説明

炭化珪素単結晶の製造方法

【課題】結晶欠陥の少ない炭化珪素単結晶の成長方法を提供する。
【解決手段】結晶成長ルツボに低温部と高温部を設け、結晶成長ルツボの低温部に炭化珪素単結晶からなる種結晶基板22を配し、高温部に炭化珪素原料を配して、炭化珪素原料から昇華した昇華ガスを種結晶基板22上に析出させて炭化珪素単結晶を成長させる炭化珪素単結晶の製造方法において、種結晶22を配する箇所のルツボ部材に、炭化珪素との室温における線膨張係数の差が1.0×10−6/ケルビン以下である部材を用いる。また、種結晶22を配する箇所のルツボ部材として炭化珪素を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素単結晶の製造方法に関する。特に高品質の炭化珪素単結晶を成長させるための結晶成長方法に特徴を有する炭化珪素単結晶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素は、熱伝導度が高く、耐熱性および機械的強度も優れ、放射線にも強いなど物理的、化学的に安定であり、かつエネルギーバンドギャップが広い特徴を持つ材料である。このため高温下でも使用可能な耐環境素子材料、耐放射線素子材料、電力制御用パワー素子材料、短波長発光素子材料等に利用できる。また近年になり特に電力制御用パワー素子として注目されており盛んに開発が進められている。
【0003】
炭化珪素単結晶をこの電力制御用パワー素子として普及させるためには、転位等の欠陥のない結晶が必要となっている。
【0004】
炭化珪素単結晶の製造方法として、結晶成長ルツボに低温部と高温部を設け、結晶成長ルツボの低温部に炭化珪素単結晶からなる種結晶基板を設置し、高温部に炭化珪素原料を設置して、炭化珪素原料から昇華した昇華ガスを種結晶基板上に析出させる方法が知られている。この場合、炭化珪素種結晶をルツボに取り付ける際の応力や、成長時の熱歪等により、種結晶内に欠陥が生じ、その欠陥が成長結晶の結晶性を劣化させることが問題となっている。
【0005】
この問題点を解決するために、炭化珪素種結晶と炭化珪素種結晶を保持する台座との間には,両者間にはたらく熱応力を緩和するための応力緩衝材を配置し、この応力緩衝材の引張強度を10MPa以下とする方法(例えば、特許文献1参照。)、単結晶を成長させる際の炭化珪素種結晶と、この炭化珪素種結晶を支持するための蓋体との間に緩衝部材を介在させ、この緩衝部材におけるプレート部の一方の面に種結晶を接着し、他方の面にはピン穴を有する突起を形成して、ピン穴を通して緩衝部材を蓋体に連結する方法(例えば、特許文献2参照。)が提案されている。
【特許文献1】特開2004−269297号公報
【特許文献2】特開2004−338971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような成長方法を用いても、依然として、成長結晶内には多数の欠陥が生じている。特に、種結晶と成長結晶との境界面から発生した転位あるいはマイクロパイプが炭化珪素単結晶の品質を低下させている。
【0007】
本発明は、この問題点を解決し、結晶欠陥の少ない炭化珪素単結晶の成長方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の目的を達成するためになされたもので以下の発明からなる。
(1)結晶成長ルツボに低温部と高温部を設け、該結晶成長ルツボの低温部に炭化珪素単結晶からなる種結晶基板を配し、高温部に炭化珪素原料を配して、炭化珪素原料から昇華した昇華ガスを種結晶基板上に析出させて炭化珪素単結晶を成長させる炭化珪素単結晶の製造方法において、種結晶を配する箇所のルツボ部材に、炭化珪素との室温における線膨張係数の差が1.0×10−6/ケルビン以下である部材を用いることを特徴とする炭化珪素単結晶の製造方法。
(2)種結晶を配する箇所のルツボ部材が、炭化珪素であることを特徴とする(1)に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
(3)種結晶を配する箇所のルツボ部材が、炭化珪素単結晶であることを特徴とする(1)に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
(4)種結晶を配する箇所のルツボ部材の結晶構造と、種結晶の結晶構造とを同一とする(3)に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
(5)種結晶を配する箇所のルツボ部材の結晶面方位と、種結晶の結晶面方位とを−10°〜+10°の範囲内となるように合致させることを特徴とする(3)または(4)に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
