説明

火山灰検知装置および気象状態判定装置

【課題】検知器の表面に積もらせることなく、火山灰の降灰を雨や雪などと区別して検知することのできる火山灰検知装置を提供する。
【解決手段】照射部15は、降下する火山灰が通る測定領域5を平行な光ビームを照射し、第1受光部16は測定領域5を通過後、さらに水平に長いスリットが縦に複数本は並設されたスリット15cを経て複数本となった光ビーム(通過光)を対岸で受光する。第2受光部18は、照射部15の照射した光ビームが測定領域5内の粒子で散乱されて生じた散乱光を受光する。粒子が測定領域5を降下すると、通過光の光量はスリット15cの存在により波打つように変化する。判定部26、27は通過光や散乱光の光量、光量変化量、変化率、変化の周期、波形の概形などから測定領域5内を降下する粒子の有無、降下速度、粒径、密度などを求め、これらから火山灰の降下の有無を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火山灰の降灰を検知する火山灰検知装置および気象状態判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の火山灰検知装置としては、水平な透明板の下方に光センサを配置し、該透明板の表面に火山灰が降り積もると光センサの受光量が減少することを利用して火山灰の降灰を検知するものが知られている(たとえば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、降水強度の計測器においては、光薄膜状のレーザ光を対岸で受光し、光薄膜を通過する雨や雪の粒子により減じられる受光量の変化から降水強度を計測するものがあった(たとえば、特許文献2参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開平7−120388号公報
【特許文献2】特開平4−278488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
透明板の表面に火山灰を積もらせて検知するものでは、一度、降灰が検知された後は、積もった火山灰を排除しなければ次の検知を行なうことができないので、降り積もった火山灰を除去するための機構を要し、構造が複雑になってしまう。また、降灰と降雨とが同時に発生した場合には、透明板の表面に降り積もった火山灰が付着して容易には取れなくなってしまう。
【0006】
また、光薄膜状のレーザ光を対岸で受光し、その受光量の変化から降水強度を計測する技術では粒子の種類を判別しないので、火山灰以外の雨や雪なども検知してしまい、他と区別して降灰を的確に検知することはできない。
【0007】
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、検知器の表面に積もらせることなく、火山灰の降灰を雨や雪などと区別して検知することのできる火山灰検知装置および気象状態判定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係わる発明は、降下する火山灰が通過する所定の測定領域を横切るように複数の平行な光ビームを前記火山灰の降下方向に並べて照射する照射部と、
前記複数の平行な光ビームのうち前記測定領域を横切った通過光を受光するように配置され、前記通過光の光量に応じた第1検出信号を出力する第1受光部と、
前記光ビームが前記測定領域内で散乱されて生じた散乱光を受光するように配置され、前記散乱光の光量に応じた第2検出信号を出力する第2受光部と、
前記第1検出信号と前記第2検出信号の変化状況から、前記測定領域内を降下する火山灰の有無を検知する判定部と
を有する
ことを特徴とする火山灰検知装置である。
【0009】
上記発明によれば、火山灰や雨、雪などの粒子は、測定領域内を降下するとき、該降下方向に並ぶ複数の平行な光ビーム(たとえば、鉛直方向に並ぶ複数の水平な光ビーム)を順に遮りながら降下する。第1受光部は測定領域を横切った光ビームの通過光を受光するように配置(たとえば、測定領域を挟んで照射部と対向配置)されているので、火山灰などの粒子が複数の平行な光ビームを順に遮りながら測定領域内を降下すると第1受光部の出力する第1検出信号は波打つような波形で変化し、該波形の変化量は粒子の光透過率が低いほど大きくなる。また、粒子の降下速度に応じて波形の周期や概形が変化する。
【0010】
一方、第2受光部は測定領域内で散乱された散乱光を受光するように配置(たとえば、照射部の横から測定領域の中心に向けて配置)されているので、光の散乱率の高い粒子が測定領域を通過するときや測定領域内に存在するときほど、第2受光部の出力する第2検出信号の出力が大きく現われる。さらに、霧が出た場合などには、第1検出信号は波打つような変化ではなく、定常的なレベル変動になる。判定部は、気象状態によりこのような変化の現われる第1検出信号と第2検出信号とから、火山灰が降下する場合に現われる所定の特徴を検出して、降灰の有無を判定する。
【0011】
請求項2に係わる発明は、前記判定部は、前記第1検出信号が示す前記通過光の光量変化率が第1の基準値以上で、前記第2検出信号が示す前記散乱光の光量変化量が第2の基準値以上の場合に、前記測定領域内を火山灰の可能性のある粒子が降下していると判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の火山灰検知装置である。
【0012】
上記発明によれば、第1検出信号が示す通過光の光量変化率が第1の基準値以上で変化することにより、何らかの粒子が測定領域を降下していることが認識され、さらに第2検出信号が示す散乱光の光量変化量が第2の基準値以上であることにより、その粒子が散乱率の高い粒子であることが認識される。火山灰の降灰現象は、散乱率の高い粒子の降下であり、上記の条件により、火山灰の可能性のある粒子の降下を認識できる。雨の粒子の散乱率は極めて低く、上記の条件に合致し得る粒子は、火山灰と雪になる。したがって、雪の降下する可能性が少ない地域では、上記の条件で、降灰の有無を判定してもよい。
【0013】
