説明

炭化水素を分解する触媒及び燃料電池システム

【課題】 本発明は、耐コーキング性に優れ、DSS運転に最適である、担体とニッケルが強相関を持つニッケル含有触媒及び燃料電池システムの提供を目的とする。
【解決手段】 少なくともニッケルとアルミニウムとを含む化合物と粒子径が1〜25nmである金属ニッケルとからなる触媒であって、金属ニッケル及びニッケルとアルミニウムとを含む化合物の結合エネルギーが、874.5〜871.5ev(Ni 2p1/2)、857〜853ev(Ni 2p3/2)及び73.5〜70ev(Al 2p)であり、活性化エネルギーが4×10〜5×10J/molである炭化水素を分解する触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐コーキング性に優れDSS運転に最適であり、また、高いC数の炭化水素原料の改質性を持つ、担体とニッケルが強相関を持つニッケル含有炭化水素分解触媒及び燃料電池システムである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池の普及に向け品質とコストの両面からのシステム設計検討が進められている。品質より考慮すると、炭化水素を改質する触媒にはルテニウム触媒が最良ではあるものの、コスト面では魅力が薄れてしまう。逆にコスト面より考えるとニッケル触媒が最良であるものの、現行システムの機能材料として組み込めない問題が生じている。特に、その問題として、耐コーキング性の低さが目立つ。
【0003】
コーキングとは、例えば原料が炭化水素である場合、改質反応によって水素と一酸化炭素、二酸化炭素を生成させるが、一部の一酸化炭素や二酸化炭素への反応がうまく機能せずに炭素が触媒金属表面に析出する現象である。さらにそれが進むと、触媒金属表面を覆うようにCNT(カーボンナノチューブ)が析出し、最終的には原料ガスと触媒金属との接触の機会が失われてしまうため、反応に寄与しなくなってしまう。このようなCNT被覆触媒金属が増加すると、結果として触媒としての活性が全く出現しなくなる。併せて、CNTが析出することで触媒層の圧損が起きるだけではなく、触媒成形体の中にCNTが析出し、水蒸気と接触した場合にカーボンの酸化と水素の発生が起きて気体に変化するために、体積が瞬時に膨張し、触媒成形体自身が破裂し粉化してしまう。これにより触媒層の圧損が顕著に現れ、最悪の場合には閉塞してしまう。
【0004】
ルテニウム触媒はこのコーキングに対する耐性は高いものの、ルテニウムが希少金属であるために燃料電池システムのコストが上昇し、好ましくない。
【0005】
一方、ニッケル触媒としては、Ni/Al触媒やこれにMgやNaなどを添加した触媒がよく知られている。この触媒は、工業的に、一定の期間、一定の条件下でほぼ連続して扱われることを前提に用いられており、耐コーキング性が低いため、燃料電池システムのような負荷の変化が多く工業的利用よりも厳しい環境での利用には向いていない。
【0006】
また、家庭用の燃料電池システムでは、より効率的な運転方法としてDSS運転(Daily Start−up and Shutdown)を採用している。これは、電力需要が大きくなる朝方にシステムを稼動し、夜方にシステムを停止する運転方法である。システムを停止後には、改質器中の水素やメタン等の可燃性ガスを追い出すため都市ガスでパージを行う。このパージの際にもコーキングは発生するため、より耐コーキング性に優れた安価なニッケル触媒が求められている。
【0007】
高い耐コーキング性を持つニッケル触媒に関する既存技術として、下記技術が提案されている。(特許文献1〜4)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−135967号公報
【特許文献2】特開2005−224722号公報
【特許文献3】特開2006−061759号公報
【特許文献4】特開2008−018414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記特許文献1(特開2003−135967号公報)には、1〜10nmの粒径を持つNi水蒸気改質触媒について記載されている。特許文献2(特開2005−224722号公報)には、1〜20nmの粒径のNi及び/又はFeよりなるオートサーマルリフォーミング触媒について記載されている。特許文献3(特開2006−061759号公報)には、1〜10nmの金属ルテニウムと、ニッケル、マグネシウム、アルミニウムを構成元素とするスチーム改質触媒について記載されている。特許文献4(特開2008−018414号公報)には、シリカを含むニッケル触媒について記載されている。
【0010】
しかしながら、前記特許文献1〜4に記載された技術では、耐コーキング性に優れ、DSS運転に最適である、担体とニッケルが強相関を持つ触媒を得るには不十分である。
【0011】
そこで、本発明では、担体とニッケルが強相関を持つニッケル含有触媒及び燃料電池システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記技術的課題は、以下の本発明によって解決することができる。
【0013】
即ち、本発明は、少なくともニッケルとアルミニウムとを含む化合物と粒子径が1〜25nmである金属ニッケルとからなる触媒であって、金属ニッケル及びニッケルとアルミニウムとを含む化合物の結合エネルギーが、874.5〜871.5ev(Ni 2p1/2)、857〜853ev(Ni 2p3/2)及び73.5〜70ev(Al 2p)であり、活性化エネルギーが4×10〜5×10J/molである炭化水素を分解する触媒である(本発明1)。
【0014】
