説明

炭水化物由来のポーラスカーボン

二つのピークを有する容積ポアサイズ分布によって特徴づけられるポーラスカーボンであり、前記ピークの1番目が0.5nmと1.0nmの間であり、前記ピークの2番目が1.0nmと5.0nmの間であるポーラスカーボン。該ポーラスカーボンは、有機電界質中での少なくとも40F/cmの体積比容量と、約2nmと約30nmの間の平均ポア径と、少なくとも900m/gの表面積、および/または少なくとも0.4g/cmの密度を有してよい。かかるカーボンを作製するための方法は、a)炭水化物、脱水成分、および非金属陽イオンポア形成剤を含んでなる混合物をキュアすること、およびb)キュアされたカーボンを、約100m/gと約3000m/gの間の表面積を有するポーラスカーボンを与えるのに有効な条件下に炭化することを含む。脱水成分および非金属陽イオン成分は、1つの化合物の二つの成分を含んでなってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポーラスカーボンを作製する方法であって、少なくとも一つの炭水化物、少なくとも一つの脱水成分、および少なくとも一つの非金属陽イオン成分を含んでなる混合物をキュアすることを含んでなる方法を開示する。該方法はさらに、約2nmと約50nmの間の平均ポア径;約100m/gと約3000m/gの間の表面積、およびいくつかの態様においては各々0.5〜1.0nmおよび1.0〜5.0nmの範囲内のサイズ分布のピークをもつポアによって特徴づけられるポーラスカーボンを得るべく充分な方法で、カーボンを炭化することを含んでなる。
【背景技術】
【0002】
ポーラスカーボンは、その拡張された表面積および微孔性の構造の故に、用途の広い材料である。それらは、気相および液相の双方における材料について、フィルタ、膜、吸収剤、および触媒担体としての適用を見出している。ポーラスカーボンはまた、家庭廃水および産業廃水の処理およびレメディエーションにおいても用途を見出している。たとえば、バンサール(Bansal, R.C.)、ドネット(J.-B.Donnet)、およびスタークリ(F.Stoeckli)著、「アクティブ・カーボン(ActiveCarbon)」、マーセル・デッカー(MarcelDekker)(ニューヨーク)、1988年参照。加えて、カーボンは、キノシタ(Kinoshita, K.)著、「カーボン:エレクトロケミカル・アンド・フィジコケミカル・プロパティズ(Carbon: Electrochemical and Physicochemical Properties(カーボン:電気化学的および物理化学的特性))」ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)(ニューヨーク)に記述されたように、電極材料として広く使用されている。
【0003】
特定の適用に向けたポーラスカーボンの特性および適合性は、カーボンの多孔度という厳密な性質によって大いに規定される。特に、ポアのサイズ、形、およびサイズ分布は、ポーラス材料の特性および、所与の適用に関するその適合性に大いに影響を及ぼす。ポア構造は、形、深さ、および幅を各々異にする多数の形状および構造を呈することが可能である。ポアの内側は、形およびサイズの双方に関し、ポーラス材料の外表面上に呈示される横断面からは著しく異なることが可能である。いくつかの代表的なポア構造は、管状キャピラリ、オープンまたはクローズドキャピラリ、インクボトル型キャピラリ、オープンスリット型キャピラリ、および球状ポアを含む。ポアが測定される方法は、ポアの形に依存する:円筒状のポアはその直径によって測定されるが、スリット型のポアはその最短寸法を横切って測定される。2nm未満の特徴的なディメンション(直径または幅)を有するポアはミクロポアと定義され、50nmを超えるものはマクロポアであり、2と50nmの間のものはメソポアとみなされる。用語メソポアによって包含される定義およびサイズ範囲は、この技術において充分に受入れられており、IUPACによって採用された規則に合致している;たとえば、バンサール(Bansal, R.C.)、ドネット(J.-B.Donnet)、およびスタークリ(F. Stoeckli)著、「Active Carbon(活性カーボン)」、1988年、p.119−163参照。
【0004】
実験的には、多孔度のデータは、窒素等温線およびポアサイズ分布プロットから得られてもよい。窒素等温線は、一定温度において測定された相対圧力の関数としての、吸着および脱着された窒素ガスの体積のプロットである。グレッグ(S. Gregg)およびシング(K. Sing)による「アドソープション・サーフェス・エリア・アンド・ポロジティ(AdsorptionSurface Area and Porosity(吸着表面積と多孔性))」、アカデミックプレス、ニューヨーク、1982年、に記述されたように、これらの等温線は、プロットの形に基づき4つの型のうちの一つに分類されることが可能である。I型の等温線は、ほぼ水平なプラトーを特徴とし、吸着および脱着のトレースの間にほとんどまたは全く差異がない。しかしながらIV型の等温線は、ヒステリシスとして知られる、2つの彎曲点と、吸着および脱着等温線の差異とによって特徴づけられる。I型等温線はミクロポーラス材料と関連しており、一方IV型等温線はメソポアの存在と関連している。したがって、ヒステリシスはメソポーラス材料の特徴である。
【0005】
高比率のメソポアによって特徴づけられるポーラスカーボンは、ユニークな特徴のプロフィールの故に、ある液相適用に好ましいことが見出されている。たとえば、メソポアは電解質によってより容易に満たされやすく、そのことは、カーボンが液体電解質と密着されねばならない場合に、電極としてのそれらの有用性を高めている。窒素吸着/脱着等温線におけるヒステリシスループの存在は、メソポーラス材料の指標であるといってよい。メソ多孔性はまた、参考として本文に含まれているバレット(Barrett)ら著、「ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ(J. Am. Chem. Soc.)」、1951年、第73巻、p.373−380の方法に従って取得可能な、ポアサイズ分布のプロットによっても診断されることが可能である。
【0006】
ポーラスカーボンを製造する方法は、ポアの特徴および分布に影響を及ぼす。ほとんどの方法は、ミクロ−、メソ−、およびマクロ−ポアを含めたポアサイズの分布を示す。メソポーラスカーボンを作製しようとするものは、この分布をメソポアの比率を増すべく変えようと試みてきた。
【0007】
しばらくの間に、炭水化物がカーボン製品へ脱水され得ることが知られてきた。たとえば、カーボンは、濃硫酸を普通のグラニュー糖(スクロース)へ添加してカーボンを生成することにより作製されることが可能である。かかる重合されたカーボンの、不活性雰囲気下での900℃を超える温度における高温処理は、10m/gに近い表面積のポーラスカーボンを作製する。
【0008】
この技術のあるものは、ポア形成材料およびカーボン前駆体の存在下にメソポーラスカーボンを作製することを試みてきた。たとえば、ペング(Peng)らへの米国特許第6,024,899号は、カーボン前駆体とポア形成材料とを組合せることにより、メソポーラスカーボンを作製することに関係しており、ポアフォーマは好ましくは熱可塑性物質、たとえばポリビニルブチラル(PVB)、ポリエチレングリコール(PEG)、重質石油分画および/または石炭液である。
【0009】
ベル(Bell)らへの米国特許第6,279,293号は、レゾルシノール、ホルムアルデヒド、および、モノマーと界面活性剤との間の静電的相互作用を安定化することが可能な界面活性剤を含んでなる水溶液から、レゾルシノール/ホルムアルデヒド(RF)系を重合することによって調製された、メソポーラス材料を開示している。該界面活性剤は陽イオン性、陰イオン性、または非イオン性でよく、適当な界面活性剤は、セチルトリメチルアンモニウムクロライドおよびセチルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムおよびビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、およびBrij30を含む。
【0010】
ジュン(Jun)ら著、「Synthesis of New, Nanoporous Carbon withHexagonally Orderd Mesostructure(六角形の規則的なメソ構造をもつ新規なナノポーラスカーボンの合成)」、J. Am. Chem. Soc.、2000年、第122巻、p.10712−10713、およびそれに含まれた参考文献によれば、規則的なナノポーラスカーボン材料の合成は、SBA−15、スクロース、および硫酸を用いて行なわれ、SBA−15は直径9nmの円筒状メソポーラスチューブの六角形の配列からなる規則的なメソポーラスなシリカ分子篩である。
【0011】
この技術内のこのような進歩にもかかわらず、研究は、安価で、実施しやすく、確実な反復に適している、高表面積のメソポーラスカーボンを作製する方法の発見および開発に向かい続けている。加えて、かかる方法を、ウルトラキャパシタおよび容量性脱イオン技術(CDT)用の電極といった、精選された物品の製造のための方法に適用する必要性が残されたままである。本方法から製されたメソポーラスな高表面積のカーボンが、ある液相および触媒適用といった、メソポアの数について注意深い制御を要する適用に、特別の用途を見出すことが期待されている。
【0012】
水は、溶解された塩、汚れ、または微生物によって、飲用不適とされる可能性がある。汽水の処理は、これまで主として逆浸透(RO)のプロセスによって行なわれてきた。逆浸透は、溶媒は通過できるが溶解された溶質は通過できない膜によって分離された、2量の溶液を考えた場合に理解可能である。溶媒は、浸透として記述されたプロセスにおいて、低溶質濃度から高溶質濃度へ膜を横切って流れるであろう。低溶質濃度から高溶質濃度への流れに逆らうために必要な圧力は、浸透圧として知られている。浸透圧を超える圧力は、溶媒の流れを逆転させるべく使用されてよく、溶媒は高溶質濃度から低溶質濃度へ流れるであろう。逆浸透が海水から純粋を得る原理は、この原理に基づいている。実用可能なスケールでの逆浸透は、かなりの海水体積において膜を横切る浸透圧に打勝つべく充分な圧力を発生させるために必要な大量のエネルギーのため、費用がかかる。たとえば、ファーマー(Farmer)ら著、「CapacitiveDeionization of NaCl and NaNO3 Solutions with Carbon AerogelElectrodes(カーボンエアロゲル電極によるNaClおよびNaNO溶液の容量性脱イオン)」、ジャーナル・オブ・エレクトロケミカル・ソサイエティ(J. Electrochem. Soc.)、1996年、第143巻、p.159-169参照。
【0013】
別法として、容量性脱イオン技術(CDT)は、所与の電位差に維持された多孔性の平行電極のペアからなる印加されたキャパシタを通した汽水の通過により、飲用不適水を純化するべく使用されることが可能である。荷電化学種としての、飲用不適水中に存在する溶解された塩および微生物は、反対に帯電した電極へ引き寄せられ、結合する。電極はそれが飽和されるようになるまで使用され、その結果再生を必要とする。再生は、適用された電位の除去と、同時のフラッシングとを含んでなり、トラップされたイオンおよび荷電粒子が電極から移動できるようにする;汚染物質は濃縮された塩水の流れとして運び去られる。CDTシステムを操作するために必要なエネルギーは、同体積の液体について逆浸透を駆動するために必要なものよりも実質的に小さい。CDTはそれゆえ逆浸透(RO)よりも、操作するのに有意に費用が少なくてすむ。CDTの広い採用は、これまでは、競合する逆浸透システムの資本コストをしのぐ、CDT電極を製造する高いコストによって妨げられてきた。この技術における他のものは、以前には、カーボン紙支持体を水性レゾルシノールホルムアルデヒド溶液に含浸すること、溶液を重合して支持体上に含浸されたレゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂を得ること、樹脂/支持体から溶媒を抽出すること、樹脂/支持体をカーボンエアロゲル電極へ熱分解することを含んでなるプロセスにより、CDT電極を作製してきた。このプロセスは一以上の点で欠陥がある。それは、レゾルシノール出発材料の比較的高いコスト、および抽出段階に関連した高いコストの故に、費用のかかるプロセスであり、前記抽出は、たとえば、超臨界二酸化炭素を使用する。さらに、このプロセスから得られた電極は、比較的低い表面積と、それゆえに低い容量とによって特徴づけられる。低い容量の電極は、有効なCDTシステムに複数の電極が使用されることを必要とする。
【0014】
メソポーラスカーボンのもう一つの適用は、ウルトラキャパシタ用の電極として、である。二重層のキャパシタンスに基づくウルトラキャパシタは、イオン的に伝導性の電解質溶液と、電子的に伝導性の電極との間の界面における、厚さわずか数オングストロームの分極された液体層中にエネルギーを蓄える。界面(二重層と呼ばれる)におけるイオン化学種における電荷の分離は、静電場を発生させる。もし他の因子が等しければ、電極の表面積が広いほど、より多くの電荷を蓄えることが可能である。加えて、印加/放電サイクルの間に何ら化学反応が起こらないことから、これらの装置は劣化することなく何度もサイクルされることが可能である。
【0015】
