説明

無停電電源装置

【課題】構成を簡易化できるとともに、他の電源との併用を容易に実現可能な無停電電源装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る無停電電源装置1は、第1の2次電池11と、第1の2次電池11と直列に接続される第2の2次電池12と、第1の2次電池11および第2の2次電池12を商用交流電力により充電する充電器13と、第1の2次電池11および第2の2次電池12により供給される直流電力から商用交流電力に同期した交流電力を生成するハーフブリッジ型インバータ14と、商用交流電力およびハーフブリッジ型インバータ14により生成された交流電力をカップリングコンデンサにより合成する交流電力合成回路15とから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無停電電源装置に係り、特に、構成を簡易化することのできる無停電電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会においてはITシステムがインフラとして重要となっており、商用電源の喪失によるITシステムの停止は社会活動の継続性に大きな影響を及ぼす。
【0003】
そこで、商用電源の喪失に対する備えとして、ITシステムの中枢であるサーバに無停電電源装置を設置する場合が増えてきており、すでに多くの無停電電源装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
無停電電源装置の大部分は、通常は負荷に商用電源から電力を供給し、停電時には2次電池に蓄電されている電力をインバータにより交流に変換して負荷へ電力を供給するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−97676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の無停電電源装置は商用電力とインバータから供給される電力との切り換えをスイッチにより行うものが多く、スイッチの高速化、同期切り換え等が必要となり、無停電電源装置の構成が複雑化することは不可避であった。
【0007】
さらに、複数の無停電電源装置の並列接続、自家用発電設備との協調運転等も困難を伴う場合が多かった。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、構成を簡易化できるとともに、他の電源との併用を容易に実現可能な無停電電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る無停電電源装置は、第1の2次電池と、前記第1の2次電池と直列に接続される第2の2次電池と、前記第1の2次電池および前記第2の2次電池を商用交流電力により充電する充電器と、前記第1の2次電池および前記第2の2次電池により供給される直流電力から前記商用交流電力に同期した交流電力を生成するハーフブリッジ型インバータと、前記商用交流電力および前記ハーフブリッジ型インバータにより生成された交流電力をカップリングコンデンサにより合成する交流電力合成部と、を含む構成を有している。
【0010】
本発明に係る無停電電源装置は、
前記充電回路が、1つの1次巻線、第1の2次巻線および第2の2次巻線を有し前記1次巻線が上記商用交流電力により励磁される充電器用トランスと、前記第1の2次巻線に発生する交流電力を整流する第1のダイオードおよび前記第2の2次巻線に発生する交流電力を整流する第2のダイオードを含み、
前記ハーフブリッジ型インバータが、前記第1の2次電池の正極にカソード端子が接続される第1のスイッチング素子と、前記第1の2次電池の負極にアノード端子が接続される第2のスイッチング素子と、前記第1のスイッチング素子のアノード端子と前記第2のスイッチング素子のカソード端子の接続点に一方の端子が接続されるチョークコイルと、前記チョークコイルの他方の端子が一方の端子に接続され他方の端子が前記第1の2次電池の負極と前記第2の2次電池の正極との結合点に接続される積分コンデンサとを含み、
交流電力合成部が、前記商用交流電源の一方の極に一方の端子が接続される商用電源用カップリングコンデンサと、前記積分コンデンサの一方の端子に一方の端子が接続されるインバータ用カップリングコンデンサを含み、
