説明

炭酸ガスレーザーによる貫通孔の形成方法

【課題】 銅張板上に炭酸ガスレーザーを直接照射して、形状の良好な小径の貫通孔を形成する方法を得る。
【解決手段】 少なくとも2層以上の銅の層を有する熱硬化性樹脂銅張板の下側の銅箔に熱伝導性の低い層を接着配置してバックアップシートとして使用し、炭酸ガスレーザーをパルスエネルギー5〜60mJから選ばれる1つのエネルギーを銅箔上に直接照射することにより貫通孔を形成する。その後、厚い銅箔の場合、銅箔の厚さ方向の一部をエッチング除去して薄くすると同時に孔部に発生した銅箔バリを溶解除去し、これを用いてプリント配線板とする。
【効果】 孔形状が良好で、信頼性に優れた貫通孔をあけることができ、小径で細密回路を有する高密度プリント配線板を得ることができた。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、少なくとも2層以上の銅の層を有する銅張板の銅箔表面に炭酸ガスレーザーを直接照射して貫通孔を形成するのに適したバックアップシートを使用して孔を形成する方法に関するものであり、両面銅張板、多層板の孔あけでは、主としてスルーホール用貫通孔を孔あけするためのものであり、得られた銅張板、多層板は、小径の孔を有する、高密度の小型プリント配線板として、新規な半導体プラスチックパッケージ、マザーボード用等に使用される。
【0002】
【従来の技術】従来、半導体プラスチックパッケージ等に用いられる高密度のプリント配線板は、スルーホール用の貫通孔をドリルであけていた。近年、ますますドリルの径は小径となり、孔径が0.15mmφ以下となってきており、このような小径の孔をあける場合、ドリル径が細いため、孔あけ時にドリルが曲がる、折れる、加工速度が遅い等の欠点があり、生産性、信頼性等に問題のあるものであった。また、スルーホール用貫通孔をあける場合、上下の銅箔にあらかじめ所定の同じ大きさの孔をあけておき、炭酸ガスレーザーで上下を貫通する貫通孔を形成しようとすると、上下の孔の位置にズレがあるために、ランドが形成しにくい等の欠点があった。更に、高出力の炭酸ガスレーザーで貫通孔を形成した場合、下側は空気層を使用していたが、加工塵が孔下の銅箔付近に付着し、その後の加工に支障をきたしていた。加えて、裏面の銅箔の孔の形状が円形でない等の欠点が見られた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、以上の問題点を解決した、孔形状の良好な小径のスルーホール用貫通孔を形成するための炭酸ガスレーザー孔あけ用バックアップシートを用いた孔形成方法を提供するものである。
【0004】
【発明が解決するための手段】銅張板の下面に、熱伝導性の低い層を配置し、銅箔と密着、好適には接着させて、銅張板の表面銅箔上に炭酸ガスレーザーの出力5〜60mJから選ばれる1つのエネルギーを照射して、特に裏面の孔形状の良好な貫通孔を形成することが可能となる。表裏面、内層の銅箔に炭酸ガスレーザーを照射して貫通孔を形成した場合、銅箔の厚さが厚いと銅箔にバリが発生するため、銅メッキの前にこの銅箔のバリを除去する必要がある。この表裏面銅箔バリは機械的研磨で取ることも可能であるが、完全にバリを取るためには銅箔の両表面を厚さ方向に平面的にもとの銅箔の一部の厚さをエッチング除去すると同時に、孔部に張り出した銅箔バリもエッチング除去することが好ましく、孔周囲の銅箔が残存した貫通孔を形成することによって、接続信頼性にも優れ、スルーホールは上下曲がることもなく形成でき、且つ、表層銅箔が薄くなるために、その後の金属メッキでメッキアップして得られた表裏銅箔の細線の回路形成において、ショートやパターン切れ等の不良の発生もなく、高密度のプリント配線板を作成することができた。また、加工速度はドリルであける場合に比べて格段に速く、生産性も良好で、経済性にも優れているものが得られた。