二重層ウルトラキャパシタ装置用の電解質には、水性および有機の2つの主要なカテゴリーがあり、その各々がそれら自身の長所および短所のセットを有する。水酸化カリウムおよび硫酸といった水性電解質は、抵抗が低く非常に迅速に印加および放電されることが可能であって、それらを高電力の適用に適するものにしている。しかしながら、水性電解質の電圧限界のため、それらは約1ボルトの電位範囲を通してのみサイクルされることが可能である;このことはそれらのエネルギー貯蔵密度(電圧の二乗に比例する)を大幅に制限する。プロピレンカーボネートまたはアセトニトリル中に溶解された、NEtBFのような有機電解質は、はるかに高い分離電圧(3ボルトまで)を有しており、それゆえはるかに高いエネルギー貯蔵密度(理論的には9倍まで)を有する。しかしながら、それらがはるかに高い抵抗をもつことから、それらは迅速に印加または放電されることができず、それらをより低い電力密度の適用へ制限している。
【特許文献1】米国特許第4,256,773号
【特許文献2】米国特許第6,279,293号
【特許文献3】米国特許第6,631,073号
【非特許文献1】バンサール(Bansal,R.C.)、ドネット(J.-B. Donnet)、およびスタークリ(F. Stoeckli)著、「アクティブ・カーボン(Active Carbon)」、マーセル・デッカー(Marcel Dekker)(ニューヨーク)、1988年
【非特許文献2】カーボンは、キノシタ(Kinoshita,K.)著、「カーボン:エレクトロケミカル・アンド・フィジコケミカル・プロパティズ(Carbon : Electrochemical and Physicochemical Properties(カーボン:電気化学的および物理化学的特性))」ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(JohnWiley & Sons)(ニューヨーク)
【非特許文献3】バンサール(Bansal,R.C.)、ドネット(J.-B. Donnet)、およびスタークリ(F. Stoeckli)著、「Active Carbon(活性カーボン)」、1988年、p.119−163参照
【非特許文献4】グレッグ(S. Gregg)およびシング(K. Sing)による「アドソープション・サーフェス・エリア・アンド・ポロジティ(Adsorption Surface Area and Porosity(吸着表面積と多孔性))」、アカデミックプレス、ニューヨーク、1982年、
【非特許文献5】バレット(Barrett)ら著、「ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ(J. Am. Chem.Soc.)」、1951年、第73巻、p.373−380
【非特許文献6】ジュン(Jun)ら著、「Synthesis of New, Nanoporous Carbon withHexagonally Orderd Mesostructure(六角形の規則的なメソ構造をもつ新規なナノポーラスカーボンの合成)」、J. Am. Chem. Soc.、2000年、第122巻、p.10712−10713、
【非特許文献7】ファーマー(Farmer)ら著、「Capacitive Deionization of NaCl and NaNO3Solutions with Carbon Aerogel Electrodes(カーボンエアロゲル電極によるNaClおよびNaNO3溶液の容量性脱イオン)」、ジャーナル・オブ・エレクトロケミカル・ソサイエティ(J. Electrochem. Soc.)、1996年、第143巻、p.159-169参照。
【発明の開示】
【0016】
一つの側面において、本発明は、メソポーラスカーボンを作製する方法を開示する。本方法の一つの態様によれば、ポーラスカーボンは、好ましくは豊富なメソポアによって特徴づけられる。本方法は、(a)カーボンを提供するために有効な条件下に混合物をキュアすること;および(b)ポーラスカーボンを提供するために有効な条件下でカーボンを炭化することを含んでなる。キュアされた混合物は、好ましくは(i)少なくとも一つの炭水化物、(ii)少なくとも一つの脱水成分、および(iii)少なくとも一つの非金属陽イオン成分を含んでなる。
【0017】
本発明は、上文に詳述された方法に従って作製されたメソポーラスカーボンを含んでおり、前記メソポーラスカーボンから作製された炭素質電極を含む。ポーラスカーボンは、約2nmと約50nmの間の平均ポア径;および約100m/gと約3000m/gの間の表面積によって特徴づけられる。いくつかの場合には、本メソポーラスカーボンは、少なくとも0.4g/cmの密度、少なくとも40F/cmの体積比容量、および/またはいくつかの態様においては、各々0.5〜1.0nmおよび1.0〜5.0nmの範囲内にピークを有するポアサイズ分布によって特徴づけられる。
【0018】
本発明のなおもう一つの側面においては、炭素質電極を作製する方法が開示される。電極は、好ましくは約2nmと約50nmの間の平均ポア径;約100m/gと約3000m/gの間の表面積;少なくとも0.4g/cmの密度、少なくとも40F/cmの体積比容量、および/または、いくつかの態様においては、各々0.5〜1.0nmおよび1.0〜5.0nmの範囲内にピークを有するポアサイズ分布によって特徴づけられる。
【0019】
本発明の第1の特徴は、炭水化物(スクロース、フルクトース、グルコース、コーンシロップ、デンプン、セルロースなど)からの、メソポアの割合が増大された高表面積のカーボンを調製するための、低コスト方法の開発である。このことは、陽イオン性非金属塩および脱水成分からなる水溶液を炭水化物へ添加すること、続いて熱加工することによって達成された。典型的には、炭水化物に由来するカーボンは、低表面積を有し、かつミクロポーラスである。配合物への非金属塩の投入は、結果としてメソ多孔性および増大された表面積の創製を生じる。このようなカーボンが、ウルトラキャパシタおよび容量性脱イオン用の電極として試験されてきた。本方法はさらに、これまで可能であったものよりも費用がかからない、CDT用に有用な炭素電極を製造する方法を開示する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(定義)
本文において使用されるポーラスカーボンは、少なくとも75重量%の元素炭素を含んでなり、かつ少なくとも100m/gのBET表面積によって特徴づけられる、任意の多孔性の炭素質材料を指すものとする。本文において使用される用語、炭化は、化学構造変化に影響を及ぼし、かつ結果として炭素質産物を生じるあらゆるプロセスを指すものとする。本文において用いられるポーラス材料は、ポアおよび/またはチャネルのネットワークによって特徴づけられるあらゆる材料として定義されるものとする。
(メソポーラスカーボンを作製する方法)
【0021】
本発明は、(a)カーボンを与えるに有効な条件下で混合物を形成およびキュアすること;および(b)ポーラスカーボンの提供に有効な条件下でカーボンを炭化すること、の段階を含んでなる、ポーラスカーボンを作製する方法を開示する。段階(a)は、好ましくは、混合物中に存在してもよい全てまたは実質的に全ての液体を蒸発させることを必然的に伴う。いくつかの態様においては、液体は水でよく、混合物の他の成分は水中に溶解されてよい。以下に記述された他の態様においては、少なくともいくつかの成分は液体に不溶性でもよい。ある態様においては、段階(a)で形成されたポーラスカーボンは、実質的にモノリシックである。キュアされたカーボンは、5mm未満の平均サイズを有する粒子へ粉砕または摩砕されてよい。
【0022】
結果として得られたポーラスカーボンは、約2nmと約50nmの間の平均ポア径;および約100m/gと約3000m/gの間の表面積によって特徴づけられる。混合物は、好ましくは(i)少なくとも一つの炭水化物、(ii)少なくとも一つの脱水成分、および(iii)少なくとも一つの非金属陽イオン成分を含んでなる。好ましい態様においては、非金属陽イオン成分は水酸化物でもなくアミンでもない。
【0023】
上記されたように、炭水化物は、定義によれば、炭素および水を含んでなる炭素の水化物である。糖、セルロース、デンプン、多糖、単糖、およびオリゴ糖を含めて、ほぼ無数のタイプの炭水化物が、本発明における使用に適している。デンプンおよびスクロースといった可溶性炭水化物、ならびにセルロースのような不溶性炭水化物の双方が、本発明において等しく適用可能であることに注目されるべきである。好ましい炭水化物は、グルコース、フルクトース、マルトース、スクロース、ガラクトース、デンプン、コーンシロップ、高フルクトースコーンシロップ、セルロース、ラクトース、グリセルアルデヒド、ジヒドロキシアセトン、およびセロビオースである。一つの好ましい態様によれば、スクロースが炭水化物である。なおもう一つの好ましい態様によれば、セルロースは好ましい炭水化物である。
【0024】
混合物はさらに、(ii)少なくとも一つの脱水成分、および(iii)少なくとも一つの非金属陽イオン成分を含んでなる。一つの態様によれば、(ii)少なくとも一つの脱水成分、および(iii)少なくとも一つの非金属陽イオン成分は、別々の化合物からの成分である。たとえば、一つの態様によれば、脱水成分は硫酸(HSO)であり、非金属陽イオン成分は硫酸アンモニウム(NH(SO)のアンモニウム陽イオン(NH)である。適当な脱水成分は、適当な条件下に炭水化物から水の正味の除去を触媒することが可能な化合物、または化合物の成分である。化学の技術には、本文に列挙された条件に従う脱水剤として役立つことも可能な数多くの薬剤がある。適当な脱水成分は、硫酸、リン酸、亜硫酸、亜リン酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、過ヨウ素酸、過塩素酸、硝酸、亜硝酸、ヨウ素酸、塩酸、トルエンスルホン酸、シュウ酸、およびメタンスルホン酸を含む。硫酸は、一つの態様による好ましい脱水成分である。
【0025】
非金属陽イオン成分は、塩の陽イオン成分に由来してよい。かかる場合、非金属陽イオン成分は何らかの陰イオン性カウンターイオンを伴うことができ、双方のイオンが、たとえば、塩を形成する。一つの好ましい態様によれば、非金属陽イオン成分はアンモニウム陽イオンである。本発明に適した多くのアンモニウム陽イオンがある。アンモニウム陽イオンは、置換基の多様な組合せによって置換されてもよい。アンモニウム陽イオンは未置換、第1級、第2級、第3級、または第4級でよい。好ましくは、アンモニウム陽イオンは式、NRを有しており、R、R、R、およびRは、同じかまたは異なってよく、H、CH、CHCH、CHCHCH、CH(CH、CH(CHCH、CH(CH)CHCH、CHCH(CH、C(CH、CH(CH14CH、CH(CHCH、CH(CHCH、CH(CHCH、CH(CHCH、CH(CH10CH、CH(CH12CH、およびヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)からなる群より選ばれる。他の態様によれば、非金属陽イオン成分はジアミン、ポリエチレンイミン、トリフェニルメタン、またはホスホニウムである。
【0026】
別法として、もう一つの態様によれば、(ii)少なくとも一つの脱水成分および(iii)少なくとも一つの非金属陽イオン成分は、単一の化合物の2つの成分を含んでなる。この態様によれば、脱水成分および非金属陽イオン成分は、一つの化学成分として混合物へ添加される。脱水成分陰イオンおよび非金属陽イオン成分を含んでなる非金属塩は、この態様による典型的な単一の化合物である。この態様による適当な脱水成分陰イオンは、脱水成分の脱水作用を果たすべく充分な酸性度を陰イオンに与える少なくとも一つの基または原子を含むであろう。重硫酸塩は、この態様による代表的な脱水成分である。
【0027】
この態様による非金属陽イオン成分は、本発明の他の態様との関連において先に記されたものと実質的に類似しており、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、カルベニウムイオン、およびその他同様のものから選ばれた陽イオンを含むものとする。単なる実例として、該化合物は硫酸水素アンモニウム、硫酸水素テトラメチルアンモニウム、または硫酸水素セチルトリメチルアンモニウムであってもよい。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むことなく、本発明者らはこの態様により、硫酸水素陰イオン脱水成分が、本発明の他の態様に従って使用される強酸のものと類似の機能を果たすことを信じるものである。実際、本発明者らは、脱水成分および非金属陽イオン成分が一つの化合物の2つの成分を含んでなる方法によって製されたポーラスカーボンが、従来法によって製されたポーラスカーボンをしのぐ、優れた品質および合理化された生産プロセスを実証することを発見している。他の実例は、シュウ酸水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、およびリン酸水素アンモニウムを含む。
【0028】
本発明の非金属陽イオン成分は、或る条件下では、揮発性生成物へ完全に分解されてよく、それは生成物カーボンから完全に排出され、製品中には何ら痕跡を残さない。別法として、非金属陽イオン成分は、或る条件下で生成物へ分解されてよく、そのいくらかのみが揮発されて製造条件下に排出され、完全に分解されない生成物の残渣をカーボン製品中に残す。たとえば、表1の様々な加工温度の下で調製された、硫酸水素アンモニウムを含んでなるカーボン前駆体の元素分析は、分解が完全とはいえない例を示唆している。この技術の中では、硫酸水素アンモニウムが300℃より上では、二酸化硫黄、三酸化硫黄、水、窒素、およびアンモニアからなるガス状生成物に分解することは周知である:たとえば、エンサイクロペディア・オブ・ケミカル・テクノロジー(Encyclopedia of Chemical Technology)、第4版、ウィリー・インターサイエンス(Wiley-Interscience)、ニューヨーク、1995年、第2巻、p.692−708の、ウェストン(C.W. Weston)著、「AmmoniumCompounds(アンモニウム化合物)」を参照のこと。データの分析は、漸次的な分解のパターンを示している:ほとんどの硫黄は300℃で試料からなくなっているが、有意な量の窒素が1050℃においても残っている。
【0029】
【表1】

