説明

炭疽菌組成物ならびに使用および生成方法

感染を防止もしくは減少するか、または炭疽菌(Bacillus anthracis)によって生じる臨床的転帰を改善するために免疫応答を誘発するのに有効な組成物および方法を提供する。組成物は、場合により、薬学的に許容可能な担体と組み合わされた炭疽菌毒素タンパク質と関連する抗原エピトープのすべてもしくは活性部分を含む天然に存在するかまたは合成のタンパク質、ペプチド、あるいはタンパク質断片を含む。好適な抗原エピトープは、個々にもしくは組み合わせのいずれかで、防御抗原、致死因子または浮腫因子の免疫原性領域に対応する。さらに、炭疽菌毒素の影響を減少するための抗体を含む方法および組成物について説明する。方法は、ヒトまたは動物に、本明細書に記載の組成物を、免疫応答を誘発するかまたは炭疽菌感染を処置するのに十分な用量で投与することに関与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫学の分野に関し、より詳細には、ヒトまたは動物における炭疽菌感染を処置、防止もしくは減少するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
炭疽は、胞子形成菌の炭疽菌(Bacillus anthracis)によって生じる疾患である。動物産物を扱う仕事をするヒト、特に、獣医、検査技師、農場従事者および動物の皮膚または毛を扱う仕事をする従業者のような個体は、炭疽にかかる危険性がある。イラン、トルコ、イラク、パキスタン、およびサハラ以南のアフリカのような地域は、炭疽の高度流行地(hyperendemic)であるが、生物体は世界のほとんどの地域で見出すことができる。一般的な世界中の集団は、バイオテロ行為の結果としての炭疽菌(感染に脆弱であるが、軍隊は、バイオテロおよび/または戦争行為の結果としての感染に脆弱である。
【0003】
炭疽は、肺炭疽病、胃腸炭疽病、および皮膚炭疽病の異なる3つの様式で疾患を発現する。肺炭疽病は、胞子を吸入することによって生じる。胃腸炭疽は、汚染された肉中の胞子を摂取することによって生じ、および胞子が開放創に接触する場合、皮膚炭疽病が発生する。非処置の肺または胃腸炭疽は、本質的に100パーセントの致死率を有する一方、皮膚炭疽は、25パーセントまでの致死率を有する。
【0004】
炭疽に感染したヒトでは、処置の奏効は、それらのすべてが生存の可能性を低減し得る抗生物質耐性の発生率の増加、抗生物質が有効であり得る前に発生し得る過度の敗血症性応答、ならびに疑いの減少(decreased suspicion)および貧弱な早期検出方法に基づく処置の遅延のような、いくつかの因子によって制限される。抗生物質による炭疽の早期処置は、死亡率を減少するのに必須であるが、吸入感染では完全には有効ではないことが公知である。処置の遅延は、生存率をかなり減少する。しかし、感染の初期症状は、一般的な非致死性の感染に類似するため、早期処置は困難である。例えば、炭疽菌胞子を吸入すると、はじめは、一般的な風邪の症状に似た症状を示し得る。さらに、細菌へのかかり方に依存して、炭疽菌感染の症状は、出現までに7〜60日間を要し得る。さらに、即時的有効な抗生物質処置でさえも、血液中に高レベルで残存し、および継続してそれらの病原作用を仲介し得る循環性毒素の影響を改善しない。
【0005】
炭疽菌の病原性は、浮腫の出現によって明白にされる毒性効果、および感染した被験体の死をもたらし得るいわゆる致死性の毒性効果の2つの様式で発現される。これらの影響は、防御抗原(PA)、致死因子(LF)および浮腫因子(EF)の3つのタンパク質の組み合わせによって示される毒素系によって産生される毒素の存在に起因すると考えられる。ヒトおよび哺乳動物の両方において、宿主が症状を呈さない感染の初期段階中でさえも、毒素は身体中に増加する。これは、処置の遅延が何故致死性であるかを説明する。それ故、毒素の有害な作用を妨害する処置を含む改善された炭疽菌診療治療が必要不可欠であるだけなく、感染において早期に炭疽の存在を確立するためのポイントオブケアの、迅速、かつ極めて高感度な診断試験が必要不可欠である。
【0006】
通常ポリクローナル抗体である、毒素を抗体で中和する作動力である受動免疫が、さまざまな細菌感染のための診療治療として使用されている(KellerおよびStiehm、2000年)。患者のポリクローナル抗血清の使用に対する主な制約は、異なる種から誘導されるタンパク質に対する患者の免疫応答による「血清病」の可能性である。さらに、より高い親和性抗体は、毒素の中和により有効であるが、ポリクローナル血清またはハイブリドーマ由来のモノクローナル抗体であっても、親和性を意図的に増強するための一般的様式は存在しない。さらに、正常なドナーは炭疽菌に対して有効な体液性免疫を有さないため、プールされたドナーの静脈免疫グロブリン(IVIG)を使用する従来のアプローチは有効ではない。
【0007】
炭疽菌に対するワクチンは現在利用可能であるが、最適ではない。ごく最近市販されたワクチンでさえも複数の一次注入、年ごとの追加接種を必要とし、および吸入攻撃および有害事象に対して長期間の有効性の証明を提供することができない。さらに、現在利用可能なワクチンは重度の有害作用を示す。
【0008】
炭疽菌の毒性の機構は次のとおりである。防御抗原(PA83)の83kDaの形態は、迅速に増殖している炭疽菌細胞から分泌され、およびTEM8またはCMG2のような特定の宿主細胞表面受容体に結合する。(H.M.ScobieおよびJ.A.Young、Curr.Opin.Micro.8,106−112(2005年))。膜結合型フューリン、および/またはフューリン様プロテアーゼ、おそらくPACE4による以後の切断は、アミノ末端20kDa断片を遊離し、受容体結合型PA63を生じる。次いで、PA63サブユニットは、オリゴマー形成して七量体リングとなり、次に、炭疽菌毒素の致死因子および浮腫因子成分に対する結合部位を作製する。受容体/毒素複合体の酸性エンドソームへのエンドサイトーシスは、PA63のコンホメーション変化を誘発し、それによって毒素のAサブユニット(LFまたはEF)がエンドソームに放出される。リソソーム酸性化および以後の受容体放出は、オリゴマーPA63ポアの不可逆的膜挿入を容易にする。ポアは、LFおよび/またはEFの細胞質への輸送を可能にし、ここで、それらは、それらのそれぞれの毒性を誘発する。
【0009】
EFは、ほとんどの細胞タイプに毒性であるカルシウム/カルモジュリン依存性アデニル酸シクラーゼであり、および局所的炎症および浮腫を生じるが、通常、致死性ではない。防御抗原および浮腫因子からなる浮腫毒素は、最近、マウスモデルにおける組織病巣および死のを引き起こすことが示されている(「Bacillus anthracis edema toxin causes extensive tissue lesions and rapid lethality in mice」、Firoved,A.M.、G.F.Miller、M.Moayeri、R.Kakkar、Y.Shen、J.F.Wiggins、E.M.McNaIIy、W.J.Tang、およびS.H.Leppla.Am J Pathol167:1309−1320(2005年)を参照のこと)。
【0010】
LFは、MAP−キナーゼ−キナーゼおよびいくつかのペプチドホルモンを切断する細胞タイプ特異的メタロプロテアーゼである。防御抗原および致死因子の組み合わせによって形成される致死性毒素は、マクロファージの溶解を生じる亜鉛依存性プロテアーゼである。致死因子は、炭疽菌の毒性に関連する主な病原因子であり、および全身性ショックおよび死の原因であると考えられる。いずれの毒素Aサブユニットも、PAまたは機構的手段による細胞質到達の非存在下では病原性ではない(「Macrophages are sensitive to anthrax lethal toxin through an acid−dependent process」、A.M.Friedlander J.Biol.Chem.261,7123(1986年)を参照のこと)。
【0011】
PA83および七量体PA63の結晶構造は解明されている(例えば、「Crystal−structure of the anthrax toxin protective antigen」、C.Petosaら、Nature.385,833(1997年)を参照のこと)。これらの構造データは、PA63のカルボキシ末端側のドメイン4が毒素複合体の受容体仲介取り込みの原因であることを示す実験データ(例えば、「Characterization of lethal factor−binding and cell−receptor binding domains of protective antigen of Bacillus anthracis using monoclonal−antibodies」、S.F.Littleら、Microbiology−UK.142,707 (1996年)および「The carboxyl−terminal end of protective antigen is required for receptor−binding and anthrax toxin activity」、Y.Singhら、J.Biol.Chem.266,15493(1991年)を参照のこと)を支持する。
【0012】
炭疽菌は、生物兵器として60年間を超える間使用されており、また細菌を入手および増殖することが比較的容易であり、ならびに胞子の安定性に基づく大規模な攻撃のための有望な因子である。兵器化された炭疽は、1941年、英国政府によって最初に開発され、スコットランド付近の島において炭疽菌胞子の放出が試験された(Mourez,M.Rev Physiol Biochem Pharmacol 152:135−164(2004年)およびGreenfield,R.Aら、Am J Med Sci 323:299−315(2002年))。この試験中に感染した個体はいなかった一方、海水およびホルムアルデヒドを使用して土壌を滅菌するまで、島は、45年間、生物災害の状態であった。しかし、そのとき以来、ヒトへの感染および死を生じる軍事用炭疽菌の偶発的ならびに意図的な放出が認められている。1979年にソビエト社会主義共和国連邦の軍事施設から炭疽の偶発的放出により、68人が死亡、および31マイルまで離れた所でのウシの感染が発生した。そして2001年、米国において感染した手紙を介する意図的な炭疽の散布により、22例が炭疽(11例の皮膚炭疽および11例の肺炭疽)を発症し、5人が死亡した(Guarner,J.ら、Am J Pathol 163:701−709(2003年)およびQuinn,C.P.ら、J Infect Dis 190:1228−1236(2004年)を参照のこと)。これらの出来事は、炭疽菌胞子のエアロゾル状態での放出からの防御を提供する安全、有効なワクチンおよび早期診療のための潜在的に指向された免疫治療剤の必要性を強調する。
【0013】
現在の米国のワクチン(吸収炭疽ワクチン、AVA)は、弱毒V770−NP1−R株、非カプセル化ウシ単離体のアルハイドロゲル吸収型無細胞ろ過物である。このワクチン接種は0、2、4週間目、ならびにさらに6、12、および18ヶ月目に投与され、年ごとの追加接種が推奨される。このワクチンに関する初期のデータは、動物研究から得られており、AVAは炭疽菌の完全なビルレント株による致死性の攻撃からマウスを保護しない一方、ワクチン接種されたマウスは、非カプセル化株による攻撃から保護されることを示す。これらのモデルはまた、主な毒素タンパク質(PA、LF、およびEF)に対する抗体の受動輸送が、弱毒株による攻撃に対する防御を提供することができることを実証している(Little,S.F.ら、Infect Immun 65:5171−5175(1997年);Little,S.F.ら、Infect Immun 56:1807−1813(1988年);Price,B.Mら、Infect Immun 69:4509−4515(2001年)およびWelkos,S.ら、Microbiology 147:1677−1685(2001年)を参照のこと)。PA、LF、およびEFに対する抗体はまた、臨床的炭疽と診断された個体の血清サンプルにおいて検出されているが、ワクチン接種は、主に抗防御抗原抗体を生じる。しかし、炭疽菌の変異株をワクチン接種されたマウスを使用するいくつかの研究により、LFおよびEFの防御への有意な寄与が示されている(Mohamed,N.ら、Infect Immun 72:3276−3283(2004年)およびLittle,S.F.ら、Biochem Biophys Res Commun 199:676−682(1994年)を参照のこと)。それ故、これらのタンパク質に対する抗体のレベルを増強することは、防御を増強し得る。従って、現在のワクチンが最適でないため、新規かつ改善された予防的組成物および方法が必要である。
