説明

炭化水素をベースとする流体試料のリアルタイム組成分析

【課題】正確なリアルタイム地層流体分析のためのシステムおよび技術を提供する。
【解決手段】流体アナライザーは、流体試料の物理的(光学的)性質を決定するように構成される第1の分析モード、例えば光アナライザーを含む。流体アナライザーは、また、流体試料の元素組成を決定するように構成される他の分析モード、例えばガスクロマトグラフを含む。データプロセッサは、分析の第1および第2のモードから得られる応答結果の流体試料の標的成分の量、例えば質量パーセントを決定するように構成される。有益には、少なくともほぼリアルタイムで結果が得られ、中間結果、例えば第1のアナライザーからの結果が組成アナライザーの調整の1つ以上に用いることができるとともに品質管理を実施することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、一般的には、坑井内でまたは表面で達成され得る地層流体分析に関する。より詳しくは、本出願は、クロマトグラフィーベースの装置を用いた地層流体内の対象種類の検出および識別に関する。
【背景技術】
【0002】
坑井内流体分析(DFA)は、物理検層において急速に発達している分野であり、油層評価の中枢になっている。DFAは、油層が“1つの巨大なタンクの均質炭化水素”を含有する欠陥のあるあまりに楽観的な仮説に対処するものである。有益には、DFAは、組成勾配を見つけるだけでなく、区画を識別するために使用し得る。その分析は、典型的には、試料流体における成分の濃度または比を決定する地層流体の試料のバルク光学分光法に基づく。
近年、特に、メタン(C1)、エタン−プロパン−ブタン−ペンタン(C2−C5)、およびより重い炭化水素分子(C6+)の炭化水素および気体組成を決定する高度な光学測定技術が開発された。しかしながら、この坑井内分析技術は、C2、C3、C4、C5に対する個々の炭化水素部分を定量的に測定せずかつ6よりも多い炭素原子を有する分子は区別がつかない。
異なる材料が異なる吸収特性を有することから、流体試料中にあり得る材料のスペクトルがあるとすれば、何の材料が流体試料を含むかに関して決定することが可能になる。そのために、当該技術において一般に周知の技術に従って、水、ガス、およびいくつかの異なる油のスペクトルが見られる。
水、ガス、粗製油、精製油、および掘削流体(軽油)の吸収スペクトルを用いて、流体試料の成分を決定するために最小二乗分析が使用し得る。あるいはまたはさらに、流体試料の成分を決定するために同様の方法で主成分分析も使用し得る。
“デランピング”と呼ばれるその一プロセスは、成分グループの成分のモル分布を推定することにより、地層流体の試料の光吸収スペクトルから組成データを決定するために操作する。その場合、その成分に対する質量留分は、分子量および誘導モル分率から誘導される。
例えば、ブラックオイルデランピングは、組成物と飽和圧との表に基づいて達成され得る。あるいは、デランピングは、精度をより高めるためにデランピングプロセスに対する液体組成および蒸気組成と液相のガス/油比(Rs)およびまたは蒸気相の油/ガス比(Rv)との表を用いて達成され得る。残念なことに、このようにデータを処理することは、かなりの処理時間を必要とする。従って、デランピングによって、リアルタイムでまたは近いリアルタイムでも組成評価が除外される。
【0003】
収集したデータを定量的にしかつ分析可能な混合物において対象の成分の量(質量パーセントまたはモルパーセント)についての情報をクライアントに与えるのに可能ないくつかの手法がある:
絶対検量線法において、検出器応答と注入された成分の量とがクロマトグラムまたはスペクトルグラムの定量化に使用し得るキャリブレーションプロットが得られる。しかしながら、この方法は、較正手順の間と実験の間の分析の状態が同一のことが必要であり、世界中の坑井内状態の変動が難題である。
内部標準法は、ある量の“標準”が主モジュールと一緒に行われることが必要である。分析の間、標準は、地層流体と一緒に混合され、分離モジュール(例えば、クロマトグラフまたは/および分光計に注入される。この方法は、坑井内に“標準”を持ち込むこと、地層混合物の試料と混合すること、“標準”応答の識別およびしばしば非常に難題であるその定量化を必要とする。
他の溶離されたピークからの追加内部標準を分割することが困難である場合には、第2のそれに伴うクロマトグラム/スペクトログラムに制御された混合物が添加されることになる。検出器応答係数を知ることにより、分析可能な成分の量を定量化することが可能である。本方法は内部標準法の課題の一部を含まないが、添加される混合物を坑井内に持ち込むことはまだ必要である。
内部標準化の方法は、すべての成分がカラムから溶離し、検出したと仮定する。すべてのピークの領域の合計は、100%の全濃度を表し、対象の成分の量は割合から推定され得る。しかしながら、原油としてその複合混合物の分析の場合には、すべての成分がカラムから溶離しない(例えば、樹脂、アスファルテン、および非常に重い飽和成分)。また、すべての溶離されたピークの積分と相加は、分析結果の有意性誤りを導く。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地下層から採収される流体の正確なリアルタイム分析は、正しい油層評価のための最終目的である。クロマトグラフィーと地層流体の組成分析のための他の分析モード、例えば光学技術との組み合わせを実施するシステムおよび技術が本明細書に記載される。技術は、例えばクロマトグラフィーと分光分析のようなマルチモーダル評価と分析を用いて、本明細書において“坑井内”と呼ばれる掘削内で、表面で、または坑井内環境と表面環境とのある組み合わせで達成され得る。技術は、ライブオイルに適用され得るが、その用途に限定されることを意味しない。合わせたクロマトグラフィーと光学技術、例えば吸収分光法は、さらに混合物分析に対する他の技術と組み合わせることができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様において、本明細書に記載される少なくとも一実施態様は、参照成分および少なくとも1つの他の成分を含有する流体試料を評価するための流体アナライザーを提供する。流体アナライザーは、流体試料の少なくとも一部を受け取るように適合された光アナライザーを含む。光アナライザーは、流体試料の光学的性質を決定しかつ決定された光学的性質に関連した光アナライザー出力信号を送るように構成されている。流体アナライザーは、また、流体試料の少なくとも一部を受け取るように適合された組成アナライザーを含む。組成アナライザーは、流体試料の元素組成を決定しかつ決定された元素組成を表す組成アナライザー出力信号を送るように構成される。流体アナライザーは、さらに、光アナライザーと組成アナライザーの各々と連通したデータプロセッサを含む。データプロセッサは、光アナライザー出力信号とコンピュータアナライザ出力信号を受信するのに応答した少なくとも1つの他の成分の標的成分の量を決定するように構成されている。
