説明

火災警報システム

【課題】火災を感知していないときの電力消費を抑えて電池寿命を延ばす。
【解決手段】火災警報器TRの制御部1は、マイコンに内蔵するタイマで所定の間欠受信間隔を繰り返しカウントするとともに間欠受信間隔のカウントが完了する毎に無線送受信部2を起動して所望の電波(他の火災警報器TRが送信した無線信号)が受信できるか否かをチェックする。そして、当該電波が捉えられなければ、制御部1は直ちに無線送受信部2を停止して待機状態に移行させる。故に、火災を感知していないときの電力消費を抑えて電池寿命を延ばすができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の火災警報器が電波を媒体とする無線信号を送受信するようにした火災警報システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているような火災警報システムがある。この火災警報システムは、多箇所に設置された複数台の火災警報器がそれぞれに火災を感知する機能と警報音を鳴動する機能を有しており、何れかの火災警報器が火災を感知すると、火災感知を知らせる情報(火災感知情報)を電波を媒体とした無線信号で親機に伝送し、親機が警報音を鳴動することにより、火災の発生を迅速且つ確実に知らせることができるものである。
【特許文献1】特開2006−343983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述のような火災警報器では、火災感知情報を無線信号で伝送するという特性を活かすために電池を電源として駆動され、しかも、通常は室内の天井のようにメンテナンス(電池交換)のし難い場所に設置されることから、例えば数年といった長期間にわたってメンテナンス無しに使用できることが望ましい。一方、火災が発生したときに他の火災警報器に速やかに火災感知を知らせるためには受信回路を常時起動しておくことが望ましいが、受信回路を常時起動させた場合、受信回路による電力消費によって電池寿命が大幅に短くなってしまう。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、その目的は、火災を感知していないときの電力消費を抑えて電池寿命を延ばすことができる火災警報システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、複数の火災警報器を備え、これら複数の火災警報器の間で電波を媒体とする無線信号を伝送する火災警報システムであって、各火災警報器は、火災を感知する火災感知手段と、火災警報を報知する警報手段と、無線信号を送信する送信手段と、無線信号を受信する受信手段と、火災感知手段で火災を感知したときに他の火災警報器に火災警報を報知させるための火災警報メッセージを含む無線信号を送信手段から送信させ、且つ受信手段により他の火災警報器から送信される無線信号を受信して前記火災警報メッセージを受け取ったときに警報手段に火災警報を報知させる制御手段と、電池を電源として各手段に電源を供給する電源供給手段とを具備し、制御手段は、火災感知手段が火災を感知していない間は受信手段を間欠的に起動して他の火災警報器が送信した無線信号の有無を判断し、無線信号有りと判断したら受信手段によって当該他の火災警報器が送信する無線信号を受信するとともに、無線信号無しと判断したら受信手段を休止させることを特徴とする。
【0006】
請求項1の発明によれば、各火災警報器においては、火災感知手段で火災を感知していない間は受信手段を間欠的に起動するとともに他の火災警報器が送信する無線信号を受信しなければ受信手段を休止させるので、火災を感知していないときの電力消費を抑えて電池寿命を延ばすことができる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、何れかの火災警報器から火災警報メッセージを含む無線信号が送信された場合、当該無線信号を受信した特定の火災警報器の制御手段が他の全ての火災警報器に対して送信手段より火災警報メッセージを含む無線信号を送信させ、当該火災警報メッセージを受信したことを示す応答メッセージを送信元である火災警報器を除く他の全ての火災警報器から受け取ったのち、一定周期の同期信号を送信手段から送信させ、特定の火災警報器を含む全ての火災警報器では、特定の火災警報器の送信手段から前記同期信号の送信が開始された後、制御手段が当該同期信号によって規定される複数のタイムスロットのうちで自己に割り当てられている特定のタイムスロットに無線信号を格納して送信手段から送信させることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明によれば、全ての火災警報器で火災警報が報知され始めてからは特定の火災警報器が送信する同期信号によって規定される複数のタイムスロットに他の全ての火災警報器を割り当てて時分割多元接続による無線通信を行うので、無線信号の衝突を確実に回避することができる。