説明

火山噴出物加工粉体の固形成形方法

【課題】本発明方法で成形される固形成形物で二酸化炭素を有効に吸着すること。
【解決手段】火山噴出物の発泡粒子に珪酸ソーダ濃厚水溶液を添加・混練してなる混練物中へ炭酸ガスを注入して得られた火山噴出物発泡粒子集塊物を粉状に精製し、得られた噴出物加工粉体に有機溶剤を含まない水溶性バインダーを添加混練した後、粒状に、又は型枠により所望形状に成形し、この成形物に、上記噴出物加工粉体が潜在的に有する二酸化炭素吸着能を顕在化させたことを特徴とする火山噴出物加工粉体の固形成形方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火山噴出物のシラス細粒を加熱して発泡させた、いわゆるシラスバルーンの用途開発に関するものである。
【背景技術】
【0002】
いわゆるシラスバルーンを加工した技術が特許第2958560号(参考文献1)に開示されている。この技術は、「多数の火山噴出物の発泡粒子に珪酸ソーダ濃厚水溶液(水ガラス)を添加・混練してなる混練物中へ炭酸ガスを注入して得られたことを特徴とする軽量で高い強度の火山噴出物発泡粒子集塊物。」というものである。
【0003】
そして、上記発明によると、固化(硬化)時間が短く、乾燥時間や養生時間も殆んど不要なため、製品の製造時間が非常に短縮される等の効果を奏している。
【0004】
【特許文献1】 特許第2958560号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、温室効果ガスの温度上昇による地球温暖化現象が問題視されているが、その原因の大半が二酸化炭素の増加にあるともいわれている。そこで、二酸化炭素を削減すべく、国家レベルや個人レベルでの研究が行われるようになってきている。
他方、本発明者等は、上記特許発明の火山噴出物発泡粒子集塊物を長年に亘り観察してきたところ、最近になって、該集塊物に二酸化炭素吸着能と吸放湿機能があることを偶然に知得した。
そこで発明者等は、これらの機能を何かの形で生かせないかを模索していたところ、上記特許発明を利用することで、二酸化炭素の削減が図れ、少しでも地球温暖化に歯止めを掛けることができるのではないかとの思考に思い至り、本発明方法に辿り着いた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明方法は、火山噴出物の発泡粒子に珪酸ソーダ濃厚水溶液を添加・混練してなる混練物中へ炭酸ガスを注入して得られた火山噴出物発泡粒子集塊物を粉状に精製し、得られた噴出物加工粉体に有機溶剤を含まない水溶性バインダーを添加混練した後、粒状に、又は型枠により所望形状に成形し、この成形物に、上記噴出物加工粉体が潜在的に有する二酸化炭素吸着能を顕在化させたことを特徴とする火山噴出物加工粉体の固形成形方法である。
【0007】
また、火山噴出物の発泡粒子に珪酸ソーダ濃厚水溶液を添加・混練してなる混練物中へ炭酸ガスを注入して得られた火山噴出物発泡粒子集塊物を粉状に精製し、得られた噴出物加工粉体に有機溶剤を含まない水溶性バインダーを添加混練した後、粒状に、又は型枠により所望形状に成形し、この成形物に、上記噴出物加工粉体が潜在的に有する吸放湿機能を顕在化させたことを特徴とする火山噴出物加工粉体の固形成形方法である。
【0008】
さらに、火山噴出物の発泡粒子に珪酸ソーダ濃厚水溶液を添加・混練してなる混練物中へ炭酸ガスを注入して得られた火山噴出物発泡粒子集塊物を粉状に精製し、得られた噴出物加工粉体に有機溶剤を含まない水溶性バインダーを添加混練した後、粒状に、又は型枠により所望形状に成形し、この成形物に、上記噴出物加工粉体が潜在的に有する遠赤外線放出機能を顕在化させたことを特徴とする火山噴出物加工粉体の固形成形方法である。
【0009】
さらに、火山噴出物の発泡粒子に珪酸ソーダ濃厚水溶液を添加・混練してなる混練物中へ炭酸ガスを注入して得られた火山噴出物発泡粒子集塊物を粉状に精製し、得られた噴出物加工粉体に有機溶剤を含まない水溶性バインダーを添加混練した後、粒状に、又は型枠により所望形状に成形し、この成形物に、上記噴出物加工粉体が潜在的に有する二酸化炭素吸着能及び吸放湿機能を顕在化させたことを特徴とする火山噴出物加工粉体の固形成形方法である。
【0010】
さらにまた、本発明方法は、火山噴出物の発泡粒子に珪酸ソーダ濃厚水溶液を添加・混練してなる混練物中へ炭酸ガスを注入して得られた火山噴出物発泡粒子集塊物を粉状に精製し、得られた噴出物加工粉体に有機溶剤を含まない水溶性バインダー及びVOC吸着剤を添加混練した後、粒状に、又は型枠により所望形状に成形し、この成形物に、上記噴出物加工粉体が潜在的に有する二酸化炭素吸着能及び吸放湿性能を顕在化させるとともに、VOC吸着性能をも付与したことを特徴とする火山噴出物加工粉体の固形成形方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明方法によると、得られた固形成形物により、二酸化炭素を有効に吸着することができ、外気の状態により吸湿・放湿を効果的に行うことができた。また、上記効果に加え、ホルムアルデヒド等のVOCをも効果的に吸着することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明方法では、火山噴出物加工粉体100に対し、有機溶剤を含まない水溶性バインダー80〜120で混練し、この混練物を型枠に流し込み、乾燥させることで固形成形物を得ることができる。また、混練物をビーズ状に成形し、乾燥させてもよい。このような固形成形物は、型枠を変えることで、所望する様々な形態、例えば、インテリア小物、日用雑貨等に加工することができる。また、ビーズ状に成形したものは、通気性のある布、不織布あるいはネット等の袋に入れ、枕やクッションにすることもできる。
【0013】
上記水溶性ハインダーは、製品の硬度及び接着強度の必要性により使い分けられる。火山噴出物加工粉体と水溶性バインダーとの混練物は、通常、白色から淡いベージュ色であるが、色調を付けたい場合は、水溶性濃縮着色剤である顔料等で自在に着色できるため、様々な色調製品の製造が可能である。
【実施例】
【0014】
「実施例1」二酸化炭素吸収試験(1)
容積720mlのガラス容器(共栓メスシリンダー型)2本に、純度99.9%の二酸化炭素を容器濃度が50%程度になるよう入れ密栓した。1本の容器には、本発明方法で製造した固形成形物(以下、本発明成形物という。)5gを入れ直ちに栓をして試験室に静置し、表1に示す経過時間ごとにガラス容器の採取口から容器内のガスを採取し、ガスクロマトグラフを用いて二酸化炭素濃度を測定した。残りの1本は、何も入れず、対照試験として経過時間ごとの二酸化炭素濃度を同様に測定した。なお、試験期間中の室温は、自記温度計を用いて測定した。
【0015】
本発明成形物と対照試験の二酸化炭素濃度測定結果を表1に示す。なお、試験期間中の温度は、20.6℃〜22.4℃(平均21.6℃)であった。本発明成形物では、反応開始後60分までに二酸化炭素濃度が急激に変化し、その後は緩やかに低下している。また、対照試験では、二酸化炭素濃度はほぼ一定であり、本発明成形物での二酸化炭素濃度変化は、本発明成形物と二酸化炭素の反応により生じたものと思われる。本発明成形物と反応する二酸化炭素量は反応条件により変わるが、気圧を1気圧であったと仮定すると、1気圧で0℃の時に、本発明成形物1gあたり二酸化炭素約0.09gと反応する計算になる。
【0016】
【表1】