(6)種結晶を配する箇所のルツボ部材の結晶構造が4Hであることを特徴とする(3)〜(5)の何れか1項に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
(7)結晶面方位が、{0001}に対し+30°〜−30°の範囲内でオフセットがついた面方位であることを特徴とする(5)または(6)に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
(8)種結晶を配する箇所のルツボ部材の厚さが、0.7mm〜50mmの範囲内であることを特徴とする(1)〜(7)の何れか1項に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
(9)低温部となるルツボ部材に種結晶を配するに際して、種結晶の側部を炭化珪素の部材を用いて保持することを特徴とする(1)〜(9)の何れか1項に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
(10)結晶成長ルツボ内の種結晶を配する壁部の厚さを、他の箇所の壁厚より薄くすることを特徴とする(1)〜(9)の何れか1項に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
(11)結晶成長ルツボに低温部と高温部を設け、該結晶成長ルツボの低温部に炭化珪素単結晶からなる種結晶基板を配し、高温部に炭化珪素原料を配して、炭化珪素原料から昇華した昇華ガスを種結晶基板上に析出させて炭化珪素単結晶を成長させる炭化珪素単結晶の製造方法において、低温部となるルツボ部材と種結晶基板との間に、炭化珪素との室温における線膨張係数の差が1.0×10−6/ケルビン以下である物質を炭化珪素種結晶支持部材として用いることを特徴とする炭化珪素単結晶の製造方法。
(12)炭化珪素種結晶支持部材が、炭化珪素であることを特徴とする(11)に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
(13)炭化珪素種結晶支持部材が、炭化珪素単結晶であることを特徴とする(11)に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
(14)炭化珪素種結晶支持部材の結晶構造と、種結晶の結晶構造とを同一とする(11)〜(13)の何れか1項に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
(15)炭化珪素種結晶支持部材の結晶面方位と、種結晶の結晶面方位とを、−10°〜+10°の範囲内となるように合致させることを特徴とする(11)〜(14)の何れか1項に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
(16)炭化珪素種結晶支持部材の結晶構造が4Hであることを特徴とする(13)〜(15)の何れか1項に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
(17)結晶面方位が{0001}に対し+30°〜−30°の範囲内でオフセットがついた面方位であることを特徴とする(15)または(16)に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
(18)炭化珪素種結晶支持部材の厚さが、0.7mm〜50mmの範囲内であることを特徴とする(11)〜(17)の何れか1項に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
(19)炭化珪素種結晶支持部材に種結晶を配するに際して、種結晶の側部を炭化珪素の部材を用いて保持することを特徴とする(11)〜(18)の何れか1項に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
(20)結晶成長ルツボ内の支持部材を保持する壁部の厚さを、他の箇所の壁厚より薄くすることを特徴とする(11)〜(19)の何れか1項に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
(21)(1)〜(20)の何れか1項に記載の炭化珪素単結晶の製造方法を用いて製造した単結晶を用いた半導体デバイス。
(22)(21)の半導体デバイスから構成されたインバータ。

【発明の効果】
【0009】
