説明

無線伝送装置及び無線伝送システム

【課題】 複数の無線伝送装置で構成される無線伝送システムでの障害にかかわらず信号伝送を確保した無線伝送装置及び無線伝送システムを提供する。
【解決手段】 PDHデータ信号列を複数の無線伝送装置A,B,Cとの間で伝送するための装置間ケーブル11,12,13をメッシュ状に配設する。また、各無線伝送装置は装置間ケーブルの接続状態を切り替えるためのクロスコネクト回路A5,B5,C5と、当該装置間ケーブルにおける信号伝送の障害を検出するケーブル監視回路A7,B7,C7とを備える。クロスコネクト回路はケーブル監視回路から出力される障害情報に基づいて装置間ケーブルの接続状態を切り替え可能にする。障害が生じたときに障害が生じた装置間ケーブルとは異なる他の装置間ケーブルを経由して信号伝送を行うことができ、PDHデータ信号列の伝送が確保される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はITU−T(International Telecommunication Union-Telecommunication Standardization Sector:国際電気通信連合・電気通信標準化部門)) 等で標準化されているPDH(Plesiochronous Digital Hierarchy )データ信号列を無線フレームデータ信号列に多重、分離して伝送する無線伝送装置に関し、特に無線伝送装置間を相互に装置間ケーブルで接続して無線伝送システムを構築したときに、無線伝送装置の障害発生や装置間ケーブルでの障害発生によるPDHデータ信号列の不通を最小限に抑えることを可能にした無線伝送装置及び無線伝送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のアクセス系無線伝送システムでは複数のPDHデータ信号列を無線フレームデータ列に多重、分離することで1対1の無線伝送を行うものが主流であったが、近年、ネットワーク規模の拡大に伴い、多方向分岐の無線伝送路をもち、任意の無線伝送路間にPDHデータ信号列を伝送する無線伝送システムの必要性が高まっている。例えば、特許文献1の無線伝送装置がある。この種の無線伝送システムを実現する従来の無線伝送装置を図5を参照して説明する。無線伝送装置D,E,Fはそれぞれ異なる場所に配設されており、それそれ同じ構成である。無線伝送装置Dを代表して説明すると、変復調回路D2,D10を備えており、変復調回路D2は無線伝送路D1から入力された無線受信信号を復調し、無線フレーム同期を取って無線フレームデータ列を無線多重抽出回路D3へ出力する。無線多重抽出回路D3は当該無線フレームデータ列に多重されている複数のPDHデータ信号列を抽出し、マトリクス切替回路D6へ出力する。同様に、変復調回路D10は無線伝送路D9から入力された無線受信信号を復調し、無線フレーム同期を取って無線フレームデータ列を無線多重抽出回路D11へ出力する。無線多重抽出回路D11は当該無線フレームデータ列に多重されている複数のPDHデータ信号列を抽出し、マトリクス切替回路D6へ出力する。
【0003】
マトリクス切替回路D6はSDH(Synchronous Digital Hierarchy) 多重回路D5,D7と無線多重抽出回路D3,D11との間の接続路を切り替えることが可能であり、例えば無線多重抽出回路D3から入力された複数のPDHデータ信号列をユーザの指定する伝送先につながるSDH多重回路D5,D7もしくは無線多重抽出回路D11へ出力する。逆に、無線多重抽出回路D11から入力された複数のPDHデータ信号列をユーザの指定する伝送先につながるSDH多重回路D5,D7もしくは無線多重抽出回路D3へ出力する。そして、例えば、無線多重抽出回路D11においてマトリクス切替回路D6から入力される切替後の複数のPDHデータ信号列は無線フレームデータ列に多重され、変復調回路D10経由で無線伝送路D9に送出される。また、SDH多重抽出回路D5、D7はそれぞれマトリクス切替回路D6から入力される切り替え後の複数のPDHデータ信号列をSDHフレームデータ列に多重し、インタフェース回路D4,D8において前記SDHフレームデータ列をSDH信号に変換して外部へ出力する。無線伝送装置E,Fも同じ構成であり、無線伝送装置Dの各部と同一部分には同じ数値符号を付している。
【0004】