また、本発明は、触媒のニッケル含有量は金属換算で5〜30wt%であり、ニッケルが金属ニッケルとして含まれる割合がニッケル含有量に対して40〜75wt%であり、アルミニウム含有量は金属換算で15〜45wt%である本発明1に記載の炭化水素を分解する触媒である(本発明2)。
【0015】
また、本発明は、本発明1又は2に記載の触媒に、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素及び貴金属元素から選ばれる1種以上の元素が含まれる炭化水素を分解する触媒である(本発明3)。
【0016】
また、本発明は、本発明1乃至3のいずれかに記載の炭化水素を分解する触媒を用いることを特徴とする燃料電池システムである(本発明4)。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る触媒は、ニッケルの金属状態/化合物状態の割合を制御することにより活性化エネルギーが低下することから、優れた触媒活性を発揮することができる。
【0018】
また、本発明に係る触媒は、担体成分として取り込まれるニッケル化合物状態を最適にし、担体成分とニッケル間の電子授受に強い相関を与えることから、高C成分の炭化水素原料の改質反応性を高め、優れた耐コーキング性を有するものである。
【0019】
また、本発明に係る触媒は、担体成分とニッケル間に結合性相関を有していることから、改質反応中に金属ニッケルのシンタリングを防止することができ、長期に亘って優れた触媒活性を発揮することができるものである。
【0020】
また、本発明に係る触媒は、金属ニッケルが非常に微細な粒子の状態で存在しているため、水蒸気に接触する面積が増大し、優れた触媒活性を有するものである。
【0021】
さらに、本発明に係る触媒は、金属ニッケルが非常に微細な粒子の状態で存在しているため、活性点が非常に多いことから優れた耐硫黄被毒性を有している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る触媒は、少なくともニッケルとアルミニウムとを含む化合物及びニッケル金属とからなる。ニッケルとアルミニウムとを含む化合物は複合酸化物であって、スピネル型化合物であることが好ましい。
【0023】
本発明に係る触媒は、粒子径が1〜25nmの金属ニッケルを含む。粒子径が1nm未満の金属ニッケルを含む触媒を得ることは困難である。金属ニッケルの粒子径が25nmを超えると触媒の初期活性が低下すると同時に耐コーキング性が悪くなる。好ましい金属ニッケルの粒子径は1〜22nm、より好ましくは2〜20nmである。
【0024】
本発明に係る触媒における金属ニッケル及びニッケルとアルミニウムとを含む化合物の結合エネルギーは、874.5〜871.5eV(Ni 2p1/2)、857〜853eV(Ni 2p3/2)及び73.5〜70eV(Al 2p)である。これら結合エネルギーが最大の数値を超える触媒は得られない。逆に最小の数値未満の触媒では、耐コーキング性が著しく低下する。金属ニッケル及びニッケルとアルミニウムとを含む化合物の結合エネルギー(Ni 2p1/2、Ni 2p3/2、Al 2p)は、好ましくは874.5〜872eV、857〜854eV及び73〜70eV、より好ましくは874〜872eV、856.5〜854eV及び73〜70.5eVである。
【0025】
本発明に係る触媒の活性化エネルギーは4×10〜5×10J/molである。活性化エネルギーが4×10J/mol未満の触媒は得られない。また、5×10J/molを超える場合は反応性が乏しいため高C成分の炭化水素原料の改質反応性が悪く、耐コーキング性も低い。活性化エネルギーは、好ましくは4.0×10〜4.8×10J/mol、より好ましくは4.0×10〜4.6×10J/molである。
【0026】
また、本発明に係る触媒のニッケル含有量は金属ニッケル換算で5〜30wt%であることが好ましい。ニッケル含有量が5wt%未満では触媒の初期活性が低下する。また30wt%を超えると上記した金属ニッケル粒子径の範囲の触媒が得られない。ニッケル含有量は、より好ましくは7〜25wt%、更により好ましくは9〜23wt%である。
【0027】
また、ニッケルが金属として含まれる割合は、ニッケル含有量に対して40〜75wt%であることが好ましい。金属ニッケルの割合が40wt%未満では触媒の初期活性が大きく低下する。また、金属ニッケルの割合が75wt%を超えると上記した金属ニッケル粒子径の範囲の触媒を得ることができない。金属ニッケルの割合は、より好ましくは42〜74wt%、更により好ましくは45〜73wt%である。
【0028】
また、アルミニウム含有量は金属アルミニウム換算で15〜45wt%であることが好ましい。アルミニウム含有量が15wt%未満では触媒の初期活性が大きく低下する。また、アルミニウム含有量が45wt%を超えるとニッケル含有量に対する金属ニッケルの割合が40wt%未満となり、触媒の初期活性が大きく低下する。アルミニウム含有量はより好ましくは17〜44wt%、更により好ましくは18〜43wt%である。
【0029】
本発明に係る触媒には、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素及び貴金属元素から選ばれる1種以上の元素が含まれてもよい。アルカリ金属元素としては、ナトリウム、カリウム、アルカリ土類金属元素としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、希土類元素としては、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウムなどの3B族及びランタノイド系、貴金属元素としては、白金、金、イリジウム、パラジウム、銀、インジウム、レニウム、ルテニウム、ロジウムなどがその例として挙げられる。
