説明

炊飯器

【課題】必要以上の無駄な加熱を抑えて蒸気の排出量を低減するとともに、前記蒸気を本体内部に貯留して保温時にご飯の乾燥防止として使用する。
【解決手段】外蓋に、内蓋と、調圧弁と、調圧弁を通して内釜内で発生する蒸気を外部に排出する蒸気通路と、蒸気通路から外部に排出される前に蒸気を回収する蒸気回収ユニットとを備えた炊飯器において、蒸気回収ユニットは、上ケースと下ケースとで構成され、下ケースには蒸気回収ユニット内で結露した水を蒸気通路を通して内蓋の上面に戻す水戻し穴を設け、内蓋には内蓋水戻し穴を設け、該内蓋水戻し穴には内釜内部が大気圧より高いときは塞がれ、大気圧より低いときは開放する弁体1を設け、内蓋の下面には内蓋水戻し穴からの水を受ける水受け皿を設け、該水受け皿には内釜内部と連通する蒸気流通穴を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炊飯器に関し、炊飯中に発生する蒸気が本体外部に排出されて周囲に結露したり湿度が高くなるのを抑えるとともに、前記蒸気を本体内部に溜めて保温時にご飯の乾燥防止として使用するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の炊飯器として、特許文献1から4に記載されたものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載されたものは、フレーム内に設けた収納ケースに内鍋を収納自在に設け、一方、フレームの一側に水容器を設け、前記内鍋から発生する蒸気を蒸気通路を介して前記水容器内に導入し、蒸気が大気に放出されるのを防止するものである。
【0004】
特許文献2に記載されたものは、炊飯器本体に水蒸気の冷却ユニットを付設し、該冷却ユニットと炊飯器本体の上面を覆う蓋体の蒸気口とを誘導筒で連結し、炊飯中に発生する蒸気を誘導筒を通して冷却ユニットに導き、炊飯器本体の周囲の結露,汚染を防止するものである。
【0005】
特許文献3に記載されたものは、鍋に連なる蒸気経路を送風装置を備えた送風経路に開口させ、該蒸気経路から排出される蒸気を送風装置から送られる送風空気と混合して排出することにより排出蒸気の温度を低く抑えたものである。
【0006】
特許文献4に記載されたものは、圧力による沸点上昇を応用し、鍋内温度を所定圧力値に相当する沸点以下で、100℃以上の温度に保つことで蒸気の排出を抑えながら100℃以上を保つものである。
【0007】
また、省エネルギー性を向上させる目的として、特許文献5に記載されたものが知られている。このものは、内蓋に圧力弁機構として圧力調整弁と圧力抜き弁の二つを設け、加圧状態から急激な減圧を起すことにより、攪拌作用を得て省エネに寄与するとともに、被炊飯物のメニューに応じて沸騰時の減圧度を加減し、攪拌状態を調整するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−192134号公報
【特許文献2】特開2008−253650号公報
【特許文献3】特開2009−28513号公報
【特許文献4】特開平11−206559号公報
【特許文献5】特開2008−48766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記した従来技術において、特許文献1及び2に記載されたものは、水容器や冷却ユニットが必要であり、炊飯器が大きくなる。
【0010】
また、水容器や冷却ユニットに水を入れる手間や冷却ユニットの清掃が必要であり、水の使用,廃棄の負荷が増えることで地球環境上好ましくない。
【0011】
特許文献3に記載されたものは、排出蒸気温度の低下により炊飯器付近への結露はしにくくなるが、室内の湿度を上昇させることには変わりはなく、室内環境上の問題がある。
【0012】
