説明

炭化水素からの合成ガス生成のためのプロセス及びバーナー

炭化水素原料の部分酸化のためのバーナー(10)は、燃焼室及び予混合室(E)と、燃料及び酸化剤を燃焼室へ供給するための複数の環状管路とを備え、前記複数の環状管路は、燃料のための少なくとも第1の環状管路と、酸化剤のための少なくとも第2の同軸状の環状管路とを備え、予混合室(E)への層状の流体を生成する。好ましい実施形態において、バーナーは、酸化剤又は燃料のための2本の他の管路(2及び3)にそれぞれ包囲された、燃料又は酸化剤のための環状管路(1)を有する。更なる実施形態において、起動バーナー(20)がメインプロセスバーナーと一体化され、前記起動バーナーは、燃焼室(L)と、メインハブ(G)と旋回翼(H)とを有し、圧力容器/バーナーアセンブリの機械的な操作を必要としない自動制御システムによる実行が可能な起動からプロセス段階への円滑な移行を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煤の生成がごくわずかである、炭化水素の部分酸化のためのバーナーに関する。該バーナーは、部分酸化(POX)又は炭化水素の自己熱改質による可燃性の合成ガス(合成ガス)の生成のためのバーナーとして特に適している。
【背景技術】
【0002】
合成ガスの生成は、高圧・高温条件、及び高密度燃料条件、つまり、燃料の完全燃焼に必要な量より少ない量しか酸化剤が供給されない条件の下で行われる。合成ガスは、例えば、水素、一酸化炭素、二酸化炭素及びわずかなメタン等からなる混合ガスである。部分酸化又はPOXプロセスは、高温で、かつ、触媒床を使用しないことを特徴とし、他方、ATRプロセスでは温度が低く、触媒床が圧力容器の下部に設けられる。
【0003】
酸化剤流は酸素を含む任意の流体でよく、例えば、空気、酸素富化空気又は純酸素、蒸気、二酸化炭素、又はそれらの任意の混合物を挙げることができる。以下の説明において言及される酸化剤流は、例示の目的で挙げられるものであり、異なる酸化剤流を用いてもよい。燃料流は、気体又は液体の炭化水素原料(HCF)、あるいは燃料/蒸気混合体、あるいは炭化水素を含む任意の他の混合体でよい。例えば、燃料流は天然ガス又は軽質炭化水素でよい。
【0004】
火炎中の煤の形成は、燃料の熱分解による煤前駆体の形成と水酸基OHによるこれら前駆体の酸化との競合の結果として生ずる。POX及びATRの典型である高密度燃料の条件下では、OHの濃度が酸素濃度よりかなり大きく、酸素濃度は通常、OH基の濃度より一桁小さい。そして、前記OH基は、前駆体の酸化分解によって煤形成を抑制する。
【0005】
EP−A−0997433は、煤形成を低減するように設計された、炭化水素の部分酸化のためのバーナーを開示しており、これは、酸化剤のための円形の管路を形成する円筒状導管と、酸化剤の管路の周囲の環状の燃料供給路を形成する第2の導管と、混合ゾーンとを備えている。
【0006】
燃料流は、内面で酸化剤に接し、外面でバーナー先端部に接している。酸化剤は、こうして燃料層の中を拡散することができ、燃焼室における熱い再循環合成ガスとの混合に先立って、ある程度の予混合が行われる。先端部は、燃料層の外面で酸化剤の最低濃度が得られるように設計されている。燃料流の外面に少量の酸化剤を供給することにより、この設計は、核形成より早く煤前駆体を除去することにより煤形成を効果的に低減する水酸基源を提供する。
【0007】
しかし、ここで考慮されるバーナーは絶え間ない改善が必要であり、広範囲の炭化水素製品から低公害燃料を得るための有望なプロセスである、炭化水素の部分酸化(POX)から合成ガスを生産する分野で特に必要である。
【0008】