前記商用電源用カップリングコンデンサの他方の端子と前記インバータ用カップリングコンデンサの他方の端子の接続点が一方の出力端であり前記積分コンデンサの他方の端子が他方の出力端子である構成を有している。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、構成を簡易化できるとともに、他の電源との併用を容易に実現可能な無停電電源装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る無停電電源装置の構成図である。
【図2】本発明に係る無停電電源装置のA〜E点の電圧波形図である。
【図3】ハーフブリッジ型インバータの動作状態を説明するための等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面を参照しながら、本発明に係る無停電電源装置の実施形態を説明する。
【0014】
すなわち、本発明に係る無停電電源装置1は、図1の構成図に示すように、第1の2次電池11と、第1の2次電池11と直列に接続される第2の2次電池12と、第1の2次電池11および第2の2次電池12を商用交流電力により充電する充電器13と、第1の2次電池11および第2の2次電池12により供給される直流電力から商用交流電力に同期した交流電力を生成するハーフブリッジ型インバータ14と、商用交流電力およびハーフブリッジ型インバータ14により生成された交流電力をカップリングコンデンサにより合成する交流電力合成回路15とから構成されている。
【0015】
第1の2次電池11および第2の2次電池12は、たとえばリチウム電池であり、各々は12ボルトのセルを12個直列に接続した144ボルトの直流電力を出力する。
【0016】
充電器13は、リレイ131、充電器用トランス132、充電電流測定回路133、第1のダイオード134および第2のダイオード135を含む。
【0017】
充電器用トランス132は、1つの1次巻線と2つの2次巻線を有する。
【0018】
1次巻線の一端はリレイ131を介して商用電源の一方の端子に接続され、1次巻線の他端は充電電流測定回路133を介して商用電源の他方の端子(接地側)に接続されている。
【0019】
第1の2次巻線の一端には第1のダイオード134のアノード電極が、第2の2次巻線の一端には第2のダイオード135のアノード電極が接続されている。
【0020】
また、第1のダイオード134のカソード電極は第1の2次電池11の正極に、第2のダイオード135のカソード電極は第2の2次電池12の正極に接続されている。
【0021】
さらに、第1の2次巻線の他端は第1の2次電池11の負極に、第2の2次巻線の他端は第2の2次電池12の負極に接続されている。
【0022】
なお、第1の2次電池11の負極と、第2の2次電池12の正極は共通に接地されている。
【0023】
ハーフブリッジ型インバータ14は、第1のスイッチング素子141、第2のスイッチング素子142、チョークコイル143、積分コンデンサ144、スイッチング制御回路145および位相検出用トランス146を含む。
【0024】
第1のスイッチング素子141および第2のスイッチング素子142としては、たとえばMOS−FETを適用することができる。
【0025】
第1のスイッチング素子141のソース端子は第1の2次電池11の正極に、第2のスイッチング素子142のドレン端子は第2の2次電池12の負極に接続され、第1のスイッチング素子141のドレン端子および第2のスイッチング素子142のソース端子はチョークコイル143の一方の端子に共通に接続される。
【0026】
チョークコイル143の他方の端子は積分コンデンサ144の一方の端子に接続され、積分コンデンサ144の他方の端子は接地されている。
【0027】
スイッチング制御回路145は、第1のスイッチング素子141および第2のスイッチング素子142のゲート端子に、位相検出用トランス146により検出される商用電源に同期したスイッチング信号を供給する。
【0028】
交流電力合成回路15は、商用電源用カップリングコンデンサ151とインバータ用カップリングコンデンサ152を含む。
【0029】
商用電源用カップリングコンデンサ151の一方の端子は商用電源の一方の端子に接続され、インバータ用カップリングコンデンサ152の一方の端子はハーフブリッジ型インバータ14の出力の一方の端子であるチョークコイル143の他方の端子と積分コンデンサ144の一方の端子の接続点に接続されている。
【0030】
商用電源用カップリングコンデンサ151の他方の端子とインバータ用カップリングコンデンサ152の他方の端子は共通に接続されて、本発明に係る無停電電源装置1の出力の一方の端子となる。なお、本発明に係る無停電電源装置1の出力の他方の端子は接地端子である。
【0031】
以下本発明に係る無停電電源装置の動作を説明する。
【0032】