特許文献4に記載されたものは、所定圧力値に対する所定温度以下(その圧力での沸点以下)で100℃以上の高温を保つ制御を行うため、内釜内部は高温ではあるものの沸点以下であるので沸騰していない状態であり、ごはんを美味に仕上げる上で問題がある。
【0013】
また、一定時間後に加熱量を上げてドライアップをさせる際にも、内釜内部には余剰水はないものの米に含まれている水分により蒸気が多量に放出されてしまう問題がある。
【0014】
特許文献5に記載されたものは、省エネには寄与するものの、急激な減圧の際に多量の蒸気を一気に噴出することになるので、付近への結露を生じる問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
かかる従来の課題を解決するため本発明の請求項1では、本体と、該本体内に着脱自在に収納される内釜と、該内釜を加熱する加熱手段と、前記本体の上部を覆う外蓋とを備え、前記外蓋には前記内釜の上面開口部を覆う内蓋と、該内蓋に設けられ前記内釜内部を所定の圧力に維持する調圧弁と、該調圧弁を通して前記内釜内で発生する蒸気を外部に排出する蒸気通路と、前記調圧弁から前記蒸気通路を経て外部に排出される前に前記蒸気を回収する蒸気回収ユニットを備えた炊飯器において、
前記蒸気回収ユニットは、上ケースと下ケースとで構成され、該下ケースには前記蒸気回収ユニット内で結露した水を前記蒸気通路を通して前記内蓋の上面に戻す水戻し穴を設け、前記内蓋には内蓋水戻し穴を設け、該内蓋水戻し穴には前記内釜内部が大気圧より高いときは塞がれ、大気圧より低いときは開放する弁体を設け、さらに、前記内蓋の下面には前記内蓋水戻し穴からの水を受ける水受け皿を設け、該水受け皿には前記内釜内部と連通する連通穴を設けたものである。
【0016】
請求項2では、前記蒸気回収ユニットの上ケースには上面から垂下する枠で囲まれた空間を設け、前記枠は内側の枠を外側の枠で囲うように複数設けられ、一番外側の枠より外側で前記上ケースと前記下ケースとで形成される空間に外気と連通する穴を設けたものである。
【0017】
請求項3では、前記蒸気回収ユニットの前記下ケースの略中央部に前記蒸気通路に連なる筒を設け、該筒の上部に前記蒸気通路から蒸気回収ユニット内に蒸気が流入する流入口を設け、さらに、前記下ケースには前記上ケースと前記下ケースとを結合させた状態で一番内側の枠と次の枠との間に位置するようにU字枠を設けたものである。
【0018】
請求項4では、前記蒸気回収ユニットは、外蓋に着脱自在に取り付けられるものである。
【0019】
請求項5では、前記内蓋の下面に設けられた水受け皿は、前記内蓋に着脱自在に取り付けられるものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の請求項1によれば、調圧弁により高い沸点温度で沸騰を維持させながら、内釜内部で発生する蒸気の流出を最小に抑えることができ、さらに、その沸騰時の蒸気を蒸気回収ユニットにより回収するので、沸騰しないことによるごはんの食味の低下をさせることなく蒸気を室内に多量に放出するのを防止できる。
【0021】
また、室内への蒸気の放出防止を、水容器や冷却ユニットを設けて炊飯器を大型化したり、清掃性の悪化を伴うことなく実現できる。
【0022】
また、熱と蒸気を閉じ込めて炊飯するので、不要な水が蒸気として放出されない分、米に吸水され、水加減も少なくできるため、使用する水も減り、環境負荷も少なくなる。
【0023】
さらに、蒸気回収ユニットで回収した水は、蒸気通路を通して内蓋の上面に溜まり、内釜内部が大気圧より低くなるとき、すなわち、炊飯が終了して内釜の内部が冷えて該内部の蒸気が内釜や内蓋に結露して蒸気の体積が収縮するときや、使用者が外蓋を開けようとして内釜と内蓋で構成される空間の容積が拡大するときに内蓋に設けた弁体が開いて水受け皿に水が戻り、該水受け皿に戻った水は保温中に蒸発し、内釜内部と連通する蒸気流通穴を通して内釜内部に蒸気を供給するので、ご飯が乾燥して食味が低下するのを防止することができる。
