説明

炊飯器

【課題】効率的に過熱蒸気を投入して、被炊飯物の食味を向上させる炊飯器を提供する。
【解決手段】蒸気を発生させる水タンク加熱コイル6と、ケース15bと棒状のヒータ15aからなり鍋2内に過熱蒸気を供給する過熱蒸気発生装置15の温度を検知する過熱蒸気温度検知部18と、鍋2の温度に基づいて鍋2を加熱する鍋底加熱ユニット8の通電動作を、過熱蒸気温度検知部18の検知温度に基づいてヒータ15aの通電動作をそれぞれ制御する炊飯制御部23を備え、過熱蒸気温度検知部18が第1の所定の温度T1を検知するまで第1の所定の通電率P1でヒータ15aに通電し、その後第2の所定の通電率P2(P2<P1)でヒータ15aに通電し、第1の所定の時間S1の間第2の所定の温度T2(T2>T1)で、その後、第3の所定の通電率P3(P3≦P2<P1)で第2の所定の時間S2の間、第3の所定の温度T3(T1<T3≦T2)でそれぞれ温調する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯器に関するもので、特に、鍋の開口部から鍋内に100℃を超える過熱蒸気を供給する過熱蒸気発生装置を備えた炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の炊飯器としては、種々の構造のものが知られている。例えば、特許文献1には、蓋の内部空間に配置された蒸気管(蒸気経路)の周囲にヒータを取り付けた炊飯器が開示されている。前記特許文献1に開示された従来の炊飯器は、ヒータにより蒸気管を加熱することで、蒸気管内を通る蒸気を加熱して、100℃を超える過熱蒸気を生成することができる。
【0003】
しかしながら、このような従来の炊飯器においては、過熱蒸気の温度を高く(例えば130℃以上に)することができないという課題がある。すなわち、蒸気管の周囲にヒータを配置して蒸気管内を通る蒸気を加熱する構成では、蒸気とヒータとが直接接触していないため、ヒータの熱を蒸気に伝える熱効率が低い。
【0004】
また、前記構成では、ヒータの熱が蒸気管全体に拡散する。蒸気管は、空気に触れる部分が多いため、蒸気の加熱効率が悪くなる。このため、前記構成において過熱蒸気の温度を高くするには、例えばヒータの出力(仕事量)を高くする必要がある。ヒータの出力を高くするには、単純にはヒータを大型化すればよい。しかしながら、炊飯器のような電化製品においては、より一層の小型化が求められている。ヒータが大型化することは、炊飯器の大型化につながる。
【0005】
この課題を解決する、すなわち、過熱蒸気の温度を一層高くすると共に炊飯器の小型化を実現することができる過熱蒸気発生装置及び当該装置を備えた炊飯器として、ケースと、発熱部が前記ケース内に配置されるように前記ケースの側壁を貫通し、先端部が前記ケースと接触するように設けられた棒状のヒータとを備え、蒸気取込口を通じて前記ケース内に取り込まれた蒸気を前記ヒータの発熱部で加熱して過熱蒸気を生成し、過熱蒸気排出口を通じて前記過熱蒸気を排出する過熱蒸気発生装置を採用したものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4203995号公報
【特許文献2】特許第3757945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2に記載されたような従来の炊飯器の構成では、新たに第2の課題が生じる。
【0008】
すなわち、ヒータの熱をケースに伝える際、ヒータの温度上昇速度が大きいとヒータとケースの間で温度差が出来てしまう。ヒータとケースの温度差が大きい状態で蒸気が蒸気発生装置から投入されると、ヒータで加熱された過熱蒸気は、ケースに凝縮伝熱し、ケースの温度上昇のために過熱蒸気が使用され、過熱蒸気の温度が下がる。これにより、蒸気の温度上昇が遅れ、かつ、熱効率が悪くなるという課題があった。
