炊飯方法及び炊飯器
【課題】 炊飯時に吹きこぼれるおねばを一時貯留し、このおねばを蒸らし時に鍋内に戻して美味しいご飯を炊き上げる。
【解決手段】 被炊飯物を投入する鍋と、該鍋を収容する開口部及び鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段を有する炊飯器本体と、該炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体と、前記加熱手段を制御して被炊飯物に水分を吸水させる吸水工程、吸水された被炊飯物を沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程、被炊飯物を沸騰状態に維持する沸騰維持工程、維持工程後に被炊飯物を蒸らす蒸らし工程などの炊飯工程を順次実行する制御手段と、を備え、炊飯器本体又は蓋体におねばを貯留する貯留部を設け、制御手段は、炊飯工程で鍋から吹きこぼれるおねばを貯留部に一時貯留し、次の蒸らし工程で貯留部に貯留されたおねばを鍋内に戻し、おねばを戻した後の鍋内の加圧後に一気に減圧し鍋内を突沸させておねばを拡散し、拡散後に所定の時間蒸らし工程を継続する。
【解決手段】 被炊飯物を投入する鍋と、該鍋を収容する開口部及び鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段を有する炊飯器本体と、該炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体と、前記加熱手段を制御して被炊飯物に水分を吸水させる吸水工程、吸水された被炊飯物を沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程、被炊飯物を沸騰状態に維持する沸騰維持工程、維持工程後に被炊飯物を蒸らす蒸らし工程などの炊飯工程を順次実行する制御手段と、を備え、炊飯器本体又は蓋体におねばを貯留する貯留部を設け、制御手段は、炊飯工程で鍋から吹きこぼれるおねばを貯留部に一時貯留し、次の蒸らし工程で貯留部に貯留されたおねばを鍋内に戻し、おねばを戻した後の鍋内の加圧後に一気に減圧し鍋内を突沸させておねばを拡散し、拡散後に所定の時間蒸らし工程を継続する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、お米の炊飯方法及び炊飯器に係り、特に炊飯中に吹きこぼれるおねばを一時貯留し、この貯留されたおねばを蒸らし時に鍋内に戻して炊き上げる炊飯方法及び炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炊飯器は、鍋内に米と水とからなる被炊飯物を投入し、この鍋内の被炊飯物を加熱して炊飯するもので、特に圧力式の炊飯器は、この鍋内の被炊飯物を加熱すると共に鍋内を昇圧して炊飯するため、炊飯時は、鍋内が高温で内圧が高くなっている。従来、この種の炊飯器には、炊飯の加熱工程時に生じる蒸気を外部へ逃がすための蒸気口が設けられている。また、炊飯時には、鍋内の被炊飯物が沸騰し吹きこぼれが生じる。この吹きこぼれは、粘り気のある糊状の汁であって、この糊状の汁は旨み成分を含んでおり、通常、「おねば」と呼ばれている(以下、この吹きこぼれを「おねば」ともいう)。この吹きこぼれが、そのまま鍋外へ放出さてしまうと、旨み成分も排出されてしまいご飯が美味しく炊きあがらない。そこで、この吹きこぼれるおねばを貯留する貯留タンクを設けて、この貯留タンクにおねばを一時貯留して置き、加熱工程終了後に鍋内が負圧になったときにおねばを鍋内に戻して美味しく炊きあげる炊飯器が開発されている。
【0003】
例えば図10は下記特許文献1に開示された炊飯器の一部縦断面図である。この図10に示す炊飯器は、蓋体101に外部への吹きこぼれを防止する蒸気排出路が形成された構成を有している。この蒸気排出路は、蓋体101の内面に穿設される蒸気孔102及びおねば戻し孔103と、該蒸気孔102及びおねば戻し孔103を介して侵入する蒸気及びおねばを上方に向かって案内する上方案内筒部104と、前記上方案内筒部104の外周に位置し、該上方案内筒部104を上昇する蒸気及びおねばをさらに下方に向かって案内する下方案内筒部105と、蓋体101の外壁部106に穿設された蒸気排出孔107と、前記上方案内筒部104の外周に形成され、前記下方案内筒部105によって案内された蒸気を前記蒸気排出孔107に導く蒸気通過室108と、を備え、前記上方案内筒部104の側壁に開口部109を形成すると共に、該開口部109から上方案内筒部104の法線方向に対して傾斜するリブ110を形成した構成が示されている。
【0004】
この構成によれば、内部で発生した蒸気及びおねばの殆どは、蒸気孔102及びおねば戻し孔103を介して上方案内筒部104を上昇し、下方案内筒部105によって上方案内筒部104の外方を降下する。また、内部で発生した蒸気の一部は、上方案内筒部104に形成した開口部を介して外方に吹出し、リブ110にガイドされながら円周方向に向かう。この円周方向に向かう蒸気は、前記上方案内筒部104の外方を降下するおねばに衝突して掻き乱し、その泡径を小さくすると共に、蒸気通過室108で円周方向に回転させて蒸気排出孔107からの排出を防止することができる。
【0005】
また、図11は下記特許文献2に開示された炊飯器を示し、図11(a)は縦断面図、図11(b)は蒸気口ユニットの拡大断面図である。この図11に示す炊飯器は、内釜を収容する炊飯器本体201と、この炊飯器本体201の開口部を開閉する蓋体202と、前記炊飯器本体201内に収容される有低筒状の内釜203と、前記内釜203を加熱する加熱手段と、前記蓋体202に設けられた前記内釜203と連通する連通穴204に、着脱自在に装着される蒸気口ユニット205を備え、前記蒸気口ユニット205は、図11(b)に示すように下ケース206と、この下ケース206と嵌合する上ケース207と、この上ケース207と前記下ケース206を開閉自在に軸支したヒンジ部208と、係止突起209aを有する係止片209bと、この係止片209bを回転可能に支持する回転軸210と、前記上ケース207を上側から押圧したときに前記係止突起209aに係合する係合部211とを備え、前記ヒンジ部208に対向して前記下ケース206と前記上ケース207を係止するロック機構212と、前記下側の前記ロック機構212近傍に前記蓋体202の連通穴204に挿入する突出部とを備えたものである。
【0006】
この炊飯器は、連結部内において案内筒の後部側に形成されたおねばが溜まる溜り凹部213を有しているが、これは、下ケース206の底部が傾斜しておりその下降した先に形成されている。この溜り凹部213の底部には開口部214が設けられ、その周縁部には蒸気口ユニット205内と内蓋202aの蒸気孔202a1を介して内釜203と連通する複数のおねば戻し穴215が設けられており、このおねば戻し穴215は開口部214に上下動可能に設けられた開閉弁216により開閉される。加熱工程後、加熱が停止して内釜203内の内圧が低下すると、開閉弁216は、おねばの重量によって下降しおねば戻し穴215を開口する。
【0007】
これにより、溜り凹部213内に溜ったおねばは、おねば戻し穴215から内蓋に設けた蒸気孔を介して内釜203内に落下する。おねばが内釜203内のご飯に戻ることにより、おねばに含まれる旨み成分がご飯に与えられて、つやや粘りのあるおいしいご飯を炊くことができる。
【特許文献1】特開平11−18930号公報(段落[0010]、[0011])
【特許文献2】特許第3820541号公報(段落[0010]、[0017]、[0032]、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1、2に記載された炊飯器は、いずれも、貯留タンク或いはおねば溜まりに貯留されたおねばが、おねば戻し孔を通して炊き立てのご飯の上に落下されるようになっている。このとき、いずれのおねば戻し孔が所定箇所に固定され、しかもその直径が小さくなっているのでおねばの落下した箇所は、ご飯のほぼ一箇所に集中されてしまうことになる。その結果、おねばが落下した箇所のご飯は、おねばに含まれている水成分によって水分の多い水っぽいものとなり、他の個所との間で炊きムラが発生し、美味く炊き上がらないことがある。
【0009】
本発明は、このような従来技術が抱える課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、炊飯時に吹きこぼれるおねばを一時貯留し、この貯留したおねばを蒸らし時に鍋内に戻して美味しいご飯を炊き上げることができる炊飯方法及び炊飯器を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、吹きこぼれるおねばでご飯を膨らませて、このおねばで米粒をコーティングして、ご飯のつやを増し、保温性能がよい炊飯ができる炊飯方法及び炊飯器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る炊飯方法は、鍋内の被炊飯物に水を吸水させる吸水工程、この吸水された被炊飯物を沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程、この被炊飯物を沸騰状態に維持する沸騰維持工程、この沸騰維持工程後に被炊飯物を蒸らす蒸らし工程の各炊飯工程を経て被炊飯物を炊飯する炊飯方法において、前記炊飯工程で前記鍋から吹きこぼれるおねばを一時貯留し、前記蒸らし工程で前記貯留されたおねばを前記鍋内に戻し、このおねばを戻した後に前記鍋内を加圧した後に一気に減圧しておねばを突沸させて鍋内に拡散し、この拡散後に所定時間蒸らし工程を継続することを特徴とする。
【0012】
また、請求項2に係る発明は、請求項1の炊飯方法に係り、前記鍋内におねばを戻す時間及び前記おねばの拡散後に継続される蒸らし工程の時間は、前記鍋内の被炊飯物の炊飯量に比例させて、該炊飯量が多いときは長くし、少ないときは短くすることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項3に係る炊飯器の発明は、被炊飯物が投入される鍋と、この鍋が収容される開口部及び鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段を有する炊飯器本体と、この炊飯器本体の開口部を塞ぐ開閉自在な蓋体と、前記加熱手段を制御して前記鍋内の被炊飯物に水分を吸水させる吸水工程、この吸水された被炊飯物を沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程、この被炊飯物を沸騰状態に維持する沸騰維持工程、この沸騰維持工程後に被炊飯物を蒸らす蒸らし工程などの炊飯工程を順次実行する制御手段と、を備えた炊飯器において、前記炊飯器本体又は蓋体におねばを貯留する貯留部を設け、前記制御手段は、前記炊飯工程で前記鍋から吹きこぼれるおねばを前記貯留部に一時貯留し、次の前記蒸らし工程で前記貯留部に貯留されたおねばを鍋内に戻し、このおねばを戻した後に該鍋内を加圧した後に一気に減圧しておねばを突沸させて鍋内に拡散し、この拡散後に所定の時間蒸らし工程を継続することを特徴とする。
