説明

炊飯器

【課題】内鍋外面から放出される熱を炊飯器本体内部に留め、内鍋全体の温度分布を均一することにより、優れた保温性能と、省エネルギー効果を発揮する炊飯器を実現する。
【解決手段】内鍋5を炊飯器本体1に支持する上枠3と、上枠の上面の少なくとも一部を覆う上枠カバー4と、上枠の左右に軸支され、前後方向に回転自在なハンドル20と、上枠の外側に位置し、炊飯器の下方外郭を形成するとともに前記ハンドルの挿入用の穴2aを有するボディ2と、上枠の下方に内鍋内の調理物を加熱するための加熱手段7を備えた保護枠6と、ハンドルの挿入用の穴を介して挿入されたハンドルと対向する上枠の側壁に設けられた、ハンドルを軸支するハンドル取付け用の軸穴3bと、側壁に設けられた、側壁から上枠の内鍋側に連なる補強リブ3cとを備え、側壁と補強リブと上枠とで開口部を上方に有する箱形状で上枠にハンドル取付け部を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭、あるいは業務用に使用する炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、エコロジーの観点により、炊飯器の消費電力量削減(省エネルギー化)が強く求められている。省エネルギー化の手段として、断熱性に優れた構成とし、調理物の加熱を効率良く行う方法がある。
【0003】
特許文献1に従来例の炊飯器が開示されている。従来例の炊飯器は、ボディにハンドルを挿入するためのハンドル軸より大きい円形状の穴と、上枠の側壁にハンドル取付け用軸穴を有し、その軸穴は基本形状は円であり、その円の外側に扇状の切欠きを有する形状でハンドルの回動軸の外形形状より大きく形成されている。ハンドルは略半円上に形成され、両端部に回転軸を有し、上枠のハンドル取付け用軸穴に相対する突起物を有している。このハンドルの回動軸の突起物を上枠のハンドル取付け用軸穴の切欠き部に合わせて挿入し、炊飯器本体にハンドルをセットする構成になっており、炊飯器本体にセットされたハンドルは、炊飯器本体を軸支すると共に、前後方向に回転自在に摺動することが可能である。炊飯器本体にセットされた状態から一旦ハンドルを回転させると、ハンドルの回動軸の凸部と上枠のハンドル取付け用軸穴の切欠き部がずれてハンドルが抜けない構成になっている。そのため、実使用時にはハンドルが抜けてしまうと不安全なため、炊飯器本体の組立時にハンドルを挿入しセットした後にハンドルを回転させた状態でハンドルを配設する構成となっている。前述のハンドルの配設構成により、従来例の炊飯器は、常時、上枠のハンドル取付け部の軸穴の切欠き部に隙間がある構成となっている。
【0004】
また、従来例の炊飯器は、上記ハンドル構成で炊飯器本体下方もしくは内鍋の外方側面に設置された加熱手段により内鍋及び内鍋内の調理物の加熱を行っている。
【0005】
一般的に内鍋内の調理物を加熱するために加熱手段により内鍋に与えられた熱量は、内鍋内部の調理物を加熱するのにすべてに使用されずに、その一部は内鍋外面から内鍋の外側の空間にも放出されている。従来例の炊飯器においても同様であり、その一部は内鍋外面から炊飯器本体下方の空間に熱が放出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−135269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来例の炊飯器において、内鍋及び内鍋内の調理物加熱時に発生する前述の内鍋外面から外側に放出される熱が、上枠のハンドル取付け用の軸穴、ボディのハンドル挿入用の穴を介して炊飯器本体外方に流出し、同時に外気がボディのハンドル挿入用穴、及び上枠のハンドル取付け用の軸穴を介して、炊飯器本体内部に流入し、その流入した外気が内鍋を冷却してしまうという課題が発生した。
【0008】
この課題は、加熱手段による加熱量が多い炊飯時では影響は少ないが、加熱量が少ない保温時では外気が低温(10℃以下)の環境においては、保温性能の低下を引き起こしてしまう。具体的には、冷却された内鍋の一部に局所的な水滴の結露が発生し、その結露した水滴が内鍋内部のご飯上に滴下し、ご飯のおいしさを損なう要因となる局所的なご飯の