前記無線伝送装置Dのインタフェース回路D8は有線伝送路、例えばケーブル21を介して他の無線伝送装置Eのインタフェース回路E4に接続されている。また、無線伝送装置Eのインタフェース回路E8はケーブル22を介して無線伝送装置Fのインタフェース回路F4に接続されている。なお、無線伝送装置Dのインタフェース回路D4はケーブル20を介して図示されない他の無線伝送装置のインタフェース回路に接続されることになる。そして、無線伝送装置Eは無線伝送装置Dのインタフェース回路D8から入力されたSDH信号をインタフェース回路E4においてSDHフレームデータ列に変換し、SDH多重抽出回路E5において前記SDHフレームデータ列に多重されている複数のPDHデータ信号列を抽出してマトリクス切替回路E6へ出力する。マトリクス切替回路E6はユーザの指定する伝送先へ前記複数のPDHデータ信号列を切り替えた後、無線多重抽出回路E3,E11で無線フレームデータ列へ多重し、変復調回路E2,E10で変調を行って無線伝送路E1,E9へ出力する。また、SDH多重抽出回路E7において切り替え後の複数のPDHデータ信号列をSDHフレームデータ列に多重し、インタフェース回路E8経由でSDH信号に変換して無線伝送装置Fへ伝送する。無線伝送装置Fは無線伝送装置Eのインタフェース回路E8から入力されるSDH信号に対して無線伝送装置Eと同様の動作をすることにより、各装置に接続される任意の無線伝送路間に対してPDHデータ信号列を伝送することが可能となる。
【0005】
図5に示した従来の無線伝送システムにおいては、複数の無線伝送装置をケーブルにより縦続接続した構成となっているため、次のような課題がある。第1の課題はいずれかの無線伝送装置が故障した場合、あるいは無線伝送装置間を接続しているケーブルに障害が生じた場合に、当該無線伝送装置を介在させた無線伝送装置間でのPDHデータ信号列の伝送ができなくなるということである。例えば、図5において無線伝送装置Eが故障した場合、或いは無線伝送装置DとEを接続するケーブルに障害が生じた場合には、無線伝送装置D−F間のPDHデータ信号列の伝送ができなくなる。すなわち、無線伝送装置Dの無線伝送路から伝送されたPDHデータ信号列を無線伝送装置Fの無線伝送路に伝送する際に必ず無線伝送装置E及び無線伝送装置DとEを接続しているケーブルを経由するためである。
【0006】
第2の課題は、無線伝送装置D−F間、無線伝送装置E−F間を伝送するPDHデータ信号列の本数に制限があるということである。その理由は無線伝送装置間をSDH信号で縦続接続した構成であるため、無線伝送装置D−F間、無線伝送装置E−F間にPDHデータ信号列を伝送するためにはどちらも無線伝送装置E−F間を伝送するSDH信号に多重する必要があり、SDH信号に収容可能なPDHデータ信号列の本数までしか伝送できないためである。
【特許文献1】特開2005−244328号公報
【特許文献2】特開2004−364287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような第1及び第2の課題に対し、特許文献2には、複数の基盤要素に他の基盤要素と通信するための指向性アンテナを備えて無線メッシュネットワーク環境を構築し、任意の伝送路間を伝送する伝送ルートを複数確保する技術が提案されている。この特許文献2の技術は無線伝送路でメッシュネットワーク環境を構成するものであり、無線伝送装置間を装置間ケーブルで接続する技術ではないので、装置間ケーブルを介してPDHデータ信号列を伝送する特許文献1の技術に適用することはできない。
【0008】
本発明の目的は以上の課題を解決し、無線伝送装置における障害やケーブル障害にかかわらず無線伝送装置間でのPDHデータ信号列の伝送を確保した無線伝送装置及び無線伝送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の無線伝送装置は、PDHデータ信号列を他の無線伝送装置との間で伝送するための装置間ケーブルの接続状態を切り替えるためのクロスコネクト回路と、当該装置間ケーブルを経由する信号伝送の障害を検出するケーブル監視回路とを備え、クロスコネクト回路はケーブル監視回路から出力される障害情報に基づいて装置間ケーブルの接続状態を切り替え可能にしたことを特徴とする。
【0010】
特に、本発明の無線伝送装置においては、装置間ケーブルを介して他の無線伝送装置に接続され、PDHデータ信号列の装置間フレーム多重と抽出を行う装置間多重抽出回路と、設定情報に基づいて装置間多重抽出回路に対する接続状態を切り替えるクロスコネクト回路と、装置間ケーブルを経由しての信号伝送の障害を検出するケーブル監視回路とを備え、クロスコネクト回路は前記ケーブル監視回路から出力される障害情報に基づいて装置間フレーム多重抽出回路の接続を切り替え可能に構成することが好ましい。