【0014】
また、請求項4に係る発明は、請求項3の炊飯器に係り、前記貯留部は所定の大きさを有する貯留タンクから構成され、該貯留タンクは前記蓋体に着脱自在に装着されることを特徴とする。
【0015】
また、請求項5に係る発明は、請求項3の炊飯器に係り、前記鍋内におねばを戻す時間及び前記おねばの拡散後に継続される蒸らし工程の時間は、前記鍋内の被炊飯物の炊飯量に比例させて、該炊飯量が多いときは長くし、少ないときは短くすることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項6に係る炊飯器の発明は、被炊飯物が投入される鍋と、この鍋が収容される開口部及び鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段を有する炊飯器本体と、この炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体と、この蓋体に装着されて前記鍋内の内圧を調整する圧力弁と、この圧力弁を制御する圧力弁開放機構と、各種の炊飯メニューを選択する選択手段と、この選択手段により選択された炊飯メニューにより前記加熱手段及び前記圧力弁開放機構を制御して前記鍋内の被炊飯物に所定量の水分を吸水させる吸水工程、この吸水された被炊飯物を沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程、この被炊飯物を沸騰状態に維持する沸騰維持工程、この維持工程後に被炊飯物を蒸らす蒸らし工程などの炊飯工程を順次実行する制御手段と、を備えた圧力式の炊飯器において、前記炊飯器本体又は蓋体におねばを貯留する貯留部を設け、前記制御手段は、前記炊飯工程で前記鍋から吹きこぼれるおねばを前記貯留部に一時貯留し、次の前記蒸らし工程で前記貯留部に貯留されたおねばを前記鍋内に戻し、このおねばを戻し後に該鍋内を加圧した後に一気に減圧して鍋内を突沸させておねばを拡散し、この拡散後に所定の時間前記蒸らし工程を継続することを特徴とする。
【0017】
また、請求項7に係る発明は、請求項6の炊飯器に係り、前記制御手段は、前記沸騰維持工程の初期段階の水分が十分ある間に前記圧力弁開放機構により前記圧力弁を少なくとも1回強制的に開成させて沸騰中の前記鍋内の圧力を一気に低下させて鍋内に突沸現象を発生させて被炊飯物の米粒を攪拌するとともに、この突沸現象により吹きこぼれるおねばを前記貯留部に貯留させることを特徴とする。
【0018】
また、請求項8に係る発明は、請求項6の炊飯器に係り、前記貯留部は所定の大きさを有する貯留タンクから構成され、該貯留タンクは前記蓋体に着脱自在に装着されることを特徴とする。
【0019】
また、請求項9に係る発明は、請求項6の炊飯器に係り、前記鍋内におねばを戻す時間及び前記おねばの拡散後に継続される蒸らし工程の時間は、前記鍋内の被炊飯物の炊飯量に比例させて、該炊飯量が多いときは長くし、少ないときは短く設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は上記構成を備えることにより、以下に示すような優れた効果を奏するものである。すなわち、請求項1の発明によれば、炊飯工程、すなわち立上加熱工程及び沸騰維持工程で鍋から吹きこぼれるおねばを一時貯留し、次の蒸らし工程で貯留されたおねばを鍋内に戻し、このおねばを戻した後に鍋内を加圧した後に一気に減圧して鍋内を突沸させておねばを拡散し、この拡散後に所定時間蒸らし工程を継続する。これにより、鍋内に戻されたおねばは、ご飯の所定箇所に集中することなく拡散されて、旨み成分の「おねば」によりご飯粒をコーティングし、しかもご飯のつやをよくし、保温性能が向上した炊き上ができる。
【0021】
請求項2の発明によれば、鍋内におねばを戻す時間(おねば戻し時間)及びおねばの拡散後に継続される蒸らし工程の時間(蒸らし時間)は、鍋内の被炊飯物の炊飯量に比例させて、炊飯量が多いときは長くし、少ないときは短くすることにより、一連の蒸らし工程に要する時間の調節が可能になる。
【0022】
請求項3の発明によれば、炊飯器本体又は蓋体におねばを貯留する貯留部を設け、炊飯工程、すなわち立上加熱工程及び沸騰維持工程で鍋から吹きこぼれるおねばを貯留部に貯留し、次の蒸らし工程で貯留部に貯留されたおねばを鍋内に戻し、このおねばを戻し後に鍋内を加圧した後に一気に減圧して鍋内を突沸させておねばを拡散し、この拡散後に所定時間蒸らし工程を継続する。これにより、鍋内に戻されたおねばはご飯の所定箇所に集中することなく拡散され、しかもご飯を膨らませて旨み成分の「おねば」により米粒がコーティングされ、ご飯のつやもよくなり、さらに保温性能のよいご飯を炊飯できる炊飯器を提供できる。
【0023】
請求項4の発明によれば、貯留部を所定大きさの貯留タンクにすることにより、吹きこぼれるおねばの貯留が簡単になり、また、この貯留タンクを蓋体に着脱自在に装着することにより、貯留タンクを取り外して簡単に清掃することができる。
【0024】
請求項5の発明によれば、鍋内におねばを戻す時間(おねば戻し時間)及びおねばの拡散後に継続される蒸らし工程の時間(蒸らし時間)は、鍋内の被炊飯物の炊飯量に比例させて、炊飯量が多いときは長くし、少ないときは短くすることにより、一連の蒸らし工程に要する時間の調節が可能になる。
【0025】
請求項6〜9の発明によれば、鍋内の内圧を昇圧した圧力式の炊飯器において、請求項3〜5の発明と同じ作用効果を奏する炊飯器を提供できる。特に、請求項7の発明のように、鍋内の内圧を昇圧して一気に低下させると、圧力弁の開成時に大量の吹きこぼれが発生するが、これらが貯留タンクに貯留された後に鍋内へ戻されるので、このおねばを無駄にすることなく、美味しいご飯を炊き上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための炊飯方法及び炊飯器を例示するものであって、本発明をこれらに特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものも等しく適応し得るものである。
【実施例】
【0027】
まず、図1〜図4を参照して、本発明の実施形態に係る炊飯器の構造及び制御手段を説明する。なお、図1は本発明の実施形態に係る炊飯器を示し、図1(a)は正面図、図1(b)は図1(a)の表示部分の拡大図、図2は図1の炊飯器の縦断面図、図3は図2の圧力弁開放機構を拡大した拡大断面図、図4は制御手段を構成するブロック図である。
【0028】
炊飯器1は、図1及び図2に示すように、被炊飯物が投入される鍋7と、上方にこの鍋7が収容される開口部及び内部にこの鍋7を加熱し被炊飯物を加熱する加熱手段5を有する炊飯器本体(以下、本体という)2と、この本体2の一側に枢支されて開口部を覆い閉塞状態に係止する上蓋10と、この上蓋10に装着されて鍋7内の内圧を調整する圧力弁13と、この圧力弁13を開閉制御する圧力弁開放機構18と、各種の炊飯メニューを表示して選択する表示操作部25と、選択された炊飯メニューに基づいて加熱手段5及び圧力弁開放機構18を制御して鍋7内の被炊飯物を所定温度に加熱して所定の炊飯工程を実行する制御手段24と、を有している。
【0029】
炊飯工程は、所定の時間をかけて所定量の水分を被炊飯物に吸水させる吸水工程、この吸水された被炊飯物を沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程、この被炊飯物を沸騰状態に維持する沸騰維持工程、この沸騰維持工程後に被炊飯物を蒸らす蒸らし工程などとなっている。
【0030】
炊飯器本体2は、有底の箱状外部ケース3と、この外部ケース3に収容される内部ケース4とからなり、外部ケース3と内部ケース4との間に隙間が形成され、この隙間に制御手段24を構成する制御回路基板等(図示省略)が配設されている。内部ケース4には、深底の容器からなる鍋7が収容される。この鍋7は、アルミニウムとステンレスとのクラッド材で形成されている。また、この内部ケース4は、その底部4a及び側部4bにそれぞれ底部ヒータ5b及び側部ヒータ5aが設けられ、底部4aに鍋底温度を検知するサーミスタ等からなる鍋底温度センサ6が設けられている。底部ヒータ5bは環状に巻装した電磁誘導コイル(以下、IHコイルともいう)が使用されている。
【0031】
また、炊飯器本体2には、図1に示すように、その正面に各種炊飯メニューを表示する表示パネル及びこの炊飯メニューを選択等する操作釦からなる表示操作部25が設けられている。この表示操作部25には、図1に示すように、各種の炊飯選択メニュー及び時刻等が表示される表示パネル8と、この表示パネル8の左右及び下方に複数個のスイッチ操作釦3a〜3f、9が配設されている。これらの操作釦は、炊飯器を作動させる炊飯/スタート釦3a、炊飯予約をする炊飯予約釦3b、炊飯等の設定を取消す取消/保温釦3c、炊飯する米を選択するお米選択釦3d、炊飯メニューを選択するメニュー選択釦3e、コースを選択するコース釦3f、及び表示パネル8に表示されたメニュー等を選択・決定する十字シフトキー9となっている。これらの釦及びキーは、押し釦式のスイッチを構成する操作釦等であって、この釦或いはキーを押圧することにより、それぞれのスイッチ(図示省略)が作動されるようになっている。これらの操作釦3a〜3fのうち、メニュー釦3eは、各種炊飯メニューを表示パネル8に表示させるもので、この釦を押圧すると、ふつう、かため、やわらかめ、おかゆ、すしめし、カレー用、炊込み、おこわ、四季炊き、マルチ調理などの各種炊飯メニューが表示される。また、お米選択釦3dは、米の種類を選定するもので、例えば白米、無洗米、玄米、発芽玄米等の何れかを選択するものである。更に、コース釦3fは、うまみ保温、おやすみ保温、マルチ調理及びクリーニング等を選択するものである。また、十字シフトキー9は、表示パネル8に表示された種々のメニューから所定のメニューを選択するもので、表示された炊飯メニュー、例えば、ふつう、かため、やわらかめ、おかゆ、すしめし、カレー用、四季炊き及びこだわり等から十字シフトキー9を操作してカーソル(点滅表示)を上下及び左右に移動させて選択するものである。四季炊きは、四季の変移、すなわち1年を通して美味しいご飯を炊き上げるものであり、「こだわり」はお好みの硬さ、粘り及び甘さに炊き上げるものである。
【0032】
上蓋10は、図2に示すように、鍋7の開口部を閉蓋する内蓋11と、本体2の開口部全体を閉蓋する外蓋12等とで構成されている。この上蓋10は、一側がヒンジ機構Hにより炊飯器本体2に枢支され、他側が係止機構21により炊飯器本体2の係止部に係止される。
【0033】
図2、図3に示すように、内蓋11には、負圧弁17及び圧力弁13が設けてられている。圧力弁13は、圧力弁開放機構18によって開放される。圧力弁13は、所定径の弁孔14bが形成された弁座14aと、この弁孔14bを塞ぐように弁座14a上に載置される金属製ボール15と、このボール15の移動を規制することで弁座14a上にボール15を保持するカバー4cとで構成されている。また、圧力弁開放機構18は、電磁コイルが巻回されたシリンダ19aと、このシリンダ内を電磁コイルの励磁により入出しボール15を移動させるプランジャ19bと、プランジャの先端に装着された作動棹20と、シリンダの一端部と作動棹20との間に設けられたバネとで構成されている。