【0030】
これらの元素は、その組合せや量に関して特に限定されるものではなく、用途に見合った触媒の性能を重視して選択すればよい。例えば、アルカリ金属の含有量としては0.5〜10wt%、アルカリ土類金属元素の含有量としては0.5〜35wt%、希土類元素の含有量としては0.5〜10wt%、貴金属元素の含有量としては0.05〜5wt%である。
【0031】
本発明に係る触媒は、ニッケル、アルミニウム及びアルカリ土類金属元素からなる化合物/ニッケル、アルミニウム及び希土類元素からなる化合物/ニッケル、アルミニウム及び貴金属元素からなる化合物/ニッケル、アルミニウム、アルカリ土類金属元素及び希土類元素からなる化合物/ニッケル、アルミニウム、アルカリ土類金属元素及び貴金属元素からなる化合物/ニッケル、アルミニウム、希土類元素及び貴金属元素からなる化合物/ニッケル、アルミニウム、アルカリ土類金属元素、希土類元素及び貴金属元素からなる化合物/ニッケル、アルミニウム、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素及び貴金属元素からなる化合物のいずれかであることが好ましい。
【0032】
触媒に含まれる貴金属元素は、金属の状態でニッケルと合金化、あるいは、ニッケル粒子表面に存在する。これは、X線吸収微細構造(XAFS)を用いて確認すればよい。
【0033】
次に、本発明に係る触媒の製造方法について述べる。
【0034】
本発明に係る触媒は、ニッケルとアルミニウムとを含む化合物を作製する工程、前記化合物を含む触媒前駆体の成形体を作成する工程、有機バインダーの脱炭及び触媒前駆体に含まれる水分の除去と焼結を行う第一熱処理工程、還元によって触媒金属元素を金属化する第二熱処理工程を経て製造される。
【0035】
上記ニッケルとアルミニウムとを含む化合物は湿式反応によって得ることができる。湿式反応は、硝酸塩、塩化物、硫酸塩、水酸化物などの金属原料とアルカリ性化合物を反応させることで得る手法が工業的には最適である。この工程で、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、貴金属元素を添加してもよい。これを触媒前駆体とする。得られた沈殿物は、遠心分離や濾過によって取り出し、必要に応じて乾燥や粉砕を行う。
【0036】
上記の湿式反応で得られた沈殿物のケーキ状ペーストあるいは粉末状の触媒前駆体に、有機バインダー又は無機バインダーや溶剤を加え、成形加工する。無機バインダーとしては、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア、マグネシア、カルシア、希土類元素化合物が好ましく、有機バインダーとしてはポリビニルアルコール、アクリル樹脂、セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ポリアミド樹脂、アルキド樹脂、マレイン酸樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。また、溶剤としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノールなどのアルコール類、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールなどグリコール類など各種その例を挙げられる。
【0037】
本発明における触媒前駆体の成形加工方法としては、転動造粒機、パン型造粒機、押出成形機、打錠成形機、成形体への塗布担持、アルミナ繊維などへの担持など、各種各様行えばよい。成形後、必要があれば、乾燥機などにより、溶媒や水分を除去してもよい。
【0038】
本発明に係る触媒の成形体の形状は、特に制約されず、通常の触媒に採用されている形状であれば良い。例えば、球状、円柱状、中空円柱状、ペレット状等である。
【0039】
本発明に係る触媒の成形体のサイズは、球状の場合、通常1〜10mmφであり、好ましくは2〜8mmφである。
【0040】
上記の方法で加工した触媒前駆体の成形体に対し、第一熱処理:有機バインダーの脱炭及び触媒前駆体に含まれる水分の除去と焼結による成形体の強度向上、第二熱処理:還元による触媒金属元素の金属化、の2つの処理が必要となる。これら2つの処理は各々単独の装置で行ってもよく、連続して1つの装置で行ってもよい。
【0041】
まず、第一熱処理について述べる。第一熱処理は、(1)脱炭及び脱水、(2)焼結の2過程よりなっている。
いずれの過程も、熱処理時には必ず空気や酸素などのガスを流通させる必要がある。ガスを流通させなければ、炉内に有機バインダー成分蒸気や水蒸気が充満し、脱炭及び水分除去がうまく進まない。
【0042】
第一熱処理におけるガス流通量は、炉の容積1m当たりにおける触媒量とガス流量の積が1〜5000(kg・L/min)/mとなる範囲が好ましい。1(kg・L/min)/m未満では時間当たりの作製量が少なく生産には向いていない。5000(kg・L/min)/mを超えると、炉内に有機バインダー成分蒸気や水蒸気が充満し、脱炭及び水分除去がうまく進まない。より好ましいガス流通量は、炉の容積1m当たりにおける触媒量とガス流量の積で、5〜4000(kg・L/min)/mである。また、(1)と(2)の過程を各々の装置あるいは1つの装置いずれで行ってもよい。
【0043】
まず(1)の脱炭及び脱水過程について述べる。
熱処理の昇温速度は0.2〜2.0℃/minであることが好ましい。0.2℃/min未満では時間当たりの作製量が少なく生産には向いていない。2.0℃/minを超えると、有機バインダー成分蒸気や水蒸気の時間当たりの発生量が増えすぎて、乾燥ガスによるガス置換がうまく進まず、触媒成形体の強度が得られない。また、有機バインダーあるいは析出した炭素が場合によっては爆発的に反応し触媒成形体が破裂・破壊されることがある。より好ましい昇温速度は、0.3〜1.8℃/min、更により好ましくは、0.5〜1.5℃/minである。
