説明

無段変速機

傾斜可能な回転軸線(1009A、1009B)を各々が有する、主駆動軸線(1010)の周囲に角度を付けて配置された複数のトラクション遊星(1008)を有する無段変速機(1000)であって、この無段変速機が、複数のスロットを有する、主駆動軸線(1010)と同軸の第1のステータ板(1014)と、複数の半径方向スロット(1044−図10)を有する、主駆動軸線(1010)と同軸の第2のステータ板(1016)とを備え、スロット(1040、1044)がトラクション遊星(1008)の傾斜可能な回転軸線(1009A、1009B)を案内し、第1のステータ板(1014)が第2のステータ板(1016)に対して回転するように構成される無段変速機(1000)において、第1のステータ板のスロットが半径方向にオフセットされたスロット(1040−図10)であることを特徴とする無段変速機(1000)。動作:半径方向にオフセットされたスロットによって、ステータ板の間における相対的回転がトラクション遊星のスキューを生じさせ、そのスキューが、トラクション遊星を(自動的に)傾斜させて平衡状態にする力を生じさせる。各傾斜位置により、異なる変速比が構成される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、概して変速機に、より詳しくは、無段変速機(CVT)用の方法、アセンブリ、および構成要素に関する。
【背景技術】
【0002】
入力速度対出力速度の無段比を達成するためのよく知られた方法がある。典型的に、CVTにおいて出力速度対入力速度の速度比を調節するための機構はバリエータとして知られている。ベルト型のCVTでは、バリエータは、ベルトによって結合された調節可能な2つのプーリから成る。シングルキャビティ式トロイダル型CVTにおけるバリエータは、通常、シャフトを中心に回転する2つの部分的トロイダル型変速機ディスクと、シャフトに垂直なそれぞれの軸線上で回転しかつ入力変速機ディスクと出力変速機ディスクとの間で締め付けられた2つ以上のディスク形パワーローラとを有する。通常、動作時に所望の速度比を達成することができるように、バリエータ用の制御システムが使用される。
【0003】
本明細書に開示するバリエータの実施形態は、球形の速度アジャスタ(パワーアジャスタ、ボール、遊星、球形歯車、またはローラとしても知られている)を利用する球形バリエータであり、上記球形の速度アジャスタの各々は、動作時に所望の出力速度対入力速度比を達成するように調節されるようになっている傾斜可能な回転軸線を有する。速度アジャスタは、CVTの長手方向軸線に垂直な平面に角度的に分配される。速度アジャスタは、一方の側で入力ディスクに接触し、他方の側で出力ディスクに接触し、これらのディスクの一方または両方が、トルクを伝達するために締め付け接触力をローラに加える。入力ディスクは、ある入力回転速度で入力トルクを速度アジャスタに加える。速度アジャスタは、それら自体の軸線を中心に回転するときにトルクを出力ディスクに伝達する。出力速度対入力速度比は、速度アジャスタの軸線に対する入力ディスクおよび出力ディスクの接触点の半径の関数である。速度アジャスタの軸線をバリエータの軸線に対して傾斜させることにより、速度比が調節される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
性能および動作制御を改善するバリエータおよびその制御システムが、当業界で必要とされ続けている。本明細書に開示するシステムおよび方法の実施形態は、前記必要性に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に記載するシステムおよび方法は、いくつかの特徴を有し、これらのうちの1つだけがその望ましい属性を唯一もたらすわけではない。添付の特許請求の範囲で述べられるような範囲を限定せずに、そのより顕著な特徴をここで簡単に説明する。この説明を考慮すれば、特に「発明を実施するための形態」という見出しの項を読めば、本システムおよび方法の特徴が、従来のシステムおよび方法に勝るいくつかの利点をいかにして提供するかが理解されるであろう。
【0006】
本発明の一態様は、一群のトラクション遊星を有する無段変速機(CVT)の速度比を調節する方法に関する。各トラクション遊星は、傾斜可能な回転軸線を有する。本方法は、傾斜可能な各回転軸線にスキュー状態を独立して適用するようにCVTのステータを構成するステップを含む。一実施形態では、スキュー状態は少なくとも部分的にステータ板の角変位に基づく。別の実施形態では、スキュー状態は少なくとも部分的に、傾斜可能な回転軸線の傾斜角に基づく。
【0007】
本発明の別の態様は、一群のトラクション遊星を有する無段変速機(CVT)の速度比を調節する方法に関する。各トラクション遊星は、傾斜可能な回転軸線を有する。一実施形態では、本方法は、各トラクション遊星が動作可能に結合されるステータを回転させるステップを含む。ステータは、傾斜可能な各回転軸線にスキュー状態を独立して適用するように構成することができる。さらに、本方法は、傾斜可能な各回転軸線を案内して平衡状態にするステップを含むことができる。平衡状態は少なくとも部分的にステータ板の回転に基づくことができる。いくつかの実施形態では、平衡状態は実質的にゼロスキュー角状態を有する。
【0008】
本発明のさらに別の態様は、無段変速機(CVT)の一群のトラクション遊星を支持する方法に関する。各トラクション遊星は、傾斜可能な回転軸線を有する。一実施形態では、本方法は、半径方向にオフセットされた複数のスロットを有する第1のステータ板を設けるステップを含む。半径方向にオフセットされたスロットは第1のステータ板の中央部の周囲に角度を付けて配置される。本方法は、トラクション遊星の各々を第1のステータ板に動作可能に結合するステップを含むことができる。一実施形態では、本方法は、複数の半径方向スロットを有する第2のステータ板を設けるステップを含む。半径方向スロットを第2のステータ板の中央部の周囲に角度を付けて配置することができる。さらに、本方法は、トラクション遊星を第2のステータ板に動作可能に結合するステップを含むことができる。
【0009】
本発明の一態様は、一群のトラクション遊星を有する無段変速機(CVT)の速度比を調節する方法に関する。各トラクション遊星は、傾斜可能な回転軸線を有する。本方法は、トラクション遊星の各々に動作可能に結合されるステータ板を設けるステップを含む。一実施形態では、本方法は、CVTの速度比の設定値を受信するステップを含む。本方法は、ステータ板の角変位の設定値を決定するステップを含むことができる。設定値は少なくとも部分的に速度比の設定値に基づくことができる。さらに、本方法は、ステータ板をその角変位の設定値まで回転させるステップを含むことができる。ステータ板を回転させるステップにより、傾斜可能な各回転軸線でスキュー状態を生じさせることができる。ステータ板は、傾斜可能な各回転軸線が傾斜するときにスキュー状態を調節するように構成することができる。
【0010】
本発明の別の態様は、一群のトラクション遊星を有する無段変速機(CVT)の速度比を調節する方法に関する。各トラクション遊星は、傾斜可能な回転軸線を有するように構成することができる。本方法は、CVTの速度比の設定値を決定するステップを含むことができる。一実施形態では、本方法は、CVTの実際の速度比を測定するステップを含むことができる。本方法は、実際の速度比と速度比の設定値とを比較し、これによって比較値を生成するステップを含む。さらに、本方法は、少なくとも部分的に比較値に基づいてステータ板を角変位まで回転させるステップを含む。ステータ板を回転させるステップにより、スキュー状態がトラクション遊星の各々に適用される。傾斜可能な各回転軸線が傾斜するときに、スキュー状態は変化し、角変位は一定のままである。
【0011】
本発明のさらに1つ以上の態様は、主駆動軸線の周囲に角度を付けて配置された一群のトラクション遊星を有する無段変速機(CVT)に関する。各トラクション遊星は、傾斜可能な回転軸線を有する。CVTは、主駆動軸線と同軸の第1のステータ板を有する。第1のステータ板は、半径方向にオフセットされた複数のスロットを有することができる。傾斜可能な各軸線が他の軸線から独立して案内されるように、半径方向にオフセットされたスロットを構成することができる。CVTは主駆動軸線と同軸の第2のステータ板を有することができる。第2のステータ板は複数の半径方向スロットを有することができる。半径方向スロットは、傾斜可能な回転軸線を独立して案内するように構成することができる。第1のステータ板は第2のステータ板に対して回転するように構成される。
【0012】
別の態様では、本発明は、複数のトラクション遊星を有する無段変速機(CVT)用のステータ板に関する。ステータ板は、中央部を有するほぼディスク形の物体を有することができる。一実施形態では、ステータ板は、中央部の周囲に角度を付けて配置されている半径方向にオフセットされた複数のガイドを有することができる。半径方向にオフセットされたガイドの各々は、ディスク形の物体の中心線からオフセットされた直線部を有することができる。
【0013】
