炭素材料及びその製造方法
【課題】導電性の塗料、電波吸収材、遮光材料等に用いた際に、高い導電性、充填性や遮光性等が得られる結晶の厚さ(Lc)が10nm以下の箔片状結晶片を含有する炭素材料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】炭素材料は、炭化水素化合物をプラズマ熱分解して得られる結晶性のものであって、その結晶の厚さ(Lc)が10nm以下である箔片状結晶片を含有する。この炭素材料は、不活性ガス、または不活性ガスと水素ガスあるいは炭酸ガスとの混合ガスをプラズマ発生室内で、標準状態(25℃で101325Pa)におけるガスの流速が0.602m/sec以上になるように供給し、プレート電力6kVA以上の高周波を印加した後、前記炭化水素化合物を5L/min以上導入して該炭化水素化合物の熱分解を行って製造する。
【解決手段】炭素材料は、炭化水素化合物をプラズマ熱分解して得られる結晶性のものであって、その結晶の厚さ(Lc)が10nm以下である箔片状結晶片を含有する。この炭素材料は、不活性ガス、または不活性ガスと水素ガスあるいは炭酸ガスとの混合ガスをプラズマ発生室内で、標準状態(25℃で101325Pa)におけるガスの流速が0.602m/sec以上になるように供給し、プレート電力6kVA以上の高周波を印加した後、前記炭化水素化合物を5L/min以上導入して該炭化水素化合物の熱分解を行って製造する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素化合物を熱プラズマ中で熱分解して得られる炭素材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンブラックや黒鉛等の炭素材料は、結晶構造、導電性や潤滑性等の物性等を利用して、また粒度、形状を制御することで、黒色顔料、ゴム製品の補強材あるいはプラスチック等の導電性フィラーとして汎用されている。例えば、形状を制御し微粒子化することにより、遮光性や黒色度の高い塗料が得られディスプレイ用材料や導電性を利用した塗料や電波吸収材のフィラーとして用いられ、また、結晶性及び電気化学的安定性を利用した電池用負極材料や水素吸蔵材料、自己潤滑性を利用した潤滑剤、低磨耗インキ等の機能性材料等に利用されている。
【0003】
炭素材料は炭素を含む物質(通常、主としては炭化水素化合物)の熱分解によって工業的に製造される。炭素を含む物質の熱分解として、例えば、開放火焔分解法(インピンジメント法またはチャンネル法)、封鎖直接火焔分解法(ファーネス法)、外部加熱面法(連続サーマル法)、プラズマ法等のような種々の方法で実施されているが、特にプラズマ法は高温プラズマの高いエネルギー密度と大きな冷却速度を有し、微粉末の製造に適しているので好ましい。
【0004】
このプラズマ法による炭素材料の製造する技術については、ハロゲン化炭素化合物を不活性ガスがイオン化状態に保たれている帯域に導入してアモルファス内部構造を有するカーボンブラックを得る方法が知られている(特許文献1)。
【0005】
また、炭化水素化合物をプラズマ熱分解して得られる結晶子の厚さ(Lc)100〜160Å、a軸方向の格子定数(a0)が2.446〜2.555Å、c軸方向の格子定数(c0)6.876〜6.885Åの乱層結晶構造を有する微細な鱗片形態の結晶性フィルム状炭素質物が提案されている(特許文献2、特許文献3)。
【特許文献1】特公昭43−12421号公報
【特許文献2】特開平2−307817号公報
【特許文献3】特開平5−58612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の製造技術は無定形のカーボンブラックを対象としており、得られる炭素材料は、炭素材料の粒径は36Åと細かいが、黒鉛結晶子がランダムに重なり合った炭素質のアモルファス内部構造を呈している。このため、充填性、潤滑性等には優れるが、導電性の面では物性的に好ましくない。
【0007】
また、特許文献2や特許文献3で製造された炭素材料は、巨視的に鱗片フィルム状であって、大きな異方性アスペクト比を有しているが、結晶の厚さも100〜160Å(10〜16nm)と比較的厚いものであり、グラファイト結晶に比べてa0が約0.5%縮み、c0が約2.5%伸びた乱層結晶構造を形成していることから、結晶性が悪く、そのために電気伝導特性が良質な結晶性グラファイトと比べて劣る可能性がある。そのため、導電性を利用した導電性塗料等に利用した場合、使用量が増加する、薄膜化・細線化が困難となる。また、電気伝導特性が悪くなることから反射率が低下し、併せて遮光性も低下することが考えられる。
【0008】
以上の課題に鑑み、本発明の目的は、導電性の塗料、電波吸収材、遮光材料等に用いた際に、高い導電性、充填性や遮光性等が得られる結晶の厚さ(Lc)が10nm以下の箔片状結晶片を含有する炭素材料及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ね検討した結果、炭化水素が熱プラズマ中で熱分解する機構ならびに炭素質物に転化させる生成条件について多角的に検討を加えた結果、炭化水素化合物を導入する位置のプラズマガス温度及びプラズマ空間に対する導入炭化水素化合物量の割合を一定範囲内で変動させることにより、所望性状の炭素材料に転化させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
(1) 炭化水素化合物をプラズマ熱分解して得られる結晶性の炭素材料であって、結晶の厚さ(Lc)が10nm以下である箔片状結晶片を含有する炭素材料。
【0011】
(1)に記載の発明によれば、炭化水素化合物がプラズマの高い温度で熱分解されて生成される炭素材料は、その結晶の厚さ(Lc)が10nm以下、さらには5nm以下の箔片状結晶片を含有しているので、超微細であって、扁平フレーク状でアスペクト比が大きく、結晶性が良いものである。このため、充填性、潤滑性に優れるばかりでなく、導電性、及び遮光性等にも優れることになり、遮光性や黒色度の高い塗料が得られディスプレイ用材料や導電性を利用した塗料や電磁波シールド材のフィラー、自己潤滑性を利用した潤滑剤、UVカットインク等の機能性材料等へ幅広く利用できる。
【0012】
(2) 前記箔片状結晶片の厚さ(Lc)が5nm以下である(1)記載の炭素材料。
【0013】
(2)に記載の発明によれば、炭素材料の結晶の厚みがより薄くなるので、より微細で、アスペクト比も大きくなるので、充填性、潤滑性、導電性、及び遮光性等がより一層優れることになる。
【0014】
(3) 前記箔片状結晶片を、前記炭素材料の結晶片数の90%以上含有する(1)または(2)に記載の炭素材料。
【0015】
(3)に記載の発明によれば、箔片状結晶片が炭素材料の結晶片数の90%含有され、結晶質であるので、導電性等に優れる。
【0016】
(4) 前記炭化水素化合物が天然ガスである(1)から(3)いずれかに記載の炭素材料。
【0017】
天然ガスは、メタン、エタン、プロパン、ブタン等を含み、メタンを主成分とする炭化水素ガスであって、汎用性があるので炭化水素化合物原料として有用である。
【0018】
(5) 前記炭化水素化合物がメタン及び/又はプロパンである(1)から(3)いずれかに記載の炭素材料。
【0019】
メタンやプロパンは、天然ガスに含まれる主成分であり汎用性に優れ、コスト的にも有利である。また、炭化水素化合物が熱プラズマにより熱分解されて、炭素材料と共に水素が生成されるが、炭化水素化合物として水素含有量が高く、水素源として有効である。
【0020】
(6) 不活性ガスからプラズマを発生させた後、当該プラズマ内に炭化水素化合物を導入して、前記炭化水素化合物のプラズマ熱分解を行う炭素材料の製造方法であって、プラズマ発生室内の圧力が6kPa以上で66.5kPa以下の減圧雰囲気で、標準状態(25℃で101325Pa)におけるガスの流速が0.602m/sec以上になるように不活性ガスを供給し、プレート電力6kVA以上の高周波を印加した後、前記炭化水素化合物を5L/min以上導入して、前記炭化水素化合物の熱分解を行う、(1)から(5)いずれかに記載の炭素材料の製造方法。
【0021】
(6)に記載の発明によれば、不活性ガスを用いて、プレート電力6kVA以上で高周波を誘導して発生された熱プラズマに炭化水素化合物を5L/min以上導入して熱分解して、炭化水素化合物を熱分解するので、炭化水素化合物が水素とアセチレンに改質されると共に、プラズマガスの実流速が非常に高速で、かつ生成した炭化水素が急冷されるため、結晶の厚さ(Lc)が10nm以下、さらには5nm以下である箔片状結晶片の炭素材料が効率よく生成されることになる。
【0022】
(7) 不活性ガス及び水素の混合ガスからプラズマを発生させた後、当該プラズマ内に炭化水素化合物を導入して、前記炭化水素化合物のプラズマ熱分解を行う炭素材料の製造方法であって、プラズマ発生室内の圧力が6kPa以上で66.5kPa以下の減圧雰囲気で、標準状態(25℃で101325Pa)におけるガスの流速が0.602m/sec以上になるように不活性ガスと水素の混合ガスを供給し、プレート電力6kVA以上の高周波を印加した後、前記炭化水素化合物を5L/min以上導入して、前記炭化水素化合物の熱分解を行う、(1)から(5)いずれかに記載の炭素材料の製造方法。
【0023】
(7)に記載の発明によれば、不活性ガス及び水素の混合ガスを用いて、プレート電力6kVA以上で高周波を誘導して発生された熱プラズマに炭化水素化合物を5L/min以上導入すると、炭化水素化合物がプラズマにより熱分解されて、水素とアセチレンに改質されると共に、炭素材料が生成される。この際に、不活性ガスに水素等の2原子分子ガスを混合することで、ピンチ効果が向上し、プラズマが絞られて中心部の温度が高められ、プラズマガスの実流速がさらに高速になり、かつ生成した炭化水素が急冷されることと相まって、結晶の厚さ(Lc)が10nm以下、さらには5nm以下である箔片状結晶片を含有する炭素材料がより効率的に生成されることになる。
【0024】
(8) 不活性ガス及び二酸化炭素の混合ガスからプラズマを発生させた後、当該プラズマ内に炭化水素化合物を導入して、前記炭化水素化合物のプラズマ熱分解を行う炭素材料の製造方法であって、プラズマ発生室内の圧力が6kPa以上で66.5kPa以下の減圧雰囲気で、標準状態(25℃で101325Pa)におけるガスの流速が0.602m/sec以上になるように不活性ガスと二酸化炭素の混合ガスを供給し、プレート電力6kVA以上の高周波を印加した後、前記炭化水素化合物を5L/min以上導入して、前記炭化水素化合物の熱分解を行う、(1)から(5)いずれかに記載の炭素材料の製造方法。
【0025】
(8)に記載の発明によれば、不活性ガス及び二酸化炭素の混合ガスを用いて、プレート電力6kVAで高周波を誘導して発生された熱プラズマに炭化水素化合物を5L/min以上導入すると、炭化水素化合物がプラズマにより熱分解されて、水素と一酸化炭素に改質されると共に、炭素材料が生成される。炭化水素化合物の炭素量と二酸化炭素の炭素量(炭化水素化合物の炭素と二酸化炭素の炭素比)が1:1付近を越えると、アセチレンが発生し始め、同時に炭素材料が発生し始める。この製造方法では炭素材料の収率が低下してしまうが、地球温暖化ガスである二酸化炭素を混合ガスの原料である一酸化炭素に変換することができ、(7)に記載の発明と同様の結晶の厚さ(Lc)が10nm以下、さらには5nm以下である箔片状結晶片を含有する炭素材料が得られる。
【0026】
(9) 前記不活性ガスとしてアルゴンガスを用いる(6)から(8)いずれかに記載の炭素材料の製造方法。
【0027】
(10) 前記炭化水素化合物として天然ガスを用いる(6)から(9)いずれかに記載の炭素材料の製造方法。
(11) 前記炭化水素化合物としてメタン及び/又はプロパンを用いる(6)から(9)いずれかに記載の炭素材料の製造方法。
【0028】
(12) 前記プラズマとして高周波プラズマを用いる(6)から(11)いずれかに記載の炭素材料の製造方法。
【0029】
主として不活性ガスを用いて直流放電させて発生させた熱プラズマに、メタン等の炭化水素化合物を不活性ガスに混合していくと、メタン等の炭化水素化合物のガスを用いて直流放電すると、メタンや炭化水素化合物が分解して水素を生じ、ピンチ効果によりプラズマの温度が上昇し、陽極の銅が溶融し放電が停止することがある。他方、電波法で工業的に割り当てられている高周波やマイクロ波を用いて放電すると、このようなガスの場合でも安定してプラズマを維持できる。したがって、直流放電よりも高周波放電やマイクロ波放電を使うプロズマの方が優れることになる。また、電極が無い無電極放電のため、得られた生成物に不純物が含まれない。
