説明

火力発電プラント

【課題】蒸気タービンの出力や効率の低下を抑制するために、太陽熱を集熱して蒸気を発生し、その蒸気を火力発電所の補助蒸気として活用する補助蒸気系統を備えた火力発電システムを提供する。
【解決手段】化石燃料を焚いて蒸気を生成する主ボイラ1と、該主ボイラ1で生成した蒸気で駆動する蒸気タービンと、該蒸気タービンを駆動した蒸気を復水する復水器5と、復水器5から出た復水を主ボイラ1に供給する給水系統と、蒸気タービンから抽気した蒸気を用いて駆動する補助機器とを有する蒸気タービン設備と、太陽熱を用いて熱媒体を加熱する太陽熱集熱装置とを備えた火力発電プラントにおいて、給水系統から抜き出した給水の一部を太陽熱集熱装置で加熱して補助蒸気を生成し、この補助蒸気を補助機器に駆動用蒸気として供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電プラント、特にボイラと蒸気タービンと太陽熱集熱装置とを有する火力発電プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に火力発電プラントは、主な構成機器として、石炭等の化石燃料を焚いて給水を加熱し、蒸気を生成する主ボイラと、主ボイラで生成した蒸気で駆動する蒸気タービンと、蒸気タービンを駆動した蒸気を復水する復水器と、復水器で復水化した復水を主ボイラに給水として供給する給水系統と、蒸気タービンから取り出した動力で発電する発電機とを有する蒸気タービン設備を備える。
【0003】
また、上述した従来の蒸気タービン設備では、給水系統に給水を加熱する給水加熱器を設け、この給水加熱器に蒸気タービンから抽気した抽気蒸気を導き、この抽気蒸気で給水を加熱している。
【0004】
またさらに、蒸気タービン設備に太陽熱集熱装置を併設した火力発電プラントが提案されている(特許文献1参照)。この火力発電プラントは、蒸気タービン設備の給水加熱器に太陽熱集熱装置を併設するものである。即ち、太陽熱集熱装置で太陽熱にて熱媒体を加熱し、高温となった熱媒体を主ボイラに供給する給水の一部と熱交換させることで、太陽熱を蒸気タービンの熱サイクルに取り込むものである。
【0005】
一方、上記のような蒸気タービン設備を備える火力発電プラントでは、蒸気タービン設備を稼動させるために多種多様な補助機器類を要する。これらの補助機器類のなかには、蒸気を利用して駆動するものがあり、例えば、復水器の真空度を常時保つために、復水器内の空気を復水器外に抽出する蒸気式空気抽出器(別名エジェクターまたは、ジェットポンプ)が広く用いられている(例として特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭51−4429号公報
【特許文献2】特許第4579479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の太陽熱を利用する発電システムでは、給水を太陽熱集熱装置の熱媒体と熱交換して予熱し、温度上昇した給水を蒸気タービン設備の給水系統に戻し、主ボイラに供給している。この構成によれば、給水加熱器への抽気蒸気の供給量を減らすことができ、出力と効率とを向上させることができる。
【0008】
しかしながら、従来の方式は、太陽熱エネルギーの用途が、給水の予熱に留まるため、太陽熱エネルギーの蒸気タービン設備に対する用途は限られてしまい、出力と効率の向上効果も限定的である。
【0009】
また、従来の給水を太陽熱集熱装置の熱媒体と熱交換して予熱し、温度上昇した給水を蒸気タービン設備の給水系統に直接戻す蒸気タービンヒートサイクルでは、天気の変化により太陽熱回収熱量が変動し、蒸気タービンサイクルへの回収蒸気流量が時事刻々変化することによる、蒸気タービン出力制御が困難となる課題がある。
【0010】
