説明

炭化水素分解菌の挙動解析方法及び土壌浄化方法

【課題】バイオレメディエーションを効率よく促進する技術を提供する。
【解決手段】複数の特定の塩基配列で表されるプライマーからなるロドコッカス属炭化水素分解菌検出用プライマーセット、複数の特定の塩基配列で表されるプライマーからなるゴルドニア属炭化水素分解菌検出用プライマーセット、当該プライマーセットを含む炭化水素分解菌検出用PCRキット、並びに当該プライマーセットを用いた土壌中の炭化水素分解菌の定量方法、土壌中の炭化水素分解菌の挙動解析方法、及び土壌浄化方法からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素分解菌検出用プライマーセット、及び、それを用いた炭化水素分解菌の定量方法に関する。更には、それらを利用した炭化水素分解菌の挙動解析方法及び土壌浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油は今日の産業活動において最も重要な資源の一つである。しかしながら、石油輸送過程や石油の利用に伴う工場やその跡地等において、土壌や水圏環境への石油汚染が世界各地で発生しており、地球規模での問題となっている。我が国では、2002年に施行された「土壌汚染防止法」に引き続き、石油汚染に関して2006年に「油汚染対策ガイドライン−鉱油類を含む土壌に起因する油臭・油膜問題への土地所有者等による対応の考え方−」が中央環境審議会土壌農薬部会土壌汚染技術基準等専門委員会により発表された。
石油汚染土壌の浄化には、土壌中の石油成分を重油により焼却して浄化する方法が実用化されているが、多大なエネルギーと大型の処理プラントが必要である。一方、微生物機能により汚染を浄化するバイオレメディエーションが研究され始めており、欧米や日本を中心に、石油を分解する特殊微生物が分離・同定され、石油分解メカニズムが徐々に明らかとなってきている。
【0003】
例えば、土壌浄化能力に優れた微生物として、ロドコッカス(Rhodococcus)属及びゴ
ルドニア(Gordonia)属に属する微生物が報告されている(特許文献1参照)。
【0004】
しかし、バイオレメディエーションにより微生物機能を用いて石油を浄化する場合は、長時間を要し、浄化能の維持が重要課題の一つと考えられる。また、バイオレメディエーションの効率化には環境状態に適した手段を選択し実施することが重要と考えられ、環境中に投入した微生物の挙動を解析し、適切な微生物量を維持・管理することが非常に重要であると考えられる。
【特許文献1】特開2007−135425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、バイオレメディエーションを効率化する技術を提供することを主な目的とする。即ち、本発明は、炭化水素分解菌を特異的に定量し得る炭化水素分解菌検出用プライマーセット、更に当該プライマーセットを利用した土壌中の炭化水素分解菌挙動解析方法及び土壌浄化方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を解決することを主な目的として鋭意検討を重ねた結果、バイオレメディエーション、特に実汚染土壌のバイオレメディエーションにおいて効率化を図るためには、汚染土壌中で炭化水素分解菌を優先種とすることが重要であると考えた。更に炭化水素分解菌が優先種である状態の維持・管理のため、バイオレメディエーション中の炭化水素分解菌の挙動を正確に把握することが重要と考えた。本発明者らはこのような観点から更に検討を進め、炭化水素分解菌のみを特異的に定量する技術を確立した。更に当該技術を用いて、土壌中の炭化水素分解菌の挙動を解析する方法及び効率的な土壌浄化方法を確立した。
【0007】
即ち、本発明は、以下のプライマーセット、炭化水素分解菌の定量方法、挙動解析方法及び土壌浄化方法を提供する。
【0008】
1.配列表の配列番号1の塩基配列で表されるプライマー、及び
配列表の配列番号2の塩基配列で表されるプライマーからなるロドコッカス(Rhodococcus)属に属する炭化水素分解菌検出用プライマーセット。
【0009】
2.配列表の配列番号3の塩基配列で表されるプライマー、及び
配列表の配列番号4の塩基配列で表されるプライマーからなるゴルドニア(Gordonia)属に属する炭化水素分解菌検出用プライマーセット。
【0010】
3.項1に記載のプライマーセットと項2に記載のプライマーセットとを含む炭化水素分解菌検出用PCRキット。
【0011】
4.i)対象土壌に含まれるDNAを抽出・精製する工程と、
ii)このDNAを鋳型として、項1に記載のプライマーセットを用いてPCRを行い、増幅され
たDNAを検出する工程と、
iii)検出した値を用いて、炭化水素分解菌数を算出する工程
を含むことを特徴とする土壌中の炭化水素分解菌の定量方法。
【0012】
5.i)対象土壌に含まれるDNAを抽出する工程と、
ii)このDNAを鋳型として、項2に記載のプライマーセットを用いてPCRを行い、増幅され
たDNAを検出する工程と、
iii)検出した値を用いて、炭化水素分解菌数を算出する工程
を含むことを特徴とする土壌中の炭化水素分解菌の定量方法。
【0013】
5−1.i)対象土壌に含まれるDNAを抽出する工程と、
ii)このDNAを鋳型として、項3に記載のPCRキットを用いてPCRを行い、増幅されたDNAを