【0034】
圧力弁開放機構18は、制御手段24により制御される。すなわち、制御手段24からの指令に基づき、電磁コイルが励磁されるとプランジャ19bがシリンダ19aから飛出してボール15に衝突し、このボール15を所定方向に押し出す。この押し出しにより、ボール15は、弁孔14b上で移動し弁孔14bを強制的に開放させる。また、この開放状態において、電磁コイルへの励磁がストップされると、プランジャ19bがバネの付勢力によりシリンダ19a内に引き込まれ、この引き込みにより、ボール15が弁孔14b上に戻り、弁孔14bがボール15で閉塞される。
【0035】
内蓋11には、鍋7内の蒸気圧力が所定圧力以上の異常圧力に上昇したときに、鍋7内の圧力を外部に逃がす安全弁16が設けられている。また、この内蓋11には、蒸気温度センサ23が取り付けられている。
【0036】
内蓋11と外蓋12とは、その間に所定広さの隙間空間Sを設けて結合されている。外蓋12には、吹きこぼれるおねばを一時貯留する貯留タンク22が着脱自在に装着されている。この貯留タンク22は、蒸気が通過する蒸気口22aと、蒸気口22aの内部に設けられたおねばを一時貯留する空間22bと、外部に蒸気を外部へ逃す蒸気口22cと、タンク弁221とを有している。隙間空間S及び貯留タンクの空間22bは、吹きこぼれるおねばを一時貯留する貯留部となっている。この貯留部、例えば貯留タンクは、蓋体でなく本体に付設してもよい。この場合は、タンクに貯留されたおねばは戻し機構(例えばポンプなど)により鍋内に戻される。
【0037】
この構成により、炊飯工程において、鍋内が沸騰状態になると鍋内から外部へ向かって蒸気とともに炊飯物の一部が吹きこぼれる。この吹きこぼれは、圧力弁13の弁孔14b及び隙間空間Sを通って、貯留タンク22に入り込む。吹きこぼれが貯留タンク22に入り込むと、蒸気は蒸気口22cから外部へ放出され、蒸気は外部へ放出され、おねばは貯留タンク22内の空間22bに貯留される。また、このおねばは、隙間空間S内にも貯留される。
【0038】
貯留タンク22及び隙間空間Sに貯留されたおねばは、鍋7内の内圧が低下し負圧になると、タンク弁221及び負圧弁17が開きこれらの弁口から鍋7内へ戻される。また、貯留タンク22を外蓋に着脱自在に装着することにより、取り外して清掃することが可能になる。
【0039】
次に、図4を参照して所定の炊飯工程を実行するための制御手段24の構成を説明する。制御手段24は、図4に示すように、CPU、ROM、RAMなどが搭載された回路基板からなるハードウェアを備え、炊飯/スタート釦3a、メニュー選択釦3e、炊飯予約釦3b及び取消/保温釦3、鍋底温度センサ6、蒸気温度センサ23などにそれぞれ接続されて、これらの釦及びセンサの信号がCPUに入力されるようになっている。また、CPUには、所定時間を計時する少なくとも第1〜第4タイマー及びROM、RAMが接続されている。また、出力部(ドライバーには、ヒータ(IHコイル)5a、5b、圧力弁開放機構18の電磁コイル(ソレノイド)19a’、および表示器(表示パネル)8などが接続されている。ROMには、各種の炊飯メニューおよびこのメニューを実行するプログラムが収納されている。第1タイマーは吸水時間TA(t0)が設定されて計時する吸水タイマー、第2タイマーは蒸らし時間TB(t)が設定されて計時する蒸らしタイマー、第3タイマーはおねば戻し時間TC(t1)が設定されて計時するおねば戻しタイマー及び第4タイマーは蒸らし時間TD(t3)が設定されて計時するタイマーとなっている。IHコイルは、インバータ回路に接続されて、この回路によってIHコイルが制御される。
【0040】
次に、図5を参照して炊飯工程を説明する。なお、図5は炊飯工程における鍋内の温度及び圧力の変化を示した温度および圧力曲線図である。
【0041】
炊飯工程は、鍋内の被炊飯物に水を吸水させる吸水工程Iと、この吸水された被炊飯物を沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程IIと、この被炊飯物を沸騰状態に維持する沸騰維持工程IIIと、この沸騰維持工程後に被炊飯物を蒸らす蒸らし工程IVと、を有している。
【0042】
吸水工程Iでは、IHコイルへの通電が所定時間間隔でオン・オフされて、鍋内の温度を所定温度θ1にして所定の給水時間TA(t0)を掛けて所定量の水が被炊飯物に吸水される。温度θ1は、固定値でなく所定の幅、59.0〜59.9℃範囲の値にするのが好ましい。時間TAは例えば15分に設定されている。立上加熱工程IIでは、IHコイルへの通電がオンされると共に圧力弁13が閉成されて、吸水後の被炊飯物が沸騰温度まで昇温加熱される。この立上加熱工程IIでは、鍋内の圧力が大気圧から例えば1.2気圧まで昇圧される。この加熱・昇圧により鍋内の被炊飯物は沸騰状態になる。次の沸騰維持工程IIIでは、IHコイルへの通電及び圧力弁13の開閉が所定時間間隔で行われる。この沸騰維持工程IIIにおける圧力弁13の開閉は、沸騰維持工程の初期段階に1回乃至数回行われる。この圧力弁の開成により、鍋内の圧力は、1.2気圧から略大気圧近傍まで一気に低下される。この圧力変化により、鍋内で炊飯物が激しく攪拌されて、突沸現象が発生する。この突沸現象により、鍋内の米粒は攪拌される。特に、沸騰維持工程の初期段階に圧力弁の開閉が行われると、この段階では鍋内の水が多いので米粒は効率よく攪拌される。一方、IHコイルへの通電は、圧力弁の開閉に同期してオン/オフされる。すなわち、圧力弁が閉成されているときはIHコイルへの通電がオンされ、開成のときオフされる。この立上加熱工程及び沸騰維持工程において、被炊飯物の一部が鍋外へ吹きこぼれるが、この吹きこぼれるおねばは貯留タンク22及び隙間空間S内に貯留される。そして、この吹きこぼれるおねばが貯留タンクなどに貯留されたまま次の蒸らし工程IVへ移行される。蒸らし工程IVは、沸騰維持工程終了後の蒸らしIV1と、この蒸らしIV1後に鍋内の圧力を加圧・減圧する蒸らしIV2と、この蒸らしIV2後に蒸らしを継続する蒸らしIV3に区分されている。蒸らしIV1は、所定時間に設定され、この時間t1は貯留タンク及び空間Sに貯留されたおねばが鍋内へ戻されるおねば戻し時間となっている。この所定時間(以下、おねば戻し時間)t1は、後述するように鍋内の炊飯量によって異なっている。この蒸らしIV1では、IHコイルへの通電がオフされ、このオフ時間の経過とともに鍋内の圧力Pが低下する。この圧力低下により鍋内が負圧になり、タンク弁221及び負圧弁17が開成されて、これらの弁からおねばが鍋内へ落下する。なお、このとき圧力弁13は閉成されている。鍋内に落下したおねばは、殆どが負圧弁17の真下部分に落下し、この部分のおねばに含まれる水成分により、この部分は水分が多くなる。続く蒸らしIV2では、IHコイルが所定時間t2(例えば、48秒)通電される。このIHコイルへの通電により、鍋内の圧力は所定値P3(略1.2気圧)まで昇圧する。この昇圧後に、次の蒸らしIV3でIHコイルへの通電をオフするので内圧が一気に大気圧近傍まで低下する。この圧力変化により、おねばが激しく沸騰する現象、いわゆる、おねばの突沸現象が鍋内で発生する。このおねばの突沸現象により、おねばがご飯内に広く拡散される。この拡散されたおねばはご飯に付着してご飯がコーティングされる。この蒸らしIV3では、IHコイルへの通電を所定の時間間隔でオン・オフされ、所定の蒸らし時間t3を経過させて蒸らしIV3が継続される。この蒸らしIV3により余分な水分が蒸発される。この蒸らし時間t3は炊飯量によって異なっている。
【0043】
図6は、炊飯量とおねば戻し時間t1、蒸らし時間t3との関係を示している。吹きこぼれるおねば量は、炊飯量によって異なり、炊飯量が多いときは吹きこぼれが多く、炊飯量が少ないときは反対に少なくなる。貯留タンク22などに貯留されたおねばを鍋7内へ戻すおねば戻し時間t1は、この吹きこぼれるおねば量に比例し、おねば量が多いときは戻り時間が長く掛り、少ないときは短時間にできる。そこで、このおねば戻し時間t1及び蒸らし時間t3を炊飯量によって設定する。すなわち、それぞれの時間t1、t3は、炊飯量に比例するようにして、炊飯量が多いときは時間を長くし、少ないときに短く設定する。炊飯量が1カップのときは、おねば戻し時間t1はa1に、蒸らし時間t3はb1、また、炊飯量が10カップのときは、t10はa10に設定し、これらを含めて間の時間(1カップ毎に区分)は以下の関係に設定する。このおねば戻し時間t1は、a1<a2<a3<・・・・・<a8<a9<a10の関係になるようにし、このおねば戻し時間t1は、360sec〜600secの範囲に設定されている。また、蒸らし時間t3は、b1<b2<b<3・・・・・<b8<b9<b10になるようにし、この蒸らし時間t3は、0〜128secの範囲に設定される。この時間設定により、蒸らし工程の時間調節が可能になる。なお、蒸らし工程IVの全体の時間tは900秒に設定されている。
【0044】
次に、図5、図7〜図9を参照して、炊飯工程を説明する。なお、図7〜図9は炊飯工程のフローチャートである。なお、表示パネル8には各種の炊飯メニューが表示されるが、以下、白米・標準炊飯メニューを選択して炊飯を実行した場合について説明する。
【0045】
まず、炊飯メニューをスタートする前に、鍋7内に所定量の水と白米を投入し、この鍋を内部ケース4内に収容し、上蓋10を閉めて炊飯器本体2に係止してロックする。ステップS1で炊飯予約をしない場合は、ステップS5で炊飯/スタート釦3aを押圧して、インバータ回路を起動して、底部ヒータ5bへの通電が開始される(ステップS6、S7)。なお、炊飯予約する場合は、タイマーに予約時間をセットして、炊飯予約モードで炊飯される(ステップS2〜S4)。この通電により、内部ケース4の底壁に取り付けた底部ヒータ5bには高周波電流が流れて、鍋7に渦電流が発生して鍋7が発熱して被炊飯物の加熱が開始される(ステップS8)。同時に、制御手段24により圧力弁開放機構18を作動させてボール15を移動せしめ、圧力弁13を開状態にして吸水工程Iが実行される(ステップS9、S10)。この吸水工程Iでは、第1タイマーに吸水時間TA、例えば15分をセットして置く(ステップS11、S12)。この吸水工程Iの実行が開始されると、ステップS13で第1タイマーが吸水時間TA(15分)の計時が開始される。この吸水時間に、鍋底温度センサ6により鍋底温度が計測される。この計測値K1が所定の温度(θ1)60℃(実際は59.9℃)に達するまで底部ヒータ5bへの通電がオンされて、次いでオフされる(ステップS14〜S18)。この吸水時間TAの経過後に、鍋7内の炊飯量の判定がなされる。この判定は吸水工程I中における底部ヒータ5bへの通電時間を積算することによって、鍋7内に投入されている被炊飯物の量が1〜10の間で判定される(ステップS19〜S21)。この判定結果により、蒸らし工程IVにおけるおねば戻し時間t1及び蒸らし時間t3を設定することができる。すなわち、このおねば戻し時間t1及び蒸らし時間t3は、図6に示すように、判定量1〜10に対して、おねば戻し時間t1はそれぞれの時間a1〜a10及び蒸らし時間t3もそれぞれの時間b1〜b10に設定される。なお、図6において判定量が「1」の場合は、鍋7内に投入された米の量が1カップであることを示している。