従来技術のバーナーが高容量で作られ、且つ/又は、水素を含有する軽質炭化水素原料で使用されるとき、いくつかの技術的な限界が生ずる。酸化剤及び燃料流の圧力降下と燃料の環状管路の固定サイズが与えられたとき、酸素ノズルのサイズは負荷の平方根に比例し、燃料管路の平均直径は負荷に比例する。それゆえ、高い負荷は、空気管路と燃料管路との距離が大きいことを意味し、予混合処理の効率を低下することになる。さらに、圧力降下と燃料の環状管路の平均直径が与えられたとき、燃料層の厚みも負荷に比例する。これは、酸化剤がより厚い燃料層に浸透しなければならないことを意味し、その結果、予混合が一層困難になると共に、燃料の一部が燃焼室で再循環ガスの一部と直接混合されることを意味する。燃料と酸化剤との予混合が不十分になると、煤の形成が増加する。これらの欠点は、長いヘッドを使用することによって低減することが可能であるが、高容量バーナーにとって実用的ではない。
【0009】
従来技術の別の限界は、起動段階に関連する。起動は通常、反応装置の耐熱性の内張りを加熱することによって行われ、このときバーナーは、補助起動バーナーの助けにより約1000℃から1200℃で運転される。前記補助バーナーは、全起動段階の間、プロセスバーナー又はその内側部分の代替となる。バーナー又はその一部の代替は、危険な運転となる可能性を有し、プロセスバーナーと反応装置との接続が密であることを適切にチェックすることは困難である。内張りの温度が1000℃以下に下がる前に漏洩テストを行う時間が無いからである。適切な漏洩テストをしないで高圧運転を行うことは、危険の可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の元となる技術的な課題は、上記のような大規模及び/又は軽質炭化水素の使用に関係する限界を乗り越えて少ない煤形成を維持するために、炭化水素から合成ガスを生成するためのバーナーの燃焼室の上流における燃料と酸化剤との予混合処理の効率を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、限定はしないがPOXバーナー及びATRバーナーに適しており、通常は煤形成に晒されることが多い条件下で運転される。
【0012】
本発明の元となる着想は、少なくとも2本の同軸状の環状管路、すなわち、燃料流のための第1の管路、及び酸化剤流のための第2の管路を提供することであり、前記少なくとも2本の環状管路は、放射方向に連続しており、つまり、互いに接近しており、予混合室に開口している。燃料流又は酸化剤流は、前記少なくとも2本の環状管路の1本に供給され、酸化剤流又は燃料流はそれぞれ他の管路に供給され、バーナーの運転中、層になった燃料/酸化剤流が予混合室へ供給される。
【0013】
従って、この目的は炭化水素原料の部分酸化のためのバーナーによって達成され、このバーナーは燃料管路及び酸化剤管路と予混合室を備え、バーナーは燃料及び酸化剤の供給のための複数の環状管路を備えていることを特徴とし、前記複数の環状管路は、燃料流を供給するための少なくとも第1の環状管路と、酸化剤流を供給するための少なくとも第2の環状管路とを備え、前記第1及び第2の環状管路は同軸状であり、且つ、放射状に互いに連続しており、前記予混合室に開口している。
【0014】
前記環状管路は、バーナーの放射方向において、放射状に互いに連続している。2本の管路は、例えば円筒状の壁によって分けられていてもよい。この特徴は、予混合室における層状の流体を生み出し、これは、環状の層(例えば燃料)とそれに隣接する他の環状の層(例えば酸化剤)からなる。
【0015】
本発明の更なる側面は、二層の酸化剤で燃料流を囲むこと、あるいは逆の構成であり、これによって、バーナー内でのより効果的な予混合を許容し、燃焼室における燃料と再循環合成ガスとの直接混合を防ぐことができる。
【0016】