【0009】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、過熱蒸気発生装置を採用した場合に、ヒータとケースの温度差を大きくせずに蒸気投入までの時間、ヒータを温調して、被炊飯物の食味をいっそう良好にすることができる炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来の課題を解決するために、本発明の炊飯器は、炊飯器本体の内部に収納される鍋と、前記鍋を加熱する鍋加熱装置と、蒸気を発生させる蒸気発生装置と、ケースと棒状のヒータからなり前記鍋内に過熱蒸気を供給する過熱蒸気発生装置と、前記過熱蒸気発生装置の温度を検知する過熱蒸気温度検知部と、前記鍋の温度を検知する鍋温度検知部と、前記鍋温度検知部の検知温度に基づいて前記鍋加熱装置の通電動作を制御すると共に前記過熱蒸気温度検知部の検知温度に基づいて前記ヒータの通電動作を制御して炊飯工程を行う炊飯制御部とを備え、前記ヒータは、その発熱部が前記ケース内に配置されるように前記ケースの側壁を貫通し、かつ先端部が前記ケースと接触するように設けられ、前記炊飯制御部は、前記過熱蒸気温度検知部が第1の所定の温度T1を検知するまで第1の所定の通電率P1で前記ヒータに通電し、その後、第2の所定の通電率P2(P2<P1)で前記ヒータに通電し、第1の所定の時間S1を経過するまで第2の所定の温度T2(T2>T1)で温調を行い、その後、第3の所定の通電率P3(P3≦P2<P1)で第2の所定の時間S2を経過するまで、第3の所定の温度T3(T1<T3≦T2)で温調するもので、過熱蒸気発生装置のヒータとケースの温度差を大きくせずに蒸気投入までの時間、ヒータを温調することが出来る。これにより、蒸気の温度上昇が遅れ、かつ、熱効率が悪くなるという課題を解決し、過熱蒸気を安定したタイミングと温度で鍋内に供給して、被炊飯物の食味をいっそう良好にすることが出来る。
【発明の効果】
【0011】
本発明の炊飯器は、過熱蒸気発生装置のヒータとケースの温度差を大きくせずに蒸気投入までの時間、ヒータを温調することが出来る。これにより、蒸気の温度上昇が遅れ、かつ、熱効率が悪くなるという従来の課題を解決し、過熱蒸気を安定したタイミングと温度で鍋内に供給することが出来、被炊飯物の食味をいっそう良好にすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1における炊飯器の断面図
【図2】同炊飯器の炊飯量が少ない場合の制御内容を示すタイミングチャート
【図3】同炊飯器の炊飯量が多い場合の制御内容を示すタイミングチャート
【図4】同炊飯器の鍋底加熱駆動出力と蒸気加熱装置の駆動出力の1周期でのタイミングを示すタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の発明は、炊飯器本体の内部に収納される鍋と、前記鍋を加熱する鍋加熱装置と、蒸気を発生させる蒸気発生装置と、ケースと棒状のヒータからなり前記鍋内に過熱蒸気を供給する過熱蒸気発生装置と、前記過熱蒸気発生装置の温度を検知する過熱蒸気温度検知部と、前記鍋の温度を検知する鍋温度検知部と、前記鍋温度検知部の検知温度に基づいて前記鍋加熱装置の通電動作を制御すると共に前記過熱蒸気温度検知部の検知温度に基づいて前記ヒータの通電動作を制御して炊飯工程を行う炊飯制御部とを備え、前記ヒータは、その発熱部が前記ケース内に配置されるように前記ケースの側壁を貫通し、かつ先端部が前記ケースと接触するように設けられ、前記炊飯制御部は、前記過熱蒸気温度検知部が第1の所定の温度T1を検知するまで第1の所定の通電率P1で前記ヒータに通電し、その後、第2の所定の通電率P2(P2<P1)で前記ヒータに通電し、第1の所定の時間S1を経過するまで第2の所定の温度T2(T2>T1)で温調を行い、その後、第3の所定の通電率P3(P3≦P2<P1)で第2の所定の時間S2を経過するまで、第3の所定の温度T3(T1<T3≦T2)で温調するもので、過熱蒸気発生装置のヒータとケースの温度差を大きくせずに蒸気投入までの時間、ヒータを温調することが出来る。