【0044】
本発明においては、昇温を多段階に分けて行ってもよく、最終的に到達目標の設定温度に到達するまでに所定温度で0.5〜12h保持してもよい。また、保持する回数には制限がない。保持することにより、過度の有機バインダー成分蒸気や水蒸気の発生を抑制でき、また、確実に有機バインダー成分蒸気や水蒸気を除去できることで、触媒成形体の破裂・破壊や成形体強度の低下を抑制できる。このときの所定温度は、溶剤や有機バインダーの種類や量、含まれる水分量によって決めればよい。また、保持時間0.5h未満では有機バインダー成分蒸気や水蒸気除去に不十分である。12hを超えると時間当たりの作製量が少なく、生産には向いていない。例えば、示差熱熱重量同時測定装置(TG−DTA)を用いることでこれらの温度と時間を求めることが可能である。
【0045】
次に(2)の焼結過程について述べる。
焼結過程は含有するニッケルの金属状態/化合物状態の割合を決定する重要な作業となる。最終的な到達目標の設定温度は920〜1250℃でが好ましい。920℃を下回ると本発明の触媒は得られないだけではなく、成形体の強度が得られない。1250℃を超えると、ニッケルと担体成分の結合が強くなり、活性化エネルギーが増大し、触媒性能が低下する。保持時間は2〜12hが好ましい。2h未満では焼結が進まず成形体の強度が得られない。12hを超えると、焼結反応がほぼ終了することもあり、時間当たりの生産量を考慮すると生産的ではない。より好ましい到達目標速度は、2.5〜10hである。
【0046】
(1)、(2)いずれの過程においても、焼成完了後の冷却速度はバッチ式熱処理機の場合は1〜50℃/minであることが好ましい。1℃/min未満では時間当たりの作製量が少なく、生産には向いていない。50℃/minを超える冷却速度はバッチ式熱処理機では得られない。より好ましい冷却速度は、2〜35℃/minである。また、連続式熱処理機の場合は5〜100℃/minであることが好ましい。5℃/min未満では連続式熱処理機を使用するメリットがない。100℃/minを超える冷却速度は得られない。より好ましい冷却速度は10〜80℃/minである。連続式熱処理機は、素早く触媒成形体を冷却できることにメリットがある。バッチ式熱処理機は、設備への投資額を連続式に比べ抑えることができるメリットがある。冷却する温度は、続く第二熱処理によって異なる。連続して還元処理に入る場合には、還元処理温度付近が最適である。バッチ式熱処理の場合には、室温付近まで冷却し、次の第二熱処理機に移す必要がある。
【0047】
次に第二熱処理について述べる。第二熱処理は含有するニッケルの金属状態/化合物状態の割合を決定する重要な作業となる。
まず初めに、窒素ガスで炉内の雰囲気をパージする。このとき、窒素を導入する前に真空引きを行ってもよい。また、真空引きと窒素ガスパージを数回繰り返してもよい。その後、所定の温度まで窒素ガスを流すか、所望の水素ガス濃度のガスを流通させてもよい。水素ガスは100vol%でもよいが、窒素やアルゴンガスなどで薄めた水素ガスを導入してもよい。
【0048】
第二熱処理において流通させる水素ガス量は、炉の容積1m当たりにおける触媒量とガス流量の積が1〜15000(kg・L/min)/mとなる範囲が好ましい。1(kg・L/min)/m未満では時間当たりの作製量が少なく生産には向いていない。15000(kg・L/min)/mを超えると、還元に寄与しない水素ガスが多量に発生するため、生産コストが割高となり、生産的ではない。あるいは、触媒量があまりにも多い場合には本発明の触媒は得られない。より好ましい流通させる水素ガス量は、炉の容積1m当たりにおける触媒量とガス流量の積で、10〜12500(kg・L/min)/m、更により好ましくは15〜12500(kg・L/min)/mである。
【0049】
昇温速度は1〜15℃/minであることが好ましい。1℃/min未満では生産性に欠ける。15℃/minを超えると還元処理中に発生する水蒸気を効率よく排出することができず、金属ニッケル粒子が巨大化する。より好ましい昇温速度は1〜12℃/min、更により好ましくは1〜10℃/minである。
【0050】
最終的な到達目標の温度設定は、600〜900℃であることが好ましい。600℃未満ではニッケルが金属状態になりにくい。900℃を超えると含有ニッケル中の金属ニッケル量が増大し、担体成分との結合エネルギーを低下することから、耐コーキング性を著しく低下させてしまう。より好ましい到達目標速度は620〜890℃、更により好ましくは650〜880℃である。到達目標設定温度での保持時間は1〜10hであることが好ましい。1h未満でも10hを超えても目的とする触媒は得られない。より好ましい保持時間は1.5〜8hである。
【0051】
冷却速度は特に限定されない。使用する第二熱処理の装置の設計に依存させてもよい。ただし、200℃を下回ってから大気中に取り出す必要がある。200℃を超える温度で大気中に取り出すと、金属ニッケルは酸化ニッケル(II)に酸化される。
【0052】
次に、本発明における炭化水素から水素を含む混合改質ガスを製造する方法について述べる。
【0053】
