説明

炊飯釜搬送装置における緊急停止装置とそれを備える連続式炊飯機並びに炊飯システム

【課題】 炊飯釜からの蓋の落下や大きな位置ずれを速やかに検知して、損傷が発生する前、若しくは損傷が大きくなる前に、コンベアを自動的に停止させる炊飯釜搬送装置における緊急停止装置と、それを備える連続式炊飯機並びに炊飯システムを提供することを課題とする。
【解決手段】 炊飯釜を搬送するコンベアと、コンベアによって搬送される炊飯釜の上方に、コンベアの搬送経路に沿って配置された少なくとも1本の線状部材と、当該線状状部材を搬送経路に沿った方向に摺動可能に支持する支持部材と、線状部材から下方に突出するように当該線状部材に取り付けられた1又は複数の検知突片と、当該線状部材の摺動を検知する摺動検知手段と、摺動検知手段からの摺動検知信号に基づいてコンベアを停止させるコンベア停止手段とを備える、炊飯釜搬送装置における緊急停止装置、および、これを備えた連続式炊飯機並びに炊飯システムを提供することによって解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯釜搬送装置における緊急停止装置とそれを備える連続炊飯機並びに炊飯システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、特許文献1、2に見られるように、炊飯釜をコンベアで搬送し、炊飯に必要な米投入、洗米、水浸漬、炊飯、蒸らしなどの工程を順次行うようにした炊飯システムが多数提案されている。これらの炊飯システムにおいては、各工程における処理の必要性に応じて、炊飯釜から蓋を外したり、逆に、炊飯釜に蓋を装着したりすることが行われる。このような蓋の脱着は、通常、炊飯釜と蓋の脱着装置とを正確に位置決めした上で自動的に行われるが、時には、取り付ける蓋の位置がずれてしまうことがある。位置がずれて装着された蓋は、炊飯釜の密閉性を損なう上に、場合によっては、コンベアによる搬送中に、振動等が原因で、炊飯釜からずり落ち、周辺機材と接触したり、コンベアのローラー間に挟まって、その状態で尚もコンベアが搬送動作を続けると、搬送されてくる炊飯釜に押されて、コンベアや周辺機器に損害を与えたり、蓋自体が変形してしまうことがある。
【0003】
このような場合、通常は、ずり落ちた蓋が周辺基材と接触する異常音を聞いた作業者が、現場に駆けつけ、コンベアの停止ボタンを押してコンベアを停止させることが行われているが、異常音が発せられてから、実際にコンベアが停止するまでの間には相当程度の時間が経過しており、コンベアや周辺機器、或いは蓋自体に無視できない損傷が発生してしまっている場合が多いのが実状である。
【特許文献1】特開平11−267024号公報
【特許文献2】特開2000−342446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来の炊飯システムにおける上記の問題点を解決するために為されたもので、蓋が炊飯釜からずり落ちてしまった場合や、ずり落ちないまでも、蓋が大きく位置ずれした状態で装着され、周辺機器と接触する恐れがある場合には、これを速やかに検知して、損傷が発生する前、若しくは損傷が大きくなる前に、コンベアを自動的に停止させる、炊飯釜搬送装置における緊急停止装置とそれを備える連続式炊飯機並びに炊飯システムを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を、炊飯釜を搬送するコンベアと、コンベアによって搬送される炊飯釜の上方に、コンベアによる炊飯釜の搬送経路に沿って配置された少なくとも1本の線状部材と、当該線状状部材を搬送経路に沿った方向に摺動可能に支持する支持部材と、線状部材から下方に突出するように当該線状部材に取り付けられた1又は複数の検知突片と、当該線状部材の摺動を検知する摺動検知手段と、摺動検知手段からの摺動検知信号に基づいてコンベアを停止させるコンベア停止手段とを備えてなる、炊飯釜搬送装置における緊急停止装置、および、このような緊急停止装置を備えた連続式炊飯機並びに炊飯システムを提供することによって解決するものである。