本願発明の炭化珪素単結晶の製造方法を用いることにより、結晶欠陥の少ない炭化珪素単結晶ウェハーを製造することが可能となるため、高性能の半導体、特にインバータ等を高い収率で製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本願発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明の炭化珪素単結晶の製造方法は基本的には炭化珪素単結晶からなる種結晶に、2000℃以上の高温で原料炭化珪素からの昇華ガスを供給し、種結晶上に炭化珪素単結晶を成長させる方法である。図1は本願発明の基礎となる炭化珪素単結晶の製造方法を模式的に示したものである。本願発明の製造方法は、例えば図1に示すように、結晶成長ルツボ6を、断熱材2等で被って反応炉1内に設置し、該ルツボをワークコイル3により高周波誘導加熱し、結晶成長ルツボ6内に低温部(例えば、符合4付近。)と高温部(例えば、符合5付近。)を設け、結晶成長ルツボ6の低温部に炭化珪素単結晶からなる種結晶基板10を設置し、高温部に炭化珪素原料5を設置して、炭化珪素原料から昇華した昇華ガスを種結晶基板10上に析出させて炭化珪素単結晶4を成長させる方法である。
【0012】
本成長に際しては、一般的には、アルゴン等の不活性ガスを導入し(符合7)、反応炉内は10トール(約1.3kPa)程度の減圧状態とする(符合8)。なお、該加熱装置は抵抗加熱方式のもでも良い。また、これらの加熱手段により、種結晶のある結晶成長部の温度を1800〜2300℃とし、炭化珪素原料のある高温部の温度は結晶成長部温度より高い2000℃〜2400℃となるようコイル位置等を調節する。
【0013】
なお、本明細書では、炭化珪素原料から、直接、昇華した昇華ガスを結晶成長に用いる例で説明を行っている。しかしながら、本願発明の本質は、炭化珪素種結晶の支持部の構成や結晶成長ルツボの構成に有り、本願発明の成長方法として、昇華ガスの代わりにシラン、プロパン等を原料とする化学的気相堆積法(CVD法)を用いる場合、あるいは、Si融液等を溶媒として成長させる液相成長法等単結晶を成長させる方法を適用できることは言うまでもない。
【0014】
本願発明は、結晶成長ルツボに低温部と高温部を設け、該結晶成長ルツボの低温部に炭化珪素単結晶からなる種結晶基板を配し、高温部に炭化珪素原料を配して、炭化珪素原料から昇華した昇華ガスを種結晶基板上に析出させて炭化珪素単結晶を成長させる炭化珪素単結晶の製造方法において、ルツボの低温部となるルツボ部材に、炭化珪素との室温における線膨張係数の差が1.0×10−6/ケルビン以下、好ましくは0.5×10−6/ケルビン以下、より好ましくは0.3×10−6/ケルビン以下である物質を用いることを特徴とする。
【0015】
結晶成長ルツボには、一般的には、黒鉛、白金、タンタル等の材質が用いられるが、これらの物質と炭化珪素とには、かなりの熱膨張率の差があり、結晶成長ルツボに炭化珪素種結晶を直接貼り付けた場合は、この熱膨張率の違いが、単結晶成長時の、昇温、降温時に炭化珪素種結晶に歪を与え、この歪が炭化珪素成長結晶の欠陥の原因となっていた。
【0016】
本願発明では、炭化珪素種結晶を、炭化珪素との室温における線膨張係数の差が1.0×10−6/ケルビン以下のルツボ部材に保持することにより、単結晶成長時の、昇温、降温時に炭化珪素種結晶加わる歪を極力低減し、この歪に起因する成長結晶中の欠陥を減少させることができる。本願発明で用いる部材の、炭化珪素との室温における線膨張係数の差は0であることが最も好ましいため、本願発明のルツボの低温部は炭化珪素で製造するのが好ましい。また、線膨張係数の差が1.0×10−6/ケルビン以下になるように調整した黒鉛も好適に用いることができる。
【0017】
また本願発明では、例えば図2に示すように、結晶成長ルツボ21と種結晶基板22との間に、炭化珪素との室温における線膨張係数の差が、1.0×10−6/ケルビン以下、好ましくは0.5×10−6/ケルビン以下、より好ましくは0.3×10−6/ケルビン以下である物質からなる支持部材23を設置することを特徴とする。このような構成とすることにより、単結晶成長時の、昇温、降温時に炭化珪素種結晶に歪が加わることを防ぎ、またこの歪が炭化珪素成長結晶の欠陥の原因となることを防止することができる。
【0018】
本願発明では、炭化珪素種結晶を、種結晶の支持部材、または、ルツボの低温部に保持する際に、該箇所に、炭化珪素種結晶と同一物質である、炭化珪素を用いることにより、単結晶成長時の、昇温、降温時に炭化珪素種結晶加わる歪を極力低減し、この歪に起因する成長結晶中の欠陥を減少させることができる。
【0019】