【0030】
本方法は、有効な条件下で混合物をキュアすることを含んでなる。好ましくは、キュアリング条件は、炭水化物の完全な脱水および、カーボン、好ましくはポリマーカーボンへの転換を果たすために充分なものである。
【0031】
一つの態様によれば、キュアリング条件は、混合物を一つの加熱段階において加熱することを含んでなる。本文において用いられる加熱段階は、所与の温度範囲内で行なわれる熱処理として定義される。この態様によれば、一段階条件は、好ましくは約80℃と約300℃の間の温度を含んでなる。一段階条件はさらに、約1時間と約12時間の間の時間間隔を含んでなってもよい。一段階条件は、そのうえさらに、不活性の、減圧された、または真空の雰囲気を含んでなってもよい。代表的な不活性雰囲気は、窒素、アルゴン、または他の希ガスを含んでなるものを含む。別法として、一段階条件は空気を含んでなる雰囲気を含んでなってもよい。
【0032】
別法として、混合物のキュアリングは、混合物を、本文において第1および第2加熱段階と呼ばれる2つの別々の段階において加熱することを含んでなってもよい。表示「第1」および「第2」が、これらの別々の加熱段階が実行される順序を意味するものではないことが理解されるであろう。この態様によれば、第1加熱段階用の条件は、約80℃と約120℃の間の温度を含む。所望であれば、80℃と120℃の間まで加熱された材料は、ペーストとして単離され、ペレットへ成形されることが可能である。この材料は、次の段階の前に揮発物を減少させるため、第2加熱段階に先立ち、酸を除去するべく水で洗浄されることが可能である。またこの態様によれば、第1段階は、所与の温度範囲内で、約1時間と約6時間の間の期間にわたり加熱することを含んでなってもよい。
【0033】
同様に、第2加熱段階は、好ましくは約140℃と約200℃の間の温度と、約1時間と約6時間の間の時間間隔にわたり加熱することを含んでなる。一つの態様によれば、前記第1段階の実施は、前記第2段階の実施に先行する。
【0034】
本方法はさらに、(b)ポーラスカーボンを与えるために有効な条件下でカーボンを炭化することを含んでなる。炭化条件を含んでなる温度は、典型的には、キュアリング条件を含んでなるものよりも高い。好ましくは、炭化はポーラスカーボンに対しメソポアを増加および/または添加するために有効なものとする。
【0035】
炭化は典型的には、必要な、より高い温度に達することが可能な炉において行なわれる。一つの態様によれば、炭化条件は、好ましくは約500℃と約1200℃の間、さらに好ましくは約800℃と約1100℃の間の温度を含んでなる。炭化は、好ましくは不活性雰囲気下に行なわれる。代表的な不活性雰囲気は、窒素、アルゴン、および希ガスから選ばれる少なくとも一つを含んでよい。別法として、または加えて、炭化条件は減圧された雰囲気を含んでなってもよい。炭化条件は、好ましくは約1時間と約4時間の間の時間間隔にわたり維持される。
【0036】
炭化条件は、好ましいガス流速をさらに含んでなってもよい。すなわち、炭化条件を含んでなる雰囲気は、所与の流速で炭化炉を通して一掃されてよい。先に示されたように、炭化条件を含んでなる流速と、それによって作り出されるポーラスカーボン生成物の表面積との間には、相関関係がある。特に、低い流速は、高い流速を用いて得られた多孔性製品よりも高表面積の多孔性製品を生み出すことが示されてきた。参考として本文に含まれている、シング(Xing)ら著、「OptimizingPyrolysis of Sugar Carbons for Use as Anode Materials in Lithium-Ion Batteries(リチウムイオン電池の陰極材料としての使用のための糖質カーボンの熱分解)」、ジャーナル・オブ・エレクトロケミカル・ソサイエティ(J. Electrochem. Soc.)、1996年、第143巻、p.3046−3052参照。
【0037】
いくつかの態様によれば、炭化条件は、約0炉容積/時間と16炉容積/時間の間の炉ガス流速を含んでなる。本文において用いられる単位「炉容積/時間」は、時間当たりに炉を通るガスの体積を表しており、体積は一炉容量のガスとして解釈される。最も好ましくは、ポーラスカーボン前駆体を炭化するための条件は、約0.5炉容量/時間と約1.5炉容量/時間の間の不活性ガスの流速を含んでなる。考えられるところでは、たとえば、窒素、またはアルゴンなどといった、任意の不活性ガスが炭化において使用されてよい。
【0038】
本方法は、ポーラスカーボンの表面積および多孔度を増加させるために有効な、賦活段階をさらに含んでなってもよい。賦活法は、この技術内で周知であり、典型的には、ポーラスカーボンが得られた後に適用される、蒸気、ガス、または化学試薬による処理を含んでなる。
【0039】
賦活法は、用いられる作用物により、物理的または化学的として分類されてよい。物理的賦活は、典型的には、高温の蒸気または二酸化炭素による処理を含んでよい。化学的賦活は、たとえば、リン酸、塩化亜鉛、または水酸化カリウムの使用を含んでよい。本発明のいくつかの態様によれば、本方法は少なくとも一つの賦活法をさらに含んでなる。またこの態様によれば、前記賦活法は化学的または物理的か、あるいは双方の何らかの組合せであってよく、かつ高温蒸気、二酸化炭素、リン酸、塩化亜鉛、および水酸化カリウムからなる群より選ばれてもよい。好ましくは、賦活法は二酸化炭素がスによる処理を含んでなる。好ましくは、賦活段階は炭化の後に行なわれる。賦活法は、浸浸時間および温度をさらに含んでなってもよい。本文において用いられる浸浸時間は、所与の温度における所与の賦活処理の継続時間として定義されるものとする。浸漬時間、温度、および賦活作用物を含めた各賦活パラメータは、所望の多孔性および表面積のカーボンを提供する賦活法を得るべく、個々に、および/または一括して最適化されてよい。
【0040】
炭化およびキュアリングの条件は、各々ランプ時間をさらに含んでよい。本文において用いられるランプ時間は、混合物が初期温度と最終温度の間で加熱される速度を指すものとする。キュアリングおよび炭化の双方の条件は、所与のランプ時間を特徴としてもよい。キュアリングおよび炭化のランプ時間は、同じかまたは異なってもよい。ランプ時間は、最終温度および初期温度の間の差を測定すること、および、初期温度から最終温度までの加温における経過時間の全量で割ることによって測定される。ランプ時間についての言及は、一定した加温速度を前提にしている。
【0041】
本発明らにより、ランプ時間の変更が、本方法によって産生されるポーラスカーボンの表面積に著しい影響を及ぼすことが発見されている。一つの態様によれば、本方法は少なくとも5時間である、炭化段階のための時間をさらに含んでなる。またこの態様によれば、ランプ時間は少なくとも継続した10時間である。いくつかの態様によれば、延長されたランプ時間は、結果として表面積の著しい増加を生じる。いくつかの好ましい態様においては、本方法は、ポア容積の分布がポアサイズに対してプロットされた場合、そのポアサイズ分布が2以上の分離したピークを有する材料を生じる結果となる。
【0042】
(本方法によって作製されたポーラスカーボン)
本発明はさらに、本発明の方法に従って作製されたポーラスカーボンを提供する。特に、本発明は(a)カーボンを与えるのに有効な条件下で混合物をキュアすること;および(b)ポーラスカーボンを与えるのに有効な条件下で該カーボンを炭化すること、を含んでなる方法によって作製されたメソポーラスカーボンをクレームしている。ポーラスカーボンは、約2nmと約50nmの間の平均ポア径;および約100m/gと約3000m/gの間の表面積によって特徴づけられる。好ましい態様においては、ポーラスカーボンは、増分ポア容積がポアサイズの関数としてプロットされた場合、2以上のピークを含むポアサイズ分布を有する。ピークは、たとえば、約0.5〜1.0nmの間および、約1.0〜5.0nmの間でよい。
【0043】
窒素吸着を用いたBJH法は、1.7〜300nmの範囲におけるポアサイズ分布を測定するべく用いられた。ポアサイズ分布を測定するためのこの方法は、バレット(Barrett, E.P.)、ジョイナー(L.G.Joyer)、およびハレンダ(P.P. Halenda)著、「Determination of Pore Volume and AreaDistribution in Porous Substances(多孔性物質におけるポア容積および面積分布の測定)」、J. Am. Chem. Soc.、1951年、第73巻、p.373−380に記述されており、この技術において周知である。この技術を用いて、この技術によって製されたポーラスカーボンの平均ポアサイズ分布が2nmより大きいことが見出された。BJH法は1.7nmより大きいポアに制限されることから、ポアサイズ分布の一部のみが測定された可能性があり、アルゴンを用いたマイクロポア分析がいくつかのカーボンについて使用された。0.5〜4nmの範囲のポアサイズ分布は、アルゴンと、ホーバート(Harvath, G.);カワゾエ(Kawazoe,K.)著、ジャーナル・オブ・ケミカル・エンジニアズ・ジャパン(J. Chem. Eng. Jpn.)、1983年、p.470に記述された、ホーバート・カワゾエ法とを用いて測定された。この方法を用いて、カーボンが、0.5〜1.0nmの範囲における第1のピークと、1.0〜5.0nmの範囲における第2のピークによる二峰性のポアサイズ分布を有することが見出された。図3は、実施例64、65、および66のポーラスカーボンに関するポア容量のデータを示しており、この特徴を例示している。
