説明

炎感知器

【課題】 衝撃に強くかつ安価に構成できる炎感知器を得る。
【解決手段】 火災による炎から発生する赤外線を検出する素子を本体内に備える炎感知器において、該素子の前面に、バンドパスフィルタ、シリコンフィルタ、サファイアガラスの順に配置して前記本体の窓部を構成している。赤外線を検出する素子の前面に組合されるフィルタ構成につき、サファイアを外側として、シリコンフィルタ、バンドパスフィルタの順にしたので、窓部の強度に優れるとともに、バンドパスフィルタを小型にしてコストを低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炎感知器に関する。
【背景技術】
【0002】
炎感知器の従来例としては、例えば特開2003−227751号公報(特許文献1)に記載のものがある。同公報の炎感知器は、2つの受光素子が設けられるフィルタ保持台に透過する波長帯の異なる2つのバンドパスフィルタがそれぞれの素子の前に配置され、そのフィルタ保持台が組み込まれるケースの開口に、外側から第1、第2の遮光フィルタとしてシリコンおよびサファイアを材質とすることが開示され、それぞれ異なる特定の波長帯が2つの受光素子によって検出される。
【特許文献1】特開2003−227751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
炎感知器のフィルタとして、シリコンやサファイアを用いる場合、上記引用文献1のようにシリコンを外側に用いると、シリコンは衝撃に弱くて簡単に亀裂が入ってしまい、また、反射防止のために設けている膜が剥がれてしまうことがある。現場に設置された炎感知器は、外側が塵埃等によって汚れることもあり、清掃によって傷がついてしまうこともある。これら以外のバンドパスフィルタはその光学的な目的のための積層構造を持っており、さらに衝撃に弱いという特性がある。
【0004】
また、これらのうち、バンドパスフィルタはその製造工程から、サファイアやシリコンフィルタよりもさらに高価である。
【0005】
したがって、この発明では、衝撃に強くかつ安価に構成できる炎感知器を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の請求項1に係る炎感知器は、火災による炎から発生する赤外線を検出する素子を本体内に備える炎感知器において、該素子の前面に、バンドパスフィルタ、シリコンフィルタ、サファイアガラスの順に配置して前記本体の窓部を構成していることを特徴とするものである。
【0007】
また、この発明の請求項2に係る炎感知器は、バンドパスフィルタが素子の筐体に組み込まれているものである。
【0008】
また、この発明の請求項3に係る炎感知器は、素子の前面において前記素子の視野角に合う大きさでシリコンフィルタおよびサファイアガラスを保持するホルダが設けられているものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る炎感知器は、赤外線を検出する素子の前面に組合されるフィルタ構成につき、サファイアを外側として、シリコンフィルタ、バンドパスフィルタの順にしたので、強度に優れるとともに、バンドパスフィルタを小型にしてコストを低減することができる。また、この構成によって、素子にはバンドパスフィルタで設定した帯域の波長の赤外線のみを通過させ、サファイアとシリコンフィルタによってバンドパスフィルタに不要な波長帯域の光を照射させないようにすることができる。
【0010】
また、請求項2に係る炎感知器は、バンドパスフィルタが素子の筐体に組み込まれ、素子の近傍に配置されるので、バンドパスフィルタを小型化することができる。
【0011】
また、請求項3に係る炎感知器は、ホルダによって素子の視野角に適合した大きさで、サファイアおよびシリコンフィルタを配置でき、サファイアおよびシリコンフィルタを素子に近付けて小型化できるので、コストが低減できる。なお、この視野角は炎感知器の本体に形成される窓部の大きさによって決定されるが、その窓部よりも素子よりに各フィルタを配置することで、個々の面積を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1はこの発明を利用した炎感知器の構成を示す断面図である。
【0013】
図において、炎感知器1は、本体2と本体カバー3とからなるケース4を備えており、図示しない取り付けベースに結合されて天井面等に取り付けられる。
【0014】
ケース4内に収納されるプリント基板5には、受光素子8bが内蔵される素子筐体8が搭載され、さらに動作表示灯9と近赤外光を発光する汚損度測定用発光素子10が近接して搭載されている。この素子筐体8の最前面には、バンドパスフィルタ8aが設けられている。
【0015】
本体カバー3は、外殻山形でその内側に円錐形の凹部を有するように形成されるとともに、凹状の中央部に窓部となる開口部6が形成されている。この開口部6によって、受光素子8bの視野角が決定されている。さらに、本体カバー3は、キャップ嵌合部3aが形成されており、このキャップ嵌合部3aに嵌合されて、動作表示灯9と汚損度測定用発光素子10を収容する透明樹脂からなるキャップ11が設けられている。
【0016】
素子筐体8は、受光素子収容部13に収容され、例えば焦電体のような素子である受光素子8bが、本体カバー3の開口部6との相対位置に位置する如く、プリント基板5に搭載されている。なお、素子筐体8に設けられているバンドパスフィルタ8aは、特定の波長帯の赤外線のみを透過させるものであり、炎から放射されるCO2共鳴放射の波長帯の赤外線のみを通過させるために用いている。このバンドパスフィルタ8aは、シリコン等の基材に蒸着膜を積層したもので、外気の影響で剥離等が発生することから、耐環境性に弱い面がある。
【0017】
受光素子収容部13は、素子筐体8の周囲を囲み、かつ、受光素子8bとの相対位置にシリコンフィルタ14を固定する円筒状のホルダ15と、このホルダ15が収容され、素子筐体8内の受光部8aとの相対位置、かつ、ホルダ15の前面にサファイアガラス7を固定し、透明樹脂からなる円筒状のホルダカバー16とからなる。この受光素子収容部13は、ホルダ15とホルダカバー16とが係合され、ホルダ15がプリント基板5に係合されることで、プリント基板5に取付けられている。