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、特定の火災警報器の制御手段は、他の火災警報器に対するメッセージを同期信号に含めて送信するとともに、当該メッセージに対する受信応答の返信を他の火災警報器に対して要求しないことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明によれば、受信応答の返信を省略することにより、電力消費をさらに抑えることができる。
【0011】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、特定の火災警報器を除く他の火災警報器の制御手段は、火災感知手段が火災を感知しなくなった場合に復旧通知メッセージを含む無線信号を送信手段に送信させ、特定の火災警報器の制御手段は、何れかの火災警報器から復旧通知メッセージを受け取った場合、当該火災警報器を除く他の全ての火災警報器の火災感知手段が火災を感知していないことを確認したのち、他の全ての火災警報器に対して復旧通知メッセージを含む同期信号を送信手段に送信させ、特定の火災警報器を除く他の火災警報器の制御手段は、特定の火災警報器から送信された復旧通知メッセージを受け取った場合に警報手段に火災警報の報知を停止させて復旧することを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明によれば、特定の火災警報器の制御手段が、特定の火災警報器を含む全ての火災警報器の火災感知手段で火災が感知されていないことを確認してから、全ての火災警報器における火災警報の報知を停止して火災復旧するので、火災警報の失報を防ぐことができる。
【0013】
請求項5の発明は、請求項4の発明において、特定の火災警報器の制御手段は、復旧通知メッセージを送信する際に受信応答の返信を要求し、他の全ての火災警報器から受信応答を受け取ったのちに、同期信号の送信を停止することを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、請求項4の発明において、特定の火災警報器の制御手段は、復旧通知メッセージの送信元の火災警報器を除く他の全ての火災警報器に対して火災感知手段が火災を感知していないことを確認するための復旧確認メッセージを送信手段に送信させ、当該他の全ての火災警報器から火災感知手段が火災を感知していない旨の応答メッセージを受け取った場合に、復旧通知メッセージを送信手段に送信させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、火災を感知していないときの電力消費を抑えて電池寿命を延ばすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0017】
図1は本実施形態のシステム構成図であり、複数台(図示は2台のみ)の火災警報器TRで火災警報システムが構成されている。なお、以下の説明では、火災警報器TRを個別に示す場合は火災警報器TR1,TR2,…,TRnと表記し、総括して示す場合は火災警報器TRと表記する。
【0018】
火災警報器TRは、アンテナ3から電波を媒体とした無線信号を送信するとともに他の火災警報器TRが送信した無線信号をアンテナ3で受信する無線送受信部2と、音(ブザー音や音声メッセージなど)による火災警報(以下、「警報音」と呼ぶ。)を報知(スピーカから鳴動)する警報部5と、マイコンを主構成要素とし火災感知部4で火災を感知したときに警報部5に警報音を鳴動させるとともに他の火災警報器TRに対して火災警報を報知させるための火災警報メッセージを含む無線信号を無線送受信部2より送信させる制御部1と、後述するように警報音の鳴動を停止するための操作入力などを受け付ける操作入力受付部6と、乾電池等の電池を電源として各部に動作電源を供給する電池電源部7とを具備している。操作入力受付部6は1乃至複数のスイッチ(例えば、押釦スイッチ)を有しており、スイッチが操作されることで各スイッチに対応した操作入力を受け付けるとともに当該操作入力に対応した操作信号を制御部1に出力する。なお、各火災警報器TR1,TR2,…には固有の識別符号が割り当てられており、当該識別符号によって無線信号の宛先並びに送信元の火災警報器TR1,TR2,…が特定できる。
【0019】