従って、本発明の好ましい実施形態において、バーナーは3本の同軸状の環状管路を備え、前記3本の管路は、内側管路と外側管路との間の中央管路を備え、前記予混合室に開口している。中央管路は燃料の投入部に接続されて使用され、内側管路及び外側管路は酸化剤の投入部に接続されて使用され、あるいは逆に接続されて使用される。それゆえ、バーナーの運転中は、燃料流及び酸化剤流の一方が中央環状管路に供給され、前記燃料流及び酸化剤流の他方が内側管路及び外側管路に供給される。
【0017】
第1の配列では、中央環状管路は燃料投入部に接続され、燃料流が供給される。燃料管路の周囲の内側及び外側環状管路の両方が酸化剤流を運ぶ。第2の配列では、酸化剤が中央環状管路に供給され、内側管路及び外側管路が燃料投入部に接続されて、燃料管路として使用される。それゆえ、予混合室における層状の流体は、内側及び外側の環状の酸化剤流に包囲された環状の燃料流を有し、あるいは、2つの燃料流の間に包囲された酸化剤流を有する。
【0018】
前記燃料及び酸化剤の環状管路は、好ましくは分離した投入部を備える。つまり、それらは、別々の組成を有する流体が供給され得る。蒸気と酸素のように異なる酸化剤流が、本発明の同じ実施形態で使用され得る。酸化剤流は、少なくとも2本の使用可能な環状管路に供給される。例えば、前述のような3本の管路を有する実施形態において、内側及び外側環状管路は、二つの異なる酸化剤を含む流体を受けることができる。例えば、酸素/蒸気混合体を一方の管路で受け、蒸気を他方の管路で受け、燃料は中央管路を通る。
【0019】
二つ以上の酸化剤及び燃料流は、混合処理を促進するために入れ替えることができ、こうして予混合室の必要なサイズを低減することができる。混合を促進するために、又は二つ以上の酸化剤流又は燃料流を収容するために、一続きの同軸状の環状管路をバーナーに設けてもよい。それゆえ、本発明の更なる側面において、バーナーは複数の同軸状の連続した環状管路を有する。好ましくは、前記管路は燃料投入部及び少なくとも一つの酸化剤投入部に交互に接続され、複数の同軸状の交互の酸化剤流及び燃料流がバーナーの予混合室に供給される。上記のように、異なる酸化剤が使用可能な複数の環状管路に収容され得る。
【0020】
同軸状の環状管路の数は3つに限定されず、理論上は任意の数に増加することができる。
環状管路は、好ましくは同軸状の環状の本体によって形成される。3本の環状管路の実施形態を例にとると、バーナーは3つの主な構成要素、つまり、内側本体、中間本体及び外側本体を有し、前記燃料及び酸化剤の環状管路を構成している。1又は複数の前記本体が、冷却流体のための内側管路と共に形成され得る。中央管路は中間本体の内側に形成され、同じ中間本体は、内側流路の外面と外側流路の内面を構成している。
【0021】
本発明の実施形態では、環状管路の出口において、予混合室に予混合ノズルが続く。前記ノズルから出た流体は燃料/酸化剤の混合体であり、これは前記ノズルから離れた後、熱い再循環燃焼ガスと混合する。
【0022】
なお、燃料及び酸化剤のための環状管路は、本発明によれば、バーナーの軸の周囲に中央空洞領域を形成する。本発明の更なる側面によれば、起動バーナーは前記空洞領域に収容される。より好ましくは、内側本体に囲まれた空洞領域の部分は起動バーナーを収容し、残りの部分が燃焼室を形成している。起動バーナーは、好ましくは旋回翼を有し、これが回転動作を部分的な予混合流に与え、前記燃焼室における再循環動作を形成すると共に、安定した火炎を得ることができる。
【0023】
好ましい実施形態において、起動バーナーはメインバーナーと一体化されている。メインバーナーは、燃焼室を形成する第1の部分と、前記第1の部分より小さい直径を有する第2の部分とを有する表面を有する環状の本体を備え、前記第2の部分は起動バーナーを収容するように形作られていると共に、酸化剤の管路及び起動バーナー自身の予混合流路の外面を形成している。
【0024】