【0030】
(13) (1)から(5)いずれかに記載の炭素材料を用いた電波吸収体。
【0031】
(14) (6)から(12)いずれかに記載の炭素材料の製造方法から得られた炭素材料を用いた電波吸収体。
【0032】
(13)及び(14)に記載の発明によれば、炭素材料は、結晶の厚さ(Lc)が10nm以下、さらには5nm以下の箔片状結晶片を含有しているため、超微細であって、扁平フレーク状でアスペクト比が大きく、結晶性が良いものであるので、充填性、潤滑性に優れるばかりでなく、導電性、及び遮光性等にも優れることになる。このため、該炭素材料は、各種のマトリックス材料中に均質に分散・混合されるので、マトリックス材料本来の加工性や成形性を損なうことなく添加でき、又、導電性を有するので、所望とする周波数に対応する電波吸収体を提供することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、炭化水素化合物を熱プラズマで熱分解した、結晶の厚さ(Lc)が10nm以下、さらには5nm以下の箔片状結晶片を含有する炭素材料が提供され、この炭素材料は超微細であって、箔片状でアスペクト比が大きいものである。このため、付加価値の高い導電性フィラー、高性能潤滑材等、特殊用途の原材料として有用性が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態についての実施形態を具体的に説明する。
【0035】
本発明の炭素材料は、炭化水素化合物をプラズマ熱分解して得られたもので、結晶の厚さ(Lc)が10nm以下、好ましくは5nm以下である箔片状結晶片を90質量%以上、好ましくは95質量%以上含有する微細な結晶性のものである。そして、a軸方向の格子定数(a0)が0.247nm程度、c軸方向の格子定数(c0)が0.671nm程度であるフレーク状の形状をした微粒子の集合体の結晶性炭素材料である。
【0036】
形態としては、微細で、巨視的に鱗片状であって、大きな異方性とアスペクト比を有している。このため、充填性、潤滑性、導電性、及び遮光性等に優れることになり、例えば、遮光性や黒色度の高い塗料が得られディスプレイ用材料、導電性を利用した塗料や電磁波シールド材のフィラー、自己潤滑性を利用した潤滑剤、UVカット用インク等の機能性材料等へ幅広く利用できる。
【0037】
本発明の炭素材料は、以下の装置及び方法を用いることで製造することができる。
【0038】
熱プラズマ反応装置としては、図1に模式的に示すように、プラズマを発生させるプラズマトーチ1と、その下部に連設される真空チャンバー2と、周辺部に配設される高周波発生装置3とから構成されている。そして、真空チャンバー2には、内部を真空にするための真空ポンプ5をフィルター11を介して備え、また、ダイヤフラム真空ポンプ6を通じてフィルター補集装置12を備えた改質ガス捕集用バッグ4が連設されている。また、図示していないが、循環型冷却水により冷却されている。
【0039】
また、プラズマトーチ1は、図2に示すように、窒化珪素管1aの外側に石英管1bを配置した水冷二重構造のリングであって、その外周部には、高周波発生装置3と連結するRFコイル9がコイル状に巻く形で配設されている。また、その上部には、不活性ガス導入口7a,7bを備えた不活性ガス導入管7と、原料ガスである炭化水素化合物を導入するための炭化水素化合物導入口8aを備えた炭化水素化合物導入プローブ8とが連結されている。
【0040】
また、高周波発生装置3は、高周波発振機3aと高周波電源3bとから構成され、高周波発振機3aの出力は、原料ガスの種類や得ようとする炭素材料の形状により、適宜決定されるが、例えば、0.5〜35Kw(最大電極電圧(Ep)=12kV、最大陽極電流(IP)=5.8A)であり、発振周波数は3.5±0.5Mzであるのが好ましい。
【0041】
熱プラズマを発生するためのガス系は、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス、もしくはこの不活性ガスに水素、窒素のような2原子分子ガス、または炭酸ガスを付加した混合ガス気流とするのが好ましい。
【0042】
また、本発明の炭素材料を得るための炭化水素化合物原料としては、従来法により炭素材料の微粒子を製造し得るものであれば特に限定されないが,例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、デカン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素、エチレン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン等の不飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、スチレン等の芳香族炭化水素、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の多環芳香族炭化水素等が挙げられる。これらの中でも、汎用性、コスト面等からメタン、プロパンが特に好ましい。さらに、天然ガスは、例えば都市ガス等に利用されている13Aはメタンが88.0%、エタンが4.5%、プロパンが4.5%、ブタンが1.7%というように、メタンを主成分とする炭化水素ガスで、汎用性もあるので、炭化水素化合物原料として有用である。
【0043】
これらの炭化水素化合物あるいは炭素質原料は、液体のものは予め加熱気化させて熱プラズマ流滞域に導入するか、噴霧させて微細液滴としてガス状で導入する。また、熱プラズマ流滞域への原料の導入は必ずしも炭化水素化合物あるいは炭素質原料を単独でなくてもよく、熱プラズマ発生用不活性ガス、あるいは炭酸ガス等を混合した混合ガスと混ぜ合わせて導入してもよい。
【0044】
また、このような原料の導入量は熱プラズマ流滞域を形成させる出力パワーに左右され、出力が高い高周波の熱プラズマほど、原料の導入量を増やすことができ、また改質効率が向上する。
【0045】
製造プロセスは、先ず不活性ガス導入管7の不活性ガス導入口7a,7bから不活性ガスを導入して系内に送入し、高周波発生装置3からRFコイル9に、例えば周波数3.5±0.5Mzで電力を負荷して熱プラズマ10を発生させる。次いで、炭化水素化合物を炭化水素化合物導入口8aから導入し、炭化水素化合物導入プローブ8から熱プラズマ中に吹き込む。この段階で炭化水素化合物は急速に熱分解して改質ガス、水素、炭素材料に転化され、真空チャンバー2で反応が完結した後、循環型冷却水により冷却され、改質ガスや水素は真空チャンバー2に連設されているダイヤフラム真空ポンプ6で吸引され、改質ガス捕集用バッグ4に捕集される。また、炭素材料は、改質ガスや水素ガスを採取した後、真空チャンバー2の内壁及び改質ガス捕集用バッグ4に備えられたフィルター補集装置12のフィルター部から回収される。
【0046】
上記のプロセスで、原料の炭化水素化合物が熱プラズマ内で完全に分解し、回収したガス中には原料の炭化水素化合物が含まれていない程度の炭化水素化合物の供給量や圧力、出力であれば箔片状結晶の炭素材料が得られる。具体的には、熱プラズマ発生用のガスは、例えば、プラズマ発生室を通過する流速が標準状態(25℃で101325Pa)で0.602m/sec以上になる量を供給し、熱プラズマ中に炭化水素化合物を導入する際および導入後の圧力は6kPa以上66.5kPa以下に保つことにより、厚さが10nm以下の箔片状結晶片を安定して得ることができる。また、導入する炭化水素化合物中の炭素量は、高周波の出力を大きくすることによって増加することができる。すなわち、高周波の出力調整により炭化水素化合物の導入量を制御することができる。炭化水素化合物の導入量は5L/min以上であることが好ましい。また、改質時の圧力を高くすることによりグラファイトの生成量が増加することから、圧力の制御によって箔片状結晶片の生成を制御することもできる。また、熱プラズマの発生は、プレート電力6kVA以上で高周波を印加することで行われる。尚、この印加は、先ず低出力でプラズマを発生させ、その後除々に出力を上げてプラズマを安定させた上で、所定の出力で炭化水素化合物の改質処理を行うのが好ましい。
【0047】
得られた炭素材料は、結晶の厚さ(Lc)が10nm以下、さらには5nm以下の箔片状結晶片を含有しているため、超微細であって、扁平フレーク状でアスペクト比が大きく、結晶性が良いものであるので、充填性、潤滑性に優れるばかりでなく、導電性、及び遮光性等にも優れることになる。このため、該炭素材料は、各種のマトリックス材料中に均質に分散・混合でき、マトリックス材料本来の加工性や成形性を損なうことなく添加することができる。又、導電性を有するので、各種のマトリックス材料にフィラーとして用いて成形したものは電波吸収特性に優れることになる。このため、例えば、該炭素材料を用いることで所望とする周波数に対応する電波吸収体を製造することができる。特に、無線LANにおいて、これまで屋外での使用が禁止されていた4.9GHz〜5.091GHz帯域が解放されて使用できるようになった場合に、この周波数帯域で、例えば4〜6mmといった厚みが薄くて電波吸収特性に優れる電波吸収体を提供することができる。
【0048】
上記の電波吸収体は、マトリックス材料に本発明の炭素材料を所定割合で添加して、公知の方法で製造することができる。炭素材料の添加割合としては、目的とする電波吸収特性や使用するマトリックス材料にもよるが、例えば、マトリックス材料に50vol%以下の量を配合するのが好ましい。
【0049】
上記の電波吸収体に用いられるマトリックス材料としては、用途に応じた強度、耐熱性、成形性等の特性を有する有機高分子が主に用いられる。例えば、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、天然ゴム等の各種エラストマー、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、PVC樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられ、これらを必要に応じて混合して使用してよい。
【0050】
又、必要であれば溶剤、分散剤、可塑剤、架橋剤、老化防止剤、加硫促進剤等を添加してもよい。又、有機高分子の他に、珪酸カルシウム成形材、ALC、気泡コンクリート等の無機質基材に分散混入してもよい。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図を参照しながら説明する。尚、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
【0052】
<実施例1>
図1、2に示す装置を用い、炭化水素化合物としてメタンを用い、不活性ガスとしてアルゴンガスとし、これに水素ガスを混合した混合ガスでプラズマを発生させ、該プラズマによりメタンを熱分解して、炭素材料、改質ガス(アセチレン、水素)を生成した。
【0053】
先ず、真空チャンバー2内を真空ポンプ5で0.13kPa以下の減圧状態にして、アルゴンガスを不活性ガス導入管7から50kPaまで導入し、再度減圧状態にするパージ操作を3回繰り返した後、真空チャンバー2内に不活性ガス導入管7からアルゴンガスを10L/minで供給し、真空チャンバー2内の圧力が約10kPaの条件下で熱プラズマ10を点火した。次にアルゴンガス(供給量60L/min)を供給し、真空チャンバー内の圧力が33.2kPaとし、高周波発振機3aの出力を上昇させた後、熱プラズマ10を収縮させるためにアルゴンガス(供給量60L/min)に水素ガス(供給量10L/min)を混合し、高周波発振機3aのプレート電力を44.0kVAまで上げてプラズマを安定させた。この際の供給したアルゴンガスと水素の混合ガスが図1のトーチ内を通過する流速は、標準状態(25℃で101325Pa)で0.845m/sec程度である。尚、熱プラズマ反応装置は、日本電子社製の熱プラズマ反応炉試験装置JEOL34KWを用いた。
【0054】
その後、メタンのキャリアー用ガスとしてアルゴンガスを3.0L/minの流量で炭化水素化合物導入プローブ8に流した後、メタンを36.7L/minで2分間供給した。尚、使用した炭化水素化合物導入プローブ8の内径は1.76mmとした。また、真空チャンバー2内の圧力は33.2kPaで行った。
【0055】