白化を引き起こしてしまうというものである。
【0009】
特に、内鍋の上層部近傍は、内鍋内にご飯が保温されていたとしても、その上層部まではご飯が充填されている場合は少なく、また、ユーザーが都度ご飯を食べるため、ご飯は常に減少するため、内鍋内の上層部は、外気による冷却の影響を最も受けやすい部位である。そのため、前述の条件下において、非常に水滴が結露しやすく、その水滴が、内鍋側面部を伝って、内鍋内部のご飯上に滴下してしまい、内鍋側面部全周に局部的な白化を起してしまっていた。
【0010】
また、前述の問題を解決する為に、従来の炊飯器において側面誘導加熱手段による加熱を増加し、内鍋上部近傍を局所的に加熱するものもあったが、常温(10℃〜30℃)の環境下においては、逆に、過加熱になり内鍋側面部のご飯の乾燥、ご飯の劣化(黄変)等が発生し、保温性能の低下を引き起こしてしまう課題が発生した。また、同時に消費電力量の増加という弊害も引き起こしていた。
【0011】
本発明の炊飯器は、前記従来の課題を解決するもので、内鍋外面から放出される熱が炊飯器本体に外方に流出する経路を遮断することで、熱の放出量を軽減することができ、優れた保温性能(=保温したご飯がおいしいこと)と省エネルギー効果を有する炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の炊飯器は、炊飯器本体と、前記炊飯器本体の上面開口部を開閉自在に覆う蓋体と、前記炊飯器本体に着脱自在に収納される内鍋と、前記内鍋を炊飯器本体に支持する上枠と、前記上枠の上面の少なくとも一部を覆う上枠カバーと、前記上枠の左右に軸支され、前後方向に回転自在なハンドルと、前記上枠の外側に位置し、炊飯器の下方外郭を形成するとともに前記ハンドルの挿入用の穴を有するボディと、前記上枠の下方に前記内鍋内の調理物を加熱するための加熱手段を備えた保護枠と、前記ハンドルの挿入用の穴を介して挿入された前記ハンドルと対向する前記上枠の側壁に設けられた、前記ハンドルを軸支するハンドル取付け用の軸穴と、前記側壁に設けられた、前記側壁から前記上枠の内鍋側に連なる補強リブとを備え、前記側壁と前記補強リブと前記上枠とで開口部を上方に有する箱形状で前記上枠にハンドル取付け部を形成することを特徴とする炊飯器である。
【0013】
本発明によれば、内鍋外面から放出される熱と内鍋加熱手段から放出される熱の対流を上枠と保護枠との空間に留めることができ、上枠のハンドル取付け部近傍の内鍋が局所的に冷却されることを防止し、内鍋全体を均一な温度で維持することを実現できる。このことにより優れた保温性能を実現すると共に、炊飯器本体外部に放出する熱を減少することができるので、省エネルギー効果も得ることができる。
【0014】
更には、ハンドル取付け部の下方が箱形状を形成していることから、炊飯器本体を側面から落としてしまい、ハンドルが床面と衝突した場合においても、炊飯器本体に受ける衝撃力を上枠のハンドル取付け部で緩和することでき、耐落下性に優れた構成を実現することができる。
【0015】
請求項2記載の発明は、ハンドル取付け部内の立ち壁にハンドル軸の回動域に干渉しないように断熱性部材を配設することを特徴とする請求項1記載の炊飯器である。
【0016】
本発明によれば、ボディのハンドル挿入用の穴を介して上枠ハンドル取付け部を構成する空間内に流入する外気の影響を上枠のハンドル取付け部近傍の内鍋に与えることがないため、上枠のハンドル取付け部近傍の内鍋の局所的な冷却を防止することができる。
【0017】
請求項3記載の発明は、ハンドル取付け部の開口部の上部に、ハンドル軸の回動域に干渉しないように断熱性部材を充填し、前記断熱性部材は、上枠カバーで保持したことを特徴とする請求項1又は2記載の炊飯器である。
【0018】
本発明によれば、上枠のハンドル取付け部の内の熱対流を上枠ハンドル取付け部を構成する空間内に限定でき、上枠のハンドル取付け部の上面開口部からの熱交換を遮断することができ、上枠のハンドル取付け部近傍の内鍋の局所的な冷却を防止することができる。
【0019】
請求項4記載の発明は、ボディは、樹脂製で形成され、上枠のハンドル取付け部下方に前記ハンドル取付け部下方を覆うリブを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の炊飯器である。
