説明

炊飯・煮炊き用鍋

【課題】 煮炊き時間等を短縮させることにより省エネを図り、また煮こぼれや煮汁の飛散防止に有効な炊飯・煮炊き用鍋を簡素に且つ安価に構成する。
【解決手段】 鍋本体2の開口部周縁に、鍋蓋3の外周部を囲んで立ち上がるエプロン部2eを設け、鍋蓋3の形状として、中央が高く周囲が低い断面アーチ型にし、鍋蓋3の所定箇所に複数の排出孔7を貫通して設ける。これら排出孔7の上部を耐熱ゴム製の弾性素材である蒸気等排出部材5で覆い、この蒸気等排出部材5の下面に、放射方向に延び、周縁部に向けて開口する凹条溝8を設け、排出孔7から出された蒸気等が、凹条溝8を通って、鍋蓋3の上面に向けて排出されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煮炊きや煮沸時間を短縮させることにより省エネを図ることができ、また煮こぼれや煮汁の飛散防止に有効な炊飯・煮炊き用鍋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鍋本体と鍋蓋を備えた調理用鍋において、鍋本体と鍋蓋の隙間から煮こぼれが発生するのを防止する技術として、例えば、鍋からあふれ出る煮汁を鍋本体の煮汁受けで受け、これを戻し口を通して鍋本体内に戻すような技術(例えば、特許文献1参照。)とか、鍋本体と鍋蓋の隙間から煮こぼれが発生する前に、鍋本体内の水蒸気を鍋蓋のニードル弁で逃がすような技術(例えば、特許文献2参照。)とか、鍋蓋として、ステンレススチールによって内部が空洞の半球状の網を形成し、底部にU字状の輪を嵌入するような技術(例えば、特許文献3参照。)などが知られている。
一方、鍋蓋の中央の摘みに蒸気抜き孔を設けるような技術(特許文献4参照。)も知られており、この技術では摘みを筒壁に対して回転可能に嵌着し、摘みの回転操作によって蒸気抜き孔の開度を調整できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−277031号公報
【特許文献2】特開2005−211635号公報
【特許文献3】特開2007−301322号公報
【特許文献4】特開平8−164076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記特許文献1や特許文献2のように鍋本体に煮汁受けや戻し口を設けたり、鍋蓋にニードル弁を設けるような技術は、構造が複雑になりがちで高価なものになりやすく、しかも、戻し口やニードル弁に煮汁等が詰まったり付着したりした場合には手入れが面倒くさいという問題があった。また、特許文献3のように、鍋蓋自体を網にした場合には、煮汁が外部に噴出す等のおそれを防止できるものの、鍋本体の内部を密閉することができないため、煮炊き時間等をあまり短縮することができず、ガスの使用量等を削減するのに限界があった。
更に、特許文献4のように、摘みに開度調整可能な蒸気抜き孔を設けるような技術においては、鍋本体と鍋蓋の隙間から煮汁が出た場合には、鍋周辺のレンジまわりに煮汁がこぼれて汚れ、炊事環境を清潔に維持できないという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、極めて簡素な構成を採用することにより安価に構成でき、煮炊きや煮沸時間の短縮させることにより省エネを図ることができるとともに、煮こぼれや煮汁の飛散防止に有効で、かつ手入れの簡単な炊飯・煮炊き用鍋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明は、鍋本体と鍋蓋を備えた炊飯・煮炊き用鍋において、前記鍋本体の開口部周縁を、鍋蓋の周縁より外側上方に延出して鍋蓋を囲むエプロン部とし、また前記鍋蓋を、中央の摘み部分の高さが一番高く周縁に向けて高さが低くなるように湾曲する断面アーチ形状にするとともに、この鍋蓋の所定箇所に蒸気等を排出する排出孔を設け、また、摘み部分には、鍋蓋上面に密接する弾性素材からなる蒸気等排出部材を前記鍋蓋の排出孔の上面を覆うように設け、この蒸気等排出部材の下面には、前記鍋蓋の排出孔に連通し、かつ該排出孔から排出される蒸気等を蒸気等排出部材の周縁部から排出するための凹条溝を放射方向に沿って形成するようにした。
【0007】
そして、煮炊きにおいて、鍋本体内の圧力が高まってくると、鍋蓋の排出孔を通った蒸気や煮汁等が蒸気排出部材の凹条溝を通って鍋蓋の上面に排出されるようにすれば、この蒸気等は、鍋蓋の周囲を囲うエプロン部によって鍋の外に出ることなく鍋本体と鍋蓋の隙間から鍋本体内に戻される。この際、排出される蒸気等として、軽い蒸気以外に比較的重い煮汁や水分等が含まれる場合にも、煮汁や水分等は鍋蓋のアーチ形状に沿って斜め下方に排出されるため、周囲に飛散することがない。