これにより、蒸気の温度上昇が遅れ、かつ、熱効率が悪くなるという課題を解決し、過熱蒸気を安定したタイミングと温度で鍋内に供給して、被炊飯物の食味をいっそう良好にすることが出来る。
【0014】
第2の発明は、特に、第1の発明の炊飯制御部は、過熱蒸気温度検知部の検知温度に基づいて過熱蒸気発生装置の予備加熱を実施するもので、過熱蒸気の温度を制御することが出来るようになり、各炊飯コースに適した過熱蒸気の温度を選択することが出来る炊飯器を提供することができる。
【0015】
第3の発明は、特に、第1又は第2の発明の過熱蒸気発生装置の予備加熱は、炊飯量に応じて温調温度を変化させるもので、炊飯量に応じて最適な過熱蒸気の温度を採用することができる炊飯器を提供する。
【0016】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか一つの発明の過熱蒸気発生装置の蒸気投入時において、複数の工程を有し、通電率を変化させるもので、鍋内に投入する過熱蒸気の温度をさらに正確に制御する事が出来る炊飯器を提供する。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における炊飯器の断面図、図2は、同炊飯器の炊飯量が少ない場合の制御内容を示すタイミングチャート、図3は、同炊飯器の炊飯量が多い場合の制御内容を示すタイミングチャートである。
【0019】
図1において、本実施の形態にかかる炊飯器は、内部に鍋収納部1aが形成された略有底筒状の炊飯器本体1と、鍋収納部1aに収納され、米と水が入れられる鍋2とを備えている。炊飯器本体1の上部には、炊飯器本体1の上部開口部1dを開閉可能な中空構造の蓋3が取り付けられている。蓋3の内側(鍋2の開口部2aを覆う側)には、鍋2の開口部2aを密閉可能な略円盤状の内蓋(加熱板ともいう)4が着脱可能に取り付けられている。
【0020】
炊飯器本体1の鍋収納部1aは、上枠1bとコイルベース1cとで構成され、上枠1bは、収納された鍋2の側壁に対して所定の隙間が空くように配置される筒状部分1baと、筒状部分1baの上部から外方に突出し炊飯器本体1の上部開口部1dの内周部に嵌合するフランジ部1bbとを備えている。
【0021】
また、フランジ部1bbには、水タンク5を収納する水タンク収納部1bcが形成されている。水タンク5は、蒸気を生成するための水を入れる有底筒状の容器である。水タンク収納部1bcの外周面には、水タンク5を加熱(例えば、誘導加熱)する蒸気発生装置の一例である水タンク加熱コイル6が取り付けられている。なお、水タンク加熱コイル6に代えて、ヒータにより水タンク5を加熱するように構成してもよい。
【0022】
水タンク加熱コイル6が水タンク5を加熱することにより、水タンク5内の水が沸騰して、約100℃の蒸気が生成される。また、水タンク収納部1bcの側部には、開口1bdが設けられ、その開口1bdには、水タンク5の温度を測定するための水タンク温度センサ7が、水タンク収納部1bcに収納された水タンク5の側部に当接可能に配置されている。
【0023】
コイルベース1cは、鍋2の下部の形状に対応して有底筒状に形成され、その上部が上枠1bの筒状部分1baの下端部に取り付けられている。コイルベース1cの外周面には、鍋2を加熱(誘導加熱)する鍋加熱装置の一例である鍋底加熱ユニット8が取り付けられている。鍋底加熱ユニット8は、底内加熱コイル8aと底外加熱コイル8bとで構成されている。底内加熱コイル8aは、コイルベース1cを介して鍋2の底部の中央部周囲に対向するように配置されている。底外加熱コイル8bは、コイルベース1cを介して鍋2の底部のコーナー部に対向するように配置されている。