図2は、図1に示す無停電電源装置のA〜E点の電圧波形図であって、A点の波形は商用電源の波形となる。
【0033】
充電器13の充電電流測定回路133において、第1の2次電池11および第2の2次電池12が充電可能な状態、すなわち、充電電流が所定値以上流れていれば、リレイ131は接続状態を維持し、充電器用トランス132の1次巻線に商用電力が供給される。
【0034】
充電器用トランス132の2つの2次巻線には第1の2次電池11および第2の2次電池12を充電可能な電圧の交流電力が誘起され、第1のダイオード134および第2のダイオード135により半波整流される。
【0035】
そして、第1のダイオード134から出力される直流電力により第1の2次電池11が充電され、第2のダイオード135から出力される直流電力により第2の2次電池12が充電される。
【0036】
なお、第1の2次電池11および第2の2次電池12が満充電状態となれば、充電電流は所定値以下となり、充電電流測定回路133はリレイ131を開放状態とし、第1の2次電池11および第2の2次電池12の過充電を防止するようになっている。
【0037】
ハーフブリッジ型インバータ14のスイッチング制御回路145は、位相検出用トランス146により検出される商用電源の位相に同期して、第1のスイッチング素子141および第2のスイッチング素子142を制御し、商用電源と同期した交流電力を発生するようになっている。
【0038】
図3はハーフブリッジ型インバータ14の動作状態を説明するための等価回路図であって、4つの動作状態がある。
【0039】
(イ)は第1のスイッチング素子141が接続状態、第2のスイッチング素子142が開放状態であり、電流は第1の2次電池11の正極から第1のスイッチング素子141およびチョークコイル143を経て積分コンデンサ144に流入し、第1の2次電池11の負極に戻る。
【0040】
(ロ)は第1のスイッチング素子141が開放状態に移行し、第2のスイッチング素子142が開放状態を維持している状態であり、チョークコイル143の電流を維持する機能により、第2のスイッチング素子142が内蔵するボディダイオードがオンとなり、転流電流が流れる。
【0041】
(ハ)は第1のスイッチング素子141が開放状態、第2のスイッチング素子142が接続状態であり、電流は第2の2次電池12の正極から積分コンデンサ144に流入し、チョークコイル143および第2のスイッチング素子142を経て第2の2次電池12の負極に戻る。
【0042】
(ニ)は第1のスイッチング素子141が開放状態を維持し、第2のスイッチング素子142が開放状態に移行した状態であり、チョークコイル143の電流を維持する機能により、第1のスイッチング素子141が内蔵するボディダイオードがオンとなり、転流電流が流れる。
【0043】
スイッチング制御回路145は、第1のスイッチング素子141および第2のスイッチング素子142のゲートにスイッチング制御信号を供給し、第1のスイッチング素子141および第2のスイッチング素子142をPWM(パルス幅変調)制御する。
【0044】
すなわち、スイッチング制御回路145は、スイッチング制御信号としてパルス幅制御されたスイッチング制御信号を出力する。
【0045】
その結果、第1のスイッチング素子141または第2のスイッチング素子142を流れる電流は、商用電源の正弦波状電圧に比例して増減するパルス幅を有することとなる。
【0046】
このパルス状の電流は積分コンデンサ144で積分されるため、積分コンデンサ144の両端には、商用電源に同期した交流電力が発生する。
【0047】
なお、スイッチング制御回路145は位相検出用トランス146の出力電圧が所定値以下に低下したときに動作を開始するようになっている。
【0048】
交流電力合成回路15において、商用電源は商用電源用カップリングコンデンサ151により、ハーフブリッジ型インバータ14の発生した交流電力はインバータ用カップリングコンデンサ152により、直流成分が取り除かれて、商用電源電力とハーフブリッジ型インバータ14の発生した交流電力とが合成される。
【0049】
そして、商用電源が正常であるときは、位相検出用トランス146の出力電圧は所定値より大となり、ハーフブリッジ型インバータ14は動作しない。
【0050】
この結果、交流電力合成回路15からは商用電力がそのまま出力されることとなる。
【0051】
逆に、商用電源の電圧が所定電圧以下に低下すると、位相検出用トランス146の出力電圧は所定値以下となり、ハーフブリッジ型インバータ14が動作し、交流電力を発生する。
【0052】