また、鍋本体内の圧力が所定値以上に高まった場合でも、蒸気等排出部材が弾性素材であるため、鍋蓋の排出孔から排出される蒸気等の圧力によって蒸気等排出部材が弾性変形し、鍋蓋と蒸気等排出部材の間に隙間が生じて過度な圧力を逃がすよう作用し、鍋蓋がガタツクような不具合がない。
また、鍋蓋を閉めたまま煮炊きするため、煮炊き時間を短縮させることができ省エネを図ることができる。
更に、構成が簡素であるため、安価に構成できる。
【0008】
このとき、鍋蓋の排出孔を複数設けるとともに、蒸気等排出部材の凹条溝も複数条設け、蒸気等排出部材を中心軸まわりに回転させることにより、蒸気等の排出量を調整可能にすれば、状況に合せて適切な量だけ蒸気等を排出できるようになり、より好ましい。
【0009】
また本発明では、前記蒸気等排出部材を容易に分解できるようにした。
このように、蒸気等排出部材を容易に取り外すことができるようにすることで、例えば蒸気排出部材の凹状溝に煮汁等が詰まるようになった場合でも簡単に手入れすることができる。
【発明の効果】
【0010】
鍋本体と鍋蓋を備えた炊飯・煮炊き用鍋において、鍋本体の開口部周縁を鍋蓋を囲むエプロン部とし、また鍋蓋の形状を断面アーチ形状にするとともに、この鍋蓋の所定箇所に蒸気等を排出する排出孔を設け、摘み部分に鍋蓋上面に密接する弾性素材からなる蒸気等排出部材を前記鍋蓋の排出孔の上面を覆うように設け、この蒸気等排出部材の下面には、鍋蓋の排出孔から排出される蒸気等を蒸気等排出部材の周縁部から排出するための凹条溝を形成することで、煮汁等の飛散を確実に防止でき、また煮炊き時間の短縮によって省エネを図ることができ、しかも簡素な構成でより安価に構成できる。
この際、鍋蓋の排出孔を複数設けるとともに、蒸気等排出部材の凹条溝も複数条設け、蒸気等排出部材を中心軸まわりに回転させることで蒸気等の排出量を調整可能にすれば、より好ましい。
また、蒸気等排出部材を容易に分解できるようにすれば、例えば蒸気排出部材の凹状溝に煮汁等が詰まるようになった場合でも簡単に手入れすることができて便利である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る炊飯・煮炊き用鍋の一例を示す全体斜視図である。
【図2】同炊飯・煮炊き用鍋の縦断面図である。
【図3】鍋蓋を裏側から見た説明図である。
【図4】蒸気等排出部材の凹条溝の説明図である。
【図5】蒸気等の排出量を調整する際の鍋蓋の排出孔と蒸気等排出部材の凹条溝の関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る炊飯・煮炊き用鍋の実施例について添付した図面に基づき説明する。
本発明に係る炊飯・煮炊き用鍋は、煮炊きや煮沸時間を短縮させることにより省エネを図ることができ、また煮こぼれや煮汁の飛散防止に有効な炊飯・煮炊き用鍋を安価に構成できるようにされている。
【0013】
本炊飯・煮炊き用鍋1の一例は、図1、図2に示すように、金属製の鍋本体2と鍋蓋3を備えており、鍋本体2は、上部の開口部付近に、鍋蓋3の周縁より外側上方に延出して鍋蓋3の周囲を取り囲むエプロン部2eを備え、このエプロン部2eは、一旦外側に向けて径が拡がる方向に湾曲した後、内側に向けて湾曲し直すような形態にされている。
【0014】
前記鍋蓋3は、図2に示すように、中央の摘み4部分の高さが一番高く、周縁に向かうほど高さが低くなるように湾曲する断面アーチ形状にされ、中央上部にネジ棒6が溶着等によって固着されており、このネジ棒6は、後述する蒸気等排出部材5の挿通孔5hを若干の隙間をもって挿通し、その上から、摘み4のネジ孔4nをネジ棒6の上部に螺合させることにより、蒸気等排出部材5の下面を、鍋蓋3の上面に密接させると同時に、蒸気等排出部材5が抜け出すのを防止している。
なお、本実施例では、摘み4と蒸気等排出部材5を別体に構成しているが、これらを一体に構成してもよい。
【0015】
また、鍋蓋3の所定箇所には、図3に示すように、複数個の排出孔7が貫通して設けられ、この排出孔7の位置は、以下に述べる蒸気等排出部材5の径より小さい範囲に収まるよう中心部寄りの位置にすることで、蒸気等排出部材5によってすべての排出孔7を覆うことができるようにされている。
【0016】
前記蒸気等排出部材5は、耐熱性ゴム等の弾性素材から構成され、図4に示すように、下面側(鍋蓋3上面との接触面)に複数の凹条溝8が彫り込んで形成され、この凹条溝8は、蒸気等排出部材5の放射方向に沿って形成されるとともに、周縁部に向けて開口している。
【0017】
このため、鍋蓋3の排出孔7の上部に凹条溝8が位置すると、図2に示すように、鍋本体2内の蒸気等が排出孔7と凹条溝8を通って鍋蓋3の上面に向けて排出されるようになるが、この際、比較的軽い蒸気は上方に飛散し、比較的重い水分や煮汁等は鍋蓋3の断面アーチ形状に沿って斜め下方に落下し、鍋蓋3と鍋本体2の隙間から鍋本体2内に戻されるようになり、煮汁等が周囲に飛散するような不具合を抑制できる。この際、エプロン部2eの上端の形状が内側に向けて湾曲しているため、煮汁等が外にこぼれ出す恐れが少ない。