【0006】
本発明の緊急停止装置は、上記のとおり、コンベアによって搬送される炊飯釜の上方に、摺動可能に支持された少なくとも1本の線状部材と、その線状部材から下方に突出するように線状部材に取り付けられた1又は複数の検知突片とを備えているので、蓋が炊飯釜からずり落ちた状態で搬送されてきたり、ずり落ちないまでも、炊飯釜に大きく位置ずれした状態で装着されて搬送されてきた場合には、その蓋の一部が検知突片と接触し、コンベアの搬送力によって、検知突片をコンベア搬送方向に押すので、それに伴い線状部材が、コンベア搬送方向に摺動することになる。この線状部材の摺動が、摺動検知手段によって検知されると、その検知信号に基づいて、コンベア停止手段がコンベアを停止させるので、損害の発生若しくは拡大を速やかに防止することが可能となる。
【0007】
本発明の緊急停止装置においては、摺動検知手段は、線状部材の摺動を検知することができる限り、どこに設置されても良いが、線状部材の炊飯釜進行方向前方端近傍及び/又は後方端近傍に設けるのが好ましい。さらに、本発明の緊急停止装置においては、線状部材を、炊飯釜搬送方向後方に向かって付勢する付勢手段を備えているのが望ましい。
【0008】
本発明の炊飯釜搬送装置における緊急停止装置は、好適には、コンベアによって搬送される炊飯釜を加熱する加熱手段を備え、炊飯釜を搬送しつつ炊飯を行う連続式炊飯機に設置することができるが、炊飯釜をコンベアで搬送しながら、炊飯に必要な米投入、洗米、水浸漬、炊飯、蒸らしなどの工程を順次行うようにした炊飯システムにおけるいずれかの工程にも設置することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の炊飯釜搬送装置における緊急停止装置、及び、それを備えた連続式炊飯機並びに炊飯システムによれば、簡単な構造で、炊飯釜における蓋の落下や、周辺機器と接触する恐れがある蓋の位置ずれなどの異常を速やかに検知して、自動的にコンベアを停止させることが可能であるので、コンベアや周辺機器並びに蓋や炊飯釜の損傷若しくは損傷の拡大を防止することができるという優れた利点が得られる。また、線状部材の摺動検知手段は、線状部材の炊飯釜進行方向前方端及び/又は後方端に設ければ良いので、コンベアの搬送経路が長く、それに応じて線状部材の長さも長くならざるを得ない場合であっても、設置する摺動検知手段の数は少なくて済み、経済的である。加えて、例えば、コンベアの搬送経路が、加熱手段を設けた連続式炊飯機内部に存在する場合でも、摺動検知手段は連続式炊飯機の外部に設けることができるので、摺動検知手段の熱による劣化や損傷を考慮する必要がないという利点がある。さらに、線状部材を、炊飯釜搬送方向後方に向かって付勢する付勢手段を備える場合には、線状部材が振動その他の外乱によって不用意に摺動することが防止され、本発明の炊飯釜搬送装置における緊急停止装置の誤動作を防ぐことができるという利点も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明が図示のものに限られないことは勿論である。また、以下の説明では、本発明の炊飯釜搬送装置における緊急停止装置を、炊飯システムにおける連続式炊飯機に適用した場合を例に、本発明を説明するが、本発明の炊飯釜搬送装置における緊急停止装置の適用対象が、連続式炊飯機に限られるものでないことも言うまでもない。
【0011】
図1は、炊飯システムにおける連続式炊飯機の側面図、図2は、図1のA−A’の位置からみた正面図である。図1、図2において、1は連続式炊飯機を示し、2はチェーンローラーコンベア、3はその駆動ローラー、4、4、4は従動ローラーであり、5は、駆動ローラー4を回転駆動する駆動モーターである。6、6、6・・・は炊飯釜であり、7、7、7・・・はその蓋である。8は、チェーンローラー2の搬送面の下側に設置された加熱バーナ、9、9、9・・・は、燃焼ガスを外部に排気する排気ダクトである。なお、チェーンローラーコンベア2の搬送面とは、その上に、搬送される炊飯釜6、6、6・・・載置され、チェーンローラーコンベア2のローラーと当接しながら搬送されていく面である。