検出する工程と、
iii)検出した値を用いて、炭化水素分解菌数を算出する工程
を含むことを特徴とする土壌中の炭化水素分解菌の定量方法。
【0014】
6.項4又は5に記載の定量方法により得られた値を用いて、土壌中の炭化水素分解菌数の経時変化を解析する工程を含むことを特徴とする土壌中の炭化水素分解菌の挙動解析方法。
【0015】
6−1.更に対象土壌から採取した試料単位重量当りのDNA量に基づいて算出した値を
用いて、土壌中の総バクテリア数の経時変化を解析する工程を含む
項6に記載の挙動解析方法。
【0016】
7.対象土壌に約1×108〜1×109 cells/g-soilの範囲で炭化水素分解菌を投与する工
程と、
項4又は5に記載の定量方法により得られた値を用いて、土壌中の炭化水素分解菌数の経時変化を解析する工程と
を含むことを特徴とする土壌浄化方法。
【0017】
7−1.更に、対象土壌から採取した試料単位重量当りのDNA量に基づいて算出した値
を用いて、土壌中の総バクテリア数の経時変化を解析する工程を含む
項7に記載の土壌浄化方法。
【0018】
8.更に、投与した炭化水素分解菌の数が一定値以下となった場合に、投与した炭化水素分解菌と同じ又は異なる炭化水素分解菌を追加投与する工程と
を含むことを特徴とする項7に記載の土壌浄化方法。
【0019】
8−1.一定値が、1×108cells/g-soil〜1×109 cells/g-soilの範囲から設定される
値である項8に記載の土壌浄化方法。
【0020】
以下、本発明について、更に詳細に説明する。
【0021】
1.プライマーセット
(1)Rhodococcus属炭化水素分解菌検出用プライマーセット
本発明は、Rhodococcus属に属する炭化水素分解菌を特異的に検出可能にするプライマ
ーセットを提供する。
【0022】
当該プライマーセットは、
配列表の配列番号1の塩基配列で表されるプライマー、および
配列表の配列番号2の塩基配列で表されるプライマー
からなる。
【0023】
各プライマーは、公知のDNA合成装置等を用いて化学的に合成することができる。また、当該技術分野においてよく知られる他の方法を用いて合成することもできる。
【0024】
本発明のプライマーセットを所定のPCR条件に供することにより、特定の炭化水素分解
菌を特異的に増幅することができる。
【0025】
PCRの条件は、適宜設定し、至適化することができるが、通常、95℃・5〜10分の加熱後、95℃・15〜20秒、60℃・30〜60秒、72℃・45〜75秒の反応を30サイクル程度行う。
【0026】
対象となるRhodococcus属に属する炭化水素分解菌は、検出可能であれば特に限定され
ないが、Rhodococcus属に属し、かつアルカンヒドロキシラーゼ遺伝子を有する菌、例え
ば、Rhodococcus sp. ODNM2B、Rhodococcus sp. ODNM1C、Rhodococcus sp. NDMI54、Rhodococcus sp. NDMI114、Rhodococcus sp. NDKK48、Rhodococcus sp. NDKY82A、Rhodococcus sp. NDKK1、Rhodococcus sp. NDKK2、Rhodococcus sp. NDKK5、Rhodococcus sp. NDKK6、Rhodococcus sp. NDKK7、及び、Rhodococcus equiに属する菌等が挙げられる。特に、Rhodococcus sp. NDKK6の検出に好適である。
【0027】
なお、ロドコッカス エスピー(Rhodococcus sp.)NDKK6株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305-8566茨城県つくば市東1-1-1中央第6)に、受託番号 FERM P-20708として、平成17年11月10日に寄託されている。
【0028】
2.Gordonia属炭化水素分解菌検出用プライマーセット
本発明は、Gordonia属に属する炭化水素分解菌を特異的に検出可能にするプライマーセットを提供する。
【0029】
当該プライマーセットは、
配列表の配列番号3の塩基配列で表されるプライマー、および
配列表の配列番号4の塩基配列で表されるプライマー
からなる。
【0030】
各プライマーは、公知のDNA合成装置等を用いて化学的に合成することができる。また、当該技術分野においてよく知られる他の方法を用いて合成することもできる。
【0031】
本発明のプライマーセットを所定のPCR条件に供することにより、特定の炭化水素分解
菌を特異的に増幅することができる。
【0032】
対象となるGordonia属に属する炭化水素分解菌は、検出可能であれば特に限定されないが、Gordonia属に属し、かつアルカンヒドロキシラーゼ遺伝子を有する菌、例えば、Gordonia sp. YS5、Gordonia sp. YS3、Gordonia sp. NDKY76A、Gordonia sp. NDKK46、Gordonia sp. NDKY2C、及びGordonia sp. NDKYB2B等が挙げられる。特に、Gordonia sp. NDKY76A株の検出に好適である。
【0033】
