそれを備える浄水器について図面を参照しながら説明する。
【0036】
(1)浄水器の取り付け状態
図1および図2は、本発明の一実施の形態に係る浄水器の外観図である。図1は流し台に取り付けられた浄水器の正面図であり、図2は図1の浄水器の側面図である。
【0037】
図1および図2に示すように、流し台100には、水平に延びる天板101が設けられている。天板101を貫通して上下に延びるように、浄水器1が取り付けられている。浄水器1には、濾過カートリッジ10が内蔵されている(図2)。浄水器1は、天板101の下面側においてナット102が締結されることにより、天板101に固定されている。浄水器1の側面には、略円柱状の操作部2が設けられており、操作部2上に後述の電磁弁121を操作するための操作スイッチ(図示せず)が配置されている。
【0038】
浄水器1の近傍には、水道水を受け止めて排出するための洗浄部110が設けられている。洗浄部110は、プレス加工等によって天板101が凹状に折曲されることにより形成される。洗浄部110の底面には、排水口(図示せず)が形成されている。浄水器1の上部には、洗浄部110の上方に湾曲して延びる吐水管3が左右に回動可能に取り付けられている。吐水管3の先端部には、下方に向けて水道水を吐水するための吐水口3aが設けられている。浄水器1の下端部には接続管4が取り付けられており、接続管4には、例えば屈曲可能な樹脂材料からなる給水管103の一端が接続されている。
【0039】
浄水器1の下方には、電磁弁121およびその制御基板(図示せず)等が収容された電磁弁収容部120が配置されている。電磁弁121には、接続管122,123が取り付けられている。給水管103の他端は、接続管122に接続されている。上記の操作部2と電磁弁収容部120とは、図示しない配線を介して接続されており、操作部2上の操作スイッチのオンオフを切り替えることによって電磁弁121の開閉を切り替えることができる。なお、操作スイッチの代わりに、電磁弁121の開度を調整することが可能な他の操作手段を設けてもよい。
【0040】
天板101の下方には、止水栓126が設けられている。止水栓126の上流側には、上水道管(図示せず)が接続されている。止水栓126の下流側には、上水道管から供給される水道水を2方向に分岐させるための分岐接続部127が取り付けられている。分岐接続部127の一方の出口には、分岐止水栓128を介して給水管129の一端が接続されている。給水管129の他端は、接続管123に接続されている。分岐接続部127の他方の出口には、給水管130の一端が接続されている。給水管130の他端は、例えば水道水を原水のままで吐水するための原水用水栓(図示せず)に接続される。
【0041】
止水栓126が開閉されることにより、上水道管(図示せず)から流し台100に水道水が供給される状態と、流し台100への水道水の供給が停止される状態とが切り替えられる。また、分岐止水栓128が開閉されることにより、浄水器1に水道水が供給される状態と、浄水器1への水道水の供給が停止される状態とが切り替えられる。
【0042】
(2)濾過カートリッジの構成
次に、浄水器1に内蔵される濾過カートリッジ10の構成を説明する。図3は、浄水器1に内蔵される濾過カートリッジ10の分解斜視図であり、図4は、濾過カートリッジ10の断面図である。
【0043】
図3に示すように、濾過カートリッジ10は、Oリング21、中空糸ケース22、イオン除去部材23、Oリング24、連結ケース25、内筒26、キャップ27、位置だしプレート28、外筒29および閉塞部材30を含む。これらの各部材は、共通の軸心Jに沿って配置される。
【0044】
中空糸ケース22は略円筒形状を有し、その上端部近傍の外周面には、リング取付溝221が周方向に沿って形成されている。リング取付溝221には、Oリング21が取り付けられる。中空糸ケース22の下端部近傍には、周方向に沿って所定の長さで延びる一対の切り抜き部222が、軸心Jに関して対称に形成されている。なお、図3においては、1つの切り抜き部222のみが示される。各切り抜き部222の一端部近傍には、上縁部から下方に突出するように係止部223が形成されている。また、各切り抜き部222の他端部近傍から中空糸ケース22の内周面に沿って下方に延びるように摺動溝224が形成されている。
【0045】
