説明

無線タグ情報読み取り装置

【課題】操作者に対し、無線タグ回路素子からの応答信号の受信結果に精度よく対応した報知を確実に行う。
【解決手段】無線タグ回路素子Toに対し情報送受信を行うためのリーダアンテナ3を備えた移動型のリーダ1は、IC回路部150に記憶された情報を取得するための応答要求コマンドを生成してリーダアンテナ3を介し送信し、応答要求コマンドに応じ無線タグ回路素子Toから返信された応答信号をリーダアンテナ3を介して受信し、この受信結果に応じて操作者への報知を表示部8で行い、表示部8による報知が受信処理後報知開始までのリーダ1の移動に少なくとも対応した態様となるように表示部8を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部と情報の無線通信が可能な無線タグに対し情報の読み取りを行う無線タグ情報読み取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
小型の無線タグに対し、リーダ/ライタより非接触で問い合わせの送信及び返答の受信を行うことで、無線タグの情報の読み取り/書き込みを行うRFID(Radio Frequency Identification)システムが知られている。
【0003】
無線タグに備えられた無線タグ回路素子は、所定の無線タグ情報を記憶するIC回路部とこのIC回路部に接続されて情報の送受信を行うアンテナとを備えている。リーダ/ライタの送信アンテナより無線タグに対し送信波の送信を行うと、無線タグ回路素子はその送信波に対応して返信を行う。このような通信を行う無線タグ情報読み取り装置において、無線タグ回路素子に対し円滑に通信を行うための従来技術として、例えば特許文献1記載のものがある。
【0004】
この従来技術では、無線タグ回路素子(IDタグ)から発信される情報を読み取る無線タグ情報読み取り装置(タグリーダ)が物品管理ロボットに搭載されている。物品管理ロボットが巡回移動することにより、搭載された無線タグ情報読み取り装置が、各物品に設けられた無線タグ回路素子を検出する。そして、その検出した際の物品管理ロボットの位置に基づき物品の位置を検出し、ディスプレイを用いて操作者に対し報知するようになっている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−250684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術には、以下の課題が存在する。
【0007】
すなわち、例えば倉庫などにおいて操作者が携帯型の無線タグ情報読み取り装置を用いて複数の物品にそれぞれ設けられた無線タグ回路素子の検出(情報取得)を図る場合、無線タグ情報読み取り装置を手に持って振り回して通信を行うことが多い。無線タグ情報読み取り装置による情報送受信方向が例えば装置正面側であった場合には、無線タグ回路素子から情報を取得できたときの無線タグ情報読み取り装置の正面方向が、対応する無線タグ回路素子が存在する方向になる。したがって情報取得時にその旨を操作者に報知することで、操作者は無線タグ回路素子(言い換えれば物品)の存在方向を知ることができる。
【0008】
このように無線タグ回路素子から信号を受信して操作者に対して報知する場合、実際には、無線タグ情報読み取り装置内で、無線タグ回路素子からの応答信号を受信処理する処理時間や、その処理後に報知を行うための報知手段の作動時間等を要する。上記の操作者の振り回しのように無線タグ情報読み取り装置の移動(あるいは向きの変化)が比較的速い場合には、上述のわずかな処理時間や作動時間等が経過する間にも、無線タグ情報読み取り装置が大きく進んでしまう。このため、無線タグ回路素子からの信号を受信した時の無線タグ情報読み取り装置の位置(向き)と、処理が終了し報知手段で報知したときとの無線タグ情報読み取り装置の位置(向き)とに偏差が生じてしまい、操作者に対し実質的に精度よい報知を行えないおそれがある。
【0009】
上記従来技術の無線タグ情報読み取り装置では、上記のような、無線タグ情報読み取り装置の速い動きに対して信号受信から報知までに生じうる時間遅れについては特に想定されていない。したがって、上記のような場合において信号受信に精度よく対応した報知を行うことは困難であった。
【0010】
本発明の目的は、操作者に対し、無線タグ回路素子からの信号受信に精度よく対応した報知を行える無線タグ情報読み取り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、第1の発明は、情報を記憶するIC回路部とこのIC回路部に接続されたタグ側アンテナとを備えた無線タグ回路素子に対し、情報送受信を行うための装置側アンテナを備えた移動型の無線タグ情報読み取り装置であって、前記IC回路部に記憶された情報を取得するための問い合わせ信号を生成し前記装置側アンテナを介し送信する送信処理手段と、前記問い合わせ信号に応じ前記無線タグ回路素子から返信された応答信号を前記装置側アンテナを介し受信可能な受信処理手段と、前記受信処理手段での受信結果に応じて、操作者への報知を行うための報知手段と、前記報知手段による報知が、前記受信処理手段での受信処理後報知開始までの前記無線タグ情報読み取り装置の移動に少なくとも対応した態様となるように、前記報知手段を制御する報知制御手段とを有することを特徴とする。
【0012】
本願第1発明の無線タグ情報読み取り装置においては、送信処理手段で生成された問い合わせ信号が装置側アンテナを介し無線タグ回路素子へと送信されると、問い合わせ信号に対応した応答信号が無線タグ回路素子から送信(返信される)。送信された応答信号は、装置側アンテナを介し受信処理手段が受信され、その受信結果に応じて報知手段で報知が行われる。
【0013】
この際、(移動型である)無線タグ情報読み取り装置が動いていたとすると、受信処理手段での受信処理後、報知手段で報知が開始されるまでのわずかな時間においても、それに対応する距離だけ無線タグ情報読み取り装置の移動が進む。このため、そのままでは、問い合わせ信号を受信したときの無線タグ情報読み取り装置の位置と、実際に報知を行ったときの無線タグ情報読み取り装置の位置との間にずれが生じる。
【0014】