さらに、電力系統が弱い地域に送電する場合、蒸気タービン出力制御と同時に系統周波数を一定に制御することが困難となる。
【0011】
そこで、本発明の目的は、蒸気タービン設備における太陽熱エネルギーの用途の範囲を広げ、蒸気タービンの出力と効率を向上させるとともに、天候の変化による蒸気タービンの出力の変動を小さくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は、化石燃料を焚いて蒸気を生成するボイラと、該ボイラで生成した蒸気で駆動する蒸気タービンと、該蒸気タービンを駆動した蒸気を復水する復水器と、復水器から出た復水をボイラに供給する給水系統と、蒸気タービンから抽気した蒸気を用いて駆動する補助機器とを有する蒸気タービン設備と、太陽熱を用いて熱媒体を加熱する太陽熱集熱装置とを備えた火力発電プラントにおいて、給水系統から抜き出した給水の一部と太陽熱集熱装置で加熱した熱媒体とを熱交換させて補助蒸気を生成し、該補助蒸気を補助機器に駆動用蒸気として供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、太陽熱エネルギーを用いて給水系統から抜き出した一部の給水から蒸気を生成し、生成した蒸気を蒸気タービン設備の補助蒸気として活用することで、蒸気タービン設備における太陽熱エネルギーの用途の範囲を広げることができる。その結果、主ボイラが発生した蒸気の一部または所内ボイラの発生蒸気を補助蒸気として使用する割合が大幅に下がり、その分蒸気タービンの出力増加や発電効率の向上に回せることができる。
【0014】
また、本発明では、間接的に蒸気タービンヒートサイクルに蒸気を提供する。すなわち、ボイラ給水を太陽熱で加熱し蒸気タービンヒートサイクルの補助蒸気として間接的に太陽熱由来の蒸気を蒸気タービンヒートサイクルの中で利用する。これにより天気の変化による、太陽熱由来の補助蒸気発生量の変動はボイラ本体由来の補助蒸気抽気量の加減により補償できる。この結果、蒸気タービン出力の変動を少なくできる。
【0015】
よって、本発明によれば蒸気タービン設備に対する太陽熱エネルギーの利用範囲を広げ、蒸気タービンの出力と効率を向上させることができるとともに、天候の変化による蒸気タービンの出力の変動を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例に係る火力発電プラントのシステム系統を説明する概略図である。
【図2】図1に記載の火力発電プラントの制御系統を説明した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
一般に、蒸気タービン設備を備える火力発電プラントでは、蒸気タービン設備を稼動させるために多種多様な補助機器類を要する。これらの補助機器類のなかには、蒸気を利用して駆動するものがあり、従来は、主ボイラが発生した蒸気の一部または所内ボイラの発生蒸気を駆動用蒸気として用いていた。
【0018】
ところで、従来の太陽熱エネルギーをボイラ給水の予熱に利用する方式では、予熱後の給水を給水系統に戻す必要がある。そのため、給水は液体のままで留まるため、蒸気を利用して駆動する補助機器の駆動源に用いたりすることができない。その結果、蒸気タービン設備に対する太陽熱エネルギーの利用範囲は限定的となる。
【0019】
本発明は、給水の予熱に留まらず、給水の一部を太陽熱エネルギーを利用して積極的に蒸気とし、さらに蒸気を蒸気タービン設備の補助蒸気として活用することで、蒸気タービン設備に対する太陽熱エネルギーの利用範囲を広げるものである。本発明の実施例について図を用いて以下に説明する。
【実施例1】
【0020】
図1に本実施例に係る火力発電プラントのシステム系統の概略図を示す。本実施例の火力発電プラントは、主要な構成要素として、蒸気タービン設備と太陽熱集熱装置とを備える。