また本願発明の炭化珪素単結晶の製造方法では、炭化珪素からなる支持部材、または、炭化珪素からなるルツボの低温部を、炭化珪素単結晶とするのが好ましい。炭化珪素には焼結等により製造した多結晶体と、昇華法等により製造した単結晶体がある。本願発明の支持部材には、基本的にはその何れも使用できるが、多結晶の炭化珪素は、本願発明で成長させる単結晶の炭化珪素と熱膨張率がわずかに相違する。そのため、本願発明の炭化珪素単結晶の製造方法では、その支持部材に単結晶の炭化珪素を用いたほうが、多結晶を用いるより、さらに種結晶に加わる歪を低減させることができる。
【0020】
また本願発明者の実験によると、多結晶の炭化珪素支持部材と、炭化珪素種結晶の接合面において、結晶成長中に欠陥が生ずる場合があり、その欠陥が種結晶をつき抜け、成長結晶にまで伝播する場合がある。そのため、本願発明の構成を採用することにより、このような現象を防ぎ、より欠陥の少ない炭化珪素単結晶を製造することが可能となる。
【0021】
本願発明の炭化珪素単結晶の製造方法では、炭化珪素単結晶支持部材、または、炭化珪素単結晶を用いたルツボの低温部(以後、単に炭化珪素単結晶保持部とする。)の結晶構造と、種結晶の結晶構造とを同一とし、かつ、該箇所の結晶面方位と、種結晶の結晶面方位とを合致させてルツボ内に設置するのが好ましい。前述のように、本願発明では、炭化珪素種結晶とその保持部の熱膨張係数を極力低減させる必要があるが、炭化珪素単結晶であっても、その結晶構造、結晶方位によって、その熱膨張率に数%以上の差が生ずる。よって、炭化珪素単結晶保持部の結晶構造と、種結晶の結晶構造とを同一とし、かつ、炭化珪素単結晶保持部の結晶面方位と、種結晶の結晶面方位とを合致させることにより、熱膨張率差により種結晶に加わる歪を極限まで低減することができる。また、前述した、炭化珪素保持部と、炭化珪素種結晶の接合面において生ずる欠陥は、その結晶構造や結晶面方位の違いにより生ずる場合があり、本願発明により、この欠陥の発生も防止することが可能となる。なお、結晶面方位を合致させるとは、炭化珪素単結晶のSi面、およびC面をも識別し、同一結晶方位の場合において、Si面とC面とを接合させることを意味する。なお、本願発明で、結晶面方位を合致させるとは、結晶面方位を−10°から+10°の範囲内で、より好ましくは、−5°から+5°の範囲内で、さらに好ましくは、−1°から+1°の範囲内で合致させることを意味する。
【0022】
また、本願発明では、炭化珪素保持部と、炭化珪素種結晶を、4H構造とし、接合する結晶面方位としては、{0001}に対し±30°オフセットがついた方位とするのが好ましい。この構造、および、方位を用いることにより、種結晶に加わる歪を極力低減し、また、接合界面で発生する欠陥を極力減らすことが可能となる。
【0023】
本願発明の、炭化珪素単結晶の製造方法においては、炭化珪素からなる支持部材の厚さを、好ましくは、0.7mm〜10mmの範囲内、より好ましくは、5mm〜10mmの範囲内とする。この範囲内とすることにより、欠陥導入防止および欠陥密度低減の効果が得られる。
【0024】
本願発明の、炭化珪素単結晶の製造方法においては、炭化珪素からなる保持部に種結晶を設置するに際して、種結晶の側部を炭化珪素の部材を用いて保持するのが好ましい。本願発明の製造方法で、炭化珪素からなる支持部材に種結晶を設置する場合、炭素を主成分とした接着剤により接合することもできるが、例えば、図2に示したように、種結晶22の側部を炭化珪素の部材25を用いて保持することにより、接合面での欠陥の発生や、接着剤に起因する歪等を低減でき、より歪の少ない結晶成長が可能となる。また同様に、炭化珪素からなる支持部材23と、ルツボ21との接合部においても、炭化珪素の部材24を用いて接合するのが好ましい。
【0025】
本願発明の、炭化珪素単結晶の製造方法においては、図2に示すように、結晶成長ルツボ内の支持部材を保持する壁部の厚さ、または、ルツボの低温部を、他の箇所の壁厚より薄くするのが好ましい。本願発明の製造方法では、結晶成長ルツボを、例えば、高周波誘導により加熱するが、その際のルツボの加熱温度はルツボの壁厚の影響をうける。すなわち、結晶成長ルツボ内の支持部材を保持する壁部の厚さ、または、ルツボの低温部を、他の箇所の壁厚より薄くすることにより、その箇所の温度をルツボ全体に対して下げ、種結晶とルツボ低温部間の温度差を下げ、それにより、その箇所に生ずる熱歪を下げることが可能となる。
【0026】
本願発明の炭化珪素単結晶の製造方法で製造した結晶は、外周刃、ワイヤーソー等を用いて、成長方向に対して平行もしくは斜め方向に切断し、結晶欠陥の少ない炭化珪素単結晶ウェハーとすることが可能である。そして、これを用いて高性能の半導体デバイス、特にインバータ素子等を高収率で製造することが可能となる。