本願第1発明においては、報知制御手段が、少なくとも、上記の受信処理後報知開始までの移動に少なくとも対応した態様となるように、報知手段の報知態様を制御する。これにより、問い合わせ信号を受信したときの無線タグ情報読み取り装置の位置と、実際に報知を行ったときの無線タグ情報読み取り装置の位置との間にずれを考慮して、そのずれを補正した報知を行うことが可能となる。この結果、操作者に対し、無線タグ回路素子からの応答信号の受信結果に精度よく対応した報知を確実に行うことができる。
【0015】
第2発明は、上記第1発明において、前記無線タグ情報読み取り装置の移動に係わる移動状態量を検出する移動検出手段を有することを特徴とする。
【0016】
これにより、検出した移動状態量に基づき、問い合わせ信号を受信したときの無線タグ情報読み取り装置の位置と、実際に報知を行ったときの無線タグ情報読み取り装置の位置との間のずれを補正した報知を行うことができる。
【0017】
第3発明は、上記第2発明において、前記報知制御手段は、前記受信処理手段での受信処理後報知開始までの経過時間に対応した第1時間状態量と、前記移動検出手段で検出した前記移動状態量とを少なくとも用いて、前記応答信号を返信した無線タグ回路素子のある方向に関する方向状態量を算出する方向算出手段を備え、前記方向算出手段で算出した方向状態量に対応した態様となるように、前記報知手段を制御する
ことを特徴とする。
【0018】
移動状態量と第1時間状態量とを用いて、方向算出手段が、問い合わせ信号を受信したときの無線タグ情報読み取り装置の位置と、実際に報知を行ったときの無線タグ情報読み取り装置の位置との間のずれに相当する方向状態量を算出する。報知手段では、その方向状態量に対応した報知を行うことにより、ずれを補正した報知を実現することができる。
【0019】
第4発明は、上記第3発明において、前記方向算出手段は、前記報知手段に対応して予め設定された前記第1時間状態量と、前記移動検出手段で検出した前記移動状態量とを用いて前記方向状態量を算出することを特徴とする。
【0020】
報知手段に対応して第1時間状態量を予め固定的に設定しておくことで、その第1時間状態量を用いて方向算出手段が比較的簡易な手法で方向状態量を算出することができる。
【0021】
第5発明は、上記第4発明において、前記方向算出手段は、複数の前記第1時間状態量のうち前記報知手段の報知種類に対応して選択された前記第1時間状態量と、前記移動状態量とを用いて前記方向状態量を算出することを特徴とする。
【0022】
音声、視覚的表示、振動等の報知種類に応じて第1時間状態量を設定することで、きめこまかな補正が可能となり、操作者の利便性を向上することができる。
【0023】
第6発明は、上記第3発明において、前記受信処理手段での受信処理後報知開始までの経過時間に対応した前記第1時間状態量を算出する時間算出手段を有し、前記方向算出手段は、前記時間算出手段で算出された前記第1時間状態量と、前記移動検出手段で検出した前記移動状態量とを用いて前記方向状態量を算出することを特徴とする。
【0024】
受信処理後報知開始までの経過時間を時間算出手段で実際に算出し、これを用いて方向算出手段で方向状態量を算出することにより、精度の高い補正を行うことができる。
【0025】
第7発明は、上記第3乃至第6発明のいずれかにおいて、前記方向算出手段は、前記第1時間状態量と、前記報知手段による報知開始後前記操作者がその報知を知覚して前記無線タグ情報読み取り装置の移動を停止させるまでの経過時間に対応した第2時間状態量と、前記移動状態量とを用いて、前記方向状態量を算出することを特徴とする。
【0026】
報知手段が実際に報知を行った後も、その報知を操作者が認識して無線タグ情報読み取り装置を停止させるまでにある程度の反応時間が経過する場合がある。(移動型である)無線タグ情報読み取り装置が動いている場合、その経過時間に対応する距離だけ無線タグ情報読み取り装置の移動が進む。このため、そのままでは、報知を行ったときの無線タグ情報読み取り装置の位置と、報知に応じて移動を停止した無線タグ情報読み取り装置の位置との間にずれが生じる可能性がある。
【0027】
本願第7発明においては、方向算出手段が、受信処理手段での受信処理後報知開始までの経過時間に対応した第1時間状態量に加えて、報知開始後に無線タグ情報読み取り装置の移動が停止するまでの経過時間に対応した第2時間状態量を用いて、方向状態量を算出する。これにより、報知後移動停止までのずれを補正した報知を行うことができるので、操作者に対し、無線タグ回路素子からの応答信号の受信結果をさらに高精度に反映させた報知を行うことができる。
【0028】
第8発明は、上記第7発明において、前記方向算出手段は、前記報知手段に対応して予め設定された前記第2時間状態量と、前記第1時間状態量と、前記移動状態量とを用いて前記方向状態量を算出することを特徴とする。
【0029】
報知手段に対応して第2時間状態量を予め固定的に設定しておくことで、その第2時間状態量を用いて方向算出手段が比較的簡易な手法で方向状態量を算出することができる。
【0030】
第9発明は、上記第8発明において、前記方向算出手段は、前記報知手段の報知種類に対応して設定された前記第2時間状態量と、前記第1時間状態量と、前記移動状態量とを用いて前記方向状態量を算出することを特徴とする。
【0031】
音声、視覚的表示、振動等の報知種類に応じて第2時間状態量を設定することで、きめこまかな補正が可能となり、操作者の利便性を向上することができる。
【0032】
第10発明は、上記第3乃至第9発明のいずれかにおいて、操作者が前記報知手段による報知確認済の入力を行うための操作手段を有することを特徴とする。
【0033】
これにより、報知手段の報知を確認した操作者が、その旨の意思表示を操作入力することができる。
【0034】
第11発明は、上記第10発明において、前記操作手段を介した前記報知確認済の入力がなされた場合に、前記方向算出手段による新たな前記方向状態量の算出を停止させる算出制御手段を有することを特徴とする。
【0035】
これにより、報知手段の報知に基づき操作者が対象の無線タグ回路素子を確認した後、無駄に方向状態量の算出やこれに対応した態様の報知を継続するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、操作者に対し、無線タグ回路素子からの信号受信に精度よく対応した報知を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0038】
