説明

炊飯器

【課題】内鍋が、手前側が高くなった状態で外鍋に入れられた場合、その傾きを速やかに是正できる炊飯器を提供する。
【解決手段】炊飯器1は、本体2と、それにヒンジ部4で連結された蓋3を備える。本体2は外鍋7を内蔵し、外鍋7は被調理物を入れる内鍋11を収容する。内鍋11は上部開口の縁に外フランジ12を有し、本体2の天面には、外鍋7の中心とヒンジ部4の間の位置に、外フランジ12と本体2の天面との隙間の中で最狭部を構成する凸部20が形成されている。外鍋7を囲むように本体2の天面に形成された環状リブ21の起伏の頂点が凸部20となる。蓋3の内面には内鍋11の上部開口に密着する内蓋13が取り付けられる。内蓋13に取り付けられた蒸気逃がし口17と蓋3の間に配置されたパッキン19の弾性で、蓋3を閉じたときに内蓋13が内鍋11に対し圧力を及ぼす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
炊飯器は、本体内に設けられた外鍋に、被調理物(通常は米と水)を入れた内鍋を入れ、本体に取り付けられた蓋を閉じ、内鍋を加熱する仕組みになっている。内鍋を加熱する熱源としては電熱ヒータや誘導コイルなどがあるが、熱源がどのようなものであれ、内鍋が所定の位置に納まっていないと、設計者が意図した通りの加熱を行うことができない。そこで、内鍋を所定の位置に位置決めできるようにする様々な工夫がなされている。その例を特許文献1、2に見ることができる。
【0003】
特許文献1に記載された炊飯器は誘導加熱方式であり、外鍋の底面外側に設けられた誘導コイルによって内鍋を誘導加熱する。内鍋と誘導コイルとの距離関係のバラツキを無くし、安定した加熱特性を実現するため、内鍋が、外鍋の内底面の一部に載置された状態で外鍋に収納されるようにしている。内鍋の垂直方向の位置決めに着眼した工夫と言える。
【0004】
特許文献2に記載された炊飯器では、非金属材料からなる内鍋(土鍋、セラミック鍋、炭鍋等)の場合、金属製の内鍋に比べて径寸法のバラツキが大きいことに鑑み、内鍋を収容する保護枠(外鍋に相当)の内周面に、内鍋を保護枠の中央部に位置決めするための複数個の位置決め部材(内鍋の出し入れ動作を邪魔しない程度の弾性を有する部材で構成する)を設けている。内鍋の水平方向の位置決めに着眼した工夫と言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−187971号公報
【特許文献2】特開2007−330316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
炊飯器における内鍋の位置決めについては、「垂直方向」「水平方向」という方向性の他、もう一つ考慮すべき事項がある。それは内鍋の「傾き」である。それを図5、6に基づき説明する。
【0007】
従来例として図5に示す炊飯器100は、大きく分けて、本体2と蓋3の二つの部分からなる。蓋3は本体2に対し、ヒンジ部4で開閉自在に連結されている。本体2の筐体5と、蓋3の筐体6は、いずれも合成樹脂製である。
【0008】
本体2は後述する内鍋の収容部となる外鍋7を内蔵する。外鍋7は金属板をプレス成型したものであり、筐体5の天面に形成された平面形状円形の開口部8を通じて内部を露出させている。外鍋7の底面には内鍋に対する熱源となる熱板9が配置される。熱板9はアルミニウム合金のダイキャスト成型品からなり、内部にヒータ10が鋳込まれている。ヒータ10はシーズヒータである。
【0009】
開口部8を通じて、外鍋7の中に内鍋11が収容される。内鍋11が外鍋7に収容されたとき、両者の間には隙間が形成される。内鍋11は金属製であってもよく、非金属製であってもよい。内鍋11は、上部開口の縁に外フランジ12を有している。外フランジ12は本体2の天面上部まで延びる。内鍋11が正規位置に正しい姿勢で収容されると、外フランジ12と本体2の天面とは隙間を有することになる。
【0010】
蓋3の内面(閉じたときに内鍋11の側を向く面)には内蓋13が配置される。内蓋13は金属板をプレス加工したディスク状の部品であり、内鍋11の上部開口を覆い隠す直径を有する。内蓋13の周縁部はカール加工したリムとなっている。内鍋11を外鍋に入れた状態で蓋3を閉じると、内蓋13の周縁部が内鍋11の上部開口に当接する。
