説明

炊飯器

【課題】発芽から炊飯までを連続的に自動制御でき、開発コストや製品価格の引き上げを抑え、洗浄等が容易な構造にする。
【解決手段】釜14の内蓋20上部からエアポンプ56でエアを供給する。内蓋20を貫通して釜14の底部18に達する送気パイプ34を設ける。釜14の中に水28とともに玄米(穀物の種子)26を収容する。釜14の中に水28とともに収容した玄米26を一定時間だけ水28に浸漬した状態で待機する。その後、エアポンプ56を起動し、バルブ38を開放して、エアポンプ56から送気パイプ34を通じて釜14の中の水28中に空気を噴出させ、同時に釜14を一定時間だけ発芽温度に保持する。適当に発芽した後に、エアポンプ56を停止して、発芽した玄米(種子)26の炊飯のための制御に移行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発芽玄米を炊飯することができる炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、発芽玄米を釜に入れて水に浸し、連続的にエアを供給して発芽させ、最適の発芽状態になったときに炊飯を自動的に開始させる装置を開発した(特許文献1参照)。これにより、味も栄養状態もともに非常に良好な玄米ご飯を炊くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4013205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既存の炊飯器に上記文献の機構を組み込むためには、炊飯器の内釜の底部の大幅な設計変更が必要になる。このとき、炊飯器の作動条件が変わるため、炊飯器制御プログラムの変更等も必要になる。また、エアポンプを組み込むスペース分だけ、炊飯器が大型化する。このために、開発コストが高く、製品価格の大幅引き上げにつながるという問題があった。
上記の課題を解決するために、本発明は次のような炊飯器を提供することを目的とする。
(1)既存の炊飯器自体の改造部分が些少であり、開発コストや製品価格の引き上げを最小に抑えられる。
(2)外付け構造のため、部品を取り外して十分洗浄することができる。
(3)上方からエアを供給し、逆止弁を設けると、送気パイプへの水の逆流を阻止できる。
(4)発芽から炊飯までを連続的に自動制御できる。
(5)内釜の底部に孔を開けなくてよいので、水が漏れることを防ぐ装備を必要としない。
(6)内釜の底部に孔がないので、孔に取り付けた空気を送り込む管を洗浄する困難がない。
(7)既存の炊飯器に装置を付加するので、あらたに炊飯器のデザインを行う必要がない。
(8)既存の炊飯器と部品をほとんど共用できるので、製造コストが低廉である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下の構成はそれぞれ上記の課題を解決するための手段である。
〈構成1〉
エアポンプから前記釜の蓋を貫通して前記釜の底部に達する送気パイプと、前記釜の中に水とともに収容した穀物の種の発芽と炊飯のために、前記釜の加熱温度と加熱タイミングを制御する炊飯器制御部を備え、前記炊飯器制御部は、前記釜の中に水とともに収容した前記穀物の種を一定時間だけ水に浸漬した状態で待機し、その後、前記エアポンプを起動し、前記エアポンプから前記送気パイプを通じて前記釜の中の水中にエアを噴出させ、前記釜を一定時間だけ発芽温度に保持し、前記発芽温度で一定時間を経過した後に、前記エアポンプを停止して、発芽した前記穀物の種の炊飯制御を開始することを特徴とする炊飯器。
【0006】
〈構成2〉
エアポンプから前記釜の蓋を貫通して前記釜の底部に達する送気パイプと、前記釜の中に水とともに収容した穀物の種の発芽と炊飯のために、前記釜の加熱温度と加熱タイミングを制御する炊飯器制御部を備え、前記炊飯器制御部は、指定された炊飯開始時刻を含む炊飯条件を読み取り、種子の浸漬時間を計算し、発芽用の加熱温度と加熱開始時刻を計算し、送気用のエアポンプ起動時刻を計算し、前記釜の中に水とともに収容した前記穀物の種を前記浸漬時間だけ水に浸漬し、前記エアポンプを前記起動時刻に起動して、前記エアポンプから前記送気パイプを通じて前記釜の中の水中にエアを噴出させ、前記釜を前記加熱開始時刻から前記発芽温度に保持し、その後、前記炊飯開始時刻に前記エアポンプを停止して、発芽した前記穀物の種の炊飯制御を開始することを特徴とする炊飯器。