PCRにおける反応条件は、適宜設定し、至適化することができるが、通常、95℃・5〜10分の加熱後、95℃・15〜20秒、61℃・30〜60秒、72℃・45〜75秒の反応を30サイクル程度行う。
【0034】
なお、ゴルドニア エスピー (Gordoniasp. ) NDKY76A株は、独立行政法人産業技術総
合研究所特許生物寄託センター(〒305-8566茨城県つくば市東1-1-1中央第6)に、受託番号 FERM P-20709として、平成17年11月10日に寄託されている。
【0035】
3.炭化水素分解菌検出用PCRキット
本発明のPCRキットは、上記Rhodococcus属炭化水素分解菌検出用プライマーセット及びGordonia属炭化水素分解菌検出用プライマーセットを含む。
【0036】
本発明のPCRキットを用いれば、上記二つのPCR反応を同時に行うことにより、1回の手間で目的とする特定の炭化水素分解菌を効率良く検出することができる。より詳細に、Rhodococcus属炭化水素分解菌とGordonia属炭化水素分解菌は相同性の高い部分を含んでい
るため、競合する可能性があるにもかかわらず、本発明のプライマーセットを用いれば、それぞれを特異的に検出することができる。
【0037】
本発明のキットには、上記プライマーセット以外に、検出などに必要となる公知の手段を含めることもできる。例えば、増幅用試薬や検出用試薬などを含むことができる。
【0038】
4.炭化水素分解菌数の定量方法
本発明は、上記プライマーセット又はPCRキットを利用した炭化水素分解菌の定量方法
を提供する。即ち、本発明のプライマーセット又はPCRキットを用いれば、対象土壌試料
における炭化水素分解菌の存在を検出したり、菌数を定量したりすることができる。
【0039】
検出乃至定量を行うためには、土壌から採取した試料からDNAを抽出・精製し、これを
テンプレートとして本発明のプライマーセット を用いて、所定の条件でポリメラーゼ連
鎖反応(PCR)を行い、特定の炭化水素分解菌を増幅し、増幅されたDNAを検出し、更に検出した値を用いて、炭化水素分解菌数を算出することにより、行うことができる。
【0040】
土壌からDNAを抽出する方法は公知の方法に従って行うことができる。例えば、クロロ
ホルム溶液による抽出を用いることができる。あるいは市販のDNA抽出試薬を用いてもよ
い。
【0041】
抽出したDNAの精製も公知の方法に従って行うことができ、例えば、電気泳動によるDNAの分離と切り出しを行って精製することができる。また市販のDNA精製キットにより行う
ことができる。
【0042】
DNAの検出方法も特に限定されず、公知の方法に従って行うことができるが、Real-timeアッセイを行い、PCR産物を増幅サイクルごとに逐次検出することが好ましい。
【0043】
検出した値を、公知の方法に従って作成した検量線にあてはめることにより、炭化水素分解菌数を算出することができる。
【0044】
より具体的に、土壌中のRhodococcus属炭化水素分解菌の定量は、
i)対象土壌に含まれるDNAを抽出・精製する工程と、
ii)このDNAを鋳型として、上記Rhodococcus属炭化水素分解菌検出用プライマーセット を用いて、所定の条件でPCRを行い、増幅されたDNAを検出する工程と、
iii)検出した値を用いて、Rhodococcus属炭化水素分解菌の数を算出する工程と
を含む方法により行うことができる。
【0045】
工程ii)のPCRにおける条件は、適宜設定し、至適化することができるが、アニーリ
ング温度が60℃の条件とすることが好ましい。他の条件も適宜設定し得るが、通常、95℃・5〜10分の加熱後、95℃・15〜20秒、60℃・30〜60秒、72℃・45〜75秒の反応を30サイ
クル程度行う。
【0046】
また、工程iii)においては、下記式により、土壌1 g当たりの炭化水素分解菌数を算出することができる。
Rhodococcus属炭化水素分解菌数(cells/g-sample)= (3×1016)×e(-0.7747×Ct値)
[式中、Ct値は実験より得られた値であり、閾値に到達したときのサイクル数(threshold cycle)を表す。]
【0047】
また、土壌中のGordonia属炭化水素分解菌の定量は、
i)対象土壌に含まれるDNAを抽出する工程と、
ii)このDNAを鋳型として、Gordonia属炭化水素分解菌検出用プライマーセットを用いて所定の条件でPCRを行い、増幅されたDNAを検出する工程と、
iii)検出した値を用いて、Gordonia属炭化水素分解菌の数を算出する工程と
を含む方法により、行うことができる。
【0048】
工程ii)のPCRにおける条件は、適宜設定し、至適化することができるが、アニーリン
グ温度が61℃の条件とすることが好ましい。他の条件も適宜設定し得るが、通常、95℃・5〜10分の加熱後、95℃・15〜20秒、61℃・30〜60秒、72℃・45〜75秒の反応を30サイク
ル程度行う。
【0049】
また、工程iii)においては、下記式により、土壌1 g当たりの炭化水素分解菌数を算出することができる。
Gordonia属炭化水素分解菌数(cells/g-sample)= (8×1017)×e(-0.9518×Ct値)
[式中、Ct値は実験より得られた値であり、閾値に到達したときのサイクル数(threshold cycle)を表す。]
【0050】
5.炭化水素分解菌の挙動解析方法