【0011】
内蓋13の中心にはスナップチャック14が取り付けられる。スナップチャック14は耐熱性のあるシリコーンゴムで成型され、蓋3の内面に形成された有頭ピン15に押し付けられると、自己の弾性で一旦拡がってからすぼまって、有頭ピン15の頭部を抱きかかえる形になる。これにより、内蓋13が蓋3に揺動可能に取り付けられる。内蓋13の周縁に指をかけて引けば、スナップチャック14が有頭ピン15から外れ、内蓋13を取り外すことができる。
【0012】
スナップチャック14には、上向きのカップ形状をなすパッキン16が一体成型されている。スナップチャック14が有頭ピン15にはめ込まれたとき、パッキン16は蓋3の内面に当たって、内蓋13がふらつくのを防止する。
【0013】
内蓋13には蒸気逃がし口17が設けられている。蒸気逃がし口17はスナップチャック14と同様に耐熱性のあるシリコーンゴムで成型された筒状の部品であって、内蓋13を垂直に貫く形で内蓋13にはめ込まれる。蒸気逃がし口17が配置されているのは内蓋13の中心とヒンジ部4を結ぶ線上の位置である。蒸気逃がし口17は蓋3に形成された開口部18を通って蓋3の外側に突き出す。蓋3の外側に突き出した蒸気逃がし口17は、蓋3の外面に取り付けられる図示しないカバー部材で隠される。
【0014】
蒸気逃がし口17には、上向きのカップ形状をなすパッキン19が一体成型されている。内蓋13を蓋3に取り付け、蒸気逃がし口17を蓋3の開口部18から突出させると、パッキン19は蒸気逃がし口17と蓋3の間に配置される形になり、蓋3の内面に、開口部18を囲む形で密着する。
【0015】
被調理物を入れた内鍋11を外鍋7に収容すると、内鍋11の底面が本体2と当接する。具体的には、内鍋11の底面が熱板9に着座する。その状態で蓋3を閉じると、内蓋13が内鍋11の上部開口に当接する。その当接状態はパッキン16、19の弾力で維持される。蓋3自身の閉じ状態は、蓋3のヒンジ部4とは反対側の端と本体2の間に設けられる図示しないラッチ機構により維持される。以後、ヒータ10に通電することにより、炊飯が遂行される。
【0016】
どの炊飯器でもそうであるが、内鍋11の外周面と外鍋7の内周面の隙間は小さい。これは、外鍋7の容積を小さくして熱容量を絞り込むとともに、筐体5の小型化を図るためである。この構成が、次のような問題を引き起こす。
【0017】
被調理物が入った内鍋11を外鍋7の中に入れるとき、使用者は開いた蓋3に正対している。すなわち図5において炊飯器100の右側に位置している。内鍋11を持った手を外鍋7の上に差し伸べるとき、内鍋11を水平に持って毎回正規位置に収めることは通常困難であり、特に、奥側(ヒンジ部4の側)が低くなるように持った状態で内鍋11を下ろすと、図6に示すように、内鍋11が傾いた状態で外鍋7にはめ込まれることがある。前述の通り内鍋11の外周面と外鍋7の内周面の隙間は小さいため、内鍋11の傾き具合によっては、内鍋11の外周面と外鍋7の内周面が図6のAの箇所で接触し、内鍋11がその角度で止まってしまうといった事態が生じ得る。
【0018】
その時点で使用者が気づき、内鍋11の角度を正せば良いのであるが、内鍋11が傾いていることを使用者が認識せず、そのまま蓋3を閉じてしまうこともしばしば生じる。その結果、図6に示す通り、内鍋11の手前側が熱板9から浮いた状態で加熱が行われることになる。
【0019】
図6の姿勢だと、内鍋11の奥側に比べ、手前側に伝達される熱量が減る。このため、炊飯が一様にならず、奥側と手前側とで炊け具合が異なるものになってしまう。熱板を使って内鍋に熱を伝える方式の炊飯器だけでなく、ヒータの熱を主として輻射熱の形で内鍋に伝える方式の炊飯器でも図6のような内鍋の傾きは炊け具合に影響を及ぼす。そしてこれは、特許文献2に記載された位置決め部材では解決できない。