本発明の別の態様は、一群のトラクション遊星を有する無段変速機(CVT)に関する。各トラクション遊星は、傾斜可能な回転軸線を有する。一実施形態では、CVTは、その主駆動軸線の周囲に同軸に配置された第1のステータ板を有する。第1のステータ板を各トラクション遊星に動作可能に結合することができる。第1のステータ板は、その中央部の周囲に角度を付けて配置されている半径方向にオフセットされた複数のスロットを有することができる。半径方向にオフセットされたスロットの各々は、第1のステータ板の中心線からオフセットされた直線部を有することができる。さらに、CVTは、その主駆動軸線の周囲に同軸に配置された第2のステータ板を有することができる。第2のステータ板は複数の半径方向スロットを有する。半径方向スロットを第2のステータ板の中央部の周囲に角度を付けて配置することができる。半径方向スロットの各々は第2のステータ板の中央部にほぼ半径方向に整列される。CVTは、第1および第2のステータ板の少なくとも一方に動作可能に結合されたアクチュエータを有することができる。アクチュエータは第1のステータ板と第2のステータ板との間で相対的回転を与えるように構成することができる。
【0014】
本発明の一態様は、一群のトラクション遊星を含むボール遊星無段変速機(CVT)に関する。各トラクション遊星は、傾斜可能な回転軸線を有する。さらに、CVTは、その主駆動軸線に垂直な線に整列された第1のガイドを含むことができる。第1のガイドは、傾斜可能な回転軸線に作用するように構成することができる。さらに、CVTは、その主駆動軸線に垂直な線に平行である線に整列された第2のガイドを含むことができる。第2のガイドは、傾斜可能な回転軸線に作用するように構成することができる。
【0015】
本発明の別の態様は、無段変速機(CVT)を製造する方法に関する。一実施形態では、本方法は、CVTの主駆動軸線に垂直な線に半径方向に整列される第1のガイドを設けるステップを含む。本方法は、オフセットされる第2のガイドを設けるステップを含む。投影面において、第1および第2のガイドのそれぞれの投影線が交差し、これによって交差位置が形成される。本方法は、一群のトラクション遊星を第1および第2のガイドに動作可能に結合するステップを含むことができる。さらに、本方法は、第1および第2のガイドが主駆動軸線を中心に互いに回転することができるように、第1および第2のガイドを構成するステップを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】ボール遊星無段変速機(CVT)の特定の構成要素、および特定の該当座標系の概略図である。
【図1B】図1Aに示す座標系に関連する特定の相対座標系の図である。
【図1C】図1AのCVTの特定の接触する構成要素の間における特定の運動学的関係の概略図である。
【図1D】CVTトラクションの構成要素の間における典型的なトラクション流体および転がり接触に関するトラクション係数対相対速度の代表的なチャートである。
【図1E】図1AのCVTのトラクション遊星の自由物体図である。
【図1F】スキュー角を示す図1AのCVTのトラクション遊星の概略図である。
【図2】本明細書に開示するCVTおよびスキュー制御システムとそれらに関する方法との本発明の特定の実施形態を使用するように構成された駆動装置の実施形態のブロック図である。
【図3】ボール遊星CVTの特定の構成要素、および特定の該当座標系の概略図である。
【図4】図3のCVTの特定の構成要素、および特定の該当座標系の概略図である。
【図5A】図3のCVTの特定の構成要素の概略図である。
【図5B】図3のCVTの特定の構成要素の概略図である。
【図5C】図3のCVTと共に使用することができる特定の構成要素の概略図である。
【図6A】図3のCVTと共に使用することができるスキューベース制御プロセスのフローチャートである。
【図6B】図6Aのスキューベース制御プロセスのサブプロセスで使用することができるルックアップテーブルを示すチャートである。
【図6C】図6Aのスキューベース制御プロセスと共に使用することができるアクチュエータサブプロセスのフローチャートである。
【図7】スキュー制御システムを有するCVTの本発明の実施形態の断面図である。
【図8】スキュー制御システムを有するCVTの本発明の別の実施形態の断面図である。
【図9】図7のCVTの部分断面斜視図である。
【図10】図7のCVTの特定の構成要素を示す平面図である。
【図11A】図7のCVTと共に使用することができるステータ板の本発明の実施形態の平面図である。
【図11B】図11Aのステータ板の斜視図である。
【図12】図11のステータ板の断面図A−Aである。
【図13】図11のステータ板の断面図B−Bである。
【図14】図6のCVTと共に使用することができるステータ板の別の実施形態の平面図である。
【図15】図14のステータ板の断面図である。
【図16】図6のCVTと共に使用することができるトラクション遊星サブアセンブリの分解斜視図である。
【図17】図6のCVTと共に使用することができるトラクション遊星サブアセンブリの別の実施形態の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、全体を通して同様の番号が同様の要素を指す添付図を参照して、好ましい実施形態を説明する。以下の説明で使用する用語は、本発明の特定の具体的な実施形態の詳細な説明に関連して使用されているので、限定的または制限的に一切解釈されるべきではない。さらに、本発明の実施形態はいくつかの本発明の特徴を含むことができるが、これらのうちの1つだけが、その望ましい属性を唯一もたらすわけではなく、あるいは記載の本発明を実施するのに不可欠であるわけでもない。本明細書に記載する特定のCVTの実施形態は、概して、米国特許第6,241,636号明細書、同第6,419,608号明細書、同第6,689,012号明細書、同第7,011,600号明細書、同第7,166,052号明細書、米国特許出願第11/243,484号明細書および同第11/543,311号明細書、ならびにPCT特許出願PCT/IB2006/054911号明細書および同PCT/US2007/023315号明細書に開示されているタイプに関連する。この場合、これらの特許および特許出願の各々の開示全体が、参照により本明細書に援用される。
【0018】
本明細書で使用される場合、「動作的に接続される」、「動作的に結合される」、「動作的に連結される」、「動作可能に接続される」、「動作可能に結合される」、「動作可能に連結される」という用語、および同様の用語は、一方の要素の動作が第2の要素の対応、追従、または同時の動作または作動をもたらすような要素間の関係(機械的なもの、リンク機構、継手等)を指す。本発明の実施形態を説明するのに前記用語を使用する際には、要素を連結または結合する具体的な構造または機構が典型的に説明されることに留意されたい。しかし、特に具体的な明記がない限り、前記用語の1つが使用される場合、その用語は、実際のリンク機構または継手が、特定の例で当業者に容易に明らかであろう様々な形態をとり得ることを示す。
【0019】
説明のために、「半径方向の」という用語は、変速機またはバリエータの長手方向軸線に垂直な方向または位置を示すために本明細書で使用される。本明細書で使用される場合、「軸方向の」という用語は、変速機またはバリエータの主軸線または長手方向軸線に平行な軸線に沿った方向または位置を指す。明瞭かつ簡潔にするために、同様の符号が付けられた同様の構成要素(例えば、軸受1011Aおよび軸受1011B)を、単一の符号(例えば、軸受1011)で総称的に指す場合がある。
【0020】
本明細書中での「トラクション」への言及は、支配的または独占的な動力伝達モードが「フリクション」によるものである用途を除外しないことに留意されたい。ここで、トラクションドライブとフリクションドライブとの範疇的相違を確立しなくても、これらは概して、異なる動力伝達形態として理解され得る。トラクションドライブは、通常、2つの要素の間に挟まれた薄い流体層における剪断力によるこれらの要素間の動力の伝達を伴う。これらの用途で使用される流体は、通常、従来の鉱油よりも大きなトラクション係数を有する。トラクション係数(μ)は、接触する構成要素の境界面で利用可能であろう最大利用可能な牽引力を表し、最大利用可能な駆動トルクの尺度である。典型的に、フリクションドライブは、概して2つの要素の間の摩擦力によってこれらの要素の間で動力を伝達することに関する。本開示の目的のために、本明細書に記載するCVTが牽引用途および摩擦用途の両方で動作することができることを理解されたい。例えば、CVTが自転車用途のために使用される実施形態では、CVTは、動作中に生じるトルク状態および速度状態に応じて、あるときにはフリクションドライブとして、またあるときにはトラクションドライブとして動作することができる。
【0021】
本明細書に開示する本発明の実施形態は、動作中に所望の入力速度対出力速度比を達成するように調節することができる傾斜可能な回転軸線(以下において「遊星回転軸線」)を各々が有するほぼ球形の遊星を使用するバリエータおよび/またはCVTの制御に関する。いくつかの実施形態では、前記回転軸線を調節することにより、1つの平面における遊星軸線の角度ずれが生じて、第2の平面における遊星回転軸線の角度調節が行われ、これによってバリエータの速度比が調節される。第1の平面における角度ずれは、本明細書において「スキュー」または「スキュー角」と呼ばれる。一実施形態では、制御システムは、スキュー角の使用を調節して、バリエータの特定の接触する構成要素の間で、遊星回転軸線を傾斜させる力を発生させる。遊星回転軸線を傾斜させることにより、バリエータの速度比が調節される。以下の説明では、球形トラクション遊星に関して座標系が設定された後における、スキュー角の存在下で遊星回転軸線を傾斜させる傾向がある力を発生させる接触する構成要素の間の特定の運動学的関係を説明する。バリエータの所望の速度比を得るためのスキュー制御システムの実施形態を説明する。