無線送受信部2は、電波法施行規則第6条に規定される「特定小電力無線局」に準拠して電波を媒体とする無線信号を送受信するものである。また火災感知部4は、例えば、火災に伴って発生する煙や熱、炎などを検出することで火災を感知するものである。但し、無線送受信部2並びに火災感知部4の詳細な構成については、従来周知であるから詳細な説明は省略する。
【0020】
制御部1は、メモリに格納されたプログラムをマイコンで実行することによって後述する各種の機能を実現している。火災感知部4で火災の発生が感知されると、制御部1は警報部5が備えるブザーを駆動して警報音を鳴動させたり、あるいは予めメモリ等に格納されている警報用の音声メッセージ(例えば、「火事です」など)をスピーカに鳴動させることで火災警報を報知するとともに、他の火災警報器TRにおいても火災警報を報知させるため、火災警報メッセージを含む無線信号を無線送受信部2より送信させる。また、他の火災警報器TRから送信された無線信号を無線送受信部2で受信することにより火災警報メッセージを受け取ったときも、制御部1は警報部5を制御して警報音を鳴動させる。つまり、制御部1では火災感知部4が火災を感知したときに警報部5から警報音を鳴動させて火災警報を報知するとともに火災警報メッセージを含む無線信号を無線送受信部2より送信させる機能を有している。
【0021】
ここで、電波法施行規則第6条に規定される「特定小電力無線局」には、主として火災、盗難その他異常の通報又はこれに付随する制御を行う小電力セキュリティシステムの無線設備について規定された「小電力セキュリティシステムの無線局の無線設備 標準規格(社団法人電波産業会 標準規格RCR STD−30)」があり、当該標準規格では、無線信号を連続して送信してもよい期間(送信期間)が3秒以下、送信期間と送信期間の間に設けられた、無線信号を送信してはいけない期間(休止期間)が2秒以上と規定されている。このために本実施形態における制御部1では、上記標準規格に適合する送信期間に無線信号を送信させるとともに休止期間に送信を停止し且つ受信可能な状態としている。
【0022】
また電池電源部7の電池寿命をできるだけ長くするため、制御部1ではマイコンに内蔵するタイマで所定の間欠受信間隔を繰り返しカウントするとともに間欠受信間隔のカウントが完了する毎に無線送受信部2を起動して所望の電波(他の火災警報器TRが送信した無線信号)が受信できるか否かをチェックしている。そして、当該電波が捉えられなければ、制御部1が直ちに無線送受信部2を停止して待機状態に移行させることで火災を感知していないときの平均消費電力を大幅に低減し、その結果、電力消費を抑えて電池寿命を延ばすようにしている。なお、電波の受信チェックは、無線送受信部2から出力される、受信信号強度の大小に比例した直流電圧信号である受信信号強度表示信号(Receiving Signal Strength Indication:RSSI信号)に基づいて制御部1が行っており、詳細については従来周知であるから省略する。
【0023】
さらに特定の火災警報器TR1(以下、親局と呼ぶ。)の制御部1では、定期的(例えば、24時間毎)に無線送受信部2を起動して他の火災警報器TR2,TR3,…(以下、子局と呼ぶ。)が正常に動作しているか否かの確認(生死確認)を行うために確認メッセージを含む無線信号を送信させるとともに、無線送受信部2を受信状態に切り換えて各火災警報器TR2,…から送信される応答メッセージを含む無線信号を受信し、確認メッセージを含む無線信号を送信してから所定時間内に応答メッセージを含む無線信号を送信してこない子局があれば、警報部5が備えるブザーを駆動して報知音を鳴動させるなどして子局に異常(電池切れや通信パスの異常など)が発生したことを知らせる機能も有している。
【0024】
また親局の制御部1は、火災感知部4が火災を感知して警報部5から警報音を鳴動させるとともに各子局に火災警報メッセージを送信した後、若しくは何れかの子局から火災警報メッセージを受信した後においては、無線送信部2に一定周期で同期信号を送信させる。この同期信号は、複数の火災警報器TR同士でTDMA(時分割多元接続)方式の無線通信を行うために必要なタイムスロットを規定する信号であって、その1周期(サイクル)が複数のタイムスロットに分割され、全ての子局にそれぞれ互いに異なるタイムスロットが1つずつ割り当てられる。そして、親局から子局へのメッセージは同期信号に含めて送信され、子局から親局へのメッセージを含む無線信号は、各子局に割り当てられているタイムスロットに格納されて送信される。故に、複数台の火災警報器TR(親局並びに子局)から送信される無線信号の衝突を確実に回避することができる。なお、各火災警報器TRに対するタイムスロットの割当は固定であってもよいが、親局から送信する同期信号によってタイムスロットの割当情報を各子局に通知しても構わない。
【0025】