本発明に係る触媒を用いることで、炭化水素原料より水素を生成させることができる。炭化水素原料としては、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、エタン、プロパン、ブタン2−メチルブタン、2,2−ジメチルプロパン、n−ヘキサン、シクロヘキサンやケロシン、ナフサ、パラフィン、灯油、石油などが挙げられる。水素を生成させる反応としては、ドライ改質、水蒸気改質、部分酸化反応、オートサーマル反応、水性ガスシフト反応などいずれでもよい。燃料電池システムに用いるときは、炭化水素原料としては、都市ガスやLPG、灯油を挙げることができ、反応としては、水蒸気改質、部分酸化反応、オートサーマル反応が挙げられる。反応条件は各システムの最適使用条件に依存する。例えば、S/C=2〜3.5、GHSVdry=100〜5,000h−1、反応温度=350〜900℃の条件が挙げられる。
【0054】
<作用>
本発明に係る触媒が、高C成分の炭化水素原料の改質反応性に富み、且つ、優れた触媒活性、耐コーキング性を有する理由については、本発明者は次のように推定している。
【0055】
本発明に係る触媒は、第一熱処理(脱炭、脱水、焼結)、第二熱処理(還元処理)の調整により、ニッケルの金属状態/化合物状態の割合を制御することで活性化エネルギーを低下することから、優れた触媒活性を発揮することができるものであると本発明者は推測している。
【0056】
また、本発明に係る触媒は、第一熱処理(脱炭、脱水、焼結)、第二熱処理(還元処理)の調整により、担体成分とニッケル間の電子授受に強い相関を与えることで高C成分の炭化水素原料の改質反応を高めることができ、優れた耐コーキング性を有するものであると本発明者は推測している。
【0057】
さらに、本発明に係る触媒は、担体成分とニッケル間に結合性相関を有していることから、改質反応中に金属ニッケルのシンタリングを防止することができ、長期に亘って優れた触媒活性を発揮できるものであると本発明者は推測している。
【0058】
また、本発明に係る触媒は、金属ニッケルが非常に微細な粒子状態で存在しているため、水蒸気に接触する面積が増大し、優れた触媒活性を有する。
【0059】
さらに、本発明に係る触媒は、金属ニッケルが非常に微細な粒子状態で存在しているため、活性点が非常に多いことから優れた耐硫黄被毒性を有している。
【実施例】
【0060】
本発明の代表的な実施の形態は次の通りである。
【0061】
金属ニッケルの粒子径は透過型電子顕微鏡(日本電子(株)、JEM−1200EXII)を用いて測定した。
【0062】
ニッケル及びアルミニウム、またアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類金属元素、貴金属元素の含有量は、試料を酸で溶解し、プラズマ発光分光分析装置(セイコー電子工業(株)、SPS4000)を用い分析して求めた。
【0063】
金属ニッケル及びニッケルとアルミニウムとを含む化合物の結合エネルギー、活性化エネルギーはXPS(X線光電子分光)を用いて求めた。
【0064】
本発明の代表的な実施の形態は次の通りである。
【0065】
実施例1
<触媒前駆体の調整>
MgSO・7HO、2695.0gとAl(SO・8HO、1063.6g、NiSO・6HO、574.9gを純水で溶解させ12000mlとした。別にNaOH、8563ml(14mol/L濃度)とNaCO、324.6gを溶解させたものを合わせた25000mlのアルカリ混合溶液を用意した。このアルカリ混合溶液に前記マグネシウム塩とアルミニウム塩、ニッケル塩との混合溶液を加え、95℃で8時間熟成後、濾別分離、乾燥、粉砕し触媒前駆体粉末を得た。
【0066】
<成形体の調整>
得られた触媒前駆体粉末1323.4gにベーマイト、72.78gとPVA、151.5g、さらに水、277.9gとプロピレングリコール、860.2gを混合し、スクリューニーダーで3時間混練した。混練後の粘土状混練物を圧縮成形法により球状に成形後、105℃で24時間乾燥し、触媒前駆体成形体を得た。
【0067】
<第一熱処理:脱炭及び脱水過程、焼結過程>
得られた触媒前駆体成形体をバッチ式雰囲気焼成炉に投入し、Airを炉の容積1m当たりにおける触媒量とガス流量の積が666(kg・L/min)/mとなるように流通しながら、1℃/minで1125℃まで昇温し、4時間保持した。昇温途中に200℃、300℃、400℃でそれぞれ1時間保持し、脱炭及び脱水を促進した。その後、3℃/minで冷却し、100℃を下回ってから成形物を取り出した。
【0068】
<第二熱処理>
焼成した成形物を固定床式還元炉に投入し、100%水素ガスを炉の容積1m当たりにおける触媒量とガス流量の積が12000(kg・L/min)/mとなるように流通しながら、3℃/minで770℃まで昇温し、そのまま6時間保持した。その後、金属ニッケルの酸化を防ぐため窒素雰囲気下で50℃以下まで炉冷し、成形物(触媒)を取り出した。得られた触媒中のニッケル含有量は14.988wt%であり、その内金属ニッケルは74.2wt%であり、アルミニウム含有量は17.752wt%であった。また、金属ニッケルの粒子径は9.8nmであり、金属ニッケル及びニッケルを含んだアルミニウムとの化合物の結合エネルギー(Ni 2p1/2、Ni 2p3/2、Al 2p)はそれぞれ872.1eV、853.2eV、70.5eVであり、活性化エネルギーは4.1×10J/molであった。
【0069】
<触媒を用いた反応>
得られた触媒の性能評価は、直径20mm、容積100ccの単管固定床流通式ステンレス製反応管に10〜50g触媒を充填して触媒管を作った。この触媒管(反応器)に対して、原料ガス及び水蒸気を流通し、触媒性能評価を行った。改質反応後のガスの成分分析はガスクロマトグラフを用いた。
【0070】
DSS運転方法には、下記する立ち上げ方法、定常運転、立ち下げ方法を採用した。
立ち上げ方法:室温から昇温を開始し、250℃で水蒸気を、350℃で都市ガス(13A)を流通開始
定常運転:700℃で1時間保持(触媒性能評価を実施)
