無線タグ通信装置
【課題】環境の湿度変化によるアンテナの通信性能の劣化防止を図る。
【解決手段】リーダアンテナユニット3は、通信アンテナ11と湿度検出用アンテナ12とを有する。通信アンテナ11は、正極板22と負極板23とにより構成されたマイクロストリップアンテナであり、湿度検出用アンテナ12は、正極板22とは別の正極板32と、通信アンテナ11と共通の負極板23と、正極板32及び負極板23の間に配置された誘電体33とにより構成されたマイクロストリップアンテナである。マッチング回路24に可変コンデンサ43を設け、湿度検出用アンテナ12で検出した環境の湿度変化による容量成分の変化を打ち消すように可変コンデンサ43の容量を制御する。
【解決手段】リーダアンテナユニット3は、通信アンテナ11と湿度検出用アンテナ12とを有する。通信アンテナ11は、正極板22と負極板23とにより構成されたマイクロストリップアンテナであり、湿度検出用アンテナ12は、正極板22とは別の正極板32と、通信アンテナ11と共通の負極板23と、正極板32及び負極板23の間に配置された誘電体33とにより構成されたマイクロストリップアンテナである。マッチング回路24に可変コンデンサ43を設け、湿度検出用アンテナ12で検出した環境の湿度変化による容量成分の変化を打ち消すように可変コンデンサ43の容量を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグと無線通信により情報送受信可能な無線タグ通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、無線通信では、その通信に用いられるアンテナの周波数特性に最も適する周波数、すなわち共振周波数を用いることで、通信性能を向上できることが知られている。上記のような共振周波数に配慮した従来技術として、例えば特許文献1に記載の技術がある。
【0003】
この従来技術では、無線タグ通信装置と通信を行う無線タグが、アンテナ共振回路からの受信レベルを検出する検出手段と、受信レベルに応じた出力電圧を供給する供給手段とを備えている。この無線タグは、受信データ状態を示すフレームエラーレートによって、アンテナ共振回路の共振周波数とクオリティファクタとをそれぞれ調整する。これにより、この無線タグは、より正確にアンテナ共振回路を調整し、無線タグ通信装置との通信環境を最適に設定することができる。
【特許文献1】特開2002−334310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、無線タグの利用の普及及び拡大により、無線タグ及び無線タグ通信装置が日常的に使用されるとともに、多種多様な用途に使用されるようになっている。例えば天気のよい比較的乾燥した日に使用される場合もあれば、天気のよくない比較的湿度の高い日に使用される場合もある。また、屋外の通風の良好な乾いた状態にて使用される場合もあれば、湿度の高い倉庫内で使用される場合もある。
【0005】
上記のように使用環境によって湿度が変化すると、無線タグ通信装置に備えられた通信アンテナの構成材料の特性、例えば誘電率などが変化するため通信アンテナの特性インピーダンスが変化し、通信アンテナの共振周波数自体が変化する。上記従来技術では、このような湿度による共振周波数の変動については特に配慮されていない。この結果、通信信頼性が低下したり、通信距離が短くなったり等、通信性能が劣化するおそれがあった。
【0006】
本発明の目的は、使用環境の湿度が変化した場合でも、良好な通信性能を確保することができる、無線タグ通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明は、情報を記憶する記憶部を備えたIC回路部と情報を送受信するタグアンテナとを備えた無線タグに対し、無線通信を行う通信アンテナと、前記通信アンテナに接続され、当該通信アンテナを介して前記無線タグと情報の送受信を行う高周波回路と、周囲の湿度を検出する湿度検出手段と、前記湿度検出手段により検出した湿度実測値を用いて、前記通信アンテナの実際の容量成分を算出する容量算出手段と、予め記憶された前記通信アンテナの基準容量と、前記容量算出手段により算出された前記実際の容量成分との、偏差を算出する偏差算出手段と、前記高周波回路に対し、前記通信アンテナと並列に接続された可変コンデンサと、前記偏差算出手段により算出された偏差に対応した電圧を、前記可変コンデンサに印加する印加電圧制御手段とを有することを特徴とする。
【0008】
一般に、無線通信では、その通信に用いられる通信アンテナの周波数特性に最も適する周波数、すなわち共振周波数を用いることで、信頼性を向上できることが知られている。しかしながら、無線通信で用いる周波数を通信アンテナの共振周波数に設定していたとしても、湿度が変化すると通信アンテナの構成材料が吸湿することにより、その特性、例えば誘電率などが変化するため通信アンテナの特性インピーダンスが変化し、通信アンテナの共振周波数自体が変化してしまう。
【0009】
そこで、本願第1発明においては、通信アンテナと並列に可変コンデンサを接続し、この可変コンデンサの容量を制御することによって通信アンテナの特性インピーダンスの変化分を補い、共振周波数の変化を防止する。すなわち、湿度検出手段が周囲の湿度を検出し、その検出した湿度実測値を用いて、容量算出手段が通信アンテナの実際の特性インピーダンスである容量成分を算出する。そして、偏差算出手段が、通信アンテナの標準性能として予め予定され記憶された基準特性インピーダンスである基準容量と、上記実際の容量成分との偏差を算出し、その偏差を上記可変コンデンサの容量変化で補えるよう、対応した電圧を印加電圧制御手段が可変コンデンサに印加する。
【0010】
これにより、湿度の変化による通信アンテナの特性インピーダンスの変化を打ち消すようなインダクタ成分を可変コンデンサによって生成できるので、全体として、通信アンテナの共振周波数が湿度変化前と同等に保たれる。この結果、通信信頼性が低下したり、通信距離が短くなったり等、通信性能の劣化を防止することができる。
【0011】
第2発明は、上記第1発明において、前記湿度検出手段は、前記通信アンテナと少なくとも一部分を共用した、湿度検出用アンテナであることを特徴とする。
【0012】
湿度検出をアンテナで行い、かつその一部分を通信アンテナと共用することにより、容易に通信アンテナ近傍の湿度を測定できる上、設置スペースの低減やコストダウンを図ることができる。
【0013】
第3発明は、上記第2発明において、前記通信アンテナは、第1正極板と、第1負極板とにより構成された第1マイクロストリップアンテナであり、前記湿度検出用アンテナは、前記第1正極板とは別の第2正極板と、前記第1マイクロストリップアンテナと共通の前記第1負極板と、前記第2正極板及び前記第1負極板の間に配置された誘電体と、により構成された第2マイクロストリップアンテナであることを特徴とする。
【0014】
これにより、正極板、誘電体、及び負極板により構成する湿度検出用アンテナを、負極板を通信アンテナと共通化した形で設けることができる。
【0015】
第4発明は、上記第2発明において、前記通信アンテナは、第3正極板と、第3負極板と、前記第3正極板及び前記第3負極板の間に配置された通信アンテナ用誘電体と、により構成された第3マイクロストリップアンテナであり、前記湿度検出用アンテナは、前記第3マイクロストリップアンテナと共通の前記第3正極板と、前記第3マイクロストリップアンテナと共通の前記第3負極板と、前記第3正極板及び前記第3負極板の間に配置され前記通信アンテナ用誘電体よりも吸湿率の高い湿度検出用誘電体と、により構成された第4マイクロストリップアンテナであることを特徴とする。
【0016】
これにより、正極板、誘電体、及び負極板により構成する湿度検出用アンテナを、正極板と負極板とを通信アンテナと共通化した形で設けることができる。また、湿度検出用に通信アンテナ用誘電体よりも吸湿率の高い誘電体を用いることで、湿度測定の精度を高めることが可能になる。
【0017】
第5発明は、上記第1発明において、前記湿度検出手段は、前記通信アンテナを含むアンテナユニットに設けられた、湿度センサであることを特徴とする。
【0018】
通信アンテナとは別に湿度センサを設置する場合にその湿度センサをアンテナユニットに設けることにより、高精度に容量制御を行い、通信性能の劣化を確実に防止することができる。
