説明

無機金属前駆体のリサイクルおよび精製のための方法

無機金属前駆体のリサイクルおよび精製のための方法ならびに装置。四酸化ルテニウムを含む第1のガス流が提供され、固相の低級ルテニウム酸化物へと変換される。この低級ルテニウム酸化物は水素で還元されて金属ルテニウムを生じる。金属ルテニウムは酸化性混合物と接触し、四酸化ルテニウムを含む流を生じ、残留するあらゆる酸化性混合物は蒸留によってこの流から除去される。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、全ての目的について全体が参照によってここに組み入れられる2007年4月6日に出願された米国仮特許出願第60/910,572号の利益を主張する。
【0002】
背景
発明の分野
この発明は一般的に半導体製造の分野に関する。より具体的には、本発明は半導体製造プロセスからの四酸化ルテニウムを含む廃棄物流をリサイクルする方法に関する。
【0003】
発明の背景
ルテニウムおよび四酸化ルテニウムのようなルテニウム化合物は、次世代のDRAMにおけるキャパシタ電極材料としての用途に有望であると考えられる。アルミナ、五酸化タンタル、酸化ハフニウム、およびバリウム-ストロンチウムチタナート(BST)のような高誘電率材料(別名high-k材料)は、現在、これらのキャパシタ電極に使用される。しかしながら、これらのhigh-k材料は、600℃もの高温を用いて製造され、このことはポリシリコン、シリコン、およびアルミナの酸化をもたらし、かつ、静電容量の損失を生じさせる。一方で、ルテニウムおよび酸化ルテニウムの両方は高酸化耐性および高導電性を示し、かつ、キャパシタ電極材料としての用途に適切である。それらは酸素拡散バリアとしても有効に機能する。ルテニウムは、ランタノイド酸化物のためのゲート金属としても提案されてきている。さらに、ルテニウムは、白金および他の貴金属よりも、オゾンおよび酸素を用いたプラズマによって容易にエッチングされる。メッキされた銅からlow-k材料を隔てるバリア層として、およびシード層としてのルテニウムの使用も、近年注目されてきている。
【0004】
ルテニウムおよび酸化ルテニウム(RuO2)の高品質膜は、適切な条件下で高純度四酸化ルテニウム(RuO4)の前駆体から堆積され得る。この前駆体は、バリウム-ストロンチウムチタナートおよびストロンチウムチタン酸化物のものに良く似た秀逸な導電性ならびに三次元構造を示す、ストロンチウムルテニウム酸化物のようなペロブスカイトタイプの材料の堆積(膜形成)のためにも使用され得る。
【0005】
四酸化ルテニウムが半導体製造プロセスにおける前駆体として使用される場合、該プロセスに残されるか、または該プロセスから排出されるあらゆる四酸化ルテニウムを捕捉および/または除去する必要があるときがある。四酸化ルテニウムを捕捉するための一つの方法は、四酸化ルテニウムを室温で回収するためにゴム(天然、クロロプレンまたはシリコンタイプのいずれか)を使用する。四酸化ルテニウムが有機物タイプの材料と接触したとき、四酸化ルテニウムは二酸化ルテニウムに変換されるが、その後、その材料を再び使用することはできない。残されたルテニウムをシリカ-アルミナゲルで捕捉することも可能であり得るが、これは、その後の再利用のためにルテニウムを解放することについてもいくつかの困難をもたらす。
【0006】
ルテニウムを精製するためのいくつかの方法も存在するが、これらは、その後処理されなければならず、かつ健康、安全および環境的観点の関心を生じさせ得るような、追加のプロセス化学物質(ナトリウム、塩酸、水素、または他の無機酸など)の添加を一般的に必要とする。
【0007】
したがって、半導体製造プロセスにおいて使用され、その後処分されねばならない多くの有害な副生成物を生じないような、四酸化ルテニウムをリサイクルおよび精製するための方法および装置についての需要が存在する。
【0008】
概要
本発明は、無機金属前駆体、すなわち四酸化ルテニウムをリサイクルおよび精製するための新規な方法および装置を提供する。
