説明

炊飯器

【課題】誘導加熱炊飯器において、使用する電源の状況によって加熱開始直後に所定の電力が得られない場合、おいしいご飯が炊けないという課題を解決する。
【解決手段】加熱コイル4に流れる電流値を検出する電流検出手段33の検出値から加熱コイル4の出力が所定の出力となるようにスイッチング素子23のON−OFF時間の比率を調整する制御回路5を備え、該制御回路5にスイッチング素子23のON−OFF時間の比率を記憶する記憶手段34を備えた炊飯器において、制御回路5は、炊飯動作毎に前回の炊飯時に記憶手段34に記憶しているスイッチング素子23のON−OFF時間の比率を呼び出し、該ON−OFF時間の比率で内釜4の加熱を開始し、電流検出手段33の検出値から加熱コイル4の出力が所定の出力となるようにスイッチング素子23のON−OFF時間の比率を調整し、既に記憶されている前記比率を調整後の比率に変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ制御回路を備えた誘導加熱方式の炊飯器に有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の炊飯器において、供給される電源の状態や、炊飯器を製造した部品等の状態に応じて、炊飯時の火力のバラツキを調整する炊飯器がある。
【0003】
特許文献1に示すものは、インバータ回路に流れる電流を検出する電流検出回路と電源電圧を検出する電圧検出回路を備え、夫々の検出回路に検出誤差を生じないように、検出回路の入力側に一定の値が印加された時に決められた出力値を出力するように調整手段を備え、加熱動作時に電源電圧が一定の値(100V)より高い時は、電圧検出回路より出力される値は決められた一定値より高い値を示すので、電源電圧が高い分だけ電源電流の目標値を減らし、電源電圧が一定の値(100V)より低い時は、電圧検出回路より出力される値が決められた一定値より低い値を示すので、電源電圧が低い分だけ電源電流の目標値を増やし、そして、電流値が目標値になるように動作することで、常に一定の電力で調理ができるようにした炊飯器である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−56602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1記載の炊飯器は、使用時に電源電圧に応じて電源電流を調整し、加熱時の電力を常に一定にするものである。
【0006】
そのため、使用する電源電圧が常に低い場合には、加熱開始は電力の低い状態で開始し、電圧の小さい分、定められた電力になるように目標電流を増加するように制御が行われ、また、常に電源電圧が高い場合には、加熱開始は電力の高い状態から動作し、電圧の大きい分、定められた電力となるように減少させた目標電流になるように制御が行われる。
【0007】
ところで、炊飯器の火力制御を行う場合、例えば、炊飯前の浸し工程では、お米の温度を一定以上に加熱してしまうと、お米は以後吸水を停止し、炊き上がったご飯は中心に硬い芯が残り、周囲は浸水しないで多く残った水の影響で糊状のご飯が炊き上がってしまう。
【0008】
そのため、内鍋(内釜)内のお米の温度を、一定温度以上に加熱しないように、加熱コイルへの電力の通電はON/OFFによる断続加熱を行い、内鍋に接触しているお米から内鍋内の中心にあるお米に熱伝導により温度を上昇させている。そして、内鍋に接触しているお米を加熱し過ぎないように、加熱コイルへの電力の通電はOFF時間に比べON時間は大変短い時間となっている。
【0009】
このような加熱コイルへの電力の通電は、通電時の電力に依存し、例えば、電源電圧が常に低い場合は、加熱コイルへの電力の通電は常に目標電力に比べ低い電力が供給され、その後、設定された目標電力になるように制御され、目標電力に到達するまで常に加熱不足の状態が続くことが考えられる。
【0010】
また、反対に電源電圧が常に高い場合は、常に過剰電力による過加熱になることが考えられ、このような状態ではおいしいご飯を炊くことはできない課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、交流電源を整流して直流電源に変換する整流回路と、前記直流電源を平滑する平滑回路と、本体内に着脱自在に収納される内釜と該内釜を加熱する加熱コイルと該加熱コイルに並列接続したコンデンサとからなる共振回路と、一定の周期でON−OFF動作を繰り返し前記加熱コイルに前記直流電源を供給するスイッチング素子を備えたインバータ回路と、前記加熱コイルに流れる電流値を検出する電流検出手段と、該電流検出手段の検出値から前記加熱コイルの出力が所定の出力となるように前記スイッチング素子のON−OFF時間の比率を調整する制御回路とを備え、該制御回