【0021】
蒸気タービン設備は、その主な構成要素として、石炭等の化石燃料を焚いて給水を加熱し蒸気を生成する主ボイラ1と、主ボイラ1で生成した蒸気で回転駆動する蒸気タービンと、蒸気タービンを回転駆動した蒸気を凝縮して復水する復水器5と、復水器5から出た復水を主ボイラ1に供給する給水系統と、蒸気タービンの回転力を電力に変換する発電機4とを備える。蒸気タービンは、高圧タービン2と、中低圧タービン3とを備える。なお中低圧タービン3は、中圧タービンと低圧タービンとに別体で構成されていても良い。
【0022】
復水器5は循環水取水槽90から循環水ポンプ91を使って冷却水を取り出す。冷却水は、循環水入口配管92を通過して復水器5に送られ、低圧タービン排気蒸気を冷却して復水に戻す。復水器5を出た冷却水は循環水出口配管93を通過して循環水排水槽94に流入する。
【0023】
また、給水系統は、復水器5から主ボイラ1に向って順に、復水ポンプ6と、互いに並列に設置されたインタークーラ97及びアフタークーラ98と、低圧給水加熱器18と、脱気器44と、ボイラ給水ポンプ50と、高圧給水加熱器51a,51b,51cとを有する。低圧給水加熱器18および脱気器44には、中低圧タービン3から抽気された抽気蒸気が加熱源として供給されている。また、高圧給水加熱器51には、高圧タービン2から抽気された抽気蒸気が加熱源として供給されている。なお、低圧および高圧給水加熱器の設置数は図示したものに限定されない。
【0024】
給水系統から主ボイラ1に供給された給水は、主ボイラ1内に設置されたボイラ1次過熱器57,ボイラ2次過熱器58を順次通過する際に加熱され、気化して蒸気となる。主ボイラ1で生成された蒸気は、主蒸気配管80を流下して高圧タービン2に供給され、高圧タービン2を回転駆動させる。高圧タービン2を回転駆動した蒸気は、再度主ボイラ1に戻されボイラ再熱器82で加熱され、再熱蒸気として高温再熱蒸気配管83を流下して中低圧タービン3に供給される。中低圧タービン3に供給された蒸気は、中低圧タービン3を回転駆動した後、復水器5に導かれ、冷却されて凝縮し、復水化する。復水器5で復水化された復水は、復水ポンプ6に供給され昇圧された後、主空気抽出器入口復水配管7を流下する。主空気抽出器入口復水配管7は、途中でインタークーラ入口空気配管7aと、アフタークーラ入口空気配管7bとに分岐しており、主空気抽出器入口復水配管7を流下した復水は、インタークーラ入口空気配管7aと、アフタークーラ入口空気配管7bとに夫々流入し、インタークーラ97とアフタークーラ98とに供給され加熱される。インタークーラ97とアフタークーラ98を出た復水は合流し、低圧給水加熱器入口復水配管17を流下して低圧給水加熱器18,脱気器44に導入される。低圧給水加熱器18,脱気器44で順次加熱された復水は、給水として高圧給水加熱器51a,51b,51cに導入され順次加熱されて昇温し、その後主ボイラ1に給水として導入される。
【0025】
さらに本実施例の蒸気タービン設備は、蒸気タービン設備の作動に必要な補助蒸気を生成する所内ボイラ107を備える。
【0026】
また、本実施例の蒸気タービン設備は、蒸気タービンから抽気した蒸気を用いて駆動する補助機器として1段目主空気抽出器13と、2段目主空気抽出器15と、起動空気抽出器12とを備える。
【0027】
1段目主空気抽出器13と、2段目主空気抽出器15は、復水器5内の真空度を保つために、エジェクター効果にて復水器5内の空気を復水器外に抽出する機器である。この1段目主空気抽出器13と、2段目主空気抽出器15には駆動蒸気として主ボイラ1で生成した主蒸気、または所内ボイラ107で生成した補助蒸気が供給される。主蒸気配管80を流下する主蒸気の一部は、主蒸気配管80から分岐する主空気抽出器駆動蒸気取り出し配管85,減圧弁入口配管7cを流下し、減圧弁79で減圧された後、1段目主空気抽出器13と、2段目主空気抽出器15に夫々供給される。