【0020】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、内鍋が、手前側が高くなった状態で外鍋に入れられた場合、その傾きを速やかに是正できる、もしくは傾きが生じてもその傾き角度を低減でき、炊け具合のムラを抑えることができる炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の好ましい実施形態によれば、炊飯器は、被調理物を入れる内鍋と、前記内鍋の収容部を有する本体と、前記内鍋底面を加熱するヒータと、前記本体にヒンジ部で連結された蓋と、前記蓋に揺動可能に取り付けられ、前記蓋が閉じた状態では前記内鍋上部開口に当接するように支持された内蓋と、を備え、前記内鍋と前記収容部との間には隙間が形成されると共に、前記内鍋は、底面が前記本体と当接することで前記収容部内に収容され、前記内鍋上部開口の縁には外フランジが形成され、該外フランジは前記本体天面上部まで延び、該外フランジと前記本体天面とは隙間を有し、前記外フランジと前記本体天面との隙間の最狭部は前記ヒンジ部側に位置することにより、前記内鍋が前記ヒンジ部側に傾いて収容されたときに前記外フランジと前記本体天面の最狭部が接触して前記内鍋の前記ヒンジ部側への傾きを規制する。
【0022】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の炊飯器において、前記本体の天面には前記外鍋を囲むように環状リブが形成され、前記環状リブは上縁に起伏を有し、前記起伏の頂点が前記最狭部となる。
【0023】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の炊飯器において、前記外鍋の底部に、前記内鍋を着座させる熱板が配置され、該熱板が、前記ヒータの熱を前記内鍋底面に伝達する。
【0024】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の炊飯器において、前記内蓋は蒸気逃がし口を備え、前記蒸気逃がし口と前記蓋の間に配置されたパッキンの弾性で、前記蓋を閉じたときに前記内蓋が前記内鍋に対し圧力を及ぼす。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、内鍋の手前側が高い状態で収容部に入れられたとしても、蓋がヒンジ部で連結された本体の天面で、外鍋の中心とヒンジ部の間の位置に、内鍋の外フランジと本体天面との隙間の最狭部が設けられているから、外フランジと本体天面の接点を支点として回動する内鍋の動きを考えたとき、回動の支点が収容部から遠ざかった道理となり、内鍋の外周面が収容部の内周面に接触して内鍋の回動が阻害される度合いが小さくなる。このため、内鍋は、手前側が高くなった状態で収容部に入れられたとしても、するりと正規姿勢に収まる。もしくは収容時の傾きを低減でき、炊け具合のムラを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る炊飯器の断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る炊飯器の断面図で、図1と異なる状態を示すものである。
【図3】本発明の実施形態に係る炊飯器の一部の形状を上から見た状態を示す平面図である。
【図4】図3の一部形状を炊飯器の正面方向から見た状態を示す部分断面図である。
【図5】従来の炊飯器の断面図である。
【図6】従来の炊飯器の断面図で、図5と異なる状態を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態を図1から図4までの図を参照しつつ説明する。図5、6の従来例と共通する構成要素には図5、6で用いたのと同じ符号を付し、説明は省略する。
【0028】
本発明に係る炊飯器1が従来の炊飯器100と異なるのは、本体2の天面のヒンジ側に前面側よりも高い凸部20が形成されている点である。凸部20は、外鍋7の中心とヒンジ部4の間の位置に配置されている。凸部20と外フランジ12の隙間が、外フランジ12と本体2の天面との隙間の中で最狭部となる。
【0029】
実施形態では、凸部20は次のように形成される。本体2の筐体5の天面には、外鍋7を囲むように環状リブ21が形成されている。環状リブ自体は図5、6の従来例でも形成されていたが、本発明の実施形態では、図4に示す通り、環状リブ21は上縁に起伏を有するものとし、その起伏の頂点が凸部20となるようにする。
【0030】