イオン除去部材23は、繊維状活性炭およびイオン交換繊維からなり、これらの混合材料をシート状に成型し、さらに円柱状に巻回したものである。連結ケース25は、中空糸ケース22よりも径の小さい略円筒形状を有し、イオン除去部材23を収容する。
【0046】
連結ケース25の上端部近傍の外周面には、リング取付溝251が周方向に沿って形成されている。リング取付溝251には、Oリング24が取り付けられる。リング取付溝251の下側には、周方向に沿って突条部252が形成されている。また、突条部252には、外方に突出する一対の凸部253が軸心Jに関して対称に形成されている。なお、図3においては、1つの凸部253のみが示される。連結ケース25は、中空糸ケース22の下端部に連結される。
【0047】
内筒26および外筒29は、通液性を有しかつ粒状の活性炭の通過を阻止することが可能な材料からなる。本実施の形態では、内筒26および外筒29の材料として、不織布を用いる。外筒29の内径は内筒26の外径よりも大きく、また、外筒29の縦方向の長さは内筒26の縦方向の長さよりも大きい。内筒26が外筒29内に収容された状態で、内筒26および外筒29の上端部が連結ケース25の下端部に取り付けられる。後述のように、内筒26と外筒29との間には、粒状の活性炭が充填される。
【0048】
キャップ27は、円柱状の内筒嵌合部271、円板状の突出部272およびテーパ状のプレート固定部273を有する。内筒嵌合部271の外径は内筒26の内径とほぼ等しく、突出部272の外径は内筒26の外径よりも大きい。位置だしプレート28は、略円板形状を有し、その外径は外筒29の内径とほぼ等しい。位置だしプレート28の中央部には嵌合孔281が形成されており、嵌合孔281を取り囲むように、複数(本例では4つ)の連通孔282が軸心Jに関して対称に形成されている。キャップ27および位置だしプレート28は、内筒26の下端部に取り付けられる。閉塞部材30は、底面を有する略円環形状を有し、外筒29の下端部に取り付けられる。
【0049】
次に、上記の各部材の内部構造およびそれらの組立方法について説明する。図4に示すように、中空糸ケース22内には、上方に開口する中空糸膜収容空間226が形成されている。中空糸膜収容空間226には、複数の中空糸膜50がU字状に収納される。中空糸ケース22の底部には、複数の連通孔228が軸心Jに関して対称に形成されている。中空糸ケース22の下端部には、凹状の嵌合部227が形成されており、その嵌合部227に連結ケース25の上端部が嵌合される。
【0050】
実際の組立時には、まず、連結ケース25の凸部253(図3)が中空糸ケース22の摺動溝224(図3)を通して切り抜き部222に嵌め込まれる、それにより連結ケース25の上端部が中空糸ケース22の嵌合部227(図4)に嵌合される。さらに、連結ケース25と中空糸ケース22とが軸心J周りに相対的に回転されることにより、連結ケース25の凸部253が中空糸ケース22の切り抜き部222(図3)内で周方向に移動する。それにより、凸部253が係止部223(図3)により係止され、連結ケース25と中空糸ケース22とが互いに固定される。なお、連結ケース25と中空糸ケース22が連結された状態では、中空糸ケース22の下端面と、連結ケース25の突条部252の下面とが同一平面上に位置する。
【0051】
連結ケース25内には、上方に開口する除去部材収容空間255が形成されている。除去部材収容空間255に上記のイオン除去部材23が収容される。除去部材収容空間255は、連通孔228を通して中空糸膜収容空間226に連通する。
【0052】
連結ケース25の底部256の中央には、連通孔257が形成されている。また、底部256の下面には、連通口257を取り囲むように、円環状の内筒保持溝258が形成され、さらに内筒保持溝258を取り囲むように円環状の外筒保持溝259が形成されている。内筒保持溝258には内筒26の上端部が嵌合され、外筒保持溝259には外筒29の上端部が嵌合される。除去部材収容空間255は、連通口257を通して内筒26内に連通する。
【0053】
内筒26の下端部には、キャップ27の内筒嵌合部271が嵌合される。また、キャップ27のプレート固定部273には、軸心Jに対して垂直に位置だしプレート28が取り付けられる。位置だしプレート28は、内筒の下端部を外筒29の半径方向における中央位置で保持する。外筒29の下端部は閉塞部材30により閉塞される。
【0054】