本発明は、更に、炭化水素分解菌の挙動を解析する方法を提供する。即ち、上記本発明のプライマーセット又はPCRキットを用いて、土壌中の炭化水素分解菌数の定量を経時的
に行い、菌数の変動をモニタリングして解析することにより、土壌中の炭化水素分解菌数の挙動を解析することができる。
【0051】
解析におけるモニタリングの方法は、特に限定されず、適宜公知の方法に従って行うことができる。例えば、炭化水素分解菌数を、更に換算させた値を用いてモニタリングしてもよい。また、適当なグラフ又は図等の表示手段を用いてモニタリングすることもできる

【0052】
また、モニタリングは、炭化水素分解菌数に加えて、更に1又は複数の指標を用いて行うこともできる。
【0053】
本発明の挙動解析方法においては、更に、土壌中の総バクテリア数の挙動解析や、油分濃度の挙動解析を組み合わせることもできる。
土壌中の総バクテリア数の解析は、公知の方法に従って行うことができ、例えば、環境eDNA法や平板希釈法を用いて行うことができる。
【0054】
環境eDNA法は、対象土壌から採取した試料単位重量当りのDNA量に基づいて算出した値
を用いて、土壌中の総バクテリア数を算出する方法である。単位重量が1gの場合、その数は対象土壌(又は試料)単位重量あたりの数(cells/g-soil又はcells/g-sample)の単位で表すことができる。例えば、環境eDNA法において、土壌バクテリア数は、対象土壌から採取した試料の単位重量あたりのDNA量(eDNA量)
を、下記式により換算することによって求めることができる。
【0055】
バクテリア数(cells/g-sample)=eDNA量(μg/ml)×1.7×108
また、油分濃度の解析も公知の方法に従って行うことができる。例えば、適当な抽出液を用いて対象土壌から油分を抽出し、ガスクロマトグラフィーや赤外分光分析を用いて測定することにより解析することができる。
【0056】
本発明の挙動解析方法により、特定の炭化水素分解菌の増加や減少など、土壌中の炭化水素分解菌の動向の詳細を把握することができ、それに応じた追加処理を行うことにより、バイオレメディエーションを効率化することができる。特に効率的なバイオレメディエーションを行うためには、炭化水素分解菌の菌数を維持すること、更に、炭化水素分解菌を優先種とすることが重要であると考えられる。本発明の挙動解析方法を用いれば、炭化水素分解菌の菌数の維持及び優先種とするための処理に適当なタイミングを簡便に把握することができる。
【0057】
またバイオオーグメンテーションは外来の微生物を大量に投与することから、生態系が大きく変化してしまう可能性があるが、本発明における挙動解析法は、投与菌株の土壌環境への影響を解析する上でも役立つと考えられる。
【0058】
6.土壌浄化方法
本発明は、更に、高効率化された土壌の浄化方法を提供する。
【0059】
本発明の土壌浄化方法は、
対象土壌に約1×108〜1×109 cells/g-soilの範囲で炭化水素分解菌を投与する工程と、
上記本発明の定量方法により得られた値を用いて、土壌中の炭化水素分解菌数の経時変化を解析する工程を含む。
【0060】
例えば、
対象土壌に約1×108〜1×109 cells/g-soilの範囲で炭化水素分解菌を投与する工程と、
i)対象土壌に含まれるDNAを抽出・精製する工程と、
ii)このDNAを鋳型として、Rhodococcus属炭化水素分解菌検出用プライマーセット及び/
又はGordonia属炭化水素分解菌検出用プライマーセットを用いて、所定の条件でPCRを行
い、増幅されたDNAを検出する工程と、
iii)検出した値を用いて、Rhodococcus属及び/又はGordonia属炭化水素分解菌の数を算
出する工程と、
上記i)〜iii)の工程を含む定量を設定時間毎に行い、得られた値により炭化水素分解
菌数の経時変化を解析する工程を含む方法が挙げられる。
【0061】
本発明の土壌浄化方法によれば、土壌中の炭化水素分解菌の動向を把握することができ、それに応じた追加処理を行うことで、バイオレメディエーションを効率化することができる。
【0062】
追加処理としては、例えば、炭化水素分解菌の投与や、栄養分の投与、撹拌による通気などが考えられる。
【0063】
特に、効率的なバイオレメディエーションを行うためには、炭化水素分解菌を優先種とすることが重要と考えられる。上記方法により、炭化水素分解菌の動向を解析し、炭化水素分解菌を優先種となるように維持すること、例えば、一定期間後、炭化水素分解菌数の値が一定値以下となった場合に、炭化水素分解菌が過半数以上となるように追加投与して、炭化水素分解菌を優先種とすることにより、バイオレメディエーションを促進することができる。
【0064】
具体的に、石油汚染土壌では、バクテリア数が1×109 cells/g-soil以下の土壌がほと
んどである。そのため、本発明の定量方法により投与した炭化水素分解菌の動向をモニタリングし、その菌数が一定値以下、例えば1×108cells/g-soil〜1×109 cells/g-soilの
範囲から設定される値或いは1億cells/g-sample台以下に低下したときに炭化水素分解菌
を追加投与するようにすることで、炭化水素分解菌が優先種である状態を維持でき、油分除去を効率よく促進させることができる。
【0065】