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明は、炭酸ガスレーザーを用いて、2層以上の銅の層を有する銅張板に小径の良好な形状の貫通孔をあける方法に関し、孔あけの際に銅張板の裏面の銅箔に密着、好適には接着させるようにして熱伝導性の低い層を配置して貫通孔あけすることにより、裏面の銅箔の加工性に優れ、形状の良好な貫通孔が形成される。銅箔が厚い場合、形成した孔部に銅箔のバリが発生するが、このバリを薬液でエッチング除去すると同時に表裏の銅箔の厚さ方向の一部をエッチング除去する。この薄銅化、バリ取りにより、その後の銅メッキにおいて、孔部のメッキによる張り出しもなく、表裏の銅箔のメッキ後の総厚さも薄く保持でき、細密パターン形成に適したものが得られ、高密度のプリント配線板が作製できる。
【0006】銅張板の炭酸ガスレーザーによる孔あけにおいて、レーザーを照射する表面に、融点900℃で、且つ原子の結合エネルギー300kJ/mol 以上の酸化金属粉、カーボン、又は金属粉と水溶性樹脂等の樹脂とを混合した塗料を、銅箔表面に塗布、乾燥して塗膜とするか、熱可塑性フィルムの片面に、付着させて得られる孔あけ用補助シートを配置し、好適には銅箔面に接着させて、その上から炭酸ガスレーザーを直接金属表面に照射し、銅箔を加工除去する。また、銅箔のシャイニー面に、ニッケル金属層、コバルト金属層、それらの合金層を形成した銅箔を用いて銅張板を作製し、この上から直接炭酸ガスレーザーを照射することにより小径の貫通孔を形成できる。更には、一般の銅箔を張った銅張板の銅箔表面を、黒色酸化銅処理で処理するか、薬液によって銅箔表面を処理して微細な凹凸を形成する等を行い、その後直接炭酸ガスレーザーを照射することにより貫通孔を形成できる。銅箔が5μm以下のものを使用する場合、銅箔表面に何の処理をしなくても、直接炭酸ガスレーザーを照射することにより銅箔に孔があく。しかしながら、貫通孔を形成する場合には、裏面の銅箔にバックアップシートを接着させて貫通孔を形成しないと、裏面銅箔の加工塵による汚染、X-Yテーブルの損傷が発生するため、バックアップシートの使用は必須である。
【0007】本発明で使用する補助材料の中の、融点900℃以上で、且つ、結合エネルギー300kJ/mol 以上の金属化合物としては、一般に公知のものが使用できる。具体的には、酸化物としては、酸化チタン等のチタニア類、酸化マグネシウム等のマグネシア類、酸化鉄等の鉄酸化物、酸化ニッケル等のニッケル酸化物、二酸化マンガン、酸化亜鉛等の亜鉛酸化物、二酸化珪素、酸化アルミニウム、希土類酸化物、酸化コバルト等のコバルト酸化物、酸化錫等のスズ酸化物、酸化タングステン等のタングステン酸化物、等が挙げられる。非酸化物としては、炭化珪素、炭化タングステン、窒化硼素、窒化珪素、窒化チタン、窒化アルミニウム、硫酸バリウム、希土類酸硫化物等、一般に公知のものが挙げられる。その他、カーボンも使用できる。更に、その酸化金属粉の混合物である各種ガラス類が挙げられる。又、カーボン粉が挙げられ、更に銀、アルミニウム、ビスマス、コバルト、銅、鉄、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニッケル、パラジウム、アンチモン、ケイ素、錫、チタン、バナジウム、タングステン、亜鉛等の単体、或いはそれらの合金の金属粉が使用される。これらは一種或いは二種以上が組み合わせて使用される。平均粒子径は、特に限定しないが、1μm以下が好ましい。
【0008】炭酸ガスレーザーの照射で分子が原子に解離するために、金属が孔壁等に付着して、半導体チップ、孔壁密着性等に悪影響を及ぼさないようなものが好ましい。Na,K,Clイオン等は、特に半導体の信頼性に悪影響を及ぼすため、これらの成分を含むものは好適でない。配合量は、3〜97容積%、好適には5〜95容積%が使用され、水溶性樹脂に配合され、均一に分散される。