図1は、本実施形態の無線タグ情報読み取り装置を、例えば書棚に収納されている書籍201の探索に適用した場合の一例を表す図である。
【0039】
図1において、この例では、書棚における1段の棚板に複数の書籍201が縦置きで水平方向(図中の左右方向)に並べられて収納されている。それら書籍201の背表紙には、それぞれ無線タグTが同じ向きに(図示する例では各無線タグTがそれらの長手方向を上下方向に向けて)貼付されている。
【0040】
そして、本実施形態の無線タグ情報読み取り装置であるリーダ1は、移動型(この例では携帯型。いわゆるハンディタイプ)のものであり、全体が直方体形状に形成された筐体11を有している。また、この例においてリーダ1が備えるリーダアンテナ(装置側アンテナ)3は、その指向性が鋭く(つまり電力半値角が小さく、通信可能領域20の幅が狭い)、かつそのメインローブ方向Mが上記筐体11の長手方向と略一致するように設けられている。
【0041】
操作者(書籍201の管理者)は、このリーダ1を手に取ってこの例では略円弧状に腕振り移動させることにより、上記複数の書籍201が並べられている方向に略沿って移動させる(なお直線状に移動させたり、円運動状に移動させる場合も本発明は適用できる)。この移動により、上記リーダアンテナ3の通信可能領域20が、上記複数の書籍201の配列範囲を移動速度(この例では周速度。詳細は後述)Vで通過する。そして、探索目標の書籍に貼付されている上記無線タグT(以下適宜、目標タグTtという)がリーダ1の基準探索方向である筐体11の長手方向(つまりリーダアンテナ3のメインローブ方向M)の付近に位置すると、リーダアンテナ3を介した無線通信によって当該目標タグTtの識別情報(以下、目標タグIDという)が受信される。これにより、リーダ1が探索目標の書籍の存在位置(リーダ1からの存在方向)を検出できるようになっている。
【0042】
図2は、本実施形態のリーダ1の概略システム構成を表す機能ブロック図である。
【0043】
図2において、リーダ1は、上記筐体11に備えられた本体制御部2と、上記リーダアンテナ3とを有している。
【0044】
本体制御部2は、CPU4と、例えばRAMやROM等からなるメモリ5と、計時機能を備えたタイマ6と、操作者からの指示や情報が入力される操作部7と、各種情報やメッセージを表示する表示部8(報知手段)と、リーダ1が移動する際の移動加速度を検出する加速度センサ9(移動検出手段)と、リーダアンテナ3を介し無線タグTとの無線通信の制御を行うRF通信制御部10とを備えている。
【0045】
CPU4は、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行い、それによってリーダ1全体の各種制御を行うものである。
【0046】
加速度センサ9は、例えば公知のピエゾ抵抗方式や静電容量方式によるMEMS型などの3軸加速度センサである。この例では、リーダ1の本体制御部2の筐体11の幅方向(上記図1における左右方向)、長さ方向、及び厚み方向にそれぞれ対応する方向(筐体における座標軸方向)の移動加速度を個別に検出する。また、CPU4は、この3軸加速度センサ9により検出された各軸方向の加速度をそれぞれ積算(公知の積分法などによる演算)することで、リーダ1の各方向に対応する移動速度成分(言い換えれば時間あたりの移動量成分)をそれぞれ符号付きで算出(つまり移動方向も含めて算出)するようになっている。なお、加速度センサの代わりに角速度センサを用いてもよい。
【0047】
表示部8は、この例では、文字又は記号などのテキストや図形などを表示可能なLCD(液晶パネル)を用いている(他の種類の表示部や報知手段を用いた例については後述する)。
【0048】
無線タグTは、タグ側アンテナ151とIC回路部150とを備える無線タグ回路素子Toを有している。無線タグTは、無線タグ回路素子Toを特に図示しない基材などに設けることで、上記書籍201等の物品に貼付可能にしたものである(無線タグ回路素子Toについては後に詳述する)。
【0049】
図3は、上記リーダ1におけるCPU4、RF通信制御部10、及びリーダアンテナ3の詳細構成を表す機能ブロック図である。
【0050】
図3において、CPU4は、無線タグ回路素子ToのIC回路部150から読み出された信号を処理して情報を読み出すとともに、無線タグ回路素子ToのIC回路部150へアクセスするための応答要求コマンドを生成する。
【0051】
リーダアンテナ3は、前述したようにその指向性が鋭く、すなわち通信可能領域20が狭い幅でメインローブ方向に細長く形成されるように構成されている。またそのメインローブ方向がリーダ1の筐体11の長手方向と一致する配置で設けられている。これにより、リーダ1は、その筐体11の長手方向の延長線上付近に存在する無線タグTに対してのみ無線通信を行えるようになっている(上述の図1参照)。
【0052】
RF通信制御部10は、上記リーダアンテナ3を介し上記無線タグ回路素子ToのIC回路部150の情報(タグIDを含む無線タグ情報)へアクセスするためのものである。すなわち、RF通信制御部10は、リーダアンテナ3を介し無線タグ回路素子Toに対して信号を送信する送信部212と、リーダアンテナ3により受信された無線タグ回路素子Toからの応答波を入力する受信部213と、送受分離器214とから構成される。
【0053】
送信部212は、無線タグ回路素子ToのIC回路部150の無線タグ情報にアクセスする(この例では読み取り及び書き込み)ための質問波を生成するブロックである。すなわち、送信部212は、周波数の基準信号を出力する水晶振動子215Aと、CPU4の制御により水晶振動子215Aの出力を分周/逓倍して所定周波数の搬送波を発生させるPLL(Phase Locked Loop)215B及びVCO(Voltage Controlled Oscillator)215Cと、上記CPU4から供給される信号に基づいて上記発生させられた搬送波を変調(この例ではCPU4からの「TX_ASK」信号に基づく振幅変調)する送信乗算回路216(但し「TX_ASK信号」の場合は増幅率可変アンプ等を用いてもよい)と、その送信乗算回路216により変調された変調波を増幅(この例ではCPU4からの「TX_PWR」信号によって増幅率を決定される増幅)して所望の質問波を生成する可変送信アンプ217とを備えている。