いくつかの実施態様において、データプロセッサは、所定アルゴリズムに従って標的成分(WiGC)の量を決定するように構成されている。その一アルゴリズムは、下記の関係に従って行うことができる。
【0006】
【数1】

【0007】
上記の式において、値WiGCは、標的成分の量を表し;AiGCは、組成アナライザー出力から決定される標的応答領域を表す。値ArefGCは、組成アナライザー出力から決定される参照応答領域を表し;WrefIFAは、光アナライザー出力信号から決定される参照成分の量を表す。値RiGCは、標的成分に対する組成アナライザー検出器応答係数を表し、RrefGCは、参照成分に対する組成アナライザー検出器応答係数を表す。
いくつかの実施態様において、光アナライザーは、光吸収分光計を含む。組成アナライザーもまた、スペクトログラムアナライザーおよびクロマトグラフィーアナライザーの1つ以上を含むことができる。いくつかの実施態様において、組成アナライザーは、光アナライザー出力信号に応答して構成可能であり得る。光アナライザーと組成アナライザーの各々もまた、掘削内で、坑井内使用に適合することができて、流体試料がその場で分析される。
いくつかの実施態様において、流体アナライザーは、さらに、流体試料を生じる掘削の外で(例えば、表面で)流体試料の少なくとも一部を受け取るように適合された多相流量計を含む。光アナライザーと組成アナライザーの少なくとも1つは、多相流量計から流体試料を受け取ることができる。
他の態様において、本明細書に記載される少なくとも一実施態様は、参照成分および少なくとも1つの他の成分を含有する流体試料を評価する方法を提供する。方法は、参照成分および少なくとも1つの他の成分を含有する流体試料を受け取ることを含む。流体試料の光学的性質が決定される。参照成分は、測定された光学的性質に応答して定量化される。流体試料の独立組成評価もまた、決定される。標的成分は、独立組成評価および定量化された参照成分に応答して定量化される。
いくつかの実施態様において、流体試料の光学的性質を決定することは、流体試料のスペクトログラムを生成することを含む。独立組成評価を決定することは、また、流体試料のクロマトグラフおよびスペクトログラムの少なくとも1つを生成することを含むことができる。いくつかの実施態様において、独立組成評価を決定することは、さらに、クロマトグラフおよびスペクトログラムの少なくとも1つの各々において標的領域と参照応答領域を決定することを含む。
いくつかの実施態様において、標的成分を定量化することは、所定アルゴリズムに従って達成され得る。その一アルゴリズムは、下記の関係に従って実施され得る。
【0008】
【数2】

【0009】
上記の式において、値WiGCは、標的成分の量を表し;AiGCは、決定されたクロマトグラフ/スペクトログラムからの標的応答領域を表す。値ArefGCは、決定されたクロマトグラフ/スペクトログラムからの参照応答領域を表し;WrefIFAは、光アナライザー出力信号から決定される参照成分の量を表す。値RiGCは、標的成分に対する組成アナライザー検出器応答係数を表し、RrefGCは、参照成分に対する組成アナライザー検出器応答係数を表す。
いくつかの実施態様において、方法は、さらに、決定された光学的性質、1つ以上の他の性質、例えばC1成分(例えば、CH4)の質量パーセント;ひとまとめにして、C26−C512成分の質量パーセント;ひとまとめにして、C6+の質量パーセント;地層圧力(例えば、psig);地層温度(例えば、℃);ガス油比;およびコンデンセートガス比から誘導することを含む。
いくつかの実施態様において、流体試料を受け取ること、光学的性質を決定すること、参照を定量化すること、独立組成評価を決定することの1つよりも多くの行為は、掘削内で、坑井内達成される。あるいはまたはさらに、流体試料は、多相流量計を通過させることができ、ここで、流体試料を受け取ること、光学的性質を決定すること、参照を定量化すること、および独立組成評価を決定することの行為は掘削の外で達成され得る。
いくつかの実施態様において、さらに、流体試料の決定された光学的性質に応答した組成アナライザーを予め構成することを含むことにより、組成アナライザーは、流体試料の独立組成評価を決定するように適合される。決定された光学的性質を決定された独立組成評価と比較することを含むいくつかの実施態様において、好適でない比較は、光学的性質の決定と独立組成評価の決定の少なくとも1つの品質の欠如を表す。いくつかの実施態様において、方法は、少なくとも一つの他の成分の他の標的のための標的成分を定量化すること;および定量化された標的成分を表す概略報告書を作成することの行為を繰り返すことを含む。いくつかの実施態様において、定量化することの行為は、質量分率およびモル分率または 百分率の少なくとも1つを決定することを含む。
さらに他の態様において、本明細書に記載される少なくとも一実施態様は、参照成分および少なくとも1つの他の成分を含有する流体試料を評価する流体アナライザーを提供する。流体アナライザーは、参照成分および少なくとも1つの他の成分を含有する流体試料を受け取るための手段;流体試料の光学的性質を決定するための手段;決定された光学的性質に応答して参照成分を定量化するための手段;流体試料の独立組成評価を決定するための手段;および独立組成評価と定量化された参照成分に応答した標的成分を定量化するための手段を含む。
さらに、以下の詳細な説明において本発明が本発明の例示的実施態様の限定されない例として示された複数の図面を参照して記載され、ここで、類似符号は図面のいくつかの図にわたって同様の部分を表している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、部分断面図において、掘削内に配備される流体アナライザーの一実施態様を示す図である。
【図2】図2は、掘削の表面近くに配備される流体アナライザーの他の実施態様を示す図である。
【図3】図3は、流体アナライザーの実施態様の機能ブロック図を示す図である。
【図4】図4は、流体試料を分析する方法の実施態様を示す流れ図であり、ここで、流体試料中の標的成分が定量化される。
【図5】図5は、流体試料を分析する方法の他の実施態様を示す流れ図であり、ここで、流体試料中の複数の標的成分が定量化されかつ記録される。
【図6】図6は、流体アナライザーの一実施態様から得られる流体試料の分析結果の対数プロットを示すグラフであり、得られたデランピング分析を用いて同じ流体試料に対する結果も示されている。
【図7】図7は、流体試料を分析する方法の実施態様を示す流れ図であり、ここで、流体試料から得られる光学的性質がさらに流体試料の分析結果を得るためのクロマトグラフ調整に用いられている。
【図8】図8は、流体試料を分析する方法の他の実施態様を示す流れ図であり、ここで、流体試料から得られる光学的性質がさらに流体試料の分析結果を得るためのクロマトグラフ調整に用いられている。
【図9】図9は、光学分析およびクロマトグラフィーの結果が比較される品質管理の方法を示す実施態様の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