【0009】補助材料中の樹脂は特に限定はしないが、加工後に付着した場合に除去する場合、水溶性樹脂が好ましい。この水溶性樹脂としては、特に制限はしないが、混練して銅箔表面に塗布、乾燥した場合、或いはシート状とした場合、剥離欠落しないものを選択する。例えばポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリエーテルポリオール、ポリエチレンオキサイド、澱粉等、一般に公知のものが使用される。
【0010】金属化合物粉、カーボン粉、又は金属粉と樹脂からなる組成物を作成する方法は、特に限定しないが、ニーダー等で無溶剤にて高温で練り、熱可塑性フィルム上にシート状に押し出して付着する方法、水又は水溶性有機溶剤に水溶性樹脂を溶解させ、これに上記粉体を加え、均一に攪拌混合して、これを用い、塗料として熱可塑性フィルム上に塗布、乾燥して膜を形成する方法等、一般に公知の方法が使用できる。厚みは、特に限定はしないが、塗布する場合、20〜200μm、熱可塑性フィルムに塗布する場合、総厚み30〜200μmとして使用する。
【0011】本発明の炭酸ガスレーザー貫通孔あけにおいて、下(裏)面にはレーザービームが貫通した時に加工された粉塵が付着しないように、更には貫通した孔形状が良好になるようにバックアップシートとして熱伝導性の低い層を配置する。これは炭酸ガスレーザービームが裏面の銅箔に照射された場合、裏面が空気だと熱拡散がなされ、銅箔の熱の分布が不均一となるために、孔形状が不定形となり易い。ところが熱伝導性の低い層を裏面の銅箔と接着させておくと、裏面の銅箔に炭酸ガスレーザービームが照射された時点で熱は下面のバックアップシートに蓄積されてその部分が温度が高く、次の照射で銅箔の孔があき易く、良好な孔が形成される結果となる。この場合、裏面のバックアップシートはできるだけ熱伝導性の低い方が好ましい。バックアップシートは、熱伝導性の低い層のみで使用できる。炭酸ガスレーザーを照射する場合、バックアップシートを接着したまま銅張板を空中に浮かした状態で炭酸ガスレーザーを照射する方法、XYテーブルの下から吸引して銅張板と接着したバックアップシートをテーブルに固定し、この上から炭酸ガスレーザーを照射する方法等があるが、一般には後者の孔あけ方法が使用される。この場合、バックアップシートをレーザービームが突き抜けないように、例えばバックアップシートの厚さを厚くしてバックアップシートの途中でレーザービームが止まるようにするのが好ましい。
【0012】熱伝導性の低い層としては、一般に公知の絶縁層が挙げられる。具体的には、各種樹脂組成物が挙げられる。この樹脂組成物は、特に限定はなく、熱硬化性樹脂単体、熱可塑性樹脂単体、これらの混合物、及びこれらの樹脂に無機充填剤等、一般に公知の添加剤を添加した樹脂組成物が挙げられる。これらは、水溶性でない、有機溶剤に溶解可能な樹脂組成物も使用可能である。しかしながら、炭酸ガスレーザー照射で、孔周辺に樹脂が付着することがあり、この樹脂の除去が、水ではなく有機溶剤を必要とする場合には加工が煩雑であり、又、後工程の汚染等の問題も生じるため、好ましくなく、好適には水溶性樹脂を使用する。これらの水溶性樹脂は特に限定はなく、一般に公知の樹脂類が使用できるが、好適にはポリビニルアルコール、ポリエステル、澱粉、ポリエーテルポリオール、ポリエチレンオキサイド等が単独又は2種以上配合して使用される。厚さは特に限定はなく、好適には50〜200μmである。これらは単独で銅張板裏面銅箔上に塗布するかラミネートして接着させる。又、フイルム、有機板或いはセラミック等の片面に塗布して一体化したバックアップシートとする。有機板は特に限定はなく、熱可塑性樹脂板、熱硬化性樹脂板、積層板等、一般に公知のものが使用できる。又、木、石膏ボード等の板上に塗布して一体化したバックアップボードでも良い。一体化した総厚みは特に限定はないが、好適には100〜500μmである。