【0022】
次に図1Aおよび図1Bを参照すると、無段変速機(CVT)の特定の構成要素の実施形態に関連して、座標系が画定されている。それらの座標系は、本明細書で例示目的のために示されており、本明細書で説明する実施形態に適用可能な唯一の基準系と解釈されるべきではない。CVT100の実施形態は、トラクション太陽110(概略的に線で示す)と接触するほぼ球形のトラクション遊星108を含む。さらに、トラクション遊星108は、第1の角度位置112および第2の角度位置114のそれぞれにおいて、第1のトラクションリング102および第2のトラクションリング104と接触する。図1Aでは、グローバル座標系150(すなわち、x、y、z)および遊星中心座標系160(すなわち、x、y、z)が画定されている。グローバル座標系150は、概して、CVT100の長手方向軸線または主駆動軸線152に対して合わせられ、例えば、z軸は、トラクション遊星108の配置の中心となる主駆動軸線152と一致する。遊星中心座標系160は、その原点がトラクション遊星108の幾何学的中心にあり、y軸は主駆動軸線152にほぼ垂直であり、z軸は主駆動軸線152にほぼ平行である。トラクション遊星108の各々は遊星回転軸線、すなわち遊星軸線106を有し、この遊星軸線は、x軸を中心に回転し、これにより、y−z平面に投影される傾斜角118(本明細書ではγと呼ぶこともある)を形成するように構成することができる。傾斜角118は、トラクションリング102、104の間の運動学的速度比を決定する。遊星108の各々は、遊星軸線106を中心とする回転速度を有し、この回転速度は、図1Aに遊星速度122として示されており、本明細書ではωと呼ぶこともある。典型的に、遊星軸線106は、固定することができるキャリアまたはケージ(図示せず)に動作的に結合することができる遊星軸に構造的に対応するが、他の実施形態において、遊星軸は、主駆動軸線152を中心に回転可能なキャリア(図示せず)に結合される。遊星中心座標系160において、x軸はページの平面に向けられ(すなわち図1Aでは正確に図示されておらず)、z軸は概して主駆動軸線152に平行である。例示目的のために、傾斜角118は概してy−z平面で画定される。
【0023】
次に図1Bを参照すると、本明細書に記載するスキュー制御システムの実施形態で使用される遊星軸線106の角度調節を示すように、遊星中心座標系160がさらに分割されている。図1Bに示すように、y−z平面に遊星軸線106を有する座標系160をx軸中心に回転させて、第1の相対座標系170(x’、y’、z’)を得ることによって、傾斜角118を導出することができる。相対座標系170において、遊星軸線106はz’軸と一致する。遊星軸線106を有する座標系170をy軸中心に回転させることにより、第2の相対座標系180(x”、y”、z”)で示されているx−z平面において、スキュー角120(本明細書ではζと呼ぶこともある)を得ることができる。スキュー角120は、遊星軸線106の角度合わせのx−z平面における投影であるとほぼみなすことができる。さらに、より具体的には、スキュー角120は、相対座標系170と180によって画定されるようなx’−z’平面における遊星軸線106の角度位置である。CVT100の一実施形態では、傾斜角118は、少なくとも部分的にスキュー角120を調節することによって制御される。
【0024】
次に図1Cを参照して、スキュー状態の誘発により、傾斜角118を調節する傾向がある力がどのように発生するかを説明するために、CVT100の接触する構成要素の間における特定の運動学的関係を説明する。本明細書で使用される場合、「スキュー状態」という用語は、非ゼロスキュー角120が存在するように、主駆動軸線152に対して遊星軸線106を配置することを指す。したがって、「スキュー状態の誘発」への言及は、非ゼロスキュー角120に整列させるための遊星軸線106を形成することを意味する。さらに、CVT100の特定の実施形態では、特定のスピン誘発力がトラクション遊星108に作用することに留意されたい。スピンは、当業者に周知のトラクション接触部の現象である。速やかな説明のために、スピン誘発力の効果は無視する。CVT100において、構成要素が3つの位置でトラクション遊星108と接触して、トラクション接触領域またはフリクション接触領域を形成する。図1を参照すると、第1のリング102が接点1で遊星108を駆動し、遊星108が接点2で第2のリング104に動力を伝達する。トラクション太陽110は接点3でトラクション遊星108を支持する。説明のために、3つの接点1、2、3は、図1Cにおいて、CVT100の上方の基準から見たx”−z”平面の図、または図1Aの視野Aを反映するように配置される。接触領域1、2、3は同一平面ではないので、図1Cにおいて、接触領域1、2、3をx”−z”平面で示すことができるように接触中心座標系が使用される。下付き数字1、2、および3は、接触中心座標系の特定の接触領域を示すために使用される。z軸、z軸、z軸はトラクション遊星108の中心に向いている。
【0025】
次に図1Cの接触領域1を参照すると、第1のトラクションリング102の表面速度が、負のx方向においてベクトルVr1で示され、遊星108の表面速度がベクトルVp1で示され、ベクトルVr1とVp1との間に形成される角度がほぼスキュー角120である。トラクションリング102とトラクション遊星108との間における結果として得られる相対表面速度は、ベクトルVr1/pで示される。トラクション遊星108とトラクション太陽110との間の接触領域3において、トラクション太陽110の表面速度はベクトルVsvで示され、トラクション遊星108の表面速度はベクトルVpsで示され、VsvとVpsとの間に形成される角度はスキュー角120である。トラクション遊星108とトラクション太陽110との間の相対表面速度はベクトルVsv/pで示される。同様に、接点2では、接触領域2におけるトラクション遊星108の表面速度はベクトルVp2で示され、第2のトラクションリング104の表面速度はベクトルVr2で示され、Vp2とVr2との間に形成される角度はほぼスキュー角120であり、トラクション遊星108と第2のトラクションリング104との間の相対表面速度は合成ベクトルVr2/pである。
【0026】
上記の運動学的関係は、接触する構成要素で力を発生させる傾向がある。図1Dは、接触領域1、2、3の各々に適用することができる一般化された代表的なトラクション曲線を示す。このグラフは、接触する構成要素の間のトラクション係数μと相対速度との関係を示す。トラクション係数μは、流体が力を伝達する能力を示す。Vr1/p等の相対速度はスキュー角120の関数であり得る。トラクション係数μは、接触領域1、2、または3における、x方向μのトラクション係数およびy方向μのトラクション係数のベクトル和である。一般的に、トラクション係数μは、特に、トラクション流体特性、接触領域における法線力、および接触領域におけるトラクション流体の速度の関数である。所定のトラクション流体について、トラクション係数μが最大能力に達するまで、構成要素の相対速度が増加すると共に、トラクション係数μが増加し、この後、トラクション係数μが減衰する。その結果、スキュー角120の存在下で(すなわち、スキュー状態で)、運動学的状態に起因して、トラクション遊星108の周囲の接触領域1、2、3で力が発生する。図1Cおよび図1Eを参照すると、Vr1/pは、横成分力Fs1によって、Vr1/pに平行な牽引力を発生させる。スキュー角120が増加することにより、Vr1/pが増加し、これにより、図1Dに示す一般的関係に従って力Fs1が増加する。Vsv/pは力Fssを発生させ、同様に、Vr2/pは力Fs2を発生させる。力Fs1、Fss、およびFs2が結合して、y−z平面でトラクション遊星108を中心とする正味モーメントを生成する。より具体的には、トラクションローラ108を中心とするモーメントの総和は、ΣM=R(Fs1+Fs2+Fss)であり、式中、Rはトラクションローラ108の半径であり、力Fs1、Fs2、およびFssはy−z平面における接触力の合成成分である。本明細書ではスキュー誘発力と呼ばれることもある接触力は、上記の方程式では以下のようになる。Fs1=μy1、Fs2=μy2、Fss=μysであり、式中、N、N、Nはそれぞれの接触領域1、2、3における法線力である。トラクション係数μは、接触する構成要素の間の相対速度の関数であるので、トラクション係数μy1、μy2、およびμysは、結果として、運動学的関係によって関係付けられるようなスキュー角120の関数である。定義上、モーメントは慣性加速度であり、したがって、ここで示す実施形態では、モーメントは傾斜角加速度
【数1】

を発生させる。したがって、傾斜角
【数2】

の変化率はスキュー角120の関数である。
【0027】