この際、追加投与する炭化水素分解菌は、投与した炭化水素分解菌と同じ菌であってもよいが、異なる菌であることが好ましい。
【0066】
例えば、初期に、Rhodococcus属の炭化水素分解菌を投与し、当該菌株の挙動をモニタ
リングして、一定値以下に減少した場合に、Gordonia属の炭化水素分解菌を追加投与することが考えられる。また、初期にGordonia属の炭化水素分解菌を投与し、当該菌株の一定値以下に減少した場合に、Rhodococcus属の炭化水素分解菌を追加投与することが考えら
れる。
【0067】
特に、本発明では、Rhodococcus sp. NDKK6株とGordonia sp. NDKY76A株をそれぞれ定
量する技術を確立できたことから、これら炭化水素分解菌を組み合わせて投与することや異なる菌の追加処理によって挙動がどのように変化するかなどを解析し、より高効率なバイオレメディエーションを行うことができる。
【0068】
更に、本発明の土壌浄化方法においては、土壌中の総バクテリア数の挙動解析や、油分濃度の挙動解析を組み合わせて行うことが好ましい。土壌バクテリア数からは、対象土壌における総合的なバクテリアの状況や土壌の特性を把握できると考えられる。一方、効率的なバイオレメディエーションを行うためには、炭化水素分解菌を優先種とすることが重要であると考えられる。そのため、土壌バクテリア数の解析に加えて、本発明で確立した炭化水素分解菌の挙動解析を行って、両者の相対的な関係を把握し、炭化水素分解菌が優先種となるような手段をとることで、バイオレメディエーションをより効率化させることができると考えられる。
【発明の効果】
【0069】
本発明においては、炭化水素分解菌を特異的に定量可能とする技術を確立した。本方法を用いることにより、バイオレメディエーション中の炭化水素分解菌の挙動を正確に把握することが可能となり、炭化水素分解菌の追加投与のタイミングや処理内容を適切に図ることができる。これにより、バイオレメディエーションの効率が格段に高まる。
【0070】
更に、本発明によれば、炭化水素分解菌数が減少する正確なタイミングを知ることができ、汚染土壌中で炭化水素分解菌を優先種とする方法が確立される。これにより、バイオレメディエーションを効率よく促進させることが可能となる。
【0071】
更に、実用化するにあたっては、投与する炭化水素分解菌の安全性や環境への影響を解析しておく必要がある。その際、本発明で確立した炭化水素分解菌の定量方法は、投与する炭化水素分解菌の安全性や環境・生態系への影響の解析においても貢献できると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0072】
以下、本発明をより詳細に説明するために実施例及び比較例を用いて説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【0073】
1.使用菌株及び条件
1-1.使用菌株及び培養条件
菌株は、以下の表1に示す株を用いた。
【0074】
【表1】

菌株はルリア・ベルターニ(LB)培地(1 %(w/v)ポリペプトン、0.5 %(w/v)乾燥酵母エキス、0.5 %(w/v)NaCl)を用いてE. coli JM109は37℃で、その他の菌株は30℃
、120 rpmで振とう培養した。
【0075】
2.Rhodococcus 属炭化水素分解菌検出用プライマーセット及びそれを用いた定量方法
2-1.プライマーの設計
特異的な炭化水素分解菌挙動解析法の確立のために、炭化水素分解菌を特異的に検出可能とするプライマーの設計を検討した。
【0076】
アルカンは一般的にアルコールへと酸化され、代謝される。この反応を触媒する酵素がアルカンヒドロキシラーゼ(以下、「alk」とも称する」)であり、石油分解菌特有の酵
素である。当該alk遺伝子を指標としてプライマーの設計を行った。設計したプライマー
の塩基配列を表2に示す。
【0077】
【表2】

2-2 プライマーの評価
設計したプライマーがRhodococcus属炭化水素分解菌を特異的に増幅するかを確認する
ために以下の方法でReal-time PCRによる評価を行った。
【0078】
2-2-1.ゲノムDNAの抽出
培養液1 mlを遠心(6,000 rpm、室温、3分)し、集菌した。上清を除去し、400μlの10:1 TE緩衝液(トリスヒドロキシメチルアミノメタン1.20(g/l)、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩(g/l)、pH 8.0)を加えて菌体を懸濁した。懸濁液に塩化リゾチー
ムを0.5 mg/mlになるように添加し、37℃で30分静置した。その後、10 %ドデシル硫酸ナトリウム(以下SDS)溶液を40μl加えよく混ぜ、フェノール・クロロホルム・イソアミルアルコール混合液(体積比25:24:1)を400μl加えよく混合し、遠心(12,000 rpm、室
温、10分)した。上清を分取し、上清の1/10量の3 M酢酸ナトリウムと2.5倍量のエタノールを加え−20℃で20分静置した。静置後、遠心(12,000 rpm、4℃、10分)し、上清を除
去した。70 %エタノール1 mlを加え、遠心(12,000 rpm、4℃、10分)した。上清を除去し、アスピレーターで吸引乾燥した。乾燥後、RNase溶液(リボヌクレアーゼAを10:1 TE