【0019】
第6発明は、上記第1乃至第5発明のいずれかにおいて、前記可変コンデンサを、前記通信アンテナを含むアンテナユニットに設けたことを特徴とする。
【0020】
共振周波数の変化を打ち消すための可変コンデンサをアンテナユニットに設けることにより、通信アンテナの特性インピーダンスを導電路に合わせることが可能になりこの部分での信号の反射ロスを低減することで、通信性能の劣化を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、使用環境の湿度が変化した場合でも、良好な通信性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態のリーダを無線タグが貼付されている物品の情報読み取りに適用した場合の一例を表す図である。
【図2】リーダの概略システム構成を表す機能ブロック図である。
【図3】リーダにおけるCPU、RF通信制御部、及びリーダアンテナユニットの詳細構成を表す機能ブロック図である。
【図4】リーダアンテナユニットの正極板を下面側にして下方から見た斜視図、及びリーダアンテナユニット3の断面図である。
【図5】リーダのRF回路構成部の等価回路図である。
【図6】湿度変化に対する共振周波数一定制御を説明するフローチャートである。
【図7】湿度と比誘電率εとの関係を表すグラフである。
【図8】通信アンテナの一部領域に高誘電体を配置して湿度検出用アンテナを構成する変形例のリーダアンテナユニットを表す図である。
【図9】通信アンテナとは別体の湿度検出手段を設置する場合のリーダアンテナユニットを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0024】
図1に示すように、無線タグ通信装置としてのリーダ1は、携帯型であり、略直方体形状の筐体に収容された本体制御部2を有している。この本体制御部2の筐体には、長手方向の一方の端部にリーダアンテナユニット3が設けられているとともに、筐体の一方の平面部に操作部7と表示部8が設けられている。リーダ1は、通信領域20に存在する無線タグTから、無線通信により物品Bに関する情報を読み取る。
【0025】
リーダ1の機能的構成を図2を用いて説明する。図2において、リーダ1は、上述したように、本体制御部2と、給電線である同軸ケーブル13と、リーダアンテナユニット3とを有している。
【0026】
本体制御部2は、CPU4と、不揮発性記憶装置5と、上記操作部7と、メモリ6と、表示部8と、高周波回路としてのRF通信制御部9とを備えている。
【0027】
無線タグTの無線タグ回路部Toは、情報を記憶するIC回路部150と、情報を送受信するタグアンテナ151とを備えている。
【0028】
RF通信制御部9は、上記同軸ケーブル13で接続されたリーダアンテナユニット3を介し、上記無線タグ回路部ToのIC回路部150に記憶された、タグIDを含む無線タグ情報へアクセスする。
【0029】
CPU4は、RF通信制御部9を介し、無線タグ回路部ToのIC回路部150から読み出された信号を処理して情報を読み出すとともに、無線タグ回路部ToのIC回路部150へアクセスするための各種コマンド等を生成する。
【0030】
不揮発性記憶装置5は、ハードディスク装置やフラッシュメモリからなり、物品Bの管理状況などの各種情報を記憶する。メモリ6は、例えばRAMやROM等から構成される。操作部7は、使用者からの指示や情報が入力される。表示部8は、各種情報やメッセージを表示する。
【0031】
リーダアンテナユニット3は、マイクロストリップアンテナからなる通信アンテナ11と、マッチング回路24と、湿度検出手段としての湿度検出用アンテナ12とを備える。マッチング回路24は、通信アンテナ11までの接続回線とのインピーダンス整合を行う。湿度検出用アンテナ12は、通信アンテナ11の周囲の湿度を検出する。
【0032】
図3を用いて、RF通信制御部9の詳細構成を説明する。
【0033】
RF通信制御部9は、無線タグ回路部ToのIC回路部150の無線タグ情報にアクセスするための質問波を生成し、同軸ケーブル13及びリーダアンテナユニット3を介し送信する送信部212と、リーダアンテナユニット3により受信された無線タグ回路部Toからの応答波を入力する受信部213と、送受分離器214とから構成される。
【0034】
送信部212は、水晶振動子215Aと、Phase Locked Loop(PLL)215Bと、Voltage Controlled Oscillator(VCO)215Cと、送信乗算回路216と、可変送信アンプ217とを備えている。
【0035】
水晶振動子215Aは、基準周波数を発生する。PLL215Bは、CPU4の制御信号に基づいて、水晶振動子215Aにより発生した周波数と、VCO215Cが発生した周波数とを比較し、VCO215Cが所定周波数の搬送波を発生させるようVCO215Cの制御電圧を出力する。発生される搬送波は、例えばUHF帯、マイクロ波帯、あるいは短波帯の周波数を用いている。
【0036】
送信乗算回路216は、上記CPU4から供給される信号に基づいて上記発生させられた搬送波を変調する。この例では、送信乗算回路216は、CPU4からの「TX_ASK」信号に基づく振幅変調を実行する。なお、振幅変調の場合は、送信乗算回路216代えて増幅率可変アンプ等を用いてもよい。また、質問波は上記のように変調した信号すなわち変調波に限られず、単なる搬送波のみの場合もある。
【0037】
可変送信アンプ217は、送信乗算回路216により変調された変調波を増幅する。可変送信アンプ217は、この例では、CPU4からの「TX_PWR」信号によって決定される増幅率による増幅を行う。可変送信アンプ217の出力は、送受分離器214及び同軸ケーブル13を介してリーダアンテナユニット3のマッチング回路24、通信アンテナ11に伝達され、無線タグ回路部ToのIC回路部150に供給される。
【0038】
受信部213は、I相受信乗算回路218と、I相バンドパスフィルタ219と、I相受信アンプ221と、I相リミッタ220と、Q相受信乗算回路222と、Q相バンドパスフィルタ223と、Q相受信アンプ225と、Q相リミッタ224とを備えている。
【0039】
I相受信乗算回路218は、リーダアンテナユニット3の通信アンテナ11で受信され、マッチング回路24、同軸ケーブル13、及び送受分離器214を介し入力された無線タグ回路部Toからの応答波と、上記搬送波とを乗算し、復調する。
【0040】
I相バンドパスフィルタ219は、I相受信乗算回路218の出力から必要な帯域の信号のみを取り出す。I相受信アンプ221は、I相バンドパスフィルタ219の出力を増幅する。I相リミッタ220は、I相受信アンプ221の出力をさらに増幅してデジタル信号に変換する。
【0041】
Q相受信乗算回路222は、リーダアンテナユニット3で受信された無線タグ回路部Toからの応答波と、発生された搬送波が移相器227により位相を90°遅らせた信号とを、乗算する。
【0042】
Q相バンドパスフィルタ223は、Q相受信乗算回路222の出力から必要な帯域の信号のみを取り出す。Q相受信アンプ225は、Q相バンドパスフィルタ223の出力を増幅する。Q相リミッタ224は、Q相受信アンプ225の出力をさらに増幅してデジタル信号に変換する。
【0043】
上記I相リミッタ220から出力される信号「RXS−I」及びQ相リミッタ224から出力される信号「RXS−Q」は、CPU4に入力されて処理される。I相受信アンプ221及びQ相受信アンプ225の出力は、強度検出手段としてのReceived Signal Strength Indicator(RSSI)回路226にも入力され、それらの信号の強度を示す信号「RSSI」がCPU4に入力される。
【0044】
以上のようにして、リーダ1では、I−Q直交復調によって無線タグ回路部Toからの応答波の復調が行われる。
【0045】
また、リーダアンテナユニット3には、湿度検出用アンテナ12、マッチング回路24、及び通信アンテナ11が備えられている。湿度検出用アンテナ12は、RF通信制御部9内に設けられた湿度検出部230に接続されている。湿度検出部230は、湿度検出用アンテナ12の静電容量を測定し、その測定結果をCPU4に出力する。
【0046】
