説明

焙焼炉の灰処理方法及び焙焼設備

【課題】高濃度の重金属類を含有する飛灰が焙焼灰中に残留することを防止し、重金属類除去効率を向上させることを可能とした焙焼炉の灰処理方法及び焙焼設備を提供する。
【解決手段】還元性雰囲気に保持され、重金属類を含有した被処理物を融点以下の温度で加熱することにより該重金属類を揮散分離する焙焼炉2と、該焙焼炉2にて発生した焙焼灰を配管31より落下させて排出する灰排出装置3とを備えた焙焼設備において、前記灰排出装置3の配管31に、該配管内へ分離用気体を導入するノズル32を設けるとともに、該ノズル32から導入される分離用気体は、前記配管内に上昇気流を形成し、該上昇気流により重金属類を含有する細粒径の飛灰を焙焼灰から分離して焙焼炉2に戻す流量に設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重金属類を含む灰、土壌等の被処理物を還元性雰囲気下にて加熱処理し、該重金属類を揮散分離して無害化する焙焼炉の灰処理方法及び焙焼設備に関する。
【背景技術】
【0002】
一般廃棄物、産業廃棄物を焼却処理することにより発生する焼却灰、飛灰中には様々な種類の重金属類が含有されている。また、重金属類の処理設備を具備しない焼却設備からは大気、土壌、地下水に重金属類含有物質が漏出する惧れがあり、他にも工場跡地、廃棄物埋立地等の土壌中には環境基準で定められた濃度以上の重金属類が存在していることがある。重金属類は毒性が強いものが多く、環境に悪影響を与えるのみならず生体内に蓄積され害を及ぼす。近年は、焼却灰、飛灰、土壌等に含有される重金属類の環境基準が制定されるなど、重金属類に対する規制が厳しくなる傾向にある。特に焼却灰由来の資源化物として、該焼却灰を溶融スラグ化して再利用する方法があるが、溶融スラグ中の重金属類に関しては、従来の溶出の規制に加えて含有量の規制が新たに設定された。
【0003】
重金属類を含有する物質を無害化する方法の一つとして、融点以下に保持した焙焼炉にて被処理物を還元性雰囲気下で加熱し、重金属類を揮散させて分離除去する方法が提案、実用化されている。
図7に、焙焼炉を用いて重金属類を無害化する装置構成を示す。同図に示すように本装置においては、灰や土壌等の重金属類を含有した被処理物をホッパ51から焙焼キルン52内に投入し、還元性雰囲気下にて950〜1050℃の高温で加熱処理し、重金属類を揮散分離する。重金属類が分離された焙焼灰は灰冷却装置53に送給され、該灰冷却装置53にて冷却された後、再利用又は埋め立て等に供される。一方、焙焼キルン52にて発生した排ガスは、重金属類が濃縮された飛灰を含んだ状態で焙焼キルン52から排出され、後段に設けられた排ガス処理設備54にて処理される。
【0004】
重金属類の中でも特にPbが問題となるが、上記構成に加えて、Pbを含む重金属類の除去効率を向上させる方法として、焙焼炉に塩素を供給して加熱処理することにより重金属類を塩化物化して揮散除去する方法が提案されている。
例えば特許文献1(特開2004−181323号公報)には、廃棄物焼却炉から排出される塩化水素を含む燃焼排ガスを、焼却灰の処理を行う灰処理炉に導入し、焼却灰中に含まれる重金属類を塩化物として揮散させて除去する方法が開示されている。
また、特許文献2(特開2005−288433号公報)には、ロータリーキルンに塩素含有物質或いは塩素系排ガスを導入し、被処理物中の重金属類を塩化物化して沸点を低下させた後、該重金属類を揮散分離して除去する方法が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−181323号公報
【特許文献2】特開2005−288433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、重金属類を無害化する方法として、焙焼炉にて被処理物を還元性雰囲気下にて加熱することにより重金属類を揮散させて除去する方法があるが、この場合揮散した重金属類の一部は飛灰に濃縮されて排ガスとともに排ガス処理設備へ送られ、該排ガス処理設備にて処理されていた。