【0009】
一つの態様において、無機金属前駆体をリサイクルおよび精製するための方法は、四酸化ルテニウムを含む第1のガス流を提供することを含む。第1の流の少なくとも一部は、固相の低級ルテニウム酸化物へと変換される。金属ルテニウムは、その後、低級ルテニウム酸化物を水素ガスで還元することにより、低級ルテニウム酸化物の少なくとも一部を金属ルテニウムへと変換することによって作られる。金属ルテニウムはその後、酸化性混合物と接触され、四酸化ルテニウムを含有する第2の流を生じる。この第2の流は、高純度の四酸化ルテニウムを得るために、残留するあらゆる酸化性化合物を除かれる。
【0010】
一つの態様において、半導体プロセスツールから受け取った無機金属前駆体をリサイクルおよび精製するための方法は、半導体製造プロセスのアウトプットから、四酸化ルテニウムを含有する第1のガス流を受け取ることを含む。第1の流の少なくとも一部は、およそ50ないしおよそ300℃の温度に維持された加熱容器中で第1の流を加熱することによって、固相の低級ルテニウム酸化物へと変換される。金属ルテニウムはその後、低級ルテニウム酸化物を水素ガスで還元することにより、低級ルテニウム酸化物の少なくとも一部を金属ルテニウムに変換することによって作られる。金属ルテニウムはその後、酸化性混合物と接触され、四酸化ルテニウムを含有する第2の流を生じる。第2の流は、およそ99.9%の純度を持った高純度四酸化ルテニウムを得るために、残留するあらゆる酸化性化合物を除去される。高純度四酸化ルテニウムはその後、堆積プロセスにおける使用のために半導体プロセスツールに提供される。
【0011】
一つの態様において、半導体デバイスの製造において使用される無機金属前駆体のリサイクルおよび精製のための装置は、少なくとも1つの無機金属前駆体を含有する流入流を受けるための入口を含む。該流を受け取るために適切な少なくとも1つの加熱容器が設けられ、該加熱容器は、およそ50ないし300℃の温度に該容器を維持するために適切な加熱手段を含む。加熱容器に流体連通され、かつ該加熱容器の下流に配置された少なくとも1つの凝縮器が提供される。凝縮器に流体連通され、かつ該凝縮器の下流に配置された少なくとも1つの分配手段も提供される。分配手段に流体連通された出口が提供され、ここで該出口は無機金属前駆体の流を少なくとも1つの半導体プロセスツールに送るために適切なものである。
【0012】
本発明の他の態様は、限定されないが、以下の特徴の1つ以上を含み得る:
- 第1の流の少なくとも一部を、該第1の流を加熱容器に導入することによって変換すること;
- 加熱容器の操作温度をおよそ50ないし800℃に維持すること;
- 加熱容器の操作圧力をおよそ0.01ないしおよそ1000 torrに維持すること;
- 四酸化ルテニウムの少なくとも一部を固相の低級ルテニウム酸化物に変換することを助けるために、触媒を加熱容器に提供すること;
- 触媒が金属ルテニウムまたは二酸化ルテニウムを含むこと;
- 加熱容器の操作温度をおよそ100ないし300℃に維持すること;
- ルテニウム酸化物の少なくとも99%、好ましくはおよそ99.9%を、水素ガスによる還元によって金属ルテニウムへと還元すること;
- 水素による還元により作られた金属ルテニウムが、およそ1.0 m2/g超、好ましくはおよそ7.0 m2/gの比表面積を持つこと;
- 水素によるルテニウム酸化物の還元の後、かつ金属ルテニウムが酸化性混合物と接触する前に、加熱容器から金属ルテニウムの少なくとも一部を除去すること;
- 酸化性混合物が、NO、NO2、O2、O3、その混合物、およびプラズマ励起されたその混合物からなる群より選択された少なくとも1つの要素を含むこと;
- 四酸化ルテニウムの第2の流から、蒸留プロセスによってあらゆる酸化性化合物を除去すること;
- 四酸化ルテニウムをおよそ99.9%超の純度で得ること;
- 溶媒中に高純度四酸化ルテニウムをバブリングし、溶媒と高純度四酸化ルテニウムとの飽和混合物を形成すること;