【0024】
請求項2,請求項3によれば、内釜から蒸気通路に流入した蒸気は、蒸気回収ユニット内の複数の枠によって形成された空間を通る間に結露するので、ほとんどの蒸気は回収され、外部に出る蒸気は微量で目に見えないほど温度も低下しており、これによって蒸気排出量を低減し、周囲への結露や多湿化を抑えて室内環境の悪化を防ぐことができる。
【0025】
請求項4,5によれば、蒸気回収ユニット及び水受け皿を外蓋及び内蓋から取り外して洗えるので、清掃性が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る炊飯器の縦断面図である。
【図2】同蒸気回収ユニットの内部を示す斜視図である。
【図3】同蒸気回収ユニットの内部を示す縦断斜視図である。
【図4】同蒸気回収ユニットの下ケースに、上ケースから垂下する第一枠と第二枠を重ねた斜視図である。
【図5】同内蓋と水受け皿の分解斜視図である。
【図6】同制御回路図である。
【図7】同炊飯時の動作状態を示す動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施例について添付図面を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0028】
図において、炊飯器の本体1は、内側に上面が開口した保護枠14が設けられ、保護枠14内には内釜2が着脱自在に収納されている。
【0029】
内釜2は、上面が開口した有底筒状であり、その上端部は本体1から着脱操作がしやすいように外向きに略水平に折り曲げられ、本体1の上面に載置されている。
【0030】
保護枠14の外側底部には内釜2の底面部を誘導加熱する加熱手段4が設けられ、保護枠14と本体1との間の前面側空間部には制御部5が配置され、該制御部5の働きによって加熱手段4を制御する。
【0031】
外蓋3には内釜2の上面開口部を覆う内蓋6が取り付けられ、該内蓋6の下面周縁部に取り付けられたパッキン7を内釜2の上端全周に当接して内釜2と内蓋6とで構成される空間を密閉状態に保持している。
【0032】
内蓋6の略中央部には調圧弁8が設けられており、加熱手段4によって内釜2が加熱され、該内釜2内の蒸気圧が高まると調圧弁8が動作し、内釜2内を所定の圧力(本実施例では1.3気圧)に調整しながら蒸気を排出する。調圧弁8から排出された蒸気は、外蓋3に設けられた蒸気通路9を経て該外蓋3に着脱自在に取り付けた蒸気回収ユニット10へ導かれる。
【0033】
蒸気回収ユニット10と調圧弁8との間の蒸気通路9には、調圧弁8の近傍に位置するように蒸気温度センサー11が設けられている。
【0034】
また、内蓋6の下面には水受け皿15が着脱自在に設けられており、その詳細については後述する。
【0035】
制御部5には、図6に示すように前記した蒸気温度センサー11と、内釜2の底部の温度を検出する釜底温度センサー12と、加熱手段4と、調圧弁8の調圧動作を行わせる調圧弁制御部13が接続されており、蒸気温度センサー11と釜底温度センサー12からの情報により加熱手段4と、調圧弁8を閉じる調圧動作と調圧弁8が開放して内釜2内に圧力が加わらない状態とを切替制御している。
【0036】
次に蒸気回収ユニット10について図2,図3及び図4を参照して説明する。
【0037】
蒸気回収ユニット10は、外蓋3に蒸気通路9と連なるように上面から着脱自在に取り付けられている。
【0038】
該蒸気回収ユニット10は、略四角形の上ケース10−1と下ケース10−2とで構成され、上ケース10−1と下ケース10−2の一側を軸支し、対向する側をロックボタン10−3にて開閉自在に結合し、上ケース10−1の周縁部にユニットパッキン10−4を設けて中の蒸気が漏れないようになっている。
【0039】
下ケース10−2の略中央部には蒸気通路9に連なる無底、有天の筒10−5が設けられ、該筒10−5の上部側面の一部に蒸気通路9から排出される蒸気が流入する流入口10−6が設けられている。