しかし、本来排ガス処理設備へ排出されるべき飛灰が、飛散しきれずに焙焼灰に混入し、焙焼灰とともに排出されることにより焙焼灰中に重金属類が残留してしまう惧れがあった。即ち、飛灰と焙焼灰が十分に分離されないと、焙焼灰の重金属類除去効率が低下してしまうという問題があった。
【0007】
特許文献1及び特許文献2等に記載されるように、被処理物中の重金属類を塩化物化することにより沸点を低下させて重金属類を揮散させる方法においても、同様に飛灰が十分に焙焼灰と分離していないと、高濃度の重金属類を含有する飛灰が焙焼灰中に残留してしまい、重金属類の除去効率は低下してしまう。
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、高濃度の重金属類を含有する飛灰が焙焼灰中に残留することを防止し、重金属類除去効率を向上させることを可能とした焙焼炉の灰処理方法及び焙焼設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、
重金属類を含有した被処理物を、還元性雰囲気に保持した焙焼炉内にて融点以下の温度で加熱することにより該重金属類を揮散させて分離した後、焙焼灰を灰排出装置の配管から落下させて排出するようにした焙焼炉の灰処理方法において、
前記灰排出装置の配管に分離用気体を導入して上昇気流を形成し、該上昇気流により、重金属類を含有する細粒径の飛灰を前記焙焼灰から分離して前記焙焼炉に戻すことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、焙焼灰中に含まれる細粒径の飛灰を、分離用気体により形成した上昇気流にて分離することにより、焙焼灰中に高濃度の重金属類を含有する飛灰が残留することを防止し、焙焼灰の重金属類除去性能を向上させることが可能となる。
【0010】
また、前記上昇気流は、粒径10μm以下の飛灰を該上昇気流に伴送させて前記焙焼灰から分離可能な流速を有することを特徴とする。
重金属類を高濃度で含有する飛灰は、10μm以下の細粒径を有する飛灰であり、粒径が10μmを超えると灰中の重金属類濃度は極めて低くなる。従って、10μm以下の飛灰を焙焼灰と分離し、該分離した飛灰を焙焼炉に戻して排ガスに伴送させて排出することにより、焙焼灰中に殆ど重金属類を残留させることなく無害化処理することが可能となる。
【0011】
さらに、前記上昇気流の流速が、0.2〜0.4m/sであることを特徴とする。
高濃度の重金属類を含有する細粒径飛灰を吹き飛ばして焙焼灰と分離するには、飛灰の終末速度の関係から0.2以上の流速があればよく、一方、重金属類が殆ど含有しない灰は分離する必要がないので、0.4m/sを流速の上限値とする。このように、導入する分離用気体の流量を適正に設定することにより、排ガス処理設備への影響を最小限に抑えることが可能となる。
【0012】
また、還元性雰囲気に保持され、重金属類を含有した被処理物を融点以下の温度で加熱することにより該重金属類を揮散分離する焙焼炉と、該焙焼炉にて発生した焙焼灰を配管より落下させて排出する灰排出装置とを備えた焙焼設備において、
前記灰排出装置の配管に、該配管内へ分離用気体を導入するノズルを設けるとともに、
前記ノズルから導入される分離用気体が、前記配管内に上昇気流を形成し、該上昇気流により重金属類を含有する細粒径の飛灰を前記焙焼灰から分離して前記焙焼炉に戻す流量に設定されることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、焙焼灰中に含まれる細粒径の飛灰を、分離用気体により形成した上昇気流にて分離することにより、焙焼灰中に高濃度の重金属類を含有する飛灰が残留することを防止し、焙焼灰の重金属類除去性能を向上させることが可能となる。
また、前記ノズルから導入された分離用気体により形成される上昇気流は、粒径10μm以下の飛灰を該上昇気流に伴送させて前記焙焼灰から分離可能な流速を有することを特徴とする。