【0012】
図1に示す連続式炊飯機1においては、内部に米と炊飯水とを収容した炊飯釜6が、上流側の搬送装置10から、図中矢印で示すように、連続式炊飯機1内に搬入されると、下方から加熱バーナ8による加熱を受け、チェーンローラーコンベア2によって、連続式炊飯機1内を搬送されつつ、連続的に炊飯が行われ、炊飯が終了した炊飯釜6は、下流側の搬送装置11へと、搬出されることになる。
【0013】
図示の例では、炊飯釜6、6、6・・・を搬送するコンベアとして、チェーンローラーコンベアが用いられているが、用いることができるコンベアは、チェーンローラーコンベアに限られない。炊飯釜6、6、6・・・を搬送することができ、かつ、加熱バーナ8からの熱に耐え、加熱バーナ8からの熱が炊飯釜6、6、6・・・に伝達されるのを妨げることのないコンベアであれば、どのような構造のコンベアを用いても良く、例えば、単なるローラーコンベアであっても良いし、炊飯釜6、6、6・・・が鍔部を有するものである場合には、その鍔部の下面と当接して炊飯釜を搬送するチェーンコンベアであっても良い。なお、本発明の炊飯釜搬送装置における緊急停止装置が、連続式炊飯機以外の箇所に用いられる場合であって、炊飯釜を搬送するコンベアには、特段、耐熱性であるという要件も、下方からの熱が炊飯釜に伝達されるのを妨げることがないという要件も課されることがない場合には、炊飯釜6、6、6・・・を搬送するコンベアとしては、炊飯釜6、6、6・・・を搬送することができる限り、どのような構造のコンベアを用いても良く、上記のチェーンローラーコンベアやローラーコンベアに加えて、例えば、ベルトコンベアや、メッシュベルトコンベア、上述したチェーンコンベアなども使用することができる。
【0014】
また、図示の例では、炊飯釜6、6、6・・・を加熱する手段として、燃焼ガスを燃焼させる加熱バーナ8が用いられているが、加熱手段は、加熱バーナ8に限られず、炊飯を行うことができる限りどのような加熱手段を用いても良い。例えば、電磁誘導加熱、ニクロム線等による電気抵抗加熱、過熱蒸気加熱など、適宜の加熱手段を用いることができる。さらに、図示の例では、加熱バーナ8は、チェーンローラーコンベア2の搬送面の下側に設置されているが、加熱手段は、炊飯釜6、6、6・・・を有効に加熱して炊飯を行うことができる限り、どの位置に設置されても良い。例えば、搬送される炊飯釜6、6、6・・・の上方に設置しても、側方に設置しても良く、さらには、下方と上方、下方と側方、上方と側方等、種々に組み合わせた位置に設置しても良い。
【0015】
12は線状部材であり、線状部材12は、チェーンローラーコンベア2によって搬送される炊飯釜6、6、6・・・の上方に、炊飯釜6、6、6・・・の搬送経路(図示の例では、連続式炊飯機1の入り口から出口までの経路)に沿って、前方端及び後方端が、連続式炊飯機1の前後に若干飛び出す長さで配置されている。13、13、13・・・は、線状部材12の支持部材であり、線状部材12を、上記搬送経路に沿った方向に摺動可能に支持している。14、14、14・・・は、線状部材12から下方に突出するように、通常は等間隔で、線状部材12に取り付けられた検知突片である。
【0016】
線状部材12は、本発明の炊飯釜搬送装置における緊急停止装置が設けられる搬送経路(図示の例では、連続式炊飯機1内を通過する炊飯釜6、6、6・・・の搬送経路)をカバーするだけの長さを備えた部材であれば良く、その材質に特段の制限はないが、連続式炊飯機1内に配置される場合には、耐熱性を備えた材料から構成されるのが望ましく、例えば、ステンレス、鉄、銅、アルミなどの金属が好ましい。線状部材12の断面形状にも特段の制限はないが、支持部材13、13、13・・・によって摺動可能に支持され易い形状が好ましく、例えば、円形、楕円形などの断面形状を有しているのが好ましい。
【0017】