請求項3に係わる発明は、前記判定部は、前記第1検出信号およびまたは前記第2検出信号の波形から前記測定領域内を降下する粒子の粒径を求め、さらに前記粒子の密度を算出し、該粒径と密度とから前記粒子が火山灰であるか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の火山灰検知装置である。
【0014】
上記発明によれば、判定部は、波打つように変化する第1検出信号およびまたは第2検出信号の波形の周期や波形の概形から、測定領域内を降下する粒子の降下速度とその粒子の粒径とを求める。さらに求めた降下速度および粒径を所定の密度計算式に代入することで、粒子の密度を算出する。火山灰は雪に比べて密度が充分大きく、粒径は雪に比べて概ね小さいので、これらの2条件から火山灰を特定する。なお、密度の違いのみを基準に雪と火山灰とを区別してもよい。
【0015】
請求項4に係わる発明は、前記判定部は、前記第1検出信号およびまたは前記第2検出信号の波形と前記複数の平行な光ビームに対応するスリット関数とから前記粒子の粒径を求める
ことを特徴とする請求項3に記載の火山灰検知装置である。
【0016】
上記発明では、たとえば、複数の平行な光ビームのビーム幅やピッチに対応するスリット関数を様々な粒径について導出しておき、第1検出信号およびまたは第2検出信号の波形の概形が最も近似するグラフを見出し、該グラフに対応する粒径を、降下する粒子の粒径として求める。
【0017】
請求項5に係わる発明は、前記判定部は、前記第1検出信号が示す前記通過光の光量変化率が第1の基準値以下で、前記第1検出信号が示す前記通過光の光量変化量が第3の基準値より大きく、かつ前記第2検出信号が示す前記散乱光の光量が第4の基準値以下の場合に、前記光ビームの光路上に配置された透明部材が汚れていると判定する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の火山灰検知装置である。
【0018】
上記発明によれば、第1検出信号が示す通過光の光量変化率が第1の基準値以下であることから、火山灰、雪、雨などの粒子の降下中でないと判断し、第1検出信号が示す通過光の光量変化量が第3の基準値より大きいことから、測定領域を透過する光量の低下が霧の発生もしくは光路上の透明部材の汚れが原因で発生していると判断し、第2検出信号が示す散乱光の光量が第4の基準値以下であることから、その原因が散乱率の高い霧ではなく、透明部材の汚れであると判定する。判断の順序は問わず、上記の3条件が揃えばよい。
【0019】
請求項6に係わる発明は、降下する火山灰が通過する所定の測定領域を横切るように複数の平行な光ビームを前記火山灰の降下方向に並べて照射する照射部と、
前記複数の平行な光ビームのうち前記測定領域を横切った通過光を受光するように配置され、前記通過光の光量に応じた第1検出信号を出力する受光部と、
前記受光部が出力する検出信号の変化状況から、前記測定領域内を降下する火山灰の有無を検知する判定部と
を有する
ことを特徴とする火山灰検知装置である。
【0020】
上記発明によれば、火山灰や雨、雪などの粒子は、測定領域内を降下するとき、該降下方向に並ぶ複数の平行な光ビームを順に遮りながら降下する。受光部は測定領域を横切った光ビームの通過光を受光するように配置(たとえば、測定領域を挟んで照射部と対向配置)されているので、火山灰などの粒子が複数の平行な光ビームを順に遮りながら測定領域内を降下すると受光部の出力する検出信号は波打つような波形で変化し、該波形の変化は粒子の光透過率が低いほど大きくなる。また、粒子の降下速度に応じて波形の周期や概形が変化する。さらに、霧が出た場合には、検出信号は波打つような変化ではなく、定常的なレベル変化になる。判定部は、このような変化の現われる検出信号から、火山灰が降下する場合に現われる所定の特徴を検出して降灰の有無を判定する。
【0021】
請求項7に係わる発明は、前記判定部は、前記検出信号が示す前記通過光の光量変化率が第1の基準値以上の場合に、前記測定領域内を火山灰の可能性のある粒子が降下していると判定する
ことを特徴とする請求項6に記載の火山灰検知装置である。
【0022】
上記発明によれば、検出信号が示す通過光の光量変化率が第1の基準値以上で変化することにより、何らかの粒子が測定領域を降下していることが認識される。火山灰の降灰現象は、透過率の低い粒子の降下であり、上記の条件により、火山灰の可能性のある粒子の落下を認識できる。雨の粒子の透過率は極めて高く、上記の条件に合致し得る粒子は、火山灰と雪になる。したがって、雪の降下する可能性が少ない地域では、上記の条件で、降灰の有無を判定してもよい。
【0023】
請求項8に係わる発明は、前記判定部は、前記検出信号の波形から前記測定領域内を降下する粒子の粒径を求め、さらに前記粒子の密度を算出し、該粒径と密度とから前記粒子が火山灰であるか否かを判定する
ことを特徴とする請求項6または7に記載の火山灰検知装置である。
【0024】
上記発明によれば、判定部は、波打つように変化する検出信号の波形の周期や波形の概形から、測定領域内を降下する粒子の降下速度とその粒子の粒径とを求める。さらに求めた降下速度および粒径の値を所定の密度計算式に代入することで、粒子の密度を算出する。火山灰は雪に比べて密度が大きく、粒径が小さいので、これらの2条件から雪と火山灰とを判別する。
【0025】
請求項9に係わる発明は、前記判定部は、前記検出信号の波形と前記複数の平行な光ビームに対応するスリット関数とから前記粒子の粒径を求める
ことを特徴とする請求項8に記載の火山灰検知装置である。
【0026】
上記発明によれば、たとえば、複数の平行な光ビームのビーム幅やピッチに対応するスリット関数を様々な粒径について導出しておき、検出信号の波形の概形が最も近似するグラフを見出し、該グラフに対応する粒径を、降下する粒子の粒径として求める。
【0027】
請求項10に係わる発明は、前記判定部は、火山灰と判定した粒子の個数を計数することで、単位時間当たりの降灰量を検出する
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1つに記載の火山灰検知装置である。
【0028】
上記発明によれば、判定部は、火山灰の降下ありと判定した場合に、その降下する粒子数を計数し、単位時間当たりの降灰量を求める。
【0029】
請求項11に係わる発明は、前記照射部は、複数のスリットが平行に並設されたスリット板に平行光を通すことで前記複数の平行な光ビームを生成する