次に図1Fを参照すると、ゼロに等しい傾斜角118を有するトラクション遊星108が示されており、この傾斜角118は、(yg−zg平面において)CVT100の主駆動軸線152にほぼ平行な遊星回転軸線106で得られ、トラクション遊星108の回転速度122はz軸と同軸である。スキュー角120をx−z平面に形成して、傾斜角118の変化を引き起こすための力を発生させることができる。スキュー角120の存在下では、トラクション遊星108は、軸線z”を中心とする回転速度122を有し、傾斜角118はy−z’平面に形成される。
【0028】
次に図2〜図17に移り、傾斜角118の変化を引き起こすためにスキュー状態の誘発に依存するCVT用の特定の制御システムの実施形態をここで説明する。図2は、原動機50と負荷部75との間に動作的に結合されたCVT300を含むドライブ25を示す。さらに、ドライブ25はスキューベース制御システム200を含むことができる。典型的に、原動機50がCVT300に動力を送り、CVT300が負荷部75に動力を送る。原動機50は1つ以上の様々な動力発生装置であってもよく、負荷部75は1つ以上の様々な被駆動装置または被駆動構成要素であってもよい。原動機50の例は、人力、内燃機関、電気モータ等を含むが、それらに限定されない。負荷部の例は、駆動系差動アセンブリ、パワーテイクオフアセンブリ、発電機アセンブリ、ポンプアセンブリ等を含むが、それらに限定されない。いくつかの実施形態では、スキュー制御システム200は、CVT300および原動機50の動作を調節することができるか、またはCVT300および負荷部75の動作を調節することができるか、またはドライブ25の全ての要素の動作を調節することができる。図2に示す実施形態では、スキュー制御システム200は、スキュー角120の調節を用いて、CVT300の動作状態を制御し、したがって、ドライブ25の制御を調節するように構成することができる。
【0029】
次に図3〜図5Bを参照すると、一実施形態において、CVT500は、トラクション太陽510と接触するように構成されたほぼ球形の複数のトラクション遊星508を含む。さらに、トラクション遊星508は第1のトラクションリング502および第2のトラクションリング504と接触することができる。トラクションリング502、504は、図1Aに示す第1のトラクションリング102および第2のトラクションリング104とほぼ同様に配置することができる。トラクション遊星508と第1のトラクションリング502と第2のトラクションリング504とトラクション太陽510との間の接触領域は、図1A〜図1Fに示す接点1、2、および3のそれぞれとほぼ同様である。さらに、説明のために、図1A〜図1Fに関連して示す接触中心座標系および運動学的関係をCVT500に適用することができる。
【0030】
一実施形態では、図3に関連してグローバル座標系550(すなわち、x、y、z)が画定される。グローバル座標系550はグローバル座標系150とほぼ同様である。グローバル座標系550は、概して、CVT500の長手方向軸線または主駆動軸線552に対して合わせられ、例えば、z軸は、トラクション遊星508の配置の中心となる主駆動軸線552と一致する。y軸は主駆動軸線552に垂直である。x軸は主駆動軸線552に垂直である。トラクション遊星508の各々は回転軸線、すなわち遊星軸線506を有し、この遊星軸線は、y−z平面で傾斜させ、これによって、傾斜角118(図1A)とほぼ同様の傾斜角511(γ)を形成するように構成することができる。遊星軸線506は、その一端にある第1のガイド512(図3の線で図示)に従うように構成することができる。遊星軸線506は、その第2の端部にある第2のガイド514(図3の線で図示)に従うように構成することができる。
【0031】
具体的には図4を参照すると、一実施形態において、第1のガイド512および第2のガイド514を第1のステータ板516および第2のステータ板518にそれぞれ形成することができる。典型的に、遊星軸線506は、第1のガイド512および第2のガイド514のそれぞれに動作的に結合することができる遊星軸に構造的に対応する。いくつかの実施形態では、第1のステータ板516および第2のステータ板518は、CVT500の動作中に、遊星軸線506の支持部に動作可能に結合してその支持を容易にするように構成されたほぼディスク形の物体である。説明のための例示的な実施例として、図4に示す図は、x−y平面のステータ板518上におけるステータ板516の投影図である。x−y平面において、ステータ板518に対するステータ板516の角変位520を画定することができる(主駆動軸線552と一致するz軸は図4のページの平面に垂直であり、x軸およびy軸の各々は主駆動軸線552に垂直である)。角変位520は本明細書において「角度β」、さらに簡潔には「β」と呼ばれることもある。CVT100に関連して使用される座標系とほぼ同様の座標系に関連して、ほぼ同様に、スキュー角120等のスキュー角をCVT500のために画定することができる。したがって、この場合、CVT500に関連してスキュー角120(ζ)が使用される。スキュー角120がゼロである場合(ζ=0)、「ゼロスキュー角状態」が遊星軸線506の当該状態として画定される。
【0032】
さらに、図5Aを参照すると、第1のガイド512および第2のガイド514がx−y平面における投影部として示されている。いくつかの実施形態では、第1のガイド512をx−y平面の原点に半径方向に整列させることができ、例えば、第1のガイド512はy軸とほぼ一致することができる。一実施形態では、第2のガイド514はx−y平面の原点からのずれ522を有することができる。一実施例では、ずれ522は、概して、構造線519に対する直線のずれとして画定することができ、ステータ516が名目上ゼロの角変位520(β)に配置される場合、この構造線519は、第2のガイド514に平行であり、x−y平面の原点を通過する。第2の実施例では、第2のガイド514は、第1のガイド512に対する基本的な基準角度位置523(ψ)を有することができる。
【0033】
さらに、図5Aおよび図5Bを参照すると、ガイド512と514が概略的に示されている。一実施形態では、ステータ518を非ゼロ角変位520(β)まで回転させることができ、この非ゼロ角変位により、ガイド514がガイド512に対して移動される(図5B)。ずれ522は、ステータ518の中央部(すなわち、x−y平面の原点)を中心とする半径方向のずれ525として示すことができる。ガイド514は半径方向のずれ525の接線である。具体的には図5Aを参照すると、ガイド512に対する基本的な基準角度位置523(ψ)は、ゼロ角変位520(β=0)およびゼロ傾斜角511(γ=0)で画定される。遊星軸線506の対応するゼロスキュー角状態は、x−y平面の投影部として見た場合に第1のガイド512と第2のガイド514との交点にある位置524に示されている。ここで、具体的には図5Bを参照すると、非ゼロ角変位520(β)について、ガイド514は、ガイド512に対する角度位置526(ψ)を有する。遊星軸線506の対応するゼロスキュー角状態は、x−yの平面の投影部として見た場合にガイド512とガイド514との間の交点にある位置527に示されている。位置527は、非ゼロ角変位520(β)および非ゼロ傾斜角511(γ)に関するゼロスキュー角状態の一例である。概略的に本明細書に記載するガイド512、514は、特定の実施形態に関連して以下に示すように、ステータ516、518に形成されるスロットとして設けることができることに留意されたい。このような実施例では、ガイド512、514は、それぞれの半径方向スロットおよびオフセットスロットの中央部を通過する中心線で示すことができる。図5A〜図5Cに概略的に示すように、ステータのスロットとボール508の遊星軸(またはこのような遊星軸のローラ)との接点は、概略的なガイド512、514の一方に位置する点まで減少させることができる。しかし、ステータ516、518の特定の物理的実施形態では、前記接点は半径方向線に位置しない。
【0034】
非ゼロスキュー角120(ζ)は、別々に生じるかまたは組み合わせた2つの事象によって遊星軸線506に生じさせることができる。一方の事象は角変位520(β)の変化であり、他方の事象は傾斜角511(γ)の変化である。一実施形態では、一定の傾斜角511(γ)の角変位520(β)とスキュー角120(ζ)との関係は、他の要因の中でも、遊星軸線506の長さ、および/またはステータ516、518の半径等のCVT500の形態に依存する。一実施形態では、一定の傾斜角511(γ)の角変位520(β)とスキュー角120(ζ)との関係は、小さな角度に関して、ほぼ式β=ζで表される。角変位520(β)と角度位置526(ψ)との関係は、例えば、CVT500の形態と基本的な基準角度位置523(ψ)とに依存することができる。一実施形態では、角度位置526(ψ)は角変位520(β)に比例することができるので、式は、小さな角度に関して、式ψ=β+ψに近似させることができる。一定の角変位520(β)について、スキュー角120(ζ)は傾斜角511(γ)に関連することもできる。例えば、スキュー角120(ζ)は、式tan(ζ)=(1/2sin(デルタγ)tan(ψ))により、角度位置526(ψ)と傾斜角511(デルタγ)の変化とに関連することができる。周知の小さな角度近似を前記式に適用することにより、式ζ=1/2(デルタγ)ψとなる。