上記の通り、外鍋7の中心とヒンジ部4の間の位置に、内鍋11の外フランジ12と本体2の天面との隙間の最狭部が設けられているから、内鍋11が、ヒンジ部4側が低くなるように傾いた状態で外鍋7に収容されたとき、外フランジ12と、本体2の天面において外フランジ12との隙間の最狭部を構成する凸部20が接触し、内鍋11のヒンジ部4側への傾きを規制する。見方を変えれば、外フランジ12と本体2の天面の接点、すなわち外フランジ12と凸部20の接点を支点として回動する内鍋11の動きを考えたとき、回動の支点が外鍋7から遠ざかった道理となり、内鍋11の外周面が外鍋7の内周面に接触して内鍋11の回動が阻害される度合いが小さくなる。
【0031】
このため、内鍋11は、図2に示すように手前側が高くなった状態で外鍋7に入れられたとしても、自重で自然に、あるいは上から少し圧力が加えられることにより、正規位置に戻りやすい。上からの圧力は、実施形態では、主として、内蓋13の蒸気逃がし口17と蓋3の間に配置されたパッキン19の弾性によってもたらされる。蓋3を閉じると、内蓋13が内鍋11の上部開口に当接し、パッキン19が上下方向に押し縮められる。その時パッキン19が内蓋13に及ぼす反力が、内鍋11に対する圧力となる。
【0032】
内鍋11が正規姿勢になれば、内鍋11の底面は、図1に示す通り熱板9に密着する。このため内鍋11の各部に対し設計通りの熱伝達が行われ、炊きムラが生じない。
【0033】
凸部20は、外鍋7を囲む環状リブ21の起伏の頂点として設けられているので、存在が目立ちにくく、デザイン的に違和感がない。起伏の高低差は実験を通じて適切な値に設定すればよい。
【0034】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は炊飯器に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 炊飯器
2 本体
3 蓋
4 ヒンジ部
7 外鍋
9 熱板
11 内鍋
12 外フランジ
17 蒸気逃がし口
19 パッキン
20 凸部
21 環状リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物を入れる内鍋と、
前記内鍋の収容部を有する本体と、
前記内鍋底面を加熱するヒータと、
前記本体にヒンジ部で連結された蓋と、
前記蓋に揺動可能に取り付けられ、前記蓋が閉じた状態では前記内鍋上部開口に当接するように支持された内蓋と、
を備えた炊飯器において、
前記内鍋と前記収容部との間には隙間が形成されると共に、
前記内鍋は、底面が前記本体と当接することで前記収容部内に収容され、
前記内鍋上部開口の縁には外フランジが形成され、該外フランジは前記本体天面上部まで延び、該外フランジと前記本体天面とは隙間を有し、
前記外フランジと前記本体天面との隙間の最狭部は前記ヒンジ部側に位置することにより、前記内鍋が前記ヒンジ部側に傾いて収容されたときに前記外フランジと前記本体天面の最狭部が接触して前記内鍋の前記ヒンジ部側への傾きを規制することを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記本体の天面には前記外鍋を囲むように環状リブが形成され、前記環状リブは上縁に起伏を有し、前記起伏の頂点が前記最狭部となることを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記外鍋の底部に、前記内鍋を着座させる熱板が配置され、該熱板が、前記ヒータの熱を前記内鍋底面に伝達することを特徴とする請求項1または2に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記内蓋は蒸気逃がし口を備え、前記蒸気逃がし口と前記蓋の間に配置されたパッキンの弾性で、前記蓋を閉じたときに前記内蓋が前記内鍋に対し圧力を及ぼすことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−61081(P2012−61081A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206527(P2010−206527)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】