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1つに記載の火山灰検知装置である。
【0030】
上記発明によれば、1つの光源から平行な複数の光ビームが生成される。たとえば、光源の前方に各スリットが水平になるようにしてスリット板を鉛直に設置すると、水平で細長い板状の光ビームを鉛直方向に複数並べて照射することができる。スリットは等間隔であることが望ましい。
【0031】
請求項12に係わる発明は、前記照射部は、平行光からなる光ビームを前記測定領域に照射すると共に、前記測定領域を横切った通過光を前記スリットに通すように構成されており、
前記第1受光部において、前記測定領域を横切るように複数の平行な光ビームを前記火山灰の降下方向に並べて照射した場合に相当する受光状態が形成される
ことを特徴とする請求項11に記載の火山灰検知装置である。
【0032】
上記発明では、測定領域を横切った後の平行光をスリット板に通して複数の平行な光ビームに変換することで、第1受光部においては、測定領域を横切るように複数の平行な光ビームを火山灰の降下方向に並べて照射した場合とほぼ等しい受光状態が形成される。このようにすることで、平行光をスリット板に通すことにより光の回折が生じても、スリット板を通過してから第1受光部で受光されるまでの光路長がスリット板を測定領域の手前に配置する場合よりも短くなり、回折の影響を受け難く、スリット関数を適正に適用することができる。
【0033】
請求項13に係わる発明は、降下する火山灰や雪、雨などが通過する所定の測定領域を横切るように複数の平行な光ビームを前記降下方向に並べて照射する照射部と、
前記複数の平行な光ビームのうち前記測定領域を横切った通過光を受光するように配置され、前記通過光の光量に応じた検出信号を出力する受光部と、
前記検出信号の変化状況から気象状態を判定する判定部と
を有する
ことを特徴とする気象状態判定装置である。
【0034】
上記発明によれば、火山灰や雨、雪などの粒子が測定領域内を降下するとき、受光部の受光する光量は波打つように変化し、これに応じて検出信号も波打つように変化する。該変化の周期、振幅の大小、変化の有無や変化率などから粒子の降下速度、粒径、密度などを求めることができ、これらから粒子の種類を特定して、気象状態を判別することができる。
【0035】
請求項14に係わる発明は、前記判定部は、前記検出信号が示す前記通過光の光量、光量変化率、光量変化量の中の少なくとも1つに基づいて気象状態を判定する
ことを特徴とする請求項13に記載の気象状態判定装置である。
【0036】
たとえば、雨、雪、火山灰など何らかの粒子の降下の有無は受光した通過光の光量変化率(変化の有無)で検出する。また火山灰、雪、雨は光の透過率が異なるので、光ビームを横切る際の光の減衰量が相違し、検出信号が示す光量変化量に差が現われ、該変化量の相違により、粒子の種類を判別する。
【0037】
請求項15に係わる発明は、前記判定部は、前記検出信号の波形から前記測定領域内を降下する粒子の粒径を求め、さらに前記粒子の密度を算出し、該粒径と密度とから前記粒子の種類を判定する
ことを特徴とする請求項13または14に記載の気象状態判定装置である。
【0038】
上記発明では、たとえば、検出信号の波形と複数の光ビームの配列に対応したスリット関数とから粒子の粒径を求め、さらに運動方程式を適用して粒子の密度を演算して求める。そして粒径と密度の相違から粒子の種類を特定して気象状態を判定する。
【0039】
請求項16に係わる発明は、前記光ビームが前記測定領域内で散乱されて生じた散乱光を受光するように配置され、前記散乱光の光量に応じた第2検出信号を出力する第2受光部をさらに有し、
前記判定部は、前記検出信号と前記第2検出信号の変化状況から気象状態を判定する
ことを特徴とする請求項13乃至15のいずれか1つに記載の気象状態判定装置である。
【0040】
上記発明では、雨、雪、火山灰、霧などの粒子の種類によって散乱率が異なるので、第2受光部で検知した散乱光の光量変化特性をさらに加味して、気象状態を判定する。これにより、判定の精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明に係わる火山灰検知装置によれば、降下する火山灰が複数の光ビームを順に通過する際に生じる受光量の変化状況から降灰の有無を検知するので、検知器の表面に火山灰を積もらせて検知する場合と異なり、積もった火山灰を除去するための機構を設けることなく連続的な降灰検知が可能になる。
【0042】
また、降下する火山灰が複数の光ビームを順に通過する際に生じる受光量の変化を観測するので、単に1本の光ビームを用いる場合と異なり、受光量の変化状況から多くの情報を得ることができ、火山灰の降灰を降雨や降雪などと区別して的確に検知することができる。
【0043】
さらに、光路上の透明部材の汚れの有無を判定するものでは、汚れの付着を警告するなどにより、降灰検知機能の維持管理を促すことができる。
【0044】
また本発明に係わる気象状態判定装置によれば、降下する雨、雪、火山灰などの粒子が複数の光ビームを順に通過する際に生じる受光量の変化を観測するので、降下する粒子の種類を特定して気象状態を判別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0046】
図1は、本発明に係わる火山灰検知装置10の構成を示している。なお、図1(a)は火山灰検知装置10の平面を示し、図1(b)は回路部を省略して火山灰検知装置10の正面を示してある。
【0047】
火山灰検知装置10は、降下する火山灰2が通過する通路となる略鉛直方向に延びる測定領域5を左右両脇から挟むように配置された第1光学ケース11aと第2光学ケース11bとを備えている。第1光学ケース11aと第2光学ケース11bとはフレーム11cで接続されて一体に構成されている。これらの光学ケース11a、11bの測定領域5を挟んで対向する略鉛直な側面にはそれぞれ開口が設けられ、光を透過させるガラス板などの透明部材13a、13bが嵌め込まれている。
【0048】