メタンの熱分解で生成された改質ガスであるアセチレンガス(C2H2)、及び水素ガス(H2)はダイヤフラム真空ポンプ6(ULVAC社製 DA−15D)で吸引し、改質ガス捕集用バッグ4に採取した。採取後、メタン、キャリアー用アルゴンガスの順に供給を停止した後、高周波発振機3aの出力を低下させ、熱プラズマ10を消火した。
【0056】
次いで、真空チャンバー2内に大気を導入し、真空チャンバー2内が大気圧に到達した後、真空チャンバー2の内壁、及びフィルター補集装置12のフィルター部に付着している炭素材料を回収した。
【0057】
回収したそれぞれの炭素材料について、透過電子顕微鏡(TEM:Topcon社製 EM−002B)を用いて炭素材料の形状を観察した。観察は、加速電圧200kVで行った。そして、フィルター部から回収した炭素材料AのTEM写真(倍率130千倍)を図3に示す。また、フィルター部より回収した炭素材料Aの粒子群に電子線を照射して得られた電子線回析像の写真を図4に示す。
【0058】
図3から、回収された炭素材料Aは、いずれも一辺の長さが数十nmから百数十nm、厚さは10nm以下の箔片状結晶片の集合体であることが確認された。結晶の厚みは、透過電子顕微鏡を用いて結晶の断面を適宜の倍率で撮影し、その写真のネガを等倍に印刷し、対象の部分の長さを測定し、測定した長さと倍率から求めた。その結果、殆んど全ての粒子の厚さは5nm以下であった。また、結晶構造は、図4に示す炭素材料Aの粒子群に電子線を照射して得られた電子線回析像から2H構造であると判定した。
【0059】
<実施例2>
実施例1において、メタンの供給をプラズマ発生ガスであるアルゴンガスと水素ガスの混合ガスにメタンを混合することで行った以外は、実施例1と同様の装置及び方法で、メタンを熱分解して炭素材料、改質ガス(アセチレン、水素)を生成した。
【0060】
先ず、実施例1で使用した装置を用いて、実施例1と同様の方法で熱プラズマ10を発生させ、次にアルゴンガス(供給量60L/min)を供給し、真空チャンバー内の圧力が33.2kPaとし、高周波発振機3aの出力を上昇させた後、プラズマを収縮させるためにアルゴンガスに水素ガスを混合し、プレート電力を42.1kVAまで上げプラズマを安定させた。この際の供給したアルゴンガスと水素の混合ガスが図1のトーチ内を通過する流速は、標準状態(25℃で101325Pa)で0.845m/sec程度である。
【0061】
その後、アルゴンガス(供給量60L/min)に水素ガス(供給量10L/min)の混合ガスにメタン24.5L/minを混合して、不活性ガス導入管7から導入して供給した。尚、真空チャンバー2内の圧力は33.2kPaで行った。
【0062】
供給を開始して2分後に、実施例1と同様の方法で改質ガス及び水素ガスを採取した。採取後、メタンの供給を停止して、高周波発振機3aの出力を低下させて熱プラズマを消火した。
【0063】
次いで、実施例1と同様に、真空チャンバー2内に大気を導入し、真空チャンバー2内が大気圧に到達した後、真空チャンバー2の内壁、及びフィルター補集装置12のフィルター部に付着している炭素材料Bを回収した。
【0064】
回収した炭素材料Bについて、実施例1と同様にしてその形状を観察した。そして、炭素材料BのTEM写真(倍率130千倍)を図5に示す。
【0065】
図5から、生成した炭素材料Bは、一辺の長さが数十nmから百数十nm、厚さは数nmの箔片状結晶片の集合体であることが確認された。そして、この箔片状結晶片は、実施例1で得られた炭素材料と同形状を呈していた。尚、結晶の長さ、厚み、及び結晶構造は、実施例1と同様にして判定した。
【0066】
<実施例3>
実施例1において、プラズマ発生ガスとしてアルゴンガスと炭酸ガスの混合ガスを用いた以外は、実施例1と同様の装置及び方法で、メタンを熱分解して炭素材料、改質ガス他を生成した。
【0067】
先ず、実施例1で使用した装置を用いて、実施例1と同様の方法で熱プラズマを発生させ、次にアルゴンガス(供給量60L/min)を供給し、真空チャンバー内の圧力が33.2kPaとし、高周波発振機3aの出力を上昇させた後、プラズマを収縮させるためにアルゴンガス(供給量60L/min)に炭酸ガス(供給量51L/min)を混合し、プレート電力を41.3kVAまで上げプラズマを安定させた。次にアルゴンの供給量を50L/minに減じた。この際の供給したアルゴンガスと炭酸ガスの混合ガスが図1のトーチ内を通過する流速は、標準状態(25℃で101325Pa)で1.215m/sec程度である。
【0068】
その後、メタンのキャリアー用ガスとしてアルゴンガスを3.0L/minの流量で炭化水素化合物導入プローブ8に流した後、メタンを34L/minで2分間供給した。尚、真空チャンバー2内の圧力は33.2kPaで行った。
【0069】
メタンの熱分解で生成された改質ガス及び水素ガスは実施例1と同様の方法で採取した。採取後、メタン、キャリアー用アルゴンガスの順に供給を停止した後、高周波発振機3aの出力を低下させ、熱プラズマ10を消火した。
【0070】
次いで、実施例1と同様に、真空チャンバー2内に大気を導入し、真空チャンバー2内が大気圧に到達した後、真空チャンバー2の内壁、及びフィルター補集装置12のフィルター部に付着している炭素材料Cを回収した。
【0071】
回収した炭素材料Cについて、実施例1と同様にしてその形状を観察した。そして、回収した炭素材料CのTEM写真(倍率88千倍)を図6に示す。また、フィルター部より回収した炭素材料Cの粒子群に電子線を照射して得られた電子線回析像の写真を図7に示す。
【0072】
図6から、生成した炭素材料Cは、一辺の長さが数十nmから百数十nm、厚さは数nmの箔片状結晶片の集合体であることが確認された。そして、この箔片状結晶片は、実施例1で得られた炭素材料と同形状を呈しており、また、大きさもほぼ同等であった。また、結晶構造は、図7に示す炭素材料Cの粒子群に電子線を照射して得られた電子線回析像から2H構造であると判定した。尚、結晶の長さ、厚み、及び結晶構造は、実施例1と同様にして判定した。
【0073】
<実施例4>
実施例3において、アルゴンガス(供給量60L/min)を供給し、真空チャンバー内の圧力を26.6kPaとし、高周波発振機3aの出力を上昇させた後、プラズマを収縮させるためにアルゴンガス(供給量60L/min)に炭酸ガスを混合し始め、プレート電力を20.3kVAとした時に、炭酸ガスの供給量は50L/minであった。次に真空チャンバー内の圧力を46.5kPaとし、アルゴンの供給量を86L/min、炭酸ガス量を60L/minに調整し、プレート電力を45kVAに設定した。この時のアルゴンガスと炭酸ガスの混合ガスが図1のトーチ内を通過する流速は、標準状態(25℃で101325Pa)で1.757m/sec程度である。
【0074】
その後、メタンのキャリアー用ガスとしてアルゴンガスを4.0L/minの流量で炭化水素化合物導入プローブ8に流した後、メタンを60L/minで8分間供給した。尚、真空チャンバー2内の圧力は46.5kPaで行った。
【0075】
メタンの熱分解で生成された改質ガス及び水素ガスは実施例1と同様の方法で採取した。採取後、メタン、キャリアー用アルゴンガスの順に供給を停止した後、高周波発振機3aの出力を低下させ、熱プラズマ10を消火した。
【0076】
次いで、実施例1と同様に、真空チャンバー2内に大気を導入し、真空チャンバー2内が大気圧に到達した後、真空チャンバー2の内壁、及びフィルター補集装置12のフィルター部に付着している炭素材料Dを回収した。
【0077】
回収した炭素材料Dについて、電子顕微鏡(日本電子(株)製JEM−2010)を用いてその形状を観察した。観察は、加速電圧5kVで行った。図8にフィルター部から回収した炭素材料DのSEM写真(倍率100千倍)を示す。また比較のために実施例1の炭素材料Aについても電子顕微鏡で形状を観察した。図9に炭素材料AのSEM写真(倍率100千倍、観察時の加速電圧は15kV)を示す。図8から生成した炭素材料Dは、一辺の長さが数十nmから百数十nm、厚さは数nmの箔片状結晶片の集合体であることが確認された。しかしながら図9の炭素材料Aと比較すると炭素材料Dは一辺の長さは短く、結晶の大きさは小さい。
【0078】
<実施例5>
実施例3において、アルゴンガス(供給量60L/min)を供給し、真空チャンバー内の圧力を26.6kPaとし、高周波発振機3aの出力を上昇させた後、プラズマを収縮させるためにアルゴンガス(供給量60L/min)に炭酸ガスを混合し始め、プレート電力を11kVAとした時に、炭酸ガスの供給量は20L/minであった。次に、真空チャンバー内の圧力は一定のままアルゴンの供給量を86L/min、炭酸ガス量を30L/minに調整し、プレート電力を35.5kVAに設定した。次にアルゴンガスの供給量を56L/minに調整した。この時アルゴンと炭酸ガスの混合ガスの流速は、標準状態(25℃で101325Pa)で1.035m/sec程度である。
【0079】
その後、メタンのキャリアー用ガスとしてアルゴンを4.0L/minの流量で炭化水素化合物導入プローブ8に流した後、メタンを30L/minで8分間供給した。尚、真空チャンバー2内の圧力は26.5kPaで行った。
【0080】
メタンの熱分解で生成された改質ガス及び水素ガスは実施例1と同様の方法で採取した。採取後、メタン、キャリアー用アルゴンガスの順に供給を停止した後、高周波発振機3aの出力を低下させ、熱プラズマ10を消火した。
【0081】
次いで、実施例1と同様に、真空チャンバー2内に大気を導入し、真空チャンバー2内が大気圧に到達した後、真空チャンバー2の内壁、及びフィルター補集装置12のフィルター部に付着している炭素材料Eを回収した。
【0082】
回収した炭素材料Eについて、電子顕微鏡を用いてその形状を観察した。観察は、加速電圧5kVで行った。図10にフィルター部から回収した炭素材料EのSEM写真(倍率100千倍)を示す。図10から生成した炭素材料Eは、一辺の長さが数十nmから百数十nm、厚さは数nmの箔片状結晶片の集合体であることが確認された。しかしながら図8の炭素材料Dおよび図9の炭素材料Aと比較すると炭素材料Eの一辺の長さは長く、結晶の大きさはやや大きい。
【0083】
実施例1〜5により得られた炭素材料A〜Cの箔片状結晶片の窒素比表面積の測定し、その結果を表1に示す。尚、N2ガスによるBET比表面積は高速比表面積測定装置(アサップ2000;(株)島津製作所製)を用いて測定を行った。
【0084】
【表1】
【0085】
表1の結果より、窒素比表面積が250〜350m2/gで、通常のカーボンブラックに比べて比表面積が大きいことが確認された。これによって、本発明の炭素材料は密着性や導電性に優れているといえる。
【0086】
実施例1、4、5により得られた炭素材料A、D、Eの箔片状結晶片のラマンスペクトルを測定し、その結果を図12に示す。尚、ラマンスペクトルは顕微ラマン(JRS−SYSTEM2000;日本電子(株))を用い、He−Neレーザー(632.8nm)を光源として測定を行った。グラファイトのラマンスペクトルは他の化合物には例がないほど構造欠陥に対して著しく敏感であり、このため炭素材料の評価方法として有用である。(資料:最新の炭素材料実験技術(分析・解析編)、第11章 ラマン分光法による構造分析、P91)
【0087】
炭素材料Aは透過電子顕微鏡の電子線回折結果から2Hのグラファイトであることが明らかであり、図11においてグラファイトの本来のGバンド(1,580cm−1)と構造の乱れに起因するDバンド(1,330cm−1付近)とD’バンド(1,620cm−1付近)が認められる。炭素材料D、Eは炭素材料Aと同様のラマンスペクトルを示すことから、炭素材料D、Eもグラファイトと考えられる。しかしながら、炭素材料D、Eは炭素材料Aと比較して構造の乱れに起因するD、D’バンドの強度が弱いため、炭素材料Aよりも結晶性が良いと推測される。
【0088】
<電波吸収体の吸収特性>
次に、上記の実施例1、4及び5で得られた炭素材料A、D及びEを用いて、電波吸収体としての適用について検証した。
【0089】
