説明

炭素繊維束およびその製造方法

【課題】単繊維の本数が多く、かつ少ない電気量で電解酸化処理されても、複合材料としたときに、マトリックス樹脂との接着性が良好で、十分な強度を発揮できる炭素繊維束の提供、および単繊維の本数が多く、かつ少ない電気量で処理する場合でも、繊維束の内部まで均一に電解酸化処理できる炭素繊維束の製造方法の提供。
【解決手段】49000〜175000本の単繊維からなり、条件a(X線光電子分光法により測定される表面酸素濃度のCV値が8%以下。)と、条件b(サイクリックボルタンメトリー法により測定される、単位面積当たりに流れる電流値(ipa値)のCV値が5%以下。)を満たす炭素繊維束、および49000〜175000本の単繊維を束状にした、トウ幅8mm以上の炭素繊維を陽極として用い、接触給電方式により5秒以上電解酸化処理する炭素繊維束の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解酸化処理された炭素繊維束およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維束を補強材とする複合材料は、軽量で、かつ強度及び弾性率に優れていることから、スポーツやレジャー用品の構成部材として、あるいは宇宙航空機用部材として幅広い分野にわたり用途開発がなされ、実用化されている。
炭素繊維束は、通常、マトリックス樹脂に含浸させて複合材料として成型されるが、従来、炭素繊維束はマトリックス樹脂との接着性が必ずしも十分ではなかった。
そこで、炭素繊維束とマトリックス樹脂との接着性を高めるべく、炭素繊維束の繊維表面を活性化させるため、炭素繊維束には薬剤酸化処理、気相酸化処理、電解酸化処理等の表面処理が施される場合が多い。これらの表面処理方の中でも、特に電解酸化処理方法は操作性が良好で、反応制御が容易であり、実用的な表面処理方法である。
【0003】
近年、複合材料の用途や需要の拡大に伴い、複合材料の生産性を向上させる目的で、炭素繊維の前駆体繊維であるプレカーサー繊維を構成する単繊維の本数を増やす傾向にある。また、同時に焼成する炭素繊維束の糸条本数も増えており、それに伴い表面処理の均一性も求められている。
【0004】
しかし、単繊維の本数が多い炭素繊維束では電解酸化処理するに際し、繊維束の表面(外周部)側に位置する単繊維が、繊維束の内部側に位置する単繊維よりも電解酸化処理されやすいため、炭素繊維束はその内外で電解酸化処理が不均一になり、接着性や複合材料の特性(特に強度)が低下しやすい。すなわち、繊維束の内部側に位置する単繊維では酸化が進みにくく、繊維束の外周部側に位置する単繊維では酸化が進みすぎる。そのために繊維束の内部側に位置する単繊維は、電解酸化処理が不十分となりマトリックス樹脂との接着力が小さい。一方、繊維束の外周部側に位置する単繊維は酸化が十分であるため、マトリックス樹脂との接着力が十分に得られるものの、酸化の進みすぎによる繊維強度の低下を招きやすい。
このように、単繊維の本数が多い炭素繊維束は、繊維束の内部まで均一に電解酸化処理されにくく、その結果、複合材料としたときに、マトリックス樹脂との接着性が不十分であり、かつ十分な強度が発揮されにくかった。
【0005】
ところで、電解酸化処理による効果としては、炭素繊維束のマトリックス樹脂との接着性の向上だけでなく、炭素繊維束に対するマトリックス樹脂の含浸性(濡れ性)の向上も重要である。炭素繊維束に対するマトリックス樹脂の含浸性が繊維束の内外で不均一であると、繊維束では炭素繊維の強度を伝達する界面が存在しない部分を生じやすくなり、複合材料の特性に悪影響を与えることとなる。
【0006】
電解酸化処理による炭素繊維束の表面処理の方法は、これまで数多く報告されている。
例えば特許文献1には、陽極とした炭素繊維に、酸性電解質溶液中で断続的に給電することで、具体的には5秒通電、5秒停電を60回繰り返すなどして電解酸化処理することで、炭素繊維を表面処理する方法が開示されている。
特許文献1によれば、断続的に給電することにより、炭素繊維の結合酸素量を増加させると共に、酸素の結合状態を制御することができ、その結果、マトリックス樹脂に対する相溶性が向上し、強度の大きい複合材料を製造できるとしている。
【0007】
また、特許文献2には、印加電圧を10V以上とし、パルス給電間隔を給電時間が0.02秒以下、給電停止時間が給電時間の5倍以上となるように設定して電解酸化処理を行うことで、炭素繊維を表面処理する方法が開示されている。
特許文献2によれば、炭素繊維に間欠的にパルス給電を行うことにより、炭素繊維の中心部へのOHイオンの補給(無通電)と電解酸化(通電)とが交互に行われ、その結果、炭素繊維の中心部にも十分にOHイオンが存在するため酸化反応が起こり、均一な処理が得られるとしている。