【0017】
「実施例2」二酸化炭素吸収試験2
本発明成形物になる前の混練物を、厚さ5mmのアクリル板(300mm×300mm)に厚さ3mm、重量90gで塗布し、72時間乾燥固化させた。この固化成形板を密閉容器に入れ、容器内に二酸化炭素12gを注入した。24時間後、採取口からガスを採取し、ガスクロマトグラフを用いて容器内の二酸化炭素量を測定したところ、残量は4gとなり、4日後には残量1gとなっていた。この作業を11回行ったが、毎回ほぼ同様の結果が得られた。なお、この試験は室温下で行なっている。
【0018】
「実施例3」吸放湿試験
本発明成形物になる前の混練物を、厚さ14mmの合板(300mm×300mm)に厚さ3mm、重量90gで塗布し、72時間乾燥固化させた。この固化成形板を3枚(No.1,No.2,No.3)用意し、JIS A 6909(建築用仕上塗材)の試験方法に従って試験を行った。試験サイクルを表2に、吸放湿性試験結果を表3に示す。結果から分かるように、JIS規格値(g/m)の吸放湿量70以上をいずれもクリアしているのが分かる。
【0019】
【表2】

【0020】
【表3】

【0021】
「実施例4」ホルムアルデヒド吸着試験
噴出物加工粉体6.5kgと水溶性バインダー5kgを混練し、この総量に対しVOC吸着剤であるグラフトン(商品名:グラフトン株式会社製)を2%添加したものを、10cm×10cm×1cmの板状に成形・乾燥し、吸着用成形板(以下、「試験板」という。)を作成した。一方、ろ紙にはホルムアルデヒド37%溶液を10μ染み込ませ、試験板とろ紙をそれぞれ6.5リットル容のガラスデシケーター入れて密封した。ガラスデシケーター内のファンを稼動させた状態で、直読式検知管により、時間経過による濃度数値を読み取った。表4に、時間経過によるホルムアルデヒドの濃度変化を示した。この表4から明らかなように、24時間経過後からはホルムアルデヒドの残存量は殆んどなく、試験板にはかなりの物理吸着があることが確認された。なお、24時間経過後に、65℃10分間恒温槽にて加熱したところ、ホルムアルデヒドを染み込ませたろ紙の方はホルムアルデヒドがその間再放出されたのに対し、試験板では、その再放出は見られなかった。
【0022】
【表4】