さらに、前記ノズルから導入された分離用気体により形成される上昇気流の流速が、0.2〜0.4m/sであることを特徴とする。
【0014】
また、前記ノズルは、前記上昇気流が旋回流となるように配置されることを特徴とする。
このように、配管内に旋回流を形成することにより、該配管内に導入した分離用気体が拡散しやすくなり上昇気流の流速が均一化し、配管内を落下してくる焙焼灰に対して万遍なく飛灰分離を行うことが可能となる。さらに、ノズルからの分離用気体の突出速度を20m/s以上とすることが好ましく、これにより上昇旋回流が形成しやすくなる。
【0015】
また、前記ノズルより上方側に位置する前記配管の一部を縮径して絞り部を設けたことを特徴とする。
これによれば、少ない分離用気体の流量にて必要とされる上昇気流の速度を確保することが可能であり、分離用気体の過剰な供給により排ガス処理設備へ伴送される飛灰量の増加、及び排ガス処理量の増加を防止できる。
さらにまた、これらの発明において、前記焙焼炉がロータリーキルンであることが好適である。
【発明の効果】
【0016】
以上記載のごとく本発明によれば、焙焼灰中に含まれる細粒径の飛灰を、分離用気体により形成した上昇気流にて分離することにより、焙焼灰中に高濃度の重金属類を含有する飛灰が残留することを防止し、焙焼灰の重金属類除去性能を向上させることが可能となる。
また、導入する分離用気体の導入量を適正にすることにより、焙焼灰から細粒径飛灰を確実に分離するとともに、排ガス処理設備への影響を最小限に抑えることが可能となる。
さらに、上昇気流を旋回流とすることにより、配管内に導入した分離用気体が拡散しやすくなり上昇気流の流速が均一化し、配管内を落下してくる焙焼灰に対して万遍なく飛灰分離を行うことが可能となる。
さらにまた、配管の一部を縮径した絞り部を設けることにより、少ない分離用気体の流量で、必要とされる上昇気流の速度を確保することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態を例示的に詳しく説明する。但しこの実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図1は本発明の実施形態に係る焙焼設備の概略構成図、図2は図1に示した灰排出装置の側面図、図3は図2のA−A断面図、図4は図1に示した灰排出装置の変形例を示す側面図、図5は灰の粒径とPb濃度の関係を示すグラフ、図6は灰の粒径と終末流速の関係を示すグラフである。
本実施形態はPb、Zn、As、Cd、Cr、Se、Hg、Sb、Cuなどの重金属類を分離除去する技術であり、特にPbの除去に好適に用いられる。また、被処理物としては、例えば汚染土壌、焼却灰、飛灰等の重金属類を含有する物質が挙げられる。
【0018】
図1を参照して、本実施形態に係る装置構成につき説明する。
本実施形態に係る焙焼設備は、重金属類を含有する被処理物を受け入れ、焙焼キルン(焙焼炉)2に供給するホッパ1と、一端側に被処理物投入口22を有し、該被処理物投入口22がホッパ1と接続され、被処理物を還元性雰囲気下にて融点以下の温度で加熱し、該被処理物中に含まれる重金属類を揮散分離する焙焼炉2と、該焙焼炉2のホッパ1とは他端側に設けられた灰排出装置3と、該灰排出装置3に接続されて焙焼灰を冷却する灰冷却装置4と、前記焙焼炉2の排ガス出口23に接続された排ガス処理設備5と、を備えている。
【0019】