【0020】
本発明によれば、内鍋外面から放出される熱と内鍋加熱手段から放出される熱がボディのハンドル挿入用穴から流出することを緩和でき、熱対流を上枠と保護枠との空間に留めることができる。このことにより、上枠のハンドル取付け部近傍の内鍋が局所的に冷却されることを防止し、内鍋全体を均一な温度で維持することを実現できる。
【0021】
請求項5記載の発明は、炊飯器本体内のハンドル取付け部の下方と、加熱手段の間の空間に断熱性部材を設置することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の炊飯器である。
【0022】
本発明によれば、内鍋外面から放出される熱と内鍋加熱手段から放出される熱が断熱性部材下方の上枠と保護枠との空間と断熱性部材上方と上枠との空間にそれぞれに留めることができる。このことにより、内鍋の側面部が局所的に冷却されることを防止し、内鍋全体を均一な温度で維持することを実現できる。
【0023】
請求項6記載の発明は、断熱性部材に、上枠の保護枠との連結ボスに対応した位置に、前記連結ボスの径よりも大きい穴を設け、前記連結ボスに、前記断熱性部材の穴を合わせて設置した後に、前記上枠と前記保護枠を連結することで、前記断熱性部材を固定する手段を有する請求項5記載の炊飯器である。
【0024】
本発明によれば、断熱性材を確実に炊飯器本体内に固定できると共に、組立時に容易にセットすることを実現することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、内鍋外面から放出される熱を炊飯器本体内部に留めることができ、内鍋全体の温度分布を均一することができるので、優れた保温性能(=保温したご飯がおいしいこと)と、省エネルギー効果を発揮する炊飯器を実現できるという有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態1の炊飯器の一部切欠した側面図
【図2】本発明の実施の形態の1の炊飯器のハンドル取付け部概略図(ボディ2と上枠3のみ図示)
【図3】本発明の実施の形態の1の炊飯器のハンドルの回動軸部概略図
【図4】本発明の実施の形態の1の炊飯器のハンドル吊り下げ時の要部概略図(ボディ2と上枠3とハンドル20のみ図示)
【図5】本発明の実施の形態の1の炊飯器の組立前後のハンドル設置位置を示した概略図
【図6】本発明の実施の形態1の炊飯器のハンドル吊り下げ時の要部断面図
【図7】本発明の実施の形態2の炊飯器のハンドル吊り下げ時の要部断面図
【図8】本発明の実施の形態3の炊飯器のハンドル吊り下げ時の要部断面図
【図9】本発明の実施の形態3の炊飯器のハンドル吊り下げ時の要部断面図(上枠3と断熱性部材26のみ図示)
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下本発明を実施するための実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0028】
(実施の形態1)
図1〜図6を用いて、本発明の実施の形態1の炊飯器を説明する。
【0029】
図1は、本発明の実施の形態1の炊飯器の一部切欠した側面図である。破断部分に断面図を示す。図面を簡潔にするために、電気的接続のためのリード線等は省略してある。
【0030】
図1において、炊飯器本体1は、ボディ2及び上枠3、上枠3の上面を全面もしくは部分的に覆う上枠カバー4から構成しており、その内部に内鍋5を収納する保護枠6を設け、保護枠6の下方には内鍋加熱手段である底誘導加熱コイル7と内鍋温度検知手段8を配置している。内鍋5は上枠3に配設している上枠キャップ9により支持され、底誘導加熱コイル7との距離を保っている。内鍋5の側面部には、内鍋側面部加熱手段である側面誘導加熱コイル10を配置している。10は炊飯器本体1上部を形成する開閉自在の蓋体で、蓋体11が閉じている状態では、フックレバー12により炊飯器本体1に支持されている。蓋体11の下部には、蓋加熱板13を配置し、内部には、蓋加熱板加熱手段である蓋誘導加熱コイル14と蓋温度検知手段である蓋センサー15を配設している。蓋加熱板13には、内鍋フランジ部16と当接する内鍋シールパッキン17を配置し、内鍋5内の調理物18が加熱されることにより発生する蒸気等が漏れないようシールしている。19は、内鍋温度検知手段8、蓋加熱板温度検知手段14の温度情報を基に各加熱手段への電流供給量を制御し、内鍋5への加熱量を調整する制御手段であり、この制御手段19により、内鍋5内の調理物18を炊飯及び保温を行っている。なお、調理物18とは炊飯前の米と水又は炊き上がったご飯等である。