下記の好ましい実施態様の詳細な説明において、その一部をなしている添付の図面が参照され、これらは例示として個々の実施態様が示されており、それによって、本発明が実施され得る。他の実施態様が用いられてもよく、また、構造変化が本発明の範囲から逸脱することなくなされてもよいことは理解されるべきである。
本明細書に示される事項は、一例として、また、本発明の実施態様の例示的説明のためだけのものであり、最も有効であると考えられかつ本発明の原理と概念的態様の説明を容易に理解されることを提供する場合に示している。この点で、本発明の基本的な理解に必要であるよりも詳細に本発明の構造の詳細を示す試みがなされてなく、本発明のいくつかの形が実際にどのように具体化され得るかの点で当業者に明らかになる図面とともに説明されている。さらに、種々の図面における類似符号や表示は、類似要素を表している。
説明例によって本明細書に記載される方法の実施態様は、光学分析を地層流体試料のクロマトグラフィー測定および/または分光測定と組み合わせて用い、流体試料の定量的組成分析を決定する。組み合わせた技術は、また、較正、品質管理および分析、ならびにシステム性能調整の1つ以上のために使用し得る。流体アナライザー、例えば本明細書に記載されているものは、少なくとも部分的にソフトウェアを操作することによって制御され得る。そのソフトウェアは、例えば、分析可能な混合物のクロマトグラフィー応答/分光測定応答を予測するために1つ以上のアルゴリズムを含むことができる。
光学測定とクロマトグラフィー測定の組み合わせは、地層試料における対象成分のその場定量的識別を可能にする。坑井内GCシステムチューニングにガスクロマトグラフィー応答予想アルゴリズムを用いると、広範囲の坑井内状態と分析可能な油におけるその性能が著しく改善される。提案された方法論およびシステム設計は、既存の光学/クロマトグラフィー方法および将来の分析確認装置を補足することができる。
【0012】
本明細書に記載される技術によれば、坑井内状態におけるリアルタイム地層流体確認の著しい改善が、種々の用途において達成され得る。例えば、本明細書に記載される技術は、異なるタイプの運搬(例えば、ワイヤラインケーブル、掘削チュービング、コイルチュービング、トラクター)を用いて異なるプラットフォーム(例えば、ワイヤライン、掘削同時検層、試験)上で実施することができる。本明細書に記載される技術は、クロマトグラフィーおよび/または分光測定システムによって行われる内部標準かまたは外部標準を必要としかつ或る未知の混合物の分析を最適化するために自動システム調整をすることができないクロマトグラフィーと分光測定の従来の方法より改善する。
図1は、掘削102内で配備されている坑井内試料ツール100を示す実施態様である。ツール100は、例えば、ワイヤーライントラック(図示せず)から配備され得る。ワイヤラインケーブル104は、坑井102に配備される。坑井内試料ツール100は、ケーブル104の終わりに配置され、地下層106に近接して降ろされて示されている。いくつかの実施態様によれば、坑井内試料ツール100は、フローライン採収プローブ110を有する試料採取ツール108を用いて焦束流体採収を行う。例えば、Schlumberger Technology Corporation、Sugar Land、テキサス州、米国が提供する商業サービスにおいて利用できる、地層流体採収ツール108、例えばQuicksilver Probeとして知られている集束流体採収ツール。Quicksilver Probe流体試料採取ツール108は、Modular Formation Dynamics Tester(MDT)ツールスイートの一部であり、Schlumbergerが提供する商業サービスにおいて利用できる。試料採取ツール108は、地下層106から流体の試料を得るのに適合した流体採収プローブ110を含む。少なくともいくつかの実施態様において、採収プローブ110は、流体試料から少なくとも粒子状物質をろ過するためのフィルタを含む。試料採取ツール108は、フローライン112に抜き取られた地層流体の少なくとも一部を送る。
【0013】
いくつかの実施態様において、ツール100は、また、坑井内流体分析モジュール114、例えば、流体試料の少なくとも一部を受け取るように適合された光学分析モジュールを含む。光アナライザーは、流体試料の光学的性質を決定しかつ光学的性質に関連があるまたは光学的性質を表す出力信号を送るように構成され得る。その光アナライザーの例は、MDTツールスイートのComposition Fluid Analyzer(CFA)モジュールである。光学分析モジュール114は、ツール100に流れ込むにつれて、流体を分析する近赤外光吸収分光測定と蛍光放出測定を行うように構成されている。光学分析モジュール114は、流体が光学分析モジュール114に流れ込むにつれて、それぞれ、ガス−留分濃度を測定しかつ流体タイプを識別するために使用し得る。
特に、光学分析モジュール114に流れ込む単相油層ガスは、近赤外光吸収分光測定法を用いて分析して、以下の1つ以上の濃度をリアルタイムで決定する:(i)メタン(C1);(ii)エタン−プロパン−ブタン−ペンタン(C2−C5);および(iii)より重い炭化水素分子(C6+)。そのアナライザーの例は、“Enhanced Downhole Fluid Analysis”と題する米国特許第7,637,151号明細書に記載されており、Schlumberger Technology Corporationに譲渡され、全体として本願明細書に組み込まれている。
少なくともいくつかの実施態様において、ツール100は、第2の流体分析モジュール116を含む。例えば、第2の流体分析モジュールは、組成アナライザー、例えば坑井内ガスクロマトグラフィーモジュール116を含有することができる。組成物アナライザーは、流体試料の元素組成を決定しかつ決定された組成を表す出力信号を送るように構成されている。ガスクロマトグラフィーを用いる実施態様の場合、ガスクロマトグラフィーモジュール116は、ツール100のフローライン112部分の中で利用できる試料採取された地層流体のクロマトグラムを得るように構成されている。その装置の例は、“Wirleline Downhole Gas Chromatograph and Downhole Gas Chromatography Method”と題する米国特許出願公開第2010/0018287号明細書および“Self Contained Chromatography System”と題する米国特許第7,384,453号明細書に記載されており、各々Schlumberger Technology Corporationに譲渡され、全体として本願明細書に組み込まれている。
【0014】
いくつかの実施態様によれば、ツール100からのデータは、ツール100内の坑井内で記録および/または処理されることになり、さらに/または記録および/または処理するために、表面位置、例えばワイヤーライントラックに送信されることになる。ワイヤライン104は、坑井内ツール100と表面設備、例えばデータ処理システム118の間に遠隔測定するように構成され得る。ツール100は、ツール100自体の中に設けられた処理システムで、および/または処理システム118を用いて表面から局所的に制御され得る。