透明部材13a、13bを通して対向するように、第1光学ケース11aの内部には照射部15が、第2光学ケース11bの内部には第1受光部16が配置されている。照射部15は、レーザユニット15aと、レーザユニット15aの前方に配置され、レーザユニット15aが射出した光を集光し平行光にする凸レンズ15bとを備え、第1光学ケース側の透明部材13aを通して測定領域5を横切る平行光を第1受光部16に向けて照射する。
【0049】
第2光学ケース11bの内部に配置された第1受光部16は、照射部15が照射する光ビームのうち測定領域5を通過した通過光を集光する凸レンズ16aと、該凸レンズ16aで集光された通過光を受光し、その受光量に応じた第1検出信号17を出力するフォトダイオード16bとから構成される。
【0050】
透明部材13bと凸レンズ16aとの間には、凸レンズ16aの入射側に近接して鉛直にスリット板15cが配置されている。スリット板15cは、遮光性の平板に複数の水平なスリット(図8参照)を等間隔で鉛直方向に並べて開設したものである。照射部15から到来する平行光はスリット板15cを通過することで、水平な薄板状の光ビームを鉛直方向に等間隔で複数並べたようになって凸レンズ16aに到達する。
【0051】
なお、第2光学ケース11bの内のフォトダイオード16bでの受光状態においては、スリット板15cを第1光学ケース11a側の凸レンズ15bと透明部材13aとの間に配置した場合とほぼ等価となる。すなわち、第2光学ケース11bの内のフォトダイオード16bでの受光状態においては、略鉛直方向に並ぶ水平で細長い薄板状の複数の光ビームが測定領域5を横切るように照射された場合とほぼ等価になる。ただし、図1に示すように第2光学ケース11bの側の透明部材13bと凸レンズ16aとの間にスリット板15cを配置するものでは、平行光がスリット板15cを通過した後回折したとしても、スリット板15cからフォトダイオード16bまでの距離が短いので、回折の影響を受け難いという利点がある。
【0052】
スリットの幅、長さ、ピッチは、後述するスリット関数により火山灰の粒径を判定可能な値に設定され、望ましくは、スリット関数により火山灰の粒径を特定し易い値がよい。たとえば、スリット幅やピッチは火山灰の粒径の程度のサイズに、スリットの長さは火山灰の粒径以上、好ましくは2倍以上がよい。
【0053】
また、スリット板15cによって形成される光ビームの本数や間隔などの設定は、測定領域5内の光ビームを遮りながら降下する火山灰の粒子が同時には1つとなるようにするとよい。なお、少なくとも降り始めの時期は、降灰量が少ないので、測定領域5内の光ビームを遮りながら降下する火山灰の粒子は同時には1つであるとして判定処理を行なっている。
【0054】
さらに第1光学ケース11aの内部には、照射部15から照射した光ビームが測定領域5内の粒子(火山灰、雪、霧など)に散乱されて生じる散乱光を受光する第2受光部18が配置されている。第2受光部18は、照射部15の凸レンズ15bの横から第1光学ケース11aの透明部材13aを通して測定領域5の略中心部を臨むように配置されている。第2受光部18は、透明部材13aを通じて第1光学ケース11a内へ入射した散乱光を集光する凸レンズ18aと、該凸レンズ18aで集光された光を受光し、その受光量に応じた第2検出信号19を出力するフォトダイオード18bとから構成される。
【0055】
火山灰検知装置10は回路部として、発振部21と、BPF部22、23と、A/D変換部24、25と、降灰検知部26と、外部出力部27と、外部設備制御部28とを備えている。発振部21は、照射部15のレーザユニット15aを1メガヘルツの変調周波数で駆動する回路である。第1受光部16のフォトダイオード16bが出力する第1検出信号17はBPF部22およびA/D変換部24を経て降灰検知部26に入力される。また第2受光部18のフォトダイオード18bが出力する第2検出信号19はBPF部23およびA/D変換部25を経て降灰検知部26に入力される。BPF部22、23は1メガヘルツ付近の周波数帯のみを通過させるバンドパスフィルタである。A/D変換部24、25はアナログ信号をディジタル信号に変換する回路である。
【0056】
レーザユニット15aを1メガヘルツの変調周波数で駆動すると共に、フォトダイオード16b、18bの出力をそれぞれ1メガヘルツのバンドパスフィルタ22、23に通すことで、太陽光などの外乱光の影響を除去している。
【0057】
降灰検知部26は、BPF部22およびA/D変換部24を経て入力される第1検出信号17と、BPF部23およびA/D変換部25を経て入力される第2検出信号19の変化状況から、測定領域5内を降下する火山灰の有無を検知する機能を果たす。
【0058】
外部出力部27は、単位時間当たりの降灰量を求める機能、および照射部15が照射した光ビーム(散乱光を含む)の光路上に配置された透明部材13a、13bの汚れを検知する機能を果たす。汚れの検知対象となる透明部材には、凸レンズ15b、16a、18aも含まれる。
【0059】
外部設備制御部28は、外部出力部27で求めた降灰量を基準に、降灰に関する情報を配信したり、外部装置の動作を制御したりする機能を果たす。制御対象の外部装置は、たとえば、温室の窓を開閉する装置がある。降灰検知部26、外部出力部27、外部設備制御部28は、CPU(Central Processing Unit)を主要部とした回路で構成されており、気象状態を判定する判定部としての機能を果たす。
【0060】
図2は、第1受光部16のフォトダイオード16bが検出する通過光の光量変化と第2受光部18のフォトダイオード18bが検出する散乱光の光量変化とを各種の気象条件について対比して例示したものである。上段のグラフはフォトダイオード16bが検出する通過光の光量変化(第1検出信号17の信号波形)を示し、下段のグラフはフォトダイオード18bが検出する散乱光の光量変化(第2検出信号19の信号波形)を示している。
【0061】
気象条件が晴れまたは曇りのとき、通過光の光量17aは、ほぼ最大値で一定となり、散乱光の光量19aはほぼゼロになる。
【0062】
火山灰が降下しているときは、通過光の光量17bは波打つように変化する。すなわち、測定領域5を通過した光をスリット板15cに通しているので、フォトダイオード16bの受光状態においては、略鉛直方向に並ぶ複数の光ビームを火山灰が順に遮りながら降下するのと等価となり、通過光の光量17bに波打つような変化が現われる。また、火山灰は光を散乱させ、かつフォトダイオード18b側にはスリット板15cがないので、散乱光の光量19bは、火山灰の粒子が測定領域5を通過する毎に1つのパルスとなるように変化する。