緩衝液に溶解し(25μg/ml)、100℃で15分間煮沸した溶液)を50μl加え37℃で30分静置した。これをDNA溶液とした。また、DNA溶液を希釈し吸光光度計(島津、京都)で吸光度(260 nm)を測定し(2-2-1)式を用いてDNA濃度を求めた。
A260×希釈率×50(μg/ml)=DNA濃度(μg/ml)………………(2-2-1)式
【0079】
2-2-2 Real-time PCR法
200μl容チューブに表3に示すReal-time PCR溶液を加え、Applied Biosystems 7300 Real Time System(アプライドバイオシステムズ、USA)にセットして、Real-time PCRを
行い、増幅曲線と解離曲線を確認した。PCRの反応条件は、95℃・5〜10分の加熱後、95℃・15〜20秒、60℃・30〜60秒、72℃・45〜75秒の反応を30サイクルとした。なおReal-time PCRに用いた試料のうち、KAPA SYBR、ROX highはKAPA SYBR qPCR kit(KAPA BIOSYSTEMS、大阪)のプロトコールに従って用いた。
【0080】
【表3】

設計したプライマーを用い、Rhodococcus sp. NDKK6株、Gordonia sp. NDKY76A株、ネ
ガティブコントロールとしてのE. coli JM109株、及びDNAテンプレートなし(NT)についてReal-time PCRを行った。
【0081】
プライマーセット1(alkB1プライマー)を用いた結果を図1に、プライマーセット2
(alkB2プライマー)を用いた結果を図2に示す。
【0082】
Rhodococcus sp. NDKK6株とGordonia sp. NDKY76A株は、同じ塩基配列のalk遺伝子を有しているため、alkBプライマーで両方の株が検出されることが予想された。しかし、図2に示すように、alkB2プライマーを用いた場合には、Rhodococcus sp. NDKK6株のみReal-time PCRによる増幅が確認された。一方、alkB1プライマーを用いた場合には、図1に示されるように、Rhodococcus sp. NDKK6株とGordonia sp. NDKY76A株の両方が検出された。
【0083】
更に、alkB2プライマーを用いて、他のGordonia属炭化水素分解菌(YS3、YS5株)も同
様に確認した結果、増幅は確認されなかった。
【0084】
よって、alkB2プライマーを用いてRhodococcus sp. NDKK6株を特異的に検出できることが明らかとなった。
【0085】
2-3.Rhodococcus sp. NDKK6株の菌数とCt値の検量線作成
バイオレメディエーション中の石油分解菌の菌数を定量するため、alkB2プライマーセ
ットを用いてReal-time PCRを行い、Rhodococcus sp. NDKK6株の菌数とCt値の検量線を作成した。 まず、Rhodococcus sp. NDKK6株の培養液を6.14×1011cells/g-sample〜6.14
×107 cells/g-sampleに段階希釈した。滅菌した土壌又は実汚染土壌に段階希釈した培養液100μlを植菌した。培養液のみ、又は培養液を植菌した各土壌からDNAを抽出・精製し
てReal-time PCRを行い、それぞれ信頼性の高い検量線が得られるかを確認した。様々な
細菌のDNAが抽出される未滅菌の土壌でも、解離曲線は一つのピークが得られた。また、
検量線のR2値も0.9以上と問題なく目的の遺伝子のみを定量できることが分かった。また
、検量線の傾きも滅菌土壌と未滅菌土壌でほぼ違いはなかった。これらの結果をまとめてRhodococcus sp. NDKK6株の菌数を定量するための検量線を作成した。
【0086】
それぞれの条件をまとめた結果から、Y=(3E+16)×EXP(-0.7747×Ct値)というRhodococcus属炭化水素分解菌数(cells/g-sample)を定量するための式が得られた(図3)。
【0087】
また、Real-time PCRを用いたRhodococcus sp. NDKK6株の検出限界を調べた結果、106cells/g-sampleと105cells/g-sampleの増幅曲線には有意な差がなかったことから、検出限界は1×106cells/g-sampleに決定した。
【0088】
これにより、Real-time PCRを用いたRhodococcus属炭化水素分解菌の定量方法が確立された。
【0089】
3 Gordonia sp. 炭化水素分解菌株検出用プライマーセット及びそれを用いた定量方法
3-1.プライマーの設計
Gordonia sp. 炭化水素分解菌について、alk遺伝子を指標としてプライマーの設計を行った。設計したプライマーの一例を表4に示す。
【0090】
【表4】

3-2.プライマーの評価
設計したプライマーがGordonia sp. 炭化水素分解菌のalk遺伝子断片を特異的に増幅することを確認するために、上記2-2と同様の方法でReal-time PCRを行った。但し、PCRの
条件は適宜調整し、上記プライマーセット3(alkG2プライマー)の場合は、95℃・5〜10分の加熱後、95℃・15〜20秒、61℃・30〜60秒、72℃・45〜75秒の反応を30サイクル程度に設定した。