【0013】これらの樹脂類は、水又は有機溶剤に溶解させて銅張板の裏面に塗布、乾燥してバックアップシートとするか、フィルム等の片面に塗布して一体型のシートとしてから、樹脂面を銅箔側に向けて加熱、加圧下にラミネートする。又、高温で無溶剤にて溶融させてシート状に押し出してバックアップシートとする。
【0014】銅箔面に加熱、加圧下にホットメルト型のバックアップシートをラミネート接着する場合、シートを銅張板の裏面に配置し、その外側にフィルム、絶縁板等を置いてロールにて、温度は一般に40〜150℃、好ましくは60〜120℃で、線圧は一般に1〜30kg/cm、好ましくは5〜20kg/cmの圧力でラミネートし、樹脂層を溶融させて銅箔面と密着させる。温度の選択は使用する樹脂の融点で異なり、又、線圧、ラミネート速度によっても異なるが、一般には、水溶性樹脂の融点より5〜20℃高い温度でラミネートする。
【0015】本発明で使用する銅張板は、2層以上の銅の層を有する銅張板であり、熱硬化性樹脂銅張積層板としては、無機、有機基材の公知の熱硬化性銅張積層板、その多層銅張板、表層に樹脂付き銅箔シートを使用した多層板等、一般に公知の構成の多層銅張板、また、ポリイミドフィルム、ポリパラバン酸フィルム等の基材の銅張板が挙げられる。
【0016】基材補強銅張積層板は、まず補強基材に熱硬化性樹脂組成物ワニスを含浸、乾燥させてBステージとし、プリプレグを作成する。次に、このプリプレグを所定枚数重ね、その外側に銅箔を配置して、加熱、加圧下に積層成形し、銅張積層板とする。銅箔の厚みは、好適には5〜12μmである。
【0017】基材としては、一般に公知の、有機、無機の織布、不織布が使用できる。具体的には、無機の繊維としては、E、S、D、NEガラス等の繊維等が挙げらる。又、有機繊維としては、全芳香族ポリアミド、液晶ポリエステル等一般に公知の繊維等が挙げられる。これらは、混抄でも良い。また、フィルム基材も挙げられる。
【0018】本発明で使用される熱硬化性樹脂組成物の樹脂としては、一般に公知の熱硬化性樹脂が使用される。具体的には、エポキシ樹脂、多官能性シアン酸エステル樹脂、 多官能性マレイミドーシアン酸エステル樹脂、多官能性マレイミド樹脂、不飽和基含有ポリフェニレンエーテル樹脂等が挙げられ、1種或いは2種類以上が組み合わせて使用される。出力の高い炭酸ガスレーザー照射による加工でのスルーホール形状の点からは、ガラス転移温度が150℃以上の熱硬化性樹脂組成物が好ましく、更に無機充填剤を、好適には10〜80重量%添加するのが良い。耐湿性、耐マイグレーション性、吸湿後の電気的特性等の点から多官能性シアン酸エステル樹脂組成物を必須成分として使用するのが好ましい。
【0019】本発明の好適な熱硬化性樹脂分である多官能性シアン酸エステル化合物とは、分子内に2個以上のシアナト基を有する化合物である。具体的に例示すると、1,3-又は1,4-ジシアナトベンゼン、1,3,5-トリシアナトベンゼン、1,3-、1,4-、1,6-、1,8-、2,6-又は2,7-ジシアナトナフタレン、1,3,6-トリシアナトナフタレン、4,4-ジシアナトビフェニル、ビス(4-ジシアナトフェニル)メタン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジブロモー4-シアナトフェニル)プロパン、ビス(4-シアナトフェニル)エーテル、ビス(4-シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4-シアナトフェニル)スルホン、トリス(4-シアナトフェニル)ホスファイト、トリス(4-シアナトフェニル)ホスフェート、およびノボラックとハロゲン化シアンとの反応により得られるシアネート類などである。これらの公知のBr付加化合物も挙げられる。