立ち下げ方法:水蒸気及び都市ガス(13A)を流通しながら、300℃まで降温し水蒸気及び都市ガス(13A)の流通停止。その後、100℃を下回ってから都市ガス(13A)で反応管内部に残った改質ガスを除去
【0071】
以上の炭化水素はメタン、CO、CO、Hとして分解されるため、Cn転化率(全炭化水素転化率)を用いた。また、都市ガス(13A)を用いた場合、原料ガス中に含まれるC以上の炭化水素(エタン、プロパン、ブタン、ペンタン等)の転化率を13A転化率として算出した。
例)原料ガスにプロパンを用いた場合
プロパン転化率
=100×(CO+CO+CH+C)/(CO+CO+CH+C+C
Cn転化率(全炭化水素転化率)
=(CO+CO)/(CO+CO+CH+C+C
【0072】
表1には、結合エネルギー、活性化エネルギー等の分析結果一覧を示す。表2には、原料ガスとしてプロパンを用い、GHSVが3000h−1、反応温度が300℃〜700℃、水蒸気/炭素(S/C)が3.0の場合における反応時間とプロパン転化率及び未反応プロパンの関係を示す。表3には、原料ガスとして都市ガス(13A)を用いたDSS運転による炭化水素転化率への影響及び炭素析出量の関係について示す。
【0073】
実施例2
<触媒前駆体の調整>
Mg(NO・6HO、2247.1gとAl(NO・9HO、1429.3g、Ni(NO・6HO、1662.0gとを純水で溶解させ15000mlとした。別にNaOH、4916ml(14mol/L濃度)とNaCO、565.5gを溶解させたものを合わせた20000mlのアルカリ混合溶液を用意した。このアルカリ混合溶液に前記マグネシウム塩とアルミニウム塩、ニッケル塩との混合溶液を加え、80℃で6時間熟成後、濾別分離、乾燥、粉砕し触媒前駆体粉末を得た。
【0074】
<成形体の調整>
得られた触媒前駆体粉末1671.3gにγ―Al、83.56gとエチルセルロース、157.9g、さらに水、501.4gとエチレングリコール、835.6gを混合し、スクリューニーダーで5時間混練した。混練後の粘土状混練物を押出成形機で円柱状に成形後、115℃で24時間乾燥し、触媒前駆体成形体を得た。
【0075】
<第一熱処理:脱炭及び脱水過程、焼結過程>
得られた触媒前駆体成形体をバッチ式雰囲気焼成炉に投入し、Airを炉の容積1m当たりにおける触媒量とガス流量の積が16.7(kg・L/min)/mとなるように流通しながら、1℃/minで1220℃まで昇温し、2時間保持した。昇温途中に250℃、350℃でそれぞれ2時間保持し、脱炭及び脱水を促進した。その後、48℃/minで冷却し、100℃を下回ってから成形物を取り出した。
【0076】
<第二熱処理>
焼成した成形物を固定床式還元炉に投入し、10%水素ガス(窒素希釈)を炉の容積1m当たりにおける触媒量とガス流量の積が33.3(kg・L/min)/mとなるように流通しながら、14℃/minで880℃まで昇温し、そのまま1時間保持した。その後、金属ニッケルの酸化を防ぐため窒素雰囲気下で50℃以下まで炉冷し、成形物(触媒)を取り出した。得られた触媒中のニッケル含有量は28.897wt%であり、その内金属ニッケルは43.6wt%であり、アルミニウム含有量は21.520wt%であった。また、金属ニッケルの粒子径は24.1nmであり、金属ニッケル及びニッケルを含んだアルミニウムとの化合物の結合エネルギーはそれぞれ874.4eV、856.9eV、73.4eVであり、活性化エネルギーは4.2×10J/molであった。
【0077】
実施例3
<触媒前駆体の調整>
Ca(NO、1827.7gとAl(SO・8HO、1230.7g、NiSO・6HO、1064.5gとを純水で溶解させ20000mlとした。別にNaOH、4219ml(14mol/L濃度)とNaCO、375.6gを溶解させたものを合わせた25000mlのアルカリ混合溶液を用意した。このアルカリ混合溶液に前記カルシウム塩とアルミニウム塩、ニッケル塩との混合溶液を加え、85℃で12時間熟成後、濾別分離、乾燥、粉砕し触媒前駆体粉末を得た。
【0078】
<成形体の調整>
得られた触媒前駆体粉末1531.4gにカオリナイト、581.9gとPVA、144.7g、さらに水、76.57gとグリセリン、1255.7gを混合し、スクリューニーダーで2時間混練した。混練後の粘土状混練物を打錠成形機で球状に成形後、150℃で12時間乾燥し、触媒前駆体成形体を得た。
【0079】
<第一熱処理:脱炭及び脱水過程、焼結過程>
得られた触媒前駆体成形体をバッチ式雰囲気焼成炉に投入し、Airを炉の容積1m当たりにおける触媒量とガス流量の積が4800(kg・L/min)/mとなるように流通しながら、1℃/minで950℃まで昇温し、12時間保持した。昇温途中に300℃、400℃でそれぞれ1時間保持し、脱炭及び脱水を促進した。その後、15℃/minで冷却し、100℃を下回ってから成形物を取り出した。
【0080】
<第二熱処理>
焼成した成形物を固定床式還元炉に投入し、30%水素ガス(アルゴン希釈)を炉の容積1m当たりにおける触媒量とガス流量の積が14400(kg・L/min)/mとなるように流通しながら、10℃/minで830℃まで昇温し、そのまま3時間保持した。その後、金属ニッケルの酸化を防ぐため窒素雰囲気下で50℃以下まで炉冷し、成形物(触媒)を取り出した。得られた触媒中のニッケル含有量は14.660wt%であり、その内金属ニッケルは56.5wt%であり、アルミニウム含有量は15.927wt%であった。また、金属ニッケルの粒子径は15.2nmであり、金属ニッケル及びニッケルを含んだアルミニウムとの化合物の結合エネルギーはそれぞれ874.2eV、854.2eV、72.2eVであり、活性化エネルギーは4.3×10J/molであった。
【0081】
実施例4
<触媒前駆体の調整>