- 四酸化ルテニウムを直接気化工程によって気化させること;
- ナトリウムまたはハロゲン含有化合物を導入することなく高純度四酸化ルテニウムを作ること;
- 加熱容器に流体連通されるように配置された水素源が提供されること;
- 加熱容器に流体連通されるように配置された酸化性混合物源が提供されること;
- 第1の容器、凝縮器および分配手段に全て平行に配置されている第2の加熱容器、凝縮器および分配手段が提供されること;
- 第1の加熱容器と第2の加熱容器の間に、無機金属前駆体の流入流を分流するための手段が提供されること;
- 無機金属前駆体の流が触媒と接触するように、加熱容器の内側に堆積される触媒が提供されること;
- 高純度四酸化ルテニウムを、第1のガス流を一時的に受け取る半導体プロセスツールに提供すること。
【0013】
先述されたものは、以下の詳細な説明がより良く理解され得るように、本発明の特徴および技術的な利点を幾分広く概説している。本発明のさらなる特徴は以下に記載され、本発明の要旨を形成する。開示された概念および特定の態様は、本発明の同じ目的を実行するための他の構成を変更または設計するための根拠として容易に利用され得ることが、当業者に理解されるべきである。このような均等の構成は、添付の請求項に記載された本発明の精神および範囲から逸脱しないことも当業者に理解されるべきである。
【0014】
本発明についての特性および目的のさらなる理解のために、添付図と関連した以下の詳細な説明について参照がなされ、ここで同様の要素は類似または同一の参照番号を与えられる。
【0015】
好ましい態様の記載
一般に、半導体デバイスの製造において使用された材料を廃棄する代わりに捕捉および再利用し得ることが、環境およびコスト両方の観点から好ましい。ルテニウムがこれらのデバイスの製造に使用されるとき、プロセスは通常、ルテニウムが四酸化ルテニウムの形態で供給されることを要する。これらのプロセスは四酸化ルテニウムの全てを使用しないので、四酸化ルテニウムがプロセス廃棄物中に(他の副生成物とともに)存在し得る。同一または異なる製造プロセスにおいて再使用され得るように、四酸化ルテニウムを捕捉して精製し得ることが好ましい。
【0016】
一般に、本発明は無機金属前駆体をリサイクルおよび精製するための方法に関し、四酸化ルテニウムを含む第1のガス流を提供することを含む。第1の流の少なくとも一部は、固相の低級ルテニウム酸化物へと変換される。金属ルテニウムはその後、水素ガスで低級ルテニウム酸化物を還元することにより低級ルテニウム酸化物の少なくとも一部を金属ルテニウムへと変換することによって作られる。金属ルテニウムはその後、酸化性混合物と接触され、四酸化ルテニウムを含有する第2の流を生じる。この第2の流は、高純度四酸化ルテニウムを得るために、残留するあらゆる酸化性化合物を除去される。本発明は、少なくとも1つの無機金属前駆体を含有する流入流を受け取るための入口を含む半導体デバイスの製造において使用される無機金属前駆体のリサイクルおよび精製のための装置にも関する。流を受け取るために適切な少なくとも1つの加熱容器が提供され、該加熱容器は、該容器をおよそ50ないし300℃の温度に維持するために適切な加熱手段を含む。該加熱容器に流体連通され、かつ該加熱容器の下流に配置された少なくとも1つの凝縮器が提供される。該凝縮器に流体連通され、かつ該凝縮器の下流に配置された少なくとも1つの分配手段も提供される。該分配手段に流体連通された出口が提供され、ここで該出口は無機金属前駆体の流を少なくとも1つの半導体プロセスツールへと送るために適切なものである。
【0017】
ここで図1を参照して、本発明による方法および装置の非限定的な態様が以下に記載される。前駆体のリサイクルおよび精製のシステム100が示される。四酸化ルテニウムを含有する無機金属前駆体101の第1の流が提供される。この流は、化学気相堆積(CVD)または原子層堆積(ALD)プロセスのような半導体堆積プロセスからの廃棄物または過剰生成物であり得る。第1の流101は、入口、出口、および固体前駆体がそこに収集されるのに適切な少なくとも1つの内側表面103を持つ加熱容器102に送られ得る。加熱容器102は、加熱容器102の温度をおよそ50ないし800℃、好ましくはおよそ100ないし300℃の温度に維持するのに適切な加熱手段104も含み得る。