先ず、上記の実施例1、4及び5で得られた炭素材料A、D及びEについて、各炭素材料を2.5wt%及び5.0wt%の2種の含有率でパラフィン(融点mp70〜72℃、比誘電率εr=2.2)と混合し、外径7mm、内径3mm、厚さ約2mmの中空二重円筒型に成型した。この成型体について、1〜10GHzの周波数帯域でネットワークアナライザ(Agilent Technologies社製8720D)を用い、同軸管法によるSパラメータ測定を行った。入射した高周波の強度は100mWとした。得られた反射係数及び透過係数から、資料1に報告されているBaker−Jarvis法(資料1:Microwave Theory Tech.,38,p1096−1103(1990))により複素比誘電率εrを算出した。得られた複素比誘電率εrのデータについて、2.5wt%及び5.0wt%の含有量毎で1〜10GHz周波数滞域での周波数と複素比誘電率εrとの関係を図8及び図9に示した。ここで、図8は含有率2.5wt%での周波数と複素比誘電率εrとの関係を各炭素材料別に示す図であり、(a)は周波数と複素比誘電率εrの実部ε’との関係、(b)は周波数と複素比誘電率εrの虚部ε”との関係を示す。又、図9は含有率5.0wt%での周波数と複素比誘電率εrとの関係を各炭素材料別に示す図であり、(a)は周波数と複素比誘電率εrの実部ε’との関係、(b)は周波数と複素比誘電率εrの虚部ε”との関係を示す。
【0090】
図8(a)、(b)及び図9(a)、(b)より、炭素材料E>炭素材料A,Dの順に複素比誘電率εrは小さくなることが検証された。
【0091】
反射損失(電波吸収量)の算出は、厚さdの吸収体の裏に金属板が置いてあるインピーダンス整合型のモデルを用いて行われる。炭素材料のように磁性を有していないフィラーを用いた吸収体において、該吸収体に電波が垂直に入射する場合、吸収体表面から金属板を見込む試料のインピーダンスZは電波の波長λ、複素比誘電率εr、特性インピーダンス(自由空間のインピーダンス)Z0を用いて下記の(1)式のように表される。このモデルにおいては、吸収が最大、つまり反射が最小となる条件は下記の(2)式に示す反射係数Sが最小の時である。このとき入射面から見たインピーダンスZは自由空間のインピーダンスZ0と等しくなる。また、反射損失(S[dB])は下記の(3)式のように書くことができ、Sがf(λ=c/f)とdを含むことから、(1)〜(3)式を用いて試験体の厚さdを変えた場合の反射損失を算出することができる。
【0092】
そこで、この複素比誘電率εrから、下記の(1)式より種々の試料厚さdでの炭素材料を含有した吸収体表面でのインピーダンスZを算出し、算出したインピーダンスZにより、下記の(3)式より反射損失(S[dB])を求めた。ここで、反射損失(S[dB])はデシベル(dB)単位で表したが、−10dBで90%吸収(10%反射)、−20dBで99%吸収(1%反射)を示す。この値を目安として電波吸収体を設計・製造することが出来る。
【0093】
吸収量S[dB]の一例として、炭素材料Eを5.0wt%含有した厚み3.8mmの吸収体試料の吸収特性を図10に示す。この試料は、図10で示すように、7.7GHzの周波数において吸収量が40dBで、電波吸収性に優れていることが分かった。このように、本発明の炭素材料の含有量を適宜選定して最適化すれば、1〜10GHzで吸収量が大きい吸収体を得ることができることが検証された。
【0094】
【数1】
【0095】
【数2】
【0096】
【数3】
【0097】
<電波吸収体の設計>
炭素材料を含有した炭素複合材料の誘電率の体積分率及び周波数依存性をモデル化して解析することで、吸収体の設計が可能であることが資料2に報告されている(資料2:Transactions of the Materials Research Society of Japan, 29[5],p2511−2514(2004))。
【0098】
資料2によると、電波吸収体の設計手法は、上記の電波吸収体の吸収特性で述べたようにして、先ず炭素材料の重量分率ごとの複素比誘電率εrを算出し、算出した複素比誘電率εrの実部ε’及び虚部ε”の値から下記の(4)式を用いてフィッティングを行い、決定したフィッティングパラメータを用いて複素比誘電率εrの重量分率・周波数依存性をモデル化したモデル式による近似曲線と、下記の(5)式を用いて完全吸収するための無反射曲線とを求め、次いで、この無反射曲線と重量分率・周波数依存性をモデル化した近似曲線との関係から完全吸収を起こす重量分率と吸収体厚みを算出することができると報告されている。
【0099】
【数4】
【0100】
尚、完全吸収するための条件式は、下記の(5)式となる。すなわち、完全吸収をするためには、電波吸収体の表面からのインピーダンスZが平面波(電波)の特性インピーダンス(自由空間のインピーダンス)Z0と等しくすればよいので、上記の(1)式において、Z=Z0とすることで求めることができる。尚、周波数と厚さの関係で表すために波長λ=光速c/周波数fから(1)式を変形した。
【0101】
【数5】
【0102】
そこで、発明者らは、実施例1、4及び5で得られた炭素材料A、D及びEを用いた電波吸収体の設計を検証した。すなわち、上記の電波吸収体の吸収特性で述べたようにして、炭素材料の重量分率ごとの複素比誘電率εrを算出し、この複素比誘電率εrの実部ε’及び虚部ε”から上記の(4)式を用いてフィッティングを行い、決定したフィッティングパラメータを用いて複素比誘電率εrとの重量分率・周波数依存性をモデル化したモデル式による近似曲線と、上記の(5)式により求めた無反射曲線とから、周波数5GHzで完全吸収を起こす電波吸収体を設計した。
【0103】
上記の(5)式により、周波数fと吸収体の厚さd、又は、波長λと吸収体の厚みdを変化させ、複素比誘電率εr(εr=ε’−jε”)の実部ε’と虚部ε”の解を求め、ε’−ε”平面上にプロットした無反射曲線と、上記の(4)式によりフィッティングを行い、決定したフィッティングパラメータを用いて複素比誘電率εrの重量分率・周波数依存性をモデル化したモデル式で、重量分率と周波数を変化させ、複素比誘電率εrの実部ε’と虚部ε”の解を求め、ε’−ε”平面上にプロットした近似曲線とを炭素材料別に同一のε’−ε”平面上に描き、図11、図12及び図13に示した。そして、これらの曲線が交差する点を求めた。この交差する点が、完全吸収をするための吸収体厚さと重量分率を示す。
【0104】
ここで、図11は実施例1で得られた炭素材料Aを用いた場合の無反射曲線と、周波数5GHzでの重量分率依存性をモデル化したモデル式による近似曲線を示したものであり、図12は実施例4で得られた炭素材料Dを用いた場合の無反射曲線と周波数5GHzでの重量分率依存性をモデル化したモデル式による近似曲線を示したものであり、図13は実施例5で得られた炭素材料Eを用いた場合の無反射曲線と周波数5GHzでの重量分率依存性をモデル化したモデル式による近似曲線を示したものである。
【0105】
これらの結果から、各炭素材料別での吸収体に必要な重量分率と吸収体厚さを表2に示した。
【0106】
【表2】
【0107】
上記の結果より、炭素材料A、D及びEは、重量分率を適宜選定することで、周波数5GHzに対応した薄型の吸収体が作製可能であることが明らかとなった。
【0108】
このようにして、目的とする周波数に対応した電波吸収体の厚さと炭素材料の添加量を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の炭素材料の製造装置を模式的に示す図である。
【図2】本発明の炭素材料の製造装置のプラズマトーチ部分の断面を示す図である。
【図3】実施例1のフィルター部より回収の炭素材料の透過電子顕微鏡写真(130千倍)である。
【図4】実施例1のフィルター部より回収の炭素材料の粒子群に電子線を照射して得られた電子線回析像の写真である。
【図5】実施例2のフィルター部より回収の炭素材料の透過電子顕微鏡写真(130千倍)である。
【図6】実施例3のフィルター部より回収の炭素材料の透過電子顕微鏡写真(88千倍)である。
【図7】実施例3のフィルター部より回収した炭素材料の粒子群に電子線を照射して得られた電子線回析像の写真である。
【図8】実施例4のフィルター部より回収した炭素材料の電子顕微鏡写真(100千倍)である。
【図9】実施例1のフィルター部より回収した炭素材料の電子顕微鏡写真(100千倍)である。
【図10】実施例5のフィルター部より回収した炭素材料の電子顕微鏡写真(100千倍)である。
【図11】実施例1、4、5のフィルター部より回収した炭素材料A、D、Eのラマンスペクトルの図である。
【図12】含有率2.5wt%での周波数と複素比誘電率εrとの関係を各炭素材料別に示す図であり、(a)は実部ε’、(b)は虚部ε”である。
【図13】含有率5.0wt%での周波数と複素比誘電率εrとの関係を各炭素材料別に示す図であり、(a)は実部ε’、(b)は虚部ε”である。
【図14】炭素材料Eを5.0wt%含有した厚み3.8mmの吸収体の周波数と吸収量との関係を示す図である。
【図15】実施例1で得られた炭素材料Aを用いた場合の無反射曲線と周波数5GHzでの重量分率依存性をモデル化したモデル式による近似曲線を示す図である。
【図16】実施例4で得られた炭素材料Dを用いた場合の無反射曲線と周波数5GHzでの重量分率依存性をモデル化したモデル式による近似曲線を示す図である。
【図17】実施例5で得られた炭素材料Eを用いた場合の無反射曲線と周波数5GHzでの重量分率依存性をモデル化したモデル式による近似曲線を示す図である。
【符号の説明】
【0110】
1 プラズマトーチ(プラズマ発生室)
2 真空チャンバー
3 高周波発生装置
4 改質ガス捕集用バッグ
5 真空ポンプ
6 ダイヤフラム真空ポンプ
7 不活性ガス導入管
8 炭化水素化合物導入プローブ
9 RFコイル
10 プラズマ
11 フィルター
12 フィルター補集装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素化合物を熱プラズマ中で熱分解して得られる炭素材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンブラックや黒鉛等の炭素材料は、結晶構造、導電性や潤滑性等の物性等を利用して、また粒度、形状を制御することで、黒色顔料、ゴム製品の補強材あるいはプラスチック等の導電性フィラーとして汎用されている。例えば、形状を制御し微粒子化することにより、遮光性や黒色度の高い塗料が得られディスプレイ用材料や導電性を利用した塗料や電波吸収材のフィラーとして用いられ、また、結晶性及び電気化学的安定性を利用した電池用負極材料や水素吸蔵材料、自己潤滑性を利用した潤滑剤、低磨耗インキ等の機能性材料等に利用されている。
【0003】
炭素材料は炭素を含む物質(通常、主としては炭化水素化合物)の熱分解によって工業的に製造される。炭素を含む物質の熱分解として、例えば、開放火焔分解法(インピンジメント法またはチャンネル法)、封鎖直接火焔分解法(ファーネス法)、外部加熱面法(連続サーマル法)、プラズマ法等のような種々の方法で実施されているが、特にプラズマ法は高温プラズマの高いエネルギー密度と大きな冷却速度を有し、微粉末の製造に適しているので好ましい。
【0004】
このプラズマ法による炭素材料の製造する技術については、ハロゲン化炭素化合物を不活性ガスがイオン化状態に保たれている帯域に導入してアモルファス内部構造を有するカーボンブラックを得る方法が知られている(特許文献1)。
【0005】
また、炭化水素化合物をプラズマ熱分解して得られる結晶子の厚さ(Lc)100〜160Å、a軸方向の格子定数(a0)が2.446〜2.555Å、c軸方向の格子定数(c0)6.876〜6.885Åの乱層結晶構造を有する微細な鱗片形態の結晶性フィルム状炭素質物が提案されている(特許文献2、特許文献3)。
【特許文献1】特公昭43−12421号公報
【特許文献2】特開平2−307817号公報
【特許文献3】特開平5−58612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の製造技術は無定形のカーボンブラックを対象としており、得られる炭素材料は、炭素材料の粒径は36Åと細かいが、黒鉛結晶子がランダムに重なり合った炭素質のアモルファス内部構造を呈している。このため、充填性、潤滑性等には優れるが、導電性の面では物性的に好ましくない。
【0007】
また、特許文献2や特許文献3で製造された炭素材料は、巨視的に鱗片フィルム状であって、大きな異方性アスペクト比を有しているが、結晶の厚さも100〜160Å(10〜16nm)と比較的厚いものであり、グラファイト結晶に比べてa0が約0.5%縮み、c0が約2.5%伸びた乱層結晶構造を形成していることから、結晶性が悪く、そのために電気伝導特性が良質な結晶性グラファイトと比べて劣る可能性がある。そのため、導電性を利用した導電性塗料等に利用した場合、使用量が増加する、薄膜化・細線化が困難となる。また、電気伝導特性が悪くなることから反射率が低下し、併せて遮光性も低下することが考えられる。
