説明

炭化水素もしくは含酸素化合物の製造プラント廃水の高温処理方法

【課題】工場やプラントから排出される炭化水素やホルムアルデヒドなどを含有する廃水を効果的に処理する方法を提供する。特に本発明は上記の工場やプラントから廃水の生物学的で、かつ比較的高温での処理を可能にし、工場やプラント全体としての省エネルギーを実現する廃水の処理方法を提供する。
【解決手段】含酸素化合物又は液体炭化水素(天然ガスから合成ガスを経由して製造される液体燃料油を含む。)を製造するプラントで副生される有機物含有高温廃水を処理するに当たり、分離膜を備えたメンブレンバイオリアクターを用いて曝気しながら40℃以上の高温で処理する廃水の処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは廃水処理分野に関し、特に炭化水素もしくは含酸素化合物の製造プラントから生成する廃水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場廃水の中には、副生有機物として、ホルムアルデヒドやメタノールなどが含まれる場合がある。このような廃水は、ホルムアルデヒド濃度が廃水基準に適合するように処理されてから排出される。この廃水中のホルムアルデヒドやメタノールに対する処理方法として、活性汚泥法が多く利用されている。
一般的に例えば非特許文献1にあるように活性汚泥法で望ましい水温は20℃〜30℃とされる。35℃を超えると活性汚泥微生物の活性はやや落ちるとされている。
具体的には馴養期間を短くする、あるいは必要としないホルムアルデヒド含有廃水の処理方法が、特許文献1〜4に開示されている。この中で特許文献1及び2には、高濃度ホルムアルデヒドを分解できる特定の微生物を用いる方法が記載されている。また、特許文献3及び4には、活性汚泥を用いずにホルムアルデヒドを分解処理する方法が記載されている。これら特許文献3及び4に記載されている方法は活性汚泥法と異なり、廃水を昇温・昇圧する設備、および触媒を設置する必要がある。
【0003】
他方、活性汚泥法の廃水処理設備については、精密ろ過膜を使用することによって従来活性汚泥法で必要とされていた汚泥の沈殿槽を省略し、設備の設置面積を少なくする方法が特許文献5に開示されている。
また、特許文献6には炭化水素を含む廃水を処理するメンブレンバイオリアクター(MBR)が開示されている。
ところで、近年、水(淡水)資源の新たな開発が滞っている反面、人口増加による水需要の増加、生活水準向上による一人あたりの水使用量が増加してきている。また、人口増加により食料生産のために利用される水需要も高まってきており、水資源不足が大きな問題として表面化してきている。
とりわけ、新たな水資源が得にくい地域では、水の再利用が積極的に進められている。
こうした状況で比較的大量に水を使用する工業分野でも、同様に水不足問題への本格的な対応が要求されている。工場では、製品の製造過程に必要なユーティリティとしてボイラー用水や冷却水、あるいは雑用水などさまざまなシステムで水が利用されている。また、これらの貴重な水の消費量を減らすことが製造単価の抑制に直結することから、各工場では廃水を積極的に再利用することが実践あるいは検討されてきている。
【0004】
具体的には、化学工場などで反応に伴って排出(生成)される排水を処理して、工場やコンビナート内でボイラー用水、雑用水などに利用することが行われているが、化学工場で発生した排水や、化学反応で生成した水は、そのままでは100℃以上の温度で排出されることが多い。その場合、生物処理に使用される、好気性菌の活性汚泥(バクテリア)の活動適温(以下、単に「活動適温」という。)は通常10℃〜35℃であるという事実があり、そのまま生物処理できない。そのためこの排水を少なくとも30℃前後にまで冷却せざるを得ないのが実情である。
しかし、生物処理した廃水を工場のボイラー用水として再利用するとき、再び昇温し、100℃以上の温度に上げる必要がある。つまり、100℃以上の廃水を、生物処理のために30℃前後まで冷却し、再び100℃以上に昇温するため、全体としてエネルギー効率が悪いという欠点が存在する。
また、中東地域のように外気温が高い場合、安価な冷媒である海水で冷却できる温度が40℃であり、更に下げるためには冷媒および冷凍機を設置して冷却する必要がある。