【0063】
霧は細かい粒子が空気中に浮遊しているので、霧が発生した場合には、通過光の光量17cは、晴れや曇りの場合に比べて減衰したレベルで一定になる。また、霧は細かい浮遊する粒子によって光を散乱させる性質を有するので、散乱光の光量19cは、比較的高い出力レベルで一定になる。
【0064】
雨は光透過率が高く、光ビームをほとんど透過させる。ただし、雨滴の上下端の近傍においては、雨滴の表面で全反射が生じ、該全反射の発生により、通過光の光量17dや散乱光の光量19dが僅かに変化する。図中の波形17d、19dは、分かり易くするために該変化の度合いを誇張して描いてある。
【0065】
雪は、光の透過率が雨に比べると低く、降雪時には、測定領域5の通過光の光量17eは波打つように変化する。また、雪は光の散乱率も高いので、散乱光の光量19eは、雪の粒が測定領域5を通過する毎に1つのパルスとなるように変化する。
【0066】
ガラス汚れにおいては、透明部材13a、13bの汚れが進むにつれて徐々に通過光の光量17fが低下する。一方、ガラス汚れにより測定領域5内で散乱が生じることはないので、散乱光の光量19fは、晴れ、曇りと同様にほぼゼロの状態になる。
【0067】
図3は、通過光の光量を示す第1検出信号17および散乱光の光量を示す第2検出信号19に基づいて降灰検知部26および外部出力部27が行なう判定処理の流れを示している。まず、通過光の光量基準値(図2のレベルA)を設定する(ステップS101)。通過光の光量基準値Aは、晴天あるいは曇りでかつ透明部材13a、13bの汚れのない状態におけるフォトダイオード16bの出力レベルが初期設定される。
【0068】
初期設定の完了後、降灰検知部26は第1検出信号17に基づいて通過光の光量変化率(時間変化量)を監視し(ステップS102)、通過光の光量変化率が予め定めた第1の基準値以上のとき(ステップS102;Y)、雨、雪、火山灰のいずれかの粒子が測定領域5を降下していると判定する。
【0069】
すなわち、雨、雪、火山灰のいずれかの粒子が測定領域5を降下すると、図2に示すように、その粒子の動きに応じて通過光の光量変化率がある程度以上の大きさになる。晴れや曇り、霧、ガラス汚れの場合は粒子の降下現象ではないので通過光の光量変化率は極めて小さい。そこで、通過光の光量変化率が第1の基準値(図2参照)以上の場合に雨、雪、火山灰などの粒子の降下を検出する。
【0070】
雨、火山灰、雪などの粒子の降下を検出した場合には(ステップS102;Y)、第2検出信号19が示す散乱光の光量変化量を調べる(ステップS103)。散乱光の光量変化量は、初期設定時(晴天あるいは曇りでかつ透明部材13a、13bの汚れのない状態)における第2検出信号19の出力レベルを初期値とし、該初期値と現在の第2検出信号19の出力レベルとの差分である。
【0071】
散乱光の光量変化量が第2の基準値(図2のB)未満の場合は(ステップS103;N)、降下中の粒子が雨である旨の判定結果を出力して(ステップS104)、ステップS102へ戻る。すなわち、雨は光の透過率が火山灰や雪に比べて高いので、降雨時における通過光や散乱光の光量変化量は、火山灰や雪が降下している場合に比べて小さい。そこで、第2の基準値を、降雨時における散乱光の最大光量変化量よりわずかに大きい値に設定することで、散乱光の光量変化量が第2の基準値以下の場合に、降下中の粒子が火山灰や雪ではなく、雨滴であると特定する。
【0072】
なお、火山灰の中には、光の透過率や粒径が小さく、通過光の光量変化量が小さいものもあり、通過光の光量変化量では雨との区別を充分にできない可能性がある。一方、散乱光の光量変化量は、どのような種類の火山灰でも(透過率や粒径にかかわらず)雨との区別が可能な程度に充分に現われる。そこで、本例では、雨と火山灰との差がより明確に現われる散乱光の光量変化量に基づいて雨を特定している。
【0073】
散乱光の光量変化量が第2の基準値以上の場合は(ステップS103;Y)、降下中の粒子の粒径と密度とを求め(ステップS105、S106)、該粒径と密度とから雪と火山灰とを判別する(ステップS107)。
【0074】
図4は、雪と火山灰との粒子の性質を対比したものである。同図に示すように、雪の粒径は400〜5000μmの範囲にあり、火山灰の粒径は0.50〜600μmの範囲にある。雪の粒径と火山灰の粒径は400〜600μmの範囲に重複している。雪の密度は0.02〜0.10g/cmの範囲にあり、火山灰の密度は1.00〜1.50g/cmの範囲にある。
【0075】
このような性質を利用し、ここでは、粒径が第1規定サイズ(たとえば、400μm)以上で密度が第1規定密度(たとえば、1.00g/cm3)以下の場合は(ステップS107;Y)、降下中の粒子が雪であると判定し(ステップS108)、雪に関して単位時間降下量算出処理を行なった後(ステップS110)ステップS102に戻る。上記2つの条件(粒径と密度)を満足しない場合は(ステップS107;N)、降下中の粒子が火山灰であると判定し(ステップS109)、火山灰について単位時間降下量算出処理を行なった後(ステップS110)ステップS102に戻る。
【0076】
一方、通過光の光量変化率が予め定めた第1の基準値未満のときは(ステップS102;N)、火山灰、雪、雨などの粒子の降下中でないと判断する。そして、散乱光の光量変化量を調べ(ステップS111)、散乱光の光量変化量が第2の基準値(図2のB)以上の場合は(ステップS111;Y)、霧の発生である旨の判定結果を出力する(ステップS112)。すなわち、霧は細かい粒子が空気中に浮遊しているので、光の散乱率が高く、散乱光の光量変化量は大きくなる。なお、ステップS111で使用する第2の基準値は、ステップS103で使用する第2の基準値とは別の値を取り得る第4の基準値としてもよく、霧の発生と判定すべき散乱光の最小光量変化量より低い値に設定されればよい。
【0077】
霧と判定した場合はさらに、霧濃度の判定処理を行なった後(ステップS113)ステップS102に戻る。霧の濃度は散乱率に基づいて判断する。散乱率は(散乱光の光量)÷(通過光の光量)で求まる。