【0035】
CVT500の動作中に、適切な制御入力部(図3〜図5Cには示されていないので、図7の例示的な制御入力部を参照されたい)によって、第1のステータ板516および/または第2のステータ板518を角変位520まで回転させることができる。いくつかの実施形態では、第1のステータ板516は、主駆動軸線552に対してほぼ回転不能であるように構成することができる。角変位520は最初に遊星軸線506でスキュー角120を生じさせる。上記のように、スキュー角120は遊星軸線506の傾斜角511(γ)の変化を引き起こす。遊星軸線506が傾斜するときに、遊星軸線506の端部が第1のガイド512および第2のガイド514に従う。遊星軸線506が、一実施例でゼロスキュー角状態に対応する平衡状態に向かって傾斜するのと同様の大きさに、スキュー角120が減少するように、ガイド512、514が構成される。遊星軸線506が、ゼロスキュー角状態とほぼ一致する傾斜角511(γ)に達すると、遊星軸線506の傾斜が停止する。一実施形態では、遊星軸線506の傾斜角511(γ)は少なくとも部分的に角変位520(β)に依存する。いくつかの実施形態では、傾斜角511(γ)と角変位520(β)との関係はユニークであるので、角変位520の各値(β)は、CVT500が平衡速度比状態で動作することができる傾斜角511(γ)の値に一致する。
【0036】
平衡状態に達すると、遊星軸線506の各々はほぼゼロスキュー角状態である。CVT500の遊星軸線506、したがってトラクション遊星508はステータ516、518に独立して結合されるので、トラクション遊星508および遊星軸線506の各々自体が独立して、平衡速度比状態を安定させることができる。さらに説明すると、遊星軸線506の1つの傾斜角511(γ)が、(例えば、動作状態における外部の影響または擾乱により)平衡状態から移動する場合、遊星軸線506の端部はガイド512、514に従う。上記のように、スキュー状態が遊星軸線506で生じ、したがって、遊星軸線506が、所定の角変位520(β)の平衡状態にほぼ対応する傾斜角511(γ)に向かって傾斜する傾向になる。ガイド512、514は遊星軸線506の移動または傾斜を独立して案内する。したがって、遊星軸線506の1つの移動または傾斜は、実質的にCVT500の他の遊星軸と独立して行うことができる。
【0037】
ガイド512、514の構成は、CVT500を平衡状態に安定させる能力に影響を与える。第1のトラクションリング504の所定の回転方向では、図5Aに示すガイド512、514の構成により、CVT500の安定した動作が得られる。例えば、CVT500の、角変位520(β)に対応する所望の速度比を維持することができる。概して図1A〜図1Fに関連して定義された符号の例によれば、所定の角変位520(β)について、傾斜角511の正の変化(γ)がスキュー角の正の変化を生じさせ、その逆もまた同様であることが理解できる。したがって、各遊星軸線506は、図5Aに示すガイド512、514の関連する構成が設けられる場合に安定して動作することができる。
【0038】
ここで図5Cを参照すると、一実施形態において、ガイド5121およびガイド5141はガイド512、514の機能とほぼ同様であり得るが、ガイド5121、5141は、x−y平面に関連する基本的な基準角度位置523(ψ)に向かう方向とはほぼ反対側である基本的な基準角度位置5231(すなわち、反対の符号)に配置される。第1のリング504の等しい回転方向、したがってトラクション遊星508の回転方向を想定すると、ガイド5121、5141の構成は、少なくともいくつかの実施例において、CVT500の不安定な動作をもたらす場合がある。例えば、傾斜角511の正の変化(γ)は負のスキュー角を生じさせ、その逆もまた同様であるので、CVT500の角変位520(β)に対応する所望の速度比を維持することができない。したがって、遊星軸線506の1つを傾斜させる動作における擾乱により、遊星軸線506は、例えば機械的ストッパ(図示せず)によって制限されるまで傾斜させられる。
【0039】
次に図6Aを参照すると、一実施形態において、例えば、CVT500に結合されたパワーエレクトロニクスハードウェアと通信するマイクロプロセッサで、スキューベース制御プロセス600を実行することができる。スキューベース制御プロセス600は状態602から開始する。次に、スキューベース制御プロセス600は状態604に進み、ここで、CVT500の所望の速度比(SR)の設定値が受信される。スキューベース制御プロセス600は状態606に続き、ここで、例えば第1のステータ516の角変位520が決定される。次に、スキューベース制御プロセス600はアクチュエータサブプロセス608に移り、ここで、角変位520が例えばステータ516に適用される。アクチュエータサブプロセス608が終了すると、スキューベース制御プロセス600は状態609に進み、ここで、CVT500の実際のSRが測定される。一実施形態では、CVT500の実際のSRは、例えばトラクションリング502と504の速度、またはCVT500に対する入力速度および出力速度を示す他の任意の成分を測定することによって決定することができる。いくつかの実施形態では、実際のSRは、少なくとも部分的に目標出力速度状態に基づいて、または少なくとも部分的に目標入力速度状態に基づいて計算することができる。他の実施形態では、CVT500の実際のSRは、遊星軸線506の傾斜角を測定することによって決定することができる。さらに他の実施形態では、CVT500の実際のSRは、CVT500の実際のトルク比を測定することによって決定することができる。CVT500の実際のトルク比は、例えばトラクションリング502と504のトルク、またはCVT500に対する入力トルクおよび出力トルクを示す他の任意の成分を測定することによって決定することができる。次に、スキューベース制御プロセス600は決定状態610に進み、ここで、測定された速度比を所望の速度比設定値と比較し、これによって比較値を形成する。測定された速度比が所望の速度比設定値に等しくない場合、スキューベース制御プロセス600は状態606に戻る。測定された速度比が所望の速度比設定値に等しい場合、スキューベース制御プロセス600は終了状態612に進む。いくつかの実施形態では、スキューベース制御プロセス600は開ループで動作するように構成され、このような場合、状態609と610はサブプロセス608に含まれない。
【0040】
図6Bを参照すると、一実施形態において、状態606では、曲線607で表すことができるルックアップテーブルを使用することができる。曲線607は、例えばCVT500の角変位520(β)と速度比との例示的な関係を示す。曲線607は式y=Ax−Bx+Cで表すことができ、式中、yは角変位520(β)であり、xは速度比である。一実施形態では、A、B、およびCの値はそれぞれ0.5962、−4.1645、および3.536である。いくつかの実施形態では、A、B、およびCの値はそれぞれ0.5304、−4.0838、および3.507である。他の実施形態では、A、B、およびCの値は、CVT500の寸法および形状、例えば、特に、ステータ516と518のガイド512と514の位置、遊星軸線506の長さ、およびトラクションリング502と504の寸法に関連する。いくつかの実施形態では、当該アクチュエータサブプロセス608は開ループで動作するように構成され、このような場合、状態619と620はサブプロセス608に含まれない。
【0041】
図6Cを参照すると、一実施形態において、アクチュエータサブプロセス608は状態614から開始し、状態615に進むことができ、ここで、角変位520(β)の設定値が受信される。アクチュエータサブプロセス608は状態616に進み、ここで、アクチュエータ指令信号が少なくとも部分的に角変位520(β)に基づいて決定される。一実施形態では、ルックアップテーブルを使用して、角変位520(β)の設定値をアクチュエータ指令信号に変換することができる。いくつかの実施形態では、アクチュエータ指令信号は電圧または電流であり得る。他の実施形態では、アクチュエータ指令信号はケーブルまたはリンク機構の位置の変化であり得る。いくつかの実施形態では、アルゴリズムを使用して、角変位520(β)の設定値からアクチュエータ指令信号を導出することができる。次に、アクチュエータサブプロセス608は状態617に進み、ここで、アクチュエータ指令信号が、アクチュエータおよびそれに関連するハードウェアに送信される。一実施形態では、標準シリアル通信プロトコルを使用して、指令信号をアクチュエータハードウェアに送信することができる。いくつかの実施形態では、ケーブルまたはリンク機構を使用して、指令信号をアクチュエータハードウェアに送信することができる。次に、アクチュエータサブプロセス608は状態618に進み、ここで、ステータ、例えばステータ516が回転される。その次に、アクチュエータサブプロセス608は状態619に進み、ここで、角変位520(β)が測定される。次に、アクチュエータサブプロセス608は決定状態620に進み、ここで、測定された角変位520(β)がその設定値と比較される。測定された角変位520(β)がその設定値に等しくない場合、アクチュエータサブプロセス608は状態616に戻る。測定された角変位520(β)がその設定値に等しい場合、アクチュエータサブプロセス608は状態622で終了し、ここで、スキューベース制御プロセス600は、図6Aに関連して上述したような状態609に続くことができる。いくつかの実施形態では、アクチュエータサブプロセス608は開ループで動作するように構成され、このような場合、状態619と620はサブプロセス608に含まれない。