いくつかの態様において、加熱容器102は当業者に既知の通常のタイプの金属反応容器であり得る。加熱容器102は、内部圧力をおよそ0.01 torrないしおよそ1000 torrに維持するために適切であるように構築され得る。同様に、いくつかの態様において、加熱手段104は、抵抗加熱器または加熱容器の壁に熱を提供する直接加熱器のような通常の加熱手段であり得る。
【0018】
いくつかの態様において、加熱手段102は、水素源105および酸化剤混合物源106に流体連通している。水素源105および酸化剤混合物106は、両方ともガスのシリンダーのような通常の供給源であるか、または他の供給ラインもしくは供給システムの出口に対する接続であり得る。いくつかの態様において、酸化性混合物106は、NO、NO2、O2、O3、またはその混合物であり得る。
【0019】
第1の流101が加熱容器102に入るとき、第1の流101内に含まれる四酸化ルテニウムは、加熱により一般に以下に示されるような通常の分解反応に従って分解し、固体の低級ルテニウム酸化物(例えば二酸化ルテニウム)を生じる;
【化1】

【0020】
いくつかの態様において、この反応に要する熱量は、およそ100ないし300℃、好ましくはおよそ210℃であり得る。低級ルテニウム以外の分解反応の任意の副生成物(例えば酸素)は、加熱容器102の外に送られ、そしてベント108へと送られ得る。生成した低級ルテニウムは、加熱容器102の内部表面103を形成し得る。
【0021】
いくつかの態様において、四酸化ルテニウムの低級ルテニウム酸化物への変換を助けるために、触媒が加熱容器102に添加され得る。この触媒は、通常の方法、例えば加熱容器102中のアクセスパネル(図示せず)を通して加熱容器102の少なくとも1つの内部表面103に機械的に添加され得る。いくつかの態様において、触媒は金属ルテニウムまたは二酸化ルテニウムであり得る。
【0022】
加熱容器の内部表面103上に位置するこの低級ルテニウムは、その後、水素ガス105を加熱容器102へと導入することによって金属ルテニウムに変換され得る。爆発下限(例えば4体積%)未満の量で導入される水素ガス105は、一般的に以下に示されるような通常の還元反応によって酸化ルテニウムを金属ルテニウムへと還元する;
【化2】

【0023】
水素以外の化合物が使用されないので、この還元反応の収率は非常に高く、およそ99%超、好ましくはおよそ99.9%超の収率であり得る。金属ルテニウム以外のいくつかの反応生成物(例えば水素、酸素、または水蒸気)は、加熱容器102の外に送られ、そしてベント108に送られ得る。
【0024】
この方法で作られる金属ルテニウムは、大きな比表面積を持つということにおいて少なくとも1つの有利な特性を持つということが証明されている。例えば、本発明のいくつかの態様により作られる金属ルテニウムの比表面積はおよそ1.0 m2/g超、好ましくはおよそ7.0 m2/gである。
【0025】
いくつかの態様において、金属ルテニウムの少なくとも一部は、水素による酸化ルテニウムの還元の後、かつ金属ルテニウムと酸化剤混合物の接触の前に、加熱容器102から除去され得る。金属ルテニウムの除去は、一般的な方法、例えばアクセスパネル(図示せず)を介して加熱容器102から金属の一部を機械的に除去することによって為され得る。金属ルテニウムはその後、他の種々のプロセスにおいて、例えば他の前駆体(例えばRuCl3)の合成において使用され得る。
【0026】
金属ルテニウムが作られた後、該金属ルテニウムは酸化剤混合物106と接触し、四酸化ルテニウムを生成する。酸化性混合物がオゾンである一つの態様において、四酸化ルテニウムの生成は一般的に以下に示されるように生じる;
【化3】

【0027】