【0008】
以上の課題に鑑み、本発明の目的は、導電性の塗料、電波吸収材、遮光材料等に用いた際に、高い導電性、充填性や遮光性等が得られる結晶の厚さ(Lc)が10nm以下の箔片状結晶片を含有する炭素材料及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ね検討した結果、炭化水素が熱プラズマ中で熱分解する機構ならびに炭素質物に転化させる生成条件について多角的に検討を加えた結果、炭化水素化合物を導入する位置のプラズマガス温度及びプラズマ空間に対する導入炭化水素化合物量の割合を一定範囲内で変動させることにより、所望性状の炭素材料に転化させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
(1) 炭化水素化合物をプラズマ熱分解して得られる結晶性の炭素材料であって、結晶の厚さ(Lc)が10nm以下である箔片状結晶片を含有する炭素材料。
【0011】
(1)に記載の発明によれば、炭化水素化合物がプラズマの高い温度で熱分解されて生成される炭素材料は、その結晶の厚さ(Lc)が10nm以下、さらには5nm以下の箔片状結晶片を含有しているので、超微細であって、扁平フレーク状でアスペクト比が大きく、結晶性が良いものである。このため、充填性、潤滑性に優れるばかりでなく、導電性、及び遮光性等にも優れることになり、遮光性や黒色度の高い塗料が得られディスプレイ用材料や導電性を利用した塗料や電磁波シールド材のフィラー、自己潤滑性を利用した潤滑剤、UVカットインク等の機能性材料等へ幅広く利用できる。
【0012】
(2) 前記箔片状結晶片の厚さ(Lc)が5nm以下である(1)記載の炭素材料。
【0013】
(2)に記載の発明によれば、炭素材料の結晶の厚みがより薄くなるので、より微細で、アスペクト比も大きくなるので、充填性、潤滑性、導電性、及び遮光性等がより一層優れることになる。
【0014】
(3) 前記箔片状結晶片を、前記炭素材料の結晶片数の90%以上含有する(1)または(2)に記載の炭素材料。
【0015】
(3)に記載の発明によれば、箔片状結晶片が炭素材料の結晶片数の90%含有され、結晶質であるので、導電性等に優れる。
【0016】
(4) 前記炭化水素化合物が天然ガスである(1)から(3)いずれかに記載の炭素材料。
【0017】
天然ガスは、メタン、エタン、プロパン、ブタン等を含み、メタンを主成分とする炭化水素ガスであって、汎用性があるので炭化水素化合物原料として有用である。
【0018】
(5) 前記炭化水素化合物がメタン及び/又はプロパンである(1)から(3)いずれかに記載の炭素材料。
【0019】
メタンやプロパンは、天然ガスに含まれる主成分であり汎用性に優れ、コスト的にも有利である。また、炭化水素化合物が熱プラズマにより熱分解されて、炭素材料と共に水素が生成されるが、炭化水素化合物として水素含有量が高く、水素源として有効である。
【0020】
(6) 不活性ガスからプラズマを発生させた後、当該プラズマ内に炭化水素化合物を導入して、前記炭化水素化合物のプラズマ熱分解を行う炭素材料の製造方法であって、プラズマ発生室内の圧力が6kPa以上で66.5kPa以下の減圧雰囲気で、標準状態(25℃で101325Pa)におけるガスの流速が0.602m/sec以上になるように不活性ガスを供給し、プレート電力6kVA以上の高周波を印加した後、前記炭化水素化合物を5L/min以上導入して、前記炭化水素化合物の熱分解を行う、(1)から(5)いずれかに記載の炭素材料の製造方法。
【0021】
(6)に記載の発明によれば、不活性ガスを用いて、プレート電力6kVA以上で高周波を誘導して発生された熱プラズマに炭化水素化合物を5L/min以上導入して熱分解して、炭化水素化合物を熱分解するので、炭化水素化合物が水素とアセチレンに改質されると共に、プラズマガスの実流速が非常に高速で、かつ生成した炭化水素が急冷されるため、結晶の厚さ(Lc)が10nm以下、さらには5nm以下である箔片状結晶片の炭素材料が効率よく生成されることになる。
【0022】
(7) 不活性ガス及び水素の混合ガスからプラズマを発生させた後、当該プラズマ内に炭化水素化合物を導入して、前記炭化水素化合物のプラズマ熱分解を行う炭素材料の製造方法であって、プラズマ発生室内の圧力が6kPa以上で66.5kPa以下の減圧雰囲気で、標準状態(25℃で101325Pa)におけるガスの流速が0.602m/sec以上になるように不活性ガスと水素の混合ガスを供給し、プレート電力6kVA以上の高周波を印加した後、前記炭化水素化合物を5L/min以上導入して、前記炭化水素化合物の熱分解を行う、(1)から(5)いずれかに記載の炭素材料の製造方法。
【0023】
(7)に記載の発明によれば、不活性ガス及び水素の混合ガスを用いて、プレート電力6kVA以上で高周波を誘導して発生された熱プラズマに炭化水素化合物を5L/min以上導入すると、炭化水素化合物がプラズマにより熱分解されて、水素とアセチレンに改質されると共に、炭素材料が生成される。この際に、不活性ガスに水素等の2原子分子ガスを混合することで、ピンチ効果が向上し、プラズマが絞られて中心部の温度が高められ、プラズマガスの実流速がさらに高速になり、かつ生成した炭化水素が急冷されることと相まって、結晶の厚さ(Lc)が10nm以下、さらには5nm以下である箔片状結晶片を含有する炭素材料がより効率的に生成されることになる。
【0024】
(8) 不活性ガス及び二酸化炭素の混合ガスからプラズマを発生させた後、当該プラズマ内に炭化水素化合物を導入して、前記炭化水素化合物のプラズマ熱分解を行う炭素材料の製造方法であって、プラズマ発生室内の圧力が6kPa以上で66.5kPa以下の減圧雰囲気で、標準状態(25℃で101325Pa)におけるガスの流速が0.602m/sec以上になるように不活性ガスと二酸化炭素の混合ガスを供給し、プレート電力6kVA以上の高周波を印加した後、前記炭化水素化合物を5L/min以上導入して、前記炭化水素化合物の熱分解を行う、(1)から(5)いずれかに記載の炭素材料の製造方法。
【0025】
(8)に記載の発明によれば、不活性ガス及び二酸化炭素の混合ガスを用いて、プレート電力6kVAで高周波を誘導して発生された熱プラズマに炭化水素化合物を5L/min以上導入すると、炭化水素化合物がプラズマにより熱分解されて、水素と一酸化炭素に改質されると共に、炭素材料が生成される。炭化水素化合物の炭素量と二酸化炭素の炭素量(炭化水素化合物の炭素と二酸化炭素の炭素比)が1:1付近を越えると、アセチレンが発生し始め、同時に炭素材料が発生し始める。この製造方法では炭素材料の収率が低下してしまうが、地球温暖化ガスである二酸化炭素を混合ガスの原料である一酸化炭素に変換することができ、(7)に記載の発明と同様の結晶の厚さ(Lc)が10nm以下、さらには5nm以下である箔片状結晶片を含有する炭素材料が得られる。
【0026】
(9) 前記不活性ガスとしてアルゴンガスを用いる(6)から(8)いずれかに記載の炭素材料の製造方法。
【0027】
(10) 前記炭化水素化合物として天然ガスを用いる(6)から(9)いずれかに記載の炭素材料の製造方法。
(11) 前記炭化水素化合物としてメタン及び/又はプロパンを用いる(6)から(9)いずれかに記載の炭素材料の製造方法。
【0028】
(12) 前記プラズマとして高周波プラズマを用いる(6)から(11)いずれかに記載の炭素材料の製造方法。
【0029】
主として不活性ガスを用いて直流放電させて発生させた熱プラズマに、メタン等の炭化水素化合物を不活性ガスに混合していくと、メタン等の炭化水素化合物のガスを用いて直流放電すると、メタンや炭化水素化合物が分解して水素を生じ、ピンチ効果によりプラズマの温度が上昇し、陽極の銅が溶融し放電が停止することがある。他方、電波法で工業的に割り当てられている高周波やマイクロ波を用いて放電すると、このようなガスの場合でも安定してプラズマを維持できる。したがって、直流放電よりも高周波放電やマイクロ波放電を使うプロズマの方が優れることになる。また、電極が無い無電極放電のため、得られた生成物に不純物が含まれない。
【0030】
(13) (1)から(5)いずれかに記載の炭素材料を用いた電波吸収体。
【0031】
(14) (6)から(12)いずれかに記載の炭素材料の製造方法から得られた炭素材料を用いた電波吸収体。
【0032】
(13)及び(14)に記載の発明によれば、炭素材料は、結晶の厚さ(Lc)が10nm以下、さらには5nm以下の箔片状結晶片を含有しているため、超微細であって、扁平フレーク状でアスペクト比が大きく、結晶性が良いものであるので、充填性、潤滑性に優れるばかりでなく、導電性、及び遮光性等にも優れることになる。このため、該炭素材料は、各種のマトリックス材料中に均質に分散・混合されるので、マトリックス材料本来の加工性や成形性を損なうことなく添加でき、又、導電性を有するので、所望とする周波数に対応する電波吸収体を提供することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、炭化水素化合物を熱プラズマで熱分解した、結晶の厚さ(Lc)が10nm以下、さらには5nm以下の箔片状結晶片を含有する炭素材料が提供され、この炭素材料は超微細であって、箔片状でアスペクト比が大きいものである。このため、付加価値の高い導電性フィラー、高性能潤滑材等、特殊用途の原材料として有用性が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態についての実施形態を具体的に説明する。
【0035】
本発明の炭素材料は、炭化水素化合物をプラズマ熱分解して得られたもので、結晶の厚さ(Lc)が10nm以下、好ましくは5nm以下である箔片状結晶片を90質量%以上、好ましくは95質量%以上含有する微細な結晶性のものである。そして、a軸方向の格子定数(a0)が0.247nm程度、c軸方向の格子定数(c0)が0.671nm程度であるフレーク状の形状をした微粒子の集合体の結晶性炭素材料である。
【0036】
形態としては、微細で、巨視的に鱗片状であって、大きな異方性とアスペクト比を有している。このため、充填性、潤滑性、導電性、及び遮光性等に優れることになり、例えば、遮光性や黒色度の高い塗料が得られディスプレイ用材料、導電性を利用した塗料や電磁波シールド材のフィラー、自己潤滑性を利用した潤滑剤、UVカット用インク等の機能性材料等へ幅広く利用できる。
【0037】
本発明の炭素材料は、以下の装置及び方法を用いることで製造することができる。
【0038】
熱プラズマ反応装置としては、図1に模式的に示すように、プラズマを発生させるプラズマトーチ1と、その下部に連設される真空チャンバー2と、周辺部に配設される高周波発生装置3とから構成されている。そして、真空チャンバー2には、内部を真空にするための真空ポンプ5をフィルター11を介して備え、また、ダイヤフラム真空ポンプ6を通じてフィルター補集装置12を備えた改質ガス捕集用バッグ4が連設されている。また、図示していないが、循環型冷却水により冷却されている。
【0039】
また、プラズマトーチ1は、図2に示すように、窒化珪素管1aの外側に石英管1bを配置した水冷二重構造のリングであって、その外周部には、高周波発生装置3と連結するRFコイル9がコイル状に巻く形で配設されている。また、その上部には、不活性ガス導入口7a,7bを備えた不活性ガス導入管7と、原料ガスである炭化水素化合物を導入するための炭化水素化合物導入口8aを備えた炭化水素化合物導入プローブ8とが連結されている。
【0040】
また、高周波発生装置3は、高周波発振機3aと高周波電源3bとから構成され、高周波発振機3aの出力は、原料ガスの種類や得ようとする炭素材料の形状により、適宜決定されるが、例えば、0.5〜35Kw(最大電極電圧(Ep)=12kV、最大陽極電流(IP)=5.8A)であり、発振周波数は3.5±0.5Mzであるのが好ましい。
【0041】
熱プラズマを発生するためのガス系は、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス、もしくはこの不活性ガスに水素、窒素のような2原子分子ガス、または炭酸ガスを付加した混合ガス気流とするのが好ましい。
【0042】