【0046】
次の立上加熱工程IIでは、短時間で沸騰状態になるようにフルパワー加熱が行われると共に圧力弁13が閉成される(ステップS22、S23)。フルパワー加熱制御及び圧力弁13の閉成は、制御手段24により行われる。圧力弁13は、圧力弁開放機構18を作動させてプランジャ19bを引き戻すことによってボール15が自重により弁孔14b上に転がり弁孔14bを塞ぎ圧力弁13が閉成される。ステップS24で蒸気温度センサ23により蒸気温度K2が計測される。ステップS25でこの計測値K2が75℃に達しているか否かが判定されて、75℃に達している場合は、立上加熱工程IIを終了させて次の沸騰維持工程IIIへ移行させる。
【0047】
沸騰維持工程IIIが開始されると(ステップS26)、鍋7内の圧力は大気圧以上の所定圧力、例えば約1.2気圧となり、米粒はこの圧力に対応する飽和温度で沸騰する。この沸騰維持工程へ移行した初期段階から、制御手段24により圧力弁開放機構18を作動させて圧力弁13を強制的に複数回開閉させる(ステップS27、S28)。圧力弁が強制的開動作されると、鍋7内の圧力が所定沸騰圧力(約1.2気圧)から一気に大気圧近傍まで低下するため、鍋7内が激しい突沸状態となる。この突沸状態になると、鍋内に泡が発生し、この泡によって米粒が撹拌される。その結果、米粒が均一に加熱され、炊き上げられることになる。同時に大量の吹きこぼれ(おねば)が発生して、この吹きこぼれは、蒸気とともに圧力弁13の弁孔14b及び隙間空間Sを通って、貯留タンク22に入り込み、蒸気は蒸気口22cから外部へ放出され、蒸気以外のおねばは貯留タンク22内の空間22bに貯留される。また、このおねばは、隙間空間S内にも貯留される。鍋7内の圧力が大気圧近傍まで低下すると、再び圧力弁13を閉成させ、鍋7内の圧力を上昇させて、この圧力弁13の開閉が複数回繰り返し実行される。なお、この沸騰工程において時間が経過すると、鍋7内の残水量が減少し、圧力変動幅が小さくなり、突沸現象が弱くなる。このため、圧力弁の強制的な開放は沸騰維持工程の初期段階に集中させると効果的である。圧力弁を複数回開放する操作を終えると、ステップS29において圧力弁開放機構18による圧力弁の強制的開放が停止され、圧力弁が閉状態になる。そして、ステップS30においてヒータによる沸騰状態が継続されて、ステップS31において鍋底温度K3が計測される。そして、ステップS32において鍋底温度K3が所定温度、例えば130℃になると、鍋7内の水が枯れて強制ドライアップが終了したと判断されるので、ステップS33において加熱手段5への通電を停止して蒸らし工程IVへ移行される。
【0048】
蒸らし工程IVへ移行すると、第2タイマーには、蒸らし時間(TB)として15分がセットされると共に、炊飯量に対応したおねば戻し時間t1が読み出される(ステップS34〜S36)。このおねば戻し時間t1では、IHコイルへの通電が停止されているので鍋内の圧力が低下する(ステップS37)。なお、圧力弁13は閉成されている。このおねば戻し時間t1は、炊飯量に対応しているので、ステップS38、S41及びS44において炊飯量に対応する時間が比較されて、炊飯量が例えば2カップのとき(ステップS41でYes)は、戻し時間a2(405秒)を読み出し(ステップS42)、この戻し時間a2に基づき、第3タイマーがこの時間a2のカウントが開始される(ステップS43)。この時間内に鍋内の内圧が低下して負圧になり、タンク弁221及び負圧弁17が開成されて、これらの弁から貯留されたおねばが鍋内へ落下する。鍋内に落下したおねばは、殆どが負圧弁17の真下部分に落下し、この部分のおねばに含まれる水成分により、この部分は水分が多くなっている。なお、炊飯量が1カップのときや2カップ以上の時にも同様の処理を行うのでここでは説明を省略する。
【0049】
ステップS43でこの時間a2が経過すると、IHコイルへの通電が開始されると共に、第4タイマーに設定されている蒸らし時間TD(48秒)のカウントが開始される(ステップS47、S48)。加熱手段5への通電により、既に圧力弁が閉成されているので鍋7内の圧力が略1.2気圧に上昇する。この時間t2(48秒)が経過すると、ステップS51で圧力弁13が開成される。この圧力弁13の開成により、鍋内の圧力は、略1.2気圧から一気に大気圧近傍まで低下する。この圧力変化により、鍋内が突沸現象が起こり、おねばがご飯内に広く拡散される。この拡散されたおねばはご飯に付着して米粒がこのおねばでコーティングされる。
【0050】
その後、ステップS52で蒸らし時間t3(b2=16秒)を読み出して、加熱手段5への通電を所定の時間間隔でオン・オフされて、この時間b2かけて蒸らしが実行される。この時間b2は、炊飯量によって異なっている。この蒸らし時間t3経過後は、所定時間t4の間加熱手段への通電が停止されて(ステップS53)、残りの蒸らしが実行されて、蒸らし工程IVが終了した後に保温工程へ移行される(ステップS54〜S56)。
【0051】
本発明は、圧力式の炊飯器で説明したが、この圧力式の炊飯器に限定されず、常圧式の炊飯器でよい。また、加熱手段は、誘導コイルによる渦電流によって加熱するIH加熱方式に限らず、ヒータを内装した熱板を鍋底に装着したものやその他の加熱方法であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は本発明の実施形態に係る炊飯器を示し、図1(a)は正面図、図1(b)は図1(a)の表示部分の拡大図である。
【図2】図2は図1の炊飯器の縦断面図である。
【図3】図3は図2の圧力弁開放機構を拡大した拡大断面図である。
【図4】図4は制御手段を構成するブロック図である。
【図5】図5は炊飯工程における鍋内の温度及び圧力の変化を示した温度曲線図である。
【図6】図6は炊飯量とおねば戻し時間及び蒸らし時間との関係を示している。
【図7】図7は炊飯フローチャート図である。
【図8】図8は図7に続く炊飯フローチャート図である。
【図9】図9は図8に続く炊飯フローチャート図である。
【図10】図10は従来技術の炊飯器の一部縦断面図である。
【図11】図11は他の従来技術の炊飯器を示し、図11(a)は縦断面図、図11(b)は蒸気口ユニットの拡大断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 炊飯器
2 炊飯器本体
3 外部ケース
4 内部ケース
5a 側面ヒータ
5b 底面ヒータ(IHコイル)
6 鍋底温度センサ
7 鍋
10 上蓋
11 内蓋
12 外蓋
13 圧力弁
16 安全弁
17 負圧弁
18 圧力弁開放機構
21 係止機構
22 貯留タンク
24 制御手段
25 表示操作部
【技術分野】
【0001】
本発明は、お米の炊飯方法及び炊飯器に係り、特に炊飯中に吹きこぼれるおねばを一時貯留し、この貯留されたおねばを蒸らし時に鍋内に戻して炊き上げる炊飯方法及び炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炊飯器は、鍋内に米と水とからなる被炊飯物を投入し、この鍋内の被炊飯物を加熱して炊飯するもので、特に圧力式の炊飯器は、この鍋内の被炊飯物を加熱すると共に鍋内を昇圧して炊飯するため、炊飯時は、鍋内が高温で内圧が高くなっている。従来、この種の炊飯器には、炊飯の加熱工程時に生じる蒸気を外部へ逃がすための蒸気口が設けられている。また、炊飯時には、鍋内の被炊飯物が沸騰し吹きこぼれが生じる。この吹きこぼれは、粘り気のある糊状の汁であって、この糊状の汁は旨み成分を含んでおり、通常、「おねば」と呼ばれている(以下、この吹きこぼれを「おねば」ともいう)。この吹きこぼれが、そのまま鍋外へ放出さてしまうと、旨み成分も排出されてしまいご飯が美味しく炊きあがらない。そこで、この吹きこぼれるおねばを貯留する貯留タンクを設けて、この貯留タンクにおねばを一時貯留して置き、加熱工程終了後に鍋内が負圧になったときにおねばを鍋内に戻して美味しく炊きあげる炊飯器が開発されている。
【0003】
例えば図10は下記特許文献1に開示された炊飯器の一部縦断面図である。この図10に示す炊飯器は、蓋体101に外部への吹きこぼれを防止する蒸気排出路が形成された構成を有している。この蒸気排出路は、蓋体101の内面に穿設される蒸気孔102及びおねば戻し孔103と、該蒸気孔102及びおねば戻し孔103を介して侵入する蒸気及びおねばを上方に向かって案内する上方案内筒部104と、前記上方案内筒部104の外周に位置し、該上方案内筒部104を上昇する蒸気及びおねばをさらに下方に向かって案内する下方案内筒部105と、蓋体101の外壁部106に穿設された蒸気排出孔107と、前記上方案内筒部104の外周に形成され、前記下方案内筒部105によって案内された蒸気を前記蒸気排出孔107に導く蒸気通過室108と、を備え、前記上方案内筒部104の側壁に開口部109を形成すると共に、該開口部109から上方案内筒部104の法線方向に対して傾斜するリブ110を形成した構成が示されている。
【0004】
この構成によれば、内部で発生した蒸気及びおねばの殆どは、蒸気孔102及びおねば戻し孔103を介して上方案内筒部104を上昇し、下方案内筒部105によって上方案内筒部104の外方を降下する。また、内部で発生した蒸気の一部は、上方案内筒部104に形成した開口部を介して外方に吹出し、リブ110にガイドされながら円周方向に向かう。この円周方向に向かう蒸気は、前記上方案内筒部104の外方を降下するおねばに衝突して掻き乱し、その泡径を小さくすると共に、蒸気通過室108で円周方向に回転させて蒸気排出孔107からの排出を防止することができる。
【0005】
また、図11は下記特許文献2に開示された炊飯器を示し、図11(a)は縦断面図、図11(b)は蒸気口ユニットの拡大断面図である。この図11に示す炊飯器は、内釜を収容する炊飯器本体201と、この炊飯器本体201の開口部を開閉する蓋体202と、前記炊飯器本体201内に収容される有低筒状の内釜203と、前記内釜203を加熱する加熱手段と、前記蓋体202に設けられた前記内釜203と連通する連通穴204に、着脱自在に装着される蒸気口ユニット205を備え、前記蒸気口ユニット205は、図11(b)に示すように下ケース206と、この下ケース206と嵌合する上ケース207と、この上ケース207と前記下ケース206を開閉自在に軸支したヒンジ部208と、係止突起209aを有する係止片209bと、この係止片209bを回転可能に支持する回転軸210と、前記上ケース207を上側から押圧したときに前記係止突起209aに係合する係合部211とを備え、前記ヒンジ部208に対向して前記下ケース206と前記上ケース207を係止するロック機構212と、前記下側の前記ロック機構212近傍に前記蓋体202の連通穴204に挿入する突出部とを備えたものである。