【0014】
必要なものは、炭疽菌感染の症状を防止、阻害および低減することができる方法ならびに組成物である。組成物は、炭疽菌毒素、即ち、防御抗原、致死因子および浮腫因子の活性を克服することが可能であるべきである。好ましくは、組成物は、動物またはヒトにおける免疫応答を誘導することが可能であるべきである。また、致死因子および浮腫因子のような炭疽菌毒素の成分に指向された中和抗体を産生させるために使用することができる組成物も必要である。さらに加えて、必要なものは、特に、炭疽菌感染に指向された免疫療法に使用することができる方法および組成物である。最後に、炭疽菌感染の症状を防止、阻害および低減するための方法ならびに組成物は、好ましくは、非毒性であるべきであり、およびほとんど副作用を生じるべきではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
炭疽菌感染の症状を処置、防止、阻害および低減するための方法ならびに組成物を提供する。本明細書に記載の組成物は、炭疽菌毒素、即ち、防御抗原(PA)、致死因子(LF)および浮腫因子(EF)の活性を特異的に克服する。より詳細には、組成物は、場合により、PAを含む到達ビヒクルもしくは担体ポリペプチドと組合されるペプチド、または炭疽菌の抗原領域に対応するエピトープ、あるいはこれらの活性断片を含む免疫原性組成物を含む。特定の実施態様では、組成物は、炭疽菌毒素に関連する1つもしくはそれ以上の抗原領域に対応する複数のエピトープを含む。さらなる実施態様では、炭疽菌毒素に関連する抗原領域は、動物もしくはヒトに投与される場合、免疫原性応答を誘発するPA、LFまたはEFから誘導されるペプチドあるいはペプチド断片である。別の実施態様では、組成物は、動物もしくはヒトに投与される場合、免疫応答を誘発するPA、LFおよび/またはEFから誘導される複数のペプチドあるいはこれらの断片を含む。複数のペプチドは、個別であるか、または例えば融合タンパク質において組み合わされ得る。以下のような理論に拘束されようとは思わないが、本明細書に記載の組成物は、炭疽菌(毒性および感染の防止または減少を生じる体液性免疫応答を誘発してもよい。
【0016】
本明細書において提供される組成物は、20kDa未満の分子量を有する免疫原性炭疽菌ペプチドを含み、従って、炭疽ワクチンにおける使用が意図される先に記載の抗原ドメインより小さい。ペプチドは、好ましくは、40アミノ酸長もしくはそれ以下である。ペプチドは、場合により、例えば、防御抗原タンパク質に限定されない担体に結合される。PAに好適なペプチドを表4および6に記載する。LFに好適なペプチドを表1〜3および5に記載する。EFに好適なペプチドを表7に記載する。
【0017】
好ましくは、本明細書に記載の組成物は、炭疽に対する免疫応答を誘導するため、例えば、炭疽菌、炭疽に関連する原因因子に対してヒトもしくは動物を処置、防御またはワクチン接種するための方法において有用である。
【0018】
本明細書に記載の組成物の特定の実施態様は、到達それらの外部表面に提示されるエピトープ、エピトープ断片、合成ペプチドもしくは保存的に改変されたペプチド断片を有するリポソームまたはビヒクルなどの、到達または担体ビヒクルをさらに含む。別の実施態様では、所望されるエピトープまたはその免疫原性ペプチド断片は、部分的または全体的に、担体、例えば、リポソームでカプセル化されてもよい。さらに別の実施態様では、エピトープもしくはそれらの免疫原性断片またはペプチドは、金コロイドなどの金属コロイドを使用する到達機構によって所望される部位に輸送されてもよい。上記の組成物は、所定の炭疽菌毒素に対する免疫を改善するためのワクチンとして有用であり、それがなければ、免疫系によって効果的に標的化されない。
【0019】
組成物は、炭疽の衰弱効果を減少するための治療計画においてさらに有用である。以下のような理論に拘束されようとは思わないが、得られる循環抗体は炭疽菌毒素に結合ることによって、炭疽菌感染の普及を防止するか、既存の感染を減少するか、または感染の影響を低減すると考えられる。
【0020】
組成物はまた、炭疽菌抗原エピトープに特異的な、単離されたおよび組換え抗体を含む。単離された抗体は、強力な抗原刺激免疫応答を伴うヒトまたは動物から産生および精製され、およびそのような循環抗体を必要とする脆弱、非機能的もしくは非抗原刺激化免疫系を伴うヒトまたは動物に注入される。抗体は、本明細書に記載のペプチドの1つもしくはそれ以上を動物に投与し、次いで、必要とされる抗体を回収、精製および改変すること、またはタンパク質/タンパク質断片/ペプチドで免疫した動物、ワクチン接種した個体もしくは炭疽菌感染の生存体から防御、抗ペプチド応答をアフィニティー精製することのいずれかによって、生成される。これらのアフィニティー精製された抗体は、配列決定し、および免疫治療剤としての使用のために組換え的に産生させることができる。抗体は、モノクローナル抗体であっても、またはポリクローナル抗体であってもよい。抗体は、動物に投与される場合、炭疽に対して免疫応答を誘導する20kDa未満の分子量、好ましくは、40アミノ酸長もしくはそれ以下を有する炭疽菌タンパク質のペプチドに免疫反応性である。それ故、炭疽菌感染は、炭疽菌毒素に関連する独特なエピトープもしくはペプチドを含む組成物を使用する個体の能動免疫か、または抗体もしくは炭疽菌毒素に特異的な抗体の群を投与することを介する受動免疫のいずれかによって、減少あるいは阻害される。抗体は、患者に投与される場合の有害作用を減少するように改変してもよい。ヒト化抗体は、この用途に理想的である。
【0021】
あるいは、抗体またはペプチドは、イムノアッセイなどの方法における試薬として使用される。抗体またはペプチド試薬は、潜在的に感染した動物またはヒト由来のサンプルと組み合わされ、および抗体−抗原複合体の形成が検出される。イムノアッセイは、循環抗体または炭疽菌タンパク質を検出することのいずれかによって、動物またはヒトにおける炭疽菌感染を検出するのに有用である。あるいは、イムノアッセイは、動物またはヒトにおける炭疽菌感染に対する特異的防御免疫を検出するのに有用である。予め決定された抗炭疽抗体価を検出する場合、動物は、炭疽攻撃に対して保護されるべきであり、および以後のワクチン接種または追加接種は必要でなくてもよい。
【0022】
従って、本発明の目的は、炭疽菌によって生じる感染の影響を防止および減少するための方法ならびに組成物を提供することである。
【0023】
本発明の別の目的は、炭疽の発生または蔓延を防止、減少および処置するための方法ならびに組成物を提供する。
【0024】
本発明のさらなる目的は、宿主における活性な体液性および/または細胞性応答を誘発することによって、炭疽菌によって生じる感染を有するヒトまたは動物におけるこのような感染の影響を防止および減少するための方法ならびに組成物を提供することである。
【0025】
本発明のさらに別の目的は、炭疽菌感染に対してヒトまたは動物にワクチン接種するための方法および組成物を提供することである。
【0026】
本発明のさらに別の目的は、炭疽菌感染に対してヒトまたは動物に受動免疫するための方法および組成物を提供することである。
【0027】
本発明の別の目的は、抗原性であり、およびヒトまたは動物において炭疽菌に対する免疫応答を誘発する炭疽菌毒素に関連する独特なエピトープを含む組成物を提供することである。
【0028】
本発明の別の目的は、抗原性であり、およびヒトまたは動物において炭疽菌に対する免疫応答を誘発する炭疽菌毒素に関連する独特なエピトープを含む組成物を提供することであって、毒素は、個々にもしくは組み合わせで、防御抗原、致死因子、または浮腫因子である。
【0029】
本発明のさらに別の目的は、炭疽菌に対して個体の応答を増加するように抗原性部分で改変された炭疽菌エピトープまたはペプチド断片およびその使用方法を提供する。
【0030】
本発明の別の目的は、炭疽に対してヒトまたは動物を受動免疫するのに有用な抗体を提供することである。
【0031】
本発明のこれらおよび他の目的、特徴ならびに利点は、開示された実施態様の以下の詳細な説明および添付の特許請求の範囲の検討後に明らかとなろう。
【0032】
本明細書に記載の組成物および方法は、本明細書に含まれる具体的な実施態様の以下の詳細な説明を参考にして、さらに容易に理解し得る。本発明について、その特定の実施態様の具体的な詳細を参考に説明してきたが、そのような詳細は、本発明の範囲を制限するものとして認識すべきではないことが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、炭疽菌病原因子の結合およびプロセシングの概略図を提供する。
【図2】図2は、マウスにおける中和抗体を含む抗LFおよび抗PA抗血清の作製のための研究の詳細を提供するフローチャートである。
【図3】図3は、免疫化A/Jマウスにおける抗LFおよび抗PA IgG抗体価の結果を提供するエンドポイント力価のグラフである。
【図4】図4は、致死性毒素攻撃のための研究計画を提供するフローチャートである。
【図5】図5は、連続的重複ペプチド配列に特異的な抗体の検出のための固相ELISA技術の概略図を提供する。
【図6】図6は、致死因子の連続的マウスB細胞エピトープのデータを提供する。
【図7】図7は、防御抗原の連続的マウスB細胞エピトープのデータを提供する。
【図8】図8は、B細胞エピトープ選択における株背景対MHCの計画研究を提供する。
【図9】図9は、A/J、B6およびB6.H2マウスにおける致死因子エピトープのデータを提供する。
【図10】図10は、A/J、B6およびB6.H2マウスにおける防御抗原エピトープのデータを提供する。
【図11】図11A〜Dは、AVAワクチン接種後の抗炭疽菌抗体に関するデータを提供する。
【図12】図12は、連続的ヒトB細胞防御抗原抗体のデータを提供する。
【図13】図13は、ヒト防御抗原体液性エピトープの表を提供する。
【図14】図14は、連続的ヒトB細胞致死因子体液性エピトープのデータを提供する。
【図15】図15は、ヒト致死因子体液性エピトープの表を提供する。
【図16】図16は、マウスにおける中和抗体を含む抗浮腫因子(EF)抗血清の作製のための研究の詳細を提供するフローチャートである。
【図17】図17は、免疫化A/Jマウスにおける抗EF IgG抗体価の結果を提供する。
【図18】図18AおよびBは、EF免疫化A/Jマウスにおける致死浮腫毒素攻撃の結果を提供する。
【図19】図19AおよびBは、EFの連続的マウスB細胞エピトープのデータを提供する。
【図20】図20は、PAおよびLF免疫化マウスから精製されるペプチド結合性抗体は、致死性毒素の作用をインビトロで中和することができることを示すデータを提供する。
【図21】図21は、IgG抗PAペプチド濃度および生存能パーセントを示すグラフを提供する。
【図22】図22A〜Gは、ペプチドエピトープの確認を示すデータのグラフである。