また、本発明の炭素材料を得るための炭化水素化合物原料としては、従来法により炭素材料の微粒子を製造し得るものであれば特に限定されないが,例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、デカン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素、エチレン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン等の不飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、スチレン等の芳香族炭化水素、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の多環芳香族炭化水素等が挙げられる。これらの中でも、汎用性、コスト面等からメタン、プロパンが特に好ましい。さらに、天然ガスは、例えば都市ガス等に利用されている13Aはメタンが88.0%、エタンが4.5%、プロパンが4.5%、ブタンが1.7%というように、メタンを主成分とする炭化水素ガスで、汎用性もあるので、炭化水素化合物原料として有用である。
【0043】
これらの炭化水素化合物あるいは炭素質原料は、液体のものは予め加熱気化させて熱プラズマ流滞域に導入するか、噴霧させて微細液滴としてガス状で導入する。また、熱プラズマ流滞域への原料の導入は必ずしも炭化水素化合物あるいは炭素質原料を単独でなくてもよく、熱プラズマ発生用不活性ガス、あるいは炭酸ガス等を混合した混合ガスと混ぜ合わせて導入してもよい。
【0044】
また、このような原料の導入量は熱プラズマ流滞域を形成させる出力パワーに左右され、出力が高い高周波の熱プラズマほど、原料の導入量を増やすことができ、また改質効率が向上する。
【0045】
製造プロセスは、先ず不活性ガス導入管7の不活性ガス導入口7a,7bから不活性ガスを導入して系内に送入し、高周波発生装置3からRFコイル9に、例えば周波数3.5±0.5Mzで電力を負荷して熱プラズマ10を発生させる。次いで、炭化水素化合物を炭化水素化合物導入口8aから導入し、炭化水素化合物導入プローブ8から熱プラズマ中に吹き込む。この段階で炭化水素化合物は急速に熱分解して改質ガス、水素、炭素材料に転化され、真空チャンバー2で反応が完結した後、循環型冷却水により冷却され、改質ガスや水素は真空チャンバー2に連設されているダイヤフラム真空ポンプ6で吸引され、改質ガス捕集用バッグ4に捕集される。また、炭素材料は、改質ガスや水素ガスを採取した後、真空チャンバー2の内壁及び改質ガス捕集用バッグ4に備えられたフィルター補集装置12のフィルター部から回収される。
【0046】
上記のプロセスで、原料の炭化水素化合物が熱プラズマ内で完全に分解し、回収したガス中には原料の炭化水素化合物が含まれていない程度の炭化水素化合物の供給量や圧力、出力であれば箔片状結晶の炭素材料が得られる。具体的には、熱プラズマ発生用のガスは、例えば、プラズマ発生室を通過する流速が標準状態(25℃で101325Pa)で0.602m/sec以上になる量を供給し、熱プラズマ中に炭化水素化合物を導入する際および導入後の圧力は6kPa以上66.5kPa以下に保つことにより、厚さが10nm以下の箔片状結晶片を安定して得ることができる。また、導入する炭化水素化合物中の炭素量は、高周波の出力を大きくすることによって増加することができる。すなわち、高周波の出力調整により炭化水素化合物の導入量を制御することができる。炭化水素化合物の導入量は5L/min以上であることが好ましい。また、改質時の圧力を高くすることによりグラファイトの生成量が増加することから、圧力の制御によって箔片状結晶片の生成を制御することもできる。また、熱プラズマの発生は、プレート電力6kVA以上で高周波を印加することで行われる。尚、この印加は、先ず低出力でプラズマを発生させ、その後除々に出力を上げてプラズマを安定させた上で、所定の出力で炭化水素化合物の改質処理を行うのが好ましい。
【0047】
得られた炭素材料は、結晶の厚さ(Lc)が10nm以下、さらには5nm以下の箔片状結晶片を含有しているため、超微細であって、扁平フレーク状でアスペクト比が大きく、結晶性が良いものであるので、充填性、潤滑性に優れるばかりでなく、導電性、及び遮光性等にも優れることになる。このため、該炭素材料は、各種のマトリックス材料中に均質に分散・混合でき、マトリックス材料本来の加工性や成形性を損なうことなく添加することができる。又、導電性を有するので、各種のマトリックス材料にフィラーとして用いて成形したものは電波吸収特性に優れることになる。このため、例えば、該炭素材料を用いることで所望とする周波数に対応する電波吸収体を製造することができる。特に、無線LANにおいて、これまで屋外での使用が禁止されていた4.9GHz〜5.091GHz帯域が解放されて使用できるようになった場合に、この周波数帯域で、例えば4〜6mmといった厚みが薄くて電波吸収特性に優れる電波吸収体を提供することができる。
【0048】
上記の電波吸収体は、マトリックス材料に本発明の炭素材料を所定割合で添加して、公知の方法で製造することができる。炭素材料の添加割合としては、目的とする電波吸収特性や使用するマトリックス材料にもよるが、例えば、マトリックス材料に50vol%以下の量を配合するのが好ましい。
【0049】
上記の電波吸収体に用いられるマトリックス材料としては、用途に応じた強度、耐熱性、成形性等の特性を有する有機高分子が主に用いられる。例えば、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、天然ゴム等の各種エラストマー、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、PVC樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられ、これらを必要に応じて混合して使用してよい。
【0050】
又、必要であれば溶剤、分散剤、可塑剤、架橋剤、老化防止剤、加硫促進剤等を添加してもよい。又、有機高分子の他に、珪酸カルシウム成形材、ALC、気泡コンクリート等の無機質基材に分散混入してもよい。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図を参照しながら説明する。尚、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
【0052】
<実施例1>
図1、2に示す装置を用い、炭化水素化合物としてメタンを用い、不活性ガスとしてアルゴンガスとし、これに水素ガスを混合した混合ガスでプラズマを発生させ、該プラズマによりメタンを熱分解して、炭素材料、改質ガス(アセチレン、水素)を生成した。
【0053】
先ず、真空チャンバー2内を真空ポンプ5で0.13kPa以下の減圧状態にして、アルゴンガスを不活性ガス導入管7から50kPaまで導入し、再度減圧状態にするパージ操作を3回繰り返した後、真空チャンバー2内に不活性ガス導入管7からアルゴンガスを10L/minで供給し、真空チャンバー2内の圧力が約10kPaの条件下で熱プラズマ10を点火した。次にアルゴンガス(供給量60L/min)を供給し、真空チャンバー内の圧力が33.2kPaとし、高周波発振機3aの出力を上昇させた後、熱プラズマ10を収縮させるためにアルゴンガス(供給量60L/min)に水素ガス(供給量10L/min)を混合し、高周波発振機3aのプレート電力を44.0kVAまで上げてプラズマを安定させた。この際の供給したアルゴンガスと水素の混合ガスが図1のトーチ内を通過する流速は、標準状態(25℃で101325Pa)で0.845m/sec程度である。尚、熱プラズマ反応装置は、日本電子社製の熱プラズマ反応炉試験装置JEOL34KWを用いた。
【0054】
その後、メタンのキャリアー用ガスとしてアルゴンガスを3.0L/minの流量で炭化水素化合物導入プローブ8に流した後、メタンを36.7L/minで2分間供給した。尚、使用した炭化水素化合物導入プローブ8の内径は1.76mmとした。また、真空チャンバー2内の圧力は33.2kPaで行った。
【0055】
メタンの熱分解で生成された改質ガスであるアセチレンガス(C2H2)、及び水素ガス(H2)はダイヤフラム真空ポンプ6(ULVAC社製 DA−15D)で吸引し、改質ガス捕集用バッグ4に採取した。採取後、メタン、キャリアー用アルゴンガスの順に供給を停止した後、高周波発振機3aの出力を低下させ、熱プラズマ10を消火した。
【0056】
次いで、真空チャンバー2内に大気を導入し、真空チャンバー2内が大気圧に到達した後、真空チャンバー2の内壁、及びフィルター補集装置12のフィルター部に付着している炭素材料を回収した。
【0057】
回収したそれぞれの炭素材料について、透過電子顕微鏡(TEM:Topcon社製 EM−002B)を用いて炭素材料の形状を観察した。観察は、加速電圧200kVで行った。そして、フィルター部から回収した炭素材料AのTEM写真(倍率130千倍)を図3に示す。また、フィルター部より回収した炭素材料Aの粒子群に電子線を照射して得られた電子線回析像の写真を図4に示す。
【0058】
図3から、回収された炭素材料Aは、いずれも一辺の長さが数十nmから百数十nm、厚さは10nm以下の箔片状結晶片の集合体であることが確認された。結晶の厚みは、透過電子顕微鏡を用いて結晶の断面を適宜の倍率で撮影し、その写真のネガを等倍に印刷し、対象の部分の長さを測定し、測定した長さと倍率から求めた。その結果、殆んど全ての粒子の厚さは5nm以下であった。また、結晶構造は、図4に示す炭素材料Aの粒子群に電子線を照射して得られた電子線回析像から2H構造であると判定した。
【0059】
<実施例2>
実施例1において、メタンの供給をプラズマ発生ガスであるアルゴンガスと水素ガスの混合ガスにメタンを混合することで行った以外は、実施例1と同様の装置及び方法で、メタンを熱分解して炭素材料、改質ガス(アセチレン、水素)を生成した。
【0060】
先ず、実施例1で使用した装置を用いて、実施例1と同様の方法で熱プラズマ10を発生させ、次にアルゴンガス(供給量60L/min)を供給し、真空チャンバー内の圧力が33.2kPaとし、高周波発振機3aの出力を上昇させた後、プラズマを収縮させるためにアルゴンガスに水素ガスを混合し、プレート電力を42.1kVAまで上げプラズマを安定させた。この際の供給したアルゴンガスと水素の混合ガスが図1のトーチ内を通過する流速は、標準状態(25℃で101325Pa)で0.845m/sec程度である。
【0061】
その後、アルゴンガス(供給量60L/min)に水素ガス(供給量10L/min)の混合ガスにメタン24.5L/minを混合して、不活性ガス導入管7から導入して供給した。尚、真空チャンバー2内の圧力は33.2kPaで行った。
【0062】
供給を開始して2分後に、実施例1と同様の方法で改質ガス及び水素ガスを採取した。採取後、メタンの供給を停止して、高周波発振機3aの出力を低下させて熱プラズマを消火した。
【0063】
次いで、実施例1と同様に、真空チャンバー2内に大気を導入し、真空チャンバー2内が大気圧に到達した後、真空チャンバー2の内壁、及びフィルター補集装置12のフィルター部に付着している炭素材料Bを回収した。
【0064】
回収した炭素材料Bについて、実施例1と同様にしてその形状を観察した。そして、炭素材料BのTEM写真(倍率130千倍)を図5に示す。
【0065】
図5から、生成した炭素材料Bは、一辺の長さが数十nmから百数十nm、厚さは数nmの箔片状結晶片の集合体であることが確認された。そして、この箔片状結晶片は、実施例1で得られた炭素材料と同形状を呈していた。尚、結晶の長さ、厚み、及び結晶構造は、実施例1と同様にして判定した。
【0066】
<実施例3>
実施例1において、プラズマ発生ガスとしてアルゴンガスと炭酸ガスの混合ガスを用いた以外は、実施例1と同様の装置及び方法で、メタンを熱分解して炭素材料、改質ガス他を生成した。
【0067】
先ず、実施例1で使用した装置を用いて、実施例1と同様の方法で熱プラズマを発生させ、次にアルゴンガス(供給量60L/min)を供給し、真空チャンバー内の圧力が33.2kPaとし、高周波発振機3aの出力を上昇させた後、プラズマを収縮させるためにアルゴンガス(供給量60L/min)に炭酸ガス(供給量51L/min)を混合し、プレート電力を41.3kVAまで上げプラズマを安定させた。次にアルゴンの供給量を50L/minに減じた。この際の供給したアルゴンガスと炭酸ガスの混合ガスが図1のトーチ内を通過する流速は、標準状態(25℃で101325Pa)で1.215m/sec程度である。