【0006】
この炊飯器は、連結部内において案内筒の後部側に形成されたおねばが溜まる溜り凹部213を有しているが、これは、下ケース206の底部が傾斜しておりその下降した先に形成されている。この溜り凹部213の底部には開口部214が設けられ、その周縁部には蒸気口ユニット205内と内蓋202aの蒸気孔202a1を介して内釜203と連通する複数のおねば戻し穴215が設けられており、このおねば戻し穴215は開口部214に上下動可能に設けられた開閉弁216により開閉される。加熱工程後、加熱が停止して内釜203内の内圧が低下すると、開閉弁216は、おねばの重量によって下降しおねば戻し穴215を開口する。
【0007】
これにより、溜り凹部213内に溜ったおねばは、おねば戻し穴215から内蓋に設けた蒸気孔を介して内釜203内に落下する。おねばが内釜203内のご飯に戻ることにより、おねばに含まれる旨み成分がご飯に与えられて、つやや粘りのあるおいしいご飯を炊くことができる。
【特許文献1】特開平11−18930号公報(段落[0010]、[0011])
【特許文献2】特許第3820541号公報(段落[0010]、[0017]、[0032]、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1、2に記載された炊飯器は、いずれも、貯留タンク或いはおねば溜まりに貯留されたおねばが、おねば戻し孔を通して炊き立てのご飯の上に落下されるようになっている。このとき、いずれのおねば戻し孔が所定箇所に固定され、しかもその直径が小さくなっているのでおねばの落下した箇所は、ご飯のほぼ一箇所に集中されてしまうことになる。その結果、おねばが落下した箇所のご飯は、おねばに含まれている水成分によって水分の多い水っぽいものとなり、他の個所との間で炊きムラが発生し、美味く炊き上がらないことがある。
【0009】
本発明は、このような従来技術が抱える課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、炊飯時に吹きこぼれるおねばを一時貯留し、この貯留したおねばを蒸らし時に鍋内に戻して美味しいご飯を炊き上げることができる炊飯方法及び炊飯器を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、吹きこぼれるおねばでご飯を膨らませて、このおねばで米粒をコーティングして、ご飯のつやを増し、保温性能がよい炊飯ができる炊飯方法及び炊飯器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る炊飯方法は、鍋内の被炊飯物に水を吸水させる吸水工程、この吸水された被炊飯物を沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程、この被炊飯物を沸騰状態に維持する沸騰維持工程、この沸騰維持工程後に被炊飯物を蒸らす蒸らし工程の各炊飯工程を経て被炊飯物を炊飯する炊飯方法において、前記炊飯工程で前記鍋から吹きこぼれるおねばを一時貯留し、前記蒸らし工程で前記貯留されたおねばを前記鍋内に戻し、このおねばを戻した後に前記鍋内を加圧した後に一気に減圧しておねばを突沸させて鍋内に拡散し、この拡散後に所定時間蒸らし工程を継続することを特徴とする。
【0012】
また、請求項2に係る発明は、請求項1の炊飯方法に係り、前記鍋内におねばを戻す時間及び前記おねばの拡散後に継続される蒸らし工程の時間は、前記鍋内の被炊飯物の炊飯量に比例させて、該炊飯量が多いときは長くし、少ないときは短くすることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項3に係る炊飯器の発明は、被炊飯物が投入される鍋と、この鍋が収容される開口部及び鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段を有する炊飯器本体と、この炊飯器本体の開口部を塞ぐ開閉自在な蓋体と、前記加熱手段を制御して前記鍋内の被炊飯物に水分を吸水させる吸水工程、この吸水された被炊飯物を沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程、この被炊飯物を沸騰状態に維持する沸騰維持工程、この沸騰維持工程後に被炊飯物を蒸らす蒸らし工程などの炊飯工程を順次実行する制御手段と、を備えた炊飯器において、前記炊飯器本体又は蓋体におねばを貯留する貯留部を設け、前記制御手段は、前記炊飯工程で前記鍋から吹きこぼれるおねばを前記貯留部に一時貯留し、次の前記蒸らし工程で前記貯留部に貯留されたおねばを鍋内に戻し、このおねばを戻した後に該鍋内を加圧した後に一気に減圧しておねばを突沸させて鍋内に拡散し、この拡散後に所定の時間蒸らし工程を継続することを特徴とする。
【0014】
また、請求項4に係る発明は、請求項3の炊飯器に係り、前記貯留部は所定の大きさを有する貯留タンクから構成され、該貯留タンクは前記蓋体に着脱自在に装着されることを特徴とする。
【0015】
また、請求項5に係る発明は、請求項3の炊飯器に係り、前記鍋内におねばを戻す時間及び前記おねばの拡散後に継続される蒸らし工程の時間は、前記鍋内の被炊飯物の炊飯量に比例させて、該炊飯量が多いときは長くし、少ないときは短くすることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項6に係る炊飯器の発明は、被炊飯物が投入される鍋と、この鍋が収容される開口部及び鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段を有する炊飯器本体と、この炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体と、この蓋体に装着されて前記鍋内の内圧を調整する圧力弁と、この圧力弁を制御する圧力弁開放機構と、各種の炊飯メニューを選択する選択手段と、この選択手段により選択された炊飯メニューにより前記加熱手段及び前記圧力弁開放機構を制御して前記鍋内の被炊飯物に所定量の水分を吸水させる吸水工程、この吸水された被炊飯物を沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程、この被炊飯物を沸騰状態に維持する沸騰維持工程、この維持工程後に被炊飯物を蒸らす蒸らし工程などの炊飯工程を順次実行する制御手段と、を備えた圧力式の炊飯器において、前記炊飯器本体又は蓋体におねばを貯留する貯留部を設け、前記制御手段は、前記炊飯工程で前記鍋から吹きこぼれるおねばを前記貯留部に一時貯留し、次の前記蒸らし工程で前記貯留部に貯留されたおねばを前記鍋内に戻し、このおねばを戻し後に該鍋内を加圧した後に一気に減圧して鍋内を突沸させておねばを拡散し、この拡散後に所定の時間前記蒸らし工程を継続することを特徴とする。
【0017】
また、請求項7に係る発明は、請求項6の炊飯器に係り、前記制御手段は、前記沸騰維持工程の初期段階の水分が十分ある間に前記圧力弁開放機構により前記圧力弁を少なくとも1回強制的に開成させて沸騰中の前記鍋内の圧力を一気に低下させて鍋内に突沸現象を発生させて被炊飯物の米粒を攪拌するとともに、この突沸現象により吹きこぼれるおねばを前記貯留部に貯留させることを特徴とする。
【0018】
また、請求項8に係る発明は、請求項6の炊飯器に係り、前記貯留部は所定の大きさを有する貯留タンクから構成され、該貯留タンクは前記蓋体に着脱自在に装着されることを特徴とする。
【0019】
また、請求項9に係る発明は、請求項6の炊飯器に係り、前記鍋内におねばを戻す時間及び前記おねばの拡散後に継続される蒸らし工程の時間は、前記鍋内の被炊飯物の炊飯量に比例させて、該炊飯量が多いときは長くし、少ないときは短く設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は上記構成を備えることにより、以下に示すような優れた効果を奏するものである。すなわち、請求項1の発明によれば、炊飯工程、すなわち立上加熱工程及び沸騰維持工程で鍋から吹きこぼれるおねばを一時貯留し、次の蒸らし工程で貯留されたおねばを鍋内に戻し、このおねばを戻した後に鍋内を加圧した後に一気に減圧して鍋内を突沸させておねばを拡散し、この拡散後に所定時間蒸らし工程を継続する。これにより、鍋内に戻されたおねばは、ご飯の所定箇所に集中することなく拡散されて、旨み成分の「おねば」によりご飯粒をコーティングし、しかもご飯のつやをよくし、保温性能が向上した炊き上ができる。
【0021】
請求項2の発明によれば、鍋内におねばを戻す時間(おねば戻し時間)及びおねばの拡散後に継続される蒸らし工程の時間(蒸らし時間)は、鍋内の被炊飯物の炊飯量に比例させて、炊飯量が多いときは長くし、少ないときは短くすることにより、一連の蒸らし工程に要する時間の調節が可能になる。
【0022】
請求項3の発明によれば、炊飯器本体又は蓋体におねばを貯留する貯留部を設け、炊飯工程、すなわち立上加熱工程及び沸騰維持工程で鍋から吹きこぼれるおねばを貯留部に貯留し、次の蒸らし工程で貯留部に貯留されたおねばを鍋内に戻し、このおねばを戻し後に鍋内を加圧した後に一気に減圧して鍋内を突沸させておねばを拡散し、この拡散後に所定時間蒸らし工程を継続する。これにより、鍋内に戻されたおねばはご飯の所定箇所に集中することなく拡散され、しかもご飯を膨らませて旨み成分の「おねば」により米粒がコーティングされ、ご飯のつやもよくなり、さらに保温性能のよいご飯を炊飯できる炊飯器を提供できる。
【0023】
請求項4の発明によれば、貯留部を所定大きさの貯留タンクにすることにより、吹きこぼれるおねばの貯留が簡単になり、また、この貯留タンクを蓋体に着脱自在に装着することにより、貯留タンクを取り外して簡単に清掃することができる。
【0024】
請求項5の発明によれば、鍋内におねばを戻す時間(おねば戻し時間)及びおねばの拡散後に継続される蒸らし工程の時間(蒸らし時間)は、鍋内の被炊飯物の炊飯量に比例させて、炊飯量が多いときは長くし、少ないときは短くすることにより、一連の蒸らし工程に要する時間の調節が可能になる。
【0025】
請求項6〜9の発明によれば、鍋内の内圧を昇圧した圧力式の炊飯器において、請求項3〜5の発明と同じ作用効果を奏する炊飯器を提供できる。特に、請求項7の発明のように、鍋内の内圧を昇圧して一気に低下させると、圧力弁の開成時に大量の吹きこぼれが発生するが、これらが貯留タンクに貯留された後に鍋内へ戻されるので、このおねばを無駄にすることなく、美味しいご飯を炊き上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための炊飯方法及び炊飯器を例示するものであって、本発明をこれらに特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものも等しく適応し得るものである。
【実施例】
【0027】