なお、図示の連続式炊飯機1においては、炊飯釜6、6、6・・・の搬送経路は直線状であるが、本発明の炊飯釜搬送装置における緊急停止装置は、搬送経路が直線状である搬送装置だけを対象とするものではなく、搬送経路が曲線状である搬送装置にも適用可能である。搬送経路が曲線状である場合には、線状部材12は、搬送経路に沿って曲がることができる可撓性を備えた材料によって構成するのが望ましい。そのような材料としては、例えば、上述したような金属材料であっても、薄板状としたものや、細線としてそれを束ねて線状部材12としたもの、さらには、可撓性のある合成樹脂、プラスチックなどが挙げられる。
【0018】
支持部材13、13、13・・・は、線状部材12を上記搬送経路に沿った方向に摺動可能に支持することができれば良く、設置する数や構造に特段の限定はない。例えば、図示の例では、支持部材13、13、13・・・は、線状部材12が貫通することができる孔を備えた板状部材から構成されている。支持部材13、13、13・・・における線状部材12の貫通孔内部には、線状部材12の摺動を滑らかに行わせるべく、例えば、摺動軸受機構を設けるようにしても良い。
【0019】
検知突片14、14、14・・・は、線状部材12から下方に突出するように線状部材12に取り付けられることができる限り、その形状や材質に特段の制限はない。図示の例では、検知突片14、14、14・・・は板状の長方形状をしているが、その水平断面形状は、四角形に限られず、円筒形であっても、楕円形であっても、三角形その他の多角形状であっても良く、場合によっては、線状部材12から下方に突出する垂直部分と、その垂直部分から炊飯釜の搬送経路後方に向かって突出する水平部分とを備えた形状であっても良い。ただし、後述するとおり、検知突片14、14、14・・・は、炊飯釜6の蓋7が当接した場合に、その力を受けて、それを線状部材12に伝達し、線状部材12を摺動させる必要があるので、少なくとも炊飯釜6、6、6・・・の搬送経路に沿った方向には剛性を備えた部材であることが必要である。
【0020】
なお、検知突片14、14、14・・・は、炊飯釜6の蓋7が当接した場合に、その力を線状部材12に伝達して線状部材12を摺動させることができるように線状部材12に取り付けられていれば良く、例えば、ネジや嵌合によって、線状部材12に着脱自在に取り付けられていても良い。検知突片14、14、14・・・が、線状部材12に着脱自在に取り付けられる場合には、その位置の変更や、検知突片14、14、14・・・の線状部材12から下方に突出した部分の長さの変更などを、容易に行うことができるという利点が得られる。
【0021】
線状部材12に取り付ける検知突片14、14、14・・・の取り付け位置や数にも特段の制限はないが、検知突片14、14、14・・・の取り付け間隔が短いほど、蓋7の落下或いは大きな位置ずれを速やかに、すなわち、チェーンローラーコンベア2の短い搬送距離の間に検知することができる。また、検知突片14、14、14・・・の下端と、その下をチェーンローラーコンベア2によって搬送される炊飯釜6の上端、すなわち、蓋7が正常に装着された状態での炊飯釜6の蓋7を含めた全体における上端までの距離を適宜の長さに設定することによって、検知される蓋7の位置ずれの程度を調整することができる。搬送される炊飯釜6、6、6・・・の大きさにも拠るが、検知突片14、14、14・・・の下端と、蓋7が正常に装着された炊飯釜6の全体の上端までの距離は、通常、2〜6cm程度、好ましくは3〜5cm程度に設定される。
【0022】
15aは、線状部材12の炊飯釜進行方向前方端近傍に設けられた摺動検知手段、15bは、線状部材12の炊飯釜進行方向後方端近傍に設けられた摺動検知手段である。摺動検知手段15a、15bとしては、線状部材12の炊飯釜搬送経路に沿った方向の摺動を検知することができる限り、どのような機構に基づく検知手段であっても良い。図示の例では、摺動検知手段15aは、リミットスイッチで構成されており、線状部材12の摺動を機械的に検知するものである。また、摺動検知手段15bは、近接センサーで構成されており、線状部材12の摺動を、静電容量の変化として検知するものである。これら以外にも、例えば、光電的、磁気的、電磁気的に線状部材12の摺動を検知しても良く、圧力の変化として検知するようにしても良い。
【0023】