【0028】
また、所内ボイラ107で生成された補助蒸気は、所内ボイラ出口弁108,補助蒸気配管109を流下して一度補助蒸気母管110に供給された後、補助蒸気母管110から配管38,減圧弁入口配管7c,減圧弁79を流下して1段目主空気抽出器13と、2段目主空気抽出器15とに夫々供給される。
【0029】
1段目主空気抽出器13のエジェクター効果により復水器5から抽出された空気は、配管9を流下して1段目主空気抽出器13に導かれ、1段目主空気抽出器13で水蒸気との混合気体となって、さらに配管95を流下してインタークーラ97に流入する。インタークーラ97に流入した混合気体は、復水との熱交換によって冷却された後、インタークーラ97をでて配管14を通過して2段目主空気抽出器15に導かれる。2段目主空気抽出器15に導かれた混合気体は、水蒸気と混合された後、配管96を通過してアフタークーラ98に流入する。アフタークーラ98に流入した混合気体の水蒸気分は、復水との熱交換によって冷却されてドレンとなって配管105を通過して復水器5に回収される。一方、復水器5から抽出された空気は、アフタークーラ98からアフタークーラ出口空気配管16を通過して大気に戻される。
【0030】
起動空気抽出器12は、蒸気タービンの起動時にエジェクター効果により復水器5内にある空気を復水器5外に取り出す補助機器である。この起動空気抽出器12は、補助蒸気配管71,配管39を介して補助蒸気母管110と繋がっており、駆動用蒸気として所内ボイラ107で生成した補助蒸気が供給される。
【0031】
蒸気タービン起動の際に、所内ボイラ107で生成した補助蒸気が起動空気抽出器12に供給され、起動空気抽出器12が駆動する。起動した起動空気抽出器12のエジェクター作用により、復水器5内の空気が復水器空気抽出器配管9,起動空気抽出器入口空気抽出配管10,起動空気抽出器12を順次通過し、起動空気抽出器出口消音器69に送られ大気中に排出される。これにより蒸気タービン起動時の復水器5の真空度が上昇する。
【0032】
その他にも、補助蒸気母管110からはタ−ビン補助蒸気分岐配管37にて補助蒸気が取り出され、補助蒸気は、タ−ビン補助蒸気弁45を抜けてタ−ビン補助蒸気圧力調整弁46を通過した後タービン補助蒸気系へ流れる。その後、補助蒸気は、タービン各機器の補助蒸気、例えばタービングランドシールや復水脱塩装置の再生用蒸気などのタービン補助蒸気として用いられる。
【0033】
同様に、補助蒸気母管110からはボイラ補助蒸気分岐配管36にて補助蒸気が取り出され、補助蒸気は、ボイラ補助蒸気弁65を抜けてボイラ補助蒸気圧力調整弁66を通過した後ボイラ補助蒸気系へ流れる。その後、補助蒸気は、ボイラ各機器の補助蒸気、例えばボイラスートブロワ蒸気や、バーナアトマイズ蒸気、または重油加熱用蒸気などのボイラ補助蒸気として用いられる。
【0034】
また、火力発電所起動時に必要となる脱気器44の加熱用の補助蒸気も同様に補助蒸気母管110から脱気器補助蒸気分岐配管40を使って取り出し、脱気器補助蒸気弁42を流下して、次に脱気器補助蒸気圧力調整弁43通過して脱気器44に供給される。
【0035】
補助蒸気母管110には、所内ボイラ107の他に、主ボイラ1からも補助蒸気が供給される。主ボイラ1は、ボイラ補助蒸気取り出し配管74,ボイラ補助蒸気供給配管77と介して補助蒸気母管110と接続しており、火力発電プラント通常運用時は、主ボイラ1から補助蒸気が補助蒸気母管110に供給される。
【0036】
次に、本実施例の太陽熱集熱装置について説明する。
【0037】
本実施例の太陽熱集熱装置は、主な構成要素として太陽熱集熱装置本体22と、熱媒体熱交換器20と、熱媒体冷却器26と、熱媒体循環系統113とを備える。