これらの態様において、酸化剤混合物106が金属ルテニウム全体に流され、金属ルテニウムがガス流中で腐食される。ガス流中に含まれる四酸化ルテニウムの量は、加熱容器102の下流に位置する分析器109によるモニタリングによって測定され得る。分析器109は当業者に既知の通常のタイプの分析器であり得、例えば分析器109はUV分光計であり得る。
【0028】
本発明の少なくとも1つの態様により作られた四酸化ルテニウムは、四酸化ルテニウムの生成速度が非常に速いということにおいて少なくとも1つの有利な特性を持つということが証明されている。金属ルテニウムが高収率で生成するので、該金属ルテニウム上に、四酸化ルテニウムの生成における酸化剤混合物と金属ルテニウムの反応を妨害し得るようなルテニウム酸化物層が殆どないか、または全く存在しない。これは、金属ルテニウムからの四酸化ルテニウムの迅速かつ効率的な生成をもたらす。
【0029】
ガス流中に取り込まれる四酸化ルテニウムが作られた後、該四酸化ルテニウムはその後、高純度四酸化ルテニウムを作るために、残留するあらゆる酸化性化合物を除去される。いくつかの態様において、高純度四酸化ルテニウムは、低温蒸留タイプのプロセスにより酸化性化合物を分離することによって作られる。例えば、四酸化ルテニウムは、四酸化ルテニウムが凝縮して収集される一方で、低い沸点を持つ酸化性化合物(例えばオゾンまたは酸素)は低温蒸留カラム110を通過せず、ベント108に送られるような温度にある低温蒸留カラム110に混合物を送ることによって、酸化剤混合物から分離され得る。いくつかの態様において、このプロセスはおよそ99.9%以上の純度を持つ精製された四酸化ルテニウムを与える。
【0030】
四酸化ルテニウムが酸化性化合物から分離された後に、該四酸化ルテニウムは、半導体製造プロセス112へ分配するための四酸化ルテニウムを用意する分配手段111に送られ得る。いくつかの態様において、精製された四酸化ルテニウムは、分配手段111が、プロセス112へ分配される四酸化ルテニウムの量を調節するフローコントローラーであり得るような半導体製造プロセス(例えばCVDまたはALD堆積)に直接使用され得る。いくつかの態様において、精製された四酸化ルテニウムは、製造プロセス112に提供される前に、まず、溶媒を介してバブリングされ得る。これらの態様において、精製された四酸化ルテニウムは蒸留カラム110から分配手段111へと送られ得、ここで、製造プロセスに提供される前に溶媒(例えば、全て3M社から市販されているHFE-7500、HFE 7100、HFE、7200またはその混合物)中でバブリングされ得る。分配手段111は、当業者に既知の通常のタイプのバブラーであり得る。いくつかの態様において、分配手段111は直接気化タイプのシステムであり得、ここで四酸化ルテニウムは、直接気化工程を介して製造プロセス112に導入され得る。このような直接気化システムは当技術分野で既知のものであり、液体マスフローコントローラーまたはガラスもしくは金属チューブのような気化器を含み得る。イナートガス(例えば窒素、アルゴン、ヘリウムなど)は四酸化ルテニウムを加圧し、四酸化ルテニウムを、貯蔵容器から液体フローコントローラーを通して気化器へと流すために使用され得る。イナートガスが液体を流すために使用されない場合、真空(または低圧条件)が前駆体貯蔵容器の下流、例えば気化器出口で発生され得る。
【0031】
先述された本発明の態様に関して、バルブおよびフローコントローラーのような他の種々の要素は、必要に応じてシステムに組み込まれ得ることが知られている。例えば、先述された全ての要素(例えば、加熱容器102、蒸留カラム110、分配手段111)は、当業者に既知のように、上流または下流に配置されるバルブを持ち得る。同様に、種々のフローコントローラーは、本発明の態様により使用される種々のガスの流量を制御および変更するために組み込まれ得る。便宜的に、これらの要素は図1に示されていないが、本発明の種々の態様に組み込まれ得ると理解される。
【0032】