【0042】
次に図7を参照すると、一実施形態において、CVT1000は、バリエータアセンブリ1004に動作可能に結合されたスキューベース制御システム1002を含むことができる。一実施形態では、バリエータアセンブリ1004は、ほぼ球形の複数のトラクション遊星1008の半径方向内側に配置されかつそれらと接触するトラクション太陽1006を含む。トラクション太陽1006は、軸受1011を設けることによって主軸1010を中心に回転するように構成することができる。一実施形態では、トラクション太陽1006は、主軸1010および軸受1011に結合されるクリップ1012により、主軸1010に対して軸方向に固定される。
【0043】
一実施形態では、各トラクション遊星1008には一組の遊星軸1009Aと1009Bが設けられ、これらの遊星軸は、それらのそれぞれのトラクション遊星1008のための傾斜可能な回転軸線を提供するように構成される。遊星軸1009Aと1009Bはトラクション遊星1008と共に回転するように構成することができる。遊星車軸1009Aと1009Bはトラクション遊星1008の中心軸線にほぼ整列される。他の実施形態では、トラクション遊星1008は中央孔を有するように構成することができ、トラクション遊星1008は軸受を介して遊星軸(図示せず)に動作可能に結合されることができ、この結果、遊星軸はほぼ回転不能であるように構成される。トラクション遊星1008の各々は第1のステータ1014および第2のステータ1016に動作可能に結合される。第1のステータ1014および第2のステータ1016を主軸1010と同軸に配置することができる。
【0044】
CVT1000の一実施形態では、入力ドライバ1018を主軸1010と同軸に配置することができる。入力ドライバ1018は、例えば、スプロケット、プーリ、または他の適切な継手から入力動力を受け取るように構成することができる。一実施形態では、入力ドライバ1018は、第1の軸方向力発生アセンブリ1020に結合されるねじり板1019に結合される。軸方向力発生アセンブリ1020は、トラクションリング102(図1A)の機能とほぼ同様であり得る第1のトラクションリング1022に動作可能に結合される。第1のトラクションリング1022はトラクション遊星1008の各々に接触するように構成される。第2のトラクションリング1024はトラクション遊星1008の各々に接触するように構成される。第2のトラクションリング1024はトラクションリング104(図1A)の機能とほぼ同様であり得る。一実施形態では、第2のトラクションリング1024は第2の軸方向力発生アセンブリ1026に結合される。第2の軸方向力発生アセンブリ1026は第1の軸方向力発生アセンブリ1020とほぼ同様であり得る。特定の実施形態では、軸方向力発生アセンブリ1020と1026は、概してPCT特許出願PCT/US2007/023315号明細書に記載されているクランプ力発生機構とほぼ同様であり得る。
【0045】
CVT1000の動作中に、例えばスプロケットを介して、入力動力を入力ドライバ1018に伝達することができる。入力ドライバ1018は、ねじり板1019を介して動力を第1の軸方向力発生機1020に伝達することができる。第1の軸方向力発生機1020は、第1のトラクションリング1022とトラクション遊星1008の各々との間のトラクションインタフェースまたはフリクションインタフェースを介して、動力をトラクション遊星1008に伝達することができる。トラクション遊星1008は第2のトラクションリング1024および第2の軸方向力発生機1026を介して、動力をハブシェル1028に伝達する。入力速度対出力速度比のシフト、したがって、入力トルク対出力トルク比のシフトは、トラクション遊星1008の回転軸線を傾斜させることによって実現される。一実施形態では、トラクション遊星1008の回転軸線の傾斜は、第1のステータ516(図4〜図5C)とほぼ同様であり得る第1のステータ1014を回転させることによって実現される。
【0046】
ここで図8を参照すると、一実施形態において、CVT2000はCVT1000とほぼ同様であり得る。説明では、CVT1000とCVT2000との違いのみを説明する。一実施形態では、CVT2000は、トラクション遊星1008の各々の半径方向内側に配置されかつそれらと接触するトラクション太陽2007を含む。トラクション太陽2007は、図8のページの平面の断面図で見た場合に物体の外周を中心としてV字形状に形成することができるほぼ円筒状の物体である。トラクション太陽2007は、第1の位置2008および第2の位置2009のそれぞれにおいてトラクション遊星1008の各々に接触するように構成することができる。接点3に関連して示されている接触中心座標系および運動学的関係(図1A〜図1F)を接触位置2008と2009に同様に適用することができる。CVT2000の動作中に、トラクション太陽2007は、接触位置2008と2009で軸方向力の釣り合いをとることによってほぼ軸方向に固定される。さらに、いくつかの実施形態では、第1のリング1022および第2のリング1024は、十分な半径方向の運動学的拘束を遊星1008に与えるように構成され、このような実施形態では、トラクション太陽2007および軸受1011を、本明細書に記載するCVTの様々な実施形態から排除することができる。
【0047】
図9を参照すると、一実施形態において、スキューベース制御システム1002は、ステータ駆動部1032に結合するように構成することができるレバーアーム1030を含むことができる。ステータ駆動部1032は、例えば、複数のドエルあるいは他の適切な締結具または継手(図示せず)を介して第1のステータ板1014に結合することができる。一実施形態では、ステータ駆動部1032はほぼ中空円筒状の物体であり得る。ステータ駆動部1032の一端には、第1のステータ板1014へのステータ駆動部1032の結合を容易にするように構成されるフランジ1031を設けることができる。ステータ駆動部1032には、例えば、軸受を保持するためのクリップ1035を受け入れるように構成することができる溝を設けることができる。
【0048】
一実施形態では、第1のステータ板1014は主軸1010に対して回転するように構成することができる。例えば、ブッシュ1033を第1のステータ板1014におよびステータ駆動部1032に結合することができる。ブッシュ1033を主軸1010の周囲に同軸に配置することができる。一実施形態では、ナット1034は主軸1010と協働してブッシュ1033を軸方向に保持するように構成することができる。いくつかの実施形態では、第2のステータ板1016は、スプライン1035、または他の適切なトルク伝達継手を介して主軸1010に結合することができ、その結果、第2のステータ板1016は主軸1010に対してほぼ回転不能である。
【0049】
CVT1000の動作中に、主軸1010を中心としてレバーアーム1030を回転させ、これによって、主軸1010を中心とするステータ駆動部1032の角度回転を生じさせることができる。レバーアーム1030は、リンク機構またはケーブル(図示せず)によって手動で回転させることができる。いくつかの実施形態では、レバーアーム1030をDCモータまたはサーボアクチュエータ等の電子アクチュエータ(図示せず)に動作可能に結合することができる。いくつかの実施形態では、レバーアーム1030を油圧アクチュエータ(図示せず)に動作可能に結合することができる。他の実施形態では、ステータ駆動部1032を上記アクチュエータのいずれかのようなアクチュエータに直接結合することができる。ステータ駆動部1032の角度回転により、角変位(β)が、第2のステータ板1016に対する第1のステータ板1014に与えられる。CVT500に関連して先に記載したように、第2のステータ板1016に対する第1のステータ板1014の角度回転により、トラクション遊星1008の回転軸線の傾斜を容易にすることができる。
【0050】
次に図10〜図13を参照すると、一実施形態において、第1のステータ板1014は、中央孔を有するほぼディスク形の物体であり得る。いくつかの実施形態では、第1のステータ板1014には、中央孔を中心に形成されるハブ1036を設けることができる。ハブ1036には、ステータ駆動部1032への第1のステータ板1014の結合を容易にすることができる複数の孔1038を設けることができる。半径方向にオフセットされた複数のスロット1040を第1のステータ板1014の面に形成することができる。半径方向にオフセットされたスロット1040は、例えば、玉軸1009の各々に動作可能に結合される複数のローラ1042(図9参照)との接触によって、トラクション遊星1008の支持を容易にするように構成することができる。第2のステータ板1016には複数の半径方向スロット1044を設けることができる。半径方向スロット1044はローラ1042に結合するように構成することができる。図10は、半径方向スロット1044に対する、半径方向にオフセットされたスロット1040の例示的な構成を示す。説明のために、グローバル座標1047(図9)がCVT1000に適用される。したがって、半径方向スロット1044は、x−y平面における第1のステータ板1014の投影部として見ることができる。半径方向スロット1044は図10の破線で示されている。