【0008】
特許文献3には、処理電流波形を、炭素繊維表面電位が基準電極に対してプラスになる電流値Aとマイナスになる電流値Bとからなる矩形波とし、かつ、電流値A及びBの印加時間を所定の値とすることで、炭素繊維を表面処理する方法が開示されている。
特許文献3によれば、炭素繊維の表面電位を間欠的に変化させることによって、炭素繊維表面に形成される濃度分極層を薄くすることができ、電気力線が炭素繊維表面に均一に分散しやすくなるため、表面の脆弱層が形成されにくくなる。さらに、炭素繊維表面電位をマイナスにすることによって、生成された微量の脆弱層を除去することができる。また、電解液が繊維束の内部まで拡散しやすくなる。炭素繊維とマトリックス樹脂との接着力の低下は、炭素繊維表面に形成される脆弱層が原因と考えられるため、脆弱層の形成を抑制したり、生成された脆弱層を除去したりする特許文献3は、炭素繊維とマトリックス樹脂との接着力を向上できる。
【0009】
特許文献4には、還元率(=還元電気量/(酸化電気量+還元電気量))が0.001〜0.5となるように陽極酸化と陰極酸化を周期的に繰り返すことで、炭素繊維を表面処理する方法が開示されている。
特許文献4によれば、特定の還元率で陽極酸化と陰極酸化を周期的に繰り返すことにより、均一な表面処理効果が得られるとしている。
【0010】
特許文献5には、単繊維本数が24000本以上の炭素繊維束を陽極として、7.5〜45C/gの電気量をもって4秒以上電解酸化処理することで、炭素繊維束を表面処理する方法が開示されている。
特許文献5によれば、7.5〜45C/gの電気量で4秒以上電解酸化処理することにより、バラツキの少ない炭素繊維束が得られるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭63−264967号公報
【特許文献2】特開平1−298275号公報
【特許文献3】特開平7−207573号公報
【特許文献4】特開平10−266066号公報
【特許文献5】特開2002−38368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1〜5に記載の表面処理方法では、繊維束の内部まで均一に電解酸化処理することは必ずしも容易ではなかった。特に、特許文献4に記載の表面処理方法により得られる炭素繊維束は、界面せん断力で示される接着力のバラツキが30%以下程度に過ぎず、電解酸化処理のバラツキが顕著であった。
【0013】
また、特許文献1、2は、単一の繊維束を構成する単繊維の本数が少ない(4000〜6000本程度)炭素繊維束を表面処理する方法である。従って、単繊維の本数をさらに増やした炭素繊維束を表面処理する場合には十分な効果は得られず、繊維束の内部まで均一に電解酸化処理されにくかった。
また、特許文献3では、単繊維数が12000本の炭素繊維束を表面処理しており、特許文献1、2に比べると単繊維の本数は多い。しかし、近年では、炭素繊維の製造効率を向上させるために単繊維の本数はさらに増加しており、24000本以上の単繊維からなる、いわゆるラージトウと呼ばれる炭素繊維束が製造されている。このようなラージトウタイプの炭素繊維束に特許文献3に記載の表面処理方法を適用した場合には、繊維束の内部まで均一に電解酸化処理することが困難であった。
【0014】
さらに、特許文献4では、単繊維数が18000本と24000本の炭素繊維束をそれぞれ表面処理しているが、いずれの場合も単繊維間での接着力のバラツキは24%であり、繊維束の内部まで均一に電解酸化処理できていない。
また、特許文献5では、単繊維数が48000本の炭素繊維束を表面処理しているが、それ以上の本数の炭素繊維束を処理することについては言及していない。また、電解酸化処理する際の電気量が7.5〜45C/gと高く、電気量を下げると繊維束の内部まで十分かつ均一に電解酸化処理することが困難であった。
【0015】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、単繊維の本数が多く、かつ少ない電気量で電解酸化処理されても、複合材料としたときに、マトリックス樹脂との接着性が良好で、十分な強度を発揮できる炭素繊維束を提供することを課題とする。
また、単繊維の本数が多く、かつ少ない電気量で処理する場合でも、繊維束の内部まで均一に電解酸化処理できる炭素繊維束の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは鋭意検討した結果、電解酸化処理された炭素繊維束の表面酸素濃度のCV値、および単位面積当たりに流れる電流値のCV値を規定することで、単繊維の本数が多く、かつ少ない電気量で電解酸化処理されても、複合材料としたときにマトリックス樹脂との接着性が向上し、かつ十分な強度を発揮できることを見出した。