【図23】図23A〜Cは、ヒトAVAワクチン由来のいくつかのペプチド結合性抗体が致死性毒素の作用をインビトロで中和することができることを示すデータを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本明細書では、ヒトまたは動物における炭疽に対する免疫応答を誘導するための免疫原性炭疽菌ペプチド組成物および方法について説明する。抗炭疽菌抗体、抗体を作製する方法、および抗体を使用して炭疽菌感染を処置するための方法についても説明する。さらに、炭疽菌感染の検出のための試薬およびアッセイについて説明する。
【0035】
本明細書において提供される炭疽菌ペプチドは免疫原性であり、および20kDa未満の分子量を有する。ペプチドは、防御抗原(PA)タンパク質、致死因子(LF)タンパク質、および浮腫因子(EF)タンパク質として公知の免疫学的に重要な炭疽菌タンパク質の部分もしくは断片、またはこれらの組み合わせである。好ましくは、各炭疽菌ペプチドのアミノ酸配列は、40アミノ酸未満である。より好ましくは、アミノ酸配列は6アミノ酸より大きく、40アミノ酸未満である。あるいは、アミノ酸配列は6アミノ酸より大きく、20アミノ酸長未満である。好適な実施態様では、炭疽菌ペプチドのアミノ酸配列は、12〜18アミノ酸の間の長さを有する。あるいは、好適な長さは8〜10アミノ酸長である。一実施態様では、炭疽菌ペプチドの連続アミノ酸配列は12アミノ酸長である。選択的および代表的な炭疽菌ペプチドアミノ酸配列を本明細書において提供する。
【0036】
本明細書において提供される抗体は、特に、PA、LFまたはEFである炭疽菌タンパク質に免疫反応性であり、ならびに本明細書に記載の炭疽菌ペプチドを動物に投与し、および炭疽菌ペプチドに特異的な抗体を含む動物から生物学的液体を回収または精製することによって調製される。抗体は、疾患を処置するための免疫療法として、炭疽に感染したヒト患者などの動物に投与される。
【0037】
本明細書に記載の炭疽菌ペプチドおよび抗体はまた、炭疽菌感染の検出または診断のためのイムノアッセイにおける試薬としても有用である。
【0038】
本明細書に記載の炭疽菌ペプチドをコードする核酸配列もまた、本発明の範囲内にあると考えられる。これらの核酸配列は、炭疽菌ペプチドの産生に有用である。核酸配列はまた、DNAワクチンとしても有用であり、およびベクターに挿入して、動物またはヒトにトランスフェクトし、抗原エピトープもしくはペプチドを系に導入することによって、身体に免疫原性ペプチドに対する免疫応答を装架させる。
【0039】
定義
本明細書において使用する用語「a」、「an」および「the」は、1つもしくはそれ以上を意味するものとして規定され、および文脈が不適切である場合を除いて複数を含む。
【0040】
本明細書において使用する用語「抗体」または「抗体」は、モノクローナル抗体、ポリクローナル、キメラ、一本鎖、二重特異性、サル化、およびヒト化抗体ならびにFab断片を含み、Fab免疫グロブリン発現ライブラリーの産物を含む。
【0041】
用語「抗原」は、動物における免疫応答を誘導することができる全体またはその断片を指す。用語は、免疫原および抗原性または抗原決定基を担う領域を含む。
【0042】
本明細書において用いる語句「生物学的活性」は、生物系から誘導される化合物もしくはこれらに反応性である化合物、またはこれらの化合物の機能性、反応性、および特異性を模倣する他の化合物の機能性、反応性、および特異性を指す。適切な生物学的に活性な化合物の例として、酵素、抗体、抗原およびタンパク質を含む。
【0043】
語句「生物学的に純粋な」または「単離された」は、その生来の状態において見出されるように、通常、材料に伴う成分を実質的もしくは本質的に含まない材料を指す。それ故、本明細書に記載のペプチドは、通常、それらのインサイチュ環境に関連する材料を含みない。一般的に、本明細書に記載の単離された抗増殖性ペプチドは、銀染色ゲル上のバンドの強度によって測定されるように、少なくとも約80%純粋、通常、少なくとも約90%純粋、好ましくは、少なくとも約95%純粋である。
【0044】
タンパク質の純度または均質性は、当該技術分野において周知の多くの方法、例えば、タンパク質サンプルのポリアクリルアミドゲル電気泳動、それに続く染色時の可視化によって示され得る。特定の目的のために、高解像度が必要であり、およびHPLCまたは精製のための類似の手段が利用される。
【0045】
好ましくは、本発明のエピトープおよびペプチドは、相対的に長さが短い(即ち、約40アミノ酸未満)。このような短いアミノ酸配列は、標準的な化学ペプチド合成技術を使用して、合成することができる。
【0046】
配列のC末端アミノ酸を不溶性支持体に付着させ、続いて、残りのアミノ酸を配列に逐次付加する固相合成は、本明細書に記載の免疫原性ペプチドの化学合成に好適な方法である。固相合成のための技術は、当業者に公知である。
【0047】
あるいは、本明細書に記載の抗原ペプチドは、組み換え核酸方法論を使用して合成される。一般的に、これは、ペプチドをコードする核酸配列を作製すること、発現カセット中の核酸を特定のプロモーターの制御下に配置すること、宿主においてペプチドを発現させること、発現されたペプチドまたはポリペプチドを単離すること、および必要であれば、ペプチドを再生することに関与する。このような手順を介して当業者を指導するのに十分な技術が、文献において見出される。
【0048】
一旦発現されると、組換えペプチドは、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動などを含む標準的な手順に従って、精製することができる。均質性が約50〜95%の実質的に純粋な組成が好適であり、および80〜95%もしくはそれを超える均質性が治療用薬剤としての使用に最も好適である。
【0049】
当業者であれば、化学合成、生物学的発現または精製後、免疫原性ペプチドが構成性ペプチドの生来のコンホメーションとは実質的に異なるコンホメーションを所有し得ることを認識するであろう。この場合、免疫原性ペプチドを変性および減少し、次いでペプチドを好適なコンホメーションにリフォールディングすることがしばしば必要である。タンパク質を減少および変性し、およびリフォールディングを誘導する方法については、当業者に周知である。
【0050】
本明細書において使用する用語「体液」として、唾液、歯肉滲出物、脳脊髄液、胃腸液、粘液、尿生殖器分泌物、関節液、血液、血清、血漿、尿、嚢胞液、リンパ液、腹水、胸水、間質液、細胞内液、眼液(ocular fluid)、精液、乳房分泌物、および硝子体液、および鼻分泌物を含むが、これらに限定されない。
【0051】
本明細書において使用する用語「担体」は、炭疽菌毒素の免疫原または免疫原性ペプチド断片を組み入れることができるか、または関連させることができ、従って、免疫原または免疫原性ペプチドの部分をヒトもしくは動物の免疫系に提示あるいは暴露し、および免疫原性組成物を炭疽菌について抗原性にする構造を意味する。用語「担体」は、到達方法をさらに含み、ここで、免疫原性ペプチドまたはペプチド断片組成物は、到達機構によって所望される部位に輸送され得る。
【0052】
さらに、用語「担体」は、当業者に公知のワクチン到達機構をさらに含み、キーホールリンペットヘモシニアン(KLH)、ウシ血清アルブミン(BSA)、破傷風トキソイド、および防御抗原(PA)、特に、組換えPAを含む炭疽菌由来のポリペプチド、ならびに他のアジュバントを含むが、これらに限定されない。本明細書において提供される抗原エピトープ組成物は、アジュバント、保存剤、希釈剤、乳化剤、安定剤、および公知でありかつワクチンにおいて使用される他の組成物をさらに含むことができることもまた理解すべきである。当該技術分野において公知の任意のアジュバント系は、本明細書に記載の組成物において使用することができる。そのようなアジュバントとして、フロイント不完全アジュバント、フロイント完全アジュバント、多分散性β−(1,4)結合型アセチル化マンナン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーアジュバント、改変型脂質アジュバント、サポニン誘導体アジュバント、硫酸デキストランなどの大きなポリマーアニオン、およびアラム(alum)、水酸化アルミニウム、またはリン酸アルミニウムなどの無機ゲル、を含むが、これらに限定されない。
【0053】
本明細書において提供される抗原ペプチド組成物において使用することができる担体タンパク質、または担体として、マルトース結合タンパク質「MBP」;ウシ血清アルブミン「BSA」;キーホールリンペット(lympet)ヘモシニアン「KLH」;オボアルブミン;フラジェリン;サイログロブリン;任意の種の血清アルブミン;任意の種のγグロブリン;同一遺伝子型細胞;Ia抗原を有する同一遺伝子型細胞;D−および/またはL−アミノ酸のポリマー;破傷風トキソイド、ならびに、特に、炭疽菌自体に由来する組換えPAポリペプチドを含むが、これらに限定されない。担体は、炭疽菌ペプチドにコンジュゲートされるか、またはそうでなければ共有的もしくは非共有的に結合される。
【0054】
語句「より本質的になる」は、語句が指すペプチドの本質的特性を実質的に変更するあらゆる要素を排除するために、本明細書において使用される。それ故、「〜より本質的になる」ペプチドの記載は、該ペプチドの生物学的活性を実質的に変更するあらゆるアミノ酸置換、付加、欠失または修飾を排除する。
【0055】
本明細書において使用する用語「浮腫因子」または「EF」は、炭疽菌の野生型全長浮腫因子を指す(配列番号3およびGenbank受託番号:AAA79215;Robertson DL,Tippetts MT,Leppla SH.Gene.1988年12月20日;73(2):363−71を参照のこと)。
【0056】
用語「有効量」は、ヒトもしくは動物に投与される場合、免疫応答を誘発するか、炭疽菌感染を防止、減少または低減するか、反応性の減少を生じるかまたは炭疽菌疾患の拡張および増殖を阻害するエピトープまたは免疫原性ペプチドの量を指す。有効量は日常的手順に従い、当業者によって容易に決定される。
【0057】
例えば、免疫原性エピトープ組成物は、筋肉内、非経口的、皮下、エアロゾルとして吸入を介して、または経口的に、1例の患者あたり約1.0μg〜5.0mgの範囲で投与し得るが、この範囲を制限することを意図するものではない。免疫応答を誘発するのに必要とされるエピトープまたは免疫原性ペプチド組成物の実際の量は、投与されるエピトープの免疫原性および個体の免疫応答に依存して、それぞれ個々の患者について変動する。結果的に、個体に投与される特定の量は、日常的な実験によって決定され、および当業者の訓練および経験に基づく。
【0058】
本明細書において使用する用語「エピトープ」は、抗体に結合する三次元構造特徴のような免疫系によって認識される高分子の一部を意味する。あるいは、用語「エピトープ」は、アミノ酸配列によって決定される直鎖エピトープを指す。
【0059】
また、本明細書において使用する用語「免疫原性の」は、炭疽菌(に対して指向された抗体、T細胞および他の反応性免疫細胞を誘発または増強し、およびヒトまたは動物における免疫応答に寄与する物質を指す。動物または個体が炭疽菌感染の影響を防止、低減もしくは軽減するように本発明の組成物に対して十分な抗体、T細胞および他の反応性免疫細胞を産生する場合、免疫応答が発生する。
【0060】
本明細書において使用する用語「致死因子」または「LF」は、炭疽菌の野生型全長致死因子を指す(配列番号2およびGenbank受託番号:AAM26117;Read TD、Salzberg SL、Pop M、Shumway M、Umayam L、Jiang L、Holtzapple E、Busch JD、Smith KL、Schupp JM、Solomon D、Keim P、Fraser CM.Science.2002年6月14日;296(5575):2028−33)を参照のこと)。
【0061】
本明細書において使用する用語「防御抗原」または「PA」は、炭疽菌の野生型全長防御抗原を指す(配列番号1およびGenbank受託番号:AAA22637;Welkos SL、Lowe JR、Eden−McCutchan F、Vodkin M、Leppla SH、Schmidt JJ.Gene.1988年9月30日;69(2):287−300)を参照のこと)。