前記焙焼キルン2は、回転式のロータリーキルンが好適に用いられ、円筒横置型の炉本体21と、該炉本体21の一端側に設けられ、ホッパ1から被処理物を炉本体内に投入する被処理物投入口22と、ホッパ1に対して炉本体21の他端側に設けられた灰排出装置3と、炉本体21の灰排出装置3側に設けられたバーナ24と、被処理物投入口22側に設けられ、炉本体21内で発生した排ガスを排出する排ガス出口23とを備えた構成を有する。前記炉本体21は、被処理物投入口22から灰排出装置3に向けて軸方向に被処理物を移送する移送手段(図示略)を備えており、焙焼キルン2内に導入された被処理物は、灰排出装置3に向けて移送されながら、バーナ24の火炎によって焙焼される。このとき、焙焼キルン2内は、酸素不足状態若しくは無酸素状態の還元性雰囲気とし、被処理物が酸化燃焼されないようになっている。また、焙焼キルン2内は、温度が500〜1200℃程度、好適には950〜1050℃程度であるとともに、負圧に維持される。また、図1は塩素含有物質(塩素含有ガスを含む)を供給しない構成につき示したが、塩素含有物質を供給する手段を備えていてもよい。
【0020】
一方、バーナ24からの熱により被処理物が熱反応して発生した排ガスは、被処理物の移送方向とは逆に、灰排出装置3から被処理物投入口22側に向けて搬送され、被処理物の移送方向と対向する向流流れを形成し、排ガス出口23より排出される。焙焼キルン2より排出される排ガス中には、高濃度の重金属類を含有する飛灰が存在するため、該排ガスは後段側の排ガス処理設備5にて処理される。該排ガス処理設備5は、排ガスの性状、成分に基づき、適宜処理装置を選択して排ガスを無害化するために最適な構成に設定される。一例として排ガス処理設備は、排ガス中に含まれるダイオキシン類等の分解を行う再燃焼室と、該再燃焼室から排出される高温排ガスを熱交換により冷却する熱交換器(又は減温塔)と、該冷却された排ガス中の飛灰を捕集するバグフィルタと、を備えた構成が挙げられる。
【0021】
このような焙焼設備において、重金属類を含有する被処理物は、ホッパ1から被処理物投入口22を介して焙焼キルン2の炉本体21内に投入され、被処理物投入口22から灰排出装置3に向けて移送されながら還元性雰囲気にて被処理物の融点以下の温度に加熱されることにより、被処理物中に含まれる重金属類が揮散して分離される。揮散した重金属類は排ガスに伴送されて排ガス出口23より排出され、排ガス処理設備5にて処理される。揮散した重金属類のうち飛灰に濃縮された重金属類は、同様に排ガスに伴送されて排ガス処理設備5に送られるが、重金属類を含有した飛灰の一部は焙焼灰に混入して灰排出装置3から排出される。
【0022】
そこで本実施形態では上記構成に加えて、焙焼炉2の灰排出装置3にて、重金属類を含有した細粒径の飛灰を焙焼灰と確実に分離して、焙焼灰中への重金属類の残留を最小限に抑制する構成を備えている。
飛灰の粒径は約0.6〜30μmの範囲で分布しており、この粒径分布の中で特に細かい粒径を有する飛灰にPb等の重金属類が濃縮されやすい傾向にあるため、灰排出装置3にて、分離用気体を用いて細粒径の飛灰を焙焼灰と分離することにより焙焼灰に飛灰が混入して排出されないようにする。
【0023】
図2に、灰排出装置3の側面図を示す。同図に示すように、灰排出装置3は、焙焼キルン2と灰冷却装置4を連結する配管31を備えており、さらに該配管31に設置された一又は複数のノズル32を備えている。前記配管31は、略垂直方向に延設されており、断面形状は円形状であっても方形状であってもよく、その形状は特に限定されないが、焙焼キルン2内にて発生した焙焼灰が円滑に排出可能な断面積を有するものとする。
前記ノズル32からは分離用気体が配管31内に導入される。該ノズル32の設置角度は、配管31の水平断面に対して平行に設置してもよいし、下向き又は上向きに角度を持たせて設置してもよい。また、前記ノズル32を複数設置する場合は、配管31の周方向に一定間隔で設置してもよいし、高さを異ならせて設置してもよい。
【0024】
分離用気体は、燃焼排ガス、乾燥排ガス等の排ガスや空気などが用いられる。燃焼排ガスは、焙焼キルン2から排出された排ガスを必要に応じて排ガス処理した後、この燃焼排ガスをノズル32から配管31内に導入する。乾燥排ガスは、焙焼キルン2の前段に乾燥装置が設けられる場合などに、該乾燥装置からの乾燥排ガスをノズル32から配管31内に導入する。また、他の処理装置から排出される排ガスを用いてもよい。分離用気体にはこのような排ガスを用いることが好適であり、これにより焙焼設備において排ガス処理量を低減することが可能となる。また、燃焼排ガス、乾燥排ガス等の排ガスは低酸素濃度であるため、焙焼キルン2内に導入しても還元性雰囲気を維持できる。勿論、空気を用いてもよく、これは分離用気体の導入量が炉本体21内のガス量に比べて少量であるため、還元性雰囲気を維持可能である。
