説明

無線センサ装置

【課題】受信信号と同一周波帯の妨害波をキャンセルして誤判定を防止すること。
【解決手段】無線センサ装置10は、所定周波数の信号を発振する発振回路11と、発振回路11からの信号を対象物Oへ放射する送信アンテナANTと、対象物Oからの反射波を受信する受信アンテナANTと、送信アンテナANTへ供給される信号と受信アンテナANTで受信した反射波とが入力されるミキサ回路16と、ミキサ回路16から出力される信号を処理する信号処理回路19と、送信アンテナANTへ供給される信号を変調コードにしたがって位相変調する位相変調手段14,15と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線波を用いて対象物の反射波から対象物の動き等を検出する無線センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の無線センサ装置として、発振器からの出力信号をアンテナに給電して無線波を放射し、この無線波が対象物で反射した反射波を受信し、受信した反射波から対象物の方位や動きを検出するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6は、発振器からの出力信号を用いて、対象物の動き等を検出する無線センサ装置を示す構成図である。図6に示す無線センサ装置1では、RF発振器2から発振した信号が、増幅器3で増幅され、バンドパスフィルタ(BPF)4に送られて帯域制限される。BPF4を通過した信号はアンテナANTに給電され、アンテナANTから無線波が放射されると共に、対象物Oで反射した反射波がアンテナANTで受信される。受信した反射波は電気的な受信信号としてミキサ回路5に入力され、BPF4から直接入力された信号(ローカル信号)と混合される。ミキサ回路5から出力された信号は、ローパスフィルタ(LPF)6に入力され、低周波成分が取り出される。LPF6を通過した信号は、低周波数増幅回路7へ入力されて増幅され、低周波数増幅回路7で増幅された信号は、信号処理回路8に取り込まれる。信号処理回路8では、図示しないA/D変換器でデジタル信号に変換され、信号処理回路8から出力された低周波成分の信号から対象物Oの動きの有無が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−245602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の無線センサ装置では、受信信号と同一周波帯の妨害波が混入した場合、妨害波をキャンセルすることができない問題があった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、受信信号と同一周波帯の妨害波をキャンセルして誤判定を防止することができる無線センサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の無線センサ装置は、所定周波数の信号を発振する発振回路と、前記発振回路からの信号を対象物へ放射する送信アンテナと、前記対象物からの反射波を受信する受信アンテナと、前記送信アンテナへ供給される信号と前記受信アンテナで受信した反射波とが入力されるミキサ回路と、前記ミキサ回路から出力される信号を処理する信号処理回路と、前記送信アンテナへ供給される信号を変調コードにしたがって位相変調する位相変調手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、変調コードにしたがって位相変調された信号が送信されるので、対象物からの反射波も同一の変調コードにより位相変調され、受信信号と同一周波帯の妨害波が混入した場合でも、妨害波をキャンセルして、対象物からの反射波を取り出すことができ、対象物の動き等の検出についての誤判定を防止することができる。
【0009】
上記無線センサ装置において、前記位相変調手段は、前記発振回路から前記ミキサ回路の入力端までの間に設けられており、前記所定周波数と同一周波数帯のBPSK変調器で構成されることを特徴とする。
【0010】
上記無線センサ装置において、前記位相変調手段は、前記ミキサ回路の入力端から前記送信アンテナまでの間、及び前記ミキサ回路の入力端から前記受信アンテナまでの間にそれぞれ設けられており、前記所定周波数と同一周波数帯のBPSK変調器で構成されることを特徴とする。
【0011】