【実施例】
【0027】
以下実施例を示すが本願発明は実施例に限定されるものではない。
(実施例)
(000−1)面が露出した4H−炭化珪素単結晶を種結晶基板(直径50mm、厚さ0.4mm)を、硫酸−過酸化水素混合溶液で110℃、10分、超純水による流水洗浄5分、アンモニア、過酸化水素混合溶液にて10分、洗浄超純水による流水洗浄5分、塩酸及び過酸化水素混合溶液にて10分、洗浄超純水による流水洗浄5分、さらにHF溶液にて洗浄した。その後、1200℃で表面を酸化した後再度HF洗浄を行ない種結晶とした。
【0028】
黒鉛製の内径70mm、深さ95mmのルツボに、炭化珪素原料粉末(昭和電工製#240)を高さ60mmになるよう充填した。ついで黒鉛製ルツボ蓋下面に図2の構造の炭化珪素単結晶支持部材を用いて前記種結晶を保持した。支持部材の結晶構造は4H、面方位は(000−1)、厚さは12mm、支持部材とルツボとの接合は炭化珪素多結晶部材、支持部材と種結晶との接合は炭化珪素多結晶部材を用いた。また、黒鉛製ルツボの壁厚は10mmとし、ルツボの支持部材との接合部の壁厚は2mmとした。
【0029】
この蓋をルツボ開口部に配置し、この黒鉛ルツボ全体を炭素繊維製断熱材で包み、高周波加熱炉内の反応容器にセットした。ガス排出口8より反応管内を5×10−5Torrに減圧後、不活性ガス導入口7よりアルゴンガスを常圧まで充填した後、再度ガス排出口より5×10−5Torrまで減圧し反応間内の空気を追い出した。そして不活性ガス導入口よりアルゴンガスを再度700Torrまで充填し、黒鉛ルツボ上部が2200℃、下部が2250〜2300℃になるまで昇温する。その後ガス排出口よりガスを排出し、アルゴン雰囲気圧力を5.3kPaに減圧し、成長を20時間行った。
【0030】
得られた結晶を成長方向に対して垂直に切断し、鏡面研磨し直径50mmの半導体用ウェハーを製造した。この半導体ウェハーの特性はマイクロパイプフリーかつ転位密度も従来より低い優れたものであった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
炭化珪素は熱伝導性、耐熱性および機械的強度にも優れているので、その単結晶は半導体デバイス、それから構成されたインバータとして各種の用途に用いられる。特に電力制御用パワー素子として注目されている。

【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】炭化珪素単結晶の一般的な製造装置である。
【図2】本願発明の炭化珪素種結晶支持部の例である。
【符号の説明】
【0033】
1 石英管
2 断熱材
3 高周波コイル
4 炭化珪素結晶
5 炭化珪素原料
6 ルツボ
7 ガス導入口
8 ガス排出口
9 放射温度計
10 種結晶支持部材
21 ルツボ蓋
22 種結晶
23 種結晶支持部材
24 支持部固定部材
25 種結晶固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶成長ルツボに低温部と高温部を設け、該結晶成長ルツボの低温部に炭化珪素単結晶からなる種結晶基板を配し、高温部に炭化珪素原料を配して、炭化珪素原料から昇華した昇華ガスを種結晶基板上に析出させて炭化珪素単結晶を成長させる炭化珪素単結晶の製造方法において、種結晶を配する箇所のルツボ部材に、炭化珪素との室温における線膨張係数の差が1.0×10−6/ケルビン以下である部材を用いることを特徴とする炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項2】
種結晶を配する箇所のルツボ部材が、炭化珪素であることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項3】
種結晶を配する箇所のルツボ部材が、炭化珪素単結晶であることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項4】
種結晶を配する箇所のルツボ部材の結晶構造と、種結晶の結晶構造とを同一とする請求項3に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項5】
種結晶を配する箇所のルツボ部材の結晶面方位と、種結晶の結晶面方位とを−10°〜+10°の範囲内となるように合致させることを特徴とする請求項3または4に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項6】