【0023】
「実施例5」遠赤外線放射率の測定
噴出物加工粉体6.5kgと水溶性バインダー5kgを混練し、成形・乾燥して10cm×10cm×1cmの成形板5枚を作成して試料とした。財団法人ファインセラミックスセンターの協力を得て、表5に示す温度条件下で5枚の試料の遠赤外線放射率を測定した。測定方法は、財団法人遠赤外線協会の確立した間接測定方法による。測定結果を表5に示す。
【0024】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
火山噴出物の発泡粒子に珪酸ソーダ濃厚水溶液を添加・混練してなる混練物中へ炭酸ガスを注入して得られた火山噴出物発泡粒子集塊物を粉状に精製し、得られた噴出物加工粉体に有機溶剤を含まない水溶性バインダーを添加混練した後、粒状に、又は型枠により所望形状に成形し、この成形物に、上記噴出物加工粉体が潜在的に有する二酸化炭素吸着能を顕在化させたことを特徴とする火山噴出物加工粉体の固形成形方法。
【請求項2】
火山噴出物の発泡粒子に珪酸ソーダ濃厚水溶液を添加・混練してなる混練物中へ炭酸ガスを注入して得られた火山噴出物発泡粒子集塊物を粉状に精製し、得られた噴出物加工粉体に有機溶剤を含まない水溶性バインダーを添加混練した後、粒状に、又は型枠により所望形状に成形し、この成形物に、上記噴出物加工粉体が潜在的に有する吸放湿機能を顕在化させたことを特徴とする火山噴出物加工粉体の固形成形方法。
【請求項3】
火山噴出物の発泡粒子に珪酸ソーダ濃厚水溶液を添加・混練してなる混練物中へ炭酸ガスを注入して得られた火山噴出物発泡粒子集塊物を粉状に精製し、得られた噴出物加工粉体に有機溶剤を含まない水溶性バインダーを添加混練した後、粒状に、又は型枠により所望形状に成形し、この成形物に、上記噴出物加工粉体が潜在的に有する遠赤外線放出機能を顕在化させたことを特徴とする火山噴出物加工粉体の固形成形方法。
【請求項4】
火山噴出物の発泡粒子に珪酸ソーダ濃厚水溶液を添加・混練してなる混練物中へ炭酸ガスを注入して得られた火山噴出物発泡粒子集塊物を粉状に精製し、得られた噴出物加工粉体に有機溶剤を含まない水溶性バインダーを添加混練した後、粒状に、又は型枠により所望形状に成形し、この成形物に、上記噴出物加工粉体が潜在的に有する二酸化炭素吸着能及び吸放湿機能を顕在化させたことを特徴とする火山噴出物加工粉体の固形成形方法。
【請求項5】
火山噴出物の発泡粒子に珪酸ソーダ濃厚水溶液を添加・混練してなる混練物中へ炭酸ガスを注入して得られた火山噴出物発泡粒子集塊物を粉状に精製し、得られた噴出物加工粉体に有機溶剤を含まない水溶性バインダー及びVOC吸着剤を添加混練した後、粒状に、又は型枠により所望形状に成形し、この成形物に、上記噴出物加工粉体が潜在的に有する二酸化炭素吸着能及び吸放湿性能を顕在化させるとともに、VOC吸着機能をも付与したことを特徴とする火山噴出物加工粉体の固形成形方法。
【請求項6】
上記水溶性バインダーは、84重量%〜98重量%の水に、1.5重量%〜10重量%のポリビニールアルコールと0.5重量%〜6重量%の酢酸ビニール樹脂エマルジョンを混合したものである請求項1〜請求項5のいずれかに記載の火山噴出物加工粉体の固形成形方法。
【請求項7】
上記水溶性バインダーは、84重量%〜98重量%の水に、1.5重量%〜10重量%のポリビニールアルコールと0.5重量%〜6重量%のカルボキシメチルアルコールを混合したものである請求項1〜請求項5のいずれかに記載の火山噴出物加工粉体の固形成形方法。
【請求項8】
上記水溶性バインダーは、85重量%〜97重量%の水に、1.5重量%〜8重量%のポリビニールアルコールと0.5重量%〜3重量%のカルボキシメチルアルコールと1.0重量%〜4重量%の酢酸ビニール樹脂エマルジョンを混合したものである請求項1〜請求項5のいずれかに記載の火山噴出物加工粉体の固形成形方法。
【請求項9】
上記VOC吸着剤は、上記混練物に対し、0.1重量%〜5.0重量%の割合で混合される請求項5に記載の火山噴出物加工粉体の固形成形方法。

【公開番号】特開2009−72750(P2009−72750A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270674(P2007−270674)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(302044100)株式会社エココスモ (11)
【出願人】(597086863)豊和直 株式会社 (11)
【Fターム(参考)】