【0024】
コイルベース1cの底部の中央部分には開口1caが設けられている。当該開口1ca部分には、鍋2の温度を測定するための鍋温度検知部9が、鍋収納部1aに収納された鍋2の底部に当接可能に配置されている。鍋2の温度は、鍋2内の被炊飯物の温度と略同じであるので、鍋温度検知部9が鍋2の温度を検知することで、鍋2内の被炊飯物の温度を知ることができる。
【0025】
蓋3は、蓋3の外郭を構成する上外郭部材3aと下外郭部材3bとを備えている。また、蓋3は、ヒンジ軸3Aを備えている。ヒンジ軸3Aは、蓋3の開閉軸であり、炊飯器本体1の上枠1bに両端部を回動自在に固定されている。蓋3には、その中央部付近を蓋3の厚み方向に貫通するように貫通穴3cが設けられ、当該貫通穴3cに、蒸気筒10が着脱可能に取り付けられている。
【0026】
蒸気筒10の上壁及び底壁には、鍋2内の余分な蒸気を炊飯器の外部に排出できるように、蒸気逃がし孔10a、10bが設けられている。蓋3の内蓋4側の貫通穴3cの周囲には、環状のパッキン11が取り付けられている。パッキン11は、内蓋4が、蓋3に取り付けられたときに、内蓋4に設けられた蒸気逃がし孔4aの周囲に密着するように設けられている。
【0027】
また、蓋3には、内蓋4の温度を検知する内蓋温度検知部12が取り付けられている。蓋3の底壁となる下外郭部材3bの内面(蓋3の内側)には、内蓋4を誘導加熱する内蓋加熱装置の一例である内蓋加熱コイル13が取り付けられている。
【0028】
内蓋4は、誘導加熱が可能なステンレスなどの磁性体金属で構成されている。内蓋4の外周部の鍋2側の面には、環状のパッキン14が取り付けられている。パッキン14は、蓋3が閉状態にあるときに鍋2のフランジ部2bに密着するように設けられている。
【0029】
また、蓋3の内部には、鍋2内に100℃を超える過熱蒸気を投入するための過熱蒸気発生装置15が設けられている。過熱蒸気発生装置15の取付構造については、後で詳細に説明する。
【0030】
過熱蒸気発生装置15は、水タンク5で発生した約100℃の蒸気を加熱して過熱蒸気を生成可能に構成されている。過熱蒸気発生装置15には、蒸気供給管16と過熱蒸気投入管17とが接続されている。また、過熱蒸気発生装置15には、過熱蒸気発生装置15の温度検知部の一例である過熱蒸気温度検知部18が当接している。
【0031】
蒸気供給管16は、蓋3が閉状態にあるときに水タンク5内と連通し、水タンク5内で発生した蒸気を過熱蒸気発生装置15へ導くように設けられている。蒸気供給管16の水タンク5側の端部には、環状のパッキン19が取り付けられている。パッキン19は、蓋3が閉状態にあるときに水タンク5のフランジ部5aに密着するように設けられている。
【0032】
過熱蒸気投入管17は、蓋3が閉状態にあるときに内蓋4に設けられた過熱蒸気投入孔4bを通じて鍋2内と連通し、過熱蒸気発生装置15で生成された過熱蒸気を鍋2内へ投入するように設けられている。過熱蒸気投入管17の鍋2側の端部には、環状のパッキン20が取り付けられている。パッキン20は、蓋3が閉状態にあるときに内蓋4の過熱蒸気投入孔4bの周囲に密着するように設けられている。
【0033】
過熱蒸気発生装置15は、円筒形のケース15bと、棒状のヒータ15aとを備えている。ヒータ15aは、ケース15b内においてケース15bの中心軸A1と同軸に配置されている。過熱蒸気発生装置15は、ケース15b内に供給された蒸気をヒータ15aにより加熱して、過熱蒸気を生成する。
【0034】
