説明

炊飯器

【課題】安定した加熱パワーが得られ、振動や異音の少ない炊飯器を提供する。
【解決手段】炊飯器本体101に着脱自在に内挿可能な鍋102と、鍋102の下方部分を収容する保護枠103を備え、鍋102を誘導加熱する加熱コイル104と、加熱コイル104より発生する磁束の炊飯器本体101外への漏洩を低減すると共に非磁性体金属にて形成された防磁板108を、保護枠103に一体成型してなるもので、加熱コイル104と防磁板108の間隔を一定に保つことが可能となり、鍋102に安定した加熱パワーを与えることができる。また防磁板108が保護枠103に一体成型されることにより無駄ながたがないため、微振動や異音等も防止することができる。また、従来のように人手で保護枠103に防磁板108を組み込む作業がないためコスト低減にも繋がる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導による高出力で調理物を加熱する炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電磁誘導式の炊飯器は、鍋内の米と水を加熱するために鍋底部に配置した鍋加熱手段が主であり、鍋の下方に配設した加熱コイルに通電することにより発生する渦電流で、鍋自体を加熱させて、鍋内の調理物を加熱する方法が一般的である。また、通電中に炊飯器の本体外へ磁束が漏洩するのを防ぐため、加熱コイルの側外方に防磁板を設置することが一般的に行われていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図2は、上記特許文献1に記載された従来の炊飯器の断面図である。
【0004】
図2において、本体1内に着脱自在の鍋2を内装し、鍋2の下方部を収納すると共に耐熱性樹脂で構成された保護枠23を有し、前記保護枠23の下面には、鍋2を加熱する加熱コイル13を配設してある。前記加熱コイル13の側外方位置には、帯状のアルミニウム板を略環状にした防磁板22を配置してあり、防磁板22は、前記保護枠23の外周にある複数のリブ(図示せず)間に嵌合して固定されるようになっている。
【0005】
従来の炊飯器は、以上のような構成で、加熱コイル13によって鍋2を加熱し、米・水の調理物を調理するようになっているわけであるが、加熱コイル13に通電が行われると渦電流が発生し保護枠23内に収容された鍋2を加熱すると同時に防磁板22には、防磁板22を通過する磁界を打ち消すような渦電流が発生し、炊飯器の本体1外へ洩れる磁界を低減するような構成となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−230435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1に記載されたような従来の炊飯器においては、防磁板22が正規位置に取り付けられなかったり、取り付け部のがたにより加熱コイル13と防磁板22の間隔が変化すると、適正な加熱パワーが得られずに炊飯性能が悪化するという課題があった。また、最悪の場合、防磁板22が、がたつき振動や異音発生の原因にもなっていた。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、防磁板と加熱コイルの間隔を一定に保ち、加熱パワーの安定化を図ると共に、がたつきにより発生する振動や異音を抑制することができる炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明の炊飯器は、炊飯器本体に着脱自在に内挿可能な鍋と、前記鍋の下方部分を収容する保護枠を備え、前記鍋を誘導加熱する加熱コイルと、前記加熱コイルより発生する磁束の前記炊飯器本体外への漏洩を低減すると共に非磁性体金属にて形成された防磁板を、前記保護枠に一体成型してなるもので、加熱コイルと防磁板の間隔は一定に保つことが可能となり、鍋に安定した加熱パワーを与えることができる。また防磁板が保護枠に一体成型されることにより無駄ながたがないため、微振動や異音等も防止することができる。また、従来のように人手で保護枠に防磁板を組み込む作業がないためコスト低減にも繋がる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の炊飯器は、防磁板と加熱コイルの間隔を一定に保ち、加熱パワーの安定化を図ると共に、がたつきにより発生する振動や異音を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1における炊飯器の断面図
【図2】従来の炊飯器の断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の発明は、炊飯器本体に着脱自在に内挿可能な鍋と、前記鍋の下方部分を収容する保護枠を備え、前記鍋を誘導加熱する加熱コイルと、前記加熱コイルより発生する磁束の前記炊飯器本体外への漏洩を低減すると共に非磁性体金属にて形成された防磁板を、前記保護枠に一体成型してなるもので、加熱コイルと防磁板の間隔は一定に保つことが可能となり、鍋に安定した加熱パワーを与えることができる。また防磁板が保護枠に一体成型されることにより無駄ながたがないため、微振動や異音等も防止することができる。また、従来のように人手で保護枠に防磁板を組み込む作業がないためコスト低減にも繋がる。
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における炊飯器の断面図である。なお、図1において、図面を簡潔にするために、電気的接続のためのリード線等は省略してある。
【0015】
図1において、炊飯器本体101(以下、「本体101」という)は、着脱自在の鍋102が収容される有底筒状の保護枠103を備え、鍋102を着脱自在に収容するようになっている。前記保護枠103の底部には、鍋102を加熱するための加熱コイル104が備えられ、鍋102を誘導加熱し、炊飯・保温を行う。