【0031】
20は、炊飯器本体1の運搬用の半円状に形成されたハンドルであり、その両端部に回転軸20bを有し、上枠3の側壁3aに有するハンドル軸受け用の軸穴3bに挿入することで、上枠3の左右を軸支し、前後方向に回転自在に摺動する。
【0032】
炊飯時には、主として、底誘導加熱コイル7に電流を供給して内鍋5を加熱し、内鍋5内の米(調理物18)を炊飯し、炊飯終了前になると、側面誘導加熱コイル10、蓋誘導加熱コイル14にも電流を供給し、内鍋5側面部、内鍋フランジ部16及び蓋加熱板13への露付着を防いでいる。また、保温時には、底誘導加熱コイル7、側面誘導加熱コイル10、蓋誘導加熱コイル14に電流の供給量とタイミングを調整しながら、内鍋5内のご飯(調理物18)温度を安定させ、更に内鍋5側面部、内鍋フランジ部16及び蓋加熱板13への露付着を防いでいる。
【0033】
以下に本発明の実施の形態1の炊飯器のハンドル20の取付け構成について図2〜4を用いて詳しく説明する。図2は、本発明の実施の形態の1の炊飯器のハンドル取付け部概略図(ボディ2と上枠3のみ図示)である。図3は、本発明の実施の形態の1の炊飯器のハンドルの回動軸部概略図である。図4は、本発明の実施の形態の1の炊飯器のハンドル吊り下げ時の要部概略図(ボディ2と上枠3とハンドル20のみ図示)である。図5は、本発明の実施の形態の1の炊飯器の組立前後のハンドル設置位置を示した概略図である。
【0034】
2はボディで金属製(SUS材等)もしくは樹脂製で形成され、その側面部にはハンド
ル20を挿入するためのハンドル回動軸20bより大きい穴2aを有している。
【0035】
3は上枠で、樹脂材より形成され、その側壁3aに扇状の切欠き部を有するハンドル取付け用軸穴3bを有している。3cは補強リブで側壁3aから上枠の内鍋方向の有する立て壁3dに繋がり、側壁3aと補強リブ3cと立て壁3dで上方が開口した箱形状を形成している。
【0036】
図3に示すように、ハンドル20の両端部には上枠のハンドル取付け用軸穴3bに挿入する突起部の背面に扇状の凸部20aを設けた上枠のハンドル取付け用軸穴3bより僅かに小さい回動軸20bが一体に形成されている。
【0037】
ハンドル20の回動軸20bを上枠3のハンドル軸受け用の軸穴3bに合わせて挿入し、ハンドル20は炊飯器本体1にセットでき、この状態で上枠3の左右を軸支し、前後方向に回転自在に摺動することが可能となる。図4に示すように、炊飯器1本体にセットされた状態から一旦ハンドル20を回転させると、ハンドル20の回動軸20bの凸部20aと上枠3のハンドル取付け用軸穴3bの切欠き部がずれて、ハンドル20と上枠3のハンドル取付け用軸穴3bの切欠き部の間に一定の隙間21が生じるが、この状態にすることでハンドル20は上枠3から抜けない構成となる。
【0038】
本発明の実施の形態1の炊飯器において、実使用時にハンドル20が抜けてしまい、不安全になることを回避するために、図5に示すような炊飯器本体1の組立時を行っている。まず、上枠3にハンドル20をセットする。(図5(a))その後、ハンドル20を一定角度回転させた後に上枠3と蓋体11の回動軸部を覆うヒンジカバー22を炊飯器本体1にセットする。その後、ハンドル20をヒンジカバー22に配設する。(図5(b))このようにハンドル20は挿入時の角度より一定角度回転させた状態で配設されているため上述のようにハンドル20は上枠3から抜けない構成となっているが、常時ハンドル20と上枠3のハンドル取付け用軸穴3bの切欠き部の間に一定の隙間21を有している。
【0039】