処理システム118は、掘削102の近傍位置でまたは遠隔位置で、ワイヤーライントラックに位置することができる。いくつかの実施態様によれば、処理システム118の機能性の一部または全部が試料採取ツール100内に位置することができる。処理システム118は、試料採取ツール100の1つ以上のモジュール112、116からのデータを管理、記録および/または処理するために使用し得る。処理システム118は、1つ以上の中央処理装置、記憶装置、通信および入力/出力モジュール、ユーザー表示およびユーザー入力システムを含むことができる。入力/出力モジュールは、試料採取ツール100を通信しかつ管理するモジュールを含む。
少なくともいくつかの実施態様において、データ処理システム118は、光学分析モジュール114およびガスクロマトグラフィーモジュール116の各々と連通している。データプロセッサ118は、光学分析モジュール114からの出力信号およびガスクロマトグラフモジュール116からの出力信号を受け取ることに応答した流体試料中各種成分の標的成分の量を決定するように構成されている。処理システム118は、メモリ内に記憶されかつプロセッサ118に利用できる予めプログラムされた指示に従って1つ以上のプロセスを実行するように構成され得る。いくつかの実施態様において、データ処理システム118は、信号アナライザーを含むことができる。本明細書に記載される処理工程の1つ以上は、データ処理システム118内で行うことができ、これには汎用コンピュータ、プログラムされた特定のプロセッサ、ハードウェア(例えば、デジタル信号処理を実施するように構成された要素)、ファームウェア、およびその装置の組み合わせの1つ以上が含まれてもよい。
【0015】
データ処理システム118は、光学分析モジュール114とガスクロマトグラフィーモジュール116からの結果を合わせて地層流体試料のための定量的な計算分析を得るように構成され得る。有益には、その結果は、内部標準を必要とせずに得ることができる。内部標準の追加された質量、サイズおよび複雑さを必要とせずにその定量的結果を得る能力は、本明細書に記載される装置および技術により達成可能であるように坑井内分析には非常に望ましいものである。
次に図2を参照すると、試料採取システム200の別の実施態様は、地上であっても海底に沿っていてもよい表面地形に沿って配備された。その配置において、地下層206から抜き取られかつ表面209までチュービング204によって運搬された後、地層流体を試料採取するためにツールを使うことができる。その試験は、坑井仕上げ後に、例えば生産相の間に使用し得る。例示されたシステム200は、地下層206と流体連通した定位置にチュービング204を有する完了した坑井に使われる。チュービング204により、抜き取られた炭化水素 が採収またはポンピングの種々の周知技術のいずれかによって表面へ運搬される。抜き取られた流体は、ウェルヘッドコンプリーション208に流れ込む。坑井仕上げ208は、その用途に共通に使われるように、1つ以上の要素、例えばブローアウトプリベンターや“クリスマスツリー”として知られるバルブ網目構造を含むことができる。
坑井から抜き取られる試料採取された地層流体は、フローライン210によって表面(海底表面を含む)で、例えば、抜き取られた炭化水素を油田から市場まで輸送するための生産設備に運ばれる。いくつかの実施態様において、バイパスマニフォールド212(想像線で図示される)は、坑井の生産に影響することなく分析のためのフローライン210に流れ込む大量の地層流体の処理可能な試料を分離するために設けられ得る。
【0016】
比較的少量の試料は、抜き取られた地層流体の評価の基準として使用することができる。例示的実施態様において、システム200は、図1の組成流体アナライザー(CFA)モジュール114と同様に機能することができるように、流体分析モジュール214を含むが、以前の例のように坑井内の要求によって制限される必要がない。少なくともいくつかの実施態様において、流体分析モジュール214は、例えば、システム200に流れ込む流体を分析するための近赤外光吸収分光測定法および少なくともいくつかの実施態様においては、蛍光放出測定を行うように構成された光学吸収分光計を含む。坑井内ツール100(図1)のように、流体が流体分析モジュール214に流れ込むのにつれて、それぞれ、ガス−留分濃度を決定しかつ流体タイプを識別するために流体分析モジュール214が使用し得る。したがって、流体分析モジュール214は、以下の1つ以上の濃度をリアルタイムで決定するために使用し得る:(i)メタン(C1);(ii)エタン−プロパン−ブタン−ペンタン(C2−C5);および(iii)より重い炭化水素分子(C6+)。
少なくともいくつかの実施態様において、システム200は、第2の流体分析モジュール216、例えば組成アナライザー216を含む。例えば、第2の流体分析モジュール316は、ガスクロマトグラフィーモジュール216を含むことができる。ガスクロマトグラフィーモジュール216は、システム200のフローライン210部分から得られる試料採取された地層流体のクロマトグラムを得るように構成されている。ガスクロマトグラフィーモジュール216は、一部の容積を減少させ、それによって、圧力が低下して、ガスクロマトグラフィー分析の支持体中の気相を促進させる容積測定チャンバ(例えば、ピストンチャンバ)を含むことができる。
【0017】
第1の流体アナラザーモジュールと第2の流体アナラザーモジュール214、216の各々は、分析される流体試料の関連の検出した物理的性質を表すそれぞれの出力信号を送る。少なくともいくつかの実施態様において、流体アナライザモジュール214、216の1つ以上からの出力信号がデータ処理システム218に送られる。
データ処理システム218は、表面位置に、例えば、掘削102の近傍にまたは他の遠隔位置に位置することができる。例えば、海底面配置において、処理システム218は、海面リグ、例えば容器上に位置してもよい。ツール200と処理システム218、例えばテレメトリ224の間の適切な通信手段は、1つ以上の流体アナライザモジュール214、216とデータ処理システム218の間の通信を確立するために設けることができる。例えば、通信は二方向になり、アナライザー出力信号が一方向にはデータ処理システム218に伝送され、他の方向には制御信号がアナライザーの1つ以上に送られる。
少なくともいくつかの実施態様において、データ処理システム218は、光アナライザーから出力信号を、また、計算アナライザーから出力信号を受け取ることに応答した流体試料中の各種成分の標的成分の量を決定するように構成されている。データ処理システム218は、メモリ内に記憶されかつデータ処理システム218に利用できる予めプログラムされた指示に従って1つ以上のプロセスを実行するように構成され得る。
また、データ処理システム118は、光学分析モジュール214とガスクロマトグラフィーモジュール216双方からの結果を合わせて、地層流体試料に対する定量的計算分析を得るように構成され得る。有益には、その結果は、内部標準を必要とせずに得ることができる。内部標準の追加された質量、サイズおよび複雑さを必要とせずにその定量的結果を得る能力は、本明細書に記載される装置および技術により達成可能であるように坑井内分析には非常に望ましいものである。