【0054】
そして、上記発生される搬送波は、例えばUHF帯、マイクロ波帯、あるいは短波帯の周波数を用いており、上記送信アンプ217の出力は、送受分離器214を介しリーダアンテナ3に伝達されて無線タグ回路素子ToのIC回路部150に供給される。なお、無線タグ情報は上記のように変調した信号に限られず、単なる搬送波のみの場合もある。
【0055】
受信部213は、リーダアンテナ3で受信された無線タグ回路素子Toからの応答波と上記発生させられた搬送波とを乗算して復調するI相受信乗算回路218と、そのI相受信乗算回路218の出力から必要な帯域の信号のみを取り出すためのI相バンドパスフィルタ219と、このI相バンドパスフィルタ219の出力を増幅するI相受信アンプ221と、このI相受信アンプ221の出力をさらに増幅してデジタル信号に変換するI相リミッタ220と、上記リーダアンテナ3で受信された無線タグ回路素子Toからの応答波と上記発生された後に移相器227により位相を90°遅らせた搬送波とを乗算するQ相受信乗算回路222と、そのQ相受信乗算回路222の出力から必要な帯域の信号のみを取り出すためのQ相バンドパスフィルタ223と、このQ相バンドパスフィルタ223の出力を増幅するQ相受信アンプ225と、このQ相受信アンプ225の出力をさらに増幅してデジタル信号に変換するQ相リミッタ224とを備えている。そして、上記I相リミッタ220から出力される信号「RXS−I」及びQ相リミッタ224から出力される信号「RXS−Q」は、上記CPU4に入力されて処理される。
【0056】
また、I相受信アンプ221及びQ相受信アンプ225の出力は、強度検出手段としてのRSSI(Received Signal Strength Indicator)回路226にも入力され、それらの信号の強度を示す信号「RSSI」がCPU4に入力されるようになっている。このようにして、リーダ1では、I−Q直交復調によって無線タグ回路素子Toからの応答波の復調が行われる。
【0057】
上記構成のRF通信制御部10を用いて、リーダ1は、上記の通信可能領域20内に存在する無線タグTの無線タグ回路素子Toに対してそれぞれのタグIDを応答信号として発信させるよう要求する応答要求コマンド(問い合わせ信号)を送信する。
【0058】
図4は、上記無線タグTに備えられた無線タグ回路素子Toの機能的構成の一例を表すブロック図である。
【0059】
図4において、無線タグ回路素子Toは、上述したようにリーダ1のリーダアンテナ3と非接触で信号の送受信を行う上記タグ側アンテナ151と、このタグ側アンテナ151に接続された上記IC回路部150とを有している。
【0060】
IC回路部150は、タグ側アンテナ151により受信された質問波(上記応答要求コマンドを含む信号)を整流する整流部152と、この整流部152により整流された質問波のエネルギを蓄積し駆動電源とするための電源部153と、上記タグ側アンテナ151により受信された質問波からクロック信号を抽出して制御部157に供給するクロック抽出部154と、所定の情報信号を記憶し得るメモリ部155と、上記タグ側アンテナ151に接続された変復調部156と、上記メモリ部155、クロック抽出部154、及び変復調部156等を介し上記無線タグ回路素子Toの作動を制御するための上記制御部157とを備えている。
【0061】
変復調部156は、タグ側アンテナ151により受信された上記無線タグ情報通信装置1のリーダアンテナ3からの通信信号の復調を行い、また、上記制御部157からの返信信号を変調し、タグ側アンテナ151より応答波(タグIDを含む応答信号)として送信する。
【0062】
クロック抽出部154は受信した信号からクロック成分を抽出して制御部157にクロックを抽出するものであり、受信した信号のクロック成分の周波数に対応したクロックを制御部157に供給する。
【0063】
制御部157は、上記変復調部156により復調された受信信号を解釈し、上記メモリ部155において記憶された情報信号に基づいて返信信号を生成し、この返信信号を上記変復調部156により上記タグ側アンテナ151から返信する制御等の基本的な制御を実行する。ここで、受信信号が上記応答要求信号であった場合、制御部157はメモリ部155にあらかじめ記憶されているタグID(無線タグ回路素子Toの個体ごとに割り当てられた識別情報)を含ませた返信信号(応答信号)を生成し、タグ側アンテナから返信する。
【0064】
次に、リーダ1が移動する場合において目標タグTtの検出とその旨の報知を行う際の各種タイミングと位置関係について説明する。
【0065】
図5は、リーダ1とその通信可能領域20が移動する際に、目標タグTtの検出及び報知のタイミングと位置関係を概念的に説明するための説明図である。前述したようにリーダ1は例えば円弧状に振り回されるものであるが、図5中には、理解の容易のために、便宜的にリーダ1の移動を直線的に表している。
【0066】
図5において、リーダ1は、リーダアンテナ3から展開する通信可能領域20を多数個の無線タグTからなる無線タグ列に向けつつ、無線タグ列の一端側から他端側へと移動される。そして、その移動時に、上記の応答要求コマンドの送信と各無線タグTからの応答信号の受信を繰り返して行うことで各無線タグTのタグIDを読み取る。
【0067】
また、このリーダ1の移動の際には、例えば、移動開始から常に割り込み処理などによって3軸加速度センサ9から各軸方向に対応する加速度検出値(符号付き)が積算される。これにより、操作者の腕振りによる移動中のリーダ1の移動状態量としての移動速度(上記円弧状移動の場合には例えば前述した周速度)Vがリアルタイムで算出されるようになっている。
【0068】
そして、リーダ1と共に移動するリーダアンテナ3の通信可能領域20が目標タグTtの存在位置に到達した際には、無線通信を介してその目標タグIDがリーダ1に受信される。本来はこの時点のリーダ1の位置が、目標タグTtに最も近接してリーダ1の基準探索方向(筐体11の長手方向)に目標タグTtが存在しているため、目標タグTtの検出位置として確認・報知されるべきとなる。