【0020】これらのほかに特公昭41-1928、同43-18468、同44-4791、同45-11712、同46-41112、同47-26853及び特開昭51-63149等に記載の多官能性シアン酸エステル化合物類も用いら得る。また、これら多官能性シアン酸エステル化合物のシアナト基の三量化によって形成されるトリアジン環を有する分子量400〜6,000 のプレポリマーが使用される。このプレポリマーは、上記の多官能性シアン酸エステルモノマーを、例えば鉱酸、ルイス酸等の酸類;ナトリウムアルコラート等、第三級アミン類等の塩基;炭酸ナトリウム等の塩類等を触媒として重合させることにより得られる。このプレポリマー中には一部未反応のモノマーも含まれており、モノマーとプレポリマーとの混合物の形態をしており、このような原料は本発明の用途に好適に使用される。一般には可溶な有機溶剤に溶解させて使用する。
【0021】エポキシ樹脂としては、一般に公知のものが使用できる。具体的には、液状或いは固形のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂;ブタジエン、ペンタジエン、ビニルシクロヘキセン、ジシクロペンチルエーテル等の二重結合をエポキシ化したポリエポキシ化合物類;ポリオール、水酸基含有シリコン樹脂類とエポハロヒドリンとの反応によって得られるポリグリシジル化合物類等が挙げられる。また、これらの公知のBr付加樹脂が挙げられる。これらは1種或いは2種類以上が組み合わせて使用され得る。
【0022】ポリイミド樹脂としては、一般に公知のものが使用され得る。具体的には、多官能性マレイミド類とポリアミン類との反応物、特公昭57-005406 に記載の末端三重結合のポリイミド類が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、単独でも使用されるが、特性のバランスを考え、適宜組み合わせて使用するのが良い。
【0023】本発明の熱硬化性樹脂組成物には、組成物本来の特性が損なわれない範囲で、所望に応じて種々の添加物を配合することができる。これらの添加物としては、不飽和ポリエステル等の重合性二重結合含有モノマー類及びそのプレポリマー類;ポリブタジエン、エポキシ化ブタジエン、マレイン化ブタジエン、ブタジエン-アクリロニトリル共重合体、ポリクロロプレン、ブタジエン-スチレン共重合体、ポリイソプレン、ブチルゴム、フッ素ゴム、天然ゴム等の低分子量液状〜高分子量のelasticなゴム類;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ-4-メチルペンテン、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、スチレン-イソプレンゴム、アクリルゴム、これらのコアシェルゴム、ポリエチレン-プロピレン共重合体、4-フッ化エチレン-6-フッ化エチレン共重合体類;ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド等の高分子量プレポリマー若しくはオリゴマー;ポリウレタン等が例示され、適宜使用される。また、その他、公知の有機の充填剤、染料、顔料、増粘剤、滑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、光増感剤、難燃剤、光沢剤、重合禁止剤、チキソ性付与剤等の各種添加剤が、所望に応じて適宜組み合わせて用いられる。必要により、反応基を有する化合物は硬化剤、触媒が適宜配合される。
【0024】本発明の熱硬化性樹脂組成物は、それ自体は加熱により硬化するが硬化速度が遅く、作業性、経済性等に劣るため使用した熱硬化性樹脂に対して公知の熱硬化触媒を用い得る。使用量は、熱硬化性樹脂100重量部に対して0.005〜10重量部、好ましくは0.01〜5重量部である。