【0044】
本方法は、多くの可能な平均ポア径の一つを有するポーラスカーボンを作製するために使用されることも可能ではあるが、ポーラスカーボンは約2nmと約50nmの間の平均ポア径によって特徴づけられることが好ましい。約2nmと約50nmの間の平均ポア径は、上文に記述されたメソポア領域に実質的に相当する。ポーラスカーボンが、約2nmと約30nmの間の平均ポア径によって特徴づけられることはなおさらに好ましい。
【0045】
本発明のポーラスカーボンは、好ましくは高表面積を有する。本方法に従って製されたポーラスカーボンが、賦活されたか、または多孔性のカーボンに通常見られる範囲内の任意の表面積をもつことも可能であることは想像できるが、表面積は約100m/gと約3000m/gの間であることが好ましい。本ポーラスカーボンが、少なくとも900m/gである表面積によって特徴づけられることは、さらに好ましい。
【0046】
本発明により作製されたポーラスカーボンは、多くの可能な密度のうちの任意の一つによって特徴づけられてよい。いくつかの態様によれば、本方法に従って製されたポーラスカーボンは、少なくとも0.4g/cmである密度によって特徴づけられる。
【0047】
本発明により作製されたポーラスカーボンは、所与のキャパシタンスによってさらに特徴づけられることができる。キャパシタンスは、Fで全容量として、F/cmで体積比容量として、またはF/gで重量比容量として報告されてよいことが理解されるものとする。キャパシタンスは、電極材料ならびに周囲の電解質の電気特性に依存するであろう。典型的には、電解質は極性溶媒中に溶解されたイオン性成分を含んでなるであろう。電解質は典型的には水性タイプまたは有機タイプに分けられる。いくつかの態様によれば、ポーラスカーボンは、好ましくは少なくとも40F/cm、さらに好ましくは少なくとも60F/cmである有機電解質中で測定された、体積比容量によって特徴づけられる。好ましくは、有機電解質は、1M NEtBF(テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート)および1:1のジメチルカーボネート:プロピレンカーボネートを含んでなる。
【0048】
(炭素質電極を作製する方法)
さらにもう一つの側面においては、本発明は、本発明のメソポーラスカーボンを材料にして作られた炭素質電極および、それを作製する方法を含んでなる。本メソポーラスカーボンは、高い伝導性、高表面積、高いメソ多孔性、および高いキャパシタンスを有することから、二重層ウルトラキャパシタによるエネルギー貯蔵、および容量性脱イオン技術による汽水の脱塩に使用される電極用には理想的である。特に、メソポーラスを含有するカーボンは、それらが高表面積を可能にするとともに電解質イオンの自由な移動を可能にするという点で、いくつかの液体適用において利点をもつ。本カーボンは、非常に薄いカーボン電極として使用されやすく、カーボンの内外へのより迅速なイオンの移動を可能にすることから、増大された電力を生じる。さらに、薄板は電極のアレイ内へ容易に梱包されることが可能であり、コンパクトな装置を産生する。
【0049】
(容量性脱イオン技術)
本発明の炭素質電極を作製する法は、容量性脱イオン技術(CDT)用の電極を、これまで可能であったよりも安価に、ポアサイズと表面積の間に必要なバランスをもって製造するべく使用されることが可能である。
【0050】
本方法は、カーボン紙支持体を水レゾルシノールホルムアルデヒド溶液に含浸すること、続いて抽出および熱分解することを含んでなる先行技術法をしのぐ、いくつかの利点を実現している。ポーラスカーボン電極の本作製法は、(a)混合物を基板へ投入して含浸された基板を提供すること;(b)含浸された基板を、炭素質基板を提供するために有効な条件下にキュアすること;および(c)炭素質基板を、ポーラスカーボン電極を提供するために有効な条件下に炭化することを含んでなる。上述のように、混合物は(i)少なくとも一つの炭水化物、(ii)少なくとも一つの脱水成分、および(iii)少なくとも一つの非金属陽イオン成分を含んでなる。
【0051】
この方法で形成された電極は、エアロゲル電極に関連した固有の脆弱性および高い抵抗損失を克服するべく設計されている。基板は、本発明の電極に対し、電気伝導度、強度、および可撓性を与えることが意図されている。本発明による適当な基板は、熱分解に際し、みごとに炭素質CDT電極の一体化された部分となる一方で、同時に、発明の電極に強度、可撓性、および電気伝導度という特性を与えることができる。おそらく多数の可能な基板が本発明において使用可能であると予想されるが、本CDT電極における使用のために好ましい基板である数多くの特殊紙および特殊布が存在する。基板は、繊維から織られた布か、または不織繊維からなる紙でよい。代表的な基板は、不織カーボン紙、不織紙、およびフェノール織布を含む。
【0052】
混合物の基板への導入は、典型的には、混合物中に基板を浸漬することにより行なわれる。使用される混合物は、本発明の他の観点に関連して、前文に略述されたものと実質的に類似している。
【0053】
キュアリングおよび炭化の段階は、本発明の他の観点に関連して、前文に略述された段階と実質的に類似している。いくつかの態様によれば、湿った基板は、熱分解に先立ち、架橋しかつそれによりポリマー基板を安定化するための付加的な加熱段階を必要とした。前と同様に、ランプ時間、炭化温度、およびガス流炉速度の全てが、電極の多孔特性に対し、実質的な影響をもつことが発見された。
【0054】
本発明のCDT電極は、高い印加エネルギーによって特徴づけられるものとする。CDT電極の有効性は、累積放電エネルギーによって測定される。累積放電エネルギーは、電極に蓄えられることが可能な電解質の飽和量の指標を与える。より高い累積放電エネルギーは、より高い電解質飽和と相互関係がある。いくつかの態様によれば、CDT電極は少なくとも3.0J/cmである累積放電エネルギーによって特徴づけられる。
【0055】
(ウルトラキャパシタ)
本方法はまた、ウルトラキャパシタを作製するべく使用されてもよい。本発明に従って作製されたメソポーラスカーボンは、非常に高表面積の、それゆえ高キャパシタンスの、ポーラスカーボン電極において使用されることが可能である。高表面積のメソポーラスカーボンは、必然的に高いエネルギー蓄積密度を有する。ポーラス材料のキャパシタンスは、比表面積とともに直線的に増加する。それゆえ、20μF/cmのキャパシタンスおよび200m/gの表面積のカーボン材料は、もし全ての表面が電気化学的に接触可能であれれば、400F/gのキャパシタンスを有することとなる。ミクロポーラスカーボンは、典型的には電気化学的に低比率の表面積によって特徴づけられ、それゆえ測定されたキャパシタンスは理論値の約10〜20%である。メソポーラスカーボンは、エネルギーおよび電力密度において利点を実現させることが可能であり、それから作製されるウルトラキャパシタにおいて改良を実現させることが可能である。
【0056】
本発明のウルトラキャパシタは、本発明のもう一つの側面に従って上記に略述されたように作製された、ポーラスカーボン粉末から作製されてよい。別法として、ウルトラキャパシタは、本発明のなおもう一つの側面において上記で行なわれたように、基板上に保持されてもよい。双方の場合とも、ウルトラキャパシタ電極は、ウルトラキャパシタ装置内へ取付けられてよい薄膜を含んでなるものとする。たとえば、参照によってここに導入するベル(Bell)への米国特許第6,279,293号およびそれに引用された参考文献を参照のこと。
【0057】
本発明のウルトラキャパシタは、高エネルギー蓄積密度によって特徴づけられるものとする。特に、いくつかの態様によれば、本発明のウルトラキャパシタ電極は有機電解質中で、好ましくは少なくとも50F/g;さらに好ましくは少なくとも100F/gである重量比容量によって特徴づけられることが可能である。
【実施例】
【0058】
本開示およびそれに列挙された実施例は、本発明を完全に記述するために充分であり、かつ当業者に本発明を実行することを可能にする。以下に含まれる実施例からは、何ら本発明の範囲を制限するものが引出されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ制限されることが理解されよう。
【0059】
(実施例1〜4)
ポーラスカーボンは、低および高の、双方の炉ガス流速において、陽イオン成分を用いて、および用いず、の双方で調製された。スクロース(10g)、水(7mL)、硫酸(2.24g)、および、もし使用される場合には、硫酸アンモニウム(1.8g)が、不活性ガスまたは空気を含んでなる雰囲気下に、100℃の温度において6時間加熱された。混合物は続いて160℃で加熱され、黒色固体を与えた。窒素雰囲気下に、16炉容積/時間または0.6炉容積/時間の炉ガス流速での、900℃を超える温度における最終処理が、ポーラスカーボンを与えた。それによって得られたポーラスカーボンの、BET表面積およびBJH平均ポア径が表2に示されている。
【0060】
【表2】