種結晶を配する箇所のルツボ部材の結晶構造が4Hであることを特徴とする請求項3〜5の何れか1項に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項7】
結晶面方位が、{0001}に対し+30°〜−30°の範囲内でオフセットがついた面方位であることを特徴とする請求項5または6に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項8】
種結晶を配する箇所のルツボ部材の厚さが、0.7mm〜50mmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項9】
低温部となるルツボ部材に種結晶を配するに際して、種結晶の側部を炭化珪素の部材を用いて保持することを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項10】
結晶成長ルツボ内の種結晶を配する壁部の厚さを、他の箇所の壁厚より薄くすることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項11】
結晶成長ルツボに低温部と高温部を設け、該結晶成長ルツボの低温部に炭化珪素単結晶からなる種結晶基板を配し、高温部に炭化珪素原料を配して、炭化珪素原料から昇華した昇華ガスを種結晶基板上に析出させて炭化珪素単結晶を成長させる炭化珪素単結晶の製造方法において、低温部となるルツボ部材と種結晶基板との間に、炭化珪素との室温における線膨張係数の差が1.0×10−6/ケルビン以下である物質を炭化珪素種結晶支持部材として用いることを特徴とする炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項12】
炭化珪素種結晶支持部材が、炭化珪素であることを特徴とする請求項11に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項13】
炭化珪素種結晶支持部材が、炭化珪素単結晶であることを特徴とする請求項11に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項14】
炭化珪素種結晶支持部材の結晶構造と、種結晶の結晶構造とを同一とする請求項11〜13の何れか1項に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項15】
炭化珪素種結晶支持部材の結晶面方位と、種結晶の結晶面方位とを、−10°〜+10°の範囲内となるように合致させることを特徴とする請求項11〜14の何れか1項に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項16】
炭化珪素種結晶支持部材の結晶構造が4Hであることを特徴とする請求項13〜15の何れか1項に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項17】
結晶面方位が{0001}に対し+30°〜−30°の範囲内でオフセットがついた面方位であることを特徴とする請求項15または16に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項18】
炭化珪素種結晶支持部材の厚さが、0.7mm〜50mmの範囲内であることを特徴とする請求項11〜17の何れか1項に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項19】
炭化珪素種結晶支持部材に種結晶を配するに際して、種結晶の側部を炭化珪素の部材を用いて保持することを特徴とする請求項11〜18の何れか1項に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項20】
結晶成長ルツボ内の支持部材を保持する壁部の厚さを、他の箇所の壁厚より薄くすることを特徴とする請求項11〜19の何れか1項に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項21】
請求項1〜20の何れか1項に記載の炭化珪素単結晶の製造方法を用いて製造した単結晶を用いた半導体デバイス。
【請求項22】
請求項21の半導体デバイスから構成されたインバータ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−88036(P2008−88036A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−273347(P2006−273347)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】