【0025】炭酸ガスレーザーを、出力5〜60mJでパルス発振にて銅張板の銅箔上に直接照射して貫通孔を形成した場合、孔周辺はバリが発生する。そのため、炭酸ガスレーザー照射後、銅箔の両表面を平面的に厚さ方向を、好適には薬液でエッチングし、もとの銅箔の一部の厚さを除去することにより、同時にバリも除去し、且つ、薄くなった銅箔は細密パターン形成に適しており、高密度のプリント配線板に適した孔周囲の銅箔が残存した貫通孔を形成する。この場合、機械研磨よりはエッチングの方が、孔部のバリ除去、研磨による寸法変化等の点から好適である。
【0026】本発明の孔部に発生した銅のバリをエッチング除去する方法としては、特に限定しないが、例えば、特開平02-22887、同02-22896、同02-25089、同02-25090、同02-59337、同02-60189、同02-166789、同03-25995、同03-60183、同03-94491、同04-199592、同04-263488で開示された、薬品で金属表面を溶解除去する方法(SUEP法と呼ぶ)による。エッチング速度は、0.02〜1.0μm/秒 で行う。
【0027】炭酸ガスレーザーは、赤外線波長域にある9.3〜10.6μmの波長が一般に使用される。エネルギーは5〜60mJ、好適には7〜45mJ にてパルス発振で銅箔を加工し、孔をあける。エネルギーは表層の銅箔上の処理、銅箔の厚さによって適宜選択する。又、YAGレーザー等のUVレーザーでも本発明のバックアップシートは使用できる。
【0028】
【実施例】以下に実施例、比較例で本発明を具体的に説明する。尚、特に断らない限り、『部』は重量部を表す。
実施例12,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン900部、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン100部を150℃に熔融させ、撹拌しながら4時間反応させ、プレポリマーを得た。これをメチルエチルケトンとジメチルホルムアミドの混合溶剤に溶解した。これにビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:エピコート1001、ジャパンエポキシレジン<株>製)400部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名:ESCN-220F、住友化学工業<株>製)600部を加え、均一に溶解混合した。更に触媒としてオクチル酸亜鉛0.4部を加え、溶解混合し、これに無機充填剤(商品名:焼成タルク、日本タルク<株>製)2000部を加え、均一撹拌混合してワニスAを得た。このワニスを厚さ100μmのガラス織布に含浸し150℃で乾燥して、ゲル化時間(at170℃)120秒、ガラス布の含有量が56重量%のプリプレグ(プリプレグB)を作成した。厚さ12μmの電解銅箔を、上記プリプレグB 4枚の上下に配置し、200℃、20kgf/cm2、30mmHg以下の真空下で2時間積層成形し、絶縁層厚み400μmの両面銅張積層板Cを得た。
【0029】一方、金属粉として黒色酸化銅粉(平均粒子径:0.8μm)800部に、ポリビニルアルコール粉体を水に溶解したワニスに加え、均一に攪拌混合した(ワニスD)。これを厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム片面上に、厚さ60μmとなるように塗布し、110℃で30分間乾燥して、金属化合物含有量65容積%の補助材料Eを形成した。また、厚さ200μmのポリエチレンテレフタレート板の片面に上記ポリビニルアルコール粉体を水に溶解した溶液を、樹脂層厚さ100μmとなるように塗布、乾燥して総厚み300μmのバックアップシートFを作製した。上記銅張積層板Bの上に補助材料Eを、下にバックアップシートFを、樹脂面が銅箔側を向くように配置し、温度100℃のロールにて、線圧5kgf/cmでラミネートし、接着させた。