なお、実際の組立時には、まず、キャップ27のプレート固定部273が位置だしプレート28の嵌合孔281(図3)に嵌合されることにより、位置だしプレート28がキャップ27に固定される。続いて、キャップ27の内筒嵌合部271が、内筒26の下端部に嵌合される。そして、内筒26が外筒29内に挿入される。その状態で、内筒26および外筒29の上端部が、連結ケース15の内筒保持溝258および外筒保持溝259に取り付けられる。
【0055】
内筒26と外筒29との間には、活性炭充填空間39が形成される。活性炭充填空間39には、所定量の粒状の活性炭40が充填される。
【0056】
ここで、図5を用いて活性炭の充填方法について詳細に説明する。図5は、活性炭40の充填方法について説明するための工程図である。図5(a)に示すように、外筒29に図4の閉塞部材30が取り付けられていない状態で、外筒29の開口端部(図4における下端部)が上方に向けられる。内筒26の一端部(図4における下端部)は、キャップ27により閉塞されている。図5(b)に示すように、内筒26の一端部を覆うように、外筒29内に活性炭40が充填される。このとき、加振機等を用いて振動を与えつつ活性炭40を充填してもよい。
【0057】
続いて、図5(c)に示すように、外筒29の開口端部から閉塞部材30が押し込まれる。これにより、充填された活性炭40全体が押圧され、より密な状態となる。そして、図5(d)に示すように、アイロン等によって外筒29の上端部が閉塞部材30の縁部で内方に折曲され、閉塞部材30の上面に押し付けられる。これにより、閉塞部材30の脱落およびずれ等が確実に防止され、活性炭40が密な状態で維持される。
【0058】
なお、外筒29の材料として不織布を用いる場合には、閉塞部材30の外径を外筒29の内径よりも僅かに大きく設定してもよい。この場合、不織布の弾性によって閉塞部材30がより確実に固定される。
【0059】
(3)浄水器による作用
図6は、濾過カートリッジ10が内蔵された状態の浄水器1の断面図である。なお、図6においては、浄水器1を上下に分割し、それぞれの部分を図6(a)および図6(b)に示す。
【0060】
まず、浄水器1の内部構造について説明する。図6(a)および図6(b)に示すように、濾過カートリッジ10は、略円筒状のカートリッジケース1a内に収容される。カートリッジケース1aは、脱着カバー51、上部カバー52、内壁部材53、下部カバー54、内カバー55および底部材57から構成されている。
【0061】
内壁部材53は上部カバー52内に嵌合されている。上部カバー52および内壁部材53の上端部に、脱着カバー51がねじ等により接続されている。濾過カートリッジ10の交換時には、脱着カバー51が上部カバー52および内壁部材53から取り外される。脱着カバー51の上端部には、図1に示した吐水管3が軸心Jに沿って挿通されている。
【0062】
上部カバー52の下端部は天板101の上面に当接している。内壁部材53は天板101を貫通して下方に突出している。天板101の下面側において、内壁部材53にナット102が締結されている。内壁部材53の下端部には、円筒状の内カバー55が取り付けられている。内カバー55の下端部には、図1および図2に示した接続管4が接続されている。また、内カバー55を取り囲むように、内壁部材53の外周面の下端部近傍に下部カバー54が取り付けられている。下カバー53の下端部には底部材57が取り付けられている。接続管4は、底部材57を貫通して下方に延びている。
【0063】
濾過カートリッジ10の中空糸ケース22の外周面は、脱着カバー51および内壁部材53の内周面に当接している。連結ケース25の外周面は、内壁部材53の内周面に当接している。これらの当接部分は水密な状態で維持される。また、上部カバー52の内部において、中空糸ケース22の上端部に沿うように、流路P4が形成されている。
【0064】
内壁部材53の内周面には段差部53aが形成されている。この段差部53aに中空糸ケース22の下端面および連結ケース25の突条部252の下面が当接することにより、濾過カートリッジ10が支持されている。
【0065】
外筒29は、内カバー55の内方に位置している。外筒29と内カバー55との間には僅かな隙間P1が形成されている。隙間P1は、外筒29の下方において、接続管4の内部流路P2に連通している。
【0066】