【0016】
なお、加熱コイル104を用いた誘導加熱方式でなく、鋳込みヒータで鍋102を加熱しても良いが、誘導加熱方式の方がより高火力・高効率で鍋102を加熱することができることは明らかである。
【0017】
加熱コイル104は、内側と外側に分割して配置した内加熱コイル104aと外加熱コイル104bにより構成されている。本体101の後方には、加熱コイル104の動作を制御する制御回路105が配設されている。また、保護枠103の底部中央には、鍋102の底面に接触して、その温度を検知する底センサー106が設けられ、鍋102の温度を検知し、制御回路105へ信号を送り、加熱コイル104の通電量を制御し、鍋102の加熱量を制御することで、鍋102の温度を、炊飯・保温に適した温度に制御するようになっている。
【0018】
前記保護枠103は、加熱コイル104の外方に少なくとも4個以上の複数個のフェライト107を略均等位置に配し、底面方向への加熱コイル104の磁束が漏洩するのを防ぐとともに、鍋102への誘導加熱を高効率に促進する働きをするようになっている。
【0019】
さらに外加熱コイル104bの外周位置には、主にアルミニウムのような非磁性体金属で構成され、薄板の環状形状をした防磁板108が配置され、以上の加熱コイル104、フェライト107、防磁板108は、耐熱難燃樹脂で保護枠103が成型される際に同時に一体成型されて作られている。
【0020】
本体101の上方には、鍋102の開口部102aを覆い、ヒンジ部109により軸支され開閉自在の蓋体110が設置されている。蓋体110内には、鍋102の開口部102aをシールするパッキン111を備え、蓋体110より着脱自在で、おもにステンレス等の磁性体金属で作られた加熱板112が備えられ、前記加熱板112の略中央部には、加熱板112に圧接して鍋102上部の温度を検知する蓋センサー113が設けられている。
【0021】
また加熱板112上方には、蓋コイル114が設置され、前記蓋センサー113が加熱板112の温度を検知して制御回路105に通信を行い、蓋コイル114の通電制御を行い、加熱板112側からの加熱を行い、炊飯・保温時の鍋102の適温制御をおこなうようになっている。
【0022】
また、蓋体110の先端には、蓋係合部115を設けており、閉蓋時に本体101の前方のフックボタン116と係合して、炊飯または保温中に誤って蓋体110が開成しないようにしている。
【0023】
以上のように構成された本実施の形態における炊飯器の動作について説明すると、鍋102内に準備された米・水の調理物が、制御回路105の制御により炊飯工程に入る。炊飯工程は、大別して、「浸水」、「炊き上げ」、「蒸らし」の各工程に分けられ、底センサー106や蓋センサー113が各部の温度検知を行いながら、内加熱コイル104a・外加熱コイル104bや蓋コイル114による加熱が行われて炊飯が行われるようになっている。
【0024】
各工程において、鍋102の加熱のため加熱コイル104から磁界が発生するが、発生した磁界は、概略上方側においては、鍋102を加熱するエネルギーとして使われるが、下方側や側面方向の磁界においては、本体101より外に放出されてしまわないように、下方側への漏洩は、フェライト107により防止され、側面方向への漏洩は、防磁板108により防止されるようになっている。
【0025】
前記防磁板108と外加熱コイル104bの距離は、近すぎると鍋102を加熱する磁界まで吸収してしまい、遠すぎると磁束の漏洩防止に効果がなくなるので、最適の位置関係がある。発明者らはこの距離を約30mm前後に設定している。前述した構成にあるように、防磁板108は、保護枠103に一体成型されているので、外加熱コイル104aとの距離は、0.5mm以下程度の誤差で固定されて、常に最適距離が維持されるようになっているので、鍋102への加熱パワーが安定して得られ、かつ誘導加熱中の不要な振動等も低減される。また、従来のように、防磁板108を保護枠103に機械的に嵌合固定する工数も不要となる。
【0026】
以上のように本実施の形態によれば、防磁板108と加熱コイル104の距離間隔を一定に保ち、加熱パワーの安定化を図ると共に、がたつきにより発生する振動や異音を抑制することが可能な炊飯器を提供することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上のように、本発明にかかる炊飯器は、加熱パワーの安定化を図ると共に、不要な振動・異音を防止することが可能となるので、その他の誘導加熱調理機器等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0028】
101 炊飯器本体(本体)
102 鍋
103 保護枠
104 加熱コイル
108 防磁板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯器本体に着脱自在に内挿可能な鍋と、前記鍋の下方部分を収容する保護枠を備え、前記鍋を誘導加熱する加熱コイルと、前記加熱コイルより発生する磁束の前記炊飯器本体外への漏洩を低減すると共に非磁性体金属にて形成された防磁板を、前記保護枠に一体成型してなることを特徴とする炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−9883(P2013−9883A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145179(P2011−145179)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】