【0062】
用語「ペプチド」は、そのα炭素が、あるアミノ酸のα炭素のカルボキシル基と別のアミノ酸のα炭素のアミノ基との間の縮合反応によって形成されるペプチド結合を介して連結されるアミノ酸(一般的には、L−アミノ酸)の鎖である。鎖の一方の端の末端アミノ酸(即ち、アミノ末端)は遊離のアミノ基を有する一方、鎖の他方の端の末端アミノ酸(即ち、カルボキシ末端)は遊離のカルボキシル基を有する。従って、用語「アミノ末端」(N末端と略称される)は、ペプチドのアミノ末端におけるアミノ酸上の遊離のα−アミノ基、またはペプチド内の他の任意の位置におけるアミノ酸のα−アミノ基(ペプチド結合に関与している場合はイミノ基)を指す。同様に、用語「カルボキシ末端」(C末端と略称される)は、ペプチドのカルボキシ末端におけるアミノ酸上の遊離のカルボキシル基、またはペプチド内の他の任意の位置におけるアミノ酸のカルボキシル基を指す。
【0063】
一般的に、ペプチドを構成するアミノ酸は、アミノ末端から開始し、およびペプチドのカルボキシ末端に向かう方向に増加するような順番で番号付けされる。それ故、あるアミノ酸が別のアミノ酸の「後に続く」という場合、そのアミノ酸は、前方のアミノ酸よりペプチドのカルボキシ末端寄りに位置する。
【0064】
用語「残基」は、アミノ酸(DもしくはL)あるいはアミド結合またはアミド結合擬似物によってオリゴペプチドに組み入れられるアミノ酸擬似物を指す。従って、アミノ酸は、天然に存在するアミノ酸であってもよく、または他で制限しない限り、天然に存在するアミノ酸に類似する様式で機能する天然アミノ酸の既知のアナログ(即ち、アミノ酸擬似物)を包含してもよい。さらに、アミド結合擬似物は、当業者に周知のペプチド骨格改変を含む。
【0065】
さらに加えて、当業者であれば、上記のように、コードされた配列において単一のアミノ酸または小さな百分率のアミノ酸(典型的に5%未満)を変更、付加または欠失する個々の置換、欠失または付加は、保存的に改変されたバージョンであり、ここで、変更は、アミノ酸の化学的に類似のアミノ酸による置換を生じることを認識するであろう。機能的に類似するアミノ酸を提供する保存的置換の表は、当該技術分野において周知である。以下の6つの群は、それぞれ、相互に保存的置換であるアミノ酸を含む:
1)アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リジン(K)、ヒスチジン(H);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
【0066】
炭疽菌ペプチド組成物
本明細書において提供される炭疽菌ペプチドは、PA、LF、もしくはEF炭疽菌毒素タンパク質の免疫原性部分または断片であり、およびペプチドは20kDa未満の分子量を有する。各ペプチドは、以下により詳細に記載されるように、炭疽菌毒素タンパク質の少なくとも1個のエピトープを含む。好ましくは、各炭疽菌ペプチドのアミノ酸配列は、40アミノ酸未満である。一実施態様では、炭疽菌ペプチドのアミノ酸配列は、6アミノ酸より大きく、40アミノ酸または20アミノ酸長未満である。好適な実施態様では、炭疽菌ペプチドのアミノ酸配列は、6アミノ酸より大きく、20アミノ酸長未満である。最も好ましくは、炭疽菌ペプチドのアミノ酸配列は、12〜18アミノ酸の間の長さを有する。理想的には、炭疽菌ペプチドは8〜10アミノ酸の間の配列を有する。あるいは、炭疽菌ペプチドは12アミノ酸長である。
【0067】
同じまたは異なる炭疽菌毒素タンパク質由来の炭疽菌ペプチドの組み合わせ、炭疽菌ペプチドを含む融合タンパク質、担体に結合された炭疽菌ペプチド、および保存的に改変されたペプチドもまた、本明細書に記載のペプチドの範囲内に含まれる。さらに、ペプチドは、天然に存在する、組換え、改変型または合成であってもよい。
【0068】
それらの意図される用途に依存して、免疫原性組成物、例えば、炭疽ワクチン組成物を産生させるために、ペプチドは、アジュバント、賦形剤、保存剤、到達ビヒクル、他の抗原性部分などに付着または混合される。炭疽菌ペプチドはまた、それらの抗原性を増加するように改変することもできる。抗原性部分およびアジュバントの例として、親油性ムラミルジペプチド誘導体、非イオン性ブロックポリマー、水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウムアジュバント、およびそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0069】
上記のように、各ペプチドは、炭疽菌毒素タンパク質の少なくとも1個のエピトープを含む。エピトープは、免疫系、具体的には、抗体、B細胞、またはT細胞によって認識される高分子の当該部分である。エピトープは、抗体が反応するタンパク質上の単一の抗原性部位である。通常、エピトープは非自己タンパク質から誘導されると考えられるが、認識され得る宿主から誘導される配列もまた、エピトープとして分類される。ほとんどのB細胞エピトープは、抗原分子の三次元表面特徴として考えることができる。これらの特徴は正確に適合し、それ故、抗体に結合する。エピトープを認識する抗体の部分はパラトープと呼ばれる。連続的エピトープは、抗体によって認識され得、および分子の表面上または分子の部分的表面上のいずれかにおいて見出され得る。本明細書において使用される方法論は、固相表面において極端に高い濃度/密度で合成される連続的エピトープを構築する。このアプローチは、連続的配列に結合する抗体の検出を可能にし、および、時には、1つの機能的エピトープをもたらす分子の表面上において一緒になる2つの結合領域をさらに同定する。
【0070】
本明細書において使用されるように、エピトープは、以下の防御抗原、致死因子または浮腫因子の少なくとも1つに関連する免疫原性の領域を含むものとして規定される。一実施態様では、エピトープは、防御抗原、致死因子または浮腫因子に免疫原性であるさまざまな保存的アミノ酸を含む。好ましくは、本明細書に記載の組成物は、これらの3つの炭疽菌毒素タンパク質のそれぞれに由来する1個もしくはそれ以上のエピトープを含む。より好ましくは、組成物は、炭疽菌毒素系のそれぞれの毒素タンパク質、PA、LFおよびEFのそれぞれのドメイン由来の1個もしくはそれ以上のエピトープを含む。
【0071】
本明細書において提供される免疫原性ペプチドは、全長炭疽菌タンパク質のペプチド、部分または断片である。全長組換え防御抗原、致死因子および浮腫因子タンパク質は、組換えベクター、例えば、標準的な細菌またはバキュロウイルス遺伝子発現系を使用して、産生される。全長タンパク質は、多様な方法を使用して、個々のドメインに切断するかまたは消化することができる。さらに、全長防御抗原、致死因子および浮腫因子のアミノ酸配列およびドメインは、当該技術分野において周知である(また、それぞれ配列番号1〜3およびGenbank受託番号AA22637、AAM26117、およびAA79215を参照のこと)。好適な実施態様では、組成物は、これらの炭疽菌毒素タンパク質のそれぞれに由来する1つもしくはそれ以上の免疫原性ペプチドを含む。
【0072】
好適な実施態様では、組成物は、各炭疽菌毒素タンパク質由来の1つもしくはそれ以上の免疫原性ペプチドを含む。
【0073】
一実施態様では、炭疽菌ペプチド組成物中のペプチドは、好ましくは、エピトープ(a)ヒトについて、1〜9PA(表6);1〜10LF(表5)および1〜13EF(表7)およびそれらの断片(図12〜15を参照のこと)ならびに(b)マウスについて、1〜27LF(表1);1〜28LF(表2);1〜27LF(表3);1〜25PA(表4);1〜17EF(表8)および1〜9EF(表9)およびそれらの断片である(図6、7および19を参照のこと)。
【0074】
別の実施態様では、ペプチドは表1〜9のペプチドである。防御抗原由来の好適な炭疽菌ペプチドとして、表4および6〜7のペプチド配列を含む。
【0075】
致死因子由来の好適な炭疽菌ペプチドとして、表1〜3および5のペプチド配列を含む。
【0076】
浮腫因子由来の好適な炭疽菌ペプチドとして、表8〜10のペプチド配列を含む。
【0077】
防御抗原および致死因子由来の好適な炭疽菌ペプチドとして、それぞれ図13および15において言及されるペプチド配列を含む。
【0078】
高度に好適な炭疽菌ペプチドを、以下に記載の表に掲載する。
【0079】
表1:マウス要約的致死因子
表1は、マウス致死因子の免疫原性デカペプチドおよび対応する複合的免疫原性ペプチドを開示する。LFを含む810アミノ酸のうち、合計で392反応性アミノ酸を同定した。正規化されたOD測定によって決定されるように、ペプチドが0.3以上の反応性を有することが観察された場合、ペプチドを反応性とみなした。隣接する重複ペプチドよりなる伸長型エピトープは、0.4もしくはそれ以上のODを実証する少なくとも1つのペプチドを含む必要がある。隣接する反応性ペプチドを実証しない単一の反応性ペプチドは、ODが1.0を超えない限り、エピトープを構成しないものとみなした。この分類に基づいて、全体で、免疫化マウス系における致死因子の27個のエピトープを同定した。
【0080】
【表1】




【0081】
表2:伸長型マウス要約的致死因子
表2は、マウス致死因子の免疫原性デカペプチドおよび対応する複合的免疫原性ペプチドを開示し、ここで、光学密度測定によって決定されるように、ペプチド反応性が0.2より大きい場合、ペプチドおよび複合的配列を反応性とみなした。各伸長型エピトープ(複合的配列して示される)は、0.4以上の光学密度(O.D.)を実証する少なくとも1つのデカペプチドを含むことが必要とされる。この場合、LFを含む合計で810アミノ酸のうち440反応性アミノ酸を同定した。この分類に基づいて、全体で28個のエピトープを同定した。
【0082】
【表2】





【0083】
表3:さらなるマウス致死因子データ
表3は、マウス致死因子の免疫原性デカペプチドおよび対応する複合的免疫原性ペプチドを開示する。LFを含む810アミノ酸のうち、合計で392反応性アミノ酸を同定した。正規化されたOD測定によって決定されるように、ペプチドが0.2以上の反応性を有することが観察された場合、ペプチドを反応性とみなした。隣接する重複ペプチドよりなる伸長型エピトープは、0.4もしくはそれ以上のODを実証する少なくとも1つのペプチドを含む必要がある。隣接する反応性ペプチドを実証しない単一の反応性ペプチドは、ODが1.0を超えない限り、エピトープを構成しないものとみなした。この分類に基づいて、全体で免疫化マウス系における致死因子の27個のエピトープを同定した。
【0084】
【表3】

【0085】
表4:編集されたマウスPA
表4は、マウス防御抗原の免疫原性デカペプチドおよび対応するエピトープを開示し、ここで、光学密度測定によって決定されるように、ペプチド反応性が0.2より大きく、および0.4もしくはそれより大きい反応性を伴う少なくとも1つのデカペプチドを含みた場合、ペプチドおよび複合的配列を反応性とみなした。この場合、この分類に基づいて25個のエピトープを同定した。
【0086】
【表4】

【0087】
表5.編集されたヒト致死因子
表5は、ヒト致死因子の免疫原性デカペプチドおよび対応するエピトープを開示し、ここで、応答が、コントロールに対し平均+2標準偏差より大きく、および50%を超える個体が所定の領域についてポジティブであった場合、ペプチドおよび複合的配列を反応性とみなした。この場合、この分類に基づいて、10個のエピトープを同定した。
【0088】
【表5】

【0089】
表6.新たに同定された防御抗原ヒトエピトープ
表6は、ヒト防御抗原の免疫原性デカペプチドおよび対応するエピトープを開示し、ここで、ペプチド応答が、コントロールに対し平均+1.5標準偏差より大きく、および30%を超える個体が所定の領域についてポジティブであった場合、ペプチドおよび複合的配列を反応性とみなした。この場合、この分類に基づいて9個のエピトープを同定した。