次に、図6を参照しながら浄水器1による作用について説明する。なお、以下の説明においては、浄水器1により浄化される前の水道水を原水と称する。図1に示した操作レバー2の操作により電磁弁121が開かれると、給水管103(図1)を通して接続管4の内部流路P2に原水が供給される。その原水は、内カバー55内に導かれ、外筒29と内カバー55との間の隙間P1に充満する。隙間P1における水圧が高くなることにより、原水が外筒29を通して活性炭充填空間39に浸入する。活性炭充填空間39において、原水に含まれる残留塩素および異臭の原因となる有機物等が活性炭40により吸着されて除去される。
【0067】
活性炭40により濾過された原水(以下、第1浄水と呼ぶ)は、内筒26を通して内筒26内の流路P3へ導かれる。その第1浄水は、連通孔257を通して連結ケース22内の除去部材収容空間255に流入する。除去部材収容空間255においては、第1浄水がイオン除去部材23を通過することにより、第1浄水に含まれる鉛イオン等の金属イオンが除去される。
【0068】
イオン除去部材23を通過した水(以下、第2浄水と呼ぶ)は、連通口228を通して中空糸ケース22の中空糸膜収容空間226に導かれる。中空糸膜収容空間226においては、中空糸膜50により、第2浄水に含まれる細菌および鉄さび等の粒子類が除去される。中空糸膜50を通過した第2浄水は、中空糸ケース22の上部開口から流路P4を通して吐水管3内に導かれ、吐水管3の先端の吐水口3a(図1)から流し台100の洗浄部110(図1)に向けて吐水される。
【0069】
(4)活性炭の充填量
次に、活性炭充填空間39における活性炭40の充填量について詳細に説明する。図7は、活性炭40の充填量について説明するための模式図である。図7(a)に示すように、本実施の形態では、閉塞部材30により活性炭40が押圧された状態で、内筒26の下端部と閉塞部材30との間の距離L1が、内筒26と外筒29との間の半径方向の距離L2の0.5倍〜1倍となるように、活性炭40の量が調整される。この場合、コストの増大を抑制しつつより多くの原水を濾過することが可能となる。以下、その理由を説明する。なお、図7(b)には、内筒26の下端部と閉塞部材30との間の距離L1がほぼ0である場合が示される。
【0070】
浄水器1において、内カバー55(図6)内に供給された原水は、その供給圧により、活性炭充填空間39内を斜め上方に向かって浸入する。そのため、図7(b)に示すように、距離L1が短い場合には、内筒26の下端部周辺の活性炭40が有効に使用されない(図7(b)における点線領域E1参照)。
【0071】
それに対して、図7(a)に示したように、距離L1が上記の範囲に設定された場合は、原水が、位置だしプレート28と閉塞部材30との間の領域を通過して内筒26の下端部周辺の領域にも浸入する。そのため、図7(b)に示した場合と比べてより多くの活性炭40が有効に使用される。それにより、より多くの原水を濾過することが可能となる。なお、距離L1が長すぎると、位置だしプレート28と閉塞部材30との間の領域において有効に使用されない活性炭40の量が増大する。そのため、無駄なコストが生じる。
【0072】
これらにより、距離L1が上記の範囲に設定されることにより、より多くの活性炭40が効率よく有効に使用される。それにより、コストの増大を抑制しつつより多くの原水を濾過することが可能となる。
【0073】
なお、図7(c)に示すように、閉塞部材30の上面をテーパ状に形成することにより、図7(a)に示した場合と同様に、より多くの原水を濾過することが可能になるとも考えられる。しかしながら、閉塞部材30のテーパ状の部分の周辺においては、活性炭40を最密に充填することが困難となる。そのため、この場合には、図7(a)に示した場合に比べて濾過カートリッジ10の浄化能力が低下する。
【0074】
(4−a)実施例
活性炭40の充填量を種々の値に設定し、JIS S 3201に基づく残留塩素の濾過能力試験を行った。図8は、残留塩素の濾過能力試験の結果を示す図である。図8において、横軸は距離L1を示し、縦軸は濾過カートリッジ10による濾過水量を示す。ここでは、内筒26と外筒29との間の半径方向の距離L2を10mmに設定した。なお、上述のように、距離L1が大きいほど活性炭40の充填量は多い。
【0075】
図8に示すように、距離L1を5mm〜10mmの範囲に設定することにより、濾過カートリッジ10による濾過水量が増大した。なお、距離L1が10mmを超えると、閉塞部材30と内筒26との間の領域において有効に使用されない活性炭40の量が増大するため、無駄なコストが生じる。したがって、距離L1を5mm〜10mmに設定すること、すなわち、距離L1が距離L2の0.5倍〜1倍となるように、活性炭40の充填量を調整することが好ましいことがわかった。