【0078】
散乱光の光量変化量が第2の基準値未満の場合は(ステップS111;N)、通過光の光量変化量を調べ(ステップS114)、通過光の光量変化量(通過光の光量基準値Aとの差分)が第3の基準値(図2のC)以上の場合は(ステップS114;Y)、晴れまたは曇りであるとの判定結果を出力して(ステップS115)ステップS102に戻る。
【0079】
通過光の光量変化量が第3の基準値未満の場合は(ステップS114;N)、透明部材13a、13bが汚れているとの判定結果を出力し(ステップS116)、警告を行なう(ステップS117)。たとえば、所定の管理装置へ透明部材の汚れを通知したり、警告メッセージを音声で流したりする。警告を3回出力した場合は(ステップS118;Y)、処理を終了し、3回未満の場合は(ステップS118;N)、ステップS102に戻って処理を継続する。なお、警告を出した回数に係わらず、処理を終了させ、透明部材13a、13bの清掃が行なわれた後のリセットにより本処理を最初から実行するように構成してもよい。
【0080】
図5は、図3のステップS106における粒子の粒径算出処理を示している。まず、通過光の光量変化波形(第1検出信号17の波形)を読み込む(ステップS201)。
【0081】
読み取った光量変化波形の概形を検出し(ステップS202)、該光量変化波形とスリット板15cに対応するスリット関数とから粒径を求める(ステップS203)。詳細には、スリット板15cに形成したスリットの幅やピッチに対応するスリット関数のグラフを様々な粒径について導出しておき、これらのグラフとステップS202で求めた光量変化波形の概形とを対比して最も近似するグラフを見出し、該グラフに対応する粒径を、降下する粒子の粒径として求める。
【0082】
図6は、スリット関数のグラフの一例を示している。また、図7はスリット関数の計算における粒子2aの各部の寸法を示すパラメータを、図8はスリット関数の計算におけるスリット板15cの形状および各部の寸法を示すパラメータを示している。この場合、スリットを通して射出された光を粒子の一部が遮る面積を求めるための積分式は以下のようになる。
【0083】
【数1】

【0084】
スリット面積Slは、Sl=N×B×Lとなる。ここで N:スリット個数、B:スリット幅、L:スリット長さ、R:粒径(2r)、r:粒子(灰)の半径(球形に近似)、L>R、P:スリットのピッチ間隔、Z:最上段のスリットの上端を原点(O)とし、降下方向下向きを正とした場合における火山灰(粒子)の下端の座標、Z’:各スリットの上端を原点(O)とし、降下方向下向きを正とした場合における火山灰(粒子)の下端の座標とする。粒子による減光面積をSdとすると、通過光の面積Sは、S=Sl−Sd となる。なお、Sdは、スリット1枚当たりの粒子による減光面積をSd´とし、N枚のスリットの減光面積の合計として求める。以下、減光面積をSd´を求める数式を場合分けして示す。
【0085】
【数2】

【0086】
図9は、図3のステップS105における粒子密度算出処理の流れを示している。まず、通過光の光量変化波形(第1検出信号17の波形)を読み込み(ステップS221)、この光量変化波形から変化の周期を求め(ステップS222)、該周期とスリット板15cにおけるスリットの間隔(スリット幅B+ピッチP)とから粒子の降下速度を求める(ステップS223)。具体的には(スリット幅B+ピッチP)÷(波形の周期)により降下速度を求める。
【0087】
そして、この降下速度と先に求めた粒径とを、空気中を落下する粒子の運動方程式に適用することで粒子の密度を求める(ステップS224)。密度計算式は以下のようになる。
【0088】
【数3】

【0089】
ここで、R:粒径、ρ:密度(粒子)、υ:速度、g:重力加速度、ρ:密度(空気)=1.20Kg/m3、μ:粘性係数(空気)=1.80×10−5Pa・S、C:抵抗係数、Re:レイノルズ数 である。なお、Reは、灰の場合、2.60×10−7〜1.29×10 、雪の場合、1.89〜1.12×10 である。
【0090】
図10は、図3のステップS110における単位時間降下量算出処理を示している。単位時間降下量算出処理においては、火山灰や雪と判定した粒子の個数を計数することで、単位時間当たりの降灰量や降雪量を検出する。具体的には、通過光の光量変化波形(第1検出信号17の波形)を読み込み(ステップS241)、単位時間当たりでの光量変化波形の概形から粒子数を検出する(ステップS242)。たとえば、散乱光に対応する第2検出信号19のパルス数を計数する。該検出された粒子数に応じて単位時間当たりの粒子の降下量を算出する(ステップS243)。
【0091】
次に、外部設備制御部28が行なう制御の流れを説明する。
【0092】
図11は、外部設備制御部28が行なう制御の流れを示している。外部設備制御部28は外部出力部27から単位時間降灰量(火山灰が検出されたときの単位時間降下量)の検出結果を受け取り(ステップS301)、該検出結果の示す降灰量が第1のしきい値以上か否かを判定し(ステップS302)、第1のしきい値以上の場合は(ステップS302;Y)、温室換気窓を閉じる制御を行なう(ステップS303)。
【0093】
さらに、降灰量が第1のしきい値よりも大きい第2のしきい値以上か否かを判断し(ステップS304)、第2のしきい値以上の場合は(ステップS304;Y)、降灰量が多いことを示す降灰情報の配信処理を行なう(ステップS305)。その後はステップS301に戻り、降灰量の監視を継続する。一方、第2のしきい値未満の場合は(ステップS304;N)、降灰していることを示す降灰情報配信処理を行ない(ステップS306)、ステップS301に戻って降灰量の監視を継続する。たとえば、降灰情報配信は、降灰していることを外部装置に通信で通知したり、音声で流したりする。
【0094】
降灰量が第1のしきい値未満の場合は(ステップS302;N)、温室換気窓を開く制御を行なった後(ステップS307)、ステップS301に戻って降灰量の監視を継続する。
【0095】
なお、制御する外部装置は温室換気窓以外の装置であってもよい。また、単位時間降灰量を多数のレベルで分類し、各レベルに応じた降灰情報を配信したり、外部装置の制御内容を変化させたりしてもよい。