【0090】
【表6】

【0091】
表7.AVAワクチン接種された個体血清によって認識され、および中和によって階層化される防御抗原タンパク質内のエピトープ
表7は、インビトロ保護アッセイにおいてマクロファージ死滅を阻害する血清の能力に基づいて個体を階層化した場合のヒト防御抗原の免疫原性デカペプチドおよび対応する体液性エピトープを開示する。ペプチド応答が、コントロールに対し平均+2標準偏差より大きく、および30%を超える個体が所定の応答についてポジティブであった場合、エピトープを反応性とみなした。この方法論を使用して、本発明者らは、合計で13個のエピトープについて、低度の応答体の中に1個の独特なエピトープ、中度の応答体の中に7個の独特なエピトープ、および高度の応答体の中に5個の独特なエピトープを同定することができた。
【0092】
【表7】

【0093】
表8.編集された浮腫因子(ヒト)
表8は、ヒト浮腫因子の免疫原性デカペプチドおよび対応するエピトープを開示し、ここで、ペプチド応答が、コントロールに対し平均+2標準偏差より大きく、および60%を超える個体が所定の領域についてポジティブであった場合、ペプチドおよび複合的配列を反応性とみなした。この場合、この分類に基づいて、17個のエピトープを同定した。
【0094】
【表8】

【0095】
表9.マウス要約的浮腫因子
表9は、マウス浮腫因子の免疫原性デカペプチドおよび対応する複合的免疫原性ペプチドを開示し、ここで、光学密度測定によって決定されるように、ペプチド反応性が0.16より大きい場合、ペプチドおよび複合的配列を反応性とみなした。各伸長型エピトープ(複合的配列して示される)は、0.3以上の光学密度(O.D.)を実証する少なくとも1つのデカペプチドを含むことが必要とされる。この場合、EFを含む合計で800アミノ酸のうち118反応性アミノ酸を同定した。この分類に基づいて、全体で、9個のエピトープを同定した。
【0096】
【表9】

【0097】
表10:さらなるマウス浮腫因子データ
表10は、マウス浮腫因子の免疫原性デカペプチドおよび対応するエピトープを開示し、ここで、光学密度測定によって決定されるように、ペプチド反応性が0.16より大きく、および0.3もしくはそれより大きい反応性を伴う少なくとも1つのデカペプチドを含みた場合、ペプチドおよび複合的配列を反応性とみなした。この場合、この分類に基づいて、9個のエピトープを同定した。
【0098】
【表10】

【0099】
炭疽菌ペプチド処方
炭疽菌ペプチドの1つもしくはそれ以上は、既知の技術を使用して、薬学的に許容可能な担体などの生理学的に許容可能な処方において調製することができる。例えば、ペプチドは、治療組成物を形成するために、薬学的に許容可能な賦形剤と組み合わせられる。
【0100】
あるいは、ペプチドをコードする遺伝子または核酸配列は、遺伝子治療技術を使用する継続投与のためのベクターで到達してもよい。本明細書において提供される組成物は、固体、液体またはエアロゾルの形態で投与してもよい。固体組成物の例として、丸剤、クリーム、およびインプラント可能な投薬単位を含む。丸剤は経口的に投与してもよい。治療用クリームは、局所的に投与してもよい。インプラント可能な投薬単位は、局所的に投与してもよく、または治療組成物の全身放出のために、例えば、皮下にインプラントしてもよい。液体組成物の例として、筋肉内、皮下、静脈内、動脈内注入に適応可能な処方ならびに局所および眼内投与のための処方を含む。エアロゾル処方の例として、肺への投与のための吸入器処方を含む。
【0101】
組成物は、標準的な投与経路によって投与してもよい。一般に、組成物は、局所、経口、経直腸、経鼻または非経口(例えば、静脈内、皮下、もしくは筋肉内)経路で投与してもよい。さらに、組成物は、持続放出マトリックス、例えば、生分解性ポリマーに組み入れてもよく、そのポリマーは、到達が所望される場所付近にインプラントされる。本方法は、単回投薬の投与、予め決定された時間間隔での反復投薬の投与、および予め決定された期間の持続投与を含む。
【0102】
ここで使用されるような持続放出マトリックスは、材料、通常は、酵素もしくは酸/塩基加水分解または溶解によって生分解可能であるポリマーより作製されるマトリックスである。一旦、身体に挿入されたら、マトリックスは、酵素および体液によって作用される。持続放出マトリックスは、望ましくは、生体適合性材料、例えば、リポソーム、ポリラクチド(ポリ乳酸)、ポリグリコリド(グリコール酸のポリマー)、ポリラクチド−コ−グリコリド(乳酸およびグリコール酸のコポリマー)、ポリ酸無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリペプチド、ヒアルロン酸、コラーゲン、コンドロイチン硫酸、カルボン酸、脂肪酸、リン脂質、多糖、核酸、ポリアミノ酸、フェニルアラニン、チロシン、イソロイシンなどのアミノ酸、ポリヌクレオチド、ポリビニルプロピレン、ポリビニルピロリドンおよびシリコーンから選択される。好適な生分解性マトリックスは、ポリラクチド、ポリグリコリド、またはポリラクチド−コ−グリコリド(乳酸およびグリコール酸のコポリマー)のいずれかのうちの1つのマトリックスである。
【0103】
あるいは、免疫原性炭疽菌ペプチドは、防御抗原、致死因子および/または浮腫因子の担体表面免疫原性領域上に存在するように、膜性担体などの担体に挿入することができる。防御抗原、致死因子および浮腫因子は、「非自己」として免疫系によって認識されるため、これらはすべて免疫原性である。しかし、防御抗原、致死因子および浮腫因子毒素の全体未満をリポソームの表面上に挿入すると、エピトープの免疫系への提示を改変し得、場合によって、エピトープの免疫原性を低減し得る。
【0104】
免疫原性リポソームは、精製されたまたは部分的に精製された防御抗原、致死因子および浮腫因子の存在下でリポソームを再構成することによって、作製してもよい。さらに、防御抗原、致死因子および/または浮腫因子ペプチドは、リポソームに再構成してもよい。組成物において使用することができるリポソームは、当業者に公知のリポソームを含む。リポソームを作製するのに有用な任意の標準的な脂質を使用してもよい。標準的な二層および多重層リポソームを使用して、本発明の組成物を作製してもよい。
【0105】
組成物の用量は、感染の進行、使用される特定の組成物、および患者の重量および病態などの他の臨床的因子ならびに投与経路に依存する。
【0106】
抗炭疽菌抗体組成物
上記の特徴を有する炭疽菌ペプチドは、炭疽菌タンパク質に反応性であるモノクローナルおよびポリクローナル抗体の両方の産生に使用される。免疫原性ペプチドを含む組成物は、防御抗原、致死因子および/または浮腫因子に特異的に免疫反応性であるモノクローナルまたはポリクローナル抗体を産生する。抗体は、当業者に周知の方法によって作製される。
【0107】
免疫原性炭疽菌ペプチド組成物ならびに抗LF、EFおよびPA抗体は、任意の適切な手段、好ましくは、注入によって、ヒトまたは動物に注入される。例えば、防御抗原、致死因子および浮腫因子の免疫原性ペプチドは、皮下または筋肉内注入によって投与される。内部で産生されようとまたは外部の供給源から提供されようと、循環抗LF、PAまたはEF抗体は適切な受容体に結合し、および感染および疾患を刺激する炭疽菌の能力を減少または不活化する。
【0108】
分析物に対するそのより高い特異性のため、好適な抗体はモノクローナル抗体である。モノクローナル抗体は、当業者に周知の方法によって作製される。好適な方法は、Kearneyら、J.Immunol.123:1548−1558(1979年)の方法の改変されたバージョンである。簡単に説明すると、マウスまたはウサギなどの動物に、アジュバント中の免疫原を接種、脾臓細胞を回収、および骨髄腫細胞系統、例えば、P3X63Ag8,653と混合する。ポリエチレングリコールの添加によって、細胞を誘導して、融合させる。ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む選択培地(HAT)に細胞をプレート化することによって、ハイブリドーマを化学的に選択する。続いて、抗炭疽菌モノクローナル抗体を産生する能力について、ハイブリドーマをスクリーニングする。抗体を産生するハイブリドーマをクローニングし、拡大し、および将来の産生のために凍結保存する。
【0109】
本明細書に記載の抗炭疽菌抗体は、炭疽菌感染の処置のための治療組成物および炭疽菌感染の検出または診断のためのイムノアッセイにおける試薬の両方として有用である。抗体は、これらの設計された用途に従って改変することができる。
【0110】
炭疽に感染した動物またはヒト患者に投与される治療処置としての用途のための抗炭疽菌抗体は、その抗体がより容易に忍容性であり、およびより少ない有害な副作用を有するように改変してもよい。例えば、当業者に既知であり、および米国特許第6,331,415号明細書に記載のようなハイブリッド、キメラまたは変更された抗体になるように、抗体を改変してもよい。好ましくは、抗体は、当業者に公知の方法に従って「ヒト化」される。ヒト化抗体、例えば、ヒト化モノクローナル抗体は、防御抗原、致死因子および/または浮腫因子の重要なエピトープを標的化する患者の免疫原性配列から産生される。免疫原性配列を使用して、炭疽に既に感染したこれらの個体における毒素形成を防止することができる。これらの抗炭疽菌抗体はまた、炭疽菌に対して個体を受動免疫することによって感染の開始を防止し、反応性を減少するか、または炭疽菌の増殖を阻害するために投与される。個体に投与される場合、抗LF、EFおよびPA抗体は、炭疽菌に結合することによって、炭疽菌毒素の有効な循環濃度を減少する。結果的に、炭疽菌毒素依存性感染は、防止、減少または阻害される。
【0111】
抗体が、炭疽菌毒素の検出、例えば、患者における炭疽菌感染の検出のためのイムノアッセイにおける試薬としての用途が意図される場合、それが直接的または間接的な検出であり得るように、抗体を改変し得る。例えば、抗体は、炭疽菌タンパク質の同定および定量のための検出可能な標識で、直接標識してもよい。イムノアッセイにおける用途のための標識は、一般的に当業者に公知であり、および酵素、放射性同位元素、蛍光物質、発光物質および金コロイドおよびラテックスビーズなどの着色された粒子含む発色物質を含む。
【0112】
あるいは、抗体は、免疫グロブリン、例えば、タンパク質AもしくはGまたは第二抗体に対する親和性を有する標識された物質との反応によって、間接的に標識してもよい。抗体を、第2の物質にコンジュゲートし、および抗体にコンジュゲートされた第2の物質に親和性を有する標識された第3の物質で検出してもよい。例えば、抗体をビオチンにコンジュゲートし、および標識されたアビジンまたはストレプトアビジンを使用して、抗体−ビオチンコンジュゲートを検出してもよい。同様に、抗体をハプテンにコンジュゲートし、標識された抗ハプテン抗体を使用して、抗体−ハプテンコンジュゲートを検出してもよい。抗体およびアッセイコンジュゲートを標識するこれらならびに他の方法は、当業者に周知である。
【0113】
処置すべき疾患および病態
本明細書に記載の炭疽菌ペプチド組成物は、炭疽菌(感染の疾患、症状および合併症を処置、防止、低減または軽減するのに有用である。本明細書に記載の組成物は、炭疽の原因因子に対する予防薬として特に有用であり、および炭疽菌に対するワクチンとして格別に有用である。組成物は、毒素成分、防御抗原、致死因子および浮腫因子に対して指向された中和抗体を産生させることによって、炭疽菌を処置または防止するのに格別に有用である。本明細書に記載の抗炭疽菌抗体組成物は、炭疽菌感染の処置のための免疫療法剤を提供するのに有用である。
【0114】
炭疽菌に感染したヒトまたは動物への本明細書において提供される組成物の投与は、感染の症状および免疫原性反応を減少または軽減するのに有用である。
【0115】