【0018】
いくつかの実施態様において、システム200は、多相サンプラー226を含む。多相サンプラー226は、フローライン210と流体連通しており、熱力学的平衡を維持しつつ、それによって、正確な圧力ライン圧力および温度条件を保存しつつ、フローラインから直接に、ライン条件で多相流体の試料を捕捉するように構成されている。その試料採取によって、収集した流体試料が現場で分析されることが可能である。このようにフローラインからの流体を試料採取することにより、流体試料のガス油比と組成完全性が保存される。
多相サンプラー226の一例は、米国特許第6,993,979号明細書に記載されており、Schlumberger Technology Corporationに譲渡され、全体として本願明細書に組み込まれている。装置例は、可変ベンチュリノズルを有する多相質量流量計を含む。流体の試料は、多相サンプラー226のベンチュリスロートの付近で得ることができる。少なくともいくつかの実施態様において、光吸収測定とガスクロマトグラフィー測定双方が、多相サンプラー226のベンチュリスロートの近い地層流体ストリームから得られる。例えば、光アナライザーおよびガスクロマトグラフィーモジュールの1つ以上が多相サンプラー226内に組み込まれ得る。
表面実施態様において、分析プロセスは、1つ以上の手動工程を含むことができる。例えば、技術者は、組成アナライザー、例えばガスクロマトグラフィーモジュール216によって、組成物評価の試料採取を手動で行うことができる。光学測定は、坑井から得られる炭化水素の流動流と接触し得る光アナライザー214から得ることができる。
【0019】
次に図3を参照すると、流体分析システム300の実施態様の機能ブロック図がさらに詳細に示されている。システム300は、光アナライザー314、組成アナライザー316およびデータプロセッサ318を含む。光アナライザーは、流体試料320を受け取る。本明細書に記載される実施態様において、流体試料は、炭化水素ベースであるが、試料採取時には組成的に不明である。
いくつかの実施態様において、光アナライザー314は、光吸収分光計を含有する。吸収スペクトルは、例えば、可視から近赤外領域において流体の試料の低分解能組成分析を行うために使用し得る。アナライザー314に流れ込むにつれて可視および近赤外光の1つ以上が流体組成物を定量化する。流体を通って選択された波長に向けられる検出器のアレイに光スペクトルが透過する。流体によって吸収される光量は、その組成に左右される。測定された吸収スペクトルは、ユニークな吸収スペクトル、例えば、C1、C2−C5、C6+、CO2およびH2Oに対するスペクトルの線形結合として表され、各分子グループの質量パーセントの決定が可能である。光学アナライザー314の一例は、上で導入されたCFAモジュールである。
他の変形例において、光アナライザー314MDTツールスイートのライブ流体アナライザー(LFA)モジュールには吸収分光計が組み込まれて、試料中の油層掘削流体の量が定量化される。LFAモジュール内の光センサは、複数の波長、例えば、1670nmや1720nmで光吸収を測定するためにこの原理を用いる。
光モジュール314は、試料採取された流体320の分析から決定される測定されたおよび/または算出された結果を表す出力信号を送る。例えば、出力は、参照成分Wref、例えば、C1の質量、ガス油比(例えば、scf/stb)の表示、および他の情報、例えば圧力と温度の情報(例えば、Psig、℃)の1つ以上を含有することができる。そのためには、光アナライザー314は、他のセンサを含み、例えば、流体試料の1つ以上の圧力と温度の1つ以上および局部的な環境が検出される。光モジュール314からの出力データの例を表1に示す。
【0020】
表1.坑井内光流体分析モジュールからの出力データ.


【0021】
いくつかの実施態様において、組成アナライザー316は、試料採取された地層流体のクロマトグラムを得るように構成されている。組成アナライザー316は、質量感受性クロマトグラフィー検出器(例えば、ガスクロマトグラフィーに対してヘリウムイオン化検出器)であり得る。地層流体分析に現在適合しているガスクロマトグラフィー技術の一例は、米国特許第7,384,453号明細書に記載されており、Schlumberger Technology Corporationに譲渡され、全体として本願明細書に組み込まれている。炭化水素の形成の評価の間、試料採取された地層流体の少なくとも一部は、試料採取チャンバにおいて貯蔵され得る。試料は体積変化を受け、例えば、油溶性ガスと液体炭化水素相を分離する。いくつかの実施態様において、集合的な液体炭化水素(油)ケースに存在し得る水は分離することができる。個別モードの分析におけるガスクロマトグラフィーモジュール116は、流体試料中の個々の炭素成分を表す出力を送る。
ガスクロマトグラフィー測定を用いると、地層混合物中の成分を区別するとともに適切な検出器で分離および同定することが可能である。その検出器の例は、“Downhole Sample Analysis Method”と題する同時係属中の米国特許出願第12/872,452号明細書、および米国特許出願公開第2010/0127163号明細書に示されており、各々がSchlumberger Technology Corporationに譲渡され、全体として本願明細書に組み込まれている。
ガスクロマトグラフィーシステム316の動作において、カラムタイプおよび構成、温度プログラム、キャリヤガス流量および圧力、インジェクタ温度および検出器温度を含む標準分析プロトコールが確認に用いられる。いくつかの実施態様において、1つよりも多いクロマトグラフィシステムとプロトコールを、ガスと液体炭化水素相留分の分析に用いて、分解能および精度を最大にすることができる。
データプロセッサ318は、光アナライザー314と組成アナライザー316の各々が送る出力データを受信する。データプロセッサ318は、受信データに応答した流体試料中の各種成分の標的成分の量を決定するように構成されている。少なくともいくつかの実施態様において、データプロセッサ318は、下記の式に従って標的成分Wiの質量パーセントを算出する:
【0022】
【数3】

【0023】
用語Aiは、ガスクロマトグラフの出力から得られる標的成分iの応答反応領域を表す。用語Arefは、ガスクロマトグラフ316の出力から同じように得られる、参照成分(例えば、CH4)の応答領域を表す。用語Wrefは、光アナライザー314から得られる参照成分の質量パーセントである(全体のwt%)。用語Wiは、標的成分iの質量パーセントであり、Rは、検出器応答因子である(必要な場合には分子量および/または炭素数の補正が含まれてもよい)。上付き“GC”および“IFA”は、式を評価するのに用いられる値が組成アナライザー316(例えば、ガスクロマトグラフィー−GCによって)からまたは光アナライザー(例えば、インジェクションフロー分析−IFAによって)から得られるかを示している。上の式をあてはめると、クロマトグラフフィー/スペクトロメトリの結果を定量化/調整する簡単かつ有効な方法が得られる。