路に前記スイッチング素子のON−OFF時間の比率を記憶する記憶手段を備えた炊飯器において、前記制御回路は、炊飯動作毎に前回の炊飯時に前記記憶手段に記憶している前記スイッチング素子のON−OFF時間の比率を呼び出し、該ON−OFF時間の比率で前記内釜の加熱を開始し、前記電流検出手段の検出値から前記加熱コイルの出力が所定の出力となるように前記スイッチング素子のON−OFF時間の比率を調整し、既に記憶されている前記比率を調整後の比率に変更するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、炊飯動作毎に、前回の炊飯時に制御回路の記憶手段に記憶しているスイッチング素子のON−OFF時間の比率を呼び出し、該ON−OFF時間の比率で内釜の加熱を開始するようにしたので、炊飯動作直後から所定の電力を加熱コイルに供給して炊飯することが可能となり、常に美味しいご飯を炊くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る炊飯器の縦断面図である。
【図2】本発明の一実施例を示すインバータ制御回路の回路ブロック図である。
【図3】本発明の主要回路部の信号波形を示す図である。
【図4】本発明の一実施例におけるフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を上記した図1から図2に従って説明する。
【0015】
図において、炊飯器の本体1は、内側に上面が開口した保護枠14が設けられ、保護枠14内には内釜2が着脱自在に収納されている。
【0016】
内釜2は、上面が開口した有底筒状であり、その上端部は本体1から着脱操作がしやすいように外向きに略水平に折り曲げられ、本体1の上面に載置されている。
【0017】
保護枠14の外側底部には内釜2の底面部を誘導加熱する加熱コイル4が設けられ、保護枠14と本体1との間の前面側空間部には制御部5が配置され、該制御部5の働きによって加熱コイル4を制御する。
【0018】
外蓋3には内釜2の上面開口部を覆う内蓋6が取り付けられ、該内蓋6の下面周縁部に取り付けられたパッキン7を内釜2の上端全周に当接して内釜2と内蓋6とで構成される空間を密閉状態に保持している。
【0019】
内蓋6の略中央部には調圧弁8が設けられており、加熱コイル4によって内釜2が加熱され、内釜2内の蒸気圧が高まると調圧弁8が動作し、内釜2内を所定の圧力(本実施例では1.3気圧)に調整しながら蒸気を排出する。調圧弁8から排出された蒸気は外蓋3に設けられた蒸気通路9を経て該外蓋3に着脱自在に取り付けた蒸気回収ユニット10へ導かれる。
【0020】
蒸気回収ユニット10と調圧弁8との間の蒸気通路9には、調圧弁8の近傍に位置するように蒸気温度センサー11が設けられている。
【0021】
制御回路5には、前記した蒸気温度センサー11と、内釜2の底部の温度を検出する釜底温度センサー12と、調圧弁8の調圧動作を行わせる調圧弁制御部13が接続されており、蒸気温度センサー11と釜底温度センサー12からの温度情報により加熱コイル4と、調圧弁8を閉じる調圧動作と調圧弁8が開放して内釜2内に圧力が加わらない状態とを切替制御している。
【0022】
次に回路構成について図2を用いて説明する。
【0023】
16は商用電源である。
【0024】
17は整流回路で、複数の整流器で構成され、入力する商用電源16の交流電源を直流電源に変換して出力する。出力される直流電源のマイナス側の端子は接地されている。
【0025】
20は平滑回路で、チョークコイル18とチョークコイル18の一端に接続された平滑コンデンサ19とで構成され、整流回路17で直流に変換された電源を平滑する。
【0026】
22は共振回路で、内釜2と、内釜2を誘導加熱する加熱コイル4と、加熱コイル4に並列に接続されたコンデンサ21とから構成され、加熱コイル4に高周波の電圧を印加することで、加熱コイル4と磁気結合している内釜2を誘導加熱する。
【0027】
25はインバータ回路で、スイッチング素子23とダイオード24とで構成され、スイッチング素子23のコレクタ端子とエミッタ端子には夫々ダイオード24のカソード端子とアノード端子が接続され、スイッチング素子23のコレクタ端子側には加熱コイル4が接続され、エミッタ端子側は接地されている。
【0028】
33は電流検出手段で、加熱コイル4に流れる電流値(I)を検出するものであり、その検出部は整流回路17と平滑回路20との間に接続され、出力部は後述するマイクロコンピュータ31の入力端子IN1に接続されている。
【0029】
5は制御回路で、後述するマイクロコンピュータ31に組み込まれたプログラムに従って内釜2を加熱し、炊飯を行うための制御を行うものであり、下記のように構成されている。
【0030】