【0038】
太陽熱集熱装置本体22は、主な構成要素として太陽熱集熱鏡を有するが、太陽熱集熱鏡の型式としてはトラフ式,タワー式,フレネル式等数種類あるが、本実施例ではどの型式の太陽熱集熱鏡にも対応できる。図1の例はフレネル型をモデル化している。また熱媒体循環系統113内を流れる熱媒体は、溶融塩または油を成分とする。
【0039】
本実施例では、太陽熱集熱鏡で集めた太陽熱で熱媒体循環系統113内を流れる熱媒体を加熱する。太陽熱集熱装置本体22で加熱され高温となった熱媒体は、圧力調整弁23,弁24aを通過して熱媒体熱交換器20に導入される。熱媒体熱交換器20に導入された熱媒体は、給水系統から供給された復水または給水の一部と熱交換して冷却される。
【0040】
万一、熱媒体熱交換器20に異常が発生した場合に備えて、本実施例では、熱媒体熱交換器20をバイパスするバイパス系統114を熱媒体循環系統113に設けている。またバイパス系統114の下流側に熱媒体冷却器26を設けている。熱媒体熱交換器20をバイパス運用する際には、バイパス系統114に設けられたバイパス弁25を開け、熱媒体熱交換器20の上流側,下流側の熱媒体循環系統113に設けられた弁24aと弁24bを閉める。次に弁27を開けて冷却水を熱媒体冷却器26に供給し弁28を開けて太陽熱エネルギーを系外に排出する。
【0041】
熱媒体冷却器26を通過した熱媒体は、太陽熱集熱装置本体22に熱媒体循環ポンプ21にて送られる。以上が本実施例の太陽熱集熱装置の主な構成である。
【0042】
本実施例の火力発電プラントは、蒸気タービン設備の給水系統から抜き出した復水または給水の一部を太陽熱集熱装置に導入し、加熱させて補助蒸気を生成し、この補助蒸気を補助機器に作動用蒸気として供給する補助蒸気供給系統を備える。
【0043】
補助蒸気供給系統は、復水ポンプ6で昇圧された復水の一部を主空気抽出器入口復水配管7から取り出す送水管8と、送水管8と熱媒体熱交換器20とを接続する給水配管112と、ボイラ給水ポンプ50で昇圧された給水の一部を給水系統から取り出して、給水配管112に合流させる送水管111と、熱媒体熱交換器20と太陽熱発生補助蒸気汽水分離器100とを接続する配管30と、太陽熱発生補助蒸気汽水分離器100から蒸気を補助蒸気母管110に導入する蒸気配管102,補助蒸気供給配管34と、補助蒸気供給配管34を流下する蒸気の一部を、高圧タービン2から高圧給水加熱器51へ抽気蒸気を供給する高圧蒸気タービン抽気配管61に合流させる蒸気配管63と、太陽熱発生補助蒸気汽水分離器100で分離した水分を復水器5に導入するドレン配管104とを備える。なお、熱媒体熱交換器20へ脱気器44から取り出したボイラ給水を送水する方法として、ボイラ給水ポンプ50と並列に小型専用給水ポンプ(図示せず)を設置しても良い。または、ボイラ給水ポンプ50の吸い込み側に設置されるボイラ給水ポンプ50の専用昇圧ポンプ(図示せず)を設置して本ポンプから、熱媒体熱交換器20へボイラ給水を送水できる。
【0044】
図2は図1に示した本実施例に係る火力発電プラントの補助蒸気ローカル制御の説明図である。主空気抽出器駆動蒸気検出計79pにて検出された圧力信号により、主空気抽出器駆動蒸気減圧弁79の出口圧力を制御することにより、1段目主空気抽出器13と2段目主空気抽出器15の駆動蒸気圧力制御を行う。
【0045】
タ−ビン補助蒸気圧力検出計46pにてタービン補助蒸気圧力を検出して、タ−ビン補助蒸気圧力調整弁46の弁解度を制御してタ−ビン補助蒸気圧力調整弁46の出口圧力をタービン補助蒸気系統が必要とする圧力制御を行う。
【0046】
ボイラ補助蒸気圧力検出計66pにてボイラ補助蒸気圧力を検出して、ボイラ補助蒸気圧力調整弁66の弁解度を調整してボイラ補助蒸気圧力調整弁66の出口圧力をボイラ補助蒸気系統が必要とする圧力制御を行う。