炭疽菌に暴露する危険性にあるヒトまたは動物への本明細書において提供される組成物の投与は、感染の症状および免疫原性反応を減少または軽減するのに有用である。防御抗原、致死因子および/または浮腫因子の免疫原性ペプチドを含む組成物は、炭疽菌に対する免疫を誘導するためにヒトまたは動物に投与される。免疫されたヒトまたは動物は、防御抗原、致死因子および浮腫因子の対応する領域に結合し、それによって炭疽菌感染を刺激するその能力を減少または不活化する炭疽菌に対する循環抗体を発達する。
【0116】
抗体およびイムノアッセイ検出方法
サンプル中の炭疽菌タンパク質の検出のための炭疽菌ペプチド、抗体、方法、およびキットが提供される。上記の炭疽菌ペプチドは、患者由来の生物学的サンプル中の抗炭疽菌抗体を検出するのに有用である。さらに、炭疽菌ペプチドは、生物学的サンプル中の炭疽菌毒素の検出のための抗炭疽菌抗体の産生に有用である。
【0117】
上記のように、PA、EFおよびLF毒素について感度をを有する抗炭疽菌モノクローナルおよびポリクローナル抗体は、当業者に周知の方法に従って、本明細書に記載の炭疽菌ペプチドの1つもしくはそれ以上で動物を免疫し、エピトープと反応する抗体を単離し、ならびに血液などの生物学的液体から抗体を回収および精製することによって、産生される。
【0118】
炭疽菌毒素に免疫反応性の抗体を含むイムノアッセイ方法は、動物サンプルなどのサンプル中の炭疽の検出に有用である。このような抗体を用いるイムノアッセイは、サンプル中の低濃度のタンパク質を検出することが可能である。抗体は、PA、EFおよびLFタンパク質上の1つもしくはそれ以上のエピトープに免疫反応性であり、および最低でもサンプル中に存在し得る他のタンパク質と反応し、それ故、炭疽に暴露した可能性のあるヒトなどのサンプルにおいて炭疽の存在の正確な決定を提供する。好適な抗体は、それらの高い特異性故に、ハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体である。
【0119】
抗体は、炭疽菌タンパク質の検出のための従来のイムノアッセイ試薬を伴うキットに集合的に集成される。キットは、場合により、モノクローナルおよびポリクローナル抗体の両方、ならびにサンプル中の炭疽菌タンパク質の存在の決定のための標準を含み得る。これらの試薬を含むキットは、炭疽菌タンパク質の簡単、迅速な、オンサイト検出を提供する。
【0120】
イムノアッセイ
試薬として抗体を用い、上記の炭疽菌ペプチドを使用して調製される高感度なイムノアッセイが提供される。イムノアッセイは、さまざまなサンプル、特にヒトサンプル中の炭疽菌毒素の存在または量を検出するのに有用である。サンプルは、炭疽菌タンパク質が抗体にアクセス可能である任意の供給源から入手し得る。例えば、サンプルは、炭疽に感染した疑いのある動物の血液または血清などの生物学的液体サンプルであり得る。従って、イムノアッセイは、炭疽菌感染の診断または予後に有用である。
【0121】
試薬として本明細書に記載の炭疽菌ペプチドを用いるイムノアッセイもまた提供される。ペプチドは、炭疽ワクチンを接種した個体から採取される生物学的サンプル中の炭疽に対する特異的防御免疫を試験するための試薬として使用される。ペプチドは、生物学的サンプル中の抗体に結合する。このタイプのイムノアッセイの結果は、ワクチン接種した個体の炭疽に対する免疫応答性に関する情報を提供し、これは、その個体に必要とされる追加接種の数を減少するために使用することができるか、または代替的防御手順を必要とする個体を同定するために使用することができる。
【0122】
試薬は、炭疽菌タンパク質の検出のための任意の異種もしくは同種サンドイッチまたは競合イムノアッセイにおいて用いられ得る。試薬は、検出可能な標識で標識されるか、または固相に結合されるかのいずれかである。試薬を固相に結合するための方法は、当業者に周知である。イムノアッセイ方法に従って、分析物を含むサンプルを、十分な期間、抗体のペプチドへの結合を促進する条件下で、試薬と反応させる。イムノアッセイ試薬およびサンプルは、異なる組み合わせおよび順序で反応され得ることが、当業者に理解されよう。粒子のろ過、コートされたチューブまたはウェルからの反応溶液のデカンテーション、磁気分離、毛管作用、および当業者に公知の他の手段などの固相に結合した試薬を非結合試薬から分離するための物理的手段が用いられる。固相の個別洗浄が方法に含まれ得ることもまた、理解されよう。
【0123】
サンプル中の炭疽菌タンパク質、または抗炭疽菌抗体の濃度は、サンプルによって生成される色の強度を色カードと比較するか、または反射計を使用するかのいずれかによって決定される。
【0124】
得られる反応混合物、または試薬およびサンプルの組み合わせは、抗体−分析物結合性動力学を最適化する溶液において調製される。適切な溶液は水溶液または緩衝液である。溶液は、好ましくは、特異的結合を促進し、非特異的結合を最小限にし、分析物を可溶化し、試薬反応性を安定化および保護する条件下で提供され、および緩衝液、界面活性剤、溶媒、塩、キレート剤、タンパク質、ポリマー、炭水化物、糖、および当業者に既知の他の物質を含みてもよい。
【0125】
反応混合物溶液は、抗体をペプチドに反応および結合させ、抗体−分析物複合体を形成させるのに十分な期間、反応させる。アッセイを完了させるのに必要な時間を最小限にするために、結合を生じる最も短い反応時間が所望される。イムノクロマトグラフィーストリップ試験のための適切な反応期間は、20分間以下、または約1分間〜20分間の間である。5分間未満の反応時間が好適である。最も好ましくは、反応時間は3分間未満である。試薬を最適化することによって、試薬を合わせる時に、結合が実質的に完了され得る。
【0126】
反応は、試薬が分解もまたは不活化もされない任意の温度で実施される。約4℃〜37℃の間の温度が好適である。最も好適な反応温度は、周囲または室温(約25℃)である。
【0127】
イムノアッセイキット
サンプル中の炭疽菌タンパク質の検出のためのイムノアッセイキットは、上記のエピトープを使用して調製される1つもしくはそれ以上の抗体を含む。
【0128】
キットは、サンプルを入手するための装置、試薬を含むための容器、計時手段、サンプルを希釈するための緩衝液、および比色計、反射計、または色の変化を測定し得る標準をさらに含みてもよい。
【0129】
好適な実施態様では、抗体を含む試薬は乾燥状態である。水性サンプルをストリップに添加すると、乾燥試薬の可溶化を生じ、これを反応させる。
【0130】
別のイムノアッセイキットは、特異的な防御炭疽菌エピトープ反応性の検出に有用である。ワクチン接種後、防御免疫が作製されている(または継続して作製されている)かどうかを決定するために、しばしば、個体を評価する必要がある。このキットは、固相系に結合した本明細書に記載の免疫原性ペプチドの1つまたは混合物を含む。血清の希釈物は、防御抗体の存在および濃度を測定するために使用されるこれらのペプチドおよび検出系と共にインキュベートされる。
【0131】
組成物および方法を、以下の非制限的例によってさらに例示するが、これらは、いかなる様式によっても、それらの範囲に制限を課すものと解釈されるべきではない。対照的に、それらの他の多様な実施態様、改変物、および等価物を採用することができ、それら自体は、本明細書に記載の説明を読んだ後であれば、本発明の趣旨および/または添付の特許請求の範囲から逸脱することなく当業者に示唆され得ることが明白に理解されるべきである。
【実施例】
【0132】
実施例1
炭疽菌致死性毒素に対する防御抗体および防御抗原を含むマウス抗血清の作製
図2は、組換えPA、組換えLFまたはアジュバント単独でA/Jマウスのグループを免疫するために使用される研究計画を示す。0日目に完全フロイントアジュバント(CFA)の存在下で初回免疫を行い、および10、24および38日目に追加接種を行った。
【0133】
各追加接種の4日後、およびさらに最後の追加接種の70〜80日後に行った毒素攻撃の前に、個々のマウスから抗体試験およびエピトープマッピングのための血液サンプルを回収した。
【0134】
図3は、免疫化マウスが組換えLFおよびPA免疫原に対して強固な抗体応答を産生していた根拠を実証する。図3は、市販のLFおよびPA調製物を使用するELISAによって決定されるLFおよびPAに対するIgG抗体価を示す。
【0135】
LF免疫化マウスは28日目に抗力価の抗LF抗体を産生し、およびPA免疫化マウスも同様に、28日目に高力価の抗PA抗体を産生する一方、アジュバント単独で免疫したマウスは産生しなかった。免疫前に回収したサンプルもまた、これらの抗体に陰性であった。各グループの血清の1/100血清希釈の平均ODからもまた、このパターンが確認される。
【0136】
実施例2
致死性毒素攻撃
エピトープマッピングを行う前に、実施例1のマウスが致死性毒素−中和抗体を産生したかどうかを決定するために研究した。これを確認するために、マウスを、致死量の炭疽菌致死性毒素(PA+LFが同時注入される)で攻撃した。使用した用量は、6週齢A/Jマウスにおいて決定されるLD50用量の3倍であった(図4を参照のこと)。
【0137】
コントロール群では、7匹のマウスのうち1匹しか、攻撃において生存しなかった。
【0138】
対照的に、10匹のPA免疫化マウスのうちの9匹が攻撃において生存し(p=0.009)、および8匹のLF免疫化マウスのうちの7匹(p=0.007)が攻撃において生存した。これらのデータは、マウスが毒素−中和抗体を産生したことを示唆した。
【0139】
実施例3
エピトープマッピング
免疫化マウス血清において産生される抗LF、抗EFおよび抗PA抗体をマッピングするために、8アミノ酸だけ重複する一連の固相結合10マーペプチドに対して血清をスクリーニングした(図5を参照のこと)。重複デカペプチドは、防御抗原(379個のペプチド)、浮腫因子(396個のペプチド)および致死因子(401個のペプチド)の長さ全体にわたって存在する。
【0140】
96ウェル形式のポリエチレンロッドにおいてデカペプチドを簡便に合成した。改変されたELISA技術で、多様なインキュベーションに対し、ピンを96ウェルプレートに降下し、およびその間に洗浄した。
【0141】
各炭疽菌毒素成分に対するそれぞれ個々のデカペプチドを、免疫原性活性について試験した。図6は、致死因子のB細胞エピトープについてマウスにおいて得られた結果を実証する。
【0142】
実施例4
致死因子のエピトープマッピング
図6は、28日目の採血〜108日目の採血のLF免疫化A/Jマウスのマッピング結果を実証する。分子全体を通して複数のエピトープが存在することを見出した。いくつかのエピトープは108日目までに反応性が減少したが、致死因子毒素の所定の領域は108日目まで強度の上昇または変化を保持した。アジュバント単独で免疫したマウスは、いずれのデカペプチドにも有意に結合することはできなかった。1.0もしくはそれ以上のO.D.を伴う少なくとも1つデカペプチドにおよんだ領域を、エピトープとみなした。これらのエピトープのサブセットを例として図6において強調する。
【0143】
0.2(O.D)のスケールを超える免疫原性が観察される個々のデカペプチドを、免疫原性ペプチドとして同定した。各伸長型エピトープ(複合的配列して示される)は、0.4以上のO.D.を実証する少なくとも1つのデカペプチドを含むことが必要とされる。
【0144】
例として強調したエピトープのサブセットを、致死因子の結晶構造上に重ね合わせた。
【0145】
図6の結晶構造上に重ね合わせ、また表1において同定されるエピトープは、野生型致死因子の以下のアミノ酸位置に対応する(配列番号2を参照のこと)。
【0146】
1:EKVPSDVLEMYKAIGGKI(配列番号95):野生型致死因子のアミノ酸94〜114に対応する。
2:SEDKKKKDIYGKDALLHEH(配列番号96):野生型致死因子のアミノ酸131〜150に対応する。
3:QHRDVLQLYAPEAFNYMDKFNEGEINLSLEELKD(配列番号265):野生型致死因子のアミノ酸261〜294に対応する。
4:LLKKLQIPIE(配列番号47):野生型致死因子のアミノ酸325〜334に対応する。