【0040】
上ケース10−1には筒10−5を適宜隙間を保持して囲うように略四角形の第一枠10−7が一体的に設けられ、該第一枠10−7の開口端を上ケース10−1と下ケース10−2を結合させた状態で下ケース10−2の平坦部に近接させている。そして、第一枠10−7の開口端には流入口10−6の向きと反対側に位置するように第一切欠部10−8を設けている。
【0041】
第一枠10−7の外側の上ケース10−1には、略四角形の第一枠10−7と同一高さの第二枠10−9が一体的に設けられており、その開口端には第一枠10−7と略同一位置に第二切欠部10−10が設けられている。
【0042】
下ケース10−2には上ケース10−1と下ケース10−2を結合させた状態で第一枠10−7と第二枠10−9の間に位置するようにU字枠10−11が設けられており、該U字枠10−11は、第一切欠部10−8,第二切欠部10−10と反対側が開口している。
【0043】
上ケース10−1の第二枠10−9と周縁部との間には、上ケース10−1と下ケース10−2との間の空間部と外気と連通する穴10−12が設けられている。
【0044】
また、下ケース10−2には、筒10−5とU字枠10−11との間に位置するように水戻し穴10−13が設けられており、蒸気回収ユニット10内に結露した水を蒸気通路9に戻すようにしている。
【0045】
なお、上記の説明では、蒸気回収ユニット10略四角形としたが、円形でも楕円でもよい。また、上ケース10−1に第一枠10−7と第二枠10−10を2つ設けたが、さらに多く設けることも可能である。
【0046】
次に、図5により内蓋6と水受け皿15との関係について説明する。
【0047】
内蓋6は上述したように、蒸気通路9の下側で外蓋3に設けられ、全面で内釜2の上面開口部を覆っている。
【0048】
内蓋6の略中央部には調圧弁8の一部を構成する弁孔8aが設けられており、また、弁孔8aの近傍には内蓋6の上面に溜まった水を水受け皿15に戻す内蓋水戻し穴6aが設けられ、該内蓋水戻し穴6aは内蓋6の下面に固定された弁体16の舌部16aによって塞がれている。
【0049】
弁体16の舌部16aは、ゴム等の弾性体によって構成されており、内釜2の内部が大気圧より高いときは該圧力によって内蓋水戻し穴6aに押し付けられて該内蓋水戻し穴6aを塞ぎ、内釜2の内部が大気圧より低くなるとき、すなわち、炊飯が終了して内釜2の内部が冷えて該内部の蒸気が内釜2や内蓋6に結露して蒸気の体積が収縮するときや、使用者が外蓋3を開けようとして内釜2と内蓋6で構成される空間の容積が拡大するときに矢印イのように下向きに変形して内蓋水戻し穴6aを開放し、内蓋6の上面に溜まっている水を水受け皿15に戻す役目をしている。
【0050】
水受け皿15は、熱伝導の良い材質、例えばアルミ板よりなり、上面及び下面にフッソ樹脂をコーティングした水受け用の皿部15aと、該皿部15aの外周の立ち上げ壁15bに嵌め込まれた樹脂製の枠体15c及び枠体15cの内周壁に嵌め込まれたシールパッキン(図示せず)とで構成されており、該シールパッキンを内蓋6の下面に密着させている。従って内蓋6の下面と水受け皿15との間には皿部15aの立ち上げ壁15bとほぼ同等の隙間が形成されている。
【0051】
また、水受け皿15は、半径方向の略中間位置に内蓋6側に突出する膨出部15fが周方向に沿って連続して設けられ、その上面に同じく周方向に沿って小穴からなる複数個の蒸気流通穴15hが設けられている。
【0052】
水受け皿15の着脱構造は、内蓋6の外周近傍の上部に上受け具6b、下部に下受け具6cを設け、水受け皿15の枠体15cの上部にバネ(図示せず)によって上方に付勢される上引っ掛け具15d、下部に下引っ掛け部15eを設け、該下引っ掛け部15eを内蓋6の下受け具6cに嵌め込んだ後、上引っ掛け具15dをバネに抗して下に押し下げて内蓋6の上受け具6bに嵌め込み、バネにより上に戻して上受け具6bから外れないようにする。