【0047】
脱気器補助蒸気圧力検出計43pにて脱気器44が必要とする補助蒸気圧力を検出して、脱気器補助蒸気圧力調整弁43の弁解度を調整して脱気器補助蒸気圧力調整弁43の出口圧力を脱気器44が必要とする圧力制御を行う。
【0048】
熱媒体熱交換器出口高温水圧力検出計32pにて圧力を検出して、熱媒体熱交換器出口高温水圧力調整弁32の弁解度を調整して太陽熱発生補助蒸気汽水分離器100に適合した同汽水分離器の圧力制御を行い汽水分離を行い飽和蒸気とドレンに分離する。
【0049】
太陽熱発生補助蒸気汽水分離器出口圧力検出器101pにて補助蒸気母管110が必要とする補助蒸気圧力を検出して、太陽熱発生補助蒸気汽水分離器出口圧力調整弁101の弁解度を調整して補助蒸気圧力制御を行う。
【0050】
ボイラ補助蒸気圧力検出計76pにて補助蒸気母管110が必要とする補助蒸気圧力を検出して、ボイラ補助蒸気圧力調整弁76の弁解度を調整して補助蒸気母管110の圧力制御を行う。
【0051】
以上が本実施例の火力発電プラントの主な構成である。次に本実施例の火力発電プラントの作用効果について説明する。
【0052】
火力発電プラント起動時は、まず所内ボイラ107を起動して補助蒸気を発生させ、この補助蒸気を、所内ボイラ出口弁108,補助蒸気配管109を通して補助蒸気母管110へ導入する。
【0053】
火力プラント通常運用時には高圧第3給水加熱器出口ボイラ給水配管56を通過したボイラ給水は節炭器(図示せず)や火炉やドラムを通過してボイラ1次過熱器57に導入される。ボイラ1次過熱器57を通過したボイラ発生蒸気の一部をボイラ補助蒸気取り出し配管74にて取り出しボイラ補助蒸気弁75を流下して、ボイラ補助蒸気圧力調整弁76を通過し、ボイラ補助蒸気供給配管77にて補助蒸気母管110へ供給する。
【0054】
本発明では、これら2箇所の補助蒸気供給源に加え太陽熱で発生した蒸気も補助蒸気母管110へ導入され補助蒸気として有効活用される。
【0055】
復水ポンプ6で昇圧された復水の一部を送水管8で取り出し送水弁68を流下して給水配管112を通過し弁29を通過して熱媒体熱交換器20に導入する。またはボイラ給水ポンプ50から主ボイラ1に送水される主ボイラ1の給水の一部を送水管111にて取り出し弁67を流下して給水配管112を通過し弁29を通過して熱媒体熱交換器20に導入する。
【0056】
熱媒体熱交換器20にて太陽熱から熱エネルギーをもらい高温となった熱媒体により、給水は加熱され高温かつ高圧の汽水混合物となって熱媒体熱交換器出口高温水配管30から出てくる。さらに、この汽水混合物は弁31を流下して、次に圧力調整弁32を通過して太陽熱発生補助蒸気汽水分離器100に流入し、ここで汽水混合物は減圧され飽和蒸気成分と飽和ドレン成分に分離される。この飽和蒸気成分は圧力調整弁101を流下して、蒸気配管102を通過し一部は蒸気配管33を流下して蒸気弁35を通過して蒸気配管63により配管64に導入される。配管64を出た加熱蒸気は高圧給水加熱器51bに流入しボイラ給水を加熱する。
【0057】
一方、蒸気配管102を通過した補助蒸気は蒸気供給配管34を通過して補助蒸気母管110に流入し、主空気抽出器,起動空気抽出器,タービン補助蒸気,ボイラ補助蒸気等の補助蒸気として活用される。太陽熱発生補助蒸気汽水分離器100のドレンはドレン弁103を流下してドレン配管104を通過して復水器5へ流れる。
【0058】