【0051】
具体的には図11Aおよび図11Bを参照すると、一実施形態において、半径方向にオフセットされたスロット1040および半径方向スロット1044は幅1046を有する。幅1046をローラ1042の外径に合うように寸法決めすることができる。図10に示す実施形態では、半径方向スロット1044が第2のステータ板1016を中心に配置されるので、半径方向にオフセットされたスロット1040は、x−yの平面への、半径方向にオフセットされたスロット1040および半径方向スロット1044の投影部に見られるように、半径方向スロット1044と整列しない(すなわちオフセットされる)。断面線A−AとB−Bに依存する図11には、直線のずれ1048の大きさが示されている。断面線A−Aは、半径方向にオフセットされたスロット1040をほぼ二等分し、この場合、二等分部分は幅1046のほぼ半分である。断面線B−Bは第1のステータ板1014の中心線にほぼ整列する。断面線B−Bは主駆動軸線z(図9)に垂直な線である。断面線A−Aは断面線B−Bに平行な線である。代わりに、構造線1050および中心線1051を画定することによって、角度ずれ1049を有するように、半径方向にオフセットされたスロット1040を示してもよい。中心線1051は第1のステータ板1014の直径に関連して構成することができる。遊星軸1009が、ゼロにほぼ等しい傾斜角である場合、構造線1050は、便宜上、遊星軸1009の中央部と一致する半径方向位置にあるように示される。角度ずれ1049は、中心線1051と、構造線1050に沿っており半径方向にオフセットされたスロット1040の中央部との間の角変位として画定することができ、この場合、半径方向にオフセットされたスロット1040の中央部は幅1046のほぼ半分である。一実施形態では、角度ずれ1049は約0度〜45度の範囲にある。いくつかの実施形態では、角度ずれ1049は、5〜20度であり、好ましくは8度、9度、10度、11度または12度であり得る。
【0052】
次に図12および図13を参照すると、一実施形態において、第1のステータ板1014には、中央孔の周囲に配置されるシフトストッパ延長部1052を設けることができる。第1のステータ板1014には、ほぼトロイダル型のクリアランスカット1054を設けることができる。クリアランスカット1054を第1のステータ板1014の面に形成することができる。クリアランスカット1054は、図13の平面で見た場合に、ほぼ湾曲状のプロファイルを有することができる。同様に、半径方向にオフセットされたスロット1040のバレイ1041および/または壁1043には、図12の平面で見た場合に、ほぼ湾曲状のプロファイルを設けることができる。CVT1000の動作中、半径方向にオフセットされたスロット1040がローラ1042を案内する。シフトストッパ延長部1052は、半径方向にオフセットされたスロット1040におけるローラ1042の軌道に対して機械的制限を与えることができる。いくつかの実施形態では、シフトストッパ延長部1052を第1のステータ板1014の半径方向外側の周囲に形成することができる。
【0053】
次に図14および図15を参照すると、一実施形態において、第2のステータ板1016は、中央孔1056を有するほぼディスク形の物体であり得る。中央孔1056は、例えば、スプライン、ローレット、または溶接による主軸1010への第2のステータ板1016の結合を容易にするように構成することができる。半径方向スロット1044は中央孔1056の周囲に角度を付けて配置することができる。いくつかの実施形態では、半径方向スロット1044は、ステータ板1016の周囲の近傍からまたはその近傍において、中央孔1056に向かって第2のステータ板1016に延びることができる。半径方向スロット1044には、図15の平面で見た場合に、湾曲状プロファイルを設けることができる。一実施形態では、第2のステータ板1016にはシフトストッパ延長部1057を設けることができる。シフトストッパ延長部1057は、中央孔1056を中心に半径方向に形成され、そこから軸方向に延びることができる。シフトストッパ延長部1057はシフトストッパ延長部1052と同様に構成することができる。
【0054】
次に図16および図17を参照すると、一実施形態において、遊星軸1009には、クリップ1072を受け入れるように構成される溝1070を設けることができる。クリップ1072は遊星軸1009へのローラ1042の結合を容易にすることができる。一実施形態では、表面1074を遊星軸1009に設けて、軸受1076の支持を行うことができる。軸受1076はローラ1042の内径に結合するように構成することができる。いくつかの実施形態では、軸受1076がローラ1042に圧入される。他の実施形態では、ローラ1042は玉軸受1077を受け入れるように構成することができる。軸受面1078は、遊星軸1009への軸受1077の結合を容易にするために遊星軸1009に設けることができる。
【0055】
さらに図16および図17を参照すると、一実施形態において、ローラ1042は、中央孔を有するほぼ円筒状の物体である。中央孔は軸受1076または軸受1077を受け入れるように構成することができる。ローラ1042には円筒体の冠状の外周を設けることができる。冠状の外周は、第1のステータ板1014および第2のステータ板1016への遊星軸1009の結合を容易にするように構成される。
【0056】
上記の説明が特定の構成要素またはサブアセンブリに関する寸法を提供していることに留意されたい。言及した寸法または寸法範囲は、最良の形態等の特定の法的要件に可能な限り最良に従うように意図される。しかし、本明細書に記載の本発明の範囲は、特許請求の範囲の文言によってのみ決定されるべきであり、したがって、指定の寸法またはその範囲を特徴とする請求項がない限り、言及した寸法のいずれもが、本発明の実施形態を限定するとみなされるべきではない。
【0057】
上記の説明は、本発明の特定の実施形態を詳細に説明している。しかし、上記の文面がいかに詳細に見えようと、本発明を多くの方法で実施できることが理解されるであろう。さらに上記のように、本発明の特定の特徴または態様を説明する場合の特定の用語の使用は、その用語が関連する本発明の特徴または態様の任意の具体的な特性を含むものに限定されるように、その用語が本明細書において再定義されていることを意味するものとみなされるべきではないことに留意されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜可能な回転軸線を各々が有する複数のトラクション遊星を有する無段変速機(CVT)の速度比を調節する方法であって、前記方法が、傾斜可能な各回転軸線にスキュー状態を独立して適用するように前記CVTのステータを構成するステップを含む方法。
【請求項2】
前記スキュー状態が少なくとも部分的に前記ステータ板の角変位に基づく請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スキュー状態が少なくとも部分的に前記傾斜可能な回転軸線の傾斜角に基づく請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステータを構成するステップが、前記ステータに形成される半径方向にオフセットされた複数のスロットを設けるステップを含み、前記半径方向にオフセットされた複数のスロットが前記ステータの中央部の周囲に角度を付けて配置され、前記半径方向にオフセットされた複数のスロットが前記CVTの主駆動軸線からオフセットされる請求項1に記載の方法。
【請求項5】
傾斜可能な回転軸線を各々が有する複数のトラクション遊星を有する無段変速機(CVT)の速度比を調節する方法であって、
各トラクション遊星が動作可能に結合されるステータを回転させるステップであって、前記ステータが、傾斜可能な各回転軸線にスキュー状態を独立して適用するように構成されるステップと、
傾斜可能な各回転軸線を案内して平衡状態にするステップであって、前記平衡状態が少なくとも部分的に前記ステータ板の回転に基づいており、前記平衡状態が実質的にゼロスキュー角状態を有するステップと、
を含む方法。
【請求項6】
傾斜可能な各回転軸線を案内するステップが、半径方向にオフセットされた複数のガイドを有するステータを設けるステップを含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
傾斜可能な各軸線を案内するステップが、傾斜可能な各軸線を、半径方向にオフセットされているガイドに動作可能に結合するステップを含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
傾斜可能な回転軸線を各々が有する、無段変速機(CVT)の複数のトラクション遊星を支持する方法であって、
半径方向にオフセットされた複数のスロットを有する第1のステータ板を設けるステップであって、前記半径方向にオフセットされた複数のスロットが前記第1のステータ板の中央部の周囲に角度を付けて配置されるステップと、