【0053】
本実施は以上の構成よりなり、次にその動作を図7を参照して説明する。
【0054】
使用者が内釜2に適量の米と水を入れ、操作部の炊飯開始ボタン(図示せず)を操作すると制御部5の働きによって炊飯が開始する。
【0055】
予め定められた炊飯動作に従い、最初にお米への吸水を促進させる浸し工程が実施される。釜底温度センサー12の所定温度(本実施例では60℃)に応じて加熱手段4が内釜2を加熱(本実施例では400W)して、内釜2内部の水温が55〜60℃に維持し、お米への吸水を促進する。
【0056】
所定時間(本実施例では15分)が経過すると、制御部5は加熱手段4の加熱量を増大(本実施例では1000W)させるとともに、調圧弁制御部13が動作して調圧弁8で内釜2内の圧力を調整するように動作する。
【0057】
やがて内釜2内部の水温が高まると蒸気の発生によって内釜2内部の圧力が高まり、調圧弁8の動作圧である1.3気圧まで高まると、1.3気圧に応じた107℃の沸点で沸騰を開始するとともに、調圧弁8の動作で放出された蒸気が蒸気通路9へと放出される。蒸気通路9には調圧弁8の近傍に蒸気温度センサー11が設けられているので、蒸気によって加熱された蒸気温度センサー11の温度上昇により、蒸気の流入を検出し、制御部5は一定温度以上になることで沸騰を認識する。
【0058】
制御部5は加熱手段4の加熱量を低下(本実施例では500W)させるが、この加熱量は調圧弁8の動作圧である1.3気圧を維持し、この気圧の沸点である107℃での沸騰を継続、または断続的に継続させるように設定されており、沸騰することにより調圧弁8からは蒸気が蒸気通路9内に流入する。
【0059】
この蒸気の量であるが、調圧弁8のない非圧力式炊飯器のように1気圧での沸点100℃を維持するために、大きな電力を投入し続ける必要はない。「米」が「ごはん」になるにはβ澱粉をα澱粉にする必要があり、これには98℃以上を20分保つ必要がある。非圧力式炊飯器では内釜の隅々まで98℃以上を維持するためには、大きな電力を投入し続けて、激しい沸騰を継続させないと対流の悪い部位が98℃まで上がらない。従って多量の蒸気が発生する。
【0060】
これに対して、本実施例では1.3気圧により107℃を維持しており、仮に103℃の部位が存在しても98℃以上を維持するのに問題はなく、微小な沸騰状態を維持して温度を保てばよく、このため調圧弁8から蒸気通路9内に流入する蒸気は微量である。
【0061】
この微量の蒸気は、沸騰を維持して水がなくなり、内釜2底部の温度が上がったことを釜底温度センサー12で捉え(ドライアップ)、蒸らし工程に制御部5が移行させるまでの間続く。この間少しずつ流入する蒸気は、蒸気通路9を経て蒸気回収ユニット10へと進む。
【0062】
蒸らし工程でも温度を保つために制御部5は加熱手段4で微加熱を行うが、この間は炊飯開始15分後に調圧弁制御部13が動作してから連続して調圧弁8での圧力調整が有効な状態にある。一度でも調圧弁制御部13で調圧動作が無効になる状態にしてしまうと、内釜2内部の圧力が低下し、蒸気が一気に流出し、蒸気回収ユニット10で蒸気を回収しきれず、外気に蒸気を放出してしまうからである。
【0063】
蒸らし工程の後半になると、制御部5は微加熱を禁止し、内釜2内部の圧力が大気圧に戻るのに十分な時間(例えば5分)経過してから、調圧弁制御部13により調圧弁8を無効な状態にする。これにより大気と通じた状態となるが、内釜2内部の圧力が大気圧まで低下しているため、蒸気が勢い良く流出することはない。この後、制御部5は蒸らし(炊飯)を終了する。
【0064】
次に蒸気回収ユニット10の内部での蒸気の流れと回収について説明する。
【0065】