【0096】
このように、本発明の火山灰検知装置10では、検知器の表面に積もらせることなく、火山灰の降灰を検知することができるので、積もった火山灰を除去するための機構を設けることなく連続的な降灰検知が可能になる。また、スリット板15cを配置することで、フォトダイオード16bでの受光状態においては、降下方向に配列された複数の光ビームを火山灰が順に横切りながら降下する場合と等価な状態を形成し、これら複数の光ビームを火山灰が順に横切りながら降下する際に生じる通過光の光量変化や散乱光の光量変化に基づいて粒子の種類を判別するので、火山灰の降灰を降雨や降雪などと区別して的確に検知することができる。
【0097】
さらに、測定光学系の光路上に存在するガラス板などの透明部材の汚れを検知して警告を発するので、気づかぬ間に透明部材が汚れて火山灰の検知精度が低下するような事態を回避することができる。
【0098】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は実施の形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0099】
図3のステップS103では、散乱光の光量変化量に基づいて、雨か雪・火山灰かを識別するようにしたが、通過光の光量変化量の大小に基づいて、雨か、雪または火山灰かを判別してもかまわない。たとえば、通過光の光量変化量に基づいて雨か雪または火山灰かを識別すれば、第2受光部18を設けなくてもかまわない。
【0100】
また、第1検出信号17および第2検出信号19の変化状況に基づく降灰の判定方法は、実施の形態で例示したものに限定されない。たとえば、実施の形態において雪と火山灰とを粒径と密度とによって判別する際の基準にした第1規定サイズや第1規定密度は例示した値に限定されず、適宜に設定すればよい。また、図4に示すように、火山灰と雪との密度には重複範囲がなく明確な差があるので、密度のみで火山灰と雪とを判別してもかまわない。この場合、火山灰の密度の下限値と、雪の密度の上限値との間にしきい値(たとえば、0.50g/cm)を設定して雪と火山灰とを識別することができる。
【0101】
また、実施の形態では透明部材13bと凸レンズ16aとの間にスリット板15cを配置したが、凸レンズ16aとフォトダイオード16bとの間でもかまわない。さらに、凸レンズ15bと透明部材13aとの間にスリット板15cを配置し、実際に測定領域5を複数の光ビームが横切るように構成してもよい。さらに、1つのレーザユニット15aから射出される光を凸レンズ15bおよびスリット板15cを使用して複数の光ビームを生成する代わりに、たとえば、光ビーム毎に異なる光源を設けてもよく、スリット関数が適用可能な受光状態が形成されればよい。また、光ビームの本数(スリットの本数)は2本以上あればよく、限定されない。
【0102】
また、照射部15のレーザユニット15aからフォトダイオード16bに至る光学系を縦方向(粒子の降下方向)に複数段配列してもよい。この際、各段におけるスリットの幅やピッチを相違させることで、様々な粒径の粒子に対してスリットでの波形飽和を防止することができ、スリット関数による粒径の導出をより正確に行なうことができる。
【0103】
さらに第1受光部16では凸レンズ16aを用いて複数の光ビームを集光し、1つのフォトダイオード16bでこれら複数の光ビームを受光するようにしたが、個々もしくはいくつかの光ビーム毎にフォトダイオードを設置し、これらの出力信号を電気的に合成してもかまわない。
【0104】
また、光源はレーザユニットに限定されず、たとえば、発光ダイオードでもかまわない。
【0105】
実施の形態では、火山灰の降下方向を鉛直とし、複数の光ビームを鉛直に配列させたが、現場の状況に合わせて、たとえば、斜め下方であってもかまわない。透明部材13a、13bへの火山灰の付着を少なくするには測定領域5を鉛直に延びる通路とすることが望ましい。
【0106】
なお、実施の形態では、火山灰検知装置を説明したが、該装置は、雪、雨、火山灰、霧を区別して検知ができるので、火山灰の検知専用の装置とすることなく、たとえば、降雪、降雨、降灰、霧の発生を区別して検知する気象状態判定装置としてもよい。さらに火山灰だけでなく、黄砂などの粒径が異なる場合においても、スリット幅、スリットピッチを適切に設定することで、任意の径のあらゆる粒子を検知することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の実施の形態に係わる火山灰検知装置の構成を示す説明図である。
【図2】各種の気象条件について通過光の光量変化と散乱光の光量変化とを対比して例示した説明図である。
【図3】本発明の実施の形態に係わる火山灰検知装置が行なう判定処理を示す流れ図である。
【図4】雪と火山灰との粒子の性質を対比した比較表である。
【図5】粒径算出処理を示す流れ図である。
【図6】各種の粒径に対応するスリット関数のグラフを示す説明図である。
【図7】スリット関数の計算式に係わる粒子形状を示す説明図である。
【図8】スリット板のスリット形状を示す説明図である。
【図9】粒子密度算出処理を示す流れ図である。
【図10】単位時間降下量算出処理を示す流れ図である。
【図11】本発明の実施の形態に係わる火山灰検知装置の外部設備制御部が行なう制御処理を示す流れ図である。
【符号の説明】
【0108】
2、2a…火山灰
5…測定領域
10…火山灰検知装置
11a…第1光学ケース
11b…第2光学ケース
11c…フレーム
13a、13b…透明部材
15…照射部
15a…レーザユニット
15b…凸レンズ
15c…スリット板
16…第1受光部
16a…凸レンズ
16b…フォトダイオード
17…第1検出信号
18…第2受光部
18a…凸レンズ
18b…フォトダイオード
19…第2検出信号
21…発振部
22、23…BPF部
24、25…A/D変換部
26…降灰検知部
27…外部出力部
28…外部設備制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
降下する火山灰が通過する所定の測定領域を横切るように複数の平行な光ビームを前記火山灰の降下方向に並べて照射する照射部と、