【0069】
しかしこの時点ではまだリーダ1は目標タグIDを読み込んだだけにすぎず、現実には、この後に、例えばその読み込んだ目標タグIDが実際に探索対象としているものであることを確認するための照合処理など、所定の受信処理が必要である。例えばEPC global策定のC1G2(Class1Generation2)規格に準拠した無線通信の場合、非常に短時間で無線タグTからタグIDを受信することになり、上記照合処理では次々と受信する複数のタグIDのそれぞれに対して目標タグIDの照合を行い、一致するか否かの判定を行う。また、探索目標の目標タグIDがリスト(特に図示せず)などに複数設定されている場合には、上記受信した複数のタグIDのそれぞれに対して上記リストに設定されている複数の目標タグIDとの照合一致を確認する必要もある。
【0070】
このように所定の処理時間を要する照合処理を経て目標タグIDの受信が確認され、その時点で初めて上記表示部8などの報知手段を介して操作者に目標タグIDの受信(目標タグIDの位置検出)を報知することができる。また、その報知動作を行う際にも、報知手段である表示部8(この例では液晶パネル)の作動時間を経てから実際に操作者による認知が可能な報知が行われることになる。
【0071】
このため、上記操作者の腕振りによる探索のように、リーダ1の動きが比較的速い場合には、上記照合等の受信処理の実行時間や報知のための作動時間等のわずかな間にもリーダ1が移動することとなる。このため、表示部8による無線タグ検出の報知は、リーダ1が目標タグIDを実際に受信した位置から、上記照合処理及び報知動作が行われた間に移動した距離(前述の円弧状の移動の場合はその円弧状の軌道に沿った距離。以下適宜、検出位置偏差という)だけ離間した位置で行われることになる。この場合には、目標タグTtの存在位置(つまり、図1に示す例における探索目標の書籍201の収納位置)がリーダ1の上記基準探索方向から大きく外れているため、操作者はその目視だけでは正確な探索が行えないことになる。
【0072】
そこで本実施形態では、目標タグIDが受信されてからその照合確認が終了するまでの経過時間を実測照合時間tmとしてタイマ6で実測するとともに、また上記報知動作に必要とされる見積もり時間を規定演算報知時間tcとしてあらかじめ設定しておく。そして、これら実測照合時間tm(実測値)と既定演算報知時間tc(既定値)の合計時間(第1時間状態量)に対して上記リーダ1の移動速度Vを積算することで検出位置偏差(方向状態量)を算出する。そして表示部8における報知動作では、タグ検出の報知と併せてこの検出位置偏差を表示部8に表示し報知する。
【0073】
なお、上記既定演算報知時間tcは、例えば検出位置偏差の演算に必要とされる見積もり時間も含めて既定される。また、上記検出位置偏差は現在のリーダ1の位置からの方向によって表される(後述の図7等参照)。
【0074】
図6は、リーダ1のCPU4によって実行される制御手順を表すフローチャートである。図6において、この例では、電源の投入後(又は例えば操作部7において目標タグTtの探索処理を開始させる操作が行われると)、このフローが開始される(スタート位置)。
【0075】
まず、ステップS5において、前述の送信回路212に制御信号を出力し、タグIDを読み取るための応答要求コマンド信号の送信を行う。すなわち、送信回路212が、所定の変調を行うことで、目標タグTtの無線タグ回路素子Toに記憶されたタグIDを取得するための質問波(この例では問合せ信号としての上記応答要求コマンド信号)を生成する。そして、この応答要求コマンド信号を、リーダアンテナ3を介して通信可能領域20内に存在する無線タグTの無線タグ回路素子Toに送信する。
【0076】
その後、ステップS10において、上記応答要求コマンド信号に対応して無線タグTの無線タグ回路素子Toから送信された応答信号(タグIDを含むリプライ信号)を、リーダアンテナ3を介して受信し、受信回路213を介し取り込む。
【0077】
次にステップS15へ移り、タイマ6に制御信号を出力して計時動作を開始させてステップS20へ移る。
【0078】
ステップS20では、上記ステップS10で受信したタグIDが探索目標の目標タグIDと一致するものであるか照合するタグID照合処理を行う。
【0079】
次にステップS25へ移り、上記ステップS20のタグID照合処理において目標タグIDが検出されたか否か、すなわち上記ステップS10で受信されたタグIDのうちの一つでも目標タグIDとの一致が確認されたものがあったか否かを判定する。目標タグIDが検出されていない場合、判定が満たされず、ステップS30でタイマ6の動作を停止させてそれまでの計時内容をリセットし、ステップS5へ戻って同様の手順を繰り返す。この結果、上記ステップS10で複数のタグIDを含む応答信号を受信した場合、上記ステップS20のタグID照合処理において目標タグIDと一致するタグIDが見つかるまで照合が繰り返される。また探索目標の目標タグIDが複数設定されている場合には、それら複数の目標タグIDのすべてに対し一致するタグIDが見つかるまでステップS20での照合を繰り返す。
【0080】
一方、ステップS25において、目標タグIDが検出されていた場合、判定が満たされ、次のステップS35へ移る。
【0081】
ステップS35では、この時点におけるリーダ1の移動速度Vを算出する。この移動速度Vの算出については、前述したように、例えばリーダ1の移動開始から短い時間間隔で割り込み処理を行い、3軸加速度センサ9から各軸方向に対応してそれぞれ検出される符号付きの加速度を公知の積分法などにより累積的に積算し算出することができる。
【0082】
次にステップS40へ移り、この時点のタイマ6の計時内容を検出し、これによって上記S10で目標タグIDを受信してからこの時点に至るまでの実測照合時間tmを得る(目標タグIDでない通常のタグIDだけを受信し続けている間は、ステップS25、ステップS30によりタイマリセットされ続ける)。
【0083】