そこで、本発明者らは、炭素繊維束の各CV値と、電解酸化処理の条件、特に給電方式、電気量、処理時間等の条件との関係に着目した。そして、電解酸化処理の条件を最適化することで電解液の拡散効率が向上し、その結果、単繊維の本数が多く、かつ少ない電気量で処理する場合でも、繊維束の内部まで均一に電解酸化処理でき、マトリックス樹脂との接着性や含浸性の斑を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明の炭素繊維束は、49000〜175000本の単繊維からなり、以下の条件(a)、(b)を満たすことを特徴とする。
(a):X線光電子分光法により測定される表面酸素濃度のCV値{(表面酸素濃度の標準偏差/表面酸素濃度の平均値)×100}が8%以下。
(b):サイクリックボルタンメトリー法により測定される、単位面積当たりに流れる電流値(ipa値)のCV値{(ipa値の標準偏差/ipa値の平均値)×100}が5%以下。
【0018】
また、本発明の炭素繊維束の製造方法は、49000〜175000本の単繊維を束状にした、トウ幅8mm以上の炭素繊維を陽極として用い、接触給電方式により5秒以上電解酸化処理することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の炭素繊維束は、単繊維の本数が多く、かつ少ない電気量で電解酸化処理されても、複合材料としたときに、マトリックス樹脂との接着性が良好で、十分な強度を発揮できる。
また、本発明の炭素繊維束の製造方法によれば、単繊維の本数が多く、かつ少ない電気量で処理する場合でも、繊維束の内部まで均一に電解酸化処理できる。また、複合材料としたときに、マトリックス樹脂との接着性が良好で、十分な強度を発揮できる炭素繊維束を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に用いられる電解酸化装置の一例を示す概略図である。
【図2】非接触給電方式を採用した電解酸化装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の炭素繊維束は、49000〜17500以下の単繊維からなり、該単繊維を束状にした炭素繊維を電解酸化処理により表面処理することで得られる。
以下、本発明において電解酸化処理される、単繊維を束状にした炭素繊維を「処理前繊維束」という。
【0022】
処理前繊維束は、前駆体繊維束を焼成することで得られる。焼成方法としては公知の方法を採用することができ、例えば前駆体繊維束を耐炎化炉で耐炎化処理し、ついで炭素化炉で前炭素化処理および炭素化処理する方法が挙げられる。
前駆体繊維束としては、例えばポリアクリロニトリル系、ピッチ系、レーヨン系などが挙げられるが、コストと性能のバランスから、ポリアクリロニトリル系が好ましい。
【0023】
処理前繊維束を構成する単繊維の本数は49000〜175000であり、好ましくは60000〜175000である。
単繊維の本数を上記範囲内とする方法としては特に制限されないが、例えばトウボリュームの多い前駆体繊維を出発物質として用いる方法、トウボリュームの少ない前駆体繊維を複数、焼成工程の途中で合糸する方法などが挙げられる。
【0024】
本発明の炭素繊維束は、以下の条件(a)、(b)を満たす。
<条件(a)>
本発明の炭素繊維束は、X線光電子分光法により測定される表面酸素濃度(O/C)のCV値{(表面酸素濃度の標準偏差/表面酸素濃度の平均値)×100}が8%以下である。
表面酸素濃度(O/C)のCV値は、炭素繊維束の表面酸素濃度のバラツキの程度を表す指標である。CV値が8%を超えると、酸化が不均一に起こっているために、後述する電解酸化処理において少ない電気量で処理された炭素繊維束を複合材料としたときに、炭素繊維束のマトリックス樹脂に対する接着性が低下する。
【0025】
炭素繊維束の表面酸素濃度(O/C)およびそのCV値は、以下のようにして求めることができる。
まず、炭素繊維束を所定の長さに切断して、測定装置の試料ホルダーに両面テープを用いて固定し、光電子脱出速度を90°とし、測定装置の測定チャンバー内を1×10−6Paの真空に保つ。
測定時の帯電に伴うピークの補正として、まずC1S(表面炭素濃度)の主ピークの結合エネルギー値を285.6eVに合わせる。そして、C1Sのピーク面積を282〜296eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。一方、O1S(表面酸素濃度)のピーク面積を528〜540eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。