マッチング回路24は、通信アンテナ11を、同軸ケーブル13及び送受分離器214を介し送信部212又は受信部213に接続した際に、通信アンテナ11及び同軸ケーブル13の間の不整合によるエネルギーの伝達損失を抑えるためのインピーダンス整合を行う。
【0047】
CPU4は、上記湿度検出部230より入力された上記測定結果に基づき、マッチング回路24内に設けられた可変コンデンサ43(後述の図5参照)の容量値を決め、その容量になるよう可変コンデンサ43の印加電圧Vfを制御することで、通信アンテナ11及び同軸ケーブル13の間の整合を取る。
【0048】
リーダアンテナユニット3の外観を図4(a)及び図4(b)を用いて説明する。上述したように、リーダアンテナユニット3は、第1マイクロストリップアンテナとしての通信アンテナ11と、マッチング回路24と、第2マイクロストリップアンテナとしての湿度検出用アンテナ12とを有している。
【0049】
通信アンテナ11は、間隔をあけて配置された、第1正極板としての正極板22と第1負極板としての負極板23と、これら正極板22及び負極板23の間に配置された誘電体44(空気でも良い)とを有する、平板形状のマイクロストリップアンテナである。正極板22は、負極板23より小さく、負極板23の相対する端部の一方側に寄せるように配置されている。正極板22には給電点25が設けられている。給電点25は、負極板23側のマッチング回路24及びマイクロストリップライン26を介し、RF通信制御部9に接続されている。これにより、RF通信制御部9が、通信アンテナ11を介した無線タグTとの無線通信の制御を行う。
【0050】
湿度検出用アンテナ12は、上記通信アンテナ11より小形でマイクロストリップアンテナ形状に設けられている。湿度検出用アンテナ12は、負極板23を上記通信アンテナ11と共有している。すなわち、湿度検出用アンテナ12は、上記負極板23と、通信アンテナ11の正極板22とは別の、第2正極板としての正極板32と、誘電体33とにより構成されている。また、正極板32は、負極板23のうち、通信アンテナ11から離間する隅部に配置されている。誘電体33は、正極板32と負極板23との間に配置された高吸収性材質つまり高吸湿性材質により構成されている。
【0051】
湿度検出用アンテナ12の検出信号はRF回路制御部9の上記湿度検出部230へ出力され、湿度検出用アンテナ12の静電容量を測定することにより、周囲環境の湿度を検出する。湿度検出用アンテナ12は、周囲環境の湿度変化により誘電体33の比誘電率μが変化すると、それに応じて静電容量が変化するので、検出電圧から周囲環境の湿度を検出することができる。これにより、湿度検出用アンテナ12は、湿度センサとして機能するのである。
【0052】
図5に、マッチング回路24及び通信アンテナ11の等価回路図を示す。
【0053】
一般に、無線通信では、その通信に用いられる通信アンテナの周波数特性に最も適する周波数、すなわち共振周波数を用いることで、信頼性を向上できることが知られている。しかしながら、無線通信で用いる周波数を通信アンテナ11のLC共振周波数に設定していたとしても、マイクロストリップアンテナからなる通信アンテナ11の場合、湿度が変化すると正電極22及び負電極23の間の容量成分が変化し、通信アンテナ11の特性インピーダンスが変化する。その結果、通信アンテナ11の共振周波数自体が変化してしまう。
【0054】
そこで、本実施形態では、マッチング回路24において、通信アンテナ11に対し並列となるように、素子特性値が既知である可変コンデンサ43が接続される。そして、CPU4が、湿度検出用アンテナ12で検出した周囲環境の湿度に基づき、上記のように変化した後の、実際の正電極22及び負電極23の間の容量成分C′を算出する。その後、CPU4が、通信アンテナ11について予め予定された、正電極22と負電極23の間の容量成分の基準容量Cと、上記実際の容量成分C′との差分すなわち偏差△Cが算出される。
【0055】
そして、CPU4は、上記差分△Cを打ち消すような可変コンデンサ43への印加電圧Vfを、差分△Cと可変コンデンサ43の素子特性値とから算出する。CPU4は、算出した印加電圧Vfを可変コンデンサ43の両端の端子A−Aに印加し、可変コンデンサ43のコンデンサ容量を制御する。これにより、RF通信制御部9側から見たときの通信アンテナ11の特性インピーダンスを一定に保つことができる。この結果、周囲環境の湿度変化があっても、通信アンテナ11のコンデンサ容量を一定に維持し、通信アンテナ11の共振周波数を一定値に保持することができる。
【0056】
上記の湿度変化に対する共振周波数一定制御を、図6のフローチャートにより詳細に説明する。まず、ステップS1において、CPU4は、湿度検出用アンテナ12が周囲環境の湿度を定期的に所定の頻度で検出することにより、RF通信制御部9を介し、湿度情報を取得する。
【0057】
その後、ステップS2において、CPU4は、ステップS1で取得された湿度情報から、通信アンテナ11の比誘電率εを算出する。このときの算出手法は、例えば以下のようにすればよい。すなわち、予め、通信アンテナ11に使用する誘電体44について、湿度と比誘電率εとの関係が、実測され、例えばメモリ6に記憶されている。図7は、その実測結果の一例である。この例では、横軸に湿度をとるとともに縦軸に比誘電率εをとり、各種の材質ごとに、比誘電率の値の測定結果をプロットしている。このプロットした点に基づき適宜の手法により近似式を算出しておく。これにより、上記取得した湿度情報に当該近似式を適用することで、対応する比誘電率εを求めることができる。あるいは、上記実測結果より、湿度と比誘電率εとの相関を表すテーブルを予め作成しておいて、当該関係テーブルを参照して比誘電率εを求めるようにしてもよい。
【0058】
その後、ステップS3で、CPU4は、上記ステップS2で算出された比誘電率εから、正電極22及び負電極23の間の実際の容量成分C′を算出する。すなわち、マイクロストリップアンテナを用いた比誘電率εの通信アンテナ11の容量成分C′は、
C′=εS/D
により求めることができる。なお、Sは、通信アンテナ11の正極板22と負極板23との対向面積であり、Dは、電極間距離である。
【0059】
その後、ステップS4において、CPU4は、上記の実際の容量成分C′と、通信アンテナ11の標準性能として予め予定され本体制御部2のメモリ6に記憶された基準容量Cとの差分△C=C−C′を算出する。
【0060】
そして、ステップS5において、CPU4は、上記ステップS4で算出したコンデンサ容量の差分△Cと、可変コンデンサ43の既知の素子特性値とを用いて、可変コンデンサ43がコンデンサ容量の差分△Cを打ち消すための印加電圧Vfを算出する。そして、CPU4は、通信制御部9を介し、上記算出した印加電圧Vfを出力する。言い換えれば、図5の等価回路における端子A−A間に、電圧Vfを印加する。これにより、電圧Vfが可変コンデンサ43に印加される結果、上記差分△Cを打ち消す形で通信アンテナ11の全体のコンデンサ容量が前述の基準容量Cに修正される。この結果、周囲環境の湿度変化があっても、通信アンテナ11の共振周波数が湿度変化前と同等に保持される。
【0061】
以上において、図6のフローチャートのステップS2及びステップS3が、各請求項記載の容量算出手段を構成し、ステップS4が偏差算出手段を構成し、ステップS5が印加電圧制御手段を構成する。
【0062】
以上説明したように、本実施形態においては、CPU4が、湿度検出用アンテナ12で検出した湿度から通信アンテナ11の正電極22及び負電極23の間の実際の容量成分C′を算出し、基準容量Cとの差分△Cを算出する。そして、CPU4は、上記コンデンサ容量の差分△Cに対応した印加電圧Vfを可変コンデンサ43に印加し、上記差分△Cを打ち消すように可変コンデンサ43の容量を制御する。これにより、湿度変化による通信アンテナ11の共振周波数の変化を防止することができる。この結果、通信アンテナ11を用いたリーダ1において、通信信頼性が低下したり、通信距離が短くなったり等、通信性能の劣化を防止することができる。
【0063】
また本実施形態では特に、通信アンテナ11を正極板22と負極板23とによるマイクロストリップアンテナとして構成している。そして、湿度検出用アンテナ12を、通信アンテナ11の正極板22とは別の正極板32と、通信アンテナ11と共通の負極板23と、該正極板32及び負極板23の間に配置された誘電体33とにより構成している。これにより、正極板、誘電体、及び負極板により構成され湿度センサとして機能する湿度検出用アンテナ12を、負極板を通信アンテナ11と共通化した形で設けることができる。この結果、設置スペースの低減やコストダウンを図ることができる。