【0005】
【特許文献1】特開平11−19685号公報
【特許文献2】特開平11−19686号公報
【特許文献3】特開平9−253696号公報
【特許文献4】特開平7−232178号公報
【特許文献5】特開平8−24885号公報
【特許文献6】欧州特許第0699172号公報
【非特許文献1】須藤著,「廃水処理の生物学」,産業用水調査会発行(昭和52年6月12日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、工場やプラントから排出される炭化水素やホルムアルデヒドなどを含有する廃水の処理に活性汚泥法を適用するにあたり、その装置仕様を確立し,水の再利用も可能とする安定した処理を実現するための方法、装置を提供することを目的とする。特に本発明は上記の工場やプラントから廃水の生物学的方法で、かつ比較的高温での処理を可能にし、工場やプラント全体としての省エネルギーを実現し、かつ、ホルムアルデヒドを除去するのみでなく、水を効率良く回収して工業用水として再利用できるような技術を確立することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題は、以下の手段により解決された。
(1)含酸素化合物又は液体炭化水素(天然ガスから合成ガスを経由して製造される液体燃料油を含む。)を製造するプラントで副生される有機物含有高温廃水を処理するに当たり、分離膜を備えたメンブレンバイオリアクターを用いて曝気しながら40℃以上の高温で処理することを特徴とする廃水の処理方法、
(2)有機物含有高温廃水中にホルムアルデヒドを含むことを特徴とする(1)項に記載の廃水の処理方法、
(3)メンブレンバイオリアクター水および/または処理水のホルムアルデヒドの残留濃度によってBOD汚泥負荷を制御することを特徴とする(2)項に記載の廃水の処理方法、
(4)生物処理水槽水および/または処理水のpHおよび/または導電率を測定し、pHおよび/または導電率の値をもとにBOD負荷を制御することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の廃水の処理方法、
(5)前記メンブレンバイオリアクターにおいて40℃以上の高温に耐えうる活性汚泥を馴養するために35℃以下の温度条件から7℃以内の温度差で段階的に上昇させることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の廃水の処理方法、
(6)前記メンブレンバイオリアクターおよび/またはメンブレンバイオリアクターより前段の処理工程において、栄養塩類を、BOD1質量部に対して窒素0.02〜0.05質量部、リン0.004〜0.01質量部を添加することを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の廃水の処理方法、
(7)前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の廃水の処理方法を用いたことを特徴とする再生水の製造方法、
(8)含酸素化合物がジメチルエーテルである(7)項に記載の再生水の製造方法、
(9)含酸素化合物又は液体炭化水素(天然ガスから合成ガスを経由して製造される液体燃料油を含む。)を製造するプラントで副生される有機物含有高温廃水および/またはメンブレンバイオリアクター水を40〜45℃に冷却するための冷却装置が、メンブレンバイオリアクターより前段の処理工程および/又はメンブレンバイオリアクターに設置されていることを特徴とする廃水処理装置、
(10)BOD汚泥負荷を調整・制御するための廃水調整槽を備えること特徴とする(9)項記載の廃水の処理装置、
(11)BOD汚泥負荷を調整・制御するためのホルムアルデヒド濃度計、pH計、導電率計のうち、少なくとも1つを備えること特徴とする(9)または(10)項に記載の廃水の処理装置、および、
(12)栄養塩類の添加設備がメンブレンバイオリアクターより前段の処理工程および/又はメンブレンバイオリアクターに設置されていることを特徴とする(10)〜(12)項のいずれか1項に記載の廃水の処理装置。