表面酸素濃度(O/C)は、先に求めたO1Sのピーク面積とC1Sのピーク面積の比を、装置固有の感度補正値で除すことにより算出した原子数比で求めることができる。
同様の操作を切断した3本の炭素繊維束について行い、それぞれについて表面酸素濃度(O/C)を求め、その平均値および標準偏差を算出し、下記式(1)によりCV値を求める。
CV値[%]=(表面酸素濃度の標準偏差/表面酸素濃度の平均値)×100 ・・・(1)
【0026】
<条件(b)>
本発明の炭素繊維束は、サイクリックボルタンメトリー法により測定される、単位面積当たりに流れる電流値(ipa値)のCV値{(ipa値の標準偏差/ipa値の平均値)×100}が5%以下である。
ipa値は炭素繊維束の表面特性ipaの指標であり、ipa値が高くなるほど炭素繊維束の表面積が大きいことを意味し、アンカー効果によりマトリックス樹脂との接着強度が向上する。ただし、ipa値のCV値が5%を超えると、酸化が不均一に起こっているために、後述する電解酸化処理において少ない電気量で処理された炭素繊維束を複合材料としたときに、炭素繊維束の特性(強度)が十分に発揮されず、複合材料の曲げ強度が低下する。
【0027】
炭素繊維束のipa値およびそのCV値は、特開昭60−246864号公報に開示されているサイクリックボルタンメトリー法によって求めることができる。
なお、本発明でいうサイクリックボルタンメトリー法とは、ポテンシオスタットとファンクションゼネレータとからなる分析装置において、作動電極として炭素繊維束を用い、その電流と電極電位(電圧)との関係を測定する方法のことである。
【0028】
具体的には、まず、5%リン酸水溶液を用いてpHを3とし、窒素をバブリングさせ容存酸素を除去した溶液を調製する。
この溶液に、参照電極としてAg/AgCl電極と、対電極として十分な表面積を有する白金電極と、作動電極として炭素繊維束とを差し込み、炭素繊維束の電流と電極電位を測定する。
電位操作範囲は−0.2〜0.8Vとし、電位操作速度は2mV/secとし、X−Yリコーダーにより電位−電流曲線を描き、3回以上掃引させ、曲線が安定した段階で、Ag/AgCl電極に対して、+0.4Vでの電位を標準にとって電流を読み取り、下記式(2)に従ってipa値を算出する。なお、式(2)において、「試料長」とは作動電極に用いた炭素繊維束の長手方向の長さであり、「目付」とは作動電極に用いた炭素繊維束の単位長さ当たりの重さのことである。
ipa値[μA/cm]=電流値[μA]/試料長[cm]×{4π×目付[g/m] ×単繊維数/密度[g/cm] }1/2 ・・・(2)
【0029】
同様の操作を切断した3本の炭素繊維束について行い、それぞれについてipa値を求め、その平均値および標準偏差を算出し、下記式(3)によりCV値を求める。
CV値[%]=(ipa値の標準偏差/ipa値の平均値)×100 ・・・(3)
【0030】
上述した条件(a)、(b)を満たす炭素繊維束は、処理前繊維束の長手方向に対してはもちろんのこと、処理前繊維束の径方向、すなわち内部まで均一に表面処理(電解酸化処理)することで得られる。単繊維束の内部まで均一に電解酸化処理するためには、処理前繊維束を陽極として用い、接触給電方式により処理前繊維束のトウ幅8mm以上、処理時間5秒以上の条件で行うことが重要である。
【0031】
処理前繊維束のトウ幅を8mm以上とすることで、単繊維数が49000本以上であっても繊維束の内部まで電解液が十分に拡散され、均一に電解酸化処理できる。なお、処理前繊維束のトウ幅が8mm未満であると、単繊維数が49000本以上の処理前繊維束を電解酸化処理する際に、繊維束の内部まで電解液が十分に拡散されにくく、均一に電解酸化処理されない。そのため、上述した条件、特に条件(b)を満足する炭素繊維束が得られにくくなる。
電解酸化処理する際の処理前繊維束のトウ幅は、製造される炭素繊維束の単繊維数により適宜決定されるが、単繊維数が49000〜175000本の間では、8mm以上が好ましい。また、トウ幅の上限については特に制限されないが、炭素繊維の生産性の観点から20mm以下が好ましい。
【0032】
また、電解酸化処理の処理時間を5秒以上とすることで、少ない電気量であっても繊維束の内部まで均一に電解酸化処理できる。なお、処理時間が5秒未満であると、十分な電解酸化処理効果を確保するために電気量を多くする必要がある。しかし、電気量が多くなると繊維束の内部まで均一に電解酸化処理されず、処理斑が生じやすくなる傾向にある。そのため、上述した条件、特に条件(b)を満足する炭素繊維束が得られにくくなる。