内釜2から調圧弁8を通して蒸気通路9に流入した蒸気は、筒10−5に設けられた流入口10−6から蒸気回収ユニット10内の第一枠10−7に囲まれた空間に流入する。第一枠10−7は上ケース10−1から垂れ下がるように設けられており、蒸気は空気より軽いので第一枠10−7の上部空間に滞留し、上ケース10−1や第一枠10−7に結露する。蒸気量が多くなると第一枠10−7の空間下方まで蒸気が充満して、第一切欠部10−8から流出する。
【0066】
次に、この蒸気は第一枠10−7とU字枠10−11で囲われた空間へと導かれ、第一切欠部10−8と反対側に設けられたU字枠10−11の開口部へとU字枠10−11の内側に沿って流れる。そして、U字枠10−11と第二枠10−9で囲われた空間に蒸気が充満し、U字枠10−11の外側に沿って流れ、第二切欠部10−10まで蒸気が充満すると、第二切欠部10−10から第二枠10−9と上ケース10−1,下ケース10−2の外周で囲われた空間に流れる。
【0067】
最後に、第二切欠部10−10と反対側に設けられた穴10−12へと流れて外気に放出される。
【0068】
蒸気の発生は微量になるように加熱手段4の加熱が調整されているので、ほとんどの蒸気は回収され、穴10−12から出る蒸気は微量で、目に見えないほど温度も低下している。
【0069】
蒸気回収ユニット10内に結露した水は、水戻し穴10−13から蒸気経路9を経て内蓋6の上面に溜まり、内釜2の内部が大気圧より低くなるとき、すなわち、炊飯が終了して内釜2の内部が冷えて該内部の蒸気が内釜2や内蓋6に結露して蒸気の体積が収縮するときや、使用者が外蓋3を開けようとして内釜2と内蓋6で構成される空間の容積が拡大するときには、内蓋6に設けた弁体16の舌部16aが矢印イのように下向きに移動して内蓋水戻し穴6aを開放し、該内蓋水戻し穴6aから水受け皿15内に水が戻る。該水受け皿15に溜まった水は保温中に蒸発し、内釜2の内部と連通する蒸気流通穴15hを通して内釜2の内部を保温し、ご飯が乾燥するのを防止する。
【0070】
なお、上記したように、使用者がご飯を装うために外蓋3を開けた場合には、水受け皿15に立ち上げ壁15bがあることや、内蓋6側に突出する膨出部15fが設けられ、その上面に複数個の蒸気流通穴15hが設けられていることと等により、水受け皿15に溜まった水が蒸気流通穴15bから内釜2に滴下したり、本体1等を濡らすことはない。
【0071】
また、炊飯器を使用し終わった後に蒸気回収ユニット10を清掃する場合には、蒸気回収ユニット10を外蓋3から取り外して洗えばよい。
【0072】
水受け皿15を清掃する場合には、内蓋6の下面から水受け皿15を取り外して洗う。水受け皿15の取り外しは取り付け時と逆で、水受け皿15の上引っ掛け具15dをバネの付勢力に抗して下に押し下げ、内蓋6の上受け具6bから外す。その後、水受け皿15を幾分上に持ち上げて下引っ掛け部15eを内蓋6の下受け具6cから外せばよい。
【0073】
以上説明したように、本実施例によれば、内蓋6に設けた調圧弁8により高い沸点温度で沸騰を維持させながら、内釜2内部で発生する蒸気の流出を最小に抑えることができ、さらに、その沸騰時の蒸気を蒸気回収ユニット10により回収するので、沸騰しないことによるごはんの食味の低下をさせることなく蒸気を室内に多量に放出するのを防止できる。
【0074】
また、室内への蒸気の放出防止を、水容器や冷却ユニットを設けて炊飯器を大型化したり、清掃性の悪化を伴うことなく実現できる。
【0075】
また、熱と蒸気を閉じ込めて炊飯するので、不要な水が蒸気として放出されない分、米に吸水され、水加減も少なくできるため、使用する水も減り、環境負荷も少なくなる。
【0076】