上記無線センサ装置において、前記位相変調手段は、ベースバンド帯又は前記所定周波数より低い周波数帯で前記変調コードにしたがって位相変調するBPSK変調器と、前記発振回路から前記ミキサ回路の入力端までの間に設けられ、前記BPSK変調器から出力される位相変調信号を前記所定周波数にアップコンバートするアップコンバータと、を有することを特徴とする。
【0012】
上記無線センサ装置において、前記BPSK変調器に対して識別コードとなる変調コードを生成する変調コード発生器を接続した構成にしてもよい。
【0013】
上記無線センサ装置において、前記送信アンテナと前記受信アンテナとを共用してもよい。また、上記無線センサ装置において、前記送信アンテナと前記受信アンテナとをそれぞれ別のアンテナで構成してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、受信信号と同一周波帯の妨害波をキャンセルして誤判定を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る無線センサ装置を示す構成図である。
【図2】本実施の形態に係る無線センサ装置の動作を説明するための図である。
【図3】本実施の形態に係る無線センサ装置の動作を説明するための図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る無線センサ装置を示す構成図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係る無線センサ装置を示す構成図である。
【図6】従来の無線センサ装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明の実施の形態に係る無線センサ装置は、所定の変調コードにしたがって位相変調した無線波を放射し、この無線波が対象物に反射した反射波から対象物の動き等を検出するものである。
【0017】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係る無線センサ装置を示す構成図である。図1に示すように、無線センサ装置10は、送受信アンテナANTと、RF発振器11と、増幅器(Buffer Amp)12と、バンドパスフィルタ(BPF)13と、変調コード(Code)発生器14と、位相変調器(RF帯BPSK変調器)15と、を備えている。RF発振器11及び増幅器12は、電源回路20から供給される電源で駆動するように構成されている。アンテナは送信アンテナと受信アンテナを兼用する送受信アンテナANTであるが、2つのアンテナに分離した構成とすることも可能である。
【0018】
RF発振器11は、所定の周波数で発振し、発振信号を増幅器12に送る。この発振信号は、搬送波となる無変調の連続波(CW:continuous wave)である。増幅器12は、RF発振器11から出力された所定周波数の出力信号を所定の電力レベルまで増幅して、BPF13へ出力する。BPF13は、増幅器12で増幅された信号に対して通信帯域に制限されるような帯域制限を加えて位相変調器15へ出力する。位相変調器15は、送受信アンテナANTの給電端とRF発振器11との間に設けられており、変調コード発生器14から変調コードが与えられる。
【0019】
変調コード発生器14は、当該無線センサ装置10に固有の識別コードを表す「0」,「1」の変調コードを生成する。特に、コード全体または所定区間で「0」と「1」のそれぞれの総数が略同一となる符号系列が望ましい。本例ではPN符号を用いることとする。位相変調器15は、変調コード「0」に対して0°の位相変調とし、変調コード「1」に対して180°の位相変調を加えることとする。
【0020】
図2(a)は、変調コード発生器14の生成する変調コードを示す図であり、図2(b)は同図(a)の変調コードを用いて位相変調したRF送信信号(ローカル信号)を示している。上記した通り、変調コード「0」は送信信号(ローカル信号)の位相0°に、変調コード「1」はこの送信信号(ローカル信号)の位相0°が反転した位相180°に対応している。この変調コード信号を構成するコード数(「0」と「1」の数)は同数(又は略同数)であり、後述するように妨害波をキャンセルする機能と自局から送信した信号の反射波を識別するための識別情報としての機能とを有する。
【0021】