【0091】
alkG2プライマーを用い、Gordonia sp. NDKY76A株、Rhodococcus sp. NDKK6株、ネガティブコントロールとしてのE. coli JM109株、及びDNAテンプレートなし(NT)についてReal-time PCRを行った結果を図4に示す。
【0092】
その結果、Gordonia sp. NDKY76A株のみにReal-time PCRによる増幅曲線が確認された
。また、解離曲線も一つのピークが得られ、目的の配列のみを増幅していた。
【0093】
よって、上記alkG2プライマーセットを用いてGordonia sp. NDKY76A株を特異的に検出
できることが明らかとなった。
【0094】
3-3.Gordonia sp. NDKY76A株の菌数とCt値の検量線作成
バイオレメディエーション中の石油分解菌の菌数を定量するため、alkG2プライマーを
用いてReal-time PCRを行い、Gordonia sp. NDKY76A株の菌数とCt値の検量線を作成した
。まず、Gordonia sp. NDKY76A株の培養液を2.43×1011cells/g-sample〜2.43×107 cells/g-sampleに段階希釈した。滅菌した土壌又は未滅菌土壌に、段階希釈した培養液100μlを植菌した。培養液のみ又はそれぞれの条件の土壌から抽出したDNAを用いてReal-time PCRを行い、それぞれ信頼性の高い検量線が得られるかを確認した。
【0095】
その結果、Gordonia sp. NDKY76A株の培養液のみと土壌に植菌したもの、又は石油で汚染されている土壌とされていない土壌で検量線の傾きがほぼ同じであることから、抽出効率などに違いはないことが分かった。また、どの条件でもR2値が0.9以上と信頼性の高い
結果が得られた。そこで、これらの結果をまとめてGordonia sp. NDKY76A株の菌数を定量するための検量線を作成した。
【0096】
それぞれの条件をまとめた結果、Y=(8E+17)×EXP(-0.9518×Ct値)というGordonia
属炭化水素分解菌数(cells/g-sample)を定量するための式が得られた(図5)。
【0097】
また、検出限界は106 cells/g-sampleに決定した。また、Real-time PCRを用いたGordonia sp. NDKY76A株の検出限界を調べた結果、106 cells/g-sampleと105 cells/g-sample
の増幅曲線には有意な差がなかったことから、検出限界は106 cells/g-sampleに決定した。
【0098】
これにより、Real-time PCRを用いたGordonia属炭化水素分解菌の定量方法が確立され
た。
【0099】
4. 炭化水素分解菌挙動解析法及びバイオレメディエーションへの応用
上記で確立したReal-time PCRを用いた炭化水素分解菌の定量方法で実際にバイオレメ
ディエーション中の炭化水素分解菌の挙動を解析できるか確認するために、実汚染土壌を用いて16日間実験を行った。実汚染土壌100 gに、Rhodococcus sp. NDKK6株を加えたもの(BR-1)とGordonia sp. NDKY76A株を加えたもの(BR-2)を作製し、さらに栄養源を5 %
(v/w)加えよく撹拌し、37℃で静置した。栄養源のみを5 %(v/w)加え同様の操作を行
ったもの(BS)を比較対象とした。
【0100】
4日ごとにIR法を用いて油分濃度を解析した。また、上記2及び3の定量方法を用いてRhodococcus sp. NDKK6株及びGordonia sp. NDKY76A株の菌数を経時的に解析し、その挙動を解析した。また平板希釈法を用いて総バクテリア数を解析した。
【0101】
4-1. IR法による油分濃度測定
油分濃度は、次のように測定した。土壌2 g、無水硫酸ナトリウム約0.4 g、シリカゲル約0.8 gを50 ml容共栓三角フラスコに採取しH997抽出液(堀場製作所、京都)を10 ml加
えた。マグネチックスターラーで1時間撹拌した。撹拌後抽出液をろ過し、これを油分抽
出サンプルとした。
【0102】
得られた油分抽出サンプルを油分濃度計の測定範囲に入るように、適宜希釈した。ろ液約6.5 mlを吸収セルに入れ油分濃度計(OCMA-350、堀場製作所、東京)を用いて測定を行った。下記式により測定値を油分濃度に換算した。
【0103】
【数1】

4-2. 平板希釈法による総バクテリア数の測定
総バクテリア数は、次のように測定した。土壌0.1 gに滅菌した生理食塩水1 mlを加え
土壌懸濁液を作製した。土壌懸濁液を滅菌した生理食塩水で段階希釈し、希釈液100μlをLB寒天プレートに塗布し、30℃で静置培養した。コロニーが形成した後、コロニー数を計測し、希釈率を乗ずることによって培養液中の菌数を算出した。
【0104】
実汚染土壌を用いた実験結果を図6に示す。図6Aに油分濃度の経時変化を、図6Bに炭化水素分解菌数の経時変化を、図6Cに総バクテリア数の経時変化を示す。
【0105】
上記のように炭化水素分解菌数と総バクテリア数を計測した結果、炭化水素分解菌数は徐々に減少するのに対し、総バクテリア数は増加傾向にあった。このことから、炭化水素分解菌数と総バクテリア数は対応しておらず、炭化水素分解菌の挙動を解析することの重要性が明らかになった。