また、図示の例では、摺動検知手段15a、15bは、線状部材12の炊飯釜進行方向前方端近傍及び後方端近傍の両方に設けられているが、どちらか一方に設けるだけでも良く、また、線状部材12の炊飯釜進行方向の途中に設けるようにしても良い。ただ、図示の例のように、連続式炊飯機1を対象とする場合には、連続式炊飯機1の内部は、高温に晒されるので、その内部に摺動検知手段を設けることは通常困難であるので、線状部材12の長さを、連続式炊飯機1から搬送経路の前方及び/又は後方に若干突出する長さとし、その外部にはみ出した前方部分及び/又は後方部分の端部の近傍に摺動検知手段15a及び/又は15bを設けるのが好ましい。
【0024】
16は、線状部材12を、炊飯釜搬送方向後方に向かって付勢する付勢手段であるバネであり、図示の例においては、線状部材12の後端部に取り付けられたフランジ部と、連続式炊飯機1の入り口部分に取り付けられている支持部材13との間に介挿されている。この付勢手段16によって、線状部材12は、常に、炊飯釜搬送方向後方に向かって付勢されているので、振動その他の外乱によって不用意に摺動することが防止され、本発明の炊飯釜搬送装置における緊急停止装置の誤動作を防ぐことができる。
【0025】
17はチェーンローラーコンベア2の停止手段であり、摺動検知手段15a及び/又は15bからの摺動検知信号を受けると、それに基づいて、駆動モーター5を停止させ、チェーンローラーコンベア2を停止させるものである。このとき、コンベア停止手段17は、聴覚的及び/又は視覚的に適宜の警報を発し、作業者に注意を促すとともに、連続式炊飯機1が組み込まれている炊飯システムの制御部に、必要に応じて、異常信号を送信する。
【0026】
図3、図4は、以上のような、本発明の炊飯釜搬送装置における緊急停止装置の動作を説明する図である。図3は、蓋7が、炊飯釜6の搬送途中に炊飯釜6から落下した状態を示している。この状態で、チェーンローラーコンベア2によって炊飯釜6が、図中矢印方向に尚も搬送されると、落下した蓋7の一部が、搬送方向の最も直近に位置する検知突片14に当接し、その力が線状部材12に伝達され、線状部材12が搬送方向前方に向かって摺動する。この摺動が摺動検知手段15aによって検知され、図示しないコンベア停止手段17が作動して、チェーンローラーコンベア2は直ちに緊急停止することになる。これによって、落下した蓋7が、チェーンローラーコンベア2のローラー間に挟まったまま搬送されて、チェーンローラーコンベア2を損傷させたり、その他の周辺機器に損害を与えることが最小限に抑えられる。
【0027】
同様に、図4は、蓋7が、炊飯釜6の搬送途中に大きく位置ずれし、このままでは、搬送途中に周辺機器と接触して損傷を与える恐れがある状態を示している。この状態で、チェーンローラーコンベア2によって炊飯釜6が、図中矢印方向に尚も搬送されると、位置ずれした蓋7の一部が、搬送方向の最も直近に位置する検知突片14に当接し、その力が線状部材12に伝達され、線状部材12が搬送方向前方に向かって摺動する。この摺動が摺動検知手段15aによって検知され、図示しないコンベア停止手段17が作動して、チェーンローラーコンベア2は直ちに緊急停止することになる。これによって、位置ずれした蓋7が、位置ずれしたまま搬送されて、周辺機器に損害を与えることが最小限に抑えられる。
【0028】
以上の説明では、線状部材12は、炊飯釜6、6、6・・・の搬送経路に沿って、搬送経路の中央部に1本だけ設置されていたが、線状部材12の数は1本に限られず、また、その設置位置も、搬送経路の中央部に限られない。例えば、図5に示すように、搬送経路の中央部ではなく、搬送経路の左右に1本ずつの線状部材12a、12bを設けるようにしても良いし、図6に示すように、搬送経路の中央部に加えて、左右に1本ずつ、合計3本の線状部材12a、12b、12cを設けるようにしても良い。
【0029】