図2を参照して、本発明による装置の非限定的な態様が以下に記載される。この態様において、図1に記載された装置が一般に提供される(同じ番号は類似の要素を示す)。要素の第2の組(例えば、第2の加熱容器202、第2の分析器209、第2の蒸留カラム210および第2の分配手段211)が、第1の加熱容器102、第1の分析器、第1の蒸留カラム110および第1の分配手段111(例えば、要素の第1の組)に対して平行な配置で与えられる。さらに、第1の加熱容器102と第2の加熱容器202の間に、無機金属前駆体の流入流を分流する手段203が与えられる。いくつかの態様において、この分流手段203は通常のタイプの三方バルブであり得る。この態様において、平行な配置が一方の組の要素からの四酸化ルテニウムの配送を可能にする一方で、他方の組の要素が四酸化ルテニウムをリサイクルするか精製するかのいずれかを行うので、精製された四酸化ルテニウムを半導体ツール(例えば製造プロセス)112へと連続的に提供することが可能である。つまり、平行な配置は、半導体ツール(例えば製造プロセス)112への精製された四酸化ルテニウムの配送と同時の、第1のガス流101の受け取りを可能にする。
【0033】
先述されたものは、無機金属前駆体(例えば四酸化ルテニウム)のリサイクルおよび精製のための方法および装置に関して本発明を記述するが、本発明はオスミウムを含む前駆体化合物についても適用され得る。
【0034】

以下の非限定的な例は、本発明の態様をさらに説明するために与えられる。しかしながら、例は全て包括的であることを意図しておらず、ここに記載された発明の範囲を限定することを意図していない。
【0035】
例1
市販のルテニウム(Sigma-Aldrich社から入手した200ミクロンメッシュのルテニウム粉末)と、本発明の態様によりリサイクルされたルテニウムを比較した。分析に先立って両方の試料をN2/He雰囲気中、120℃で2時間乾燥させ、各々の比表面積をBET分析によって調べた。リサイクルされたルテニウムは、市販のものより18倍大きい比表面積を示した。
【表1】

【0036】
例2
水素還元の効率は、2つのスパッタリングされたルテニウム試料上での、オゾンの洗浄キャパシティ(cleaning capacity)の違いにより調べられ、その一方は水素で還元されていたものであり(「被処理」)、他方は還元されていなかったものである(「未処理」)。およそ1000 Aの2つのルテニウム試料がクロム層(粘着層)上に堆積された。被処理試料は、まず、大気圧下、およそ200℃の温度で水素(窒素中の4%水素)による還元反応によって処理された。この処理は、およそ5分間続けられた。未処理試料にはこのような処理が行われなかった。両方の試料はその後、オゾン(5%オゾン/酸素)の流に暴露された。その後、オージェ深さ方向分析が両方の試料について実施された。図3は、被処理試料からの結果を示す一方で、図4は未処理試料の結果を示す。図5は、酸化性(オゾン)混合物の流が動き出した後の、四酸化ルテニウムの生成における被処理試料についての応答時間を示す。
【0037】
例3
本発明の態様により生成した残留酸化性化合物から四酸化ルテニウムを分離するための試験が、蒸留カラム/低温トラップを用いて実施された。温度が-30℃に設定された低温トラップが与えられ、四酸化ルテニウム/オゾン混合物が該トラップを通して流された。この例においては、低温をもたらすためにプロパノールが液体窒素と混合された。該混合物がトラップ(この場合ではガラス)を通して流されると、四酸化ルテニウムが収集されるときに特徴的な黄色への変化を観察することができた。オゾンおよび酸素の沸点が低いので(それぞれ-112℃および-183℃)、これらの分子のいずれも冷却デバイス中でトラップされず、したがって四酸化ルテニウムの高度の精製を保証する。四酸化ルテニウムの配送は、その後UV分光計によって調べられ、四酸化ルテニウムの生成は温度の関数としてモニターされた。図6は、配送された四酸化ルテニウムの流が、蒸留カラム/低温トラップ中の適切な温度を正確に設定することによってどのように制御されるかを示す。