【0061】
表2に見られるように、0.6炉容積/時間への流速の低減は、非常に大きい表面積を生じる結果となる。表2からはまた、アンモニウムポアフォーマの使用が、表面積および平均ポア径の双方を増加させることが分かる。
【0062】
(実施例4B〜4C)
一般法が、脱水剤として強いカルボン酸を用いて、等しく適用可能である。シュウ酸は、陽イオン成分の存在下に、本発明において使用可能であることが見出された。炉ガス流なしに、窒素中で、1000℃における炭化を用いる実施例1〜4の一般法が使用された。表3に示されるように、ポーラスカーボンは、CTABを用いて、または用いずに調製されることが可能であり、表面積の異なるポーラスカーボンを与える。
【0063】
【表3】

【0064】
(実施例5〜18)
ポーラスカーボンは、以下の方法に従って調製された。スクロース(10g)、水(7mL)、および硫酸(1.12g)、および、もし使用される場合には、非金属陽イオン成分を含有する0.45gの化合物であって、硫酸アンモニウム(実施例6)、テトラメチルアンモニウムブロマイド(実施例7)、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート(実施例8)、テトラプロピルアンモニウムブロマイド(実施例9)、テトラブチルアンモニウムブロマイド(実施例10)、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド(実施例11)、塩酸トリエチルアミン(実施例12)、テトラメチルホスホニウムクロライド(実施例13)、硫酸ナトリウム(実施例14)、トリエチルアミン(実施例15)、硫酸セシウム(実施例16)、1,4−ジアミノブタン(実施例17)、およびトリフェニルメタノール(実施例18)の中から選ばれる化合物、を含んでなる混合物は、実施例1〜4に記述されたように、100℃および160℃まで加熱された。試料はさらに、16炉容量/時間の流速下で、900℃において炭化された。他の可能な非金属陽イオン用の前駆体は、テトラヘキシルアンモニウムクロライド(N[(CHCHCl)、テトラペンチルアンモニウムブロマイド(N[(CHCHBr)、テトラヘプチルアンモニウムブロマイド(N[(CHCHBr)、テトラオクチルアンモニウムブロマイド(N[(CHCHBr)、トリメチルドデシルアンモニウムクロライド(CH(CH11N(CHCl)、トリメチルテトラデシルアンモニウムブロマイド(CH(CH13N(CH)Br)、トリメチルヘキサデシルアンモニウムクロライド(CH(CH15N(CHCl)、およびメチルトリオクチルアンモニウムクロライド(CHN[(CHCHCl)ジアミノブタンジヒドロクロライド(HN(CHNH・2HCl)、塩酸ポリエチレンイミン(H(−NHCHCH−)HN・XHCl)、テトラエチルホスホニウムブロマイド(PEtBr)、およびテトラメチルホスホニウムクロライド(PMeCl)を含む。
【0065】
表4に示された結果は、広く多様な非金属陽イオン成分が本発明によって許容可能であって、好ましい表面積の範囲および望ましいメソ多孔性を生じるが、一方無機塩およびアミンは望ましくない結果を生じる傾向があることを示している。
【0066】
【表4】