また、蓋3には、炊飯コース、炊飯時間などの各種情報を表示する液晶ディスプレイなどからなる表示部21と、白米コースや玄米コース、白米(柔らかめ)コースなどの複数の炊飯コースの中から特定の炊飯コースを選択可能な炊飯コース選択部の一例である操作部22とが設けられている。操作部22は、炊飯コースの選択の他、炊飯の開始、取り消し、予約などの実行を指示できるように、炊飯開始ボタンなどの複数のボタンで構成されている。使用者は、表示部21の表示内容を参照しつつ、操作部22にて特定の炊飯コースを選択し、炊飯開始を指示することができる。
【0035】
炊飯器本体1の内部には、炊飯制御部23が搭載されている。炊飯制御部23は、米を炊飯するための炊飯シーケンスを複数記憶する記憶部(図示せず)を備えている。ここで、「炊飯シーケンス」とは、主として、予熱、昇温、沸騰維持、蒸らしの4つの工程からなり、各工程を順に行うにあたって、各工程において通電時間、加熱温度、加熱時間、加熱出力等が予め決められている炊飯の手順をいう。
【0036】
各炊飯シーケンスは、複数の炊飯コースのいずれかにそれぞれ対応している。炊飯制御部23は、操作部22にて選択された炊飯コース及び水タンク温度センサ7、鍋温度検知部9及び内蓋温度検知部12の検知温度に基づいて、各部及び各装置の駆動を制御し、炊飯工程を実行する。また、炊飯制御部23は、操作部22にて選択された炊飯コース及び過熱蒸気温度検知部18の検知温度に基づいて、過熱蒸気を過熱蒸気発生装置15に生成させる。
【0037】
次に、以上のように構成された本実施の形態にかかる炊飯器の動作について図1〜図3を参照しながら説明する。
【0038】
白米と水を入れた鍋2を炊飯器本体1に載置し、炊飯器本体1に設けた水タンク5内に所定量の水を入れ、操作部22によって、炊飯コースを選択し炊飯開始スイッチ(図示せず)を使用者が操作すると、炊飯工程が開始され、まず、余熱工程が開始される。
【0039】
余熱工程は、以降の工程において、米の中心部まで十分に糊化できるように、糊化温度よりも低温の水に米を浸して、あらかじめ米に吸水させる工程である。この余熱工程において、炊飯制御部23は、鍋2内の温度を米の糊化が始まる温度(約60℃)近くまで昇温させた後、当該昇温後の温度を維持するように、鍋温度検知部9の検知温度に基づいて鍋底加熱ユニット8の鍋加熱動作を制御する。これにより、米の吸水が促進される。
【0040】
また、この余熱工程において炊飯制御部23は、水タンク加熱コイル6を駆動させて水タンク5内の水を予熱する。この際、水タンク5から発生した蒸気は、過熱蒸気発生装置15と過熱蒸気投入管17を通じて内蓋温度検知部12に影響を与えずに鍋2内に投入されることになる。この構成のため、十分な水タンク5の加熱をすることが出来る。余熱工程の開始から前記選択された炊飯コースに応じて予め設定された時間を経過すると、昇温工程に移行する。
【0041】
昇温工程は、鍋2を強火で一気に加熱して、鍋2内の水を沸騰状態(約100℃)にする工程である。この昇温工程において、炊飯制御部23は、鍋2を急速に加熱して鍋2内の水を沸騰状態にするように、鍋底加熱ユニット8を制御する。昇温工程の実施により、鍋温度検知部9の検知温度が約100℃になると沸騰維持工程に移行する。この昇温工程にかかる時間は、炊飯量(鍋2に入れられた被炊飯物の量)等によって異なる。このため、昇温工程にかかる時間から、炊飯量を自動的に判定することが出来る。
【0042】
沸騰維持工程は、鍋2内の水の沸騰状態を維持して、米の澱粉を糊化させ、糊化度を50%〜80%程度まで引き上げる工程である。この沸騰維持工程において、炊飯制御部23は、鍋2内の水の沸騰状態を維持するように鍋底加熱ユニット8及び内蓋加熱コイル13を制御する。より具体的には、炊飯制御部23は、鍋底加熱ユニット8及び内蓋加熱コイル13の駆動(ON)、駆動停止(OFF)を一定時間間隔で繰り返すデューティー制御を行い、鍋2を間欠加熱する。この間欠加熱の間に、水タンク5の温調も行い、余熱工程で温めた水タンク5の状態を維持するようにする。この沸騰維持工程時間も、炊飯量・炊飯コースによって異なる。