本発明によって達成される主な利点は、燃料/酸化剤の混合流の層配列である。3本の環状管路の実施形態を例にとると、本発明は、一つの構成要素、例えば燃料が他の構成要素、例えば酸化剤によって完全に包囲されている構成を提供する。それゆえ、ある程度の予混合がバーナー自身の内部で行われ、酸化剤が無い状態での燃料と再循環された熱い合成ガスとの直接混合が防がれる。環状管路、下流の予混合室及びノズルの適切なサイズ設定によって、燃料/酸化剤の予混合処理の正確な制御が得られる。本発明によれば、層状の酸化剤及び燃料の望ましい分布が事実上達成され、これがノズルを離れた後に熱い再循環ガスと混合される。
【0025】
実際の運転上の観点から、酸化剤及び燃料の予混合のレベルの容易な制御によって利点が得られ、熱い再循環合成ガスとの混合の初期部分における煤形成を低減/回避することができる。
【0026】
別の利点は、下記の理由により、増加する負荷にバーナーを対応させることが容易である点にある。
i)与えられた圧力降下に対して、燃料及び酸化剤のスロット平均直径、つまりバーナーノズルの平均直径及び厚みが、同じ機能の負荷で測られる。
ii)室及びノズルの設計パラメータを適切に選択することにより、与えられたバーナー直径及び圧力降下に対して、望ましいレベルの予混合が維持される。
【0027】
これらの利点は、燃料及び酸化剤のための2本の同軸状の管路を有する簡素化された設計でも少なくとも部分的に得ることができ、この設計では少し効率が低下するが、3本(以上)の環状管路を有する設計に比べて安価である。上述のように、本発明の実施形態は、予混合室内で交互に入れ替わる燃料層/酸化剤層を有する多層状の流体を生成することが可能である。
【0028】
本発明の好ましい側面による一体化された起動バーナーによれば、起動運転から処理運転への自動的で円滑、且つ素早い移行が可能になる利点が得られる。起動運転から処理運転への円滑な移行は、バーナー又は圧力容器に対する手動の操作、あるいは容器の上部に対する作業を必要としない。さらに、プロセスバーナー設置のためのすべてのフランジ接続が常温圧力容器に必要であり、すべての接続部及びガスケットを常温条件でテストできる。
【0029】
本発明の一側面は、炭化水素原料から合成ガスを生成するプロセスにも関連している。
より詳しくは、本発明の一側面は、炭化水素及び少なくとも一つの酸化剤流を含む燃料流がバーナーに供給され、燃焼室の上流における前記バーナーの予混合室で部分的に又は完全に予混合されるプロセスであって、該プロセスは以下の特徴を有する。
−前記燃料流及び酸化剤流の一方が、少なくとも第1の環状管路を介して前記バーナーの前記予混合室に供給され、
−前記燃料流及び酸化剤流の他方が、少なくとも、第1の環状管路に連続する更なる環状管路を介して、予混合室に供給され、
−前記予混合室において、燃料及び酸化剤の層状の分布が形成される。
【0030】
好ましくは、前記燃料流及び酸化剤流の一方が、第1の環状管路を介して予混合室に供給され、前記燃料流及び酸化剤流の他方が第1の環状管路を包囲する内側管路及び外側管路を介して予混合室に供給され、前記層状の分布が得られる。
【0031】
プロセスの一実施形態において、燃料流は第1の管路に供給され、酸化剤は周囲の前記内側管路及び外側管路に供給される。内側管路及び外側管路は同じ酸化剤流が供給され、あるいは異なる酸化剤流が供給される。それゆえ、本発明は以下のようなプロセスをも提供する。つまり、第1の酸化剤流が内側管路に供給され、第2の酸化剤流が燃料管路を包囲する外側管路に供給され、前記第1の酸化剤流及び第2の酸化剤流が互いに異なり、一方は例えば酸素であり、他方は蒸気である。別の実施形態では、燃料が内側管路及び外側管路に供給され、中央管路を流れる酸化剤を包囲している。
【0032】
燃料及び酸化剤を多層同軸状の環状管路を介して予混合室に供給することも可能であり、燃料流及び酸化剤流を交互に入れ替えることにより、交互に入れ替わる燃料流及び酸化剤流によって形成された多層状の分布を得ることができる。