本発明において再生水とは、廃水を処理することで得られる、ボイラー用水をはじめとする工業用水や、農業用水、中水、などをいう。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、炭化水素もしくは含酸素化合物の製造プラントで副生される有機物含有廃水(ホルムアルデヒドやメタノールなどを含む副生水)を著しく冷却することなく生物学的に、効率よく処理することができ、ボイラー用水をはじめとする工業用水などの新たな水資源(再生水)として再利用することができる。
本発明の上記及び他の特徴及び利点は、添付の図面とともに考慮することにより、下記の記載からより明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、DME等の含酸素化合物やGTLなどの液体炭化水素を製造するプラントで副生される廃水は、ホルムアルデヒドやメタノール、ギ酸などを微量成分として含むが、塩類や金属類をほとんど含有しないか、ないしはボイラー用水や工業用水に利用するのに問題にならない程度しか含有していないことを見出した。そして、本発明者らは、この廃水をメンブレンバイオリアクターにより処理することで効率よく低コストでボイラー給水をはじめとする工業用水等として再利用することができることを見出した。
一方、通常の下水処理、あるいは工場廃水などの処理に使用される活性汚泥中の微生物、前述のように、高くても30〜35℃の活動適温を有するので通常100℃前後で排出される工場廃水などの生物学的処理には使用できない。しかし、後述する特定の方法により、工場廃水を用いて馴養することにより活動適温を高めることができ上記の副生廃水を、40℃を超える高温であっても処理できることを見出した。本発明はこの知見に基づきなされるに至ったものである。
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明で使用される活動適温を高める活性汚泥の種汚泥については、特に制限はなく、任意の下水処理場あるいは工業廃水処理場から汚泥(種汚泥)を採取することで得られる。好ましくは処理する廃水の成分がなるべく近い性質を持つ処理場から種汚泥を採取すれば、馴養する期間を短くすることができる。
採取した種汚泥は、処理する廃水の濃度(BOD負荷)、温度のいずれかを交互に、所定の期間(例えば、1〜3週間程度)をかけて徐々に上げていくことで、本目的に適した性質を持つ活性汚泥を得ることができる。
【0011】
温度あるいは濃度条件の変更は処理水のTOC濃度が安定すること、あるいは後述のようにpHが所定の値になるように、即ち、有機物の除去率が所定のレベルを達成したことを確認した時点で変更するので、一義的に定めることは容易ではなく、期間については採取した種汚泥により適宜調整する。種汚泥の馴養は、廃水の濃度(BOD負荷)又は温度を段階的に上昇させて行うのが好ましい。温度であれば、例えば、好ましくは7℃以下の段階の温度差ずつ、より好ましくは3〜6℃の範囲の温度の刻みで段階的に上昇した所定温度で培養し、最終的には40℃を越える温度まで行う。培養時間は有機物の除去率が所定のレベルに達成するまで行う。段階的に上げる温度幅が小さすぎると作業が煩雑になり、また馴養時間が掛かってしまう。逆に大きすぎると、ショックで活性汚泥が死滅あるいは不活性化してしまう。約5℃前後刻みで曝気槽に供給する廃水の温度を上げていくことが特に好ましい。負荷については、馴養中に温度と交互に段階的に上昇させていくが、それは好ましくは、前段の1.3〜2.1倍であり、より好ましくは前段の1.6〜1.8倍であり1.7倍前後刻みで曝気槽に供給する廃水のBOD負荷を上げていくことが特に好ましい。廃水のBOD負荷の段階的上昇幅が小さすぎると作業が煩雑になり、また馴養時間が掛かってしまう。逆に大きすぎると活性汚泥の有機物除去率が著しく低下し、馴養の目的が達成できなくなる。
このようにして得られた活動適温を高めた活性汚泥を、廃水処理に用いるメンブレンバイオリアクター曝気槽で培養し、40℃から45℃の温度で炭酸ガスや水に分解する。