MgSO・7HO、1462.3gとAl(SO・8HO、1442.7g、NiSO・6HO、467.9g、硝酸Ru溶液(51g/L)、331.7mlとを純水で溶解させ12000mlとした。別にNaOH、8124ml(14mol/L濃度)とNaCO、440.3gを溶解させたものを合わせた23000mlのアルカリ混合溶液を用意した。このアルカリ混合溶液に前記マグネシウム塩とアルミニウム塩、ニッケル塩、ルテニウム塩との混合溶液を加え、65℃で10時間熟成後、濾別分離、乾燥、粉砕し触媒前駆体粉末を得た。
【0082】
<成形体の調整>
得られた触媒前駆体粉末1032.2gにベーマイト、619.3gとセルロース樹脂、118.2g、さらに水、103.2gとジエチレングリコール、722.6gを混合し、スクリューニーダーで5時間混練した。混練後の粘土状混練物を圧縮成形法により球状に成形後、125℃で24時間乾燥し、触媒前駆体成形体を得た。
【0083】
<第一熱処理:脱炭及び脱水過程、焼結過程>
得られた触媒前駆体成形体をバッチ式雰囲気焼成炉に投入し、Airを炉の容積1m当たりにおける触媒量とガス流量の積が333.3(kg・L/min)/mとなるように流通しながら、1℃/minで1075℃まで昇温し、8時間保持した。昇温途中に400℃、500℃でそれぞれ1時間保持し、脱炭及び脱水を促進した。その後、22℃/minで冷却し、100℃を下回ってから成形物を取り出した。
【0084】
<第二熱処理>
焼成した成形物を固定床式還元炉に投入し、22%水素ガスを炉の容積1m当たりにおける触媒量とガス流量の積が8666.7(kg・L/min)/mとなるように流通しながら、8℃/minで815℃まで昇温し、そのまま2時間保持した。その後、金属ニッケルの酸化を防ぐため窒素雰囲気下で50℃以下まで炉冷し、成形物(触媒)を取り出した。得られた触媒中のニッケル含有量は8.754wt%であり、その内金属ニッケルは56.1wt%であり、アルミニウム含有量は37.671wt%であった。また、金属ニッケルの粒子径は13.4nmであり、金属ニッケル及びニッケルを含んだアルミニウムとの化合物の結合エネルギーはそれぞれ872.5eV、855.5eV、71.2eVであり、活性化エネルギーは4.4×10J/molであった。
【0085】
実施例5
<触媒前駆体の調整>
Mg(NO・6HO、1398.2gとAl(NO・9HO、568.2g、Ni(NO・6HO、132.1g、La(NO・6HO、118.4gとを純水で溶解させ9000mlとした。別にNaOH、2286ml(14mol/L濃度)とNaCO、224.7gを溶解させたものを合わせた11000mlのアルカリ混合溶液を用意した。このアルカリ混合溶液に前記マグネシウム塩とアルミニウム塩、ニッケル塩との混合溶液を加え、125℃で6時間熟成後、濾別分離、乾燥、粉砕し触媒前駆体粉末を得た。
【0086】
<成形体の調整>
得られた触媒前駆体粉末698.7gにγ―Al、38.43gとPVA、46.12g、さらに水、167.7gとエチレングリコール、370.4gを混合し、スクリューニーダーで2時間混練した。混練後の粘土状混練物を押出成形機で円柱状に成形後、115℃で18時間乾燥し、触媒前駆体成形体を得た。
【0087】
<第一熱処理:脱炭及び脱水過程、焼結過程>
得られた触媒前駆体成形体をバッチ式雰囲気焼成炉に投入し、Airを炉の容積1m当たりにおける触媒量とガス流量の積が1666.7(kg・L/min)/mとなるように流通しながら、1℃/minで1180℃まで昇温し、5時間保持した。昇温途中に200℃、300℃、400℃、500℃、600℃でそれぞれ1時間保持し、脱炭及び脱水を促進した。その後、8℃/minで冷却し、100℃を下回ってから成形物を取り出した。
【0088】
<第二熱処理>
焼成した成形物を固定床式還元炉に投入し、100%水素ガスを炉の容積1m当たりにおける触媒量とガス流量の積が8333.3(kg・L/min)/mとなるように流通しながら、5℃/minで650℃まで昇温し、そのまま10時間保持した。その後、金属ニッケルの酸化を防ぐため窒素雰囲気下で50℃以下まで炉冷し、成形物(触媒)を取り出した。得られた触媒中のニッケル含有量は4.957wt%であり、その内金属ニッケルは61.2wt%であり、アルミニウム含有量は18.969wt%であった。また、金属ニッケルの粒子径は2.5nmであり、金属ニッケル及びニッケルを含んだアルミニウムとの化合物の結合エネルギーはそれぞれ873.6eV、856.6eV、70.2eVであり、活性化エネルギーは4.4×10J/molであった。
【0089】
実施例6
<第一熱処理:脱炭及び脱水過程、焼結過程>
実施例1で得られた触媒前駆体成形体をバッチ式雰囲気焼成炉に投入し、Airを炉の容積1m当たりにおける触媒量とガス流量の積が2666.7(kg・L/min)/mとなるように流通しながら、1℃/minで1020℃まで昇温し、10時間保持した。昇温途中に700℃、800℃、900℃でそれぞれ1時間保持し、脱炭及び脱水を促進した。その後、8℃/minで冷却し、100℃を下回ってから成形物を取り出した。
【0090】
<第二熱処理>
焼成した成形物を固定床式還元炉に投入し、85%水素ガスを炉の容積1m当たりにおける触媒量とガス流量の積が3666.7(kg・L/min)/mとなるように流通しながら、12℃/minで720℃まで昇温し、そのまま8時間保持した。その後、金属ニッケルの酸化を防ぐため窒素雰囲気下で50℃以下まで炉冷し、成形物(触媒)を取り出した。得られた触媒中のニッケル含有量は14.988wt%であり、その内金属ニッケルは68.5wt%であり、アルミニウム含有量は17.752wt%であった。また、金属ニッケルの粒子径は7.5nmであり、金属ニッケル及びニッケルを含んだアルミニウムとの化合物の結合エネルギーはそれぞれ872.9eV、853.7eV、73.3eVであり、活性化エネルギーは4.1×10J/molであった。