そして次のステップS45において、検出位置偏差(この例では、円弧状の軌道上の距離)を算出する。この検出位置偏差の距離の算出については、まず先に上記ステップS40で検出した実測照合時間tm(実測値)とあらかじめ設定されている既定演算報知時間tc(既定値)との合計時間を算出し(=時間算出手段)、この合計時間に上記ステップS35で算出したリーダ1の移動速度Vを積算することで求められる。なお、この検出位置偏差の方向は、移動速度Vの符号の逆符号、つまりリーダ1の移動方向の逆方向となる。
【0084】
次にステップS50へ移り、表示部8に制御信号を出力して目標タグIDを受信した旨と、上記ステップS45で算出した検出位置偏差の距離と方向に対応した(所定の演算で求められた)本来の探索対象である目標タグTtの存在方向を、表示部8に表示して操作者に対して報知する。そしてこのフローを終了する。
【0085】
図7は、本実施形態の例において上記ステップS50の報知動作により表示部8に表示される報知内容の一例を示す図である。
【0086】
図7において、液晶パネルで構成する表示部8に、目標タグIDの内容と、それを検出した旨を報知するテキスト情報(図中の表示部8上側における表示内容)と、リーダ1の現在位置を始点として描画される矢印23とが示されている。この矢印23の方向が目標タグTtの存在位置方向を示している。
【0087】
ここで、上記ステップS45の算出に用いられる既定演算報知時間tcは、前述したように、上記ステップS40でタイマ6から実測照合時間tmを検出してから上記ステップS50で表示部8における報知動作が完了するまでに通常必要とされる見積もり時間としてあらかじめ設定されている固定値である。つまりこの既定演算報知時間tcには、上記ステップS45の演算で必要とされる見積もり時間と、上記ステップS50の報知動作で図7に示す内容を液晶パネルで表示するのに必要とされる見積もり時間とが含まれることになる。
【0088】
以上において、上記図6のフローにおけるステップS5の手順が、各請求項記載の送信処理手段を構成する。また、ステップS10、ステップS15、ステップS20、ステップS25、ステップS30の手順が、受信処理手段を構成する。また、ステップS45のうち、前述したように実測照合時間tmと既定演算報知時間tcとの合計時間を算出する演算内容が時間算出手段を構成する。
【0089】
またステップS45のうち、上記合計時間に移動速度Vを積算して検出位置偏差を算出する演算内容が方向算出手段を構成する。そして、これとステップS50の手順とが、報知制御手段を構成する。
【0090】
以上説明したように、本実施形態においては、操作者に対して表示部8で報知を行う際に、目標タグIDを受信したときのリーダ1の位置と、実際に表示部8に報知を行ったときのリーダ1の位置との間に生じるずれに対応し、表示部8に目標タグTtの存在方向を表示する。すなわち、操作者に対し、目標タグIDの受信結果に精度よく対応した報知(応答信号を受信したタイミングに合致させた報知)を確実に行うことができる。
【0091】
また、この実施形態では特に、ステップS45において、タイマ6からの実測値として検出した実測照合時間tmと、固定値である既定演算報知時間tcとの合計時間を算出し、この合計時間とリーダ1の移動速度Vとを用いて検出位置偏差を算出することにより、精度の高い検出位置偏差の算出と報知を行うことができる。
【0092】
また、この実施形態では特に、リーダ1の移動加速度を検出可能な3軸加速度センサ9をリーダ1自体が備えていることにより、外部の補助設備などを必要とせずにリーダ1単独で上記3軸加速度センサ9からその移動加速度を検出し、それに基づいてリーダ1自身の移動速度Vを算出することができる。
【0093】
なお、上記実施形態では、リーダ1の表示部8において目標タグTtの存在方向を矢印で示していた(図7参照)が、これに限られない。例えば、図8に示すように、目標タグTtの存在方向をテキスト情報(図中の表示部8下側における表示内容)で表示してもよい。この例では、リーダ1の中心線方向である上記基準探索方向(図8中上下方向)からの、目標タグTtの左右方向への偏差量(「左10度方向」)で表している。
【0094】
また例えば、図9に示すように、表示部8をLEDで構成してその点灯状態により報知を行うようにしてもよい。図示する例では、目標タグTtの検出の有無を報知する単体のLED21と、上記検出位置偏差にそれぞれ対応して円弧状に配置した複数のLEDアレイ22とが表示部8として設けられている。この場合、目標タグTtの存在方向を1つのLEDの点灯だけで簡単に報知できるため、上記液晶パネルによる矢印表示やテキスト表示で報知する場合と比較して報知動作に必要な時間が少なく、つまり上記既定演算報知時間tcが短くて済むようになる。
【0095】
また、他にも特に図示しないが、リーダ1の筐体11にバイブレータなどの振動発振器を設けて操作者の触覚を介した振動による報知や、スピーカなどの発音器を設けて操作者の聴覚を介した音声による報知なども可能である。これらの場合、検出位置偏差の方向にそれぞれ対応する位置で複数の振動発振器や発音器を設けて検出位置偏差の方向を区別できるようにしたり、または振動や発音のそれぞれの振幅の大きさや周波数の高さの違いで検出位置偏差の距離を表現するようにしてもよい。また、発音器を用いる場合、各種の報知情報を人間の言葉で発音させるようにしてもよい。
【0096】
また、リーダ1は複数の報知手段を複合的に備えてもよく、この場合は報知種類別に報知動作の必要時間が異なるため、つまり各報知手段の報知種類に対応して異なる上記既定演算報知時間tcが設定されることになる。この場合、前述のステップS45では、報知種類に対応する既定演算報知時間tcが選択されて用いられ(=結果として、実測照合時間tmと既定演算報知時間tcとの合計時間も選択されることとなる)、検出位置偏差を算出する(例えばどの報知種類とするかを予め操作者が操作部7から入力するようにしてもよい)。このように、音声、視覚的表示、振動等の報知種類に応じて既定演算報知時間tcを設定することで、きめこまかな検出位置偏差の報知が可能となり、操作者の利便性を向上することができる。
【0097】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。
【0098】
(1)目標タグIDの受信から報知動作開始までの時間を全体的に見積もり時間で既定する場合