【0018】
ところで、鍋蓋3の排出孔7と蒸気等排出部材5の凹条溝8の相対位置関係を変化させると、蒸気等の排出量を調整することができる。
すなわち、図5(a)に示すように、蒸気等排出部材5をネジ棒6周りに回転させ、凹条溝8が最大個数の排出孔7の上部に位置するように調整すれば、全開状態となって蒸気等の排出量を最大にすることができ、図5(c)に示すように、凹条溝8が最小個数の排出孔7の上部に位置するように調整すれば、排出量を最小にすることができ、図5(b)に示すように、両者の中間位置にすれば、排出量を中間程度にすることができる。また、図5(d)に示すように、全ての排出孔7を塞ぐ位置に廻せば、すれば蒸気等の排出量をゼロにすることができる。
この際、鍋蓋3と蒸気等排出部材5の所定箇所には、全開、中開、小開、全閉の位置を知ることのできる目盛り等を表示している。
もちろん、摘み4と蒸気等排出部材5とを一体化している場合は、摘み4を回転させることにより蒸気等排出部材5を回転させることができるためより便利である。
【0019】
そして、このような蒸気等の排気量調整は、具材の種類や料理の種類などによって適切に調整することで、よりおいしい料理を効率よく調理することができる。
【0020】
なお、このような炊飯・煮炊き用鍋1は、カレーや煮込み料理等の調理以外に、例えば米を炊くための炊飯用として、またはウドンやソバやパスタ等を茹でるのための鍋などとして広い用途の調理に使用することができる。
【0021】
この際、鍋本体2内の圧力が所定値以上に高まり、鍋蓋3の排出孔7から排出される蒸気等の圧力が高まった場合でも、蒸気等排出部材5が弾性素材である耐熱ゴム製のため、蒸気等排出部材5が弾性変形し、鍋蓋3と蒸気等排出部材5との間に隙間が生じて過度な圧力を逃がすよう作用する。このため、鍋蓋3がガタツクような不具合がない。
【0022】
また、摘み4のネジを緩めて摘み4を取り外すと、蒸気等排出部材5は簡単に取り外すことができるため、例えば凹条溝8などに異物が詰まったような場合でも分解して取り除くことができ手入れが簡単である。
【0023】
なお、本発明は以上のような実施形態に限定されるものではない。本発明の特許請求の範囲に記載した事項と実質的に同一の構成を有し、同一の作用効果を奏するものは本発明の技術的範囲に属する。
例えば、凹条溝8や排出孔7の位置や数等は例示である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
煮こぼれや煮汁の飛散防止に有効であり、また、煮炊き時間等を短縮させることができて省エネが図られるため、例えば家庭等の調理具などとして広い範囲における普及が期待される。
【符号の説明】
【0025】
1…炊飯・煮炊き用鍋、2…鍋本体、3…鍋蓋、5…蒸気等排出部材、7…排出孔、8…凹条溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍋本体と鍋蓋を備えた炊飯・煮炊き用鍋であって、前記鍋本体の開口部周縁は、鍋蓋の周縁より外側上方に延出して鍋蓋を囲むエプロン部とされ、また前記鍋蓋は、中央の摘み部分の高さが一番高く周縁に向けて高さが低くなるように湾曲する断面アーチ形状にされるとともに、この鍋蓋の所定箇所には、蒸気等を排出する排出孔が設けられ、また、摘み部分には、鍋蓋上面に密接する弾性素材からなる蒸気等排出部材が前記鍋蓋の排出孔の上面を覆うように設けられ、この蒸気等排出部材の下面には、前記鍋蓋の排出孔に連通し、かつ該排出孔から排出される蒸気等を蒸気等排出部材の周縁部から排出するための凹条溝が放射方向に沿って形成されることを特徴とする炊飯・煮炊き用鍋。
【請求項2】
前記鍋蓋の排出孔は複数設けられるとともに、前記蒸気等排出部材の凹条溝も複数条設けられ、該蒸気等排出部材を中心軸まわりに回転させることにより、蒸気等の排出量を調整可能にしたことを特徴とする請求項1に記載の炊飯・煮炊き用鍋。
【請求項3】
前記蒸気等排出部材は、容易に分解できるようにされることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の炊飯・煮炊き用鍋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−147756(P2011−147756A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141122(P2010−141122)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3158470号
【原出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(510017424)株式会社リフレッシュ (2)
【Fターム(参考)】