【0007】
〈構成3〉
構成1または2に記載の炊飯器において、前記穀物の種は、米、麦、蕎麦、サルバまたは豆類のいずれかであることを特徴とする炊飯器。
【0008】
〈構成4〉
構成1乃至3に記載の炊飯器において、前記エアポンプは、前記釜の内蓋もしくは外蓋に固定され、前記送気パイプは、前記エアポンプに対して着脱可能に接続されていることを特徴とする炊飯器。
【0009】
〈構成5〉
構成1乃至4のいずれかに記載の炊飯器において、前記エアポンプは、前記釜の内蓋もしくは外蓋に着脱可能に固定されていることを特徴とする炊飯器。
【0010】
〈構成6〉
構成1乃至5のいずれかに記載の炊飯器において、前記エアポンプは、前記釜の中に水を外部から供給する送水ポンプを兼ねることを特徴とする炊飯器。
【0011】
〈構成7〉
構成1乃至6のいずれかに記載の炊飯器において、送気パイプの軸を中心に周囲にエアを噴出するノズルを設けたことを特徴とする炊飯器。
【0012】
〈構成8〉
構成1乃至7のいずれかに記載の炊飯器において、送気パイプの端に、逆流阻止弁を有するエア溜まりを備えたことを特徴とする炊飯器。
【0013】
〈構成9〉
構成1乃至7のいずれかに記載の炊飯器において、送気パイプの端に、上方にエアを噴出させるノズルを有するエア溜まりを備えたことを特徴とする炊飯器。
【0014】
〈構成10〉
構成1乃至9のいずれかに記載の炊飯器において、送気パイプは、釜の最深部に先端が達するように配置されることを特徴とする炊飯器。
【0015】
〈構成11〉
構成1乃至10のいずれかに記載の炊飯器において、前記炊飯器制御部は、無線送受信部を介して前記ポンプを制御することを特徴とする炊飯器。
〈構成12〉
構成2乃至10のいずれかに記載の炊飯器において、前記炊飯器制御部は、浸漬開始と同時もしくは釜を発芽温度加熱する前に、前記エアポンプを起動することを特徴とする炊飯器。
【発明の効果】
【0016】
〈構成1の効果〉
釜の蓋を貫通して釜の底部に達する送気パイプを設け、エアポンプから釜の中に送気するようにしたので、釜の炊飯機構本体の構造に影響を与えることがない。釜の蓋から送気パイプを抜き取れば清掃も容易である。
〈構成2の効果〉
予約時刻に炊飯を開始する場合には、その予約時刻に応じた浸漬と発芽制御をすることができる。
〈構成3の効果〉
発芽させて食べるのに適する穀物として、米、麦、蕎麦またはサルバを挙げることができる。
〈構成4の効果〉
送気パイプを取り外して洗浄することができる。
〈構成5の効果〉
エアポンプが釜に着脱可能に取り付けできると、炊飯器の本体部分と切り離してメンテナンスができる。
〈構成6の効果〉
送水ポンプを起動すると、送気パイプや炊飯器内部を洗浄できる。
〈構成7の効果〉
攪拌効果を高めることができる。
〈構成8の効果〉
送気パイプの端のエア溜まりからエアを噴出させるが、そこに逆流阻止弁を設けると、送気パイプ中への逆流を防止できる。
〈構成9の効果〉
上方にエアを噴出させることで、エア溜まりが釜の最深部に押しつけられて位置が安定する。さらに、空気が広い範囲に噴出して、空気が満遍なくいきわたる。
〈構成10の効果〉
送気パイプの先端が釜の最深部にあれば、底部にある種子にまで満遍なく空気が行き渡る。
〈構成11の効果〉
エアポンプと送気パイプのユニットを炊飯器本体と電気的に切り離し、無線通信により同期させることができる。
〈構成12の効果〉
浸漬開始と同時もしくは釜を発芽温度加熱する前に、種子に酸素を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1の炊飯器を示す縦断面図である。
【図2】本発明の炊飯器の各種変形例を示す説明図である。
【図3】炊飯器制御用コンピュータのハードウエアブロック図である。
【図4】炊飯器制御用コンピュータの機能ブロック図である。
【図5】無線制御ができるエアポンプの機能ブロック図である。
【図6】エアポンプを無線制御することができる炊飯器制御部側の機能ブロック図である。
【図7】本発明の炊飯器の給水制御方法を示すフローチャートである。