【0043】
また、沸騰維持工程で、過熱蒸気発生装置15は余熱を開始する。前記選択された炊飯コースに応じて設定された第1の所定の温度T1に達していることを過熱蒸気温度検知部18の検知温度に基づいて判定するまで、過熱蒸気発生装置15は、前記選択された炊飯コースに応じて設定された第1の所定の通電率P1で予備加熱される。
【0044】
その後、過熱蒸気発生装置15は、前記選択された炊飯コースに応じて設定された第2の所定の通電率P2(P1>P2)で、第1の所定時間S1が経過するまで、第2の所定の温度T2(T1<T2)で温調される。
【0045】
その後、過熱蒸気発生装置15は、前記選択された炊飯コースに応じて設定された第3の所定の通電率P3(P1>P2≧P3)で、第2の所定時間S2が経過するまで、第3の所定の温度T3(T1<T3≦T2)で温調される。
【0046】
上記T1、T2、T3とP1、P2、P3は予め設定された炊飯コースによって設定されているもので、例えば、白米ふつうコースならば、T1:100℃、T2:190℃、T3:180℃、P1:7/16、P2:3/16、P3:2/16である。
【0047】
また、白米コースよりも過熱蒸気温度が高い玄米コースでは、T1:110℃、T2:190℃、T3:190℃、P1:8/16、P2:2/16、P3:2/16のように設定されている。
【0048】
ここで、通電率は、単位時間あたりの通電時間を表している。例えば、16秒周期のときに8秒通電するというような場合は8/16となる。
【0049】
また、第1の所定の温度T1は、前記選択されたコースに基づく温度の過熱蒸気を供給するのに必要なヒータ15aの温度に達したときに過熱蒸気温度検知部18が検知する温度である。しかし、この時点では、ヒータ15aとケース15bの温度差が大きい(例えば、200℃の過熱蒸気を出したい場合は、ヒータ15aとケース15bの温度差は250℃程度ある)。
【0050】
これは、図2、3に示すように炊飯量により沸騰時間は異なる。沸騰時間が最も短い最大炊飯時に、ヒータ15aとケース15bの温度を十分に上げるためには短時間で、第1の所定の温度T1まで上昇させる必要がある。このときの第1の所定の通電率P1は、最大炊飯時の沸騰時間と過熱蒸気発生に必要なヒータ15aの温度から求められ、変更することは出来ない。
【0051】
このため、第1の所定の温度T1を検知した後、第1の所定の通電率P1よりも小さい第2の所定の通電率P2で、第1の所定の温度T1よりも高い第2の所定の温度T2で温調をはじめる。
【0052】
第2の所定の温度T2は、前記選択されたコースに基づく温度の過熱蒸気を供給するのに必要なケース15bの温度に達したときの過熱蒸気温度検知部18の温度である(例えば、200℃の過熱蒸気を出したい場合は、ケース15bの温度は、200℃以上が望ましい)。このため、ヒータ15aの温度がほぼ一定になる第2の所定の通電率P2でケース15bの温度が第2の所定の温度T2で温調を続けることで、ケース15bの温度を上昇させる。その後、ケース15bの温度とヒータ15aの温度の温度差が100℃以下になると、実験的に分かっている第1の所定の時間S1まで温調を続ける。
【0053】
その後は、温度差がさらに小さくなっていくため、第2の所定の温度T2よりも低い第3の所定の温度T3で、第2の所定の通電率P2よりも小さい第3の所定の通電率P3で温調を行う。第3の所定の温度T3が第2の所定の温度T2よりも低い温度なのは、過熱蒸気発生装置15全体の温度が所定の過熱蒸気を発生させるのに必要な温度に達しているため、これ以上、過熱蒸気発生装置15の温度を上げる必要がないためである。