前記複数の平行な光ビームのうち前記測定領域を横切った通過光を受光するように配置され、前記通過光の光量に応じた第1検出信号を出力する第1受光部と、
前記光ビームが前記測定領域内で散乱されて生じた散乱光を受光するように配置され、前記散乱光の光量に応じた第2検出信号を出力する第2受光部と、
前記第1検出信号と前記第2検出信号の変化状況から、前記測定領域内を降下する火山灰の有無を検知する判定部と
を有する
ことを特徴とする火山灰検知装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記第1検出信号が示す前記通過光の光量変化率が第1の基準値以上で、前記第2検出信号が示す前記散乱光の光量変化量が第2の基準値以上の場合に、前記測定領域内を火山灰の可能性のある粒子が降下していると判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の火山灰検知装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記第1検出信号およびまたは前記第2検出信号の波形から前記測定領域内を降下する粒子の粒径を求め、さらに前記粒子の密度を算出し、該粒径と密度とから前記粒子が火山灰であるか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の火山灰検知装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記第1検出信号およびまたは前記第2検出信号の波形と前記複数の平行な光ビームに対応するスリット関数とから前記粒子の粒径を求める
ことを特徴とする請求項3に記載の火山灰検知装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記第1検出信号が示す前記通過光の光量変化率が第1の基準値以下で、前記第1検出信号が示す前記通過光の光量変化量が第3の基準値より大きく、かつ前記第2検出信号が示す前記散乱光の光量が第4の基準値以下の場合に、前記光ビームの光路上に配置された透明部材が汚れていると判定する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の火山灰検知装置。
【請求項6】
降下する火山灰が通過する所定の測定領域を横切るように複数の平行な光ビームを前記火山灰の降下方向に並べて照射する照射部と、
前記複数の平行な光ビームのうち前記測定領域を横切った通過光を受光するように配置され、前記通過光の光量に応じた第1検出信号を出力する受光部と、
前記受光部が出力する検出信号の変化状況から、前記測定領域内を降下する火山灰の有無を検知する判定部と
を有する
ことを特徴とする火山灰検知装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記検出信号が示す前記通過光の光量変化率が第1の基準値以上の場合に、前記測定領域内を火山灰の可能性のある粒子が降下していると判定する
ことを特徴とする請求項6に記載の火山灰検知装置。
【請求項8】
前記判定部は、前記検出信号の波形から前記測定領域内を降下する粒子の粒径を求め、さらに前記粒子の密度を算出し、該粒径と密度とから前記粒子が火山灰であるか否かを判定する
ことを特徴とする請求項6または7に記載の火山灰検知装置。
【請求項9】
前記判定部は、前記検出信号の波形と前記複数の平行な光ビームに対応するスリット関数とから前記粒子の粒径を求める
ことを特徴とする請求項8に記載の火山灰検知装置。
【請求項10】
前記判定部は、火山灰と判定した粒子の個数を計数することで、単位時間当たりの降灰量を検出する
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1つに記載の火山灰検知装置。
【請求項11】
前記照射部は、複数のスリットが平行に並設されたスリット板に平行光を通すことで前記複数の平行な光ビームを生成する
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1つに記載の火山灰検知装置。
【請求項12】
前記照射部は、平行光からなる光ビームを前記測定領域に照射すると共に、前記測定領域を横切った通過光を前記スリットに通すように構成されており、
前記第1受光部において、前記測定領域を横切るように複数の平行な光ビームを前記火山灰の降下方向に並べて照射した場合に相当する受光状態が形成される
ことを特徴とする請求項11に記載の火山灰検知装置。
【請求項13】
降下する火山灰や雪、雨などが通過する所定の測定領域を横切るように複数の平行な光ビームを前記降下方向に並べて照射する照射部と、
前記複数の平行な光ビームのうち前記測定領域を横切った通過光を受光するように配置され、前記通過光の光量に応じた検出信号を出力する受光部と、
前記検出信号の変化状況から気象状態を判定する判定部と
を有する
ことを特徴とする気象状態判定装置。
【請求項14】
前記判定部は、前記検出信号が示す前記通過光の光量、光量変化率、光量変化量の中の少なくとも1つに基づいて気象状態を判定する
ことを特徴とする請求項13に記載の気象状態判定装置。
【請求項15】
前記判定部は、前記検出信号の波形から前記測定領域内を降下する粒子の粒径を求め、さらに前記粒子の密度を算出し、該粒径と密度とから前記粒子の種類を判定する
ことを特徴とする請求項13または14に記載の気象状態判定装置。
【請求項16】
前記光ビームが前記測定領域内で散乱されて生じた散乱光を受光するように配置され、前記散乱光の光量に応じた第2検出信号を出力する第2受光部をさらに有し、
前記判定部は、前記検出信号と前記第2検出信号の変化状況から気象状態を判定する
ことを特徴とする請求項13乃至15のいずれか1つに記載の気象状態判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−327889(P2007−327889A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−160180(P2006−160180)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(390010054)小糸工業株式会社 (136)
【Fターム(参考)】