図2は火災警報器TRが送受信する無線信号のデータフォーマットを示しており、同期ビット(プリアンブル:PA)、フレーム同期パターン(ユニークワード:UW)、宛先アドレスDA、送信元アドレスSA、メッセージM、CRC符号で1フレームが構成されている。ここで、宛先アドレスDAとして各火災警報器TRの識別符号を設定すれば当該識別符号の火災警報器TRのみが無線信号を受信してメッセージを取得することになるが、宛先アドレスDAとして何れの火災警報器TRにも割り当てられていない特殊なビット列(例えば、すべてのビットを1としたビット列)を設定することで無線信号を同報(マルチキャスト)して全ての火災警報器TRにメッセージを取得させることができる。例えば、火災警報メッセージを含む無線信号が親局から全ての子局に同報される。なお、制御部1は、非同期で無線信号を伝送しているときには1フレーム分の無線信号を1回の送信期間内で送信可能な数だけ連続して無線送受信部2から送信させるが、無線信号をTDMA方式で送受信するときは1つのタイムスロットに複数フレーム分の無線信号を格納する必要はない。
【0026】
次に、図3のタイムチャートを参照して、TDMA方式の無線通信に移行する際の本実施形態の送受信動作を説明する。
【0027】
例えば、子局TR2において火災感知部4が火災を感知すると、子局TR2の制御部1は警報部5より警報音を鳴動させるとともに無線送受信部2を起動し、火災警報メッセージを含む無線信号を他の全ての火災警報器TR(親局TR1及び他の子局TR3,…)に宛てて送信する。この際、送信元の子局TR2の制御部1は、送信期間内で送信可能なフレーム数だけ無線信号を連続して送信し、送信期間後の休止期間(受信期間)には無線送受信部2を受信状態に切り換える。ここで、各火災警報器TRは非同期で間欠受信しているが、ある程度の回数(例えば、3回)の送信期間を繰り返せば、火災警報メッセージを含む無線信号を受信することができる。
【0028】
ここで、特定小電力無線を利用すれば、無線通信距離としては通常の住宅ひとつのエリア内であれば十分カバーできるので、火災元の子局TR2が、他の火災警報器TR(親局TR1及び他の子局TR3,…)に対しメッセージを送信することは通常は十分可能である。しかしながら、上述したように親局TR1は各子局TR2〜TR5の生死確認を定期的に行っており、親局TR1と各子局TR3〜TR5との間では通信パスの正常性が確認されているが、子局TR2〜TR5間の通信パスは確認されていないため、例えば障害物などの影響によって、ある子局にはメッセージが届いていない可能性もある。
【0029】
そこで、火災警報メッセージを受信した親局TR1の制御部1は、送信元の子局TR2を除く他の子局TR3〜TR5に対して火災警報メッセージを含む無線信号を複数回連続して送信する。他の子局TR3〜TR5の制御部1では、子局TR2又は親局TR1から送信された火災警報メッセージを受け取ると直ちに警報部5より警報音を鳴動させるとともに無線送受信部2より確認応答(ACK)を返信する。尚、このように少なくとも1台の火災警報器TRで火災が感知されることで全ての火災警報器TRが火災警報を報知(警報音を鳴動)することを、以下では「火災連動」と呼ぶ。
【0030】
親局TR1の制御部1は、他の全ての子局TR3〜TR5からACKを受け取れば、タイムスロットを規定するための同期信号を一定の周期で無線送受信部2から送信させる。ここで、本実施形態では先頭のタイムスロットTS1を子局TR2に、2番目のタイムスロットTS2を子局TR3に、3番目のタイムスロットTS3を子局TR4に、4番目のタイムスロットTS4を子局TR5にそれぞれ割り当てている。
【0031】
ここで、親局TR1は各子局TR2〜TR5の生死確認を定期的に行っており、親局TR1と各子局TR3〜TR5との間では通信パスの正常性が確認されているが、子局TR2〜TR5間の通信パスは確認されていない。したがって、子局TR2,…が多数配置された場合、子局TR2,…間の通信パスの数は非常に多くなる為、子局TR2,…間の通信パスの正常性の確認を行うと電池消耗が激しくなるので、上述のように特定の火災警報器TR1を親局とし、その他の火災警報器TR2,…を子局として親局TR1から各子局TR2,…に火災警報メッセージやその他のメッセージ(後述する)を通知することで相互に通信パスが確立できない子局が存在する場合でも確実に火災連動させることができるものである。
【0032】