【0018】
なお、シリコンフィルタ14の表面は、そのままでは赤外線の透過率が低いことから、その表面に反射防止のコーティングが行われることで、透過率を向上させている。
【0019】
これにより、炎感知器1において、受光素子8bが受光する光は、本体カバー3の開口部6からサファイアガラス7およびシリコンフィルタ14を透過することで、可視光等の余分な領域を遮断して、所定の赤外領域の光のみがバンドパスフィルタ8aに到達し、さらに、CO2共鳴帯の波長のみがバンドパスフィルタ8aを透過して、受光素子8bに到達することとなり、炎の発生を確実に感知することができるようになっている。
【0020】
また、ケース4の凹部の中心に配置されたホルダ15によりサファイアガラス7およびシリコンフィルタ14を受光素子8bの間近に配置しており、ケース4の表面部分から離れて小型化および低コスト化されている。
【0021】
キャップ11は、動作表示灯9用の第1の透光窓18を有する第1の収容室19と、汚損度測定用発光素子10用の第2の透光窓20を有する第2の収容室21とを備えている。この第2の透光窓20は、第2の収容室21の側壁21bに形成され、本体カバー3の開口部6に臨んで設けられている。
【0022】
動作表示灯9は、リード線部9bがプリント基板5に直付けされており、その発光部9aがキャップ11の第1の収容室19内に位置し、また、汚損度測定用発光素子10は、ソケット10cを介してプリント基板5に搭載されており、その発光部10aが第2の収容室21内に位置してそのリード線部10bが折り曲げられ、汚損度測定用受光素子22と対向する向きとされている。
【0023】
汚損度測定用発光素子10が収容される第2の収容室21には、発光部ホルダ21aが設けられており、側壁21bおよび傾斜面21cが形成されている。側壁21bが発光部10aの前面側に位置し、かつ、傾斜面21cが発光部10aの背面側に位置することで、発光部10aの位置を規制している。
【0024】
汚損度測定用受光素子22は、プリント基板5に搭載され、リード線部22bが折り曲げられて、その受光部22aが汚損度測定用発光素子10を向くようにされている。そして、汚損度測定用発光素子10からの光は、第2の透光窓20、サファイアガラス7、ホルダ15の切り欠き部15a、ホルダカバー16の第3の透光窓16aを順次通過して、汚損度測定用受光素子22に受光される。これにより、外部に面しているサファイアガラス7の光の透過度を測定でき、汚損の程度を知ることができる。
【0025】
この実施形態における炎感知器1は、火災による炎から発生する赤外線を検出する受光素子8bを、本体としてのケース4内に備える炎感知器1において、受光素子8bの前面に、バンドパスフィルタ8a、シリコンフィルタ14、サファイアガラス7の順に配置してケース4の開口部6のような窓部を構成している。
【0026】
そして、サファイアガラス7を外側にして、強度的に弱いシリコンフィルタ14やバンドパスフィルタ8aの順に配置したので、外側からの強度に優れるフィルタ構成であるとともに、バンドパスフィルタを小型にしてコストを低減することができる。また、受光素子8bにはバンドパスフィルタ8aで設定した帯域の波長の赤外線のみを通過させ、サファイアガラス7とシリコンフィルタ14とによってバンドパスフィルタ8aに不要な波長帯域の光を照射させないようにすることができる。
【0027】
また、この炎感知器1は、バンドパスフィルタ8aが素子筐体8に組み込まれている。この構成によって、受光素子8bの近傍に配置されるので、バンドパスフィルタ8aを小型化することができる。
【0028】
また、この炎感知器1は、受光素子8bの前面において受光素子8bの視野角に合う大きさでシリコンフィルタ14およびサファイアガラス7を保持するホルダ15が設けられているものである。このホルダ15によって受光素子8bの視野角に適合した大きさで、サファイアガラス7およびシリコンフィルタ14を配置でき、シリコンフィルタ14を受光素子8bに近付けてサファイアガラス7よりも小型化できるので、コストが低減できる。なお、この視野角は炎感知器1のケース4に形成される窓部としての開口部6の大きさによって決定されるが、その開口部6よりも受光素子8bよりに各フィルタ部材を配置することで、個々の面積を小さくすることができる。
【0029】
なお、この実施形態では、受光素子8bが一つの場合について説明したが、異なる波長を検出するように複数の受光素子を設ける場合であってもよく、炎を判別するためのアルゴリズムには各種の手法が採用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の一実施形態を示す断面図。
【符号の説明】
【0031】
4 ケース(本体)
6 開口部(窓部)
7 サファイアガラス
8a バンドパスフィルタ
8b 受光素子
14 シリコンフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災による炎から発生する赤外線を検出する素子を本体内に備える炎感知器において、該素子の前面に、バンドパスフィルタ、シリコンフィルタ、サファイアガラスの順に配置して前記本体の窓部を構成していることを特徴とする炎感知器。
【請求項2】
バンドパスフィルタが素子の筐体に組み込まれている請求項1の炎感知器。
【請求項3】
素子の前面において前記素子の視野角に合う大きさでシリコンフィルタおよびサファイアガラスを保持するホルダが設けられている請求項1の炎感知器。

【図1】
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【公開番号】特開2006−39736(P2006−39736A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−215762(P2004−215762)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】