図1で示した例では、高圧タービン2から2箇所および中低圧タービン3から1箇所抽気された抽気により高圧給水加熱器51aと高圧給水加熱器51bと高圧給水加熱器51cを加熱するタービン抽気構成のケースを表示している。太陽熱から取り出した補助蒸気は、高圧給水加熱器51bにて熱交換した後でドレンとなり、ドレン配管52を流下して水位調整弁53を通過して高圧給水加熱器51aに導入される。高圧給水加熱器51aを出たドレンは水位調整弁54を通過して脱気器44に熱回収される。低圧給水加熱器18のドレンは低圧給水加熱器ドレン配管59を通過して復水器5へ回収される。
【0059】
従来の火力発電所では発電所専用の所内ボイラを設置して火力発電所を起動する。即ち、所内ボイラを最初に起動してボイラやタービン起動に必要となる補助蒸気を確保しプラントが起動したら自らのボイラ発生蒸気に切り替えていた。
【0060】
しかし、本実施例は補助蒸気供給系統を備えることにより、給水の予熱に留まらず、給水の一部を太陽熱エネルギーを利用して積極的に蒸気とし、さらに蒸気を蒸気タービン設備の補助蒸気として起動時から活用できる。さらに起動完了後の通常運転においても、太陽熱回収により蒸気を発生させ、その蒸気を火力プラント通常運転中のボイラまたはタービンプラントが要求する補助蒸気として活用できる。
【0061】
通常プラント運転中にボイラプラントが必要とする補助蒸気としてボイラスートブロワ蒸気,ボイラバーナアトマイズ蒸気,重油加熱器蒸気,蒸化器用加熱蒸気、等がある。またタービンプラントが必要とする補助蒸気として空気抽出器駆動蒸気,タービングランドシール蒸気,起動時の脱気器の加熱用蒸気がある。これら各機器が必要とする補助蒸気の一部を、太陽熱回収により生れる蒸気にてまかなえれば大幅な発電効率の改善や発電単価の節減効果が生まれ、同時に火力発電所から出す二酸化炭素発生量も下げられる。
【0062】
火力発電所で使用される復水器の主空気抽出器の駆動蒸気としては一般的に主蒸気を減圧して用いる。しかし、本実施例では、太陽熱で生じた蒸気を主空気抽出器の駆動蒸気源として活用できるので、従来では主空気抽出器の駆動蒸気源としていた主蒸気を減圧しないで、蒸気タービンの飲み込み蒸気として使用できるので蒸気タービンの出力向上や性能向上が達成できる。また、主空気抽出器の代わりに復水器真空ポンプを使用していた場合、復水器真空ポンプを主空気抽出器に代えてその動力源を太陽熱から発生させた蒸気を用いることで、復水器真空ポンプの駆動動力の節約効果が生れる。さらに、太陽熱から発生させた蒸気を用いた主空気抽出器で復水器真空ポンプよりも復水器真空度をより真空側に上げることにより、蒸気タービンの出力増加や効率改善効果も生じる。
【0063】
よって、通常運用時の給水の予熱に留まらず、起動時,通常運用時を通して蒸気タービン設備に対する太陽熱エネルギーの利用範囲を広げることができ、蒸気タービンの出力と効率を向上させることができる。
【0064】
また補助蒸気を、高圧給水加熱器の抽気蒸気の一部として活用することもできる。
【0065】
また、従来の給水を太陽熱集熱装置の熱媒体と熱交換して予熱し、温度上昇した給水を蒸気タービン設備の給水系統に直接戻す蒸気タービンヒートサイクルでは、天気の変化により太陽熱回収熱量が変動し、蒸気タービンサイクルへの回収蒸気流量が時事刻々変化することによる、蒸気タービン出力制御が困難となる課題がある。さらに、電力系統が弱い地域に送電する場合、蒸気タービン出力制御と同時に系統周波数を一定に制御することが困難となる。一方、本発明では、蒸気タービンサイクルに間接的に蒸気タービンヒートサイクルに蒸気を提供する。すなわち、ボイラ給水を太陽熱で加熱し蒸気タービンヒートサイクルの補助蒸気として間接的に太陽熱由来の蒸気を蒸気タービンヒートサイクルの中で利用する。例えば、復水器の主空気抽出機の駆動蒸気として間接的にこの蒸気活用する。すなわち、ボイラ本体からの補助蒸気も復水器の主空気抽出機の駆動蒸気として使う為に、天気の変化による、太陽熱由来の補助蒸気発生量の変動はボイラ本体由来の補助蒸気抽気量の加減により常に補償される。この結果、復水器の真空度が保たれ蒸気タービン出力の変動を少なくできる。