まず、図1〜図4を参照して、本発明の実施形態に係る炊飯器の構造及び制御手段を説明する。なお、図1は本発明の実施形態に係る炊飯器を示し、図1(a)は正面図、図1(b)は図1(a)の表示部分の拡大図、図2は図1の炊飯器の縦断面図、図3は図2の圧力弁開放機構を拡大した拡大断面図、図4は制御手段を構成するブロック図である。
【0028】
炊飯器1は、図1及び図2に示すように、被炊飯物が投入される鍋7と、上方にこの鍋7が収容される開口部及び内部にこの鍋7を加熱し被炊飯物を加熱する加熱手段5を有する炊飯器本体(以下、本体という)2と、この本体2の一側に枢支されて開口部を覆い閉塞状態に係止する上蓋10と、この上蓋10に装着されて鍋7内の内圧を調整する圧力弁13と、この圧力弁13を開閉制御する圧力弁開放機構18と、各種の炊飯メニューを表示して選択する表示操作部25と、選択された炊飯メニューに基づいて加熱手段5及び圧力弁開放機構18を制御して鍋7内の被炊飯物を所定温度に加熱して所定の炊飯工程を実行する制御手段24と、を有している。
【0029】
炊飯工程は、所定の時間をかけて所定量の水分を被炊飯物に吸水させる吸水工程、この吸水された被炊飯物を沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程、この被炊飯物を沸騰状態に維持する沸騰維持工程、この沸騰維持工程後に被炊飯物を蒸らす蒸らし工程などとなっている。
【0030】
炊飯器本体2は、有底の箱状外部ケース3と、この外部ケース3に収容される内部ケース4とからなり、外部ケース3と内部ケース4との間に隙間が形成され、この隙間に制御手段24を構成する制御回路基板等(図示省略)が配設されている。内部ケース4には、深底の容器からなる鍋7が収容される。この鍋7は、アルミニウムとステンレスとのクラッド材で形成されている。また、この内部ケース4は、その底部4a及び側部4bにそれぞれ底部ヒータ5b及び側部ヒータ5aが設けられ、底部4aに鍋底温度を検知するサーミスタ等からなる鍋底温度センサ6が設けられている。底部ヒータ5bは環状に巻装した電磁誘導コイル(以下、IHコイルともいう)が使用されている。
【0031】
また、炊飯器本体2には、図1に示すように、その正面に各種炊飯メニューを表示する表示パネル及びこの炊飯メニューを選択等する操作釦からなる表示操作部25が設けられている。この表示操作部25には、図1に示すように、各種の炊飯選択メニュー及び時刻等が表示される表示パネル8と、この表示パネル8の左右及び下方に複数個のスイッチ操作釦3a〜3f、9が配設されている。これらの操作釦は、炊飯器を作動させる炊飯/スタート釦3a、炊飯予約をする炊飯予約釦3b、炊飯等の設定を取消す取消/保温釦3c、炊飯する米を選択するお米選択釦3d、炊飯メニューを選択するメニュー選択釦3e、コースを選択するコース釦3f、及び表示パネル8に表示されたメニュー等を選択・決定する十字シフトキー9となっている。これらの釦及びキーは、押し釦式のスイッチを構成する操作釦等であって、この釦或いはキーを押圧することにより、それぞれのスイッチ(図示省略)が作動されるようになっている。これらの操作釦3a〜3fのうち、メニュー釦3eは、各種炊飯メニューを表示パネル8に表示させるもので、この釦を押圧すると、ふつう、かため、やわらかめ、おかゆ、すしめし、カレー用、炊込み、おこわ、四季炊き、マルチ調理などの各種炊飯メニューが表示される。また、お米選択釦3dは、米の種類を選定するもので、例えば白米、無洗米、玄米、発芽玄米等の何れかを選択するものである。更に、コース釦3fは、うまみ保温、おやすみ保温、マルチ調理及びクリーニング等を選択するものである。また、十字シフトキー9は、表示パネル8に表示された種々のメニューから所定のメニューを選択するもので、表示された炊飯メニュー、例えば、ふつう、かため、やわらかめ、おかゆ、すしめし、カレー用、四季炊き及びこだわり等から十字シフトキー9を操作してカーソル(点滅表示)を上下及び左右に移動させて選択するものである。四季炊きは、四季の変移、すなわち1年を通して美味しいご飯を炊き上げるものであり、「こだわり」はお好みの硬さ、粘り及び甘さに炊き上げるものである。
【0032】
上蓋10は、図2に示すように、鍋7の開口部を閉蓋する内蓋11と、本体2の開口部全体を閉蓋する外蓋12等とで構成されている。この上蓋10は、一側がヒンジ機構Hにより炊飯器本体2に枢支され、他側が係止機構21により炊飯器本体2の係止部に係止される。
【0033】
図2、図3に示すように、内蓋11には、負圧弁17及び圧力弁13が設けてられている。圧力弁13は、圧力弁開放機構18によって開放される。圧力弁13は、所定径の弁孔14bが形成された弁座14aと、この弁孔14bを塞ぐように弁座14a上に載置される金属製ボール15と、このボール15の移動を規制することで弁座14a上にボール15を保持するカバー4cとで構成されている。また、圧力弁開放機構18は、電磁コイルが巻回されたシリンダ19aと、このシリンダ内を電磁コイルの励磁により入出しボール15を移動させるプランジャ19bと、プランジャの先端に装着された作動棹20と、シリンダの一端部と作動棹20との間に設けられたバネとで構成されている。
【0034】
圧力弁開放機構18は、制御手段24により制御される。すなわち、制御手段24からの指令に基づき、電磁コイルが励磁されるとプランジャ19bがシリンダ19aから飛出してボール15に衝突し、このボール15を所定方向に押し出す。この押し出しにより、ボール15は、弁孔14b上で移動し弁孔14bを強制的に開放させる。また、この開放状態において、電磁コイルへの励磁がストップされると、プランジャ19bがバネの付勢力によりシリンダ19a内に引き込まれ、この引き込みにより、ボール15が弁孔14b上に戻り、弁孔14bがボール15で閉塞される。
【0035】
内蓋11には、鍋7内の蒸気圧力が所定圧力以上の異常圧力に上昇したときに、鍋7内の圧力を外部に逃がす安全弁16が設けられている。また、この内蓋11には、蒸気温度センサ23が取り付けられている。
【0036】
内蓋11と外蓋12とは、その間に所定広さの隙間空間Sを設けて結合されている。外蓋12には、吹きこぼれるおねばを一時貯留する貯留タンク22が着脱自在に装着されている。この貯留タンク22は、蒸気が通過する蒸気口22aと、蒸気口22aの内部に設けられたおねばを一時貯留する空間22bと、外部に蒸気を外部へ逃す蒸気口22cと、タンク弁221とを有している。隙間空間S及び貯留タンクの空間22bは、吹きこぼれるおねばを一時貯留する貯留部となっている。この貯留部、例えば貯留タンクは、蓋体でなく本体に付設してもよい。この場合は、タンクに貯留されたおねばは戻し機構(例えばポンプなど)により鍋内に戻される。
【0037】
この構成により、炊飯工程において、鍋内が沸騰状態になると鍋内から外部へ向かって蒸気とともに炊飯物の一部が吹きこぼれる。この吹きこぼれは、圧力弁13の弁孔14b及び隙間空間Sを通って、貯留タンク22に入り込む。吹きこぼれが貯留タンク22に入り込むと、蒸気は蒸気口22cから外部へ放出され、蒸気は外部へ放出され、おねばは貯留タンク22内の空間22bに貯留される。また、このおねばは、隙間空間S内にも貯留される。
【0038】
貯留タンク22及び隙間空間Sに貯留されたおねばは、鍋7内の内圧が低下し負圧になると、タンク弁221及び負圧弁17が開きこれらの弁口から鍋7内へ戻される。また、貯留タンク22を外蓋に着脱自在に装着することにより、取り外して清掃することが可能になる。
【0039】
次に、図4を参照して所定の炊飯工程を実行するための制御手段24の構成を説明する。制御手段24は、図4に示すように、CPU、ROM、RAMなどが搭載された回路基板からなるハードウェアを備え、炊飯/スタート釦3a、メニュー選択釦3e、炊飯予約釦3b及び取消/保温釦3、鍋底温度センサ6、蒸気温度センサ23などにそれぞれ接続されて、これらの釦及びセンサの信号がCPUに入力されるようになっている。また、CPUには、所定時間を計時する少なくとも第1〜第4タイマー及びROM、RAMが接続されている。また、出力部(ドライバーには、ヒータ(IHコイル)5a、5b、圧力弁開放機構18の電磁コイル(ソレノイド)19a’、および表示器(表示パネル)8などが接続されている。ROMには、各種の炊飯メニューおよびこのメニューを実行するプログラムが収納されている。第1タイマーは吸水時間TA(t0)が設定されて計時する吸水タイマー、第2タイマーは蒸らし時間TB(t)が設定されて計時する蒸らしタイマー、第3タイマーはおねば戻し時間TC(t1)が設定されて計時するおねば戻しタイマー及び第4タイマーは蒸らし時間TD(t3)が設定されて計時するタイマーとなっている。IHコイルは、インバータ回路に接続されて、この回路によってIHコイルが制御される。
【0040】
次に、図5を参照して炊飯工程を説明する。なお、図5は炊飯工程における鍋内の温度及び圧力の変化を示した温度および圧力曲線図である。
【0041】
炊飯工程は、鍋内の被炊飯物に水を吸水させる吸水工程Iと、この吸水された被炊飯物を沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程IIと、この被炊飯物を沸騰状態に維持する沸騰維持工程IIIと、この沸騰維持工程後に被炊飯物を蒸らす蒸らし工程IVと、を有している。
【0042】
吸水工程Iでは、IHコイルへの通電が所定時間間隔でオン・オフされて、鍋内の温度を所定温度θ1にして所定の給水時間TA(t0)を掛けて所定量の水が被炊飯物に吸水される。温度θ1は、固定値でなく所定の幅、59.0〜59.9℃範囲の値にするのが好ましい。時間TAは例えば15分に設定されている。立上加熱工程IIでは、IHコイルへの通電がオンされると共に圧力弁13が閉成されて、吸水後の被炊飯物が沸騰温度まで昇温加熱される。この立上加熱工程IIでは、鍋内の圧力が大気圧から例えば1.2気圧まで昇圧される。この加熱・昇圧により鍋内の被炊飯物は沸騰状態になる。次の沸騰維持工程IIIでは、IHコイルへの通電及び圧力弁13の開閉が所定時間間隔で行われる。この沸騰維持工程IIIにおける圧力弁13の開閉は、沸騰維持工程の初期段階に1回乃至数回行われる。この圧力弁の開成により、鍋内の圧力は、1.2気圧から略大気圧近傍まで一気に低下される。この圧力変化により、鍋内で炊飯物が激しく攪拌されて、突沸現象が発生する。この突沸現象により、鍋内の米粒は攪拌される。特に、沸騰維持工程の初期段階に圧力弁の開閉が行われると、この段階では鍋内の水が多いので米粒は効率よく攪拌される。一方、IHコイルへの通電は、圧力弁の開閉に同期してオン/オフされる。すなわち、圧力弁が閉成されているときはIHコイルへの通電がオンされ、開成のときオフされる。この立上加熱工程及び沸騰維持工程において、被炊飯物の一部が鍋外へ吹きこぼれるが、この吹きこぼれるおねばは貯留タンク22及び隙間空間S内に貯留される。そして、この吹きこぼれるおねばが貯留タンクなどに貯留されたまま次の蒸らし工程IVへ移行される。蒸らし工程IVは、沸騰維持工程終了後の蒸らしIV1と、この蒸らしIV1後に鍋内の圧力を加圧・減圧する蒸らしIV2と、この蒸らしIV2後に蒸らしを継続する蒸らしIV3に区分されている。蒸らしIV1は、所定時間に設定され、この時間t1は貯留タンク及び空間Sに貯留されたおねばが鍋内へ戻されるおねば戻し時間となっている。この所定時間(以下、おねば戻し時間)t1は、後述するように鍋内の炊飯量によって異なっている。この蒸らしIV1では、IHコイルへの通電がオフされ、このオフ時間の経過とともに鍋内の圧力Pが低下する。この圧力低下により鍋内が負圧になり、タンク弁221及び負圧弁17が開成されて、これらの弁からおねばが鍋内へ落下する。なお、このとき圧力弁13は閉成されている。鍋内に落下したおねばは、殆どが負圧弁17の真下部分に落下し、この部分のおねばに含まれる水成分により、この部分は水分が多くなる。続く蒸らしIV2では、IHコイルが所定時間t2(例えば、48秒)通電される。このIHコイルへの通電により、鍋内の圧力は所定値P3(略1.2気圧)まで昇圧する。この昇圧後に、次の蒸らしIV3でIHコイルへの通電をオフするので内圧が一気に大気圧近傍まで低下する。この圧力変化により、おねばが激しく沸騰する現象、いわゆる、おねばの突沸現象が鍋内で発生する。このおねばの突沸現象により、おねばがご飯内に広く拡散される。この拡散されたおねばはご飯に付着してご飯がコーティングされる。この蒸らしIV3では、IHコイルへの通電を所定の時間間隔でオン・オフされ、所定の蒸らし時間t3を経過させて蒸らしIV3が継続される。この蒸らしIV3により余分な水分が蒸発される。この蒸らし時間t3は炊飯量によって異なっている。