【0064】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。
【0065】
(1)通信アンテナの一部領域に高誘電体を配置し湿度検出用アンテナを構成する場合
上記実施形態では、湿度検出用アンテナ12と通信アンテナ11とで負極板23を共有したが、本発明はこれに限られない。すなわち、通信アンテナの一部領域に、通信アンテナの誘電体よりも高い吸湿性を有する材質の高誘電体を配置することで、負極板及び正極板の両方を湿度検出用アンテナ12と通信アンテナ11とで共有してもよい。
【0066】
このような変形例のリーダアンテナユニット3Aを図8を用いて説明する。図8は、上記実施形態の図4に対応する図である。上記実施形態におけるリーダアンテナユニット3と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略又は簡略化する。
【0067】
リーダアンテナユニット3Aは、第3マイクロストリップアンテナとしての通信アンテナ11Aと、マッチング回路24と、湿度検出手段として機能する湿度検出用アンテナ12Aとを有している。
【0068】
通信アンテナ11Aは、対向するように間隔をあけて配置された、第3正極板としての正極板27及び第3負極板としての負極板28と、これら正極板27及び負極板28の間の大部分の領域に配置された、通信アンテナ用誘電体としての誘電体29とを備えている。
【0069】
第4マイクロストリップアンテナとしての湿度検出用アンテナ12Aは、上記通信アンテナ11Aと一体に設けられている。湿度検出用アンテナ12Aは、通信アンテナ11Aと共通の上記正極板27と、通信アンテナ11Aと共通の上記負極板28と、これら正極板27及び負極板28の間の、上記大部分の領域以外の領域(図8(b)中の下方の領域)に配置された誘電体30とを備えている。
【0070】
湿度検出用誘電体としての誘電体30には、上記通信アンテナ11Aの誘電体29よりも吸湿性の高い材質、すなわち高吸湿性材質の高誘電体が用いられている。これにより、正極板27、負極板28、及び誘電体30からなる組立て体が湿度検出用に適するように構成されている。
【0071】
上記以外の構成は、前述の実施形態と同様である。
【0072】
以上のように構成した本変形例によれば、正極板27、誘電体30、及び負極板28により構成する湿度検出用アンテナ12Aを、正極板と負極板とを通信アンテナ11Aと共通化した形で設けることができる。
【0073】
(2)リーダアンテナユニットに通信アンテナとは別体の湿度検出手段を設置する場合
上記実施形態及び(1)の変形例では、リーダアンテナユニット3に、湿度検出手段として、通信アンテナ11と一部共有する形の湿度検出用アンテナ12を設けたが、これに限られない。すなわち、リーダアンテナユニット3に、通信アンテナ11とは別体の湿度検出手段を設けてもよい。
【0074】
このような変形例のリーダアンテナユニット3Bを図9により説明する。上記実施形態及び(1)の変形例と同等の部分は同一の符号を付し、適宜説明を省略又は簡略化する。この例では、リーダアンテナユニット3Bが、ベルトコンベア34で搬送される図示しない物品の検品ゾーンに設けられた検査ゲート35の両側に設置されている。リーダアンテナユニット3Bは、通信アンテナ11Bと、この通信アンテナ11Bの接続回線とのインピーダンスマッチングをとるマッチング回路24と、通信アンテナ11Bとは別体の湿度センサ36とを備えている。
【0075】
本変形例の無線タグ通信装置としてのリーダ1′では、図9に示すように、通信アンテナ11A,11Bと離れた場所に本体制御部2が設けられている。詳細な説明は省略するが、本体制御部2には前述のRF通信制御部9やCPU4等が備えられている。CPU4が、湿度センサ36で検出した湿度から通信アンテナ11Bと等価なコンデンサ42の実際のコンデンサ容量C′を算出し、基準容量Cとの差分△Cを算出する。そして、CPU4は、上記コンデンサ容量の差分△Cに対応した印加電圧Vfをマッチング回路24の可変コンデンサ43に印加し、上記差分△Cを打ち消すように可変コンデンサ43の容量を制御し、湿度変化による通信アンテナ11Bの共振周波数の変化を防止する。
【0076】
本変形例によっても、上記実施形態と同様、通信アンテナ11Bを用いたリーダ1′において、通信信頼性が低下したり、通信距離が短くなったり等、通信性能の劣化を防止することができる。また、通信アンテナ11Bとは別の湿度センサ36を設ける場合に、当該湿度センサ36をリーダアンテナユニット3Bに設置したことにより、通信アンテナ11Bの全体の容量制御を高精度に行い、通信性能の劣化を確実に防止することができる。
【0077】
(3)その他
なお、以上において、正極板と負極板とその間に配置される誘電体(空気層を含む)とにより構成される既存のマイクロストリップアンテナを、全体として通信アンテナ及び湿度検出用アンテナとして機能させ、上記同様に動作させるようにしてもよい。
【0078】
なお、上記フローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
【0079】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0080】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0081】
1,1′,1″ リーダ(無線タグ通信装置)
2 本体制御部
3,3A〜C リーダアンテナユニット
4 CPU
6 メモリ
9 RF通信制御部
11,11A,B 通信アンテナ
12,12A 湿度検出用アンテナ
22,27,32 正極板
23,28 負極板
24 マッチング回路
29,30,33 誘電体
43 可変コンデンサ
150 IC回路部
151 タグアンテナ
T 無線タグ
To 無線タグ回路部
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグと無線通信により情報送受信可能な無線タグ通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、無線通信では、その通信に用いられるアンテナの周波数特性に最も適する周波数、すなわち共振周波数を用いることで、通信性能を向上できることが知られている。上記のような共振周波数に配慮した従来技術として、例えば特許文献1に記載の技術がある。
【0003】
この従来技術では、無線タグ通信装置と通信を行う無線タグが、アンテナ共振回路からの受信レベルを検出する検出手段と、受信レベルに応じた出力電圧を供給する供給手段とを備えている。この無線タグは、受信データ状態を示すフレームエラーレートによって、アンテナ共振回路の共振周波数とクオリティファクタとをそれぞれ調整する。これにより、この無線タグは、より正確にアンテナ共振回路を調整し、無線タグ通信装置との通信環境を最適に設定することができる。
【特許文献1】特開2002−334310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、無線タグの利用の普及及び拡大により、無線タグ及び無線タグ通信装置が日常的に使用されるとともに、多種多様な用途に使用されるようになっている。例えば天気のよい比較的乾燥した日に使用される場合もあれば、天気のよくない比較的湿度の高い日に使用される場合もある。また、屋外の通風の良好な乾いた状態にて使用される場合もあれば、湿度の高い倉庫内で使用される場合もある。
【0005】
上記のように使用環境によって湿度が変化すると、無線タグ通信装置に備えられた通信アンテナの構成材料の特性、例えば誘電率などが変化するため通信アンテナの特性インピーダンスが変化し、通信アンテナの共振周波数自体が変化する。上記従来技術では、このような湿度による共振周波数の変動については特に配慮されていない。この結果、通信信頼性が低下したり、通信距離が短くなったり等、通信性能が劣化するおそれがあった。
【0006】