【0091】
比較例1
<第一熱処理:脱炭及び脱水過程、焼結過程>
実施例1で得られた触媒前駆体成形体をバッチ式雰囲気焼成炉に投入し、ガス流通無しで1300℃まで昇温し、5時間保持した。昇温途中に脱炭及び脱水を促すための温度維持はしなかった。その後、20℃/minで冷却し、100℃を下回ってから成形物を取り出した。第一熱処理後に、成形物はバラバラの状態になっていた。
【0092】
<第二熱処理>
焼成物を固定床式還元炉に投入し、100%水素ガスを炉の容積1m当たりにおける触媒量とガス流量の積が12000(kg・L/min)/mとなるように流通しながら、3℃/minで770℃まで昇温し、そのまま6時間保持した。その後、金属ニッケルの酸化を防ぐため窒素雰囲気下で50℃以下まで炉冷し、成形物(触媒)を取り出した。得られた触媒中のニッケル含有量は14.988wt%であり、その内金属ニッケルは6.5wt%であり、アルミニウム含有量は17.752wt%であった。また、金属ニッケルの粒子径は3.2mであり、金属ニッケル及びニッケルを含んだアルミニウムとの化合物の結合エネルギーはそれぞれ872.6eV、854.8eV、70.5eVであり、活性化エネルギーは5.8×10J/molであった。
【0093】
比較例2
<第二熱処理>
実施例1で得られた触媒前駆体成形体を第一熱処理を行わず、第二熱処理を行った。実施例1で得られた触媒前駆体成形体を固定床式還元炉に投入し、100%水素ガスを炉の容積1m当たりにおける触媒量とガス流量の積が3.33(kg・L/min)/mとなるように流通しながら、1℃/minで950℃まで昇温し、そのまま10時間保持した。その後、金属ニッケルの酸化を防ぐため窒素雰囲気下で50℃以下まで炉冷し、成形物(触媒)を取り出した。得られた触媒中のニッケル含有量は14.988wt%であり、その内金属ニッケルは95.6wt%であり、アルミニウム含有量は17.752wt%であった。また、金属ニッケルの粒子径は48.6mであり、金属ニッケル及びニッケルを含んだアルミニウムとの化合物の結合エネルギーはそれぞれ865.2eV、839.5eV、67.2eVであり、活性化エネルギーは5.4×10J/molであった。
【0094】
比較例3
α−アルミナ粉末を3mmφの球形状ビーズとして、1150℃で18時間空気中にて焼成した。このα−アルミナビーズにNi(NO・6HO、71.25gを純水に溶解させた200mlの溶液をスプレーで数回に分けて塗布し、乾燥後、660℃で6時間空気中にて焼成した。
焼成した成形物を固定床式還元炉に投入し、100%水素ガスを炉の容積1m当たりにおける触媒量とガス流量の積が12000(kg・L/min)/mとなるように流通しながら、3℃/minで770℃まで昇温し、そのまま6時間保持した。その後、金属ニッケルの酸化を防ぐため窒素雰囲気下で50℃以下まで炉冷し、成形物(触媒)を取り出した。得られた触媒中のニッケル含有量は14.563wt%であり、その内金属ニッケルは99.8wt%であり、アルミニウム含有量は45.215wt%であった。また、金属ニッケルの粒子径は62.2nmであり、金属ニッケル及びニッケルを含んだアルミニウムとの化合物の結合エネルギーはそれぞれ842.2eV、821.5eV、66.8eVであり、活性化エネルギーは5.7×10J/molであった。
【0095】
【表1】

【0096】
【表2】

【0097】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明に係る炭化水素を分解する触媒は、ニッケルの金属状態/化合物状態の割合を制御することにより活性化エネルギーが低下することから、優れた触媒活性を有するものである。
【0099】
また、本発明に係る炭化水素を分解する触媒は、担体成分と金属ニッケル間の電子授受に強い相関を与えることにより高C成分の炭化水素原料の改質反応を高め、優れた耐コーキング性を有するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともニッケルとアルミニウムとを含む化合物と粒子径が1〜25nmである金属ニッケルとからなる触媒であって、金属ニッケル及びニッケルとアルミニウムとを含む化合物の結合エネルギーが、874.5〜871.5ev(Ni 2p1/2)、857〜853ev(Ni 2p3/2)及び73.5〜70ev(Al 2p)であり、活性化エネルギーが4×10〜5×10J/molである炭化水素を分解する触媒。
【請求項2】
触媒のニッケル含有量は金属換算で5〜30wt%であり、ニッケルが金属ニッケルとして含まれる割合がニッケル含有量に対して40〜75wt%であり、アルミニウム含有量は金属換算で15〜45wt%である請求項1に記載の炭化水素を分解する触媒。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の触媒に、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素及び貴金属元素から選ばれる1種以上の元素が含まれる炭化水素を分解する触媒。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の炭化水素を分解する触媒を用いることを特徴とする燃料電池システム。



【公開番号】特開2012−228671(P2012−228671A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99296(P2011−99296)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】