以上のように構成された炊飯器について、以下の動作、作用を図6を基に説明する。図6は、本発明の実施の形態1の炊飯器のハンドル吊り下げ時の要部断面図である。図中の矢印は熱の流れを、距離Lは上枠3の側壁3aとボディ2の距離を、距離Mは上枠3の側壁3aと上枠3の立て壁3dとの距離を示したものである。
【0040】
同図に示すように内鍋5外面から放出される熱と内鍋加熱手段7、10から放出される熱は、側壁3a、補強リブ3cが障壁となり、ボディ2と上枠3と保護枠6の間で対流する。一部の熱は、ボディ2とハンドル20の僅かな隙間から炊飯器本体1外部に流出するが、その流出量は補強リブ3cがないために上枠3のハンドル取付け部下方が開口している従来例の炊飯器に比べ、極めて少なくわずかな量である。
【0041】
この構成をとることで、従来構成ではボディ2と上枠3と保護枠6の空間とハンドル20と上枠3のハンドル取付け用軸穴3bの切欠き部の間にできる一定の隙間21とボディ2のハンドル挿入用の穴2aの間で熱交換が活発であったが、炊飯器本体1外部との熱交換もボディ2とハンドル20の僅かな隙間のみに限定でき、炊飯器本体1内部の断熱性を高める効果が得られる。なお、この断熱性は、図中の距離Lを可能な限り短くし、距離L+距離Mを長くすると更にその効果を高めることができる。距離Lを短くすることで、ボディ2と上枠3の側壁3aの間を通過する熱を減少させ、炊飯器本体1外部の外気が近距離で直接的に熱交換することを防止することができるためである。
【0042】
上記断熱性向上の効果により、ボディ2と上枠3と保護枠6の空間と上枠3のハンドル取付け部近傍の内鍋5側面部の温度分布を良好にすることができる。その結果、炊飯時ま
たは保温時に内鍋5内に含まれる水分が、上枠3のハンドル取付け部近傍の内鍋5側面部に集中的に結露することは減少する。このことにより、炊飯直後や保温時に、上枠3のハンドル取付け部近傍の内鍋5側面部に発生する露は減少し、露が要因で発生する、例えば、炊飯時においては、露の滴下による局所的なご飯18のふやけ、保温時においては、内鍋5側面部を伝って滴下した露による内鍋5側面部下方のご飯18の局所的な白化等の問題を解決でき、炊飯器の品位の低下および優れた炊飯性能(炊飯しご飯18がおいしいこと)、優れた保温性能(保温したご飯18がおいしいこと)を実現することができる。
【0043】
また、従来は、上枠3のハンドル取付け部近傍の内鍋5側面部に発生する露を減少させるために、側面誘導加熱コイル10に多くの電流を通電し、上枠3のハンドル取付け部近傍の内鍋5側面部を加熱し露を蒸発させていたが、本実施の形態では、上枠3のハンドル取付け部近傍の内鍋5側面部の断熱性が優れていることから、上枠3のハンドル取付け部近傍の内鍋5側面部に結露する露が減少するため、側面誘導加熱コイル10に過度に多くの電流を通電することなく、効率よく加熱でき、上枠3のハンドル取付け部近傍の内鍋5側面部の温度分布を良好にできる。そのため、特に保温時においては、従来よりも消費電力量を減少させることができ、省エネルギーの効果を得ることができる。さらに、側面誘導加熱コイル10からの内鍋5内ご飯18の過度な加熱を防止できるため、ご飯表面の乾燥や黄変を軽減できると共に、しっとりしたご飯表面を維持でき、保温性能の向上も実現できる。
【0044】
なお、この効果は、炊飯、または保温の工程において、上枠3のハンドル取付け部近傍の内鍋5側面部に露が付着するタイミングを抽出し、その結果に基づき、そのタイミングのみに側面誘導加熱コイル10に通電するようなプログラムの構築をすることにより増大することができる。
【0045】
また、前述のように上枠3のハンドル取付け部を上枠3の側壁3aから立て壁3dに繋がる補強リブ3cで箱形状を構成することに、炊飯器本体1の落下時、特にハンドル20の側面から炊飯器本体1が落下した際に、ハンドル20が落下対象物から受ける衝撃を上枠3のハンドル取付け部構成で緩和でき、炊飯器本体1の破損を防止することもできる。また、上枠カバー4を上枠3の上面を全面もしくは部分的に覆う様に配設していることから、前述の落下対策のため、上枠3のハンドル取付け部を補強する際にも、側壁3a、補強リブ3c、立て壁3dの肉厚の増加、もしくは上枠3のハンドル取付け部近傍に新たな補強リブを設けたとしても、上枠3に発生する部分的なヒケ、ウェルド等の外観的品位の低下となる要因を全て上枠カバー4で覆うことができ、外観的品位の低下も回避することができる。