【0038】
本発明の態様が図示され、記載されているが、本発明の精神および教唆から逸脱することなく、その変更が当業者によって為され得る。記載された態様およびここに与えられた例は単なる例示であって、限定を意図しない。ここに開示された本発明の多くの変形および変更が、本発明の範囲内で可能である。したがって、保護範囲は、先に提示された記載に限定されず、以下の請求項によってのみ限定され、その範囲は請求項の要旨の全ての均等物を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、無機金属前駆体をリサイクルおよび精製するプロセスの1つの態様の模式図である。
【図2】図2は、無機金属前駆体をリサイクルおよび精製するプロセスの他の態様の模式図である。
【図3】図3は、本発明の一つの態様による実験結果を示す。
【図4】図4は、図3に示されたものに対する比較実験結果を示す。
【図5】図5は、本発明の一つの態様による実験結果を示す。
【図6】図6は、本発明の一つの態様による実験結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機金属前駆体をリサイクルおよび精製する方法であって、
a) 四酸化ルテニウムを含む第1のガス流を提供すること、
b) 前記四酸化ルテニウムの第1の流の少なくとも一部を固相の低級ルテニウム酸化物へと変換すること、
c) 前記ルテニウム酸化物の少なくとも一部を、前記ルテニウム酸化物を水素で還元することにより金属ルテニウムに変換することによって、金属ルテニウムを作ること、
d) 前記金属ルテニウムを酸化性混合物に接触させ、四酸化ルテニウムを含む第2の流を作ること、および
e) 高純度四酸化ルテニウムを得るために、前記四酸化ルテニウムの第2の流からあらゆる酸化性化合物を除くこと
を含む方法。
【請求項2】
a) 前記第1の流を加熱容器に導入することによって、前記第1の流の少なくとも一部を変換すること、
b) 前記加熱容器の操作温度をおよそ50ないし800℃に維持すること、
c) 前記加熱容器の操作圧力をおよそ0.01ないしおよそ1000 torrに維持すること
をさらに含む請求項1の方法。
【請求項3】
前記四酸化ルテニウムの少なくとも一部を前記固相の低級ルテニウム酸化物へと変換することを助けるために、前記加熱容器中に触媒を提供することをさらに含む請求項2の方法。
【請求項4】
前記触媒が金属ルテニウムまたは二酸化ルテニウムを含む請求項3の方法。
【請求項5】
前記加熱容器の操作温度をおよそ100ないし300℃に維持することをさらに含む請求項2の方法。
【請求項6】
前記ルテニウム酸化物の少なくともおよそ99%が、水素による還元によって金属ルテニウムへと還元される請求項1の方法。
【請求項7】
前記ルテニウム酸化物の少なくともおよそ99.9%が、水素による還元反応によって金属ルテニウムへと還元される請求項6の方法。
【請求項8】
水素による還元によって作られた金属ルテニウムが、およそ1.0 m2/g超の比表面積を持つ請求項1の方法。
【請求項9】
水素による還元によって作られた金属ルテニウムは、およそ7.0 m2/g超の比表面積を持つ請求項1の方法。
【請求項10】
水素によるルテニウム酸化物の還元の後、かつ金属ルテニウムと前記酸化性混合物が接触する前に、前記金属ルテニウムの少なくとも一部を前記加熱容器から除去することをさらに含む請求項1の方法。
【請求項11】
前記酸化性混合物が、
a) NO、
b) NO2
c) O2
d) O3
e) その混合物、および
f) そのプラズマ励起種
からなる群より選択された少なくとも1つの要素を含む請求項1の方法。
【請求項12】
a) 前記四酸化ルテニウムの第2の流から、蒸留プロセスによってあらゆる酸化性化合物を除去すること、および
b) およそ99.9%超の純度を持つ四酸化ルテニウムを得ること
を含む請求項1の方法。
【請求項13】
溶媒を介して前記高純度四酸化ルテニウムをバブリングし、溶媒と高純度四酸化ルテニウムとの飽和混合物を形成することをさらに含む請求項1の方法。