製造するプラントで副生される有機物含有高温廃水および/またはメンブレンバイオリアクター水を40〜45℃に冷却するためには、メンブレンバイオリアクターより前段の処理工程および/又はメンブレンバイオリアクターに熱交換器などの冷却装置を設置すればよい。メンブレンバイオリアクターより前段の処理工程に制限はないが、プラントからの配管、排水調整槽、排水調整槽の攪拌空気配管、排水調整槽に接続する排水配管、メンブレンバイオリアクター、メンブレンバイオリアクターの攪拌空気の配管、メンブレンバイオリアクターに接続する排水配管等が挙げられる。
このメンブレンバイオリアクターは反応生成物が膜を透過して系外に取り出されるので固液分離操作が不要となり、このため固液分離装置が省略できる。
また、ホルムアルデヒドが多く含まれる廃水に活性汚泥法を適用する場合、糸状菌が増殖し、その結果、汚泥の沈降性が著しく悪くなるので、通常の沈降ろ過では分離できないため、膜分離機能を持つメンブレンバイオリアクターを使用することは特に本発明に適合する。
【0012】
廃水処理において重要な役割を果たす微生物の至適pHは6〜8の中性付近である。ホルムアルデヒド自体は中性物質であり、これが微生物によって二酸化炭素まで微生物分解された場合にはpHの変化は殆どない。しかしながら、運転中のpHの変化については、本発明者らの研究によって、過負荷や溶存酸素濃度の不足によってホルムアルデヒドが残留するような状態に陥った場合、分解の中間生成物として蟻酸も残留するため曝気槽および処理水のpHが低下することがわかった。この挙動を利用して、曝気槽のpHをもとに廃水の負荷を制御することでホルムアルデヒドを曝気槽に残留させない運転が可能となる。具体的な運転としては、例えば、pH6〜8で運転されている場合には、pH6以下となったときに廃水の流入を停止し、再びpHが6を越えた時点で廃水の流入を再開する。このように、定常的にpHを監視することによって、ホルムアルデヒドの残留時のpHの変化を早期に発見・検知し、安定した運転を行うことが可能となる。
本発明で対象とする化学プラント廃水は、ホルムアルデヒドとその他の有機成分以外の成分、特に塩類は殆ど含まれていないので、廃水の電気伝導度は、これらの物質が水中でわずかに電離していることに起因するものである。したがって、ホルムアルデヒド等が二酸化炭素、水まで完全に酸化分解された場合に比べて、ホルムアルデヒド等が未分解で残留した場合は曝気槽および処理水の電気伝導度が高くなることを見出している。この挙動をもとに、曝気槽の電気伝導度をもとに廃水の負荷を制御することでホルムアルデヒドを曝気槽に残留させない運転が可能となる。廃水の電気伝導度は廃水の性状によって異なるが、具体的な運転としては、例えば、電気伝導度3〜5 mS/mで運転されている場合には、電気伝導度が5 mS/m以上となったときに廃水の流入を停止し、再び電気伝導度が5 mS/mを下まわった時点で廃水の流入を再開する。このように、定常的に電気伝導度を監視することによって、ホルムアルデヒドの残留時の電気伝導度の変化を早期に発見・検知し、安定した運転を行うことが可能となる。
以上のとおり本発明では曝気槽にホルムアルデヒドを残留させないためにBOD負荷を調整する必要があるため、廃水の濃度を平均化する、あるいは、曝気槽の状況によって廃水流量を調整するためのバッファータンクとしての機能をもつ廃水調整槽の役割は重要である。
【0013】
本発明で対象とする化学プラント廃水は、ホルムアルデヒドとその他の有機成分以外の成分は殆ど含まれていないので、微生物がホルムアルデヒドとその他の有機成分を代謝する際に必要な栄養塩類を添加する必要がある。栄養塩類として特に不足するのは窒素分とリン分であり、これらを過不足なく添加すれば良いが、具体的にはBOD1質量部に対して窒素0.02〜0.05質量部、リン0.004〜0.01質量部を添加するのが好ましい。この割合よりも栄養塩類の量が少ないと微生物の活性が低下する場合があり、逆にこの割合よりも多いと処理水に栄養塩類が残留するためである。もちろん原水にもともと栄養塩類が含まれる場合は、添加量を加減することができ、もとから含まれている量と添加する量を合わせた値が、BOD1質量部に対して窒素0.02〜0.05質量部、リン0.004〜0.01質量部の割合となっていることが好ましい。添加する位置はバイオリアクターに栄養塩が行き渡ればよいが、通常はバイオリアクターに直接添加するか、それよりも前の工程に添加する。添加する窒素源に特に制限はないが、一般的には、尿素、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、アンモニア等が用いられる。また、添加するリン源にも制限はないが、一般的には、りん酸水素二カリウム、りん酸二水素カリウム、りん酸水素二ナトリウム、りん酸二水素ナトリウム、りん酸等が用いられる。