【0067】
(実施例19〜28)
ポーラスカーボンは、以下の方法に従って調製された。炭水化物(10g)、水(7mL)、硫酸(1.12g)、および、もし使用されるなら、0.45または0.90gのCTABからなる混合物は、実施例1〜4に記述されたように100℃および160℃まで加熱された。試料はさらに、16炉容量/時間の流速下に900℃で炭化された。
【0068】
表5に示された結果は、広く多様な炭水化物が本発明によって許容可能であり、好ましい表面積の範囲および望ましいメソ多孔性を生じることを示している。
【0069】
【表5】

【0070】
(実施例29〜33)
ポーラスカーボンは、以下の方法に従って調製された。炭水化物(10g)、水(7mL)、および硫酸水素アンモニウムからなる混合物は、硫酸水素アンモニウムが使用されたこと、および硫酸が使用されなかったことを除いて、実施例1〜4に記述されたように100℃および160℃まで加熱された。試料はさらに、16炉容量/時間の流速下に900℃で炭化された。表6に示されたように、硫酸の非存在下に、高表面積カーボンを作製することが可能であることが発見された。表6に示された結果は、異なる量の非金属陽イオン塩が本発明によって許容されることが可能であり、好ましい表面積範囲および所望のメソ多孔性を生じることを示している。
【0071】
【表6】

【0072】
(実施例34〜38)
ポーラスカーボンは、実施例1〜4の一般法に従い、陽イオン成分対強酸のモル比が、実施例34〜38の各々において以下の表7に示されたように変えられたことを付加して調製された。陽イオン成分対強酸のモル比に対する表面積の依存性は、陽イオン成分と酸成分との間の機械論的な関係を示している。
【0073】
【表7】

【0074】
(実施例39)
重硫酸テトラメチルアンモニウムが使用されたこと、および硫酸が使用されなかったことを除いて、実施例1〜4の一般法が追従された。以下の表8に示されたように、硫酸の非存在下に高表面積カーボンを産生することが可能であったことが発見された。
【0075】
【表8】

【0076】
(実施例40〜41)
本方法は、水に可溶性の、および水に不溶性の炭水化物に対し、等しく適用可能である。たとえば、本方法は、炭水化物として水不溶性のデンプンセルロースが選ばれた場合に有効である。窒素ガス中、0.6炉容量/時間の炉ガス流速による1050℃での炭化を用いて、実施例1〜4の一般法が使用された。表9に示されたように、セルロースカーボンは硫酸アンモニウムを用いるかまたは用いずに調製されることが可能であり、表面積の異なるポーラスカーボンを与える。加工の間に粒子は凝集せず、セルロースが溶解しないことを示している。それにもかかわらず、溶液は粒子に浸透することができるように思われる。
【0077】
【表9】

【0078】
(実施例42〜45)
実施例1〜4の一般法が、スクロース(10g)、HPO(2.24g)、水(7mL)および、窒素中0.6炉容量/時間の炉ガス流速による1050℃での炭化と、他に示さない限り5時間のランプ時間とを用いて使用された。本発明においては、陽イオン成分の存在下にリン酸が使用可能であることが発見された(表10)。低い窒素流条件下では、リン酸は高表面積カーボンを与えることが可能であるが、窒素等温線ではヒステレシスを示さず、メソ多孔性がないことを示している(実施例42)。アンモニウム陽イオン成分の添加は、ヒステレシスの存在によって証明されるようなメソ多孔性を増加させる(実施例43および44)。炉のランプ時間の増加は、2000m/gより大きい表面積を有するポーラスカーボンを産生した(実施例45)。
【0079】
【表10】

【0080】
(実施例46〜51)
表11は、種々の賦活法の効果と、それによって得られたポーラスカーボンの特性とを説明している。カーボンの表面積は、二酸化炭素または蒸気による物理的賦活によってさらに増加されることが可能である。これらの技術は、1000m/gより大きい表面積をもつ市販のポーラスカーボンを調製するため一般に用いられている(キノシタ(Kinoshita)、1988年)。二酸化炭素または高温の蒸気を含んでなる賦活法の場合には、作業機序は、以下の等式(1)および(2)に描かれたような、一部のカーボンの揮発性生成物への転換である。
C + CO ←→ 2CO (1)
C + HO ←→ CO + H (2)
【0081】
【表11】