【請求項14】
直接気化工程によって前記四酸化ルテニウムを気化させることをさらに含む請求項1の方法。
【請求項15】
前記工程(a)〜(e)のいずれかにおいて、ナトリウムまたはハロゲンを含有する化合物を導入することなく、前記高純度四酸化ルテニウムを作ることをさらに含む請求項1の方法。
【請求項16】
半導体デバイスの製造に使用される無機金属前駆体の流のリサイクルおよび精製のための装置であって、
a) 無機金属前駆体の流入流を受け取るための入口と、
b) 前記無機金属前駆体の流を受けるために適切な少なくとも1つの第1の加熱容器であって、前記容器をおよそ50ないし300℃の温度に加熱するために適切な加熱手段を含む加熱容器と、
c) 前記加熱容器に流体連通され、かつ前記加熱容器の下流に配置された少なくとも1つの凝縮器と、
d) 前記凝縮器に流体連通され、かつ前記凝縮器の下流に配置された少なくとも1つの分配手段と、
e) 無機金属前駆体の流を少なくとも1つの半導体プロセスツールに送るための前記分配手段に流体連通された出口と
を含む装置。
【請求項17】
a) 加熱容器に流体連通されるように配置された水素源と、
b) 前記加熱容器に流体連通されるように配置された酸化性混合物源と
をさらに含む請求項16の装置。
【請求項18】
a) 第1の容器、凝縮器および分配手段に全て平行に配置された第2の加熱容器、凝縮器および分配手段と、
b) 前記第1および第2の容器の間で無機金属前駆体の流入流を分流する手段と
をさらに含む請求項16の装置。
【請求項19】
前記無機金属前駆体の流が前記触媒と接触するように、前記加熱容器の内側に堆積された触媒をさらに含む請求項16の装置。
【請求項20】
前記半導体プロセスツールに送られる前記無機前駆体の流が、少なくともおよそ99.9%の四酸化ルテニウムを含む請求項16の装置。
【請求項21】
半導体プロセスツールから受け取った無機金属前駆体をリサイクルおよび精製するための方法であって、
a) 半導体プロセスツールの出口から、四酸化ルテニウムを含む第1のガス流を受け取ること、
b) およそ50ないし300℃の温度に維持された加熱容器中で前記第1の流を加熱することによって、前記四酸化ルテニウムの第1の流の少なくとも一部を固相の低級ルテニウム酸化物に変換すること、
c) 前記ルテニウム酸化物を水素で還元することにより前記ルテニウム酸化物の少なくとも一部を金属ルテニウムに変換することによって金属ルテニウムを作ること、
d) 前記金属ルテニウムを酸化性混合物に接触させ、四酸化ルテニウムを含む第2の流を作ること、
e) 高純度四酸化ルテニウムを得るために前記四酸化ルテニウムの第2の流からあらゆる酸化性化合物を除去することであって、前記高純度四酸化ルテニウムはおよそ99.9%の純度を持つこと、
f) 堆積プロセスにおいて使用するために、前記高純度四酸化ルテニウムを半導体プロセスツールに提供すること
を含む方法。
【請求項22】
前記第1のガス流の受け取り同時に、前記高純度四酸化ルテニウムを半導体プロセスツールに提供することをさらに含む請求項19の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−516369(P2011−516369A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504925(P2010−504925)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【国際出願番号】PCT/IB2008/051324
【国際公開番号】WO2009/122240
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(591036572)レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード (438)
【Fターム(参考)】