【0014】
本発明方法の好ましい実施態様を図面に従って説明すると、図中1は処理廃水の貯蔵し、廃水の濃度を平均化する調整槽、2は廃水を曝気処理するメンブレンバイオリアクタ(以下MBR槽という。)、3は処理水槽である。
処理する廃水は原水槽1から原水ポンプ4によってライン5からMBR槽2に送られる。MBR槽の廃水には下部噴出孔6から、空気が吹込まれ、廃水中の有機物をMBR槽内に充てんした活性汚泥の微生物又は酵素を曝気しながら分解して炭酸ガスや水に分解する。このような分解物を溶解した水は膜分離装置7の中へ原水側7aから流入し分離膜7bでろ過されて、その透過水側7cからライン8を通って取り出され処理水槽3に送られる。9はMBR槽2を廃水流入部10、廃水処理部11に分ける仕切り板体12であり、その下端部とMBR槽の底面との間に間隔13をあけて廃水の流路としている。
このMBR槽において底面は廃水流入部10の底面10aは傾斜面に形成されている。図中14はレベル計、15はpH計および電気伝導度計、16は圧力計、17は吸引ポンプである。また18はMBR槽に空気を吹込むブロア、19は空気流量計である。
MBR槽は図示のように全体を恒温水槽40内に設置するのが好ましい。
なお、分離膜7bとしては一般的に精密濾過膜が用いられるが、要求される処理水質によっては、マイクロポーラス膜、限外濾過膜等も単独もしくは複数組み合わせることによって適宜選択して使用することができる。阻止粒径では0.001〜1μm、通常0.002〜0.5μm程度のものが好ましい。膜の材質としては、ポリテトラフルオロエチレン(商品名:テフロン)、ポリスルホン、ポリ塩化ビニル、酢酸セルロース、ポリアミド、ポリカーボネート、ニトロセルロース、セルロース、再生セルロース、トリアセチルセルロース、アクリル重合体、ポリプロピレン、ポリエチレン、プロピレン架橋ポリビニルアルコール等各種のものが開発されており、これらの膜を使用した膜分離装置も各種のものが開発され、市販されているのでそれらから適宜選択して使用することができる。
一般に膜の劣化を防止するには水温は40℃以下が望ましいとされているが、45℃以下、望ましくは43℃以下に水温を調整することにより曝気槽での蒸発潜熱で膜面の水温は40℃程度にすることが出来る。
本実施態様では、三菱レーヨン社製NEM−455−L×2本(分離面積:0.2m/本 孔径:0.4μm、材質:ポリエチレン(PE)、中空系内径:350μm寸法:50mmΦ×幅227mm×高さ397mmのもの)を用いた。
【実施例】
【0015】
次に本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明する。但し本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0016】
実施例1
図1に示すフローシートに従って、表1に示す廃水を分解処理した。この処理において、まず、前半の工程は種汚泥の馴養であり後半の工程は馴養した高温耐性をもつ活性汚泥による前記表1に示す廃水の高温分解処理である。
(1)供給廃水(模擬廃水)
(a)水道水にHCHO等の成分組成を表1に示す濃度になるように調整した模擬廃水を試験の供給廃水とした。
(b)種汚泥:前記試験場内の下水処理汚泥を使用した。
【0017】
【表1】

【0018】
(2)ベンチスケール試験(実験条件を表3に示す。)
(a)Run1では、種汚泥として下水処理の活性汚泥(活動適温25℃)をHCHOのみを含む模擬廃水により低いBOD負荷(0.05g/g・日)で、16日間、25℃で汚泥を馴養した。
(b)Run2以降は、DMEプラント実廃水の過去の分析値を参考とし、表2に示す組成の模擬廃水を調製して使用した。
(c)BOD負荷は、22日間同条件(30℃)で運転し、処理水のTOC濃度が安定した時点で汚泥負荷を表3に示すように、徐々に上昇させて汚泥のHCHOに対する馴養試験を行った。BOD負荷は処理水量を増加させて調整した。馴養試験における目標汚泥負荷を0.2 g/g.日とした。