位相変調器15は、発振周波数信号をBPSK変調方式で直接的に位相変調する。位相変調器15で位相変調された信号には、図2(b)に示すように、位相が反転した2つの位相(0°と180°)の位相情報が含まれるので、この位相情報と同じ位相情報(コード情報)が、対象物Oで反射した反射波(受信信号)にも含まれる。位相変調器15から出力される位相変調信号は送信信号として送受信アンテナANTに給電されると同時に、この送信信号の一部がローカル信号としてミキサ回路16に入力される。
【0022】
送受信アンテナANTは、位相変調器15で位相変調処理された送信信号を無線波として放射すると共に、放射した無線波が対象物Oに反射した反射波を電気的な受信信号として受信し、ミキサ回路16に出力する。
【0023】
本実施の形態に係る無線センサ装置10は、受信側の構成要素としてミキサ回路16と、ローパスフィルタ(LPF)17と、低周波数増幅回路18と、信号処理回路19と、を備える。低周波数増幅回路18及び信号処理回路19は、電源回路20から供給される電源で駆動するように構成されている。
【0024】
ミキサ回路16には、位相変調器15から送受信アンテナANTに給電される送信信号の一部がローカル信号として入力されると共に、受信側となる送受信アンテナANTから対象物Oからの反射波を受信した反射波受信信号が入力される。ミキサ回路16は、ローカル信号と反射波受信信号とを混合する。ここで、ミキサ回路16では、反射波受信信号の遅延を考慮しなければ、送信信号(ローカル信号)の0°の位相変調区間に対して反射波受信信号の0°の位相変調区間が乗算されて位相変調が0°となり、送信信号(ローカル信号)の180°の位相変調区間に対して反射波受信信号の180°の位相変調区間が乗算されて位相変調が0°となる。すなわち、位相変調器15による位相変調が自動的に復調される。実際は、後述するように、反射波受信信号の遅延により変調コードに対応した位相差情報が残る。LPF17は、ミキサ回路16からの混合出力を積分処理して低周波成分を取り出し、低周波数増幅回路18に送る。低周波数増幅回路18は、LPF17で取り出された低周波成分(低周波信号)を所定レベルにまで増幅し、信号処理回路19に送る。信号処理回路19は、増幅された低周波信号を、図示しないA/D変換器でデジタル信号に変換し、このデジタル信号を解析することで、対象物Oの動き等を検出する。
【0025】
次に、図2及び図3を参照して、無線センサ装置10の動作について説明する。
RF発振器11で発振した発振信号が、増幅器12及びBPF13を介して位相変調器15に入力される。変調コード発生器14では、当該無線センサ装置10の識別コードとして、例えば図2(a)に示す変調コードが生成され、この変調コード信号が位相変調器15に供給される。位相変調器15では、RF帯の発振信号を変調コード発生器14から受けた変調コード信号に従いBPSK変調する。図2(a)に示す変調コードにしたがって位相変調することで、同図(b)に示すように位相変調された送信信号(RF帯)が生成される。その結果、0,1の識別コードからなる変調コードにしたがって位相が反転したRF送信信号が送信される。変調コードに対応した位相情報を含む送信信号は送受信アンテナANTに送られると共に、この送信信号の一部がローカル信号としてミキサ回路16に送られる。送受信アンテナANTでは、位相変調されたRF送信信号は無線波として放射される。
【0026】
送受信アンテナANTから放射された無線波が対象物Oに反射した反射波は、再び送受信アンテナANTで受信されて反射波受信信号としてミキサ回路16に送られる。ミキサ回路16では、位相変調器15から受けたローカル信号と、送受信アンテナANTで受信した受信信号とが混合され、混合出力がLPF17に送られる。ここで、対象物Oからの反射波受信信号は、RF送信信号と同一タイミングで0°位相と180°位相とが繰り返す位相反転繰り返し信号である。両者を混合すると、位相遅延部分を除けば、両者の0°位相部分が同期すると共に、両者の180°位相部分が同期するので、両者の0°位相部分が互いに掛けあわされて0°となり、両者の180°位相部分が互いに掛けあわされて0°となり、BPSK位相変調が復調されることになる。
【0027】