また、全ての火災警報器TRが警報音を鳴動することにより連動が開始されると、上述のように親局TR1から一定周期で同期信号が送信されてTDMA方式の通信に移行するのであるが、親局TR1の制御部1では、同期信号に含めることで火災警報メッセージを一定周期で全ての子局TR2,…に繰り返し送信している。そして、各子局TR2,…の制御部1では、親局TR1から送信される火災警報メッセージを受け取る度に警報部5の状態を確認し、仮に警報部5が停止していたとしたら警報部5に再度警報音を鳴動させる。したがって、全ての火災警報器TRで火災警報が報知され始めてからは特定の火災警報器(親局)TR1が送信する同期信号によって規定される複数のタイムスロットに他の全ての火災警報器(子局)TR2,…を割り当てて時分割多元接続(TDMA)による無線通信を行うことで衝突を回避することができ、さらに、特定の火災警報器(親局)TR1から他の全ての火災警報器(子局)TR2,…に対して火災警報メッセージを同期信号に含めて周期的に送信することで確実に火災警報を報知することができる。その結果、無線信号の衝突を回避しつつ複数の火災警報器TRを効果的に連動させることができる。
【0033】
ところで、本実施形態の火災警報システムは、何れの火災警報器TRにおいても火災が検出されていない状態(待機状態)と、全ての火災警報器TRが警報音を鳴動している状態(連動鳴動状態)と、後述するように火災を検出している(火元の)火災警報器TRのみが警報音を鳴動し、火元以外の火災警報器TRが警報音を停止している状態(連動停止状態)との間で動作状態を遷移させている。すなわち、待機状態において少なくとも何れか1台の火災警報器TRで火災が検出されると、上述したように火元の子局TR2並びに親局TR1から他の全ての子局TR3,…に火災警報メッセージが送信されることで親局TR1と子局TR2,…を含む全ての火災警報器TRで警報音が鳴動されて連動鳴動状態に遷移する。
【0034】
そして、連動鳴動状態において何れかの火災警報器TRの操作入力受付部6で警報音の鳴動を停止するための操作入力が受け付けられた場合、当該火災警報器TRが親局TR1であれば親局TR1から全ての子器TR2,…に対して警報音の停止を要求するメッセージ(警報停止メッセージ)を送信することにより、あるいは、当該火災警報器TRが子局TR2,…であれば当該子局TR2,…から警報停止メッセージを受け取った親局TR1が他の子局TR2,…に対して警報停止メッセージを送信することにより、火元以外の火災警報器TRで警報音が停止されて連動停止状態に遷移する。但し、火元の火災警報器TRの操作入力受付部6で警報音停止の操作入力が受け付けられた場合、当該火元の火災警報器TRにおいても警報音を停止する。ここで、親局TR1の制御部1は図示しないメモリに親局TR1並びに各子局TR2,…毎の火災検出状況を随時更新しながら保持しており、後述するように全ての火災警報器TRで火災が検出されなくなったときに火災連動状態から待機状態に遷移する。
【0035】
また、連動鳴動状態から連動停止状態に遷移した場合、親局TR1の制御部1では所定の警報音停止時間(例えば、5分間)の限時を開始する。そして、警報音停止時間が経過したのち、親局TR1の制御部1はメモリに保持している火災検出状況を参照し、全ての火災警報器TRで火災を検出していなければ、同期信号によって復旧通知のメッセージを送信することで火災連動状態から待機状態に遷移し、仮に少なくとも1台の火災警報器TRで火災を検出していれば、同期信号によって火災警報メッセージを送信することで連動停止状態から連動鳴動状態へ遷移させる。尚、連動停止状態において何れかの火災警報器TRが新たに火災を検出した場合にも親局TR1の制御部1が同期信号によって火災警報メッセージを送信することで連動停止状態から連動鳴動状態へ遷移させる。
【0036】
例えば、図4のタイムチャートに示すように、親局TR1を火元とする火災連動状態(連動鳴動状態)において、火元でない子局TR4の操作入力受付部6で警報音停止の操作入力が受け付けられることで当該子局TR4から警報停止メッセージが送信されると、警報停止メッセージを受け取った親局TR1の制御部1は同期信号によって警報停止メッセージM2を送信しつつ警報音停止時間の限時を行う。但し、火元である親局TR1では警報部5による警報音の鳴動は継続される。そして、警報音停止時間が経過したのち、親局TR1の制御部1は自らの火災感知部4による火災検出状況並びに子局TR2,…おける火災検出状況を確認し、少なくとも何れか1台の火災警報器TRが火災を検出しているときは再度火災警報メッセージを同期信号により各子局TR2,…に送信することで連動停止状態から連動鳴動状態へ遷移させる。
【0037】
一方、図5のタイムチャートに示すように、警報音停止時間内に火災が鎮火して火災感知部4が火災を検出しなくなっていれば、親局TR1の制御部1は警報音停止時間が経過したのちに同期信号によって各子局TR2,…に復旧通知メッセージを送信し、全ての子局TR2,…から返信されるACKを受け取った時点で連動停止状態から待機状態に遷移し、同期信号の送信を停止することでTDMA方式による無線通信(以下、「同期通信」と呼ぶ。)から間欠送信・間欠受信による無線通信(以下、「非同期通信」と呼ぶ。)に戻る。