【0082】
(実施例52〜53)
表12では、ポーラスカーボンの特性に対する延長されたランプ時間の影響が説明されている。実施例52および53では、実施例1〜4の一般法が、硫酸アンモニウム:スクロース、および硫酸:スクロースの特定重量比:(NHSO/スクロース=0.18、HSO/スクロース=0.224を用いて使用された。試料は、窒素中0.6炉容量/時間のガス炉流速において、1050℃で炭化された。
【0083】
実施例52においては、本発明の方法に従って製され、かつ5時間のランプ時間を特徴とするポーラスカーボンは、960m/gの表面積および4.0nmの平均ポア径によって特徴づけられる。比較すると、実施例53は、10時間のランプ時間を特徴とすることを除いて同じ方法によって製されたポーラスカーボンを記述しており、これにおいて、かかるカーボンは1913m/gの表面積および2.4nmの平均ポア径によって特徴づけられる。
【0084】
【表12】

【0085】
(CDT試験)
CDT試験装置は、10,000ppmのNaCl溶液を保持しているリザーバと、部分的に溶液中に浸漬された(2”)2つの2”×3”電極とを含んでなるものであった。電極から電力システムへの電気的接触は、アリゲータクリップを用いて行なわれた。電力システムは、電源、リレー、および抵抗器からなる。実験は、コントロール(Control)EGソフトウエアによるコンピュータ駆動であった。実験順序は、電極を1.2Vで30分間印加すること、および抵抗器を通してセルを放電するとともに、対応する電圧降下を測定することからなる。
【0086】
電極の飽和は、1.2Vまでの印加、およびコンピュータディスプレイでの平坦なラインの観察の後に達成される。放電エネルギーは、放電曲線から計算される。エネルギーは、等式E=V/R[式中、E=エネルギー(J)、V=電圧量、R=レジスタの抵抗、およびT=時間・秒]を用いて計算可能である。
【0087】
種々の基板上に保持されたCDT電極が調製され、試験された。使用された基板は、100g/mおよび厚さ1mmの不織カーボン紙、およびフェノール織布(アメリカン・カイノール(American Kynol)、150g/m)であった。
【0088】
(実施例54〜60)
基板は、炭水化物/アンモニウム塩溶液に浸漬され、これにおいて炭水化物は好ましくはスクロースを含んでなる。湿った基板は、約100に約6時間、次いで160℃に約6時間、空気下に加熱された。炭化温度は、使用されたアンモニウム塩に依存して、たとえば850℃〜1000℃の間で変えることができる。加えて、炭化の間に使用されたフローガスは、そのようにして得られたポーラスカーボンの多孔性の最終状態に著しく影響を及ぼすことが可能である。したがって、本方法のいくつかの態様によれば、炭化条件は、CTABを含んでなる試料を、二酸化炭素雰囲気下に900℃で2時間加熱することを含んでなる。別法として、炭化条件は、硫酸アンモニウムを含んでなる試料を、窒素雰囲気下に900℃で2時間加熱することを含んでなってもよい。
【0089】
基板は、表13に示されたスクロース配合物で浸漬された。湿った基板は、約100に約6時間、次いで160℃に約6時間、空気中で加熱された。CTAB試料はCO中900℃で2時間加熱され、(NHSO試料はN中900℃で2時間加熱された。
【0090】
【表13】

【0091】
スクロースカーボンを用いた種々の基板についての試験結果は、表14に示されている。結果は、最良のRFを主成分とする電極に対して比較されており、全ての場合に炭水化物を主成分とする電極が優れている。
【0092】
【表14】

【0093】
(実施例61〜66)
(ポーラスカーボンに関するキャパシタンスの結果)
【0094】
スクロース/CTAB試料は、二酸化炭素中950℃において、種々の長さの時間にわたり賦活され、表面積965m/g(3時間、実施例61、実施例47と同じ)、2474m/g(6時間、実施例62および63、実施例48と同じ)、および1814m/g(5時間、実施例64)をもつカーボンを産生した。実施例65は、フルクトースおよび硫酸アンモニウムから調製され、二酸化炭素により賦活された。特定重量比は、硫酸アンモニウム:フルクトース=0.18、および硫酸:フルクトース=0.224。試料は、二酸化炭素中900℃で8時間賦活された。シングルセル試験の結果は、表15に示されている。実施例61、62、64、65、および66は、有機(DMC/PC 1:1中、1M NEtBF)電解質中で試験された。予想されたように、より高い表面積はより高い重量比容積と関連づけられる。実施例63は水性電解質(HSO)中で試験された。これらの試験は、有機電解質および水性電解質の双方において、これらのカーボンが非常に高いキャパシタンスを示すことを示している。キャパシタンスは、有機電解質では2Vから、水性電解質では1.0Vからの、100Ωの抵抗を通した放電によって測定された。実施例66は、スクロースと硫酸アンモニウムから調製され、二酸化炭素で賦活された。特定重量比は、硫酸アンモニウム:スクロース=0.09、および硫酸:スクロース=0.224。試料は、二酸化炭素中900℃で10.5時間賦活された。
【0095】
【表15】