反射波受信信号はローカル信号に対して遅延時間差Tが生じる(図2(c))。このため、図2(d)に示すように、ローカル信号(RF送信信号)の180°位相部分と反射波受信信号の0°位相部分とが時間的に重複するところでは両者の位相差が180°となり、ミキサ回路16の混合出力には位相差分に相当するピークパワーが現れる。例えば、ローカル信号の立ち上がり位置P1の位相(180°)と、このローカル信号に遅延時間Tだけ遅延した反射波受信信号の立ち上がり位置P2の位相(0°)との位相差分(180°−0°=180°)がピークO1として現れ、ローカル信号の立ち下がり位置P3の位相(0°)と、このローカル信号に遅延時間Tだけ遅延した受信信号の立ち下がり位置P4の位相(180°)との位相差分(0°−180°=−180°=180°)がピークO2として現れる。図2(a)(b)と図2(d)とを比較すると明らかなように、図2(d)に示されるピークパワー出力は図2(a)に示す変調コードと対応している。このことから、ミキサ回路16のピークパワー出力を分析すれば反射波受信信号が自局から送信したRF送信信号に対するものであるか否かチェックすることが可能になる。たとえば、無線センサ装置10が近接して設置される環境であっても、無線センサ装置10毎に固有の変調コードを使用すれば、同一周波数を使用することが可能になる。
【0028】
次に反射波受信信号に妨害波が混信する場合について説明する。図3(a)(b)は図2(a)(b)に示す変調コード及びRF送信信号を示しており、図3(c)は妨害波を示している。ここでは、妨害波の位相はRF送信信号とは相関がなく、一定の位相であるものとして説明する。
【0029】
ローカル信号(図3(b))に対する反射波受信信号の遅延時間Tを考慮しなければ、ローカル信号(位相変調)と図3(c)に示す一定位相の妨害波とが混合(乗算)されるので、図3(d)に示すように+V位相と−V位相とが繰り返す混合出力となる。すなわち、ローカル信号の0°位相部分と妨害波が掛けあわされて+Vとなり、ローカル信号の180°位相部分と妨害波が掛けあわされて−Vとなる。変調コードと同様に、+Vと−Vとは同一回数(1コード単位)だけ繰り返すので、合計すれば0となる。よって、ローカル信号と妨害波の混合器出力を後段のLPF17で積分すれば、妨害波に関する積分出力は「0」となり、反射波受信信号の中から妨害波成分を取り除くことができる。
【0030】
LPF17では、ミキサ回路16からの混合出力が積分処理されて、妨害波が除去されると共に、ローカル信号(RF送信信号)と反射波受信信号との位相差情報(変調コード情報を含む)である低周波成分が取り出され、低周波数増幅回路18に送られる。低周波数増幅回路18では、LPF17で取り出された低周波成分が所定レベルにまで増幅されて、信号処理回路19に送られる。信号処理回路19では、増幅された低周波信号が、デジタル信号に変換され、このデジタル信号が解析されて対象物Oの動き等が検出されると共に変調コードが解析されて自局から送信した信号の反射波受信信号であると認識できる。
【0031】
以上のように、本実施の形態では、自局の識別コードからなる変調コードを用いてRF送信信号がBPSK変調され、この位相変調されたRF送信信号が無線波として放射されると共に送信信号の一部がローカル信号としてミキサ回路16に送られる。ミキサ回路16で、ローカル信号と対象物Oに反射した反射波受信信号とを混合して両信号の位相差分を出力し、LPF17でこの位相差分を積分出力する。したがって、ローカル信号と反射波受信信号とは混合されて自動的に復調される一方、妨害波は位相変調されているローカル信号と混合されて+V成分と−V成分とに分離され、積分してキャンセルされるので、反射波受信信号に当該受信信号と同一周波帯の妨害波が混入した場合でも、妨害波成分を取り除き、対象物Oからの反射波成分を取り出すことができる。また、変調コードに対応した混合器出力のピークパワーが得られるので、反射波受信信号が自局の送信信号に対する反射波であることを確認することができる。
【0032】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本発明の第2の実施の形態に係る無線センサ装置は、上述した第1の実施の形態に係る無線センサ装置10と比べて、送信側の構成要素のみ相違している。したがって、特に相違点についてのみ説明し、同一の構成については同一の符号を用い、繰り返しの説明を省略する。
【0033】
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る無線センサ装置を示す構成図である。図4に示すように、無線センサ装置40は、送信側の構成要素として、送受信アンテナANTと、RF発振器11と、増幅器12と、BPF13と、変調コード発生器41と、位相変調器(RF帯BPSK変調器)42と、BPF43と、を備えている。位相変調器42は、RF発振器11の出力端からミキサ回路16の入力端との間に設けられている。送受信アンテナANTが、物理的に分離した送信アンテナと受信アンテナとで構成される場合は、RF発振器11の出力端と送信アンテナの給電端との間に第1の位相変調器42が設置され、かつミキサ回路16の入力端と受信アンテナの給電端との間に第2の位相変調器42が設置されることになる。位相変調器42に対して変調コード発生器41から無線センサ装置40の固有の識別コードである変調コードを供給する。位相変調器42と送受信アンテナANTの給電端との間にはBPF43が設けられている。