【0068】
その後、メタンのキャリアー用ガスとしてアルゴンガスを3.0L/minの流量で炭化水素化合物導入プローブ8に流した後、メタンを34L/minで2分間供給した。尚、真空チャンバー2内の圧力は33.2kPaで行った。
【0069】
メタンの熱分解で生成された改質ガス及び水素ガスは実施例1と同様の方法で採取した。採取後、メタン、キャリアー用アルゴンガスの順に供給を停止した後、高周波発振機3aの出力を低下させ、熱プラズマ10を消火した。
【0070】
次いで、実施例1と同様に、真空チャンバー2内に大気を導入し、真空チャンバー2内が大気圧に到達した後、真空チャンバー2の内壁、及びフィルター補集装置12のフィルター部に付着している炭素材料Cを回収した。
【0071】
回収した炭素材料Cについて、実施例1と同様にしてその形状を観察した。そして、回収した炭素材料CのTEM写真(倍率88千倍)を図6に示す。また、フィルター部より回収した炭素材料Cの粒子群に電子線を照射して得られた電子線回析像の写真を図7に示す。
【0072】
図6から、生成した炭素材料Cは、一辺の長さが数十nmから百数十nm、厚さは数nmの箔片状結晶片の集合体であることが確認された。そして、この箔片状結晶片は、実施例1で得られた炭素材料と同形状を呈しており、また、大きさもほぼ同等であった。また、結晶構造は、図7に示す炭素材料Cの粒子群に電子線を照射して得られた電子線回析像から2H構造であると判定した。尚、結晶の長さ、厚み、及び結晶構造は、実施例1と同様にして判定した。
【0073】
<実施例4>
実施例3において、アルゴンガス(供給量60L/min)を供給し、真空チャンバー内の圧力を26.6kPaとし、高周波発振機3aの出力を上昇させた後、プラズマを収縮させるためにアルゴンガス(供給量60L/min)に炭酸ガスを混合し始め、プレート電力を20.3kVAとした時に、炭酸ガスの供給量は50L/minであった。次に真空チャンバー内の圧力を46.5kPaとし、アルゴンの供給量を86L/min、炭酸ガス量を60L/minに調整し、プレート電力を45kVAに設定した。この時のアルゴンガスと炭酸ガスの混合ガスが図1のトーチ内を通過する流速は、標準状態(25℃で101325Pa)で1.757m/sec程度である。
【0074】
その後、メタンのキャリアー用ガスとしてアルゴンガスを4.0L/minの流量で炭化水素化合物導入プローブ8に流した後、メタンを60L/minで8分間供給した。尚、真空チャンバー2内の圧力は46.5kPaで行った。
【0075】
メタンの熱分解で生成された改質ガス及び水素ガスは実施例1と同様の方法で採取した。採取後、メタン、キャリアー用アルゴンガスの順に供給を停止した後、高周波発振機3aの出力を低下させ、熱プラズマ10を消火した。
【0076】
次いで、実施例1と同様に、真空チャンバー2内に大気を導入し、真空チャンバー2内が大気圧に到達した後、真空チャンバー2の内壁、及びフィルター補集装置12のフィルター部に付着している炭素材料Dを回収した。
【0077】
回収した炭素材料Dについて、電子顕微鏡(日本電子(株)製JEM−2010)を用いてその形状を観察した。観察は、加速電圧5kVで行った。図8にフィルター部から回収した炭素材料DのSEM写真(倍率100千倍)を示す。また比較のために実施例1の炭素材料Aについても電子顕微鏡で形状を観察した。図9に炭素材料AのSEM写真(倍率100千倍、観察時の加速電圧は15kV)を示す。図8から生成した炭素材料Dは、一辺の長さが数十nmから百数十nm、厚さは数nmの箔片状結晶片の集合体であることが確認された。しかしながら図9の炭素材料Aと比較すると炭素材料Dは一辺の長さは短く、結晶の大きさは小さい。
【0078】
<実施例5>
実施例3において、アルゴンガス(供給量60L/min)を供給し、真空チャンバー内の圧力を26.6kPaとし、高周波発振機3aの出力を上昇させた後、プラズマを収縮させるためにアルゴンガス(供給量60L/min)に炭酸ガスを混合し始め、プレート電力を11kVAとした時に、炭酸ガスの供給量は20L/minであった。次に、真空チャンバー内の圧力は一定のままアルゴンの供給量を86L/min、炭酸ガス量を30L/minに調整し、プレート電力を35.5kVAに設定した。次にアルゴンガスの供給量を56L/minに調整した。この時アルゴンと炭酸ガスの混合ガスの流速は、標準状態(25℃で101325Pa)で1.035m/sec程度である。
【0079】
その後、メタンのキャリアー用ガスとしてアルゴンを4.0L/minの流量で炭化水素化合物導入プローブ8に流した後、メタンを30L/minで8分間供給した。尚、真空チャンバー2内の圧力は26.5kPaで行った。
【0080】
メタンの熱分解で生成された改質ガス及び水素ガスは実施例1と同様の方法で採取した。採取後、メタン、キャリアー用アルゴンガスの順に供給を停止した後、高周波発振機3aの出力を低下させ、熱プラズマ10を消火した。
【0081】
次いで、実施例1と同様に、真空チャンバー2内に大気を導入し、真空チャンバー2内が大気圧に到達した後、真空チャンバー2の内壁、及びフィルター補集装置12のフィルター部に付着している炭素材料Eを回収した。
【0082】
回収した炭素材料Eについて、電子顕微鏡を用いてその形状を観察した。観察は、加速電圧5kVで行った。図10にフィルター部から回収した炭素材料EのSEM写真(倍率100千倍)を示す。図10から生成した炭素材料Eは、一辺の長さが数十nmから百数十nm、厚さは数nmの箔片状結晶片の集合体であることが確認された。しかしながら図8の炭素材料Dおよび図9の炭素材料Aと比較すると炭素材料Eの一辺の長さは長く、結晶の大きさはやや大きい。
【0083】
実施例1〜5により得られた炭素材料A〜Cの箔片状結晶片の窒素比表面積の測定し、その結果を表1に示す。尚、N2ガスによるBET比表面積は高速比表面積測定装置(アサップ2000;(株)島津製作所製)を用いて測定を行った。
【0084】
【表1】
【0085】
表1の結果より、窒素比表面積が250〜350m2/gで、通常のカーボンブラックに比べて比表面積が大きいことが確認された。これによって、本発明の炭素材料は密着性や導電性に優れているといえる。
【0086】
実施例1、4、5により得られた炭素材料A、D、Eの箔片状結晶片のラマンスペクトルを測定し、その結果を図12に示す。尚、ラマンスペクトルは顕微ラマン(JRS−SYSTEM2000;日本電子(株))を用い、He−Neレーザー(632.8nm)を光源として測定を行った。グラファイトのラマンスペクトルは他の化合物には例がないほど構造欠陥に対して著しく敏感であり、このため炭素材料の評価方法として有用である。(資料:最新の炭素材料実験技術(分析・解析編)、第11章 ラマン分光法による構造分析、P91)
【0087】
炭素材料Aは透過電子顕微鏡の電子線回折結果から2Hのグラファイトであることが明らかであり、図11においてグラファイトの本来のGバンド(1,580cm−1)と構造の乱れに起因するDバンド(1,330cm−1付近)とD’バンド(1,620cm−1付近)が認められる。炭素材料D、Eは炭素材料Aと同様のラマンスペクトルを示すことから、炭素材料D、Eもグラファイトと考えられる。しかしながら、炭素材料D、Eは炭素材料Aと比較して構造の乱れに起因するD、D’バンドの強度が弱いため、炭素材料Aよりも結晶性が良いと推測される。
【0088】
<電波吸収体の吸収特性>
次に、上記の実施例1、4及び5で得られた炭素材料A、D及びEを用いて、電波吸収体としての適用について検証した。
【0089】
先ず、上記の実施例1、4及び5で得られた炭素材料A、D及びEについて、各炭素材料を2.5wt%及び5.0wt%の2種の含有率でパラフィン(融点mp70〜72℃、比誘電率εr=2.2)と混合し、外径7mm、内径3mm、厚さ約2mmの中空二重円筒型に成型した。この成型体について、1〜10GHzの周波数帯域でネットワークアナライザ(Agilent Technologies社製8720D)を用い、同軸管法によるSパラメータ測定を行った。入射した高周波の強度は100mWとした。得られた反射係数及び透過係数から、資料1に報告されているBaker−Jarvis法(資料1:Microwave Theory Tech.,38,p1096−1103(1990))により複素比誘電率εrを算出した。得られた複素比誘電率εrのデータについて、2.5wt%及び5.0wt%の含有量毎で1〜10GHz周波数滞域での周波数と複素比誘電率εrとの関係を図8及び図9に示した。ここで、図8は含有率2.5wt%での周波数と複素比誘電率εrとの関係を各炭素材料別に示す図であり、(a)は周波数と複素比誘電率εrの実部ε’との関係、(b)は周波数と複素比誘電率εrの虚部ε”との関係を示す。又、図9は含有率5.0wt%での周波数と複素比誘電率εrとの関係を各炭素材料別に示す図であり、(a)は周波数と複素比誘電率εrの実部ε’との関係、(b)は周波数と複素比誘電率εrの虚部ε”との関係を示す。
【0090】
図8(a)、(b)及び図9(a)、(b)より、炭素材料E>炭素材料A,Dの順に複素比誘電率εrは小さくなることが検証された。
【0091】
反射損失(電波吸収量)の算出は、厚さdの吸収体の裏に金属板が置いてあるインピーダンス整合型のモデルを用いて行われる。炭素材料のように磁性を有していないフィラーを用いた吸収体において、該吸収体に電波が垂直に入射する場合、吸収体表面から金属板を見込む試料のインピーダンスZは電波の波長λ、複素比誘電率εr、特性インピーダンス(自由空間のインピーダンス)Z0を用いて下記の(1)式のように表される。このモデルにおいては、吸収が最大、つまり反射が最小となる条件は下記の(2)式に示す反射係数Sが最小の時である。このとき入射面から見たインピーダンスZは自由空間のインピーダンスZ0と等しくなる。また、反射損失(S[dB])は下記の(3)式のように書くことができ、Sがf(λ=c/f)とdを含むことから、(1)〜(3)式を用いて試験体の厚さdを変えた場合の反射損失を算出することができる。
【0092】
そこで、この複素比誘電率εrから、下記の(1)式より種々の試料厚さdでの炭素材料を含有した吸収体表面でのインピーダンスZを算出し、算出したインピーダンスZにより、下記の(3)式より反射損失(S[dB])を求めた。ここで、反射損失(S[dB])はデシベル(dB)単位で表したが、−10dBで90%吸収(10%反射)、−20dBで99%吸収(1%反射)を示す。この値を目安として電波吸収体を設計・製造することが出来る。
【0093】
吸収量S[dB]の一例として、炭素材料Eを5.0wt%含有した厚み3.8mmの吸収体試料の吸収特性を図10に示す。この試料は、図10で示すように、7.7GHzの周波数において吸収量が40dBで、電波吸収性に優れていることが分かった。このように、本発明の炭素材料の含有量を適宜選定して最適化すれば、1〜10GHzで吸収量が大きい吸収体を得ることができることが検証された。
【0094】
【数1】
【0095】
【数2】
【0096】
【数3】
【0097】
<電波吸収体の設計>
炭素材料を含有した炭素複合材料の誘電率の体積分率及び周波数依存性をモデル化して解析することで、吸収体の設計が可能であることが資料2に報告されている(資料2:Transactions of the Materials Research Society of Japan, 29[5],p2511−2514(2004))。
【0098】
資料2によると、電波吸収体の設計手法は、上記の電波吸収体の吸収特性で述べたようにして、先ず炭素材料の重量分率ごとの複素比誘電率εrを算出し、算出した複素比誘電率εrの実部ε’及び虚部ε”の値から下記の(4)式を用いてフィッティングを行い、決定したフィッティングパラメータを用いて複素比誘電率εrの重量分率・周波数依存性をモデル化したモデル式による近似曲線と、下記の(5)式を用いて完全吸収するための無反射曲線とを求め、次いで、この無反射曲線と重量分率・周波数依存性をモデル化した近似曲線との関係から完全吸収を起こす重量分率と吸収体厚みを算出することができると報告されている。
【0099】
【数4】
【0100】
尚、完全吸収するための条件式は、下記の(5)式となる。すなわち、完全吸収をするためには、電波吸収体の表面からのインピーダンスZが平面波(電波)の特性インピーダンス(自由空間のインピーダンス)Z0と等しくすればよいので、上記の(1)式において、Z=Z0とすることで求めることができる。尚、周波数と厚さの関係で表すために波長λ=光速c/周波数fから(1)式を変形した。