さらに、蒸気回収ユニット10で回収した水は、蒸気通路9を通して内蓋6の上面に溜まり、内釜2の内部が大気圧より低くなるとき、すなわち、炊飯が終了して内釜2の内部が冷えて該内部の蒸気が内釜2や内蓋6に結露して蒸気の体積が収縮するときや、使用者が外蓋3を開けようとして内釜2と内蓋6で構成される空間の容積が拡大するときには、内蓋6に設けた弁体16が開いて水受け皿15に水が戻り、該水受け皿15に戻った水は保温中に蒸発し、内釜2内部と連通する蒸気流通穴15hを通して内釜2内部を保温するので、ご飯が乾燥して食味が低下するのを防止することができる。
【0077】
また、内釜2から蒸気通路9に流入した蒸気は、蒸気回収ユニット10内の複数の枠によって形成された空間を通る間に結露するので、ほとんどの蒸気は回収され、外部に出る蒸気は微量で、目に見えないほど温度も低下しており、これによって蒸気排出量を低減し、周囲への結露や多湿化を抑えて室内環境の悪化を防ぐことができる。
【0078】
さらに、蒸気回収ユニット10及び水受け皿15を外蓋3及び内蓋6から取り外して洗えるので、清掃性が容易である。
【符号の説明】
【0079】
1 本体
2 内釜
3 外蓋
4 加熱手段
5 制御部
6 内蓋
6a 内蓋水戻し穴
8 調圧弁
9 蒸気通路
10 蒸気回収ユニット
11 蒸気温度センサー
12 釜底温度センサー
13 調圧弁制御部
15 水受け皿
15h 蒸気流通穴
16 弁体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、該本体内に着脱自在に収納される内釜と、該内釜を加熱する加熱手段と、前記本体の上部を覆う外蓋とを備え、前記外蓋には前記内釜の上面開口部を覆う内蓋と、該内蓋に設けられ前記内釜内部を所定の圧力に維持する調圧弁と、該調圧弁を通して前記内釜内で発生する蒸気を外部に排出する蒸気通路と、前記調圧弁から前記蒸気通路を経て外部に排出される前に前記蒸気を回収する蒸気回収ユニットを備えた炊飯器において、
前記蒸気回収ユニットは、上ケースと下ケースとで構成され、該下ケースには前記蒸気回収ユニット内で結露した水を前記蒸気通路を通して前記内蓋の上面に戻す水戻し穴を設け、前記内蓋には内蓋水戻し穴を設け、該内蓋水戻し穴には前記内釜内部が大気圧より高いときは塞がれ、大気圧より低いときは開放する弁体を設け、さらに、前記内蓋の下面には前記内蓋水戻し穴からの水を受ける水受け皿を設け、該水受け皿には前記内釜内部と連通する連通穴を設けたことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記蒸気回収ユニットの上ケースには上面から垂下する枠で囲まれた空間を設け、前記枠は内側の枠を外側の枠で囲うように複数設けられ、一番外側の枠より外側で前記上ケースと前記下ケースとで形成される空間に外気と連通する穴を設けたことを特徴とする請求項1記載の炊飯器。
【請求項3】
前記蒸気回収ユニットの前記下ケースの略中央部に前記蒸気通路に連なる筒を設け、該筒の上部に前記蒸気通路から蒸気回収ユニット内に蒸気が流入する流入口を設け、さらに、前記下ケースには前記上ケースと前記下ケースとを結合させた状態で一番内側の枠と次の枠との間に位置するようにU字枠を設けたことを特徴とする請求項1から2の何れかに記載の炊飯器。
【請求項4】
前記蒸気回収ユニットは、外蓋に着脱自在に取り付けられることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の炊飯器。
【請求項5】
前記内蓋の下面に設けられた水受け皿は、前記内蓋に着脱自在に取り付けられることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の炊飯器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−279398(P2010−279398A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132654(P2009−132654)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】