【0054】
なお、最大炊飯が最も沸騰時間が短いと記載したが、これは米種・加水量・炊飯コースなどによっても沸騰時間が異なり、これらの条件を考慮した上でそれぞれのコースで一番沸騰時間が短い時間を基準に第1の所定の通電率P1を決定した。
【0055】
これらの3段階のヒータ余熱を行うことで、効率よくまた、各コースで狙い通りの温度に短時間で過熱蒸気を発生させることが出来る。
【0056】
沸騰維持工程においては、連続的に水を沸騰させるため、約100℃の蒸気が大量に発生する。この蒸気は内蓋4の蒸気逃がし孔4a及び蒸気筒10の蒸気逃がし孔10a、10bを通過して炊飯器の外部に放出される。これにより、鍋2内のほとんどの水がなくなると、鍋2の底面の温度が水の沸点以上に上昇する。鍋温度検知部9が、鍋2の底面の温度が沸点以上(例えば、130℃)に到達したことを検知すると、蒸らし工程に移行する。
【0057】
このとき、鍋温度検知部9に異物などがあり、沸点以上に到達したことを検知できない場合でも、この3段階のヒータ余熱を行うことで、過熱蒸気発生装置15の温度が異常に上昇することはなく、周辺部品の温度が異常に温度上昇することもない。
【0058】
蒸らし工程は、余熱を利用して余分な水分を蒸発させ、米の糊化度を100%近くまで引き上げる工程である。この蒸らし工程において、炊飯制御部23は、鍋2の温度が一定温度以下に下がる毎に、鍋2を加熱するように鍋底加熱ユニット8及び内蓋加熱コイル13を制御する。
【0059】
より具体的には、炊飯制御部23は、沸騰維持工程と同様に、鍋底加熱ユニット8及び内蓋加熱コイル13の駆動(ON)、駆動停止(OFF)を一定時間間隔で繰り返すデューティー制御を行い、鍋2を間欠加熱する。また、炊飯制御部23は、水タンク加熱コイル6を駆動して、水タンク5内の水を沸騰させ、蒸気を発生させる。
【0060】
さらに、炊飯制御部23は、過熱蒸気発生装置15を、水タンク5の蒸気発生に併せて駆動させ過熱蒸気発生装置15の空焼きを防ぐ。また、蒸気発生とともに過熱蒸気発生装置15の駆動時間を長くし、短時間で昇温させることで蒸気との熱交換を短時間で行い、蒸らし工程開始から短時間の間に必要な過熱蒸気温度の蒸気を発生させる(図2、3)。
【0061】
これにより、鍋底加熱ユニット8の駆動と同時に過熱蒸気を投入するなど食味向上のために必要な蒸気投入タイミングを確保することが出来る。この昇温の程度を変えることで蒸気の温度や蒸気投入タイミングをさまざまな炊飯コースで要求される食味向上に必要な状態に変えることが出来る。そして、必要な過熱蒸気温度に到達した後、蒸気温度を維持するように過熱蒸気発生装置15をデューティー制御する。
【0062】
このデューティー制御の時間を合数に併せて変更することで、最大炊飯時でも表面が乾燥しない蒸気投入時間t2(t1>t2)にすることが出来る(図3)。
【0063】
過熱蒸気発生装置15にて生成された過熱蒸気は、過熱蒸気投入管17及び内蓋4の過熱蒸気投入孔4bを通じて鍋2内に供給される。蒸らし工程の開始から、炊飯量と炊飯コースに応じて予め設定された時間が経過すると、蒸らし工程を終了する。
【0064】
本実施の形態によれば、沸騰維持工程で過熱蒸気発生装置15の温度を検知しながら、過熱蒸気発生装置15を加熱するため、繰り返し炊飯や室温が高い場合や低い場合でも、蒸気加熱に必要な温度点で加熱を停止することが出来るため、室温や過熱蒸気発生装置15の初期温度に依存せずに必要な温度を安定したタイミングで供給することが出来る。
【0065】