26はトリガタイミング回路で、加熱コイル4に流れる共振電圧を検出する。
【0031】
27はトリガ回路で、トリガタイミング回路26で検出した共振電圧からスイッチング素子23をONするタイミングを出力する。
【0032】
28は自走発振器で、トリガ回路27の出力を基準に加熱コイル4に電力を印加する高周波数の三角波を出力する。
【0033】
30はドライブ回路で、出力はスイッチング素子23のベース端子に接続され、入力された信号を駆動に適した駆動電圧に変換してスイッチング素子23を駆動する。
【0034】
29は比較器で、スイッチング素子23のON−OFF動作時間を決定するもので、入力は自走発振器28の出力と後述するDA変換回路32の出力に接続され、これらの信号を比較してスイッチング素子23を駆動するパルス信号を出力する。
【0035】
35はインバータオン・オフ回路で、比較器29の出力を次段の回路に伝えるか断つかを、後述するマイクロコンピュータ31の信号を入力35aで入力して動作するもので、比較器29の出力を断たれるとスイッチング素子23はOFFして加熱を停止し、比較器29の出力が伝えられるとスイッチング素子23は比較器29の出力に応じて動作する。
【0036】
31はマイクロコンピュータで、入力端子IN1は電流検出手段33の検出した電流値(I)を入力し、出力端子OUT2は、インバータオン・オフ回路35を制御するインバータオン・オフ信号(インバータオン信号またはインバータオフ信号)を出力し、出力端子OUT1は、事前に入力されているプログラムに応じて加熱コイル4に流れる電流を制御するための電力設定信号を出力するもので、電力設定信号は、一定の周期のパルス信号(ON−OFFの矩形波)で出力し、加熱する出力値の大小に応じて矩形波のON−OFFの比率を可変するものである。そして、入力端子IN1に入力される電流(I)がプログラムの要求する出力になるように、電力設定信号の矩形波のON−OFF時間の比率を調整する。例えば、加熱する出力が大きく入力電流が大きい時はON時間の比率を小さくしてアナログ信号のレベルを低くなるように設定し、出力が小さく入力電流が小さい時はON時間の比率を大きくしてアナログ信号のレベルを高くなるように設定している。
【0037】
32はDA変換回路で、マイクロコンピュータ31の出力端子OUT1から出力される電力設定信号をアナログ信号に変換するものである。
【0038】
34は記憶手段で、前記電力設定信号の駆動条件である一定の周期のパルス信号(ON−OFFの矩形波)のON時間(S)を記憶しておくところである。尚、記憶手段34は、マイクロコンピュータ31の内部記憶手段を使用しても良い。
【0039】
本実施例は、以上の構成からなり、次に動作について詳細に説明する。
【0040】
炊飯器を商用電源16に接続すると、電源が商用電源16から整流回路17に供給され、整流回路17によって整流され、平滑回路20によって平滑されて直流の電源に変換される。
【0041】
マイクロコンピュータ31は、使用者から炊飯開始の動作信号が入力されるまで、各出力端子OUT1,OUT2からは信号を出力することなく待機状態となる。
【0042】
次に、使用者から炊飯開始の動作信号がマイクロコンピュータ31に入力されると、マイクロコンピュータ31は、炊飯を行うため入力されているプログラムに応じて浸し工程,加熱工程,蒸らし工程そして保温工程と進むべき加熱を開始する。
【0043】
加熱を開始するために、マイクロコンピュータ31は、出力端子OUT2からインバータオン信号を出力し、インバータオン・オフ回路35をONして比較器29の信号をドライブ回路30に伝えられる状態にする。
【0044】
そして、内釜8を加熱するため、マイクロコンピュータ31は、記憶手段34に記憶してあるスイッチング素子23を駆動するための駆動条件となる電力設定信号のON時間(S)を呼び出し、出力端子OUT1から前記呼び出したON時間(S)で生成された電力設定信号を出力する。
【0045】
次に、出力された電力設定信号は矩形波に応じてDA変換回路32でアナログ値のアナログ信号に変換され、比較器29に入力される。電力設定信号の矩形波は、動作周期が一定なのでON時間(S)が決定すればOFF時間は自ずと決まり、ON時間(S)が長いほどDA変換回路32から出力されるアナログ信号の値も大きくなる。
【0046】
図3に、電力設定信号(3−c)とアナログ信号(3−d)の関係を示す。
【0047】
3−cに示すのは、ON時間(S)の長い電力設定信号(イ)とON時間(S)の短い長い電力設定信号(ロ)を示し、3−dでは、DA変換回路32を通過した前記各電力信号の出力であるアナログ信号が示され、ON時間(S)の長い電力設定信号(イ)は出力レベルの高いアナログ信号(イ)が出力され、ON時間(S)が短い電力設定信号(ロ)は出力レベルの低いアナログ信号(ロ)が出力されることを示し、そのアナログ信号が比較器29に入力される。