【図8】本発明の炊飯器の制御方法を示すフローチャートである。
【図9】本発明の炊飯器の予約制御方法を示すフローチャートである。
【図10】本発明の炊飯器の浸漬制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を実施例毎に詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は実施例1の炊飯器10を示す縦断面図である。
図の炊飯器10は、内部に釜14を備え、内蓋20と外蓋22とを一体化した取っ手15により蓋がされる構造になっている。内蓋20と外蓋22には、炊飯中の蒸気の圧力を逃がすための蒸気抜きの孔30が設けられている。釜14の中には、適量の水28とともに穀物の種26を収容している。上記の蒸気抜きの孔30を貫通するように、送気パイプ34が差し込まれている。送気パイプ34は、エアポンプ56から前記釜14の蓋を貫通して釜14の底部18にエアを送り込むためのものである。この例では、エアポンプ56を外蓋22の上面に固定した。
【0020】
このような構造の炊飯器は、先行技術文献1に示したのと同様に、釜の内部で穀物の種26を発芽させ、適切なタイミングで炊飯を開始して、発芽穀物の御飯を賞味することができる。穀物の種26としては、米、麦、蕎麦またはサルバ等が適する。この発明では、釜14の蓋を貫通して釜14の底部18に達する送気パイプ34を設け、エアポンプ56から釜14の中に送気するようにしたので、既存の内釜に一切変更を加える必要がない。内釜やその周辺の構造は、形状のわずかな違いが炊き上がりの味に大きく影響する。これは炊飯器の中核的な構成要素である。この部分に一切変更を加える必要がないので、製品開発コスト、製造コストを小額で済ませることができる。即ち、既存の多くの炊飯器に比較的容易に取り付けが可能である。蒸気抜きの孔30は既存のどの炊飯器にも設けられているから、簡単に送気パイプ34を装着できる。
【0021】
例えば、この実施例では、エアポンプ56を、釜14の外蓋22の外面に固定した。しかしながら、釜14の内蓋20もしくは外蓋22の外面でも内面でも、どの部分に固定しても構わない。また、使用しないときは別にしまっておけるように、エアポンプ56は、釜14の内蓋20もしくは外蓋22に着脱可能に固定されていることが好ましい。これにより、エアポンプ56のメンテナンスも容易である。また、送気パイプ34は、エアポンプ56に対して着脱可能に接続されていることが好ましい。これにより、送気パイプ34だけを取り外して十分に洗浄することができる。なお、図1の例では、蒸気抜きの孔30を利用して送気パイプ34を内蓋20の内部に引き込んだが、例えば、取っ手15の中心を通るように垂直下方に送気パイプ34を貫通させるようにしてもよい。いずれも、内蓋20や外蓋22の既存の貫通孔を利用するので、釜14の設計や性能に大きな影響をおよぼさない。
【実施例2】
【0022】
図2は、本発明の炊飯器の各種変形例を示す説明図である。
図2(a)は、炊飯器10の外部にエアポンプ56を設置し、送気パイプ34を伸ばして炊飯器10に装着したところを示す。エアポンプ56はこのように、必ずしも炊飯器10に装着する必要はない。どこに配置しても構わない。しかし、後で説明するように、炊飯器10と一体に動作を制御されることが好ましい。図1の実施例では、送気パイプ34を1本の全長にわたって均一な筒とした。図2(b)の実施例では、送気パイプ34の先端を複数本に枝分かれさせた。送気パイプ34の先端は、釜14の形状やサイズ等により自由に変形することができる。
【0023】
図2(b)は、送気パイプ34の先端に枝状のノズル60を取り付けたところを示す。このように、送気パイプ34の軸を中心に周囲にエアを噴出するノズル60を設けると、釜14の中に空気の泡が供給されて上昇し、その泡があったあとの空間に周りの水が流れ込むことによって発生する水流を作ることができる。これで、釜14の内部を攪拌しながらエアを供給できる。ノズル60の先端をさらに適切な方向に向けるように構成すると、さらに攪拌効果が高まる。なお、この例で、エアポンプ56を炊飯器10の制御部で無線制御するように構成することができる。破線のように、無線通信用のアンテナを設ければよい。この制御については、図3以下で説明する。図2(c)は、送気パイプ34の先端にラッパ状部62を設けた例である。この場合ににも、エアが広がり、攪拌効果が高まる。従って、空気か溶け込んだ水が満遍なく種子に触れて、発芽を助けることができる。