電解酸化処理する際の処理時間は長く設定しても効果が頭打ちになる。また、処理時間が長くなると工程の生産速度の低下を招いたり、電解酸化処理装置を大きくする必要があったりするため、炭素繊維束の製造コストが上がる結果となる。従って、処理時間は12秒以下が好ましい。
【0033】
処理前繊維束を電解酸化処理する際は、単繊維数24000本当たりの張力を4kg以下とするのが好ましい。単繊維数24000本当たりの張力が4kg以下であれば、繊維束の内部まで電解液がより十分に拡散されやすくなり、電解液拡散効率を容易に高めることができる。加えて、電解酸化処理中に処理前繊維束が毛羽立つのを抑制できるので、品質の高い炭素繊維束および複合材料が得られやすくなる。
【0034】
ここで、図1を用いて本発明の炭素繊維束の製造方法の一例について具体的に説明する。
図1は、本発明に用いられる、接触給電方式を採用した電解酸化装置の一例を示す概略図である。
ここで、「接触給電方式」とは、ロール状の電極を介して処理前繊維束に直接電気を付与することで、処理前繊維束に対して給電する方式のことである。
【0035】
図1に示す電解酸化装置1は、処理前繊維束11の走行方向に沿って、電解液が充填された1つの電解槽12が設置されている。該電解槽12は中に陰極13が配されており、陰極槽となっている。また、電解槽12の上流側および下流側には、ロール状の陽極14、15が設置され、該陽極14、15と陰極13とは直流電源16に接続されている。さらに、陽極14の上流側、および陽極15の下流側には、それぞれ処理前繊維束11を搬送する搬送ロール17、17が設置されている。
搬送ロール17としては、処理前繊維束11のトウ幅を規制できる溝を表面に有する溝ロールが好ましい。溝ロールを用いれば、電解酸化処理される処理前繊維束11のトウ幅を所望の大きさに調節しやすい。
電解槽12に充填される電解液としてはアルカリ性電解質水溶液が好ましく、アルカリ性電解質としては炭酸水素アンモニウム塩が好適である。なお、電解質として酸性電解質、特に硝酸を用いる場合もあるが、酸性電解質を用いる場合は陽極が腐食することがあるため、アルカリ性電解質を用いるのがよい。
【0036】
処理前繊維束11は、搬送ロール17により上流側の陽極14、電解槽12、下流側の陽極15の順に導かれて電解酸化装置1内を走行する。
処理前繊維束11は、陽極14を通過するときに直接電気が付与される。そして、電解槽12に導かれて電解液の液面に接触しながら走行する。電解槽を走行の際、処理前繊維束11は陽極として作用し、処理前繊維束11自身には電解酸化処理が施される。すなわち、電解槽12において電解酸化処理が行われる。その後、陽極15を通過し、電解酸化処理された炭素繊維束18が得られる。
【0037】
接触給電方式を採用した電解酸化装置1は、陽極14を介して処理前繊維束11に直接電気を付与するので、十分に給電することができる。従って、電解槽12において処理前繊維束11は陽極として十分に作用できる。その結果、単繊維の本数が多くても、また電解酸化処理時の電気量を少なくしても繊維束の内部まで十分かつ均一に電解酸化処理を行うことが可能となり、上述した条件(a)(b)を満足する炭素繊維束を容易に得ることができる。
【0038】
本発明は、接触給電方式により処理前繊維束を電解酸化処理することを特徴とするが、非接触給電方式により電解酸化処理すると、繊維束の内部まで均一に電解酸化処理されない。
ここで、図2を用いて非接触給電方式による処理前繊維束の電解酸化処理の一例について説明する。なお、「非接触給電方式」とは、電解槽中の電解液を介して処理前繊維束に間接的に電気を付与することで、処理前繊維束に対して給電する方式のことである。
【0039】
図2に示す電解酸化装置2は、処理前繊維束21の走行方向に沿って、電解液が充填された3つの電解槽22a、22b、22cが直列に設置されている。この3つの電解槽のうち、中央の電解槽22bは中に陰極23が配されており、陰極槽となっている。また、電解槽22bの上流側および下流側の電解槽22a、22cは中に陽極24、25がそれぞれ配されており、陽極槽となっている。陽極24、25と陰極23とは直流電源26に接続されている。さらに、電解槽22aの上流側、および電解槽22cの下流側には、それぞれ処理前繊維束21を搬送する搬送ロール27、27が設置されている。
【0040】
処理前繊維束21は、搬送ロール27により上流側の電解槽から順に、すなわち電解槽22a、22b、22cの順に導かれて、各電解槽において電解液の液面に接触しながら走行する。