【0096】
本発明は好ましい態様の観点から開示されてきたが、本発明は好ましい態様に制限されるものではない。たとえば、炭水化物、脱水剤、およびポアフォーマの相対量は変更可能である。以下の請求の範囲においては、段階の任意の詳述は、段階が連続的に行なわれること、または、一つの段階が、もう一つが始まる前に完了されることを、明確にそのように述べない限り、必要条件として意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0097】
本発明のさらに詳細な理解のため、以下の図が参照されよう。
【図1】非金属陽イオン成分なしに製されたポーラスカーボンの窒素等温線である。
【図2】非金属陽イオン成分を用いて製されたポーラスカーボンの窒素等温線である。
【図3】本発明の好ましい態様によるポーラスカーボンについての、ポアサイズの関数としてのポア容積分布のプロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポーラスカーボンを作製する方法であって、
(a)キュアされたカーボンをつくるために有効な条件下で混合物をキュアすること、ここで、前記混合物は、
(i)少なくとも一つの炭水化物、
(ii)少なくとも一つの脱水成分、および
(iii)非金属陽イオン成分を含んでなる少なくとも一つのポア形成剤、
を含んでおり;及び
(b)キュアされたカーボンを、約100m/gと約3000m/gの間の表面積を有するポーラスカーボンを与えるのに有効な条件下で炭化すること、
を含んでなる方法。
【請求項2】
段階(a)が、混合物から実質的に全ての水を除去することを含む、請求項1の方法。
【請求項3】
段階(a)が、ポーラスモノリスをつくることを含む、請求項2の方法。
【請求項4】
前記ポーラスモノリスを摩砕することをさらに含む、請求項3の方法。
【請求項5】
前記脱水成分および非金属陽イオン成分が、一つの化合物の二つの成分を含んでなる、請求項1の方法。
【請求項6】
前記化合物が、硫酸水素アンモニウム((NH)HSO)、硫酸水素テトラメチルアンモニウム(N(CHHSO)、硫酸水素テトラエチルアンモニウム(N(CHCHHSO)、硫酸水素テトラプロピルアンモニウム(N(CCHCHHSO)、硫酸水素テトラブチルアンモニウム(N(CHCHCHCHHSO)、硫酸水素テトラヘキシルアンモニウム(N[(CHCHHSO)、硫酸水素テトラヘプチルアンモニウム(N[(CHCHHSO)、硫酸水素テトラオクチルアンモニウム(N[(CHCHHSO)、硫酸水素トリメチルドデシルアンモニウム(CH(CH11N(CHHSO)、硫酸水素トリメチルテトラデシルアンモニウム(CH(CH13N(CHHSO)、硫酸水素トリメチルヘキサデシルアンモニウム(CH(CH15N(CHHSO)、シュウ酸水素アンモニウム((NH)HC)、リン酸二水素アンモニウム((NH)HPO)、リン酸水素アンモニウム((NHHPO)、および硫酸水素メチルトリオクチルアンモニウム(CHN[(CHCHHSO)からなる群より選ばれる、請求項5の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの非金属陽イオン成分がアンモニウム陽イオンを含んでなる、請求項1の方法。
【請求項8】
前記非金属陽イオン成分が、実質的に水酸化物およびアミンがない、請求項1の方法。
【請求項9】
段階(a)が第1加熱段階および第2加熱段階を含む、請求項1の方法。
【請求項10】
前記第1加熱段階が前記第2加熱段階の前に実行される、請求項10の方法。
【請求項11】
第1加熱段階が、約80℃と約120℃の間の温度において行なわれ、かつ約1時間と約6時間の間継続する、請求項10の方法。
【請求項12】
第1加熱段階が、第1加熱段階からの材料をペレットへ成形することをさらに含む、請求項12の方法。
【請求項13】
第1加熱段階が、第1加熱段階からの材料を水で洗浄することをさらに含む、請求項12の方法。
【請求項14】
第2加熱段階が、約140℃と約200℃の間の温度で行なわれ、かつ約1時間と約6時間の間継続する、請求項10の方法。
【請求項15】
前記段階の少なくとも1つが、窒素、アルゴン、空気、およびそれらの組合せからなる群より選ばれる雰囲気中で行なわれる、請求項10の方法。
【請求項16】
段階(a)が単一の加熱段階を含んでなる、請求項1の方法。
【請求項17】
(a)混合物をキュアすること、のための条件が、1気圧より低い圧力を含む、請求項1の方法。
【請求項18】
炭化が、約500℃と約1200℃の間の温度において、約1時間と約4時間の間の時間間隔にわたって行なわれる、請求項1の方法。
【請求項19】
炭化が、不活性雰囲気下に行なわれる、請求項1の方法。
【請求項20】
炭化が、減圧された雰囲気下に行なわれる、請求項1の方法。
【請求項21】
炭化が、約0炉容量/時間と約16炉容量/時間の間の炉ガス流速において行なわれる、請求項1の方法。
【請求項22】
炭化が、約0.5炉容量/時間と約1.5炉容量/時間の間の炉ガス流速において行なわれる、請求項1の方法。
【請求項23】
賦活段階をさらに含んでなる、請求項1の方法。
【請求項24】
前記賦活段階が、前記ポーラスカーボンを、高温蒸気、二酸化炭素、リン酸、塩化亜鉛、および水酸化カリウムから選ばれる、少なくとも一つによって処理することを含んでなる、請求項23の方法。
【請求項25】
少なくとも5時間の、前記炭化段階のためのランプ時間をさらに含んでなる、請求項1の方法。
【請求項26】
少なくとも10時間の、前記炭化段階のためのランプ時間をさらに含んでなる、請求項1の方法。
【請求項27】
前記少なくとも一つの炭水化物が、グルコース、フルクトース、マルトース、スクロース、ガラクトース、コーンシロップ、高フルクトースコーンシロップ、デンプン、セルロース、およびラクトース、グリセルアルデヒド、ジヒドロキシアセトン、およびセロビオースからなる群より選ばれる、請求項1の方法。
【請求項28】
前記少なくとも一つの炭水化物が、スクロース、フルクトース、およびグルコースからなる群より選ばれる、請求項1の方法。
【請求項29】
少なくとも一つの脱水成分および、少なくとも一つの非金属陽イオン成分が、二つの別個の化合物に由来する、請求項1の方法。
【請求項30】
前記脱水成分が酸である、請求項29の方法。
【請求項31】
前記脱水成分が、硫酸、リン酸、亜硫酸、亜リン酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、過ヨウ素酸、過塩素酸、硝酸、亜硝酸、ヨウ素酸、塩酸、トルエンスルホン酸、シュウ酸、およびメタンスルホン酸からなる群より選ばれる、請求項29の方法。
【請求項32】
前記アンモニウム陽イオンが、式NRを有しており、
式中、R、R、R、およびRは、同じかまたは異なってよく、かつH、CH、CHCH、CHCHCH、CH(CH、CH(CHCH、CH(CH)CHCH、CHCH(CH、C(CH、CH(CH14CH、CH(CHCH、CH(CHCH、CH(CHCH、CH(CHCH、CH(CH10CH、CH(CH12CH、およびそれらの任意の組合せからなる群より選ばれる、請求項31の方法。
【請求項33】
請求項27の方法であって、
(iii)少なくとも一つの非金属陽イオン成分が、硫酸アンモニウム((NHSO)、シュウ酸アンモニウム((NH)、テトラメチルアンモニウムブロマイド(NMeBr)、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート(NEtBF)、テトラプロピルアンモニウムブロマイド(NPrBr)、テトラブチルアンモニウムブロマイド(NBuBr)、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)、塩酸トリメチルアミン(NEt・HCl)、テトラヘキシルアンモニウムクロライド(N[(CHCHCl)、テトラペンチルアンモニウムブロマイド(N[(CHCHBr)、テトラヘプチルアンモニウムブロマイド(N[(CHCHBr)、テトラオクチルアンモニウムブロマイド(N[(CHCHBr)、トリメチルドデシルアンモニウムクロライド(CH(CH11N(CHCl)、トリメチルテトラデシルアンモニウムブロマイド(CH(CH13N(CH)Br)、トリメチルヘキサデシルアンモニウムクロライド(CH(CH15N(CHCl)、およびメチルトリオクチルアンモニウムクロライド(CHN[(CHCHCl)ジアミノブタンジヒドロクロライド(HN(CHNH・2HCl)、トリフェニルメタノール(CCOH、塩酸ポリエチレンイミン(H(−NHCHCH−)HN・XHCl、テトラエチルホスホニウムブロマイド(PEtBr)、およびテトラメチルホスホニウムクロライド(PMeCl)からなる群より選ばれる化合物に由来する方法。
【請求項34】
請求項1の方法に従って作製されるポーラスカーボン。
【請求項35】
請求項34に従って作製されるポーラスカーボンであって、前記カーボンが二つのピークを有する容積ポアサイズ分布によって特徴づけられるポーラスカーボン。
【請求項36】
前記ピークの1つが、0.5nmと1.0nmの間であり、前記ピークの2番目が1.0nmと5.0nmの間である、請求項35のポーラスカーボン。
【請求項37】
前記カーボンが、有機電解質中で測定された少なくとも40F/cmの体積比容量によってさらに特徴づけられる、請求項35のポーラスカーボン。
【請求項38】
前記カーボンが、約2nmと約30nmの間の平均ポア径によって特徴づけられる、請求項34のポーラスカーボン。
【請求項39】
前記ポーラスカーボンが、少なくとも900m/gの表面積によって特徴づけられる、請求項34のポーラスカーボン。
【請求項40】
前記ポーラスカーボンが、少なくとも0.4g/cmの密度によって特徴づけられる、請求項34のポーラスカーボン。
【請求項41】
前記ポーラスカーボンが、有機電解質中で測定された少なくとも40F/cmの体積比容量によって特徴づけられる、請求項34のポーラスカーボン。
【請求項42】
前記有機電解質が、アセトニトリル、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、およびジエチルカーボネートからなる群より選ばれる、少なくとも一つを含んでなる、請求項41のポーラスカーボン。
【請求項43】
前記ポーラスカーボンが、水性電解質中で測定された少なくとも80F/cmの体積比容量によって特徴づけられる、請求項34のポーラスカーボン。
【請求項44】
前記水性電解質が、塩化ナトリウム(NaCl)、水酸化カリウム(KOH)、および硫酸(HSO)からなる群より選ばれる、請求項43のポーラスカーボン。
【請求項45】
前記有機電解質が、1M NEtBFおよび 1:1のジメチルカーボネート:プロピレンカーボネートを含んでなる、請求項43のポーラスカーボン。
【請求項46】
請求項1の方法に従って製されたカーボンを含んでなる、炭素質電極。
【請求項47】
二つのピークをもつ体積ポアサイズ分布によって特徴づけられ、前記ピークの1番目が、0.5nmと1.0nmの間であり、前記ピークの2番目が1.0nmと5.0nmの間であるポーラスカーボン。
【請求項48】
前記カーボンが、有機電解質中で測定された少なくとも40F/cmの体積比容量によってさらに特徴づけられる、請求項47のポーラスカーボン。
【請求項49】
前記カーボンが、約2nmと約30nmの間の平均ポア径によってさらに特徴づけられる、請求項47のポーラスカーボン。
【請求項50】
前記ポーラスカーボンが、少なくとも900m/gの表面積によって特徴づけられる、請求項47のポーラスカーボン。
【請求項51】
前記ポーラスカーボンが、少なくとも0.4g/cmの密度によって特徴づけられる、請求項47のポーラスカーボン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−529403(P2007−529403A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503946(P2007−503946)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/007546
【国際公開番号】WO2005/089145
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(502122130)ティーディーエイ・リサーチ・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】