【0043】
図6は、炊飯量とおねば戻し時間t1、蒸らし時間t3との関係を示している。吹きこぼれるおねば量は、炊飯量によって異なり、炊飯量が多いときは吹きこぼれが多く、炊飯量が少ないときは反対に少なくなる。貯留タンク22などに貯留されたおねばを鍋7内へ戻すおねば戻し時間t1は、この吹きこぼれるおねば量に比例し、おねば量が多いときは戻り時間が長く掛り、少ないときは短時間にできる。そこで、このおねば戻し時間t1及び蒸らし時間t3を炊飯量によって設定する。すなわち、それぞれの時間t1、t3は、炊飯量に比例するようにして、炊飯量が多いときは時間を長くし、少ないときに短く設定する。炊飯量が1カップのときは、おねば戻し時間t1はa1に、蒸らし時間t3はb1、また、炊飯量が10カップのときは、t10はa10に設定し、これらを含めて間の時間(1カップ毎に区分)は以下の関係に設定する。このおねば戻し時間t1は、a1<a2<a3<・・・・・<a8<a9<a10の関係になるようにし、このおねば戻し時間t1は、360sec〜600secの範囲に設定されている。また、蒸らし時間t3は、b1<b2<b<3・・・・・<b8<b9<b10になるようにし、この蒸らし時間t3は、0〜128secの範囲に設定される。この時間設定により、蒸らし工程の時間調節が可能になる。なお、蒸らし工程IVの全体の時間tは900秒に設定されている。
【0044】
次に、図5、図7〜図9を参照して、炊飯工程を説明する。なお、図7〜図9は炊飯工程のフローチャートである。なお、表示パネル8には各種の炊飯メニューが表示されるが、以下、白米・標準炊飯メニューを選択して炊飯を実行した場合について説明する。
【0045】
まず、炊飯メニューをスタートする前に、鍋7内に所定量の水と白米を投入し、この鍋を内部ケース4内に収容し、上蓋10を閉めて炊飯器本体2に係止してロックする。ステップS1で炊飯予約をしない場合は、ステップS5で炊飯/スタート釦3aを押圧して、インバータ回路を起動して、底部ヒータ5bへの通電が開始される(ステップS6、S7)。なお、炊飯予約する場合は、タイマーに予約時間をセットして、炊飯予約モードで炊飯される(ステップS2〜S4)。この通電により、内部ケース4の底壁に取り付けた底部ヒータ5bには高周波電流が流れて、鍋7に渦電流が発生して鍋7が発熱して被炊飯物の加熱が開始される(ステップS8)。同時に、制御手段24により圧力弁開放機構18を作動させてボール15を移動せしめ、圧力弁13を開状態にして吸水工程Iが実行される(ステップS9、S10)。この吸水工程Iでは、第1タイマーに吸水時間TA、例えば15分をセットして置く(ステップS11、S12)。この吸水工程Iの実行が開始されると、ステップS13で第1タイマーが吸水時間TA(15分)の計時が開始される。この吸水時間に、鍋底温度センサ6により鍋底温度が計測される。この計測値K1が所定の温度(θ1)60℃(実際は59.9℃)に達するまで底部ヒータ5bへの通電がオンされて、次いでオフされる(ステップS14〜S18)。この吸水時間TAの経過後に、鍋7内の炊飯量の判定がなされる。この判定は吸水工程I中における底部ヒータ5bへの通電時間を積算することによって、鍋7内に投入されている被炊飯物の量が1〜10の間で判定される(ステップS19〜S21)。この判定結果により、蒸らし工程IVにおけるおねば戻し時間t1及び蒸らし時間t3を設定することができる。すなわち、このおねば戻し時間t1及び蒸らし時間t3は、図6に示すように、判定量1〜10に対して、おねば戻し時間t1はそれぞれの時間a1〜a10及び蒸らし時間t3もそれぞれの時間b1〜b10に設定される。なお、図6において判定量が「1」の場合は、鍋7内に投入された米の量が1カップであることを示している。
【0046】
次の立上加熱工程IIでは、短時間で沸騰状態になるようにフルパワー加熱が行われると共に圧力弁13が閉成される(ステップS22、S23)。フルパワー加熱制御及び圧力弁13の閉成は、制御手段24により行われる。圧力弁13は、圧力弁開放機構18を作動させてプランジャ19bを引き戻すことによってボール15が自重により弁孔14b上に転がり弁孔14bを塞ぎ圧力弁13が閉成される。ステップS24で蒸気温度センサ23により蒸気温度K2が計測される。ステップS25でこの計測値K2が75℃に達しているか否かが判定されて、75℃に達している場合は、立上加熱工程IIを終了させて次の沸騰維持工程IIIへ移行させる。
【0047】
沸騰維持工程IIIが開始されると(ステップS26)、鍋7内の圧力は大気圧以上の所定圧力、例えば約1.2気圧となり、米粒はこの圧力に対応する飽和温度で沸騰する。この沸騰維持工程へ移行した初期段階から、制御手段24により圧力弁開放機構18を作動させて圧力弁13を強制的に複数回開閉させる(ステップS27、S28)。圧力弁が強制的開動作されると、鍋7内の圧力が所定沸騰圧力(約1.2気圧)から一気に大気圧近傍まで低下するため、鍋7内が激しい突沸状態となる。この突沸状態になると、鍋内に泡が発生し、この泡によって米粒が撹拌される。その結果、米粒が均一に加熱され、炊き上げられることになる。同時に大量の吹きこぼれ(おねば)が発生して、この吹きこぼれは、蒸気とともに圧力弁13の弁孔14b及び隙間空間Sを通って、貯留タンク22に入り込み、蒸気は蒸気口22cから外部へ放出され、蒸気以外のおねばは貯留タンク22内の空間22bに貯留される。また、このおねばは、隙間空間S内にも貯留される。鍋7内の圧力が大気圧近傍まで低下すると、再び圧力弁13を閉成させ、鍋7内の圧力を上昇させて、この圧力弁13の開閉が複数回繰り返し実行される。なお、この沸騰工程において時間が経過すると、鍋7内の残水量が減少し、圧力変動幅が小さくなり、突沸現象が弱くなる。このため、圧力弁の強制的な開放は沸騰維持工程の初期段階に集中させると効果的である。圧力弁を複数回開放する操作を終えると、ステップS29において圧力弁開放機構18による圧力弁の強制的開放が停止され、圧力弁が閉状態になる。そして、ステップS30においてヒータによる沸騰状態が継続されて、ステップS31において鍋底温度K3が計測される。そして、ステップS32において鍋底温度K3が所定温度、例えば130℃になると、鍋7内の水が枯れて強制ドライアップが終了したと判断されるので、ステップS33において加熱手段5への通電を停止して蒸らし工程IVへ移行される。
【0048】
蒸らし工程IVへ移行すると、第2タイマーには、蒸らし時間(TB)として15分がセットされると共に、炊飯量に対応したおねば戻し時間t1が読み出される(ステップS34〜S36)。このおねば戻し時間t1では、IHコイルへの通電が停止されているので鍋内の圧力が低下する(ステップS37)。なお、圧力弁13は閉成されている。このおねば戻し時間t1は、炊飯量に対応しているので、ステップS38、S41及びS44において炊飯量に対応する時間が比較されて、炊飯量が例えば2カップのとき(ステップS41でYes)は、戻し時間a2(405秒)を読み出し(ステップS42)、この戻し時間a2に基づき、第3タイマーがこの時間a2のカウントが開始される(ステップS43)。この時間内に鍋内の内圧が低下して負圧になり、タンク弁221及び負圧弁17が開成されて、これらの弁から貯留されたおねばが鍋内へ落下する。鍋内に落下したおねばは、殆どが負圧弁17の真下部分に落下し、この部分のおねばに含まれる水成分により、この部分は水分が多くなっている。なお、炊飯量が1カップのときや2カップ以上の時にも同様の処理を行うのでここでは説明を省略する。
【0049】
ステップS43でこの時間a2が経過すると、IHコイルへの通電が開始されると共に、第4タイマーに設定されている蒸らし時間TD(48秒)のカウントが開始される(ステップS47、S48)。加熱手段5への通電により、既に圧力弁が閉成されているので鍋7内の圧力が略1.2気圧に上昇する。この時間t2(48秒)が経過すると、ステップS51で圧力弁13が開成される。この圧力弁13の開成により、鍋内の圧力は、略1.2気圧から一気に大気圧近傍まで低下する。この圧力変化により、鍋内が突沸現象が起こり、おねばがご飯内に広く拡散される。この拡散されたおねばはご飯に付着して米粒がこのおねばでコーティングされる。
【0050】
その後、ステップS52で蒸らし時間t3(b2=16秒)を読み出して、加熱手段5への通電を所定の時間間隔でオン・オフされて、この時間b2かけて蒸らしが実行される。この時間b2は、炊飯量によって異なっている。この蒸らし時間t3経過後は、所定時間t4の間加熱手段への通電が停止されて(ステップS53)、残りの蒸らしが実行されて、蒸らし工程IVが終了した後に保温工程へ移行される(ステップS54〜S56)。
【0051】
本発明は、圧力式の炊飯器で説明したが、この圧力式の炊飯器に限定されず、常圧式の炊飯器でよい。また、加熱手段は、誘導コイルによる渦電流によって加熱するIH加熱方式に限らず、ヒータを内装した熱板を鍋底に装着したものやその他の加熱方法であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は本発明の実施形態に係る炊飯器を示し、図1(a)は正面図、図1(b)は図1(a)の表示部分の拡大図である。
【図2】図2は図1の炊飯器の縦断面図である。
【図3】図3は図2の圧力弁開放機構を拡大した拡大断面図である。
【図4】図4は制御手段を構成するブロック図である。
【図5】図5は炊飯工程における鍋内の温度及び圧力の変化を示した温度曲線図である。
【図6】図6は炊飯量とおねば戻し時間及び蒸らし時間との関係を示している。
【図7】図7は炊飯フローチャート図である。