【0038】
また、図6のタイムチャートに示すように、子局TR4を火元とする連動鳴動状態において、火元の火災が鎮火して子局TR4の火災感知部4が火災を検出しなくなれば、子局TR4から親局TR1に宛てて復旧通知メッセージが送信される。当該復旧通知メッセージを受け取った親局TR1の制御部1はメモリに保持している火災検出状況を参照し、全ての火災警報器TRで火災を検出していなければ同期信号によって復旧通知メッセージM3を各子局TR2,…に送信する。そして、全ての子局TR2,…から返信されるACKを親局TR1の制御部1が受け取れば、連動停止状態から待機状態に遷移し、同期信号の送信を停止することで同期通信から非同期通信に戻る。
【0039】
ここで、何れかの子局TR2,…から復旧通知メッセージを受け取った親局TR1が直ちに他の子局TR3,…に復旧通知メッセージを送信するのではなく、何れかの子局TR2,…から復旧通知メッセージを受け取った親局TR1の制御部1が、各子局TR2,…に対して本当に復旧してよいかを確認するための復旧確認メッセージを同期信号によって送信し、当該復旧確認メッセージを受け取った全ての子局TR2,…からACK(この場合は復旧可能であることの応答)を受け取ったのちに復旧通知メッセージを送信することで火災連動状態(同期通信)から待機状態(非同期通信)に戻るようにしても構わない。
【0040】
一方、図7のタイムチャートに示すように、新たに別の火災警報器(例えば、子局TR3)で火災が検出された場合、初めの火元である子局TR4から復旧通知メッセージを受け取った親局TR1の制御部1は、メモリに保持している火災検出状況を参照し、子局TR3が火災検出中であることから復旧通知メッセージを送信せず、引き続き火災警報メッセージを送信することで火災連動状態を維持する。
【0041】
ここで、火災連動状態における親局TR1の制御部1が行う処理について、図8のフローチャートを参照して簡単にまとめる。待機状態において何れかの子局TR2,…から火災警報メッセージを受け取ると(ステップS1)、親局TR1の制御部1は図示しないメモリに各子局TR2,…毎に保持している火災検出状況を更新(火災非検出から火災検出へ変更)し(ステップS2)、一方、火元の子局TR2,…から復旧通知メッセージを受け取れば(ステップS3)、当該子局TR2,…の火災検出状況を火災検出から火災非検出に更新する(ステップS4)。火災連動状態において何れの子局TR2,…からも復旧通知メッセージを受け取っていないときに何れかの子局TR2,…から警報停止メッセージを受け取った場合(ステップS5)、親局TR1の制御部1は警報を停止することを決定して無線送受信部2から警報停止メッセージを含む同期信号を送信させる(ステップS6)。また、連動鳴動状態から連動停止状態へ遷移してから警報音停止時間が経過するまでの間は同期信号によって定期的に警報停止メッセージを送信し(ステップS7,S8,S6)、警報音停止時間が経過したら(ステップS8)、メモリに保持している火災検出状況を参照して火災検出中の火災警報器(親局TR1及び子局TR2,…)が残っているか否かを判断し(ステップS9)、1台でも火災検出中の火災警報器が残っていれば火災連動の継続を決定して無線送受信部2から火災警報メッセージを含む同期信号を送信させ(ステップS10)、一方、全ての火災警報器が火災非検出になっていれば火災連動状態から待機状態への復旧を決定して無線送受信部2から復旧通知メッセージを含む同期信号を送信させる(ステップS11)。
【0042】
而して、本実施形態においては、特定の火災警報器(親局TR1)の制御部1が、他の火災警報器(子局TR2,…)から同期通信によって送信されるメッセージ(警報停止メッセージや復旧通知メッセージなど)の内容及びタイミングを総合的に考慮して連動鳴動状態から連動停止状態、連動鳴動状態又は連動停止状態から待機状態への遷移の可否を判断しているため、複数台の火災警報器TRをより効果的に連動させることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態における火災警報器(親局及び子局)のブロック図である。
【図2】同上における無線信号のデータフォーマットである。
【図3】同上の待機状態から火災連動状態へ遷移する動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】同上の連動鳴動状態から連動停止状態へ遷移する動作を説明するためのタイムチャートである。
【図5】同上の連動鳴動状態から連動停止状態へ遷移する動作を説明するためのタイムチャートである。