本発明の目的は、使用環境の湿度が変化した場合でも、良好な通信性能を確保することができる、無線タグ通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明は、情報を記憶する記憶部を備えたIC回路部と情報を送受信するタグアンテナとを備えた無線タグに対し、無線通信を行う通信アンテナと、前記通信アンテナに接続され、当該通信アンテナを介して前記無線タグと情報の送受信を行う高周波回路と、周囲の湿度を検出する湿度検出手段と、前記湿度検出手段により検出した湿度実測値を用いて、前記通信アンテナの実際の容量成分を算出する容量算出手段と、予め記憶された前記通信アンテナの基準容量と、前記容量算出手段により算出された前記実際の容量成分との、偏差を算出する偏差算出手段と、前記高周波回路に対し、前記通信アンテナと並列に接続された可変コンデンサと、前記偏差算出手段により算出された偏差に対応した電圧を、前記可変コンデンサに印加する印加電圧制御手段とを有することを特徴とする。
【0008】
一般に、無線通信では、その通信に用いられる通信アンテナの周波数特性に最も適する周波数、すなわち共振周波数を用いることで、信頼性を向上できることが知られている。しかしながら、無線通信で用いる周波数を通信アンテナの共振周波数に設定していたとしても、湿度が変化すると通信アンテナの構成材料が吸湿することにより、その特性、例えば誘電率などが変化するため通信アンテナの特性インピーダンスが変化し、通信アンテナの共振周波数自体が変化してしまう。
【0009】
そこで、本願第1発明においては、通信アンテナと並列に可変コンデンサを接続し、この可変コンデンサの容量を制御することによって通信アンテナの特性インピーダンスの変化分を補い、共振周波数の変化を防止する。すなわち、湿度検出手段が周囲の湿度を検出し、その検出した湿度実測値を用いて、容量算出手段が通信アンテナの実際の特性インピーダンスである容量成分を算出する。そして、偏差算出手段が、通信アンテナの標準性能として予め予定され記憶された基準特性インピーダンスである基準容量と、上記実際の容量成分との偏差を算出し、その偏差を上記可変コンデンサの容量変化で補えるよう、対応した電圧を印加電圧制御手段が可変コンデンサに印加する。
【0010】
これにより、湿度の変化による通信アンテナの特性インピーダンスの変化を打ち消すようなインダクタ成分を可変コンデンサによって生成できるので、全体として、通信アンテナの共振周波数が湿度変化前と同等に保たれる。この結果、通信信頼性が低下したり、通信距離が短くなったり等、通信性能の劣化を防止することができる。
【0011】
第2発明は、上記第1発明において、前記湿度検出手段は、前記通信アンテナと少なくとも一部分を共用した、湿度検出用アンテナであることを特徴とする。
【0012】
湿度検出をアンテナで行い、かつその一部分を通信アンテナと共用することにより、容易に通信アンテナ近傍の湿度を測定できる上、設置スペースの低減やコストダウンを図ることができる。
【0013】
第3発明は、上記第2発明において、前記通信アンテナは、第1正極板と、第1負極板とにより構成された第1マイクロストリップアンテナであり、前記湿度検出用アンテナは、前記第1正極板とは別の第2正極板と、前記第1マイクロストリップアンテナと共通の前記第1負極板と、前記第2正極板及び前記第1負極板の間に配置された誘電体と、により構成された第2マイクロストリップアンテナであることを特徴とする。
【0014】
これにより、正極板、誘電体、及び負極板により構成する湿度検出用アンテナを、負極板を通信アンテナと共通化した形で設けることができる。
【0015】
第4発明は、上記第2発明において、前記通信アンテナは、第3正極板と、第3負極板と、前記第3正極板及び前記第3負極板の間に配置された通信アンテナ用誘電体と、により構成された第3マイクロストリップアンテナであり、前記湿度検出用アンテナは、前記第3マイクロストリップアンテナと共通の前記第3正極板と、前記第3マイクロストリップアンテナと共通の前記第3負極板と、前記第3正極板及び前記第3負極板の間に配置され前記通信アンテナ用誘電体よりも吸湿率の高い湿度検出用誘電体と、により構成された第4マイクロストリップアンテナであることを特徴とする。
【0016】
これにより、正極板、誘電体、及び負極板により構成する湿度検出用アンテナを、正極板と負極板とを通信アンテナと共通化した形で設けることができる。また、湿度検出用に通信アンテナ用誘電体よりも吸湿率の高い誘電体を用いることで、湿度測定の精度を高めることが可能になる。
【0017】
第5発明は、上記第1発明において、前記湿度検出手段は、前記通信アンテナを含むアンテナユニットに設けられた、湿度センサであることを特徴とする。
【0018】
通信アンテナとは別に湿度センサを設置する場合にその湿度センサをアンテナユニットに設けることにより、高精度に容量制御を行い、通信性能の劣化を確実に防止することができる。
【0019】
第6発明は、上記第1乃至第5発明のいずれかにおいて、前記可変コンデンサを、前記通信アンテナを含むアンテナユニットに設けたことを特徴とする。
【0020】
共振周波数の変化を打ち消すための可変コンデンサをアンテナユニットに設けることにより、通信アンテナの特性インピーダンスを導電路に合わせることが可能になりこの部分での信号の反射ロスを低減することで、通信性能の劣化を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、使用環境の湿度が変化した場合でも、良好な通信性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態のリーダを無線タグが貼付されている物品の情報読み取りに適用した場合の一例を表す図である。
【図2】リーダの概略システム構成を表す機能ブロック図である。
【図3】リーダにおけるCPU、RF通信制御部、及びリーダアンテナユニットの詳細構成を表す機能ブロック図である。
【図4】リーダアンテナユニットの正極板を下面側にして下方から見た斜視図、及びリーダアンテナユニット3の断面図である。
【図5】リーダのRF回路構成部の等価回路図である。
【図6】湿度変化に対する共振周波数一定制御を説明するフローチャートである。
【図7】湿度と比誘電率εとの関係を表すグラフである。
【図8】通信アンテナの一部領域に高誘電体を配置して湿度検出用アンテナを構成する変形例のリーダアンテナユニットを表す図である。
【図9】通信アンテナとは別体の湿度検出手段を設置する場合のリーダアンテナユニットを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0024】
図1に示すように、無線タグ通信装置としてのリーダ1は、携帯型であり、略直方体形状の筐体に収容された本体制御部2を有している。この本体制御部2の筐体には、長手方向の一方の端部にリーダアンテナユニット3が設けられているとともに、筐体の一方の平面部に操作部7と表示部8が設けられている。リーダ1は、通信領域20に存在する無線タグTから、無線通信により物品Bに関する情報を読み取る。
【0025】
リーダ1の機能的構成を図2を用いて説明する。図2において、リーダ1は、上述したように、本体制御部2と、給電線である同軸ケーブル13と、リーダアンテナユニット3とを有している。
【0026】
本体制御部2は、CPU4と、不揮発性記憶装置5と、上記操作部7と、メモリ6と、表示部8と、高周波回路としてのRF通信制御部9とを備えている。
【0027】
無線タグTの無線タグ回路部Toは、情報を記憶するIC回路部150と、情報を送受信するタグアンテナ151とを備えている。
【0028】
RF通信制御部9は、上記同軸ケーブル13で接続されたリーダアンテナユニット3を介し、上記無線タグ回路部ToのIC回路部150に記憶された、タグIDを含む無線タグ情報へアクセスする。
【0029】
CPU4は、RF通信制御部9を介し、無線タグ回路部ToのIC回路部150から読み出された信号を処理して情報を読み出すとともに、無線タグ回路部ToのIC回路部150へアクセスするための各種コマンド等を生成する。
【0030】
不揮発性記憶装置5は、ハードディスク装置やフラッシュメモリからなり、物品Bの管理状況などの各種情報を記憶する。メモリ6は、例えばRAMやROM等から構成される。操作部7は、使用者からの指示や情報が入力される。表示部8は、各種情報やメッセージを表示する。