【0033】
二層のみの簡素化された実施形態も可能である。一層は燃料であり、他の一層は酸化剤であり、予混合室内で層状の流体を形成する。
【0034】
すべての実施形態において、炭化水素原料を他の非可燃性流と混合してもよく、これにより前記燃料流が形成される。1又は複数の異なる酸化剤を使用してもよい。燃料は、好ましくは天然ガスであるが、他の燃料を用いることもできる。
【0035】
更なる特徴と利点は、添付図面を参照しながら行われる以下の実施形態の実施例の説明から一層明らかになるであろう。この実施例の説明は、制限的なものではない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、第1の実施形態における、本発明によるバーナーの概略断面図である。
【図2】図2は、第2の実施形態によるバーナーの概略断面図である。
【図3】図3は、第3の実施形態によるバーナーの概略断面図であり、該バーナーは一体化された起動バーナーを有する。
【図4】図4は、一体化された起動バーナーを有する別の実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1に示すバーナー10は、三つの主な構成要素、つまり、略円筒状で且つ同軸状の本体A、B及びCを有する。参照番号11はバーナー10全体の軸線を示している。
【0038】
中間本体Bは、実質的に二つの円筒状且つ同軸状の壁部B及びB、例えば同軸状のパイプを備え、これらが軸線11の周囲の環状管路1を形成している。
【0039】
内側本体Aは二重壁構造を有し、その円筒状の壁A及びAが冷却媒体のための室Wを形成している。同様に、外側本体Cは壁部C及びCで形成され、これらが冷却媒体のための室Wを形成している。室W及びWの冷却媒体は通常は水である。
【0040】
更に、環状管路2及び3は、管路1の周囲において、中間本体Bと本体A及びCとの壁部間に形成されている。すなわち、管路2は壁部Bと壁部Aとの間に形成され、管路3は壁部Bと壁部Cとの間に形成されている。バーナー10は同軸状の環状管路1、2及び3を備え、中央管路1の内側及び外側は管路2及び3でそれぞれ包囲されている。
【0041】
本体A及びCはそれぞれ端部領域A及びCを有し、これらによって、管路1、2及び3の出口の下流に予混合室Eの壁部と、前記室Eに連通する予混合ノズルFとが形成されている。管路1、2及び3は、前記予混合室Eに開口している。
【0042】
図2は、別の実施形態に関連し、本体A及びCは単一壁であり流体による冷却はされない。また、この実施形態では、管路1は管路2及び3に包囲され、管路2は壁部Bと本体Aの外面との間にあり、管路3は壁部Bと本体Cの内面との間にある。管路1から3は、ノズルFに連通した予混合室Eに等しく開口している。
【0043】
図1又は図2の実施形態の選択は、運転条件と材料による。つまり、例えば、Ni/Cr合金又はセラミックのような高温に対して耐性のある材料を採用すれば、図2の非冷却の実施形態を使用することが可能である。
【0044】
環状管路1から3は、放射方向に連続していることが好ましい。与えられた実施例において、各環状管路は単一壁によって隣の管路から分離されている。壁部Bは内側管路2を管路1から分離し、壁部Bは管路1を最も外側の管路3から分離している。
【0045】
環状管路1、2及び3は、バーナーの選択された運転条件に従って、バーナー10(図示せず)の燃料投入部及び酸化剤投入部に接続されている。好ましい運転の例を以下に示す。
a)燃料流、例えば天然ガスが環状管路1に供給され、酸化剤が管路2及び3に供給される。あるいは、
b)酸化剤が管路1に供給され、燃料流が管路2及び3に供給される。
【0046】