【0024】
図2(d)の例では、送気パイプ34の先端に外径の太いエア溜り63を設けた。図2(e)にその縦断面図を示した。エア溜り63の上面には、いくつかのスリット64が設けられている。エア溜り63を、弾性のあるプラスチックで構成すると、スリット64は逆流阻止弁として機能する。即ち、エアを釜14の内部に噴出することができるが、釜14の内部の水がスリット64を通ってエア溜り63との内部に入り込まない。これにより、送気パイプ34中への逆流を防止でき、清掃が楽になる。
【0025】
また、このようなノズル構造にすると、図の(e)に示すように、上方に噴出するエアの反作用で、エア溜り63が釜14の最深部に押しつけられる。そして、その場所で安定する。従って、攪拌機能が高まる。送気パイプ34の先端は、釜14の最深部に達するように配置されることが好ましい。これにより、空気が多く溶け込んだ水を釜14の底までいきわたらせることができる。
【0026】
図3は、炊飯器制御用コンピュータのハードウエアブロック図である。
炊飯器は、マイクロコンピュータを搭載している。コンピュータ11の内部バス110には、CPU(中央処理装置)111と、ROM(リードオンリメモリ)112と、RAM(ランダムアクセスメモリ)113と、入出力インタフェース115とが接続されている。入出力インタフェース115には、ヒータユニット24とエアポンプ56と液晶ディスプレイ50とが接続されている。ROM112やRAM113には、後で説明する各制御部を実現するコンピュータプログラムが記録されており、CPU111がそのプログラムを読み取って、制御動作を実行する。
【0027】
図4は、上記の炊飯器制御用コンピュータの機能ブロック図である。
炊飯器制御用コンピュータは、炊飯器制御部42、タイマ制御部40、加熱回路制御部44、コネクタ57、及び表示文字制御部48として機能する。炊飯器制御部42は、図1に示した釜14の中に水とともに収容した穀物の種26の発芽と炊飯のために、釜14の加熱温度と加熱タイミングを制御する機能を持つ。タイマ制御部40は、制御タイミングを計時するための時計機能を持つ。
【0028】
炊飯器制御部42は、釜14の中に水28とともに収容した穀物の種26を、一定時間だけ水28に浸漬した状態で待機する。これにより、穀物の種26に十分水を染み込ませる。タイマ制御部40その後、タイマ制御部40のタイミング制御により、炊飯器制御部42の命令でコネクタ57が動作し、エアポンプ56を起動する。こうして、エアポンプ56から送気パイプ34を通じて釜14の中の水28中にエアを噴出させる。同時に、炊飯器制御部42の命令により、加熱回路制御部44がヒータユニット24を起動して、釜14を一定時間だけ発芽温度に保持する。
【0029】
これにより、発芽のために必要な酸素を供給し、発芽に適する温度に加温して発芽を待つ。この発芽温度で一定時間を経過した後に、タイマ制御部40のタイミング制御により、炊飯器制御部42の命令でコネクタ57が動作し、エアポンプ56を停止する。そして、炊飯器制御部42の命令により、加熱回路制御部44が、ヒータユニット24を制御して、発芽した穀物の種26の炊飯制御を開始する。即ち、最適な発芽状態で、ただちに炊飯を開始する。このような制御が必要であることは、特許文献1に記載されたとおりである。なお、これらの動作の進行中、表示文字制御部48の制御により、炊飯器の状態が液晶ディスプレイ50に表示される。
【実施例3】
【0030】
図5は、無線制御ができるエアポンプの機能ブロック図である。図6は、エアポンプを無線制御することができる炊飯器制御部側の機能ブロック図である。
図5のように、この実施例のポンプ制御部55には無線送受信部54が接続されている。また、図6に示すように、炊飯器制御部42は、無線送受信部52を通じて制御命令を無線送受信部54に送信するように構成されている。従って、図2(a)に示すように、エアポンプを炊飯器より少し離れた場所に置いて、連動制御することができる。もちろん、炊飯器の蓋にエアポンプを固定するときも、ワイヤレスで取り扱いが容易になる。なお、無線制御には、電波のほかに、光信号、超音波信号、赤外線等を広く利用することができる。