上記実施形態では、検出位置偏差の算出に用いる時間要素、つまり目標タグIDの受信から報知動作開始までの時間を、タイマ実測時間である実測照合時間tmと固定値である既定演算報知時間tcとの合計時間で算出した。これに対し、例えば上記図5に対応する図10に示すように、目標タグIDの受信から報知動作開始までの間の処理全体に必要とされる時間(第1時間状態量)として、あらかじめ設定され記憶された規定処理時間Tsを用い、これによって上記検出位置偏差を算出するようにしてもよい。
【0099】
図11は、本変形例のリーダ1のCPU4によって実行される制御手順を表すフローチャートであり、上記実施形態における図6に相当するものである。なお、本変形例はハードウェア構成が上記実施形態と同じであり、同等の部分については同じ符号を付して適宜説明を省略する(以下の各変形例においても同様)。
【0100】
図11に示すフローにおいては、図6のフローにおけるタイマ6の操作に関係するステップS15、ステップS30、ステップS40の手順が省略されている。また、検出位置偏差を算出する手順としてステップS45に代えてステップS45Aが設けられている。ステップS45Aでは、ステップS35で算出したリーダ1の移動速度Vに上記既定処理時間ts(規定値)を積算して検出位置偏差を算出している(=方向算出手段)。なお、上記の既定処理時間tsは、上記実施形態における既定演算報知時間tcと同様に、各報知手段の報知種類に対応して異なる既定処理時間tsが予め固定的に設定されている。
【0101】
その他については、図6と同様であり、説明を省略する。
【0102】
以上のように構成した本変形例においては、報知手段に対応して予め固定的に設定された既定処理時間tsを用いて検出位置偏差を算出していることにより、比較的簡易な手法で検出位置偏差を算出することができる。
【0103】
(2)操作者の反応遅れ時間を含める場合
上記実施形態では、検出位置偏差の算出に用いる時間要素を目標タグIDの受信から報知動作開始までの時間のみとしていたが、さらにその報知動作開始後、操作者が報知に気がついてリーダ1の移動を停止させる(腕振りを止める)までの時間(=反応遅れ時間)を加味して報知を行うようにしてもよい。
【0104】
例えば図5に対応する図12に示すように、表示部8での報知動作後に操作者がその報知を確認して実際にリーダ1の移動を停止するまでの反応遅れの見積もり時間をあらかじめ既定反応時間(第2時間状態量)Thとして設定しておき、これを含めた時間要素に基づいて検出位置偏差を算出するようにしてもよい。
【0105】
図13は、本変形例のリーダ1のCPU4によって実行される制御手順を表すフローチャートであり、上記実施形態における図6に相当するものである。図13に示すフローにおいて、検出位置偏差を算出する手順としてステップS45に代えてステップS45Bを行う点が図6と異なる。このステップS45Bでは、まず先にステップS40で検出した実測照合時間tm(実測値)と、あらかじめ固定的に設定されている上記既定演算報知時間tcと、上記の既定反応時間thとの合計時間を算出し、この合計時間に上記ステップS35で算出したリーダ1の移動速度Vを積算することで検出位置偏差を求める(=方向算出手段)。なお、上記の既定反応時間thは、一般的な知覚能力及び運動能力を有する使用者を想定し、固定的に設定される。複数の報知種類が備えられている場合には、各報知種類に対応して異なる既定反応時間thがそれぞれ固定的に設定される。すなわち、例えばどの報知種類とするかを予め操作者が操作部7から入力するようにし、上記ステップS45Bでは、その選択された報知種類に対応する既定反応時間thを用いて検出位置偏差を算出する。
【0106】
その他については、図6と同様であり、説明を省略する。
【0107】
以上のように構成した本変形例においては、実測照合時間tmと既定演算報知時間tcに加えて、操作者が報知を知覚してリーダ1の移動を停止させるまでの経過時間に対応した既定反応時間thも含めた合計時間を用いて検出位置偏差を算出する。これにより、報知後移動停止までのずれを補正した報知を行うことができ、さらに高い精度で報知を行うことができる。また、報知種類に応じて既定反応時間thを設定することで、きめこまかな検出位置偏差の報知が可能となり、操作者の利便性を向上することができる。
【0108】
(3)報知確認操作を行う場合
すなわち、リーダ1の目標タグTtを検出した旨を報知した後に、操作者がリーダ1に対してその報知を確認したことを入力する確認操作ボタンなど(操作手段;特に図示せず)を操作部7に設けるようにしてもよい。
【0109】
図14は、本変形例のリーダ1のCPU4によって実行される制御手順を表すフローチャートであり、上記実施形態における図6に相当するものである。図14に示すフローでは、ステップS50の後に、操作者による確認操作の入力があったかどうかを判定するステップS55を新たに設けた点のみが図6と異なる。確認操作がない場合は判定が満たされず、ステップS15に戻ってタイマースタートから同様の手順を繰り返す。確認操作があった場合にはステップS55の判定が満たされ、このフローを終了する(算出制御手段)。
【0110】
その他については、図6と同様であり、説明を省略する。
【0111】
以上のように構成した本変形例においては、操作者が表示部8による報知を確認した旨の意思表示を確認操作ボタンの操作を介して入力することができる。さらにこの操作入力がなされた場合に検出位置偏差の算出を停止させることで、無駄に検出位置偏差の算出やこれに対応した態様の報知を継続するのを防止することができる。
【0112】
(4)その他
上記においては、移動型の無線タグ情報読み取り装置の一例として、操作者が腕に持って探索を行う携帯型のリーダ1を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、各種ロボットや、車両、コンベア等の各種移動装置・移動機器に設けられて直線的、円弧状、円運動状等に移動する無線タグ情報読み取り装置に対して本発明を適用することもでき、これらの場合も上記同様の効果を得る。
【0113】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0114】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の実施形態のリーダを書棚に収納されている書籍の探索に適用した場合の一例を表す図である。