【図8】図8は図7に続く炊飯フローチャート図である。
【図9】図9は図8に続く炊飯フローチャート図である。
【図10】図10は従来技術の炊飯器の一部縦断面図である。
【図11】図11は他の従来技術の炊飯器を示し、図11(a)は縦断面図、図11(b)は蒸気口ユニットの拡大断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 炊飯器
2 炊飯器本体
3 外部ケース
4 内部ケース
5a 側面ヒータ
5b 底面ヒータ(IHコイル)
6 鍋底温度センサ
7 鍋
10 上蓋
11 内蓋
12 外蓋
13 圧力弁
16 安全弁
17 負圧弁
18 圧力弁開放機構
21 係止機構
22 貯留タンク
24 制御手段
25 表示操作部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍋内の被炊飯物に水を吸水させる吸水工程、この吸水された被炊飯物を沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程、この被炊飯物を沸騰状態に維持する沸騰維持工程、この沸騰維持工程後に被炊飯物を蒸らす蒸らし工程の各炊飯工程を経て被炊飯物を炊飯する炊飯方法において、前記炊飯工程で前記鍋から吹きこぼれるおねばを一時貯留し、この貯留されたおねばを前記蒸らし工程で前記鍋内に戻し、このおねばを戻した後に前記鍋内を加圧した後に一気に減圧して鍋内を突沸させておねばを拡散し、この拡散後に所定時間蒸らし工程を継続することを特徴とする炊飯方法。
【請求項2】
前記鍋内におねばを戻す時間及び前記おねばの拡散後に継続される蒸らし工程の時間は、前記鍋内の被炊飯物の炊飯量に比例させて、該炊飯量が多いときは長くし、少ないときは短くすることを特徴とする請求項1に記載の炊飯方法。
【請求項3】
被炊飯物が投入される鍋と、この鍋が収容される開口部及び鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段を有する炊飯器本体と、この炊飯器本体の開口部を塞ぐ開閉自在な蓋体と、前記加熱手段を制御して前記鍋内の被炊飯物に水分を吸水させる吸水工程、この吸水された被炊飯物を沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程、この被炊飯物を沸騰状態に維持する沸騰維持工程、この沸騰維持工程後に被炊飯物を蒸らす蒸らし工程などの炊飯工程を順次実行する制御手段と、を備えた炊飯器において、前記炊飯器本体又は蓋体におねばを貯留する貯留部を設け、前記制御手段は、前記炊飯工程で前記鍋から吹きこぼれるおねばを前記貯留部に一時貯留し、次の前記蒸らし工程で前記貯留部に貯留されたおねばを前記鍋内に戻し、このおねばを戻した後に該鍋内を加圧した後に一気に減圧して鍋内を突沸させておねばを拡散し、この拡散後に所定の時間蒸らし工程を継続することを特徴とする炊飯器。
【請求項4】
前記貯留部は所定の大きさを有する貯留タンクから構成され、該貯留タンクは前記蓋体に着脱自在に装着されることを特徴とする請求項3に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記鍋内におねばを戻す時間及び前記おねばの拡散後に継続される蒸らし工程の時間は、前記鍋内の被炊飯物の炊飯量に比例させて、該炊飯量が多いときは長くし、少ないときは短くすることを特徴とする請求項3に記載の炊飯器。
【請求項6】
被炊飯物が投入される鍋と、この鍋が収容される開口部及び鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段を有する炊飯器本体と、この炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体と、この蓋体に装着されて前記鍋内の内圧を調整する圧力弁と、この圧力弁を制御する圧力弁開放機構と、各種の炊飯メニューを選択する選択手段と、この選択手段により選択された炊飯メニューにより前記加熱手段及び前記圧力弁開放機構を制御して前記鍋内の被炊飯物に所定量の水分を吸水させる吸水工程、この吸水された被炊飯物を沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程、この被炊飯物を沸騰状態に維持する沸騰維持工程、この維持工程後に被炊飯物を蒸らす蒸らし工程などの炊飯工程を順次実行する制御手段と、を備えた圧力式の炊飯器において、前記炊飯器本体又は蓋体におねばを貯留する貯留部を設け、前記制御手段は、前記炊飯工程で前記鍋から吹きこぼれるおねばを前記貯留部に一時貯留し、次の前記蒸らし工程で前記貯留部に貯留されたおねばを前記鍋内に戻し、このおねばを戻し後に該鍋内を加圧した後に一気に減圧して鍋内を突沸させておねばを拡散し、この拡散後に所定の時間前記蒸らし工程を継続することを特徴とする炊飯器。
【請求項7】
前記制御手段は、前記沸騰維持工程の初期段階の水分が十分ある間に前記圧力弁開放機構により前記圧力弁を少なくとも1回強制的に開成させて沸騰中の前記鍋内の圧力を一気に低下させて鍋内に突沸現象を発生させて被炊飯物の米粒を攪拌するとともに、この突沸現象により吹きこぼれるおねばを前記貯留部に貯留させることを特徴とする請求項6に記載の炊飯器。
【請求項8】
前記貯留部は所定の大きさを有する貯留タンクから構成され、該貯留タンクは前記蓋体に着脱自在に装着されることを特徴とする請求項6に記載の炊飯器。
【請求項9】
前記鍋内におねばを戻す時間及び前記おねばの拡散後に継続される蒸らし工程の時間は、前記鍋内の被炊飯物の炊飯量に比例させて、該炊飯量が多いときは長くし、少ないときは短く設定されていることを特徴とする請求項6に記載の炊飯器。
【請求項1】
鍋内の被炊飯物に水を吸水させる吸水工程、この吸水された被炊飯物を沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程、この被炊飯物を沸騰状態に維持する沸騰維持工程、この沸騰維持工程後に被炊飯物を蒸らす蒸らし工程の各炊飯工程を経て被炊飯物を炊飯する炊飯方法において、前記炊飯工程で前記鍋から吹きこぼれるおねばを一時貯留し、この貯留されたおねばを前記蒸らし工程で前記鍋内に戻し、このおねばを戻した後に前記鍋内を加圧した後に一気に減圧して鍋内を突沸させておねばを拡散し、この拡散後に所定時間蒸らし工程を継続することを特徴とする炊飯方法。
【請求項2】
前記鍋内におねばを戻す時間及び前記おねばの拡散後に継続される蒸らし工程の時間は、前記鍋内の被炊飯物の炊飯量に比例させて、該炊飯量が多いときは長くし、少ないときは短くすることを特徴とする請求項1に記載の炊飯方法。
【請求項3】
被炊飯物が投入される鍋と、この鍋が収容される開口部及び鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段を有する炊飯器本体と、この炊飯器本体の開口部を塞ぐ開閉自在な蓋体と、前記加熱手段を制御して前記鍋内の被炊飯物に水分を吸水させる吸水工程、この吸水された被炊飯物を沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程、この被炊飯物を沸騰状態に維持する沸騰維持工程、この沸騰維持工程後に被炊飯物を蒸らす蒸らし工程などの炊飯工程を順次実行する制御手段と、を備えた炊飯器において、前記炊飯器本体又は蓋体におねばを貯留する貯留部を設け、前記制御手段は、前記炊飯工程で前記鍋から吹きこぼれるおねばを前記貯留部に一時貯留し、次の前記蒸らし工程で前記貯留部に貯留されたおねばを前記鍋内に戻し、このおねばを戻した後に該鍋内を加圧した後に一気に減圧して鍋内を突沸させておねばを拡散し、この拡散後に所定の時間蒸らし工程を継続することを特徴とする炊飯器。
【請求項4】
前記貯留部は所定の大きさを有する貯留タンクから構成され、該貯留タンクは前記蓋体に着脱自在に装着されることを特徴とする請求項3に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記鍋内におねばを戻す時間及び前記おねばの拡散後に継続される蒸らし工程の時間は、前記鍋内の被炊飯物の炊飯量に比例させて、該炊飯量が多いときは長くし、少ないときは短くすることを特徴とする請求項3に記載の炊飯器。
【請求項6】
被炊飯物が投入される鍋と、この鍋が収容される開口部及び鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段を有する炊飯器本体と、この炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体と、この蓋体に装着されて前記鍋内の内圧を調整する圧力弁と、この圧力弁を制御する圧力弁開放機構と、各種の炊飯メニューを選択する選択手段と、この選択手段により選択された炊飯メニューにより前記加熱手段及び前記圧力弁開放機構を制御して前記鍋内の被炊飯物に所定量の水分を吸水させる吸水工程、この吸水された被炊飯物を沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程、この被炊飯物を沸騰状態に維持する沸騰維持工程、この維持工程後に被炊飯物を蒸らす蒸らし工程などの炊飯工程を順次実行する制御手段と、を備えた圧力式の炊飯器において、前記炊飯器本体又は蓋体におねばを貯留する貯留部を設け、前記制御手段は、前記炊飯工程で前記鍋から吹きこぼれるおねばを前記貯留部に一時貯留し、次の前記蒸らし工程で前記貯留部に貯留されたおねばを前記鍋内に戻し、このおねばを戻し後に該鍋内を加圧した後に一気に減圧して鍋内を突沸させておねばを拡散し、この拡散後に所定の時間前記蒸らし工程を継続することを特徴とする炊飯器。
【請求項7】
前記制御手段は、前記沸騰維持工程の初期段階の水分が十分ある間に前記圧力弁開放機構により前記圧力弁を少なくとも1回強制的に開成させて沸騰中の前記鍋内の圧力を一気に低下させて鍋内に突沸現象を発生させて被炊飯物の米粒を攪拌するとともに、この突沸現象により吹きこぼれるおねばを前記貯留部に貯留させることを特徴とする請求項6に記載の炊飯器。
【請求項8】
前記貯留部は所定の大きさを有する貯留タンクから構成され、該貯留タンクは前記蓋体に着脱自在に装着されることを特徴とする請求項6に記載の炊飯器。
【請求項9】
前記鍋内におねばを戻す時間及び前記おねばの拡散後に継続される蒸らし工程の時間は、前記鍋内の被炊飯物の炊飯量に比例させて、該炊飯量が多いときは長くし、少ないときは短く設定されていることを特徴とする請求項6に記載の炊飯器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−187(P2009−187A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−162160(P2007−162160)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】
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