間隔1mmで、孔径100μmの孔を900個直接炭酸ガスレーザーで、パルスエネルギー25mJで6ショツト照射して、70ブロックのスルーホール用貫通孔をあけた。デスミア処理後、SUEP法にて、孔周辺の銅箔バリを溶解除去すると同時に、表面の銅箔も4μmまで溶解した。この板に通常の方法にて銅メッキを15μm(総厚み:19μm)施した。この孔周辺のランド用の銅箔は全て残存していた。この表裏に、既存の方法にて回路(ライン/スペース=50/50μmを200個)、ハンダボール用ランド等を形成し、少なくとも半導体チップ搭載部、ボンディング用パッド部、ハンダボールパッド部を除いてメッキレジストで被覆し、ニッケル、金メッキを施し、プリント配線板を作成した。このプリント配線板の評価結果を表1に示す。
【0030】実施例2エポキシ樹脂(商品名:エピコート5045、ジャパンエポキシレジン<株>製)700部、及びエポキシ樹脂(商品名:ESCN220F)300部、ジシアンジアミド35部、2-エチル-4-メチルイミダゾール1部をメチルエチルケトンとジメチルホルムアミドの混合溶剤に溶解し、さらに実施例1の焼成タルクを800部を加え、強制撹拌して均一分散し、ワニスを得た。これを厚さ100μmのガラス織布に含浸、乾燥して、ゲル化時間150秒、ガラス布含有量55重量%のプリプレグ(プリプレグG)を作成した。このプリプレグGを2枚使用し、銅箔シャイニー面をコバルト金属処理を施した厚さ12μmの電解銅箔を両面に置き、190℃、20kgf/cm2、30mmHg以下の真空下で2時間積層成形して両面銅張積層板Hを作成した。絶縁層の厚みは200μmであった。
【0031】この両面銅張積層板Hの裏面に、実施例1のポリビニルアルコール溶液を塗布、乾燥して厚さ50μmの樹脂層を形成しバックアップシートとした。この外側に厚さ1mmのアクリル樹脂板を置き、両面銅張板の端部をテープでXYテーブルに止めて、この上から炭酸ガスレーザーのパルスエネルギー20mJにて4ショット照射し、孔径100μmの貫通孔を実施例と同様にあけた。バックアップシートを溶解除去し、この表裏面を実施例1と同様にSUEPで処理してから、同様にプリント配線板とした。評価結果を表1に示す。
【0032】比較例1実施例1の両面銅張積層板Cを用い、下面にバックップシートを使用せず、銅張板を少し浮かして下面を空気層とし、炭酸ガスレーザーで同様に孔あけを行なったが、下孔の周囲に加工屑が付着した。SUEP処理を行い、同様にプリント配線板とした。評価結果を表1に示す。
【0033】比較例2実施例1の両面銅張積層板Cを用い、バックアップシートとして、樹脂層のないアルミニウム単独を配置し、炭酸ガスレーザーを同様に照射したが、貫通孔が37%あかなかった。あいた下孔も一部はレーザーの金属からの反射で形状が円形とならなかった。SUEP処理を行い、同様にプリント配線板とした。評価結果を表1に示す。
【0034】比較例3実施例1の両面銅張積層板Cの銅箔表面に間隔300μmにて、孔径100μmの孔を900個、銅箔をエッチングしてあけた。同様に裏面にも同じ位置に孔径100μmの孔を900個あけ、1パターン900個を70ブロック、合計63,000の孔を、表面から炭酸ガスレーザーで、パルスエネルギー25mJ にて6ショットかけ、貫通孔をあけた。デスミア処理を施し、SUEP処理を行い、銅メッキを15μm施し、表裏に回路を形成し、同様にプリント配線板を作成した。評価結果を表1に示す。
【0035】
(表1) 実施例 比較例項目 1 2 1 2 3 表裏孔位置のズレ(μm) <5 <5 <5 <5 24 孔形状 ほぼ円形 ほぼ円形 不定形 不定形 ほぼ円形貫通孔あけ率(%) 100 100 100 63 94パターン切れ及び 0/200 0/200 31/200 11/100 0/200 ショート (個)
ランド周辺銅箔欠落 無し 無し 無し 無し 有りガラス転移温度(℃) 235 160 235 235 235 スルーホール・ヒートサイクル試験(%)