また、本実施の形態によれば、沸騰維持工程後に過熱蒸気発生装置15の加熱を始めるため、炊飯量に応じた温度と時間で被炊飯物を加熱することが出来る。炊飯量が多い場合、過熱蒸気発生装置15からご飯上面までの距離が短くなる。この場合、過熱蒸気がご飯の上面に到達したときの温度が高くなり、ご飯に与える熱量が増加し、表層が乾燥することになる。その結果、ご飯の食味の低下を招くことがある。このため、炊飯量に応じて蒸気の温度と蒸気投入時間を変えることでご飯の食味向上を実現することが出来る。
【0066】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、上記実施の形態では、過熱蒸気発生装置15に供給する蒸気を、水タンク5内の水を加熱することにより生成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、炊飯中に鍋2内で発生した蒸気を過熱蒸気発生装置15に供給するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明にかかる炊飯器は、各炊飯量に応じて被炊飯物の食味をよりいっそう良好にすることが出来るので、家庭用及び業務用炊飯器等に有用である。
【符号の説明】
【0068】
1 炊飯器本体
1a 鍋収納部
2 鍋
3 蓋
3A ヒンジ軸
4 内蓋
5 水タンク
6 水タンク加熱コイル(蒸気発生装置)
7 水タンク温度センサ
8 鍋底加熱ユニット(鍋加熱装置)
9 鍋温度検知部
10 蒸気筒
11、14、19、20 パッキン
12 内蓋温度検知部
13 内蓋加熱コイル(内蓋加熱装置)
15 過熱蒸気発生装置
15a ヒータ
15b ケース
16 蒸気供給管
17 過熱蒸気投入管
18 過熱蒸気温度検知部
21 表示部
22 操作部
23 炊飯制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯器本体の内部に収納される鍋と、前記鍋を加熱する鍋加熱装置と、蒸気を発生させる蒸気発生装置と、ケースと棒状のヒータからなり前記鍋内に過熱蒸気を供給する過熱蒸気発生装置と、前記過熱蒸気発生装置の温度を検知する過熱蒸気温度検知部と、前記鍋の温度を検知する鍋温度検知部と、前記鍋温度検知部の検知温度に基づいて前記鍋加熱装置の通電動作を制御すると共に前記過熱蒸気温度検知部の検知温度に基づいて前記ヒータの通電動作を制御して炊飯工程を行う炊飯制御部とを備え、前記ヒータは、その発熱部が前記ケース内に配置されるように前記ケースの側壁を貫通し、かつ先端部が前記ケースと接触するように設けられ、前記炊飯制御部は、前記過熱蒸気温度検知部が第1の所定の温度T1を検知するまで第1の所定の通電率P1で前記ヒータに通電し、その後、第2の所定の通電率P2(P2<P1)で前記ヒータに通電し、第1の所定の時間S1を経過するまで第2の所定の温度T2(T2>T1)で温調を行い、その後、第3の所定の通電率P3(P3≦P2<P1)で第2の所定の時間S2を経過するまで、第3の所定の温度T3(T1<T3≦T2)で温調することを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
炊飯制御部は、過熱蒸気温度検知部の検知温度に基づいて過熱蒸気発生装置の予備加熱を実施する請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
過熱蒸気発生装置の予備加熱は、炊飯量に応じて温調温度を変化させる請求項1または2に記載の炊飯器。
【請求項4】
過熱蒸気発生装置の蒸気投入時において、複数の工程を有し、通電率を変化させた請求項1〜3のいずれか1項に記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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