処理前繊維束21は、陽極槽である電解槽22aにおいて電解液の液面に接触しながら通過するときに、電解液を介して間接的に電気が付与される。そして、陰極槽である電解槽22bに導かれて電解液の液面に接触しながら走行する。電解槽22bを走行の際、処理前繊維束21は陽極として作用し、処理前繊維束21自身には電解酸化処理が施される。すなわち、電解槽22bにおいて電解酸化処理が行われる。その後、陽極槽である電解槽22cを通過し、電解酸化処理された炭素繊維束28が得られる。
【0041】
非接触給電方式を採用した電解酸化装置2では、陽極槽である電解槽22a中の電解液を介して処理前繊維束21に間接的に電気を付与することになるので、陽極から直接電気を付与する接触給電方式に比べて給電が不十分である。そのため、陰極槽である電解槽22bにおいて処理前繊維束21は陽極として十分に作用できず、その結果、繊維束の内部まで均一に電解酸化処理されにくい。特に、電解酸化処理時の電気量が少ないと処理斑が起こりやすく、得られた炭素繊維束を用いた複合材料の、炭素繊維束とマトリックス樹脂との接着性が低下しやすくなる。
【0042】
以上説明したように、本発明によれば、トウ幅8mm以上の処理前繊維束を接触給電方式により5秒以上電解酸化処理するので、単繊維の本数が多く、かつ少ない電気量で処理する場合でも、繊維束の内部まで均一に電解酸化処理できる。その結果、繊維束の長手方向はもちろんのこと、内部まで均一に電解酸化処理された、条件(a)、(b)を満たす炭素繊維束が得られる。該炭素繊維束は、複合材料としたときに、マトリックス樹脂との接着性が良好で、十分な強度を発揮できる。
【0043】
なお、本発明は単繊維の本数が49000本未満と少ない場合でも、繊維束の内部まで均一に電解酸化処理された炭素繊維束を得ることができる。ただし、単繊維の本数が少ない場合は、従来の方法でも繊維束の内部まで均一に電解酸化処理できることもある。
しかし、単繊維の本数が49000〜175000本と多い場合、従来の方法では、繊維束の内部まで均一に電解酸化処理するのは困難である。
本発明は、単繊維の本数が49000〜175000本と多い繊維束を電解酸化処理する場合に、特に好適である。
【実施例】
【0044】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
本実施例で用いた処理前繊維束、および各種測定方法は以下の通りである。
【0045】
<処理前繊維束>
ポリアクリロニトリル系の前駆体繊維束(単繊維繊度:1.0dtex、単繊維の本数:60000)を空気中で220℃から270℃で耐炎化し、さらに不活性雰囲気中、700℃で前炭素化処理を行った後、最高処理温度1400℃で炭素化し、処理前繊維束を得た。
【0046】
<ストランド試験>
炭素繊維束のストランド強度およびストランド弾性率は、JIS R 7601に準拠して測定した。
【0047】
<表面酸素濃度(O/C)およびそのCV値の測定>
炭素繊維束の表面酸素濃度(O/C)およびそのCV値は、以下のようにして求めた。
まず、炭素繊維束を所定の長さに切断して、測定装置の試料ホルダーに両面テープを用いて固定し、光電子脱出速度を90°とし、測定装置の測定チャンバー内を1×10−6Paの真空に保った。
測定時の帯電に伴うピークの補正として、まずC1S(表面炭素濃度)の主ピークの結合エネルギー値を285.6eVに合わせる。そして、C1Sのピーク面積を282〜296eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。一方、O1S(表面酸素濃度)のピーク面積を528〜540eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。
表面酸素濃度(O/C)は、先に求めたO1Sのピーク面積とC1Sのピーク面積の比を、装置固有の感度補正値で除すことにより算出した原子数比で求めた。
同様の操作を切断した3本の炭素繊維束について行い、それぞれについて表面酸素濃度(O/C)を求め、その平均値および標準偏差を算出し、下記式(1)によりCV値を求めた。
CV値[%]=(表面酸素濃度の標準偏差/表面酸素濃度の平均値)×100 ・・・(1)
【0048】
<ipa値およびそのCV値の測定>
炭素繊維束のipa値およびそのCV値は、サイクリックボルタンメトリー法により、以下のようにして求めた。
なお、測定装置として、ポテンシオスタットとファンクションゼネレータとからなる分析装置(北斗電工株式会社製「HZ-3000 AUTOMATIC POLARIZATION SYSTEM」)を用いた。
【0049】
まず、5%リン酸水溶液を用いてpHを3とし、窒素をバブリングさせ容存酸素を除去した溶液を調製した。