少なくともいくつかの実施態様において、システム300は、例えば、上の式の評価を支持するのに使用し得る、結果を記憶するためのメモリデバイス324を含む。例えば、メモリデバイス324は、単一の炭素数成分(CO2、C1、C2…C30+)の質量パーセント、分子量、モルパーセント、比重の1つ以上を記憶している圧力、容積、温度(PVT)データベースを備える。
図4は、流体試料を分析する方法400の実施態様を示す流れ図であり、ここで、流体試料中の標的成分が定量化される。特に、方法は、後述される分析可能な混合物中の成分を定量化するために使用し得る。油層から取り出される少量の地層流体が、例えば、フローラインによって405で受け取られる。地層流体の組成は、参照成分(例えば、C1)および少なくとも1つの他の成分(例えば、C2+)を含む。少なくともいくつかの実施態様において、受け取られた流体試料が、例えば、砂粒子を除去するためにろ過される。
【0024】
流体試料の物理的性質(例えば光学的性質)が410で決定される。特に、光学的性質は、参照成分と標的成分の1つ以上を表し得る。光学的性質を決定するのに、流体試料が、例えば試料採取ツール100内のフローラインを介して、光モジュール114、214、314に送られ得る。少なくともいくつかの実施態様において、光学的性質は、参照成分WrefIFAの質量パーセントを決定するために使用し得る。少なくともいくつかの実施態様において、試料採取された流体が標的成分(分析物)、例えば参照成分の光学的同定を容易にするために試薬と混合し得ることが理解される。その技術は、平衡応答が達成されるまで試薬と試料採取された流体が混合される連続フロー、滴定分析およびインジェクションフロー分析の1つ以上を含むことができる。
流体試料の他の組成分析は、420で行われる。例えば、組成分析は、参照成分と標的成分の表示を含む、試料のクロマトグラフを決定するために、クロマトグラフィー、例えばガスクロマトグラフィーを含むことができる。流体試料の少なくとも一部は、例えば、ガスクロマトグラファを含む、組成アナライザーに送られる。組成アナライザーの出力は、参照成分および、標的成分を含む少なくとも1つの他の成分のクロマトグラフィー結果を含む、試料採取された流体のクロマトグラムを含むことができる。そのクロマトグラフィー結果は、ある成分を表すピークの応答を有する曲線を含むことができる。
さらに詳細には、液体またはガスが試料チャンバ内で膨張しかつ蒸発し、例えば、その方法が米国特許第7,920,970号明細書に記載されており、この明細書はSchlumberger Technology Corporationに譲渡され、全体として本願明細書に組み込まれている。膨張後、バルブによって蒸発した混合物をクロマトグラフィカラムに注入され、例えば、カラムの壁上に堆積された固定相に対する親和性の差のため、対象成分間の分離が達成される。分離した成分は、検出のための検出器に溶離する。
【0025】
炭化水素試料についてのアプリオリ知識なしで、標準プロトコールと、例えば、試料が乾燥ガスであるかどうかに関係なく、主としてC7までの成分またはブラックオイルと、完全にはC36以上の成分と進めなければならない。有益には、光アナライザー114によって得られた流体試料の評価結果は、分解能および精度を改善するためにガスクロマトグラフィーを調整し、さもなければ最適化するために使用し得る。調整の可能性なしのその標準プロトコールによる分析は、不必要により長い分析時間になる。ロギングの間の分析のための長い待ち時間は、例えば、業務のコストがより高く変わるだけでなく、坑井内に入れているツールの危険も増加する。より長い分析時間は、また、キャリヤガスのような消耗品の使用増加を生じ、限られた供給品だけが存在するので、坑井内環境には特に重要な問題である。
それぞれの各成分、例えば、参照成分や標的成分と関連したクロマトグラフの曲線下の領域が決定され得る。例えば、流体試料のクロマトグラフを表すガスクロマトグラファ116、216、316の出力は、処理するためのデータプロセッサ118、218、318に通過させることができる。処理は、425で参照成分、標的成分、および流体試料中に存在する他の成分を表す1つ以上のピークの識別を含むことができる。あるいはまたはさらに、処理は、一つ以上のピーク、例えば、AiGC、ArefGCと関連したクロマトグラフの曲線下で領域を決定することを含むことができる。
光アナライザー(例えば、参照成分、例えば、C1の質量パーセント)からおよび組成アナライザー(例えば、クロマトグラフ、参照成分、例えば、C1を含む、対象の成分に対応するクロマトグラフィーピーク下の領域が決定され得る)からの出力信号がデータ処理システムに送られる。標的成分は、例えば、430でその質量パーセントWiに従って定量化される。標的成分の定量化は、所定の関係に従って光アナライザーWrefIFAおよび組成アナライザーから受け取られる信号、AiGC、ArefGCに応答する。その関係は、図3に関して、上で記載されている。参照成分RrefGCと標的成分RiGCの各々のガスクロマトグラファを応答係数とともに既知の量のWrefIFA、AiGC、ArefGCで置き換えて、式をあてはめることにより、内部標準を必要とすることなく標的成分の質量パーセントWiの定量化が得られる。少なくともいくつかの実施態様において、獲得された化学情報は、地層混合物を確認する最終報告に提示することができる。
【0026】
図5は、流体試料を分析する方法500の他の実施態様を示す流れ図であり、流体試料中の複数の標的成分が定量化されかつ記録される。方法500は、例えば、図4に関して上記の方法400を繰り返すことによって個々の流体試料の1つ以上の標的を定量化するために使用し得る。
参照成分と少なくとも1つ他の成分を有する分析物が505で受け取られる。流体試料の光学的性質が510で決定される。流体試料の参照成分が515でWrefIFAに定量化される。クロマトグラフが520で決定される。第1の標的AiGCと参照ArefGCの応答領域が525で決定される。第1の標的が530でWiGCに定量化される。第1の標的の量が535で記録される。
方法が追加の標的のために繰り返さなければならないかは、540で決定される。例えば、標的成分の所定のリストが提供されるかあるいは同定され得る。方法が繰り返される程度まで、指数付き変数iを545で増加することができ、標的の所定のリストにおける次の標的Ai+1GCの応答領域が550で測定される。次の標的Wi+1GCの量が530で決定され、同じ式をあてはめ、次の標的Ai+1GCに従って更新され、さらに次の標的Ri+1GCに適切な検出器応答係数を用いている。次の標的Wi+1に対する結果は535で記録され、さらに標的が残らなくなるまで方法が繰り返される。その時、結果は、例えば、550で報告書に作成され得る。