(d)曝気槽の水温は、Run1では25℃、Run2からRun3では30℃として試験を実施した。Run4では35℃に上げ、処理水のTOC濃度が安定しているので、Run5以降は40℃に上げ、Run9では42℃での高水温における処理試験を実施した。
(e)MLSS(Mixed liquor Suspended Solid:曝気槽内の活性浮遊物質)濃度は曝気槽から適宜排泥することにより4,000〜6,000 mg/Lに制御した。
(f)汚泥の性状(沈降性)の変化は、SVおよびSVIで評価した。
(g)分析項目と分析頻度。分析項目と分析頻度を表2に示す。
【0019】
【表2】

【0020】
試験結果を表3に示した。
【0021】
【表3】

【0022】
45℃より高い温度では処理性能が著しく低下してきた。
上記のRun5〜9で得られた活性汚泥を、好ましい一実施態様として大型DMEプラントと大型GTLプラントに適用する場合後述する図2のフローを用いるのが好ましい。
【0023】
実施例2
曝気槽および処理水のホルムアルデヒド濃度を測定する代わりに、曝気槽のpHによってBOD負荷を設定したこと以外は実施例1と同様の方法で処理試験を行った。曝気槽のpHが6.5を下まわった場合に廃水の供給を停止し、再び6.5以上に復帰した後に廃水の供給を開始した。また、曝気槽においてpHが3日間以上6.5以上の状態を維持していることを確認した時点で負荷を1.5倍ずつ段階的に引き上げた。
1ヶ月経過後の設定負荷と43℃での処理性能を表4に示す。この時点で設定負荷は0.15kg/(kg−SS・d)となり、処理水質は、pH6.7〜7.1、ホルムアルデヒド濃度0.1mg/L以下、BOD5mg/L以下、SS1mg/L以下であり、実施例1と同等の良好な処理であった。
【0024】
【表4】

【0025】
図2において廃水発生源である、プラント20から排出された廃水は熱交換器21により、40℃前後に冷却される。この冷却された廃水はライン22よりタンク23に送られポンプ24によりライン25から、前記と同様のMBR槽26に送られる。このMBR槽26内の液中には、上記のBOD負荷をかけて調製した40℃以上45℃以下の高温で活性を示す活性汚泥が配置されている。廃水はこの活性汚泥によりブロア28より吹込まれた空気での存在下で曝気され、有機物が分解されたのち、分離装置27の分離膜27aを通って処理水は、ライン29から取出され、ポンプ30によって、処理水槽31に送られる。この処理水は、必要に応じてポンプ32によって目的の用途に再利用のために送られる。
MBR槽26でHCHOを除去された水は、図示しないがイオン交換塔のような設備で脱塩処理をした後、ボイラーに供給してもよい。廃水は元来塩分濃度が低いので、イオン交換塔の大きさを小さくすることができる。
従来の30℃近傍までの冷却に比べて、40℃付近までの冷却で済むことにより、その冷却に必要とされる熱量および、ボイラー用水として再び昇温するのに必要な熱量はかなり節約されることになる。
【0026】
さらに、図3は本発明を実プラントに適用する場合の別の好ましい実施態様のフロー図である。同図中、図2と同符号は同じものを示す。図中33は、pH計および導電率計であり、本実施態様は図2における熱交換器21を省略できる例を示している。この図3のフロー図に従う廃水処理の工程は図2について説明したのと同様である。
【0027】
本発明の処理方法は、炭化水素もしくは含酸素化合物の製造プラントで副生されるホルムアルデヒド含有廃水を、効率よく低コストで新たな水資源として再利用するため処理方法として好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明で実証した、種汚泥を馴養するための装置のフロー図である。
【図2】本発明で得られた、馴養汚泥を実プラントに適用したときのフロー図である。
【図3】本発明で得られた、馴養汚泥を実プラントに適用したときの別のフロー図である。
【符号の説明】
【0029】
1 調整槽
2 MBR槽
3 処理水槽
4 原水ポンプ
5 ライン
6 噴出孔
7 膜分離装置
7a 原水側