【0034】
以上のように構成された第2の実施の形態では、RF発振器11から発振された発振信号が増幅器12で増幅された後、BPF13を通過し、アンテナ側に設置された位相変調器42へ入力すると共に一部がローカル信号としてミキサ回路16へ入力される。変調コード発生器41は、識別コードからなる変調コード(図2(a))を生成して位相変調器42へ供給しており、位相変調器42が発振信号からなるRF送信信号をBPSK変調する。変調コードの「0」では0°位相、「1」では180°位相を変化させてRF送信信号(図2(b))はBPF43で送信帯域外の成分を除去して無線送信される。
【0035】
対象物Oで反射した反射波が送受信アンテナANTで受信されて反射波受信信号が出力される。反射波受信信号(図2(c))に対して位相変調器42が送信時と同じ変調コード(図2(a))でBPSK変調を加える。反射波受信信号の0°位相部分に対して0°位相が変化する変調が加えられ(位相変化無し)、反射波受信信号の180°位相部分に対して180°位相が変化する変調が加えられ(0°位相に戻る)。すなわち、変調コードで位相変調されていた反射波受信信号が復調されてミキサ回路16の入力端に出力される。図2(b)(c)に示すように、反射波受信信号が遅延時間Tだけ遅延していれば、0°位相から180°位相へ変化する変化点近傍、及び180°位相から0°位相へ変化する変化点近傍に180°位相の位相信号が現れる。その結果、ミキサ回路16からは図2(d)に示すような変調コードに対応したピークパワー出力が現れる。このピークパワー出力を分析すれば自局の変調コードであることが判ると共に、対象物Oの変位を検出することもできる。
【0036】
一方、図3(c)に示すように一定位相の妨害波が混入する場合、位相変調器42において、図3(c)に示す一定位相の妨害波に対して図3(a)に示す変調コードで位相変調が加えられる。ミキサ回路16では変調コードで位相変調された妨害波とローカル信号(RF送信信号)とが混合され、妨害波の0°位相部分が+V、妨害波の180°位相部分が−Vとなる。変調コードと同様に、+Vと−Vとは同一回数(1コード単位)だけ繰り返すので、後段の積分回路であるLPF17で合計すれば妨害波成分は0となる。
【0037】
このように本実施の形態によれば、上記第1の実施の形態と同様に反射波受信信号に当該受信信号と同一周波帯の妨害波が混入した場合でも、妨害波成分を取り除き、対象物からの反射波成分を取り出すことができると共に、反射波受信信号が自局の送信信号に対する反射波であることを確認することができる。
【0038】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本発明の第3の実施の形態に係る無線センサ装置は、上述した第1の実施の形態に係る無線センサ装置10と比べて、送信側の構成要素のみ相違している。したがって、特に相違点についてのみ説明し、同一の構成については同一の符号を用い、繰り返しの説明を省略する。
【0039】
図5は、本発明の第3の実施の形態に係る無線センサ装置を示す構成図である。図5に示すように、無線センサ装置50は、送受信アンテナANTと、RF発振器11と、増幅器12と、変調コード発生器51と、GMF(Gaussion Minimum Moduration Filter)52と、位相変調器(BB/IF帯BPSK変調器)53と、アップコンバータ54と、増幅器55と、BPF13と、を備えている。
【0040】