【図6】同上の火災連動状態から待機状態へ遷移する動作を説明するためのタイムチャートである。
【図7】同上の火災連動状態における動作を説明するためのタイムチャートである。
【図8】同上の火災連動状態における親局の動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0044】
TR1 火災警報器(親局)
TR2 火災警報器(子局)
1 制御部(制御手段)
2 無線送受信部(受信手段,送信手段)
4 火災感知部(火災感知手段)
5 警報部(警報手段)
7 電池電源部(電源供給手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の火災警報器を備え、これら複数の火災警報器の間で電波を媒体とする無線信号を伝送する火災警報システムであって、
各火災警報器は、火災を感知する火災感知手段と、火災警報を報知する警報手段と、無線信号を送信する送信手段と、無線信号を受信する受信手段と、火災感知手段で火災を感知したときに他の火災警報器に火災警報を報知させるための火災警報メッセージを含む無線信号を送信手段から送信させ、且つ受信手段により他の火災警報器から送信される無線信号を受信して前記火災警報メッセージを受け取ったときに警報手段に火災警報を報知させる制御手段と、電池を電源として各手段に電源を供給する電源供給手段とを具備し、
制御手段は、火災感知手段が火災を感知していない間は受信手段を間欠的に起動して他の火災警報器が送信した無線信号の有無を判断し、無線信号有りと判断したら受信手段によって当該他の火災警報器が送信する無線信号を受信するとともに、無線信号無しと判断したら受信手段を休止させることを特徴とする火災警報システム。
【請求項2】
何れかの火災警報器から火災警報メッセージを含む無線信号が送信された場合、当該無線信号を受信した特定の火災警報器の制御手段が他の全ての火災警報器に対して送信手段より火災警報メッセージを含む無線信号を送信させ、当該火災警報メッセージを受信したことを示す応答メッセージを送信元である火災警報器を除く他の全ての火災警報器から受け取ったのち、一定周期の同期信号を送信手段から送信させ、
特定の火災警報器を含む全ての火災警報器では、特定の火災警報器の送信手段から前記同期信号の送信が開始された後、制御手段が当該同期信号によって規定される複数のタイムスロットのうちで自己に割り当てられている特定のタイムスロットに無線信号を格納して送信手段から送信させることを特徴とする請求項1記載の火災警報システム。
【請求項3】
特定の火災警報器の制御手段は、他の火災警報器に対するメッセージを同期信号に含めて送信するとともに、当該メッセージに対する受信応答の返信を他の火災警報器に対して要求しないことを特徴とする請求項2記載の火災警報システム。
【請求項4】
特定の火災警報器を除く他の火災警報器の制御手段は、火災感知手段が火災を感知しなくなった場合に復旧通知メッセージを含む無線信号を送信手段に送信させ、
特定の火災警報器の制御手段は、何れかの火災警報器から復旧通知メッセージを受け取った場合、当該火災警報器を除く他の全ての火災警報器の火災感知手段が火災を感知していないことを確認したのち、他の全ての火災警報器に対して復旧通知メッセージを含む同期信号を送信手段に送信させ、
特定の火災警報器を除く他の火災警報器の制御手段は、特定の火災警報器から送信された復旧通知メッセージを受け取った場合に警報手段に火災警報の報知を停止させて復旧することを特徴とする請求項3記載の火災警報システム。
【請求項5】
特定の火災警報器の制御手段は、復旧通知メッセージを送信する際に受信応答の返信を要求し、他の全ての火災警報器から受信応答を受け取ったのちに、同期信号の送信を停止することを特徴とする請求項4記載の火災警報システム。
【請求項6】
特定の火災警報器の制御手段は、復旧通知メッセージの送信元の火災警報器を除く他の全ての火災警報器に対して火災感知手段が火災を感知していないことを確認するための復旧確認メッセージを送信手段に送信させ、当該他の全ての火災警報器から火災感知手段が火災を感知していない旨の応答メッセージを受け取った場合に、復旧通知メッセージを送信手段に送信させることを特徴とする請求項4記載の火災警報システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−251907(P2009−251907A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98661(P2008−98661)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】