【0011】
本発明の無線伝送システムは、本発明にかかる無線伝送装置を複数基備え、これら複数基の無線伝送装置をメッシュ状に配設した装置間ケーブルにより相互に接続し、いずれかの装置間ケーブルを経由してPDHデータ信号列の伝送が不能になったときに、当該装置間ケーブルを迂回する他の装置間ケーブル及びこれに接続される他の無線伝送装置を経由してPDHデータ信号列の伝送を行うようにしたことを特徴とする。この場合において、他の無線伝送装置は1つの装置間ケーブルを経由して伝送されるPDHデータ信号列を自装置のクロスコネクト回路において折り返し、他の装置間ケーブルを経由して別の無線伝送装置に伝送する構成とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の無線伝送装置によれば、自装置に接続される装置間ケーブルを経由する信号伝送の障害をケーブル監視回路により監視し、障害が生じたときにクロスコネクト回路により装置間ケーブルの接続状態を切り替えるので、障害が生じた装置間ケーブルとは異なる他の装置間ケーブルを経由して信号伝送を行うことができ、PDHデータ信号列の伝送が確保される。また、PDHデータ信号列を装置間フレームデータ信号列に多重して伝送することにより、PDHデータ信号列がSDHデータ信号列の本数に制限されることがない。
【0013】
本発明の無線伝送システムによれば、複数の無線伝送装置を接続する装置間ケーブルをメッシュ状に配設していので、無線伝送装置や装置間ケーブルに障害が生じても障害に無関係な装置間ケーブルや無線伝送装置を経由してのPDHデータ信号列の伝送が確保される。特に、装置間ケーブルや無線伝送装置を必要に応じて増設した場合でも他の無線伝送装置や装置間ケーブルを変更する必要がなく、好適なシステムが自由に構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の無線伝送装置は、次のように構成することが好ましい。
(1)装置間多重抽出回路はPDHデータ信号の装置間フレーム多重を行う装置間フレーム多重回路と装置間フレーム抽出を行う装置間フレーム抽出回路を備え、クロスコネクト回路はこれら装置間フレーム多重回路と装置間フレーム抽出回路を選択して装置間ケーブル及び無線系回路に接続する。
(2)クロスコネクト回路は、ケーブル監視回路からの障害情報に基づいて障害のある装置間ケーブルを障害のない装置間ケーブルに切り替えて接続する。
(3)クロスコネクト回路はPDHデータ信号列を伝送する有線伝送路に接続される。
(4)クロスコネクト回路は装置間多重抽出回路を無線系回路と有線伝送路の少なくとも一方を選択して接続する。
(5)クロスコネクト回路と有線伝送路との間にSDH信号をSDHフレームデータ信号列に変換するインタフェース回路と、SDHフレームデータ信号列に対してPDHデータ信号列を多重抽出するSDH多重抽出回路を備える。
(6)ケーブル監視回路は、装置間ケーブルの断線等のケーブル自体の障害と、当該装置間ケーブルに接続される他の無線伝送装置の障害の少なくとも一方を検出して障害情報を出力する。
【実施例1】
【0015】
次に、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の実施例1の無線伝送システムのブロック図であり、ここでは説明を判り易くするために3基の無線伝送装置A,B,Cでシステムを構築した例を示している。これらの無線伝送装置A,B,Cは後述するようにメッシュ状に配設された装置間ケーブル11,12,13を介して相互にケーブル接続されている。無線伝送装置Aは無線伝送系として変復調回路A1,A4と無線多重抽出回路A2,A3を備えている。これら無線多重抽出回路A2,A3はクロスコネクト回路A5にそれぞれ接続される。このクロスコネクト回路A5は有線伝送路A10に接続される一方で、装置間多重抽出回路A6に接続され、この装置間多重抽出回路A6を介して他の無線伝送装置B,Cに対して後述する装置間ケーブル11,12によりケーブル接続されている。また、無線伝送装置Aはこれら装置間ケーブル11,12の障害を監視するためのケーブル監視回路A7を備えている。
【0016】