前記トラクション遊星の各々を前記第1のステータ板に動作可能に結合するステップと、
複数の半径方向スロットを有する第2のステータ板を設けるステップであって、前記複数の半径方向スロットが前記第2のステータ板の中央部の周囲に角度を付けて配置されるステップと、
前記トラクション遊星を前記第2のステータ板に動作可能に結合するステップと、
を含む方法。
【請求項9】
前記第1のステータ板を前記第2のステータ板に対して回転させるように構成するステップをさらに含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のステータ板を、前記CVTの主駆動軸線周りにほぼ回転不能であるように構成するステップをさらに含む請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記第2のステータ板を、前記CVTの主駆動軸線周りにほぼ回転不能であるように構成するステップをさらに含む請求項8に記載の方法。
【請求項12】
傾斜可能な回転軸線を各々が有する複数のトラクション遊星を有する無段変速機(CVT)の速度比を調節する方法であって、
前記トラクション遊星の各々に動作可能に結合されるステータ板を設けるステップと、
前記CVTの速度比の設定値を受信するステップと、
前記ステータ板の角変位の設定値を決定するステップであって、前記設定値が少なくとも部分的に前記速度比の前記設定値に基づくステップと、
前記ステータ板の前記角変位の前記設定値まで前記ステータ板を回転させるステップであって、傾斜可能な各回転軸線でスキュー状態を生じさせ、傾斜可能な各回転軸線が傾斜するときに、前記ステータ板が前記スキュー状態を調節するように構成されるステップと、
を含む方法。
【請求項13】
前記ステータ板を回転させるステップが、アクチュエータを前記ステータ板に動作可能に結合するステップを含み、前記アクチュエータが、少なくとも部分的に前記角変位の前記設定値に基づいて、アクチュエータ指令信号を受信するように構成される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
傾斜可能な回転軸線を各々が有するように構成される複数のトラクション遊星を有する無段変速機(CVT)の速度比を調節する方法であって、
前記CVTの速度比の設定値を決定するステップと、
前記CVTの実際の速度比を測定するステップと、
前記実際の速度比と前記速度比の前記設定値とを比較し、これによって比較値を生成するステップと、
少なくとも部分的に前記比較値に基づいて、ステータ板を角変位まで回転させるステップであって、前記ステータ板を回転させるステップにより、スキュー状態が前記トラクション遊星の各々に適用され、傾斜可能な各回転軸線が傾斜するときに前記スキュー状態が変化し、前記角変位が一定のままであるステップと、
を含む方法。
【請求項15】
前記ステータ板を回転させるステップが、アクチュエータを前記ステータ板に動作可能に結合するステップを含み、前記アクチュエータが、少なくとも部分的に前記速度比の前記設定値に基づいて、アクチュエータ指令信号を受信するように構成される請求項14に記載の方法。
【請求項16】
傾斜可能な回転軸線を各々が有する、主駆動軸線の周囲に角度を付けて配置された複数のトラクション遊星を有する無段変速機(CVT)であって、前記CVTが、
前記主駆動軸線と同軸の第1のステータ板であって、前記第1のステータ板が、半径方向にオフセットされた複数のスロットを有し、傾斜可能な各軸線が他の軸線から独立して案内されるように、前記半径方向にオフセットされた複数のスロットが構成される第1のステータ板と、
前記主駆動軸線と同軸の第2のステータ板であって、前記第2のステータ板が複数の半径方向スロットを有し、前記複数の半径方向スロットが前記傾斜可能な回転軸線を独立して案内するように構成される第2のステータ板と、
を備え、
前記第1のステータ板が前記第2のステータ板に対して回転するように構成される無段変速機(CVT)。
【請求項17】
各トラクション遊星に結合されたトラクション太陽をさらに備え、前記トラクション太陽が各トラクション遊星の半径方向内側に配置され、前記トラクション太陽がほぼ軸方向に固定されるように構成される請求項16に記載のCVT。
【請求項18】
複数のトラクション遊星を有する無段変速機(CVT)用のステータ板であって、
中央部を有するほぼディスク形の物体と、
前記中央部の周囲に角度を付けて配置されている半径方向にオフセットされた複数のガイドであって、前記半径方向にオフセットされたガイドの各々が、前記ディスク形の物体の中心線からオフセットされた直線部を有する半径方向にオフセットされた複数のガイドと、
を備えるステータ板。
【請求項19】
前記中央部の周囲に配置されたシフトストッパ延長部をさらに備える請求項18に記載のステータ板。
【請求項20】
前記シフトストッパ延長部が、前記半径方向にオフセットされたガイドの半径方向内側に配置される請求項19に記載のステータ板。
【請求項21】
前記シフトストッパ延長部が、前記半径方向にオフセットされたガイドの半径方向外側に配置される請求項19に記載のステータ板。
【請求項22】
傾斜可能な回転軸線を各々が有する複数のトラクション遊星を有する無段変速機(CVT)であって、
前記CVTの主駆動軸線の周囲に同軸に配置された第1のステータ板であって、前記第1のステータ板が各トラクション遊星に動作可能に結合され、前記第1のステータ板が、前記第1のステータ板の中央部の周囲に角度を付けて配置されている半径方向にオフセットされた複数のスロットを有し、前記半径方向にオフセットされた複数のスロットの各々が、前記第1のステータ板の中心線からオフセットされた直線部を有する第1のステータ板と、
前記CVTの主駆動軸線の周囲に同軸に配置された第2のステータ板であって、前記第2のステータ板が複数の半径方向スロットを有し、前記複数の半径方向スロットが前記第2のステータ板の中央部の周囲に角度を付けて配置され、前記複数の半径方向スロットの各々が前記第2のステータ板の前記中央部にほぼ半径方向に整列される第2のステータ板と、
前記第1および第2のステータ板の少なくとも一方に動作可能に結合されたアクチュエータであって、前記第1のステータ板と前記第2のステータ板との間で相対的回転を与えるように構成されるアクチュエータと、
を備える無段変速機(CVT)。
【請求項23】
前記第1のステータ板に結合されたステータ駆動部をさらに備え、前記ステータ駆動部が前記アクチュエータに動作可能に結合するように構成される請求項22に記載のCVT。
【請求項24】
各トラクション遊星に結合されたトラクション太陽をさらに備え、前記トラクション太陽が各トラクション遊星の半径方向内側に配置され、前記トラクション太陽がほぼ軸方向に固定されるように構成される請求項22に記載のCVT。
【請求項25】
ボール遊星無段変速機(CVT)であって、
傾斜可能な回転軸線を各々が有する複数のトラクション遊星と、
前記CVTの主駆動軸線に垂直な線に整列された第1のガイドであって、前記傾斜可能な回転軸線に作用するように構成される第1のガイドと、
前記CVTの前記主駆動軸線に垂直な線に平行である線に整列された第2のガイドであって、前記傾斜可能な回転軸線に作用するように構成される第2のガイドと、
を備えるボール遊星無段変速機(CVT)。
【請求項26】
前記第1および第2のガイドが、前記傾斜可能な軸線の平衡状態を実質的に画定する位置を確立するように構成される請求項25に記載のCVT。
【請求項27】
無段変速機(CVT)を製造する方法であって、
前記CVTの主駆動軸線に垂直な線に半径方向に整列される第1のガイドを設けるステップと、
オフセットされる第2のガイドを設けるステップであって、
投影面において、前記第1および第2のガイドのそれぞれの投影線が交差し、これによって交差位置が形成されるステップと、
複数のトラクション遊星を前記第1および第2のガイドに動作可能に結合するステップと、
前記第1および第2のガイドが前記主駆動軸線を中心に互いに回転することができるように、前記第1および第2のガイドを構成するステップと、
を含む方法。
【請求項28】
前記交差位置が、前記トラクション遊星に関連する遊星軸線の平衡状態にほぼ対応する請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記平衡状態がほぼゼロのスキュー状態に対応する請求項28に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2012−501418(P2012−501418A)
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524950(P2011−524950)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【国際出願番号】PCT/US2008/074496
【国際公開番号】WO2010/024809
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(502252415)フォールブルック テクノロジーズ インコーポレイテッド (19)
【Fターム(参考)】