燃料流は天然ガスのような燃料と蒸気のような非可燃性流との混合体でよく、酸化剤は酸素、蒸気、二酸化炭素、又はそれらの任意の混合体でよい。
【0047】
しかしながら、更なる構成が可能である。例えば、酸素及び蒸気を管路1に供給し、燃料を管路2に供給し、蒸気又はCOを管路3に供給してもよい。あるいは、それらの任意の組合せでもよい。燃料を管路3に供給し、蒸気を管路1に供給し、酸素を管路2に供給してもよい。これらの例は、限定を目的とするのではなく、任意のスロット番号の順列と構成が可能である。管路1、2及び3は、好ましくは分離した投入部を有し、別々の流体を受けることができる。例えば、選択肢a)として二つの異なる酸化剤を受け、選択肢b)として、二つの異なる燃料流を受けることができる。
【0048】
実施例として、3本の環状管路の実施形態を述べたが、もっと多くの流体を受けるために環状管路の数を増加してもよい。本発明によるバーナーは本体A、B及びCのようなより多くの構成要素、そして流体及び酸化剤のためのより多くの環状管路を有することができる。
【0049】
本発明の簡素化された実施形態では、バーナー10は燃料流及び酸化剤流のための同軸状の環状管路を2本だけ備えている。例えば、管路1と管路2、あるいは管路1と管路3である。前記2本の環状管路は、互いに接近し、予混合室Eに開口し、燃料投入部及び酸化剤投入部にそれぞれ接続されている。
【0050】
バーナー10は、引用文献EP0997433に開示されているように、例えばガス発生器の反応室の上面に設置することができる。
【0051】
使用中、環状管路1から3はバーナー10の燃料投入部及び酸化剤投入部に連通し、例えば天然ガス及び空気のような燃料流及び酸化剤流を受ける。管路1から管路3の配列によって、層状の流体が室Eに得られ、これは、酸化剤層に近い燃料層を少なくとも含んでいる。様々な実施形態において、前記層状の流体は、二つの酸化剤層に包囲された燃料からなり、又はその逆でもよい。あるいは、多層の交互に入れ替わる燃料流及び酸化剤流であってもよい。この層状の流体は、一定の予混合効果を与え、下流の燃焼室から来る再循環ガスとの直接混合が防がれる。
【0052】
環状管路の放射状に連続した配列、又は環状管路1から3、つまり、環状管路が放射方向に接近し、それぞれの界面において、円筒状の壁B又はBのみで分離されている事実によって、上述の燃料/酸化剤流の層状の分布が可能になる。
【0053】
図3の変形として、バーナーに起動バーナー20が設けられ、これは、メインハブGと、それに取り付けられた旋回翼H及び点火装置Qを備えている。内側本体Aの内部の空洞領域の一部が前記起動バーナー20を収容し、残りの部分が燃焼室Lを形成している。前記一体化された起動バーナー20を設けたことにより、起動段階が容易かつ安全に行われる。
【0054】
示された実施形態をより詳細に説明すると、本体Aの内面Aは燃焼室Lの壁部であり、より小さい直径を有する中央部分Aを備え、起動バーナー20のメインハブGの周囲に酸化剤の管路4を形成している。燃料、例えば天然ガスは、メインハブGとパイプPとの間の小さな管路5の中を流れる。前記燃料管路5の出口の下流において、予混合用の環状の流路Mが壁部AとハブGとの間に設けられ、燃料流及び酸化剤流が管路5及び管路4からそれぞれ流入する。
【0055】
起動運転では、起動バーナー20の燃料流及び酸化剤流が流路Mで混合され、部分的に混合された予混合流を生成する。旋回翼Hはバーナーの軸線11周りの回転動作を前記予混合流に与え、燃焼室L内における循環流を生成する。旋回翼Hから前記部分的に混合された予混合流に与えられた旋回動作によって流体は放射状に広がり、流路Mから壁部Aによって形成されたより大きな燃焼室Lへの広がりに続き、室Lにおける再循環動作を形成する。混合体は、点火装置Q、例えば、ハブG内に装着された点火器によって点火される。ハブGは、炎検出装置のための光学的なアクセスをも可能にしている。バーナーの起動段階からプロセス段階への移行は、起動バーナー及びプロセスバーナー又は反応装置容器に対して人が直接操作することのない自動制御システムによって行われる。