5:SLSQEEKELLKRIQ(配列番号102):野生型致死因子のアミノ酸343〜356に対応する。
6:DFLSTEEKEFLKKLQIDIRD(配列番号266):野生型致死因子のアミノ酸361〜378に対応する。
7:SLSEEEKELLNRIQ(配列番号104):野生型致死因子のアミノ酸381〜394に対応する。
8:LSEKEKEFLKKLKLDI(配列番号105):野生型致死因子のアミノ酸401〜416に対応する。
9:GPYDINGRLQDT(配列番号267):野生型致死因子のアミノ酸417〜428に対応する。
10:LIDSPSINLDVRKQ(配列番号107):野生型致死因子のアミノ酸431〜444に対応する。
11:LVDGNGRFVFTDITLP(配列番号110):野生型致死因子のアミノ酸655〜670に対応する。
12:GYTHQDEIYEGV(配列番号268):野生型致死因子のアミノ酸675〜686に対応する。
【0147】
興味深いことに、致死因子エピトープは、ドメインI、PA結合ドメインおよびドメインIIIにおいてクラスターを形成する傾向があり、これらは、MAP−キナーゼ−キナーゼ基質に接触するいくつかの残基を有する。
【0148】
また、致死因子のドメインIV、触媒ドメインにおいても2つのエピトープを観察した。
【0149】
実施例5
防御抗原のエピトープマッピング
図7は、28日目の採血〜108日目の採血のPA免疫化A/Jマウスのマッピング結果を実証する。さらに、分子全体を通して複数のエピトープが存在することを見出した。高い抗体価にもかかわらず、PAは、LFについて観察される場合より少ないエピトープを有した。
【0150】
0.4(O.D.)もしくはそれ以上の反応性を伴う少なくとも1つデカペプチドにおよんだ領域を、エピトープとみなした。8個の優勢なエピトープ、すべての同定されたエピトープのサブセットを、例としてPA結晶構造に重複させた。興味深いことに、エピトープのうちの1つはフューリン切断部位におよぶが、エピトープのうちの2つは、LFおよびEFへの結合に影響を及ぼすことに関与しているPAの領域において生じる。
【0151】
エピトープ5は、結晶構造において解明されていない。
【0152】
また、いくつかのマークされていないエピトープを図7に示す。本実施例では、0.2のスケールを超える免疫原性であり、および0.4もしくはそれ以上の反応性を伴う少なくとも1つのデカペプチドを含むことが観察された個々のデカペプチドが免疫原性ペプチドを規定する。
【0153】
図7の結晶構造上に重ね合わせ、また表4において同定されるエピトープ(配列上の番号)は、野生型防御抗原の以下のアミノ酸位置に対応する(配列番号1を参照のこと)。
【0154】
1:STTGDLSIPSSELENIDSEN(配列番号269):野生型防御抗原のアミノ酸67〜86に対応する。
2:LKQKSSNSRKKRSTSAGPTVPD(配列番号156):野生型防御抗原のアミノ酸185〜206に対応する。
3:TASDPYSDFEKVTGRIDKNVSP(配列番号159):野生型防御抗原のアミノ酸257〜278に対応する。
4:VDMENIILSKNEDQSTQN(配列番号162):野生型防御抗原のアミノ酸293〜310に対応する。
5:NAEVHASFEDIGGSVSAG(配列番号270):野生型防御抗原のアミノ酸335〜352に対応する。
6:GKDITEFDFNFDQQTS(配列番号167):野生型防御抗原のアミノ酸573〜588に対応する。
7:(配列番号170):野生型防御抗原のアミノ酸633〜654に対応する。
8:TEGLLLNIDK(配列番号171):野生型防御抗原のアミノ酸653〜662に対応する。
【0155】
実施例6
株背景対MHC
PAおよびLFの同定可能なB細胞エピトープの数を広げるために、免疫化C57BL/6マウスにおいてもまたエピトープをマッピングした(図8を参照のこと)。
【0156】
エピトープ選択におけるMHCクラスIIハプロタイプ対遺伝的背景の相対的重要性を評価するために、A/JマウスのMHCクラスIIハプロタイプにコンジェニックなC57BL/6マウスにおける応答についても評価した(図8を参照のこと)。
【0157】
図9は、28日目の採血におけるLF免疫後のマッピング結果を示す。
【0158】
いくつかのエピトープを株間で共通であると同定し、「C」で示される一方、他のエピトープは遺伝的背景に依存し、「B」で示される。この場合、A/J背景は重要である。
【0159】
興味深いことに、他のエピトープはMHCクラスIIの影響を強く受け、およびこれらのエピトープは「M」で示される。その場合、「k」ハプロタイプは、このエピトープに必要である。
【0160】
全体的に、ほとんどのエピトープが非MHC背景遺伝子によって決定される一方、いくつかのエピトープが2つの株の間で共通であった。
【0161】
MHCクラスIIハプロタイプは、B細胞エピトープ選択の重要な決定基ではないことを見出した。
【0162】
図10は、28日目の採血におけるPA免疫後のマッピング結果を示す。
【0163】
実施例7
ワクチン接種ヒトにおける防御抗原に対する抗体の評価
炭疽ワクチン接種後の体液性免疫応答についての調査を開始するために、吸収炭疽ワクチン(AVA)の3回もしくはそれ以上の投薬を受けた個体を採用し、および末梢血液を回収した。114例のワクチン接種した個体ならびに26例の非ワクチン接種コントロールの集団(cohort)を研究に採用した。個体の大部分61.4%は白人(Caucasian)であり、23.68%のアフリカ系アメリカ人(African American)、5.26%のアジア人(Asian)、および9.64%のその他の民族を伴った。平均年齢は33.83(±8.6)であり、ワクチン接種の平均回数は5.12(±1.47)であり、および最後のワクチン接種からの平均時間は2.45(±1.39)年であった。
【0164】
これらの個体由来の血清を、標準的なELISAにおいて使用し、防御抗原、致死因子、および浮腫因子のレベルを検出した。コントロールの平均+2倍の標準偏差より大きい光学密度をポジティブとみなした。ワクチン接種した個体は検出可能な抗防御抗原抗体を有する(図11)一方、ただ1つのサブセットのみが検出可能な抗致死因子または抗浮腫因子抗体を有した。抗防御抗原抗体を伴う個体は、抗体価(1:10、1:100、1:1,000、および1:10,000)に基づいて4つのグループに分けることができた。意外にも、抗原特異的抗体のレベルは、ワクチンを接種した固体の年齢にも、またワクチン接種の回数にも相関しなかった(図11)。さらに、抗致死または浮腫因子抗体の有無は、抗防御抗原抗体のレベルに相関しなかった。しかし、ワクチン接種後の年数と抗PA力価との間のには、有意な(p=0.0008)逆相関が見出された。それ故、最も高い力価の抗防御抗原抗体を伴うそれらの個体に、ごく最近ワクチン接種した(ワクチン接種後1.0±0.4年、図11)。
【0165】
実施例8
毒素マクロファージ死滅のインビトロ阻害についてのAVAワクチン化個体血清の評価
潜在的に中和している抗体が最も興味深いため、本実施例では、高応答体であるそれらの個体において同定されるエピトープ(図23および表7)ならびに毒素中和について高い能力を伴う領域における抗体に注目した。高応答体において同定される最も優勢なエピトープは、エピトープ、QLPELKQKSSNSRKKRSTSA(配列番号197)であり、フューリン切断部位を含む領域として同定された。事実、高応答体の6例中5例(または83%)は、固相ペプチドアッセイに基づいて、この抗原領域に対して指向された抗体を有した。フューリン切断部位内のこのエピトープに加えて、他の2つのエピトープが防御を仲介する能力について分析した。これらのうち第1のものは、リガンド結合領域内のエピトープ(PYSDFEKVTGRIDKNV、配列番号199)であった。最後のエピトープは、防御抗原で免疫したマウス由来の血清に対して固相ペプチドアッセイを使用して同定した(下記において説明する)が、これは防御抗原の受容体結合ドメイン内に存在する。
【0166】
目的のこれらの3つのエピトープに対して指向された抗体について試験するために、これらの領域を含むペプチドを合成し、およびペプチド特異的ELISAにおいて使用した。図22(パネルA〜C)において示されるように、フューリン切断部位エピトープにおいて指向された抗体で16例の個体を同定し、リガンド結合部位エピトープで指向された抗体で12例の個体を同定し、および受容体結合部位において同定された抗体で18例の個体を同定した。一旦、これらの独特な抗原領域が同定および確認されたら、これらのエピトープに対する抗体が防御を仲介する能力について試験した。それ故、カラム吸収を使用して、ペプチド特異的抗体を富化し、続いて、ペプチド特異的ELISAおよび毒素中和を行った。図22(パネルD〜F)において示されるように、すべての場合において、対応するペプチドに特異的な抗体を有意に富化および枯渇することが可能であった。次いで、これらの富化および枯渇されたサンプルを、標準的な毒素中和アッセイにおいて使用し、これらのペプチド特異的抗体が防御を仲介する能力について試験した。図22(パネルG)において示されるように、フューリン切断部位内のエピトープに対して指向された抗体は毒素活性を阻止することが可能であった一方、他の2つのエピトープにおいて指向された抗体はそれほど可能ではなかった。それ故、AVAワクチン接種後に作製されるフューリンペプチド特異的抗体は、毒素活性を中和することが可能である。
【0167】
実施例9
防御抗原抗体の特異性
実施例3について上記に記載のように、固相支持体上に合成された重複デカペプチドを利用して、防御抗原抗体応答の精密な特異性を評価した。簡単に説明すると、ワクチン接種した個体由来の血清を、PAの重複デカペプチドと共にインキュベートし、続いて、HRPに連結されたヒトIgGコンジュゲートと共にインキュベーションを行い、450nmにおける吸光度を決定した。図12において示されるように、ワクチン接種後の防御抗原抗体応答の精密な特異性を明確に観察することができる。図12はまた、PAの結晶構造上に重ね合わせられたほとんどの反応性エピトープ(エピトープ番号1〜9)を示す。免疫原性に関連する領域の観察は、エピトープおよび免疫原性ペプチド断片である個々のデカペプチドの検出を可能にする。
【0168】
図23は、ワクチン接種した個体血清がマクロ相死滅を阻害する能力(中和の代用インビトロモデル)によって階層化される応答の精密な特異性を示す。体液性エピトープ特異性のさらなるおよび独特な領域を、この方法によって決定した。
【0169】
実施例10
ワクチン接種ヒトにおける致死因子に対する抗体の評価
上記で考察したように、炭疽ワクチン接種後の体液性および細胞性免疫の検査のために、吸収炭疽ワクチン(AVA)の3回もしくはそれ以上の投薬を受けた個体、ならびに年齢、性別、および人種の一致した非ワクチン接種コントロール由来の血清を分析した。図11において認められるように、試験した大部分の個体は、推奨される6回のワクチン接種を受け、および最後のワクチン接種からの平均時間は、2.33(±1.9)年であった。致死因子に対する抗体のレベルを検出するために、血清をELISAによって試験した。コントロールの平均+2倍の標準偏差より大きい光学密度をポジティブとみなした。
【0170】
すべてのワクチン接種した個体(n=29)は、検出可能な抗防御抗原抗体を有した(図11)。しかし、これらのワクチン接種した個体のただ1つのサブセットは、致死因子(n=9)または浮腫因子(n=10)に対する検出可能な抗体を有した。
【0171】
実施例3について上記に記載のように、固相支持体上に合成された重複デカペプチドを利用して、致死因子抗体応答の精密な特異性を評価した。簡単に説明すると、ワクチン接種した個体由来の血清を、LFの重複デカペプチドと共にインキュベートし、続いて、HRPに連結されたヒトIgGコンジュゲートと共にインキュベーションを行い、450nmにおける吸光度を決定した。図14において示されるように、ワクチン接種後の致死因子抗体応答の精密な特異性を明確に観察することができる。図14はまた、LFの結晶構造上に重ね合わせられたほとんどの反応性エピトープ(エピトープ番号1〜10)を示す。免疫原性に関連する領域の観察は、エピトープおよび免疫原性ペプチド断片である個々のデカペプチドの検出を可能にする。