なお、ハーフブリッジ型インバータ14が発生する交流電力は商用電源電力と同期しているため、商用電源からインバータ電源への移行の際に電力の瞬断が発生することはない。
【0053】
なお、商用電源の電圧が復帰した際にも、瞬断が発生しないことは明らかである。
【0054】
なお、本発明に係る無停電電源装置1は、無停電電源装置1に接続される負荷に流れる負荷電流測定回路16を含んでいてもよい。
【0055】
負荷電流測定回路16は、本発明に係る無停電電源装置1が商用電源電力を出力しているときは緑色灯を点灯し、ハーフブリッジ型インバータ14が発生する交流電力を出力しているときは黄色用を点灯する。
【0056】
ハーフブリッジ型インバータ14が発生する交流電力の電流が所定値以下に低下したときは赤色灯を点灯して、使用者に2次電池が過放電となる旨を警告する。
【0057】
上記実施例においては、第1の2次電池11および第2の2次電池12を商用電源電力により充電する場合について説明したが、太陽電池、風力発電機等の直流電源により充電することも可能であることは明らかである。
【0058】
さらに、交流電力合成回路15において、他の無停電電源装置、自家発電装置等の他の交流電源が供給する交流電力も結合コンデンサを介して容易に合成可能であることも明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、無停電電源装置の構成を簡易化できるとともに、他の電源との併用も容易に実現することができ、産業上有用である。
【符号の説明】
【0060】
1 無停電電源装置
11 第1の2次電池
12 第2の2次電池
13 充電器
14 ハーフブリッジ型インバータ
15 交流電力合成回路
16 負荷電流測定回路
131 リレイ
132 充電器用トランス
133 充電電流測定回路
134 第1のダイオード
135 第2のダイオード
141 第1のスイッチング素子
142 第2のスイッチング素子
143 チョークコイル
144 積分コンデンサ
145 スイッチング制御回路
146 位相検出用トランス
151 商用電源用カップリングコンデンサ
152 インバータ用カップリングコンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の2次電池と、
前記第1の2次電池と直列に接続される第2の2次電池と、
前記第1の2次電池および前記第2の2次電池を商用交流電力により充電する充電器と、
前記第1の2次電池および前記第2の2次電池により供給される直流電力から前記商用交流電力に同期した交流電力を生成するハーフブリッジ型インバータと、
前記商用交流電力および前記ハーフブリッジ型インバータにより生成された交流電力をカップリングコンデンサにより合成する交流電力合成部と、を含む無停電電源装置。
【請求項2】
前記充電回路が、
1つの1次巻線、第1の2次巻線および第2の2次巻線を有し、前記1次巻線が上記商用交流電力により励磁される充電器用トランスと、
前記第1の2次巻線に発生する交流電力を整流する第1のダイオードおよび前記第2の2次巻線に発生する交流電力を整流する第2のダイオードを含み、
前記ハーフブリッジ型インバータが、
前記第1の2次電池の正極にカソード端子が接続される第1のスイッチング素子と、
前記第1の2次電池の負極にアノード端子が接続される第2のスイッチング素子と、
前記第1のスイッチング素子のアノード端子と前記第2のスイッチング素子のカソード端子の接続点に一方の端子が接続されるチョークコイルと、
前記チョークコイルの他方の端子が一方の端子に接続され、他方の端子が前記第1の2次電池の負極と前記第2の2次電池の正極との結合点に接続される積分コンデンサとを含み、
交流電力合成部が、
前記商用交流電源の一方の極に一方の端子が接続される商用電源用カップリングコンデンサと、
前記積分コンデンサの一方の端子に一方の端子が接続されるインバータ用カップリングコンデンサを含み、
前記商用電源用カップリングコンデンサの他方の端子と前記インバータ用カップリングコンデンサの他方の端子の接続点が一方の出力端であり、前記積分コンデンサの他方の端子が他方の出力端子である請求項1に記載の無停電電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−93961(P2013−93961A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234136(P2011−234136)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(509224103)アヅサテック株式会社 (4)
【Fターム(参考)】