【実施例4】
【0031】
図7と図8により、本発明の炊飯器の制御方法を説明する。
この実施例では、上記のエアポンプ56を、釜14の中に適量の水を外部から供給する送水ポンプとして機能させる。図7のフローチャートに示すように、初めに、ステップS1で、穀物の種26を釜14に入れた状態で、スイッチをオンする。このとき、例えば、釜の重量を圧電素子等を使用して自動的に計量して、穀物の種の量を求める。なお、利用者のスイッチの操作により、給水量を直接指定しても構わない。なお、図7と図8のフローチャートの右側には、そのタイミングで液晶ディスプレイ50に表示される内容を示した。
【0032】
炊飯器制御部42は、その後ステップS2で、エアポンプ56を送水ポンプとして起動する。もちろん、エアポンプ56を、例えば、図示しない給水タンクに接続しておくものとする。このエアポンプ56により釜14の中に適量の水が供給され、次の制御の準備ができる。このように給水から自動化をすると、穀物の種の最初の水浸漬時間も、全て自動計測できるから、より一層、発芽条件を精密に制御できる。
【0033】
図8のフローチャートのステップS11では、適量の水が供給されているかどうかを確認する。適量の水が供給されているかどうかは、例えば、釜の重量を検出することで確認できる。なお、エアポンプ56の給水速度と動作時間とにより総給水量を計算しても構わない。
【0034】
次に、ステップS12では、タイマ制御部40が浸漬待機時間の計測をする。タイムアップすると、ステップS13に進む。ステップS13では、炊飯器制御部42が発芽温度の設定をする。ステップS14では、加熱回路制御部44がヒータユニット46を起動し、ポンプ制御部55がエアポンプ56を起動する。タイマ制御部40は、ステップS15では、加熱時間の計測をする。タイムアップすると、発芽制御が終了する。そして、炊飯器制御部42は、ステップS16で炊飯温度の設定をする。この制御は、既知の炊飯器のように、複雑な温度制御になる。ステップS17で加熱回路制御部44の制御によって加熱を開始して、ステップS18では、タイマ制御部40が炊飯時間の計測をする。炊飯が終了すると、ステップS19で、炊飯器制御部42は蒸らし温度の設定をする。そして、加熱回路制御部44はステップS20で、蒸らしを開始する。タイマ制御部40はステップS21で蒸らし時間を計測して、タイムアップすると、ステップS22で蒸らしを終了する。炊飯器制御部42は、ステップS23で保温温度の設定をし、ステップS24で保温を開始する。こうして、一連の炊飯制御が終了する。以上の制御は一例であって、より複雑な制御も可能である。
【実施例5】
【0035】
自動炊飯器を使用する場合には、2通りの使い方がある。ひとつは、スイッチを御してすぐに炊飯を開始する方法である。もう一つは食事の開始時刻に合わせて、指定した時刻に炊飯を開始させる方法である。発芽玄米炊飯装置の場合には、種子の浸漬時間と発芽促進時間とが必要であり、通常の炊飯器よりも十分に早くスイッチをオンしなければならない。前日の夜にセットをして翌朝炊飯が完了するといった使い方をする。
【0036】
しかしながら、発芽玄米炊飯装置でも、スイッチオン時刻をタイマ予約することできれば便利である。このとき、次のような問題がおこる。タイマセットをするときには、種子を水に浸漬した状態が開始する。種子を水に浸漬しておくと、加熱をしなくても発芽が始まる。従って、浸漬時間が長いときには、その後の発芽促進のための加熱時間を短くすることができる。また、最適な浸漬時間は水温と種子の種類により異なる。浸漬開始と同時に加熱と送気を開始してもよい。さらに、浸漬中に発芽すると水の中の酸素を消費するので、浸漬時間が長いときには種子が酸欠で死ぬおそれがある。
【0037】
以上のようなことから、タイマ予約の場合には、様々な条件に従って制御方法を選択する。以下、図9のフローチャートに従って説明する。
ステップS31では、予約操作のためにスイッチをオンする。