いわゆるデランピング技術は、光学流体分析モジュールから得られるC3、C5(またはC2−C5)およびC6+留分を確認するために使用し得る。その技術は、米国特許出願公開第第2009/0158815号明細書に記載されており、Schlumberger Technology Corporationに譲渡され、全体として本願明細書に組み込まれている。デランピング技術は、多くの位置と油層から長年の試料分析の間に集められたデータベースに基づいている。坑井内で達成されるにしても表面で達成されにしても、本明細書に記載される技術は、光アナライザー結果とリアルタイムまたは少なくともリアルタイムに近い結果を可能にするその場流体分析のためのガスクロマトグラフィーモジュールとを組み合わせる。リアルタイム結果を得る能力は、他のプロセス改善、例えば品質管理やガスクロマトグラフィーシステムのハードウェア調整の機会を可能にして、短時間に対象の成分の間のより良好な分解能を得る。図6は、流体アナライザーの一実施態様から得られる流体試料の分析結果の対数プロットを示すグラフであり、デランピング分析を用いて得られた同じ流体試料の結果と比較して良好な一致が示されている。
【0027】
この文書において上記のように、クロマトグラフィーモジュールは、光モジュールから得られる入力結果(例えば、C1、C2−C5、C6+の質量%)として、油層の温度、および分析可能な混合物の密度を用いる。これらのパラメータは、オペレーターによって手動で入力されるかまたは光モジュールからのデータに基づいて自動的に作成された指定されたファイルから読み込まれ、テレメトリシステムによってロギングキャビンへ移すことができる。出力としてのプログラムは、範囲C1−C36+の炭素数質量%に関する分析可能な混合物の予測された組成、および付随するガス(N2、CO2)の質量パーセントを提供する。研究室測定と比較されたデランピング結果の例を図6に示す。100よりも多い異なる流体試料を試験した。デランピングされたものとGCデータの間の一致は、油層流体の異なるタイプに対して良好である(GORの精度は、5−6%であり、密度−3−4%、粘度−10−20%)。
少なくともいくつかの実施態様において、流体分析システムの1つ以上の要素によって得られる結果は、ガスクロマトグラフィー応答予測を達成するために使用し得る。例えば、流動性の分析システムの一つ以上の要素の結果または少なくとも中間結果は、ガスクロマトグラフィーシステム(例えば、分析を行うのに最も適切なカラム/カラムの選択)のハードウェアを調整するために使用し得る。図7は、流体試料を分析する方法の実施態様を示す流れ図であり、流体試料から得られる光学的性質はさらに流体試料の分析結果を得るためのクロマトグラフ調整のために用いられる。
参照成分と少なくとも1つの他の成分を有する分析物は、605で受け取られる。分析物の1つ以上の光学的性質は、610で決定される。参照成分は、615で決定された光学的性質WrefIFAに応答して定量化される。分析物は、1つ以上の決定された光学的性質に応答する620でさらに確認される。
【0028】
分析物をリアルタイムで、または少なくともリアルタイム近くで確認することによって、クロマトグラフィーアナライザーをさらに分析物の確認に応答する625で調整することができる。光アナライザーからの結果は、流体試料の組成に関して予想指標として使用することができる。分析物のクロマトグラフは、630で決定される。クロマトグラフのそれぞれのピーク下の応答領域は、標的成分AiGCと1つ以上の参照成分ArefGCに対して635で決定される。標的WiGCは、定量化された参照WrefIFAおよび標的AiGCと参照ArefGCの決定された応答領域に応答する640で定量化される。
図8の流れ図において例示される別の実施態様において、実施例方法700は、光学分析およびガスクロマトグラフィー分析を用いて流体試料を分析するために識別され、ガスクロマトグラファが流体試料から得られる光学的性質に応答して調整される。特に、参照成分と少なくとも1つの他の成分を有する分析物(例えば、試料流体)は、705で受け取られる。分析物の光学的性質は、710で決定される。分析物は、決定された光学的性質に応答する715で確認される。クロマトグラフィーアナライザーは、分析物確認に応答する720で調整される。分析物のクロマトグラフは、クロマトグラフィーアナライザーを調整した後に725で測定決定される。
あるいはまたはさらに、そのガスクロマトグラフィー応答予測は、獲得データの品質の評価に使用し得る。図9は、光学分析およびクロマトグラフィーの結果が比較される品質管理のためのプロセス800の実施態様を示すフロー流れ図である。
参照成分と少なくとも1つの他の成分を有する流体試料は、805で受け取られる。試料の光学的性質は、810で決定される。試料は、決定された光学的性質に応答する815で確認される。試料のクロマトグラフは、820で決定される。光アナライザーからおよびクロマトグラフから得られる結果は、試料に対して825で比較される。充分な一致が830で、例えばある所定の許容量の範囲内である場合には、本明細書に記載される技術のいずれかに従って流体試料の分析が835で進行する。さもなければ、起こり得る品質管理問題が識別されるかあるいは840で停止する。
【0029】
他の実施態様において、本明細書に記載されるもののような方法が、地層流体分析の他の分析法を用いて流体試料の標的成分を定量化するために適用される。その別の分析法には、質量分析、イオン移動度分光分析、液体クロマトグラフィー、超臨界液体クロマトグラフィーが含まれる。
ライブオイルのような用語“ライブ流体”は、単相で残存する加圧油層流体試料意味するために一般に用いられる。さらに、明確にするために、用語“分析物”は、分析を受けている流体試料を意味するために用いられると聞いている。本発明によれば、分析物は、単相でも多相でもよく、液体炭化水素相、水相、またはガス状炭化水素相を含んでもよい。
本発明の多くの変更および修正がおそらく前述の説明を読んだ後に当業者に明らかになるが、例示として図示され説明される具体的な実施態様が決して限定するものとみなされないことは理解すべきである。さらに、具体的な好ましい実施態様によって本発明を記載してきたが、本発明の真意および範囲内の変更が当業者に見出されるであろう。前述の実施例を単に説明のためにだけ示してきたが、決して本発明を制限するものとして解釈されないことは留意される。
本発明を例示的実施態様によって記載してきたが、本明細書に用いた言葉が限定する言葉でなく説明および例示の言葉であることは理解される。本発明の態様において本発明の範囲および真意を逸脱することなく、現在述べられるように、また、訂正されるように、添付の特許請求の範囲の範囲内で、変更がなされてもよい。
本発明を具体的な手段、材料および実施態様によって本明細書に記載してきたが、本発明は本明細書に開示される詳細に限定されるものではなく;むしろ、本発明は、すべての機能的に等価な構造、方法および使用にまで及び、例えば、添付の特許請求の範囲の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
参照成分および少なくとも1つの他の成分を含有する流体試料を評価するための流体アナライザーであって、流体アナライザーが:
流体試料の少なくとも一部を受け取るように適合された光アナライザーであって、光アナライザーが、流体試料の光学的性質を決定しかつ決定された光学的性質に関連した光アナライザー出力信号を送るように構成された、前記光アナライザー;
流体試料の少なくとも一部を受け取るように適合された組成アナライザーであって、組成アナライザーが、流体試料の元素組成を決定しかつ決定された元素組成を表す組成アナライザー出力信号を送るように構成された、前記組成アナライザー;および
光アナライザーおよび組成アナライザーの各々と連通しているデータプロセッサであって、データプロセッサが、光アナライザー出力信号と計算アナライザー出力信号を受け取ることに応答した少なくとも1つの他の成分の標的成分の量を決定するように構成された、前記データプロセッサ
を備えている、前記流体アナライザー。
【請求項2】
データプロセッサが、下記の式に従って標的成分(WiGC)の量を決定するように構成されている、請求項1に記載の流体アナライザー:
【数1】

式中:WiGC=標的成分の量;
iGC=組成アナライザー出力からの標的応答領域;
refGC=組成アナライザー出力からの参照応答領域;
refIFA=光アナライザー出力信号から決定される参照成分の量;
iGC=標的成分のための組成アナライザー検出器応答係数;および
refGC=参照成分のための組成アナライザー検出器応答係数。
【請求項3】
光アナライザーが、光吸収分光計を備えている、請求項1に記載の流体アナライザー。
【請求項4】
組成アナライザーが、クロマトグラフィーアナライザーを備えている、請求項1に記載の流体アナライザー。
【請求項5】
組成アナライザーが、光アナライザー出力信号に応答して構成可能である、請求項1に記載の流体アナライザー。
【請求項6】
光アナライザーと組成アナライザーの各々が、流体試料がその場で得られるように、掘削内で、坑井内の使用に適合されている、請求項1に記載の流体アナライザー。
【請求項7】
流体試料を得る掘削の外で流体試料の少なくとも一部を受け取るように適合された多相流量計、多相流量計から流体試料を受け取る光アナライザーと組成アナライザーの少なくとも1つをさらに備えている、請求項1に記載の流体アナライザー。
【請求項8】
流体試料が、炭化水素を含む、請求項1に記載の流体アナライザー。
【請求項9】
流体を分析する方法であって、
参照成分および少なくとも1つの他の成分を含有する流体試料を受け取る工程;
流体試料の光学的性質を決定する工程;
測定された光学的性質に応答した参照成分を定量化する工程;
流体試料の独立組成評価を決定する工程;および
独立組成評価および定量化された参照成分に応答した標的成分を定量化する工程
を含む、前記方法。
【請求項10】
流体試料の光学的性質を決定する工程が、流体試料を光吸収分光分析にかける段階を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
独立組成評価を決定する工程が、流体試料のクロマトグラフとスペクトログラフの少なくとも1つを作成する段階を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
独立組成評価を決定する工程が、クロマトグラフとスペクトログラフの少なくとも1つの各々で標的応答領域と参照応答領域を決定する段階をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
標的成分を定量化する工程が、アルゴリズムの評価を含む、請求項12に記載の方法:
【数2】

式中:WiGC=標的成分の量;
iGC=クロマトグラフ/スペクトログラフからの標的応答領域;
refGC=クロマトグラフ/スペクトログラフからの参照応答領域;
refIFA=光アナライザー出力信号から決定される参照成分の量;
iGC=標的成分のための組成アナライザー検出器応答係数;および
refGC=参照成分のための組成アナライザー検出器応答係数。
【請求項14】
決定された光学的性質から、CH4成分の質量パーセント;ひとまとめにして、C26−C512成分の質量パーセント;ひとまとめにして、C6+の質量パーセント;地層圧力(例えば、psig);地層温度(例えば、℃);ガス油比;およびコンデンセートガス比からなる群より選ばれる1つ以上の他の性質を誘導する工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
流体試料を受け取り、光学的性質を決定し、参照を定量化し、独立組成評価を決定する1つよりも多い行為が、掘削内で、坑井内達成される、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
流体試料を多相流量計に通過させる工程であって、流体試料を受け取り、光学的性質を決定し、参照を定量し、かつ独立組成評価を決定する行為が流体試料を得る掘削の外で達成される、前記工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
流体試料の決定された光学的性質に応答した組成アナライザーを予め構成する工程であって、組成アナライザーが、流体試料の独立組成評価を決定するように適合された、前記工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
決定された光学的性質を決定された独立組成評価と比較する工程であって、好適でない比較が光学的性質の決定と独立組成評価の決定の少なくとも1つにおいて品質の欠如を表す、前記工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つの他の成分の他の標的に対して標的成分を定量化する行為を繰り返す工程;および
定量化された標的成分を表す概略報告書を作成する工程
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項20】
定量化する行為が、質量およびモル分率またはパーセトの少なくとも1つを決定することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項21】
参照成分および少なくとも1つの他の成分を含有する流体試料を受け取るための手段;
流体試料の光学的性質を決定するための手段;
測定された光学的性質に応答した参照成分を定量化するための手段;
流体試料の独立組成評価を決定するための手段;および
独立組成評価および定量化された参照成分に応答した標的成分を定量化するための手段
を備えている、流体アナライザー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−79936(P2013−79936A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−110004(P2012−110004)
【出願日】平成24年4月20日(2012.4.20)
【出願人】(500177204)シュルンベルジェ ホールディングス リミテッド (51)
【氏名又は名称原語表記】Schlnmberger Holdings Limited
【Fターム(参考)】