【0056】
なお、本発明は、旋回翼Hによって引き起こされる再循環及び旋回動作に起因する火炎固定効果を提供する。火炎固定効果によって、起動段階の後、起動バーナー20の点火器を停止することができる。従来技術と比較して、起動がより迅速に且つ安全に行われる。
【0057】
図3は、起動バーナー20がメインバーナー10と完全に一体化されている実施形態を示し、本体Aの内面Aは、バーナー10の構造部分であって、環状管路4と予混合室Mの外面を形成し、旋回翼Hを収容している。簡素化された、部分的に一体化された実施形態が図4に示されており、起動バーナー20は、内側本体Aに直接嵌め込まれるのではなく、前記本体Aと同軸状の別のパイプ要素Nに嵌め込まれている。この実施形態は、本体Aの構造を簡素化し、その内面Aは、起動バーナー20と一体化される小径部Aを有するように形成する必要がない。しかしながら、図3の完全に一体化された実施形態は、二重壁構造の本体Aが流路及び旋回翼Hを直接冷却する点で好ましい。他方、図4の構成は、各部H、M及びNを間接的に冷却するだけである。
【0058】
処理運転中に起動バーナー20を熱い合成ガスから保護する目的のために、管路4内の蒸気の流速は、最小限の安全な流速に維持されることが好ましい。この最小限の安全な流速は、合成ガスが起動バーナーに入ることを防止し、起動バーナーの過熱及びメタルダスティングを防止する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素原料の部分酸化のためのバーナー(10)であって、
燃料及び酸化剤の管路と予混合室(E)とを備え、
バーナーは、燃料及び酸化剤の供給のための複数の環状管路を有することを特徴とし、
前記複数の環状管路は、燃料流を供給するための少なくとも第1の環状管路(1)と、酸化剤流を供給するための少なくとも第2の環状管路(2;3)とを有し、
前記環状管路は、同軸状で、且つ、放射方向に互いに連続し、前記予混合室(E)に開口している、バーナー。
【請求項2】
請求項1記載のバーナー(10)であって、
前記複数の環状管路は、内側管路(2)と外側管路(3)との間に中央環状管路(1)を備え、
前記中央管路、内側管路及び外側管路は前記予混合室(E)に開口し、
バーナーの運転中に、中央環状管路(1)には燃料流及び酸化剤流の一方が供給され、前記内側管路及び外側管路(2、3)には前記燃料流及び酸化剤流の他方が供給されることを特徴とする、バーナー。
【請求項3】
請求項1又は2記載のバーナーであって、
前記環状管路(1、2、3)の少なくとも一部は、分離した投入部を有し、異なる組成の流体が供給され得る、バーナー。
【請求項4】
先行する請求項のいずれか1項記載のバーナーであって、
環状管路は、同軸状の環状の本体(A、B、C)の壁部で形成されている、バーナー。
【請求項5】
請求項4記載のバーナーであって、
バーナーの前記本体(A、B、C)のうちの少なくとも一つは、冷却媒体のための内側管路を有するように形成されている、バーナー。
【請求項6】
請求項4又は5記載のバーナーであって、
三つの主な構成要素、つまり、内側本体(A)、中間本体(B)及び外側本体(C)を備え、燃料及び酸化剤のために、中央環状管路(1)と、前記中央管路(1)の周囲の内側環状管路(2)及び外側環状管路(3)とが形成されている、バーナー。
【請求項7】
先行する請求項のいずれか1項記載のバーナー(10)であって、
前記バーナー(10)の中央軸領域に起動バーナー(20)を更に備え、
中央軸領域は燃料及び酸化剤のための前記環状管路(1−3)に包囲され、
前記起動バーナー(20)は部分的に又は完全にメインバーナー(10)と一体化されている、バーナー。