【0101】
【数5】
【0102】
そこで、発明者らは、実施例1、4及び5で得られた炭素材料A、D及びEを用いた電波吸収体の設計を検証した。すなわち、上記の電波吸収体の吸収特性で述べたようにして、炭素材料の重量分率ごとの複素比誘電率εrを算出し、この複素比誘電率εrの実部ε’及び虚部ε”から上記の(4)式を用いてフィッティングを行い、決定したフィッティングパラメータを用いて複素比誘電率εrとの重量分率・周波数依存性をモデル化したモデル式による近似曲線と、上記の(5)式により求めた無反射曲線とから、周波数5GHzで完全吸収を起こす電波吸収体を設計した。
【0103】
上記の(5)式により、周波数fと吸収体の厚さd、又は、波長λと吸収体の厚みdを変化させ、複素比誘電率εr(εr=ε’−jε”)の実部ε’と虚部ε”の解を求め、ε’−ε”平面上にプロットした無反射曲線と、上記の(4)式によりフィッティングを行い、決定したフィッティングパラメータを用いて複素比誘電率εrの重量分率・周波数依存性をモデル化したモデル式で、重量分率と周波数を変化させ、複素比誘電率εrの実部ε’と虚部ε”の解を求め、ε’−ε”平面上にプロットした近似曲線とを炭素材料別に同一のε’−ε”平面上に描き、図11、図12及び図13に示した。そして、これらの曲線が交差する点を求めた。この交差する点が、完全吸収をするための吸収体厚さと重量分率を示す。
【0104】
ここで、図11は実施例1で得られた炭素材料Aを用いた場合の無反射曲線と、周波数5GHzでの重量分率依存性をモデル化したモデル式による近似曲線を示したものであり、図12は実施例4で得られた炭素材料Dを用いた場合の無反射曲線と周波数5GHzでの重量分率依存性をモデル化したモデル式による近似曲線を示したものであり、図13は実施例5で得られた炭素材料Eを用いた場合の無反射曲線と周波数5GHzでの重量分率依存性をモデル化したモデル式による近似曲線を示したものである。
【0105】
これらの結果から、各炭素材料別での吸収体に必要な重量分率と吸収体厚さを表2に示した。
【0106】
【表2】
【0107】
上記の結果より、炭素材料A、D及びEは、重量分率を適宜選定することで、周波数5GHzに対応した薄型の吸収体が作製可能であることが明らかとなった。
【0108】
このようにして、目的とする周波数に対応した電波吸収体の厚さと炭素材料の添加量を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の炭素材料の製造装置を模式的に示す図である。
【図2】本発明の炭素材料の製造装置のプラズマトーチ部分の断面を示す図である。
【図3】実施例1のフィルター部より回収の炭素材料の透過電子顕微鏡写真(130千倍)である。
【図4】実施例1のフィルター部より回収の炭素材料の粒子群に電子線を照射して得られた電子線回析像の写真である。
【図5】実施例2のフィルター部より回収の炭素材料の透過電子顕微鏡写真(130千倍)である。
【図6】実施例3のフィルター部より回収の炭素材料の透過電子顕微鏡写真(88千倍)である。
【図7】実施例3のフィルター部より回収した炭素材料の粒子群に電子線を照射して得られた電子線回析像の写真である。
【図8】実施例4のフィルター部より回収した炭素材料の電子顕微鏡写真(100千倍)である。
【図9】実施例1のフィルター部より回収した炭素材料の電子顕微鏡写真(100千倍)である。
【図10】実施例5のフィルター部より回収した炭素材料の電子顕微鏡写真(100千倍)である。
【図11】実施例1、4、5のフィルター部より回収した炭素材料A、D、Eのラマンスペクトルの図である。
【図12】含有率2.5wt%での周波数と複素比誘電率εrとの関係を各炭素材料別に示す図であり、(a)は実部ε’、(b)は虚部ε”である。
【図13】含有率5.0wt%での周波数と複素比誘電率εrとの関係を各炭素材料別に示す図であり、(a)は実部ε’、(b)は虚部ε”である。
【図14】炭素材料Eを5.0wt%含有した厚み3.8mmの吸収体の周波数と吸収量との関係を示す図である。
【図15】実施例1で得られた炭素材料Aを用いた場合の無反射曲線と周波数5GHzでの重量分率依存性をモデル化したモデル式による近似曲線を示す図である。
【図16】実施例4で得られた炭素材料Dを用いた場合の無反射曲線と周波数5GHzでの重量分率依存性をモデル化したモデル式による近似曲線を示す図である。
【図17】実施例5で得られた炭素材料Eを用いた場合の無反射曲線と周波数5GHzでの重量分率依存性をモデル化したモデル式による近似曲線を示す図である。
【符号の説明】
【0110】
1 プラズマトーチ(プラズマ発生室)
2 真空チャンバー
3 高周波発生装置
4 改質ガス捕集用バッグ
5 真空ポンプ
6 ダイヤフラム真空ポンプ
7 不活性ガス導入管
8 炭化水素化合物導入プローブ
9 RFコイル
10 プラズマ
11 フィルター
12 フィルター補集装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素化合物をプラズマ熱分解して得られる結晶性の炭素材料であって、
結晶の厚さ(Lc)が10nm以下である箔片状結晶片を含有する炭素材料。
【請求項2】
前記箔片状結晶片の厚さ(Lc)が5nm以下である請求項1記載の炭素材料。
【請求項3】
前記箔片状結晶片を、前記炭素材料の結晶片数の90%以上含有する請求項1または2に記載の炭素材料。
【請求項4】
前記炭化水素化合物が天然ガスである請求項1から3いずれかに記載の炭素材料。
【請求項5】
前記炭化水素化合物がメタン及び/又はプロパンである請求項1から3いずれかに記載の炭素材料。
【請求項6】
不活性ガスによるプラズマを発生させた後、当該プラズマ内に炭化水素化合物を導入して、前記炭化水素化合物のプラズマ熱分解を行う炭素材料の製造方法であって、
プラズマ発生室内の圧力が6kPa以上で66.5kPa以下の減圧雰囲気で、標準状態(25℃で101325Pa)におけるガスの流速が0.602m/sec以上になるように不活性ガスを供給し、プレート電力6kVA以上の高周波を印加した後、前記炭化水素化合物を5L/min以上導入して、前記炭化水素化合物の熱分解を行う、請求項1から5いずれかに記載の炭素材料の製造方法。
【請求項7】
不活性ガス及び水素の混合ガスからプラズマを発生させた後、当該プラズマ内に炭化水素化合物を導入して、前記炭化水素化合物のプラズマ熱分解を行う炭素材料の製造方法であって、
プラズマ発生室内の圧力が6kPa以上で66.5kPa以下の減圧雰囲気で、標準状態(25℃で101325Pa)におけるガスの流速が0.602m/sec以上になるように不活性ガスと水素の混合ガスを供給し、プレート電力6kVA以上の高周波を印加した後、前記炭化水素化合物を5L/min以上導入して、前記炭化水素化合物の熱分解を行う、請求項1から5いずれかに記載の炭素材料の製造方法。
【請求項8】
不活性ガス及び二酸化炭素の混合ガスからプラズマを発生させた後、当該プラズマ内に炭化水素化合物を導入して、前記炭化水素化合物のプラズマ熱分解を行う炭素材料の製造方法であって、
プラズマ発生室内の圧力が6kPa以上で66.5kPa以下の減圧雰囲気で、標準状態(25℃で101325Pa)におけるガスの流速が0.602m/sec以上になるように不活性ガスと二酸化炭素の混合ガスを供給し、プレート電力6kVA以上の高周波を印加した後、前記炭化水素化合物を5L/min以上導入して、前記炭化水素化合物の熱分解を行う、請求項1から5いずれかに記載の炭素材料の製造方法。
【請求項9】
前記不活性ガスとしてアルゴンガスを用いる請求項6から8いずれかに記載の炭素材料の製造方法。
【請求項10】
前記炭化水素化合物として天然ガスを用いる請求項6から9いずれかに記載の炭素材料の製造方法。
【請求項11】
前記炭化水素化合物としてメタン及び/又はプロパンを用いる請求項6から9いずれかに記載の炭素材料の製造方法。
【請求項12】
前記プラズマとして高周波プラズマを用いる請求項6から11いずれかに記載の炭素材料の製造方法。
【請求項13】
請求項1から5いずれかに記載の炭素材料を用いた電波吸収体。
【請求項14】
請求項6から12いずれかに記載の炭素材料の製造方法から得られた炭素材料を用いた電波吸収体。
【請求項1】
炭化水素化合物をプラズマ熱分解して得られる結晶性の炭素材料であって、
結晶の厚さ(Lc)が10nm以下である箔片状結晶片を含有する炭素材料。
【請求項2】
前記箔片状結晶片の厚さ(Lc)が5nm以下である請求項1記載の炭素材料。
【請求項3】
前記箔片状結晶片を、前記炭素材料の結晶片数の90%以上含有する請求項1または2に記載の炭素材料。
【請求項4】
前記炭化水素化合物が天然ガスである請求項1から3いずれかに記載の炭素材料。
【請求項5】
前記炭化水素化合物がメタン及び/又はプロパンである請求項1から3いずれかに記載の炭素材料。
【請求項6】
不活性ガスによるプラズマを発生させた後、当該プラズマ内に炭化水素化合物を導入して、前記炭化水素化合物のプラズマ熱分解を行う炭素材料の製造方法であって、
プラズマ発生室内の圧力が6kPa以上で66.5kPa以下の減圧雰囲気で、標準状態(25℃で101325Pa)におけるガスの流速が0.602m/sec以上になるように不活性ガスを供給し、プレート電力6kVA以上の高周波を印加した後、前記炭化水素化合物を5L/min以上導入して、前記炭化水素化合物の熱分解を行う、請求項1から5いずれかに記載の炭素材料の製造方法。
【請求項7】
不活性ガス及び水素の混合ガスからプラズマを発生させた後、当該プラズマ内に炭化水素化合物を導入して、前記炭化水素化合物のプラズマ熱分解を行う炭素材料の製造方法であって、
プラズマ発生室内の圧力が6kPa以上で66.5kPa以下の減圧雰囲気で、標準状態(25℃で101325Pa)におけるガスの流速が0.602m/sec以上になるように不活性ガスと水素の混合ガスを供給し、プレート電力6kVA以上の高周波を印加した後、前記炭化水素化合物を5L/min以上導入して、前記炭化水素化合物の熱分解を行う、請求項1から5いずれかに記載の炭素材料の製造方法。
【請求項8】
不活性ガス及び二酸化炭素の混合ガスからプラズマを発生させた後、当該プラズマ内に炭化水素化合物を導入して、前記炭化水素化合物のプラズマ熱分解を行う炭素材料の製造方法であって、
プラズマ発生室内の圧力が6kPa以上で66.5kPa以下の減圧雰囲気で、標準状態(25℃で101325Pa)におけるガスの流速が0.602m/sec以上になるように不活性ガスと二酸化炭素の混合ガスを供給し、プレート電力6kVA以上の高周波を印加した後、前記炭化水素化合物を5L/min以上導入して、前記炭化水素化合物の熱分解を行う、請求項1から5いずれかに記載の炭素材料の製造方法。
【請求項9】
前記不活性ガスとしてアルゴンガスを用いる請求項6から8いずれかに記載の炭素材料の製造方法。
【請求項10】
前記炭化水素化合物として天然ガスを用いる請求項6から9いずれかに記載の炭素材料の製造方法。
【請求項11】
前記炭化水素化合物としてメタン及び/又はプロパンを用いる請求項6から9いずれかに記載の炭素材料の製造方法。
【請求項12】
前記プラズマとして高周波プラズマを用いる請求項6から11いずれかに記載の炭素材料の製造方法。
【請求項13】
請求項1から5いずれかに記載の炭素材料を用いた電波吸収体。
【請求項14】
請求項6から12いずれかに記載の炭素材料の製造方法から得られた炭素材料を用いた電波吸収体。
【図1】
【図2】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2007−290957(P2007−290957A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−94546(P2007−94546)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(591282205)島根県 (122)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(591282205)島根県 (122)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】
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