2.0 4.3 5.3 6.6 7.2
【0036】<測定方法>1)表裏孔位置のズレ : ワークサイズ250mm角内に、孔径100μmの孔を、900孔/ブロックとして70ブロック(孔計63,000孔)炭酸ガスレーザーで孔あけを行ない、1枚の銅張積層板に63,000孔をあけたものに関し、表裏の孔位置のズレの最大値を示した。
2)孔形状 : 銅箔をエッチング除去し、孔の形状を観察した。
3)貫通孔あけ率 : 63,000孔のうち、上下貫通した孔の数を%で示した。
4)パターン切れ、及びショート : 実施例、比較例で、作製した孔のあいている銅張板に銅メッキを15μm付着させたものを用い、ライン/スペース=50/50μmのパターンを作成した後、拡大鏡でエッチング後の200パターンを目視にて観察し、パターン切れ、及びショートしているパターンの合計を分子に示した。
5)ガラス転移温度 : JIS C6481のDMA法にて測定した。
6)スルーホール・ヒートサイクル試験 : 各スルーホールにランド径200μmを作成し、900孔を表裏交互につなぎ、1サイクルが、260℃・ハンダ・浸せき30秒→室温・5分 で、200サイクル実施し、抵抗値の変化率の最大値を示した。
7)ランド周辺銅箔切れ : 孔周辺に径500μmのランドを形成した時の、ランド部分の銅箔欠けを観察した。
【0037】
【発明の効果】少なくとも2層以上の銅の層を有する銅張板の銅表面に直接、1つのエネルギーの炭酸ガスレーザーを照射して銅箔を貫通孔あけする際に、炭酸ガスレーザーが貫通する下面の銅箔面に、孔あけバックアップシートとして、熱伝導性の低い層を銅箔と接着させて、この上から炭酸ガスレーザーを直接照射して貫通孔あけを行なうことにより、事前に銅箔をエッチング除去する必要もなく、銅張板の表裏の孔位置のズレもなく良好な形状の貫通孔が加工可能であり、且つ、後処理で銅箔の両表面を平面的にエッチングし、もとの銅箔の一部の厚さをエッチング除去することにより、同時に孔部に発生した銅箔のバリをエッチング除去でき、その後の銅メッキでメッキアップして得られた表裏銅箔の回路形成においても、ショートやパターン切れ等の不良発生もなく高密度のプリント配線板を作成でき、信頼性に優れたものを得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 銅箔を炭酸ガスレーザーで除去できるに十分な5〜60mJから選ばれた1つのエネルギーを用いて、炭酸ガスレーザーのパルス発振により、直接炭酸ガスレーザーを銅箔上に照射し、少なくとも2層以上の銅張板に貫通孔を形成するために銅箔裏面にバックアップシートとして熱伝導性の低い層を銅張板と接着させて使用することを特徴とする炭酸ガスレーザーによる貫通孔の形成方法。
【請求項2】 該バックアップシートの熱伝導性の低い層を、銅張板の銅箔裏面側に配置し、加熱、加圧下に銅箔にラミネートして密着使用することを特徴とする請求項1記載の貫通孔の形成方法。
【請求項3】 該バックアップシートの少なくとも銅張板の裏面に接着する層が水溶性樹脂である請求項1又は2記載の貫通孔の形成方法。
【請求項4】 孔あけ後、バックアップ層を剥離し、薬液にて表裏銅箔の厚さ方向の一部を溶解除去すると同時に、孔周辺に発生した銅箔バリを溶解除去することを特徴とする請求項1、2又は3記載の貫通孔の形成方法。

【公開番号】特開2003−8172(P2003−8172A)
【公開日】平成15年1月10日(2003.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−185928(P2001−185928)
【出願日】平成13年6月20日(2001.6.20)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】