ここで、炊飯器に予約時刻とともに、セットした種子の種類や量等のデータを入力しておく。炊き上がりが、普通飯か、おこわか、おかゆか等の区別も入力しておくとよい。また、例えば、水量を読み取るセンサを設けておき、不適切な水量のときは警告を発するようにしてもよい。
【0038】
ステップS32では、制御部が入力された種子の種別を読み取る。ステップS33では、制御部が入力された種子量を読み取る。ステップS34では、制御部が水量を読み取る。
ステップS35では、制御部が水温を計測する。ステップS36では、指定された炊飯開始時刻を読み取る。以上で、炊飯器の設定に必要な情報の収集が終わる。ステップS37では、浸漬時間の計算をする。予約開始から炊飯開始までの時間が広い意味の浸漬時間である。この時間は、予約が設定されたときに決まる。
【0039】
ステップS38では、発芽温度の計算をする。ステップS39では、加熱温度の計算をする。いずれも種子の種類等に応じて算出する。ステップS40では、エアポンプ起動時刻設定をする。種子が酸欠になるおそれのある時刻を計算する。従って、浸漬中でもいつでも起動設定ができる。ステップS41では、浸漬待機時間設定をする。これは、発芽促進加熱までの時間である。ゼロに設定する場合もあり得る。ステップS42では、発芽温度の設定をする。
【0040】
発芽させるための加熱温度を設定する。水温や種子の種類に応じて算出する。ステップS43では、加熱時間の設定をする。上記の条件をすべて考慮に入れた計算により求める。なお、いずれの計算も、経験値を使用した演算テーブルにより正確に即時に実行することができる。以上の各ステップの計算は、いずれを先に実行しても構わない。設定をするというのは、制御時に読み取るデータを指定された記憶領域に記憶させておくことであって、炊飯制御部は任意のタイミングで各設定データを読み取って制御を実行する。
【0041】
なお、現在の水温で放置するとなにもしなくても発芽してしまう時刻が計算できる。それ以上先の時刻が予約されたときには、警告を出すとよい。炊飯を開始する時刻を早めて、その後は保温して待つようにしてよいかどうかを問うメッセージを出力するとよい。だめな場合には、セットする時刻を遅らせてもらうとよい。発芽が終了したら、他の実施例と同様に、炊飯開始時刻にエアポンプを停止して、発芽した穀物の種の炊飯制御を開始する。
【実施例6】
【0042】
図10は、本発明の炊飯器の浸漬制御動作フローチャートである。
炊飯器に穀物の種と水を入れてセットしてから炊飯が開始されるまでの時間が穀物の種の浸漬時間になる。前日の午後6時にセットして翌朝6時に炊き上がるよう設定した場合と、前日の午後10時にセットした場合とでは、浸漬時間に差が生じる。前者の方が約4時間浸漬時間が長くなる。浸漬時間が長い場合には、種子が酸欠で死んでしまわないように、酸素を補給する必要がある。そこで、この実施例では、ステップS51で、予約スイッチがオンされたとき、ステップS52で、炊飯器制御部42がセットされた条件を読み取って浸漬時間を計算する。そして、ステップS53で、浸漬時間が閾値以上長いと判断された場合には、浸漬開始と同時にアポンプを起動する。
【0043】
なお、浸漬時間中に必要な酸素供給量と加速発芽処理中に必要な差塩供給量とは異なるから、エアポンプの運転を浸漬モードと加熱発芽モードの2種類のモードで運転することが好ましい。また、浸漬時間の長短にかかわらず、浸漬開始と同時にエアポンプを起動させても構わない。浸漬時間が長いときに十分な酸素を供給していると、浸漬中にもゆっくり発芽するので、加熱して加速発芽させる時間を短くすることができる。
【符号の説明】
【0044】
10 炊飯器
14 釜
15 取っ手
16 開口部
18 底部
20 内蓋
22 外蓋
24 ヒータユニット
26 穀物の種
28 水
30 蒸気抜きの孔
34 送気パイプ
37 泡
38 バルブ
40 タイマ制御部
42 炊飯器制御部
44 加熱回路制御部
46 ヒータユニット
48 表示文字制御部
50 液晶ディスプレイ
52 無線送受信部
54 無線送受信部
55 ポンプ制御部
56 エアポンプ
57 コネクタ
58 バルブ制御部
60 枝状のノズル
62 ラッパ状部
63 エア溜り
64 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアポンプから前記釜の蓋を貫通して前記釜の底部に達する送気パイプと、