【0076】
(5)本実施の形態の効果
本実施の形態では、内筒26の一端部がキャップ27により閉塞され、その内筒26の一端部を覆うように活性炭40が充填される。そして、閉塞部材30により活性炭40の全体を押圧しつつ活性炭充填空間39が閉塞される。これにより、活性炭40の全体が密な状態で維持されるので、水道水の原水が活性炭40の一部に偏って流れ込むことが防止される。したがって、使用される活性炭40の領域が均一に分散し、活性炭40の局所的な性能の低下が抑制される。その結果、濾過カートリッジ10の長寿命化が実現される。
【0077】
また、本実施の形態では、内筒26の下端部と閉塞部材30との間の距離L1が、内筒26と外筒29との間の半径方向の距離L2の0.5倍〜1倍となるように、活性炭40の量が調整される。これにより、水道水の原水が活性炭充填空間39を通過する際に、より多くの活性炭40が効率よく有効に使用される。したがって、コストの増大を抑制しつつより多くの原水を濾過することが可能となる。
【0078】
(6)他の実施の形態
上記実施の形態では、内筒26および外筒29の材料として不織布を用いるが、これに限定されず、通液性を有しかつ活性炭40の流出を防止することが可能な他の材料を用いてもよい。例えば、ステンレスからなる金網を多数枚重ね合わせて焼結した金網焼結フィルター、ステンレスの粉末を焼結した粉末焼結フィルター、または樹脂焼結フィルター等を用いてもよい。
【0079】
上記実施の形態では、連結ケース25内に収容されるイオン除去部材23により、原水に含まれる鉛イオン等の金属イオンが除去されるが、他の構成により金属イオンを除去してもよい。例えば、イオン交換繊維を細かく切断したものを粒状活性炭ととともに活性炭充填空間39内に充填することにより、金属イオンを除去する構成としてもよい。また、イオン交換繊維の代わりに、イオン交換用のセラミック等を用いてもよい。
【0080】
また、上記実施の形態では、外筒29の端部を閉塞部材30の上面に接触するまで内方に折曲させているが、これに限定されず、例えば図9に示すように、熱した鋳型等を用いて、外筒29の端部をテーパ状に成形してもよい。
【0081】
また、上記実施の形態では、中空糸ケース22と連結ケース25とが互いに別個の部材であるが、中空糸ケース22と連結ケース25とを一体成型し、共通の部材として用いてもよい。
【0082】
また、上記実施の形態では、内筒26および外筒29が連結ケース25により保持されるが、内筒26および外筒29を保持するための他の部材を別個に設けてもよい。
【0083】
また、上記実施の形態では、本発明をアンダーシンク型の浄水器に適用した場合について示したが、これに限定されず、例えば蛇口直結型の浄水器に本発明を適用してもよい。
【0084】
また、上記実施の形態では、水道水を浄化するために浄水器1を用いているが、これに限定されず、例えば排液等を浄化するために浄水器1を用いてもよい。
【0085】
(7)請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0086】
上記実施の形態では、連結ケース25が第1保持部材および第2収容部材の例であり、キャップ27が第1閉塞部材の例であり、閉塞部材30が第2閉塞部材の例であり、位置だしプレート28が第2保持部材の例であり、中空糸膜収容空間226が第1収容空間の例であり、中空糸ケース22が第1収容部材の例であり、除去部材収容空間255が第2収容空間の例であり、イオン除去部材23がイオン交換材料の例であり、カートリッジケース1aが収容ケースの例であり、隙間P1が第1流路の例であり、流路P4が第2流路の例である。
【0087】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、飲食店または一般家庭等において、水道水または排液等を浄化するために利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の一実施の形態に係る浄水器の外観図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る浄水器の外観図である。
【図3】浄水器に内蔵される濾過カートリッジの分解斜視図である。
【図4】濾過カートリッジの断面図である。