【0172】
実施例11
炭疽菌浮腫因子に対する防御抗体を含む抗血清の作製
図16は、組換えEFまたはアジュバント単独でA/Jマウスのグループを免疫するために使用される研究計画を示す。0日目にCFAの存在下で初回免疫を行い、および10、24および38日目に追加接種を行った。
【0173】
各追加接種の4〜5日後、およびさらに最後の追加接種の129日後であった浮腫毒素攻撃の前に、個々のマウスから抗体試験およびエピトープマッピングのための血液サンプルを回収した。
【0174】
図17は、免疫化マウスが組換えEFに対して強固な抗体応答を産生していた根拠を実証する。図17は、市販のEF調製物を使用するELISAによって決定されるEFに対するIgG抗体価を示す。
【0175】
すべてのEF免疫化マウスは、28、42および171日目に高力価の抗EF抗体を産生した。
【0176】
実施例12
浮腫性毒素攻撃
実施例11のマウスを、それらが浮腫毒素−中和抗体を産生したかどうかを決定するために研究した。これを確認するために、はじめに、免疫されていない6週齢のA/Jマウスにおける浮腫毒素のLD50を決定した(図18Aを参照のこと)。次いで、実施例11のマウスを、致死量の炭疽菌浮腫毒素(PA+EFが同時注入される)で攻撃した。使用した用量は、A/Jマウスにおいて決定されるLD50用量の4倍であった。
【0177】
EF免疫化マウスの50パーセントが致死性の浮腫毒素攻撃に対して生存した一方、アジュバント単独で免疫されていたコントロールマウスで攻撃に対し生存したのは0%であった(図18Bを参照のこと)。これらのデータは、実施例11のEF免疫化マウスが浮腫毒素−中和抗体を産生したことを示唆した。
【0178】
実施例13
浮腫因子のエピトープマッピング
図19は、15日目の採血および28日目の採血のEF免疫化A/Jマウスのマッピング結果を実証する。応答は、15日目に単一のエピトープによって開始し、次いで、拡大して、28日目までには複数のエピトープを含んだことが見出された。アジュバント単独で免疫したマウスは、いずれのデカペプチドにも有意に結合することはできなかった。0.3およびそれ以上のO.D.を伴う少なくとも1つのデカペプチドにおよんだ領域を、エピトープとみなした。この特定のマウス株からの例として、これらのエピトープを図19において強調し、および既知のEF結晶構造上に重ね合わせる。
【0179】
図19の結晶構造上に重ね合わせ、また表9において同定されるエピトープは、野生型浮腫因子の以下のアミノ酸位置に対応する(配列番号3を参照のこと)。
【0180】
1:KNSMNSRGEKVPFASRFV(配列番号256):野生型浮腫因子のアミノ酸125〜142に対応する。
2:YAINSEQSKEVY(配列番号257):野生型浮腫因子のアミノ酸159〜170に対応する。
3:SSDLLFSQKFKE(配列番号258):野生型浮腫因子のアミノ酸205〜216に対応する。
4.LELYAPDMFEYM(配列番号259):野生型浮腫因子のアミノ酸257〜268に対応する。
5.EGEIGKIPLKLD(配列番号260):野生型浮腫因子のアミノ酸395〜406に対応する。
6.DYDLFALAPSLT(配列番号261):野生型浮腫因子のアミノ酸491〜502に対応する。
7.NWQKQMLDRLNEAV(配列番号262):野生型浮腫因子のアミノ酸551〜564に対応する。
8.NEAVKYTGYTGG(配列番号263):野生型浮腫因子のアミノ酸561〜572に対応する。
9.QDNEEFPEKDNEIF(配列番号264):野生型浮腫因子のアミノ酸581〜594に対応する。
【0181】
実施例14
マウス免疫血清を使用するPAおよびLFの中和ペプチドエピトープの同定
LFおよびPA免疫化A/Jマウス由来の免疫血清を、それぞれ、図6および7、ならびに表1〜4においても開示される次のエピトープ:PA164〜177、RKKRSTSAGPTVPD(配列番号271);PA230〜243、SDPYSDFEKVTGRIDK(配列番号272);およびLF232〜247、VLQLYAPEAFNYMDKF(配列番号273)から構築される複数の抗原ペプチドカラムを使用するアフィニティークロマトグラフィーに供した。ここで番号は、PAでは配列番号1およびLFでは配列番号2におけるアミノ酸を指す。個々のカラム画分を本来の血清容積まで濃縮し、および標準的な致死性毒素仲介マクロファージ細胞死アッセイにおいて滴定した。図20において示されるように、このようにして精製された抗体のすべての3つの調製物は、細胞生存能%の増加によって示されるように、致死性毒素がマウスマクロファージ細胞系統を死滅させる能力を中和する能力を実証した。各保持された(即ち、ペプチド結合性)画分の全IgGの濃度を定量したが、これを図20に示す。
【0182】
上記のすべての科学記事、公開、要約、特許および特許出願は、それらの全体が本明細書において参考として援用される。
【0183】
本発明について、開示された実施態様を参考にして詳細に説明してきたが、本発明の趣旨および範囲内において多くの変形および改変を行うことができることが理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭疽菌タンパク質の免疫原性ペプチドを含む組成物であって、前記ペプチドは20kDa未満の分子量を有し、および動物に投与される場合に炭疽に対する免疫応答を誘導する、組成物。
【請求項2】
前記炭疽菌タンパク質は防御抗原、致死因子または浮腫因子タンパク質である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ペプチドは40アミノ酸未満を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ペプチドは担体に結合される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記担体は防御抗原タンパク質である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記免疫原性ペプチドの2つもしくはそれ以上を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記免疫原性ペプチドは、炭疽菌タンパク質の2つもしくはそれ以上の免疫原性ペプチドの融合タンパク質であって、各ペプチドは20kDa未満の分子量を有し、動物に投与される場合に免疫応答を誘導する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記ペプチドは、表4(配列番号:152〜174)および表6(配列番号:185〜193)に記載の炭疽菌防御抗原アミノ酸配列よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記ペプチドは、表3(配列番号:92〜116)および表5(配列番号:175〜184)に記載の炭疽菌致死因子タンパク質アミノ酸配列よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記ペプチドは、表7(配列番号:194〜206)に記載の炭疽菌浮腫因子タンパク質アミノ酸配列よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
動物に、炭疽菌タンパク質の免疫原性ペプチドを含む有効量の組成物を投与することを含み、前記ペプチドは20kDa未満の分子量を有する、炭疽に対する免疫応答を誘導する方法。
【請求項12】
前記動物は炭疽に感染し、および誘導される前記免疫応答は、前記動物における炭疽菌感染を処置するのに有効である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記誘導される免疫応答は、前記動物における炭疽菌感染に対して防御するのに有効である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
炭疽菌タンパク質のペプチドに免疫反応性の抗体を含む組成物であって、前記ペプチドは、20kDa未満の分子量を有し、動物に投与される場合に炭疽に対する免疫応答を誘導する、組成物。
【請求項15】
前記抗体はヒト化抗体である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
動物に、炭疽菌タンパク質のペプチドに免疫反応性の抗体を含む有効量の組成物を投与することを含み、前記ペプチドは20kDa未満の分子量を有する、炭疽に感染した動物を処置する方法。
【請求項17】
動物に、炭疽菌タンパク質の免疫原性ペプチドを含む有効量の組成物を投与することを含み、前記ペプチドは20kDa未満の分子量を有する、炭疽に対する抗体を産生させる方法。
【請求項18】
前記抗体はモノクローナルまたはポリクローナル抗体である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
動物における炭疽菌感染を検出するための方法であって、
前記動物由来のサンプルと、炭疽菌タンパク質のペプチドに免疫反応性の抗体とを組み合わせることであって、前記ペプチドは20kDa未満の分子量を有し、動物に投与される場合に炭疽に対する免疫応答を誘導することと、
前記抗体と前記サンプル中の炭疽菌タンパク質との間で形成される複合体を検出することと、
を含み、
前記複合体の検出は、前記動物における前記炭疽菌感染を示す、方法。
【請求項20】
動物における炭疽菌感染を検出するための方法であって、
前記動物由来のサンプルと、炭疽菌タンパク質の免疫反応性ペプチドとを組み合わせることであって、前記ペプチドは20kDa未満の分子量を有し、および動物に投与される場合に炭疽に対する免疫応答を誘導することと、
前記サンプル中の抗体と前記免疫反応性ペプチドとの間で形成される複合体を検出することと、
を含み、
前記複合体の検出は、前記動物における前記炭疽菌感染を示す、方法。
【請求項21】
動物における炭疽菌感染に対する特異的防御免疫を検出するための方法であって、
前記動物由来のサンプルと、炭疽菌タンパク質の免疫反応性ペプチドとを組み合わせることであって、前記ペプチドは20kDa未満の分子量を有し、および動物に投与される場合に炭疽に対する免疫応答を誘導することと、
前記サンプル中の抗体と前記免疫反応性ペプチドとの間で形成される複合体を検出することと、
を含み、
予め決定された量の前記複合体の検出は、前記動物における前記炭疽菌感染に対する特異的防御免疫を示す、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公表番号】特表2009−536951(P2009−536951A)
【公表日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−509893(P2009−509893)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/011608
【国際公開番号】WO2007/145760
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(594003676)オクラホマ メディカル リサーチ ファウンデーション (14)
【氏名又は名称原語表記】OKLAHOMA MEDICAL RESEARCH FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】825 N.E. 13th Street,Oklahoma City,Oklahoma 73104,United States of America
【出願人】(508335532)
【Fターム(参考)】