【0048】
同時に、自走発振器28の発生する三角波も比較器29に入力され、比較器29の出力信号がインバータオン・オフ回路35,ドライブ回路30を経由してインバータ回路25内のスイッチング素子23のベースへ伝達され、スイッチング素子23が駆動される。
【0049】
比較器29は、自走発振器28の出力する三角波とDA変換回路32の出力するアナログ信号を比較し、アナログ信号のレベルが高いと三角波の頂点側に信号が振れるので、比較器29の出力するON時間の比率が短くなり、アナログ信号のレベルが低いと三角波の底辺側に信号が振れるので、比較器29の出力するON時間の比率が長く、このON時間がスイッチング素子23をONする時間となる。
【0050】
図3は、上記の動作を説明するもので、3−aはスイッチング素子23をONするタイミングを出力するトリガ回路27の信号を示し、3−bはトリガ回路27の信号に同期して三角波を出力する自走発信器28の出力を示し、3−cと3−dは、前述したようにマイクロコンピュータ31のOUT1端子の出力する電力設定信号と、DA変換回路32が出力するアナログ信号を示したものである。
【0051】
そして、3−eは、3−bと3−dの信号が比較器29に入力し、両方の信号を比較しやすいように重複して図示したもので、3−fは比較器29の出力を示したものである。
【0052】
入力された基準となる三角波に対して、入力されたアナログ信号の出力の大小に応じて比較器29の出力波形(3−f)のON時間が異なり、出力値の大きなアナログ信号(イ)の場合は、出力波形のON時間が短いスイッチング素子ON時間(イ)の信号となり、出力値の小さなアナログ信号(ロ)の場合は、出力波形のON時間が長いスイッチング素子ON時間(ロ)の信号を出力する。
【0053】
スイッチング素子23が駆動されることにより、前記直流電源から共振回路22に電流が供給され、加熱コイル4やスイッチング素子23等に電流が流れ始める。
【0054】
スイッチング素子23に電流が流れると、そのコレクタの電圧、即ち共振電圧を検出するトリガタイミング回路26が動作を始め、その出力がトリガ回路27に伝達され、さらに自走発振器28に伝達される。トリガタイミング回路26の信号が自走発振器28に伝達されると、自走発振器28はその信号に同期する周波数で発振するようになる。
【0055】
以後、内釜2を加熱している間は、前記信号は自走発振器28→比較器29→インバータオン・オフ回路35→ドライブ回路30→スイッチング素子23→トリガタイミング回路26→トリガ回路27→自走発振器28→・・・・・・とループ状に伝達される。これにより、スイッチング素子23がトリガタイミング回路26によるONタイミングで周期的に駆動されるため、加熱コイル4に高周波電流が持続して流れ、内釜2の加熱が行われる。
【0056】
電流検出手段33は、この高周波電流に対応して電源16から流れる電流(I)を検出してマイクロコンピュータ31の入力端子IN1に入力する。
【0057】
マイクロコンピュータ31は前記入力された電流(I)値と後述する規定電流(Ia)とを比較し、電流検出手段33の検出値が規定電流(Ia)と同じ値になるように、スイッチング素子23の駆動条件である電力設定信号のON時間(S)を変更する。
【0058】
前記規定電流(Ia)とは、炊飯器の製造元で事前に出力を調整した時に記憶した電流値で、商用電源16の代わりに定格電圧にて電源を供給し、規定出力となるようにスイッチング素子23の駆動条件を調整した時に加熱コイル4に流れる電流を電流検出手段33で検出した値である。
【0059】
そして、マイクロコンピュータ31は所定の終了時期が来たと判断すると、その出力端子OUT1,OUT2の出力を全て停止し、スイッチング素子10などの動作も停止し加熱が終了する。
【0060】
以上は主に回路の動作を中心に説明したが、次にマイクロコンピュータ31の内部で行われている処理について図4のフローチャートを用いて説明する。
【0061】
工程4−aは待機の状態を示し、炊飯器に電源が供給され、使用者からの動作(加熱)開始の支持を待つ状態を示す。
【0062】
工程4−bは加熱を開始する状態を示し、使用者により炊飯の加熱開始を指示されプログラムに応じて加熱動作に入ったことを示す。
【0063】
工程4−cはスイッチング素子23の駆動条件である電力設定信号のON時間(S)を呼び出す動作を示す。マイクロコンピュータ31は内釜2を加熱するために、スイッチング素子23の駆動条件である電力設定信号のON時間(S)を記憶手段34より呼び出し、呼び出した時間Sは、工程4−d1でON時間(S)と決定する。もし、何らかの故障によってこの時間Sが呼び出せなかった場合、または呼び出した時間Sの値が一定値以上に異なった数値を検出した場合は、工程4−d2で事前にプログラム等に入力してある時間SrをON時間(S)と決定する。