この溶液に、参照電極としてAg/AgCl電極と、対電極として十分な表面積を有する白金電極と、作動電極として炭素繊維束とを差し込み、上記の分析装置にて炭素繊維束の電流と電極電位を測定した。
電位操作範囲は−0.2〜0.8Vとし、電位操作速度は2mV/secとした。X−Yリコーダーにより電位−電流曲線を描き、3回以上掃引させ、曲線が安定した段階で、Ag/AgCl電極に対して、+0.4Vでの電位を標準にとって電流を読み取り、下記式(2)に従ってipa値を算出した。なお、式(2)において、「試料長」とは作動電極に用いた炭素繊維束の長手方向の長さであり、「目付」とは作動電極に用いた炭素繊維束の単位長さ当たりの重さのことである。
ipa値[μA/cm]=電流値[μA]/試料長[cm]×{4π×目付[g/m] ×単繊維数/密度[g/cm] }1/2 ・・・(2)
同様の操作を切断した3本の炭素繊維束について行い、それぞれについてipa値を求め、その平均値および標準偏差を算出し、下記式(3)によりCV値を求めた。
CV値[%]=(ipa値の標準偏差/ipa値の平均値)×100 ・・・(3)
【0050】
<界面剪断強度の測定>
炭素繊維束とマトリックス樹脂との接着強度は、単繊維埋め込み(フラグメンテーション)法により界面剪断強度を測定することで評価した。単繊維埋め込み法としては、例えば、「炭素繊維の展開と評価方法」(リアライズ社)、第157〜160頁に記載されている方法を用いることができ、具体的には、以下に示す手順で評価した。
【0051】
まず、炭素繊維束から単繊維1本を抜き出し、これをマトリックス樹脂中に包埋させて試験片を作製した。この試験片に、繊維の破断伸度より大きな伸張を付与した(引張試験の実施)。マトリックス樹脂中で破断した各破断繊維の長さを測定し、下記式(4)、(5)より界面剪断強度を算出した。
臨界繊維長[mm]=4×平均繊維長[mm]/3 ・・・(4)
界面剪断強度[MPa]=繊維強度[MPa]×繊維直径[mm]/2×臨界繊維長[mm] ・・・(5)
なお、マトリックス樹脂としてはCIBA−GEIGY社製の「アラルダイドCY230」100質量部と、「ハードナーHY2967」35質量部とを混合し、これを型枠に注入し、20℃で24時間の条件で硬化させ、引き続き60℃で6時間の条件で硬化させたものを用いた。
また、引張試験は温度22℃、湿度50%の環境下で行い、試験片が破断しない範囲内(伸度7%)で伸張を付与した後、樹脂内で破断した破断繊維の長さを偏光顕微鏡にて読み取り、平均繊維長を算出した。
【0052】
<曲げ強度の測定>
複合材料の曲げ強度は以下のようにして測定した。
まず、炭素繊維束と、マトリックス樹脂(三菱レイヨン株式会社製、「#350エポキシ樹脂」)とを用い、炭素繊維束の含有量が体積含有率で60%となるようにマトリックス樹脂に含浸させ、板厚が2mmの繊維強化プラスチック板材(複合材料)を製造した。
得られた複合材料について、ASTM D790に準拠して、3点曲げショートビーム法により繊維方向に対して直角方向の曲げ強度(FS90°) を測定した。
【0053】
[実施例1]
<実施例1−1>
電解酸化処理の電解液として炭酸水素アンモニウム水溶液(5質量%)を使用し、図1に示す電解酸化装置1を用いて、トウ幅10mm、処理時間12秒、電気量1.4C/gの条件で、処理前繊維束を電解酸化処理し、炭素繊維束を得た。なお、電解酸化処理を行う際の張力は、単繊維24000本当たり3.2kgとした。また、処理前繊維束のトウ幅は、搬送ロール17として、表面に幅10mmの溝を有する溝ロールを用いることで規制した。
得られた炭素繊維束について各種測定を行った。結果を表1、2に示す。
【0054】
<実施例1−2、1−3>
電気量を表1に示す値に変更した以外は、実施例1−1と同様にして処理前繊維束を電解酸化処理し、炭素繊維束を得た。
得られた炭素繊維束について、各種測定を行った。結果を表1、2に示す。
【0055】
[実施例2〜4]
トウ幅、処理時間、および電気量を表1に示す値に変更した以外は、実施例1−1と同様にして処理前繊維束を電解酸化処理し、炭素繊維束を得た。なお、実施例4では、搬送ロール17として、表面に幅8mmの溝を有する溝ロールに変更して、処理前繊維束のトウ幅を規制した。
得られた炭素繊維束について、各種測定を行った。結果を表1、2に示す。
【0056】
[比較例1、2]
トウ幅、処理時間、および電気量を表1に示す値に変更した以外は、実施例1−1と同様にして処理前繊維束を電解酸化処理し、炭素繊維束を得た。なお、比較例1では、搬送ロール17として、表面に幅3mmの溝を有する溝ロールに変更して、処理前繊維束のトウ幅を規制した。