【0025】
さらに、ノズル32から導入される分離用気体の流量は、配管31内に上昇気流を形成する流量に設定される。
好適には、配管31内の上昇気流の流速(塔速)Vを、0.2〜0.4m/sとする。
また好適には、前記上昇気流の流速Vを、粒径10μm以下の飛灰を該上昇気流に伴送させて前記焙焼灰から分離可能な流速とする。
【0026】
図5に、灰粒径とPb濃度の関係を示す。同グラフは実測値である。これによれば、灰粒径が2μmを超えると灰中のPb濃度が極めて低くなる。従って、灰中にPbが高濃度で含有される場合は、10μm以下の細かい粒径の飛灰であり、10μmより粒径が大きい灰には殆どPbが含まれていないことがわかる。
本実施形態ではこの結果に基づき、10μm以下の飛灰を焙焼灰と分離するようにし、該分離した飛灰を焙焼キルン2に戻して排ガスに伴送させて排ガス処理設備5へ排出することにより、焙焼灰中に殆ど重金属類を残留させることなく焙焼灰の重金属類除去効率を向上させることが可能となる。
【0027】
図6に、灰粒径と灰の終末速度の関係を示す。これによれば、粒径10μm以下の飛灰を吹き飛ばして焙焼灰と分離するには、0.2以上の流速があればよいことがわかる。一方、重金属類が殆ど含有しない灰は分離する必要がないので、0.4m/sを上限値とすることが好ましい。これは、焙焼キルン2内に必要以上に分離用気体を導入しないようにする観点からも好ましい。
本実施形態ではこの結果に基づき、配管31内の上昇気流速度が0.2〜0.4m/sとなるように分離用気体を導入するようにしている。このように、ノズル32より導入する分離用気体の導入量を適正にすることにより、排ガス処理設備5への影響を最小限に抑えることが可能となる。
【0028】
上記した構成において、焙焼キルン2にて生じた焙焼灰は、重金属類が濃縮された細粒径の飛灰を含んだ状態で炉本体21から灰排出装置3に落下する。灰排出装置3の配管31内には、ノズル32から吹き込まれた分離用気体により所定流速の上昇気流が形成されている。この上昇気流により灰排出装置3に落下した焙焼灰から細粒径の飛灰が分離され、該分離された飛灰は炉本体21内に戻され、排ガスに伴送されて炉本体21より排出される。高濃度の重金属類を含む飛灰が分離された焙焼灰は、灰冷却装置4に供給され冷却された後、再利用又は埋め立て等の処理がなされる。
【0029】
本実施形態によれば、焙焼灰中に含まれる細粒径の飛灰を、分離用気体により形成した上昇気流にて分離することにより、焙焼灰中に高濃度の重金属類を含有する飛灰が残留することを防止し、焙焼灰の重金属類除去性能を向上させることが可能となる。
【0030】
また、図3に示すように、配管31内に上昇旋回流が形成されるように複数のノズル32を配設することが好ましい。この場合、配管31内に設定した仮想円の接線方向に向けて分離用気体が噴出するようにノズル32を配設するとよい。このように、配管31内に旋回流を形成することにより、吹き込んだ分離用気体が拡散しやすくなり上昇気流の流速が均一化し、配管31内を落下してくる焙焼灰に対して万遍なく飛灰分離を行うことが可能となる。
さらに、ノズル32からの分離用気体の突出速度Vを20m/s以上とすることが好ましく、これにより上昇旋回流が形成しやすくなる。
【0031】
また、図4に示すように、ノズル32より上方に位置する配管31の一部を縮径させた絞り部33を設けた構成としてもよい。該絞り部33は、灰が固着しない部位に設ける。灰が固着する部位とは、配管31の中でも高温部位で、一部の灰が溶融して壁面に固着してしまう可能性の高い部位のことを言う。
前記絞り部33の径は、ノズル32より導入した分離用気体が0.2〜0.4m/sとなるような径とすることが好ましい。