変調コード発生器51は、無線センサ装置50に固有の識別コードである変調コード(例えば、図2(a))を生成し、GMF52は、変調コード発生器51から出力された変調コード信号の周波数帯域をベースバンド(BB)帯域又は中間周波数(IF)帯域に制限する。帯域に制限された変調コード信号は位相変調器53に入力する。位相変調器53は、ベースバンド帯域又は発振周波数より低い中間周波数帯域で位相変調処理を行うBPSK変調器で構成されている。位相変調器53は、ベースバンド(BB)帯域又は中間周波数(IF)帯の搬送波を変調コードでBPSK変調して位相変調信号を出力する。RF発振器11の出力を増幅する増幅器12の出力段にアップコンバータ54が設けられている。アップコンバータ54は位相変調器53から供給される位相変調信号(BB又はIF帯)を発振信号と混合してRF帯に周波数変換する。このように、RF帯よりも低周波数のベースバンド帯域又は中間周波数帯域で位相変調処理を行うことで、RF帯で位相変調する場合に比べて、高い精度で位相変調することができる。周波数変換後のRF送信信号は増幅器55で増幅し、BPF13を通過して送受信アンテナANTから放射されると共に、送信信号の一部がミキサ回路16に送られる。
【0041】
ミキサ回路16及びLPF17において、変調コード情報が検出されると共に、妨害波がキャンセルされる作用効果については、上記第1の実施の形態と同様である。
【0042】
なお、上記実施の形態では、送信アンテナと受信アンテナを単一の送受信アンテナANTで兼用(共用)する構成を例に説明したが、送信アンテナ及び受信アンテナを別々のアンテナで構成してもよい。
【0043】
また、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、無線波を利用して対象物からの反射波から対象物の動き等を検出する無線センサ装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0045】
10,40,50 無線センサ装置
11 RF発振器(発振回路)
12 増幅器
13,43 BPF
14,41,51 変調コード発生器
15,42,53 位相変調器
16 ミキサ回路
17 LPF
18 低周波数増幅回路
19 信号処理回路
54 アップコンバータ
ANT 送受信アンテナ
O 対象物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定周波数の信号を発振する発振回路と、
前記発振回路からの信号を対象物へ放射する送信アンテナと、
前記対象物からの反射波を受信する受信アンテナと、
前記送信アンテナへ供給される信号と前記受信アンテナで受信した反射波とが入力されるミキサ回路と、
前記ミキサ回路から出力される信号を処理する信号処理回路と、
前記送信アンテナへ供給される信号を変調コードにしたがって位相変調する位相変調手段と、を備えることを特徴とする無線センサ装置。
【請求項2】
前記位相変調手段は、前記発振回路から前記ミキサ回路の入力端までの間に設けられており、前記所定周波数と同一周波数帯のBPSK変調器で構成されることを特徴とする請求項1に記載の無線センサ装置。
【請求項3】
前記位相変調手段は、前記ミキサ回路の入力端から前記送信アンテナまでの間、及び前記ミキサ回路の入力端から前記受信アンテナまでの間にそれぞれ設けられており、前記所定周波数と同一周波数帯のBPSK変調器で構成されることを特徴とする請求項1に記載の無線センサ装置。
【請求項4】
前記位相変調手段は、ベースバンド帯又は前記所定周波数より低い周波数帯で前記変調コードにしたがって位相変調するBPSK変調器と、前記発振回路から前記ミキサ回路の入力端までの間に設けられ、前記BPSK変調器から出力される位相変調信号を前記所定周波数にアップコンバートするアップコンバータと、を有することを特徴とする請求項1に記載の無線センサ装置。
【請求項5】
前記BPSK変調器に対して識別コードとなる変調コードを生成する変調コード発生器を接続したことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれかに記載の無線センサ装置。
【請求項6】
前記送信アンテナと前記受信アンテナとを共用したことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の無線センサ装置。
【請求項7】
前記送信アンテナと前記受信アンテナとをそれぞれ別のアンテナで構成したことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の無線センサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−174840(P2011−174840A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39691(P2010−39691)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】