以上の例においては、本発明の炊飯釜搬送装置における緊急停止装置を、連続式炊飯機に適用した場合について説明したが、本発明の炊飯釜搬送装置における緊急停止装置は、連続式炊飯機に限られず、炊飯釜を搬送するコンベアが設けられている箇所であれば、炊飯システムの他の箇所にも適用することが可能である。例えば、浸漬ライン、蒸らしライン、その他、各工程間を結ぶ搬送ラインにおいても、本発明の炊飯釜搬送装置における緊急停止装置を用いることによって、蓋の落下や位置ずれを検知して、コンベアを緊急停止させ、損害の発生若しくは拡大を有効に防止することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上説明したように、本発明の炊飯釜搬送装置における緊急停止装置によれば、簡単な構造で、蓋の落下や位置ずれを検知して、コンベアを緊急停止することができるので、炊飯釜への蓋の装着が不十分であった場合にも、損害の発生若しくは拡大を最小限に抑えることができる。したがって、本発明の炊飯釜搬送装置における緊急停止装置は、連続式炊飯機を含め、炊飯釜をコンベアによって搬送して炊飯に伴う各工程を行う炊飯システムにおいて、その安全性を高める上で極めて有用な発明であり、その産業上の利用可能性には実に多大のものがある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の炊飯釜搬送装置における緊急停止装置の一例を示す側面図である。
【図2】図1のA−A’断面図である。
【図3】本発明の炊飯釜搬送装置における緊急停止装置の動作の説明図である。
【図4】本発明の炊飯釜搬送装置における緊急停止装置の動作の説明図である。
【図5】本発明の炊飯釜搬送装置における緊急停止装置の他の一例を示す図である。
【図6】本発明の炊飯釜搬送装置における緊急停止装置のさらに他の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
1 連続式炊飯機
2 チェーンローラーコンベア
3 駆動ローラー
4 従動ローラー
5 駆動モーター
6 炊飯釜
7 蓋
8 加熱バーナ
9 排気ダクト
10 上流側搬送装置
11 下流側搬送装置
12 線状部材
13 支持部材
14 検知突片
15a、15b 摺動検知手段
16 付勢手段
17 コンベア停止手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯釜を搬送するコンベアと、コンベアによって搬送される炊飯釜の上方に、コンベアによる炊飯釜の搬送経路に沿って配置された少なくとも1本の線状部材と、当該線状状部材を搬送経路に沿った方向に摺動可能に支持する支持部材と、線状部材から下方に突出するように当該線状部材に取り付けられた1又は複数の検知突片と、当該線状部材の摺動を検知する摺動検知手段と、摺動検知手段からの摺動検知信号に基づいてコンベアを停止させるコンベア停止手段とを備えてなる、炊飯釜搬送装置における緊急停止装置。
【請求項2】
摺動検知手段が、線状部材の炊飯釜搬送方向前方端近傍及び/又は後方端近傍に設けられている請求項1記載の炊飯釜搬送装置における緊急停止装置。
【請求項3】
線状部材を、炊飯釜搬送方向後方に向かって付勢する付勢手段を備えている請求項1又は2記載の炊飯釜搬送装置における緊急停止装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の炊飯釜搬送装置における緊急停止装置と、当該緊急停止装置を構成するコンベアによって搬送される炊飯釜を加熱する加熱手段とを備えている連続式炊飯機。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の炊飯釜搬送装置における緊急停止装置及び/又は請求項4に記載の連続式炊飯機を備えている炊飯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−160316(P2009−160316A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2651(P2008−2651)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(599103122)精宏機械株式会社 (26)
【Fターム(参考)】