【図5】活性炭の充填方法について説明するための工程図である。
【図6】濾過カートリッジが内蔵された状態の浄水器の断面図である。
【図7】活性炭の充填量について説明するための模式図である。
【図8】残留塩素の濾過能力試験の結果を示す図である。
【図9】他の実施の形態について説明するための図である。
【符号の説明】
【0090】
1 浄水器
1a カートリッジケース
10 濾過カートリッジ
22 中空糸ケース
23 イオン除去部材
25 連結ケース
26 内筒
27 キャップ
28 位置だしプレート
29 外筒
30 閉塞部材
39 活性炭充填空間
40 活性炭
50 中空糸膜
100 流し台
226 中空糸膜収容空間
255 除去部材収容空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通液性を有する外筒と、
前記外筒内に挿入される通液性を有する内筒と、
前記外筒の一端部が前記内筒の一端部よりも軸方向に突出するように前記外筒の他端部および前記内筒の他端部を保持しかつ前記内筒の前記他端部の開口の位置に連通孔を有する第1保持部材と、
前記内筒の前記一端部の開口を閉塞する第1閉塞部材と、
前記内筒の前記一端部との間に間隔をおいて前記外筒の前記一端部の開口を閉塞するように前記外筒の内側に嵌め込まれる第2閉塞部材とを備え、
前記外筒の内周面、前記内筒の外周面、前記第1閉塞部材および前記第2閉塞部材により囲まれる内部空間に活性炭が充填されることを特徴とする濾過カートリッジ。
【請求項2】
前記内筒の前記一端部は前記外筒の半径方向における中央部に配置され、
前記内筒の一端部と前記第2閉塞部材との間の間隔は、前記内筒と前記外筒との間の半径方向における間隔の0.5〜1倍であることを特徴とする請求項1記載の濾過カートリッジ。
【請求項3】
前記内筒の前記一端部を前記外筒の半径方向における中央位置で保持する第2保持部材をさらに備えることを特徴とする請求項1または2記載の濾過カートリッジ。
【請求項4】
前記第1保持部材の前記連通孔から排出される液体が導かれる第1収容空間を有する第1収容部材と、
前記第1収容部材内に収容される中空糸膜とをさらに備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の濾過カートリッジ。
【請求項5】
前記第1保持部材の前記連通孔から排出される液体が導かれる第2収容空間を有する第2収容部材と、
前記第2収容部材内に収容されるイオン交換材料とをさらに備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の濾過カートリッジ。
【請求項6】
前記第1保持部材および前記第2収容部材は一体的に形成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の濾過カートリッジ。
【請求項7】
前記内筒は不織布からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の濾過カートリッジ。
【請求項8】
前記外筒は不織布からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の濾過カートリッジ。
【請求項9】
前記外筒の前記一端部は、内方に折曲されることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の濾過カートリッジ。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の濾過カートリッジと、
液体入口および液体出口を有し、前記濾過カートリッジを収容する収容ケースとを備え、
前記収容ケース内に、前記収容ケースの前記液体入口から供給される液体を前記外筒の外周領域に導く第1流路と、前記濾過カートリッジの前記第1保持部材の連通孔から排出される液体を前記液体出口に導く前記第2流路とが形成され、前記第1流路と前記第2流路とが分離されたことを特徴とする浄水器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−194596(P2008−194596A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−31193(P2007−31193)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】