得られた炭素繊維束について、各種測定を行った。結果を表1、2に示す。
【0057】
[比較例3−1〜3−3]
電解酸化装置として図2に示す装置を用い、トウ幅、および電気量を表1に示す値に変更した以外は、実施例1−1と同様にして処理前繊維束を電解酸化処理し、炭素繊維束を得た。なお、処理前繊維束のトウ幅は、搬送ロール27として、表面に幅8mmの溝を有する溝ロールを用いることで規制した。また、全ての電解槽には、炭酸水素アンモニウム水溶液(5質量%)を電解液として充填した。
得られた炭素繊維束について、各種測定を行った。結果を表1、2に示す。
【0058】
[比較例4、5]
電解酸化装置として図2に示す装置を用い、全ての電解槽に充填される電解液として硝酸水溶液(5質量%)を使用し、トウ幅、および電気量を表1に示す値に変更した以外は、実施例1−1と同様にして処理前繊維束を電解酸化処理し、炭素繊維束を得た。なお、処理前繊維束のトウ幅は、搬送ロール27として、表面に幅8mmの溝を有する溝ロールを用いることで規制した。
得られた炭素繊維束について、各種測定を行った。結果を表1、2に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
表2から明らかなように、表面酸素濃度のCV値が8%以下、ipa値のCV値が5%以下である、各実施例で得られた炭素繊維束は、界面剪断強度および曲げ強度が十分な値であり、複合材料としたときに、マトリックス樹脂との接着性が良好で、十分な強度を発揮できた。
特に、実施例1−1〜1−3を比較すると、電気量を小さくしても界面剪断強度の変化(強度振れ)が小さいことが分かった。すなわち、電気量が変化してもマトリックス樹脂との接着性に優れた炭素繊維束を安定して製造することが示唆された。
このように、各実施例では、単繊維の本数が多く、かつ少ない電気量で処理しても、繊維束の内部まで均一に電解酸化処理できた。そして、得られた炭素繊維束は、複合材料としたときに、マトリックス樹脂との接着性が良好で、十分な強度を発揮できた。
【0062】
一方、ipa値のCV値が5%を超えた、比較例1、2で得られた炭素繊維束は、曲げ強度の値が各実施例の炭素繊維束に比べて低く、十分な強度を発揮できなかった。
非接触給電方式により電解酸化処理を行った比較例3−1〜3−3の場合、得られた炭素繊維束は表面酸素濃度のCV値が8%を超えていた。特に、電気量を2.7C/g以上にした比較例3−2、3−3はipa値のCV値も5%を超えていた。比較例3−1〜3−3では、電気量を変化させると界面剪断強度も大きく変化し、特に電気量を小さくすると界面剪断強度が極端に低下した。すなわち、電気量が変化するとマトリックス樹脂との接着性に優れた炭素繊維束の安定製造が困難であることが示唆された。
非接触給電方式により電解酸化処理を行い、電解液として硝酸水溶液を用いた比較例4、5の場合、得られた炭素繊維束はipa値のCV値が5%を超えていた。特に、電気量を9C/gにした比較例4は表面酸素濃度のCV値も8%を超えていた。これら炭素繊維束は、曲げ強度の値が各実施例の炭素繊維束に比べて低く、十分な強度を発揮できなかった。
このように、各比較例では繊維束の内部まで均一に電解酸化処理ができなかった。
【符号の説明】
【0063】
1、2:電解酸化装置
11、21:処理前繊維束
12、22a、22b、22c:電解槽
13、23:陰極
14、15、24、25:陽極
16、26:直流電源
17、27:搬送ロール
18、28:炭素繊維束

【特許請求の範囲】
【請求項1】
49000〜175000本の単繊維からなり、以下の条件(a)、(b)を満たすことを特徴とする炭素繊維束。
(a):X線光電子分光法により測定される表面酸素濃度のCV値{(表面酸素濃度の標準偏差/表面酸素濃度の平均値)×100}が8%以下。
(b):サイクリックボルタンメトリー法により測定される、単位面積当たりに流れる電流値(ipa値)のCV値{(ipa値の標準偏差/ipa値の平均値)×100}が5%以下。
【請求項2】
49000〜175000本の単繊維を束状にした、トウ幅8mm以上の炭素繊維を陽極として用い、接触給電方式により5秒以上電解酸化処理することを特徴とする炭素繊維束の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−132632(P2011−132632A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293117(P2009−293117)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】