7b 分離膜
7c 透過水側
8 ライン
10 廃水流入部
10a 底面
11 廃水処理部
12 板体
13 間隔
14 レベル計
15 pH計および導電率計
16 圧力計
17 吸引ポンプ
18 ブロア
19 空気流量計
20 プラント
21 熱交換器
22 ライン
23 タンク
24 ポンプ
25 ライン
26 MBR槽
27 ろ過分離装置
27a 分離膜
28 ブロア
29 ライン
30 ポンプ
31 処理水槽
32 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含酸素化合物又は液体炭化水素(天然ガスから合成ガスを経由して製造される液体燃料油を含む。)を製造するプラントで副生される有機物含有高温廃水を処理するに当たり、分離膜を備えたメンブレンバイオリアクターを用いて曝気しながら40℃以上の高温で処理することを特徴とする廃水の処理方法。
【請求項2】
有機物含有高温廃水中にホルムアルデヒドを含むことを特徴とする請求項1項に記載の廃水の処理方法。
【請求項3】
メンブレンバイオリアクター水および/または処理水のホルムアルデヒドの残留濃度によってBOD汚泥負荷を制御することを特徴とする請求項2に記載の廃水の処理方法。
【請求項4】
生物処理水槽水および/または処理水のpHおよび/または導電率を測定し、pHおよび/または導電率の値をもとにBOD負荷を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の廃水の処理方法。
【請求項5】
前記メンブレンバイオリアクターにおいて40℃以上の高温に耐えうる活性汚泥を馴養するために35℃以下の温度条件から7℃以内の温度差で段階的に上昇させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の廃水の処理方法。
【請求項6】
前記メンブレンバイオリアクターおよび/またはメンブレンバイオリアクターより前段の処理工程において、栄養塩類を、BOD1質量部に対して窒素0.02〜0.05質量部、リン0.004〜0.01質量部を添加することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の廃水の処理方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の廃水の処理方法を用いたことを特徴とする再生水の製造方法。
【請求項8】
含酸素化合物がジメチルエーテルである請求項7に記載の再生水の製造方法。
【請求項9】
含酸素化合物又は液体炭化水素(天然ガスから合成ガスを経由して製造される液体燃料油を含む。)を製造するプラントで副生される有機物含有高温廃水および/またはメンブレンバイオリアクター水を40〜45℃に冷却するための冷却装置が、メンブレンバイオリアクターより前段の処理工程および/又はメンブレンバイオリアクターに設置されていることを特徴とする廃水処理装置。
【請求項10】
BOD汚泥負荷を調整・制御するための廃水調整槽を備えること特徴とする請求項9記載の廃水の処理装置。
【請求項11】
BOD汚泥負荷を調整・制御するためのホルムアルデヒド濃度計、pH計、導電率計のうち、少なくとも1つを備えること特徴とする請求項9または10に記載の廃水の処理装置。
【請求項12】
栄養塩類の添加設備がメンブレンバイオリアクターより前段の処理工程および/又はメンブレンバイオリアクターに設置されていることを特徴とする請求項10〜12項のいずれか1項に記載の廃水の処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−268468(P2007−268468A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−99160(P2006−99160)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000222174)東洋エンジニアリング株式会社 (69)
【出願人】(504394249)財団法人 造水促進センター (1)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】