【0031】
リーダアンテナユニット3は、マイクロストリップアンテナからなる通信アンテナ11と、マッチング回路24と、湿度検出手段としての湿度検出用アンテナ12とを備える。マッチング回路24は、通信アンテナ11までの接続回線とのインピーダンス整合を行う。湿度検出用アンテナ12は、通信アンテナ11の周囲の湿度を検出する。
【0032】
図3を用いて、RF通信制御部9の詳細構成を説明する。
【0033】
RF通信制御部9は、無線タグ回路部ToのIC回路部150の無線タグ情報にアクセスするための質問波を生成し、同軸ケーブル13及びリーダアンテナユニット3を介し送信する送信部212と、リーダアンテナユニット3により受信された無線タグ回路部Toからの応答波を入力する受信部213と、送受分離器214とから構成される。
【0034】
送信部212は、水晶振動子215Aと、Phase Locked Loop(PLL)215Bと、Voltage Controlled Oscillator(VCO)215Cと、送信乗算回路216と、可変送信アンプ217とを備えている。
【0035】
水晶振動子215Aは、基準周波数を発生する。PLL215Bは、CPU4の制御信号に基づいて、水晶振動子215Aにより発生した周波数と、VCO215Cが発生した周波数とを比較し、VCO215Cが所定周波数の搬送波を発生させるようVCO215Cの制御電圧を出力する。発生される搬送波は、例えばUHF帯、マイクロ波帯、あるいは短波帯の周波数を用いている。
【0036】
送信乗算回路216は、上記CPU4から供給される信号に基づいて上記発生させられた搬送波を変調する。この例では、送信乗算回路216は、CPU4からの「TX_ASK」信号に基づく振幅変調を実行する。なお、振幅変調の場合は、送信乗算回路216代えて増幅率可変アンプ等を用いてもよい。また、質問波は上記のように変調した信号すなわち変調波に限られず、単なる搬送波のみの場合もある。
【0037】
可変送信アンプ217は、送信乗算回路216により変調された変調波を増幅する。可変送信アンプ217は、この例では、CPU4からの「TX_PWR」信号によって決定される増幅率による増幅を行う。可変送信アンプ217の出力は、送受分離器214及び同軸ケーブル13を介してリーダアンテナユニット3のマッチング回路24、通信アンテナ11に伝達され、無線タグ回路部ToのIC回路部150に供給される。
【0038】
受信部213は、I相受信乗算回路218と、I相バンドパスフィルタ219と、I相受信アンプ221と、I相リミッタ220と、Q相受信乗算回路222と、Q相バンドパスフィルタ223と、Q相受信アンプ225と、Q相リミッタ224とを備えている。
【0039】
I相受信乗算回路218は、リーダアンテナユニット3の通信アンテナ11で受信され、マッチング回路24、同軸ケーブル13、及び送受分離器214を介し入力された無線タグ回路部Toからの応答波と、上記搬送波とを乗算し、復調する。
【0040】
I相バンドパスフィルタ219は、I相受信乗算回路218の出力から必要な帯域の信号のみを取り出す。I相受信アンプ221は、I相バンドパスフィルタ219の出力を増幅する。I相リミッタ220は、I相受信アンプ221の出力をさらに増幅してデジタル信号に変換する。
【0041】
Q相受信乗算回路222は、リーダアンテナユニット3で受信された無線タグ回路部Toからの応答波と、発生された搬送波が移相器227により位相を90°遅らせた信号とを、乗算する。
【0042】
Q相バンドパスフィルタ223は、Q相受信乗算回路222の出力から必要な帯域の信号のみを取り出す。Q相受信アンプ225は、Q相バンドパスフィルタ223の出力を増幅する。Q相リミッタ224は、Q相受信アンプ225の出力をさらに増幅してデジタル信号に変換する。
【0043】
上記I相リミッタ220から出力される信号「RXS−I」及びQ相リミッタ224から出力される信号「RXS−Q」は、CPU4に入力されて処理される。I相受信アンプ221及びQ相受信アンプ225の出力は、強度検出手段としてのReceived Signal Strength Indicator(RSSI)回路226にも入力され、それらの信号の強度を示す信号「RSSI」がCPU4に入力される。
【0044】
以上のようにして、リーダ1では、I−Q直交復調によって無線タグ回路部Toからの応答波の復調が行われる。
【0045】
また、リーダアンテナユニット3には、湿度検出用アンテナ12、マッチング回路24、及び通信アンテナ11が備えられている。湿度検出用アンテナ12は、RF通信制御部9内に設けられた湿度検出部230に接続されている。湿度検出部230は、湿度検出用アンテナ12の静電容量を測定し、その測定結果をCPU4に出力する。
【0046】
マッチング回路24は、通信アンテナ11を、同軸ケーブル13及び送受分離器214を介し送信部212又は受信部213に接続した際に、通信アンテナ11及び同軸ケーブル13の間の不整合によるエネルギーの伝達損失を抑えるためのインピーダンス整合を行う。
【0047】
CPU4は、上記湿度検出部230より入力された上記測定結果に基づき、マッチング回路24内に設けられた可変コンデンサ43(後述の図5参照)の容量値を決め、その容量になるよう可変コンデンサ43の印加電圧Vfを制御することで、通信アンテナ11及び同軸ケーブル13の間の整合を取る。
【0048】
リーダアンテナユニット3の外観を図4(a)及び図4(b)を用いて説明する。上述したように、リーダアンテナユニット3は、第1マイクロストリップアンテナとしての通信アンテナ11と、マッチング回路24と、第2マイクロストリップアンテナとしての湿度検出用アンテナ12とを有している。
【0049】
通信アンテナ11は、間隔をあけて配置された、第1正極板としての正極板22と第1負極板としての負極板23と、これら正極板22及び負極板23の間に配置された誘電体44(空気でも良い)とを有する、平板形状のマイクロストリップアンテナである。正極板22は、負極板23より小さく、負極板23の相対する端部の一方側に寄せるように配置されている。正極板22には給電点25が設けられている。給電点25は、負極板23側のマッチング回路24及びマイクロストリップライン26を介し、RF通信制御部9に接続されている。これにより、RF通信制御部9が、通信アンテナ11を介した無線タグTとの無線通信の制御を行う。
【0050】
湿度検出用アンテナ12は、上記通信アンテナ11より小形でマイクロストリップアンテナ形状に設けられている。湿度検出用アンテナ12は、負極板23を上記通信アンテナ11と共有している。すなわち、湿度検出用アンテナ12は、上記負極板23と、通信アンテナ11の正極板22とは別の、第2正極板としての正極板32と、誘電体33とにより構成されている。また、正極板32は、負極板23のうち、通信アンテナ11から離間する隅部に配置されている。誘電体33は、正極板32と負極板23との間に配置された高吸収性材質つまり高吸湿性材質により構成されている。
【0051】
湿度検出用アンテナ12の検出信号はRF回路制御部9の上記湿度検出部230へ出力され、湿度検出用アンテナ12の静電容量を測定することにより、周囲環境の湿度を検出する。湿度検出用アンテナ12は、周囲環境の湿度変化により誘電体33の比誘電率μが変化すると、それに応じて静電容量が変化するので、検出電圧から周囲環境の湿度を検出することができる。これにより、湿度検出用アンテナ12は、湿度センサとして機能するのである。
【0052】
図5に、マッチング回路24及び通信アンテナ11の等価回路図を示す。
【0053】
一般に、無線通信では、その通信に用いられる通信アンテナの周波数特性に最も適する周波数、すなわち共振周波数を用いることで、信頼性を向上できることが知られている。しかしながら、無線通信で用いる周波数を通信アンテナ11のLC共振周波数に設定していたとしても、マイクロストリップアンテナからなる通信アンテナ11の場合、湿度が変化すると正電極22及び負電極23の間の容量成分が変化し、通信アンテナ11の特性インピーダンスが変化する。その結果、通信アンテナ11の共振周波数自体が変化してしまう。
【0054】