【請求項8】
請求項7記載のバーナーであって、
前記起動バーナー(20)は、点火装置(Q)を収容するメインハブ(G)と旋回翼(H)とを備え、
酸化剤の管路(4)は前記メインハブ(G)の周囲に形成され、
燃料管路(5)はメインハブ(G)とパイプ(P)との間に形成され、
起動バーナー(20)は前記酸化剤及び燃料管路(4、5)の出口に予混合流路(M)を有し、
旋回翼(H)は前記予混合流路(M)の下流にある、バーナー。
【請求項9】
請求項8記載のバーナーであって、
前記バーナーの燃焼室(L)を形成する第1の部分(A)と、前記第1の部分より小さい直径を有する第2の部分(A)とを有する表面を有する環状の本体(A)を備え、
前記第2の部分は、起動バーナー(20)を収容するように形成され、前記酸化剤の管路(4)及び予混合流路(M)の外面を形成している、バーナー。
【請求項10】
炭化水素原料から合成ガスを生成するためのプロセスであって、前記炭化水素を構成する燃料流と少なくとも一つの酸化剤流とがバーナー(10)に供給され、燃焼室の上流で前記バーナーの予混合室(E)において部分的に又は完全に予混合され、
少なくとも第1の環状管路(1)を介して前記燃料流及び酸化剤流の一方がバーナー(10)の前記予混合室(E)に供給され、
第1の環状管路(1)と同軸状で且つ放射状に連続的な少なくとも更なる環状管路(2、3)を介して、前記燃料流及び酸化剤流の他方が前記予混合室(E)に供給され、
前記予混合室(E)内で燃料及び酸化剤の層状の分布が形成される
ことを特徴とするプロセス。
【請求項11】
請求項10記載のプロセスであって、
バーナー(10)の第1の環状管路(1)を介して前記燃料流及び酸化剤流の一方が前記予混合室(E)に供給され、
第1の環状管路(1)を包囲する内側管路(2)及び外側管路(3)を介して前記燃料流及び酸化剤流の他方が予混合室(E)に供給される
ことを特徴とするプロセス。
【請求項12】
請求項11記載のプロセスであって、
燃料流が第1の管路(1)に供給されると共に酸化剤が前記内側管路(2)及び外側管路(3)に供給され、あるいは、酸化剤が第1の管路(1)に供給されると共に燃料流が前記内側管路(2)及び外側管路(3)に供給される、プロセス。
【請求項13】
請求項12記載のプロセスであって、
第1の酸化剤を含む流体が内側管路(2)に供給され、
第2の酸化剤を含む流体が第1の燃料管路(1)を包囲する外側管路(3)に供給され、
前記第1の酸化剤を含む流体及び第2の酸化剤を含む流体が異なる組成を有する、プロセス。
【請求項14】
請求項10から13のいずれか1項記載のプロセスであって、
燃料流は前記炭化水素と他の非可燃性媒体、好ましくは蒸気との混合体であり、
前記炭化水素は好ましくは天然ガスである、プロセス。
【請求項15】
請求項9から14のいずれか1項記載の合成ガス生成のためのプロセスであって、
バーナーの起動段階からプロセス段階への移行は、起動バーナー及びプロセスバーナー又は反応装置容器に対して人が直接操作することのない自動制御システムによって行われることを特徴とする、プロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−515701(P2012−515701A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546758(P2011−546758)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050484
【国際公開番号】WO2010/084087
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(506024858)カサーレ ケミカルズ エス.エー. (4)
【Fターム(参考)】