【0106】
また、栄養塩のみを投与したBS条件よりも、炭化水素分解菌を添加したいずれの条件でも油分濃度の減少割合は大きくなったことから、炭化水素分解菌が投与後に一定期間優先種となることで浄化効率が促進することが示唆された。炭化水素分解菌を優先種とするように投与することでバイオレメディエーションの効率化が期待できることが示唆された。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】alkB1プライマーを用いたReal-time PCRの結果を示すグラフである。Aは増幅曲線、Bは解離曲線を示す。1はRhodococcus sp. NDKK6株、2は、Gordonia sp. NDKY76A株、3はE. coli JM109株、4はDNAテンプレートなし(NT)の結果を示す。
【図2】alkB2プライマーを用いたReal-time PCRの結果を示すグラフである。Aは増幅曲線、Bは解離曲線を示す。1はRhodococcus sp. NDKK6株、2は、Gordonia sp. NDKY76A株、3はE. coli JM109株、4はDNAテンプレートなし(NT)の結果を示す。
【図3】Rhodococcussp. NDKK6株の菌数とCt値との検量線を示す図面である。
【図4】alkG2プライマーを用いたReal-time PCRの結果を示すグラフである。Aは増幅曲線、Bは解離曲線を示す。1はGordonia sp. NDKY76A株、2はRhodococcus sp. NDKK6株、3はE. coli JM109株、4はDNAテンプレートなし(NT)の結果を示す。
【図5】Gordoniasp. NDKY76A株の菌数とCt値との検量線を示す図面である。
【図6】実汚染土壌を用いた実験の結果を示す図面である。図6Aは油分濃度の経時変化を示すグラフである。■はBS(栄養源のみを添加した場合)を、◆はBR-1(栄養源とRhodococcus sp. NDKK6株を添加した場合)を、▲はBR-2(栄養源とGordonia sp. NDKY76A株を添加した場合)を示す。図6Bは炭化水素分解菌数の経時変化を示すグラフである。◆はBR-1(Rhodococcus sp. NDKK6株の菌数)を、▲はBR-2(Gordonia sp. NDKY76A株の菌数)を示す。図6Cは総バクテリア数の経時変化を示すグラフである。■はBS(栄養源のみを添加した場合)を、◆BR-1(栄養源とRhodococcus sp. NDKK6株を添加した場合)を、▲はBR-2(栄養源とGordonia sp. NDKY76A株を添加した場合)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列表の配列番号1の塩基配列で表されるプライマー、及び
配列表の配列番号2の塩基配列で表されるプライマー
からなるロドコッカス(Rhodococcus)属に属する炭化水素分解菌検出用プライマーセッ
ト。
【請求項2】
配列表の配列番号3の塩基配列で表されるプライマー、及び
配列表の配列番号4の塩基配列で表されるプライマー
からなるゴルドニア(Gordonia)属に属する炭化水素分解菌検出用プライマーセット。
【請求項3】
請求項1に記載のプライマーセットと請求項2に記載のプライマーセットとを含む炭化水素分解菌検出用PCRキット。
【請求項4】
i)対象土壌に含まれるDNAを抽出・精製する工程と、
ii)このDNAを鋳型として、請求項1に記載のプライマーセットを用いてPCRを行い、増幅
されたDNAを検出する工程と、
iii)検出した値を用いて、炭化水素分解菌数を算出する工程
を含むことを特徴とする土壌中の炭化水素分解菌の定量方法。
【請求項5】
i)対象土壌に含まれるDNAを抽出する工程と、
ii)このDNAを鋳型として、請求項2に記載のプライマーセットを用いてPCRを行い、増幅
されたDNAを検出する工程と、
iii)検出した値を用いて、炭化水素分解菌数を算出する工程
を含むことを特徴とする土壌中の炭化水素分解菌の定量方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の定量方法により得られた値を用いて、土壌中の炭化水素分解菌数の経時変化を解析する工程を含むことを特徴とする土壌中の炭化水素分解菌の挙動解析方法。
【請求項7】
対象土壌に約1×108〜1×109 cells/g-soilの範囲で炭化水素分解菌を投与する工程と、
請求項4又は5に記載の定量方法により得られた値を用いて、土壌中の炭化水素分解菌数の経時変化を解析する工程
を含むことを特徴とする土壌浄化方法。
【請求項8】
更に、投与した炭化水素分解菌の数が一定値以下となった場合に、投与した炭化水素分解菌と同じ又は異なる炭化水素分解菌を追加投与する工程
を含むことを特徴とする請求項7に記載の土壌浄化方法。


【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−254358(P2009−254358A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68707(P2009−68707)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)
【Fターム(参考)】