【0046】
以上のように、本発明の実施の形態1の炊飯器においては、ボディ2と上枠3と保護枠6の間の温度分布をほぼ均一にできることから、上枠3のハンドル取付け部近傍の内鍋5の温度分布を良好にでき、上枠3のハンドル取付け部近傍の内鍋5への露の結露を減少させることができる。このことにより、過度に内鍋加熱手段7、10に電流を供給すること無く、上枠3のハンドル取付け部近傍の内鍋5の温度分布を良好にでき、優れた保温性能と省エネルギー効果を実現することができる。
【0047】
更には、ハンドル取付け部の下方が箱形状を形成していることから、炊飯器本体1を側面から落としてしまい、ハンドル20が落下対象物と衝突した場合においても、炊飯器本体1に受ける衝撃力を上枠3のハンドル取付け部で緩和することでき、耐落下性に優れた構成を実現することができる。
【0048】
なお、本発明の実施の形態1記載の炊飯器の加熱手段は電磁誘導加熱方式で説明しているが、ヒーター加熱方式の加熱手段であっても同様の効果が得られる。
【0049】
(実施の形態2)
図7を用いて、本発明の実施の形態2の炊飯器の説明をする。図7は、本発明の実施の形態2の炊飯器のハンドル吊り下げ時の要部断面図である。
【0050】
図7において、上枠3の箱形状に構成されたハンドル取付け部の内部の立ち壁3dに沿って、断熱性部材23を、ハンドル取付け部の開口部に断熱性部材24をハンドル軸の回動域に干渉しないように配設している。断熱性部材は両面テープ等で上枠カバー4に保持されている。
【0051】
ボディ2は、樹脂性部材で形成され、ハンドル挿入用穴2aの下方を覆うようにリブ25を有している。リブの形状は、直板状、半円状、円弧状等上枠のハンドル取付け部の構成により臨機応変に形状を変更しても良い。その他の構成及び動作、作用は実施の形態1と同様であるため、省略する。
【0052】
本発明の実施の形態2の炊飯器は、上記構成をとることにより、まず、ボディ2のハンドル挿入用の穴2aを介して上枠3のハンドル取付け部を構成する空間内に流入する外気の熱対流により炊飯器本体1内部が冷却されることを断熱性部材23、24で炊飯器本体1内部へ上枠3を介しての熱の伝播を遮断することができる。具体的には、断熱性部材23により、上枠3への熱の伝播を遮断することで、上枠3のハンドル取付け部近傍の内鍋5の温度分布を均一にでき、炊飯時及び保温時における内鍋5内の局所的な冷却による炊飯性能、保温性能の低下を防止することができる。断熱性部材24により、上枠カバー4への熱の伝播を遮断することができ、上枠カバー4上方の内鍋フランジ部16と上枠カバー4と蓋体11の空間の温度分布をほぼ均一にできることから、蓋加熱板13と内鍋シールパッキン17と内鍋フランジ部16の当接部近傍、内鍋5側面部の温度分布を良好にでき、蓋加熱板13と内鍋シールパッキン17と内鍋フランジ部16の当接部近傍の露の結露を減少させることができる。
【0053】
次に、リブ25が障壁となり、内鍋5外面から放出される熱と内鍋加熱手段7、10から放出される熱がボディ2のハンドル挿入用穴2aから流出することを緩和でき、熱対流を上枠3と保護枠6との空間に留めることができる。このことにより、内鍋5の上枠3のハンドル取付け部近傍の内鍋5が局所的に冷却されることを防止し、内鍋5全体を均一な温度で維持することを実現できる。
【0054】
(実施の形態3)
図8、図9を用いて、本発明の実施の形態3の炊飯器の説明をする。図8は、本発明の実施の形態3の炊飯器のハンドル吊り下げ時の要部断面図である。図9は、本発明の実施の形態3の炊飯器の組立時の下面図(上枠3と断熱性部材26のみ図示)である。
【0055】
図8に示すように、上枠3のハンドル取付け部の下方と、内鍋加熱手段7、10の間の空間に断熱性部材26を設置している。断熱性部材26は図9に示すように上枠3の保護枠6との連結ボス27に対応した位置に連結ボス27の径よりも大きい穴を設け、組立時に断熱性部材26を連結ボス27にセットした後に上枠3と保護枠6をネジで固定し、連結している。その他の構成及び動作、作用は実施の形態1と同様であるため、省略する。