そこで、本実施形態では、マッチング回路24において、通信アンテナ11に対し並列となるように、素子特性値が既知である可変コンデンサ43が接続される。そして、CPU4が、湿度検出用アンテナ12で検出した周囲環境の湿度に基づき、上記のように変化した後の、実際の正電極22及び負電極23の間の容量成分C′を算出する。その後、CPU4が、通信アンテナ11について予め予定された、正電極22と負電極23の間の容量成分の基準容量Cと、上記実際の容量成分C′との差分すなわち偏差△Cが算出される。
【0055】
そして、CPU4は、上記差分△Cを打ち消すような可変コンデンサ43への印加電圧Vfを、差分△Cと可変コンデンサ43の素子特性値とから算出する。CPU4は、算出した印加電圧Vfを可変コンデンサ43の両端の端子A−Aに印加し、可変コンデンサ43のコンデンサ容量を制御する。これにより、RF通信制御部9側から見たときの通信アンテナ11の特性インピーダンスを一定に保つことができる。この結果、周囲環境の湿度変化があっても、通信アンテナ11のコンデンサ容量を一定に維持し、通信アンテナ11の共振周波数を一定値に保持することができる。
【0056】
上記の湿度変化に対する共振周波数一定制御を、図6のフローチャートにより詳細に説明する。まず、ステップS1において、CPU4は、湿度検出用アンテナ12が周囲環境の湿度を定期的に所定の頻度で検出することにより、RF通信制御部9を介し、湿度情報を取得する。
【0057】
その後、ステップS2において、CPU4は、ステップS1で取得された湿度情報から、通信アンテナ11の比誘電率εを算出する。このときの算出手法は、例えば以下のようにすればよい。すなわち、予め、通信アンテナ11に使用する誘電体44について、湿度と比誘電率εとの関係が、実測され、例えばメモリ6に記憶されている。図7は、その実測結果の一例である。この例では、横軸に湿度をとるとともに縦軸に比誘電率εをとり、各種の材質ごとに、比誘電率の値の測定結果をプロットしている。このプロットした点に基づき適宜の手法により近似式を算出しておく。これにより、上記取得した湿度情報に当該近似式を適用することで、対応する比誘電率εを求めることができる。あるいは、上記実測結果より、湿度と比誘電率εとの相関を表すテーブルを予め作成しておいて、当該関係テーブルを参照して比誘電率εを求めるようにしてもよい。
【0058】
その後、ステップS3で、CPU4は、上記ステップS2で算出された比誘電率εから、正電極22及び負電極23の間の実際の容量成分C′を算出する。すなわち、マイクロストリップアンテナを用いた比誘電率εの通信アンテナ11の容量成分C′は、
C′=εS/D
により求めることができる。なお、Sは、通信アンテナ11の正極板22と負極板23との対向面積であり、Dは、電極間距離である。
【0059】
その後、ステップS4において、CPU4は、上記の実際の容量成分C′と、通信アンテナ11の標準性能として予め予定され本体制御部2のメモリ6に記憶された基準容量Cとの差分△C=C−C′を算出する。
【0060】
そして、ステップS5において、CPU4は、上記ステップS4で算出したコンデンサ容量の差分△Cと、可変コンデンサ43の既知の素子特性値とを用いて、可変コンデンサ43がコンデンサ容量の差分△Cを打ち消すための印加電圧Vfを算出する。そして、CPU4は、通信制御部9を介し、上記算出した印加電圧Vfを出力する。言い換えれば、図5の等価回路における端子A−A間に、電圧Vfを印加する。これにより、電圧Vfが可変コンデンサ43に印加される結果、上記差分△Cを打ち消す形で通信アンテナ11の全体のコンデンサ容量が前述の基準容量Cに修正される。この結果、周囲環境の湿度変化があっても、通信アンテナ11の共振周波数が湿度変化前と同等に保持される。
【0061】
以上において、図6のフローチャートのステップS2及びステップS3が、各請求項記載の容量算出手段を構成し、ステップS4が偏差算出手段を構成し、ステップS5が印加電圧制御手段を構成する。
【0062】
以上説明したように、本実施形態においては、CPU4が、湿度検出用アンテナ12で検出した湿度から通信アンテナ11の正電極22及び負電極23の間の実際の容量成分C′を算出し、基準容量Cとの差分△Cを算出する。そして、CPU4は、上記コンデンサ容量の差分△Cに対応した印加電圧Vfを可変コンデンサ43に印加し、上記差分△Cを打ち消すように可変コンデンサ43の容量を制御する。これにより、湿度変化による通信アンテナ11の共振周波数の変化を防止することができる。この結果、通信アンテナ11を用いたリーダ1において、通信信頼性が低下したり、通信距離が短くなったり等、通信性能の劣化を防止することができる。
【0063】
また本実施形態では特に、通信アンテナ11を正極板22と負極板23とによるマイクロストリップアンテナとして構成している。そして、湿度検出用アンテナ12を、通信アンテナ11の正極板22とは別の正極板32と、通信アンテナ11と共通の負極板23と、該正極板32及び負極板23の間に配置された誘電体33とにより構成している。これにより、正極板、誘電体、及び負極板により構成され湿度センサとして機能する湿度検出用アンテナ12を、負極板を通信アンテナ11と共通化した形で設けることができる。この結果、設置スペースの低減やコストダウンを図ることができる。
【0064】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。
【0065】
(1)通信アンテナの一部領域に高誘電体を配置し湿度検出用アンテナを構成する場合
上記実施形態では、湿度検出用アンテナ12と通信アンテナ11とで負極板23を共有したが、本発明はこれに限られない。すなわち、通信アンテナの一部領域に、通信アンテナの誘電体よりも高い吸湿性を有する材質の高誘電体を配置することで、負極板及び正極板の両方を湿度検出用アンテナ12と通信アンテナ11とで共有してもよい。
【0066】
このような変形例のリーダアンテナユニット3Aを図8を用いて説明する。図8は、上記実施形態の図4に対応する図である。上記実施形態におけるリーダアンテナユニット3と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略又は簡略化する。
【0067】
リーダアンテナユニット3Aは、第3マイクロストリップアンテナとしての通信アンテナ11Aと、マッチング回路24と、湿度検出手段として機能する湿度検出用アンテナ12Aとを有している。
【0068】
通信アンテナ11Aは、対向するように間隔をあけて配置された、第3正極板としての正極板27及び第3負極板としての負極板28と、これら正極板27及び負極板28の間の大部分の領域に配置された、通信アンテナ用誘電体としての誘電体29とを備えている。
【0069】
第4マイクロストリップアンテナとしての湿度検出用アンテナ12Aは、上記通信アンテナ11Aと一体に設けられている。湿度検出用アンテナ12Aは、通信アンテナ11Aと共通の上記正極板27と、通信アンテナ11Aと共通の上記負極板28と、これら正極板27及び負極板28の間の、上記大部分の領域以外の領域(図8(b)中の下方の領域)に配置された誘電体30とを備えている。
【0070】
湿度検出用誘電体としての誘電体30には、上記通信アンテナ11Aの誘電体29よりも吸湿性の高い材質、すなわち高吸湿性材質の高誘電体が用いられている。これにより、正極板27、負極板28、及び誘電体30からなる組立て体が湿度検出用に適するように構成されている。
【0071】
上記以外の構成は、前述の実施形態と同様である。
【0072】
以上のように構成した本変形例によれば、正極板27、誘電体30、及び負極板28により構成する湿度検出用アンテナ12Aを、正極板と負極板とを通信アンテナ11Aと共通化した形で設けることができる。
【0073】
(2)リーダアンテナユニットに通信アンテナとは別体の湿度検出手段を設置する場合
上記実施形態及び(1)の変形例では、リーダアンテナユニット3に、湿度検出手段として、通信アンテナ11と一部共有する形の湿度検出用アンテナ12を設けたが、これに限られない。すなわち、リーダアンテナユニット3に、通信アンテナ11とは別体の湿度検出手段を設けてもよい。
【0074】
このような変形例のリーダアンテナユニット3Bを図9により説明する。上記実施形態及び(1)の変形例と同等の部分は同一の符号を付し、適宜説明を省略又は簡略化する。この例では、リーダアンテナユニット3Bが、ベルトコンベア34で搬送される図示しない物品の検品ゾーンに設けられた検査ゲート35の両側に設置されている。リーダアンテナユニット3Bは、通信アンテナ11Bと、この通信アンテナ11Bの接続回線とのインピーダンスマッチングをとるマッチング回路24と、通信アンテナ11Bとは別体の湿度センサ36とを備えている。