【0066】
火力発電の一形態である汽力発電所における、補助蒸気の蒸気発生源として自らのボイラ蒸気発生系統からの抽気蒸気と、所内ボイラ発生蒸気と、太陽熱集熱装置で太陽熱エネルギーにより発生した水蒸気を活用した火力発電所の補助蒸気系統の例を説明した。なお、汽力発電所の代わりにガスタービンと蒸気タービンを用いた複合発電所の補助蒸気システムの場合でも同様である。また、給水を太陽熱エネルギー回収の熱媒体として直接的に用いて、熱媒体熱交換器20を不要として活用するシステムでも同様である。
【符号の説明】
【0067】
1 主ボイラ
2 高圧タ−ビン
3 中低圧タ−ビン
4 発電機
5 復水器
6 復水ポンプ
12 起動空気抽出器
13 1段目主空気抽出器
15 2段目主空気抽出器
18 低圧給水加熱器
20 熱媒体熱交換器
21 熱媒体循環ポンプ
22 太陽熱集熱装置本体
26 熱媒体冷却器
44 脱気器
50 ボイラ給水ポンプ
51a,51b,51c 高圧給水加熱器
57 ボイラ1次過熱器
58 ボイラ2次過熱器
69 起動空気抽出器出口消音器
82 ボイラ再熱器
97 インタークーラ
98 アフタークーラ
107 所内ボイラ
110 補助蒸気母管
113 熱媒体循環系統
114 バイパス系統

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化石燃料を焚いて蒸気を生成するボイラと、該ボイラで生成した蒸気で駆動する蒸気タービンと、該蒸気タービンを駆動した蒸気を復水する復水器と、該復水器から出た復水を前記ボイラに供給する給水系統と、前記蒸気タービンから抽気した蒸気を用いて駆動する補助機器とを有する蒸気タービン設備と、太陽熱を用いて熱媒体を加熱する太陽熱集熱装置とを備えた火力発電プラントであって、
前記給水系統から抜き出した給水の一部と前記太陽熱集熱装置で加熱した前記熱媒体とを熱交換させて補助蒸気を生成し、前記補助蒸気を前記補助機器に駆動用蒸気として供給する補助蒸気供給系統を備えたことを特徴とする火力発電プラント。
【請求項2】
請求項1に記載の火力発電プラントにおいて、
前記蒸気タービン設備は、前記補助機器として前記復水器内の空気を抽出する主空気抽出器を備えることを特徴とする火力発電プラント。
【請求項3】
請求項2に記載の火力発電プラントにおいて、
前記給水系統は、前記復水器から出た復水を昇圧する復水ポンプと、前記蒸気タービンから抽気した抽気蒸気で復水を加熱する低圧給水加熱器と、復水を脱気する脱気器と、脱気器出口ボイラ給水を昇圧するボイラ給水ポンプと、前記蒸気タービンから抽気した抽気蒸気でボイラ給水ポンプ出口給水を加熱する高圧給水加熱器とを備え、
前記補助蒸気供給系統は、前記補助蒸気を前記蒸気タービンから抽気した抽気蒸気と共に前記高圧給水加熱器に供給することを特徴とする火力発電プラント。
【請求項4】
請求項3に記載の火力発電プラントにおいて、
前記蒸気タービン設備は、前記補助蒸気供給系統から供給された前記補助蒸気を、ボイラ補助蒸気として用いることを特徴とする火力発電プラント。
【請求項5】
請求項3に記載の火力発電プラントにおいて、
前記蒸気タービン設備は、前記補助蒸気供給系統から供給された前記補助蒸気をタービン機器の補助蒸気として用いることを特徴とする火力発電プラント。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−189008(P2012−189008A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53692(P2011−53692)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)