これによれば、分離用気体の過剰な供給により排ガス処理設備へ伴送される飛灰量の増加、及び排ガス処理量の増加を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態に係る焙焼設備の概略構成図である。
【図2】図1に示した灰排出装置の側面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図1に示した灰排出装置の変形例を示す側面図である。
【図5】灰の粒径とPb濃度の関係を示すグラフである。
【図6】灰の粒径と終末流速の関係を示すグラフである。
【図7】従来の焙焼炉を備えた処理装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0033】
1 ホッパ
2 焙焼炉(焙焼キルン)
3 灰排出装置
4 灰冷却装置
5 排ガス処理設備
21 炉本体
22 被処理物投入口
23 排ガス出口
24 バーナ
31 配管
32 ノズル
33 絞り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重金属類を含有した被処理物を、還元性雰囲気に保持した焙焼炉内にて融点以下の温度で加熱することにより該重金属類を揮散させて分離した後、焙焼灰を灰排出装置の配管から落下させて排出するようにした焙焼炉の灰処理方法において、
前記灰排出装置の配管に分離用気体を導入して上昇気流を形成し、該上昇気流により、重金属類を含有する細粒径の飛灰を前記焙焼灰から分離して前記焙焼炉に戻すことを特徴とする焙焼炉の灰処理方法。
【請求項2】
前記上昇気流は、粒径10μm以下の飛灰を該上昇気流に伴送させて前記焙焼灰から分離可能な流速を有することを特徴とする請求項1記載の焙焼炉の灰処理方法。
【請求項3】
前記上昇気流の流速が、0.2〜0.4m/sであることを特徴とする請求項1記載の焙焼炉の灰処理方法。
【請求項4】
還元性雰囲気に保持され、重金属類を含有した被処理物を融点以下の温度で加熱することにより該重金属類を揮散分離する焙焼炉と、該焙焼炉にて発生した焙焼灰を配管より落下させて排出する灰排出装置とを備えた焙焼設備において、
前記灰排出装置の配管に、該配管内へ分離用気体を導入するノズルを設けるとともに、
前記ノズルから導入される分離用気体が、前記配管内に上昇気流を形成し、該上昇気流により重金属類を含有する細粒径の飛灰を前記焙焼灰から分離して前記焙焼炉に戻す流量に設定されることを特徴とする焙焼設備。
【請求項5】
前記ノズルから導入された分離用気体により形成される上昇気流は、粒径10μm以下の飛灰を該上昇気流に伴送させて前記焙焼灰から分離可能な流速を有することを特徴とする請求項4記載の焙焼設備。
【請求項6】
前記ノズルから導入された分離用気体により形成される上昇気流の流速が、0.2〜0.4m/sであることを特徴とする請求項4記載の焙焼設備。
【請求項7】
前記ノズルは、前記上昇気流が旋回流となるように配置されることを特徴とする請求項4乃至6の何れかに記載の焙焼設備。
【請求項8】
前記ノズルより上方側に位置する前記配管の一部を縮径して絞り部を設けたことを特徴とする請求項4乃至7の何れかに記載の焙焼設備。
【請求項9】
前記焙焼炉がロータリーキルンであることを特徴とする請求項4乃至8の何れかに記載の焙焼設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−172523(P2009−172523A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−14270(P2008−14270)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(501370370)三菱重工環境エンジニアリング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】