前記釜の中に水とともに収容した穀物の種の発芽と炊飯のために、前記釜の加熱温度と加熱タイミングを制御する炊飯器制御部を備え、
前記炊飯器制御部は、前記釜の中に水とともに収容した前記穀物の種を一定時間だけ水に浸漬した状態で待機し、その後、前記エアポンプを起動し、前記エアポンプから前記送気パイプを通じて前記釜の中の水中にエアを噴出させ、前記釜を一定時間だけ発芽温度に保持し、
前記発芽温度で一定時間を経過した後に、前記エアポンプを停止して、発芽した前記穀物の種の炊飯制御を開始することを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
エアポンプから前記釜の蓋を貫通して前記釜の底部に達する送気パイプと、
前記釜の中に水とともに収容した穀物の種の発芽と炊飯のために、前記釜の加熱温度と加熱タイミングを制御する炊飯器制御部を備え、
前記炊飯器制御部は、指定された炊飯開始時刻を含む炊飯条件を読み取り、種子の浸漬時間を計算し、発芽用の加熱温度と加熱開始時刻を計算し、送気用のエアポンプ起動時刻を計算し、前記釜の中に水とともに収容した前記穀物の種を前記浸漬時間だけ水に浸漬し、前記エアポンプを前記起動時刻に起動して、前記エアポンプから前記送気パイプを通じて前記釜の中の水中にエアを噴出させ、前記釜を前記加熱開始時刻から前記発芽温度に保持し、その後、前記炊飯開始時刻に前記エアポンプを停止して、発芽した前記穀物の種の炊飯制御を開始することを特徴とする炊飯器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の炊飯器において、
前記穀物の種は、米、麦、蕎麦、サルバまたは豆類のいずれかであることを特徴とする炊飯器。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載の炊飯器において、
前記エアポンプは、前記釜の内蓋もしくは外蓋に固定され、前記送気パイプは、前記エアポンプに対して着脱可能に接続されていることを特徴とする炊飯器。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の炊飯器において、
前記エアポンプは、前記釜の内蓋もしくは外蓋に着脱可能に固定されていることを特徴とする炊飯器。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の炊飯器において、
前記エアポンプは、前記釜の中に水を外部から供給する送水ポンプを兼ねることを特徴とする炊飯器。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の炊飯器において、
送気パイプの軸を中心に周囲にエアを噴出するノズルを設けたことを特徴とする炊飯器。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の炊飯器において、
送気パイプの端に、逆流阻止弁を有するエア溜まりを備えたことを特徴とする炊飯器。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれかに記載の炊飯器において、
送気パイプの端に、上方にエアを噴出させるノズルを有するエア溜まりを備えたことを特徴とする炊飯器。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の炊飯器において、
送気パイプは、釜の最深部に先端が達するように配置されることを特徴とする炊飯器。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の炊飯器において、
前記炊飯器制御部は、無線送受信部を介して前記ポンプを制御することを特徴とする炊飯器。
【請求項12】
請求項2乃至10のいずれかに記載の炊飯器において、
前記炊飯器制御部は、浸漬開始と同時もしくは釜を発芽温度加熱する前に、前記エアポンプを起動することを特徴とする炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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