【0064】
工程4−eでは決定したON時間(S)から電力設定信号を生成して出力する工程である。
【0065】
工程4−fは加熱コイル4に流れる電流を電流検出手段33によって検出する動作を示したもので、スイッチング素子23が動作を開始し、加熱コイル4に流れる電流(I)を電流検出手段33によって検出するもので、その電流(I)は、電源電圧のバラツキや共振回路22の状態に応じて変化する。
【0066】
工程4−gは前記電流(I)の違いを修正する動作を示すもので、前記検出した電流(I)と規定電流(Ia)と比較し、スイッチング素子23の駆動条件である電力設定信号のON時間(S)を補正して修正する。
【0067】
検出電流(I)が規定電流(Ia)より小さい場合は、工程4−h3によって電量設定信号のON時間(S)の時間Sを短くすることでスイッチング素子23のON時間を長く補正して電流値(I)を規定値(Ia)になるように修正し、検出電流(I)が規定電流(Ia)より大きい場合は、工程4−h2によって電量設定信号のON時間(S)の時間Sを長くすることでスイッチング素子23のON時間を短く補正して電流値(I)を規定値(Ia)になるように修正する。検出電流(I)と規定電流(Ia)が同じ場合は電量設定信号のON時間(S)の時間Sを変更することなく加熱は継続される。
【0068】
検出電流(I)を規定電流(Ia)と比較する場合、一定時間の平均値で比較しても良いし、検出電流(I)と規定電流(Ia)を比較した場合、一定値以上の差が有る場合のみ補正するようにしても良い。
【0069】
前記補正が完了すると工程4−jにて、補正後のON時間(S)の時間Sを、既に記憶手段34に記憶されている時間Sに上書きして修正する工程である。そして、次回からの炊飯動作(加熱)では修正した時間Sで電力設定信号のON時間(S)を駆動することができるので加熱開始直後から規定電力で内釜2を加熱することができるようになる。
【0070】
工程4−kは加熱終了の工程で、マイクロコンピュータ31は所定の終了時期が来たと判断すると、その出力端子OUT1,OUT2、の出力を全て停止し、スイッチング素子10などの動作も停止し加熱を終了する。
【0071】
以上使用する商用電源16の電圧値の違いによる動作を説明したが、内釜2を交換した時に、内釜2の誤差による共振回路22の変動による加熱出力の誤差も、一度炊飯器を動作することで自動的に規定出力に修正が可能となる。
【0072】
以上説明したように、本実施例によれば、炊飯動作毎に、前回の炊飯時に制御回路の記憶手段に記憶しているスイッチング素子のON−OFF時間の比率を呼び出し、該ON−OFF時間の比率で内釜の加熱を開始するようにしたので、炊飯動作直後から所定の電力を加熱コイルに供給して炊飯することが可能となり、常に美味しいご飯を炊くことができる。
【符号の説明】
【0073】
2 内釜
4 加熱コイル
5 制御回路
22 共振回路
25 インバータ回路
33 電流検出手段
34 記憶手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源を整流して直流電源に変換する整流回路と、
前記直流電源を平滑する平滑回路と、
本体内に着脱自在に収納される内釜と該内釜を加熱する加熱コイルと該加熱コイルに並列接続したコンデンサとからなる共振回路と、
一定の周期でON−OFF動作を繰り返し前記加熱コイルに前記直流電源を供給するスイッチング素子を備えたインバータ回路と、
前記加熱コイルに流れる電流値を検出する電流検出手段と、
該電流検出手段の検出値から前記加熱コイルの出力が所定の出力となるように前記スイッチング素子のON−OFF時間の比率を調整する制御回路とを備え、
該制御回路に前記スイッチング素子のON−OFF時間の比率を記憶する記憶手段を備えた炊飯器において、
前記制御回路は、炊飯動作毎に前回の炊飯時に前記記憶手段に記憶している前記スイッチング素子のON−OFF時間の比率を呼び出し、該ON−OFF時間の比率で前記内釜の加熱を開始し、前記電流検出手段の検出値から前記加熱コイルの出力が所定の出力となるように前記スイッチング素子のON−OFF時間の比率を調整し、既に記憶されている前記比率を調整後の比率に変更することを特徴とした炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−103941(P2011−103941A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259394(P2009−259394)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】