【図2】リーダの概略を表すシステム構成図である。
【図3】リーダにおけるCPU、RF通信制御部、及びリーダアンテナの詳細構成を表す機能ブロック図である。
【図4】無線タグに備えられた無線タグ回路素子の機能的構成の一例を表すブロック図である。
【図5】リーダと通信可能領域が移動する際に、無線タグの検出及び報知のタイミングと位置関係を概念的に説明するための説明図である。
【図6】リーダのCPUによって実行される制御手順を表すフローチャートである。
【図7】表示部に表示される報知内容の一例を示す図である。
【図8】表示部に表示される報知内容の一例を示す図である。
【図9】表示部をLEDで構成した場合の報知内容の一例を示す図である。
【図10】既定処理時間で検出位置偏差を算出する変形例において、無線タグの検出及び報知のタイミングと位置関係を概念的に説明するための説明図である。
【図11】既定処理時間で検出位置偏差を算出する変形例において、リーダのCPUによって実行される制御手順を表すフローチャートである。
【図12】反応遅れ時間を反映して検出位置偏差を算出する変形例において、無線タグの検出及び報知のタイミングと位置関係を概念的に説明するための説明図である。
【図13】反応遅れ時間を反映して検出位置偏差を算出する変形例において、リーダのCPUによって実行される制御手順を表すフローチャートである。
【図14】報知確認操作を行う変形例において、リーダのCPUによって実行される制御手順を表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0116】
1 リーダ(無線タグ情報読み取り装置)
2 本体制御部
3 リーダアンテナ(装置側アンテナ)
7 操作部
8 表示部(報知手段)
9 加速度センサ(移動検出手段)
150 IC回路部
151 タグ側アンテナ
Tt 目標タグ(無線タグT)
To 無線タグ回路素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を記憶するIC回路部とこのIC回路部に接続されたタグ側アンテナとを備えた無線タグ回路素子に対し、情報送受信を行うための装置側アンテナを備えた移動型の無線タグ情報読み取り装置であって、
前記IC回路部に記憶された情報を取得するための問い合わせ信号を生成し前記装置側アンテナを介し送信する送信処理手段と、
前記問い合わせ信号に応じ前記無線タグ回路素子から返信された応答信号を前記装置側アンテナを介し受信可能な受信処理手段と、
前記受信処理手段での受信結果に応じて、操作者への報知を行うための報知手段と、
前記報知手段による報知が、前記受信処理手段での受信処理後報知開始までの前記無線タグ情報読み取り装置の移動に少なくとも対応した態様となるように、前記報知手段を制御する報知制御手段と
を有することを特徴とする無線タグ情報読み取り装置。
【請求項2】
前記無線タグ情報読み取り装置の移動に係わる移動状態量を検出する移動検出手段
を有することを特徴とする請求項1記載の無線タグ情報読み取り装置。
【請求項3】
前記報知制御手段は、
前記受信処理手段での受信処理後報知開始までの経過時間に対応した第1時間状態量と、前記移動検出手段で検出した前記移動状態量とを少なくとも用いて、前記応答信号を返信した無線タグ回路素子のある方向に関する方向状態量を算出する方向算出手段を備え、前記方向算出手段で算出した方向状態量に対応した態様となるように、前記報知手段を制御する
ことを特徴とする請求項2記載の無線タグ情報読み取り装置。
【請求項4】
前記方向算出手段は、
前記報知手段に対応して予め設定された前記第1時間状態量と、前記移動検出手段で検出した前記移動状態量とを用いて前記方向状態量を算出する
ことを特徴とする請求項3記載の無線タグ情報読み取り装置。
【請求項5】
前記方向算出手段は、
複数の前記第1時間状態量のうち前記報知手段の報知種類に対応して選択された前記第1時間状態量と、前記移動状態量とを用いて前記方向状態量を算出する
ことを特徴とする請求項4記載の無線タグ情報読み取り装置。
【請求項6】
前記受信処理手段での受信処理後報知開始までの経過時間に対応した前記第1時間状態量を算出する時間算出手段を有し、
前記方向算出手段は、
前記時間算出手段で算出された前記第1時間状態量と、前記移動検出手段で検出した前記移動状態量とを用いて前記方向状態量を算出する
ことを特徴とする請求項3記載の無線タグ情報読み取り装置。
【請求項7】
前記方向算出手段は、
前記第1時間状態量と、前記報知手段による報知開始後前記操作者がその報知を知覚して前記無線タグ情報読み取り装置の移動を停止させるまでの経過時間に対応した第2時間状態量と、前記移動状態量とを用いて、前記方向状態量を算出する
ことを特徴とする請求項3乃至請求項6のいずれか1項記載の無線タグ情報読み取り装置。
【請求項8】
前記方向算出手段は、
前記報知手段に対応して予め設定された前記第2時間状態量と、前記第1時間状態量と、前記移動状態量とを用いて前記方向状態量を算出する
ことを特徴とする請求項7記載の無線タグ情報読み取り装置。
【請求項9】
前記方向算出手段は、
前記報知手段の報知種類に対応して設定された前記第2時間状態量と、前記第1時間状態量と、前記移動状態量とを用いて前記方向状態量を算出する
ことを特徴とする請求項8記載の無線タグ情報読み取り装置。
【請求項10】
操作者が前記報知手段による報知確認済の入力を行うための操作手段を有する
ことを特徴とする請求項3乃至請求項9のいずれか1項記載の無線タグ情報読み取り装置。
【請求項11】
前記操作手段を介した前記報知確認済の入力がなされた場合に、前記方向算出手段による新たな前記方向状態量の算出を停止させる算出制御手段
を有することを特徴とする請求項10記載の無線タグ情報読み取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−181331(P2009−181331A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19677(P2008−19677)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】