【0056】
本発明の実施の形態3の炊飯器は、上記構成をとることにより、内鍋5外面から放出される熱と内鍋加熱手段7、10から放出される熱の対流を断熱性部材26により上枠3のハンドル取付け部への流れを防止でき、ボディ2のハンドル挿入用穴2aからの外気との熱交換を防止することができる。このことにより、熱対流を上枠3と保護枠6との空間に留めることができ、内鍋5の側面部が局所的に冷却されることを防止し、内鍋全体を均一
な温度で維持することを実現できる。
【0057】
また、断熱性材26を確実に炊飯器本体1内に固定できると共に、組立時に容易にセットすることを実現することができる。
【0058】
なお、本発明の実施の形態3記載の炊飯器の断熱性部材は、図9では2個で記載されているが、炊飯器の本体構成に合わせ、臨機応変に形状、個数を変更しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係わる炊飯器は、家庭用又は業務用の炊飯器として有用である。
【符号の説明】
【0060】
1 炊飯器本体
2 ボディ
2a ハンドルの挿入用の穴
3 上枠
3a 側壁
3b ハンドル取付け用の軸穴
3c 補強リブ
3d 立ち壁
4 上枠カバー
5 内鍋
6 保護枠
7 加熱手段(底誘導加熱コイル)
11 蓋体
18 調理物
20 ハンドル
23 断熱性部材(上枠の立ち壁近傍)
24 断熱性部材(上枠のハンドル取付け部の開口部)
25 リブ
26 断熱性部材
27 連結ボス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯器本体と、
前記炊飯器本体の上面開口部を開閉自在に覆う蓋体と、
前記炊飯器本体に着脱自在に収納される内鍋と、
前記内鍋を炊飯器本体に支持する上枠と、
前記上枠の上面の少なくとも一部を覆う上枠カバーと、
前記上枠の左右に軸支され、前後方向に回転自在なハンドルと、
前記上枠の外側に位置し、炊飯器の下方外郭を形成するとともに前記ハンドルの挿入用の穴を有するボディと、
前記上枠の下方に前記内鍋内の調理物を加熱するための加熱手段を備えた保護枠と、
前記ハンドルの挿入用の穴を介して挿入された前記ハンドルと対向する前記上枠の側壁に設けられた、前記ハンドルを軸支するハンドル取付け用の軸穴と、
前記側壁に設けられた、前記側壁から前記上枠の内鍋側に連なる補強リブとを備え、
前記側壁と前記補強リブと前記上枠とで開口部を上方に有する箱形状で前記上枠にハンドル取付け部を形成することを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
ハンドル取付け部内の立ち壁にハンドル軸の回動域に干渉しないように断熱性部材を配設することを特徴とする請求項1記載の炊飯器。
【請求項3】
ハンドル取付け部の開口部の上部に、ハンドル軸の回動域に干渉しないように断熱性部材を充填し、前記断熱性部材は、上枠カバーで保持したことを特徴とする請求項1又は2記載の炊飯器。
【請求項4】
ボディは、樹脂製で形成され、ハンドル取付け部下方に前記ハンドル取付け部下方を覆うリブを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項5】
炊飯器本体内のハンドル取付け部の下方と、加熱手段の間の空間に断熱性部材を設置することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項6】
断熱性部材に、上枠の保護枠との連結ボスに対応した位置に、前記連結ボスの径よりも大きい穴を設け、前記連結ボスに、前記断熱性部材の穴を合わせて設置した後に、前記上枠と前記保護枠を連結することで、前記断熱性部材を固定する請求項5記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−273893(P2010−273893A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129880(P2009−129880)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】