【0075】
本変形例の無線タグ通信装置としてのリーダ1′では、図9に示すように、通信アンテナ11A,11Bと離れた場所に本体制御部2が設けられている。詳細な説明は省略するが、本体制御部2には前述のRF通信制御部9やCPU4等が備えられている。CPU4が、湿度センサ36で検出した湿度から通信アンテナ11Bと等価なコンデンサ42の実際のコンデンサ容量C′を算出し、基準容量Cとの差分△Cを算出する。そして、CPU4は、上記コンデンサ容量の差分△Cに対応した印加電圧Vfをマッチング回路24の可変コンデンサ43に印加し、上記差分△Cを打ち消すように可変コンデンサ43の容量を制御し、湿度変化による通信アンテナ11Bの共振周波数の変化を防止する。
【0076】
本変形例によっても、上記実施形態と同様、通信アンテナ11Bを用いたリーダ1′において、通信信頼性が低下したり、通信距離が短くなったり等、通信性能の劣化を防止することができる。また、通信アンテナ11Bとは別の湿度センサ36を設ける場合に、当該湿度センサ36をリーダアンテナユニット3Bに設置したことにより、通信アンテナ11Bの全体の容量制御を高精度に行い、通信性能の劣化を確実に防止することができる。
【0077】
(3)その他
なお、以上において、正極板と負極板とその間に配置される誘電体(空気層を含む)とにより構成される既存のマイクロストリップアンテナを、全体として通信アンテナ及び湿度検出用アンテナとして機能させ、上記同様に動作させるようにしてもよい。
【0078】
なお、上記フローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
【0079】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0080】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0081】
1,1′,1″ リーダ(無線タグ通信装置)
2 本体制御部
3,3A〜C リーダアンテナユニット
4 CPU
6 メモリ
9 RF通信制御部
11,11A,B 通信アンテナ
12,12A 湿度検出用アンテナ
22,27,32 正極板
23,28 負極板
24 マッチング回路
29,30,33 誘電体
43 可変コンデンサ
150 IC回路部
151 タグアンテナ
T 無線タグ
To 無線タグ回路部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を記憶する記憶部を備えたIC回路部と情報を送受信するタグアンテナとを備えた無線タグに対し、無線通信を行う通信アンテナと、
前記通信アンテナに接続され、当該通信アンテナを介して前記無線タグと情報の送受信を行う高周波回路と、
周囲の湿度を検出する湿度検出手段と、
前記湿度検出手段により検出した湿度実測値を用いて、前記通信アンテナの実際の容量成分を算出する容量算出手段と、
予め記憶された前記通信アンテナの基準容量と、前記容量算出手段により算出された前記実際の容量成分との、偏差を算出する偏差算出手段と、
前記高周波回路に対し、前記通信アンテナと並列に接続された可変コンデンサと、
前記偏差算出手段により算出された偏差に対応した電圧を、前記可変コンデンサに印加する印加電圧制御手段と
を有することを特徴とする無線タグ通信装置。
【請求項2】
前記湿度検出手段は、
前記通信アンテナと少なくとも一部分を共用した、湿度検出用アンテナである
ことを特徴とする請求項1記載の無線タグ通信装置。
【請求項3】
前記通信アンテナは、
第1正極板と、第1負極板とにより構成された第1マイクロストリップアンテナであり、
前記湿度検出用アンテナは、
前記第1正極板とは別の第2正極板と、前記第1マイクロストリップアンテナと共通の前記第1負極板と、前記第2正極板及び前記第1負極板の間に配置された誘電体と、により構成された第2マイクロストリップアンテナである
ことを特徴とする請求項2記載の無線タグ通信装置。
【請求項4】
前記通信アンテナは、
第3正極板と、第3負極板と、前記第3正極板及び前記第3負極板の間に配置された通信アンテナ用誘電体と、により構成された第3マイクロストリップアンテナであり、
前記湿度検出用アンテナは、
前記第3マイクロストリップアンテナと共通の前記第3正極板と、前記第3マイクロストリップアンテナと共通の前記第3負極板と、前記第3正極板及び前記第3負極板の間に配置され前記通信アンテナ用誘電体よりも吸湿率の高い湿度検出用誘電体と、により構成された第4マイクロストリップアンテナである
ことを特徴とする請求項2記載の無線タグ通信装置。
【請求項5】
前記湿度検出手段は、
前記通信アンテナを含むアンテナユニットに設けられた、湿度センサである
ことを特徴とする請求項1記載の無線タグ通信装置。
【請求項6】
前記可変コンデンサを、
前記通信アンテナを含むアンテナユニットに設けた
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の無線タグ通信装置。
【請求項1】
情報を記憶する記憶部を備えたIC回路部と情報を送受信するタグアンテナとを備えた無線タグに対し、無線通信を行う通信アンテナと、
前記通信アンテナに接続され、当該通信アンテナを介して前記無線タグと情報の送受信を行う高周波回路と、
周囲の湿度を検出する湿度検出手段と、
前記湿度検出手段により検出した湿度実測値を用いて、前記通信アンテナの実際の容量成分を算出する容量算出手段と、
予め記憶された前記通信アンテナの基準容量と、前記容量算出手段により算出された前記実際の容量成分との、偏差を算出する偏差算出手段と、
前記高周波回路に対し、前記通信アンテナと並列に接続された可変コンデンサと、
前記偏差算出手段により算出された偏差に対応した電圧を、前記可変コンデンサに印加する印加電圧制御手段と
を有することを特徴とする無線タグ通信装置。
【請求項2】
前記湿度検出手段は、
前記通信アンテナと少なくとも一部分を共用した、湿度検出用アンテナである
ことを特徴とする請求項1記載の無線タグ通信装置。
【請求項3】
前記通信アンテナは、
第1正極板と、第1負極板とにより構成された第1マイクロストリップアンテナであり、
前記湿度検出用アンテナは、
前記第1正極板とは別の第2正極板と、前記第1マイクロストリップアンテナと共通の前記第1負極板と、前記第2正極板及び前記第1負極板の間に配置された誘電体と、により構成された第2マイクロストリップアンテナである
ことを特徴とする請求項2記載の無線タグ通信装置。
【請求項4】
前記通信アンテナは、
第3正極板と、第3負極板と、前記第3正極板及び前記第3負極板の間に配置された通信アンテナ用誘電体と、により構成された第3マイクロストリップアンテナであり、
前記湿度検出用アンテナは、
前記第3マイクロストリップアンテナと共通の前記第3正極板と、前記第3マイクロストリップアンテナと共通の前記第3負極板と、前記第3正極板及び前記第3負極板の間に配置され前記通信アンテナ用誘電体よりも吸湿率の高い湿度検出用誘電体と、により構成された第4マイクロストリップアンテナである
ことを特徴とする請求項2記載の無線タグ通信装置。
【請求項5】
前記湿度検出手段は、
前記通信アンテナを含むアンテナユニットに設けられた、湿度センサである
ことを特徴とする請求項1記載の無線タグ通信装置。
【請求項6】
前記可変コンデンサを、
前記通信アンテナを含むアンテナユニットに設けた
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の無線タグ通信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2011−71934(P2011−71934A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223519(P2009−223519)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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