変復調回路A1は無線伝送路A8から入力される無線受信信号a801を復調し、フレーム同期を確立して無線受信フレームデータ信号列a101を無線多重抽出回路A2へ出力する。また、変復調回路A1は無線多重抽出回路A2から入力される無線送信フレームデータ信号列a202に変調をかけて無線送信信号a102を無線伝送路A8へ出力する。同様に、変復調回路A4は無線伝送路A9から入力される無線受信信号a901を復調し、フレーム同期を確立して無線受信フレームデータ信号列a401を無線多重抽出回路A3へ出力する。また、変復調回路A4は無線多重抽出回路A3から入力される無線送信フレームデータ信号列a302に変調をかけて無線送信信号a402を無線伝送路A9へ出力する。
【0017】
無線多重抽出回路A2は無線受信フレームデータ信号列a101に多重されている複数のPDHデータ信号列a201を抽出しクロスコネクト回路A5へ出力する。また、クロスコネクト回路A5から入力される切り替え後の複数のPDHデータ信号列a502を無線フレームに多重し、無線送信フレームデータ信号列a202を変復調回路A1に出力する。同様に、無線多重抽出回路A3は無線受信フレームデータ信号列a401に多重されている複数のPDHデータ信号列a301を抽出しクロスコネクト回路A5へ出力する。また、クロスコネクト回路A5から入力される切り替え後の複数のPDHデータ信号列a503を無線フレームに多重し、無線送信フレームデータ信号列a302を変復調回路A4に出力する。
【0018】
クロスコネクト回路A5は無線多重抽出回路A2,A3と有線伝送路A10から入力される複数のPDHデータ信号列a201,a301,a1001、及び装置間多重抽出回路A6から入力される複数のPDHデータ信号列a601を外部から入力されるユーザ設定情報a1101に基づいてクロスコネクトし、クロスコネクト後の複数のPDHデータ信号列a502,a503,a504,a501を無線多重抽出回路A2,A3、有線伝送路A10及び装置間多重抽出回路A6へ出力する。このクロスコネクト回路A5はケーブル監視回路A7から入力される入力断情報a701に基づいても同様のクロスコネクト動作が可能である。
【0019】
装置間多重抽出回路A6は、図1には表れないが図2を参照して後述するように、複数の装置間フレーム多重回路と装置間フレーム抽出回路で構成されており、装置間フレーム多重回路はクロスコネクト回路A5から入力されるPDHデータ信号列a501を装置AB間フレームデータ信号列a603と装置AC間フレームデータ信号列a602に多重し、装置間ケーブル11,12経由で無線伝送装置B及び無線伝送装置Cへ出力する。また、装置間フレーム抽出回路は無線伝送装置B,Cの装置間多重抽出回路B6,C6から入力される装置BA間フレームデータ信号列b603、装置CA間フレームデータ信号列c602に多重されている複数のPDHデータ信号列を抽出し、クロスコネクト回路A5へ出力する。
【0020】
ケーブル監視回路A7は装置間ケーブル11,12の障害を監視するために、ここでは装置BA間フレームデータ信号列b603および装置CA間フレームデータ信号列c602の信号断検出を行う。そして障害監視信号としての入力断情報a701を障害情報としてクロスコネクト回路A5へ出力し、クロスコネクト回路A5の接続状態を切り替えるようにする。すなわち、クロスコネクト回路A5は前記したユーザ設定情報a1101とこの障害情報a701とによって切替動作が行われることになる。
【0021】
無線伝送装置B,Cについても無線伝送装置Aと同じ構成であるので、同一部分には同一数値の符号を付してあり、各部の説明は省略する。その上で、無線伝送装置A,B,Cはそれぞれの装置間多重抽出回路A6,B6,C6を介して相互に装置間ケーブル11,12,13でケーブル接続されている。このとき、図2にも示されるように、一方の無線伝送装置の装置間多重抽出回路内の装置間フレーム多重回路は対向する無線伝送装置の装置間多重抽出回路内の装置間フレーム抽出回路に接続するように接続が行われる。ここで、無線伝送装置Aのケーブル監視回路A7は装置間ケーブル11,12の障害を監視することは前記した通りであるが、無線伝送装置Bのケーブル監視回路B7は装置間ケーブル11,13の障害を監視し、無線伝送装置Cのケーブル監視回路C7は装置間ケーブル12,13の障害を監視することが可能とされている。
【0022】
次に実施例1の無線伝送システムの動作を説明する。無線伝送装置Aについてみると、図1に示したように、変復調回路A1は無線伝送路A8経由で入力される無線受信信号a801に対して復調処理、無線フレーム同期処理を行った後、無線受信フレームデータ信号列a101を無線多重抽出回路A2へ出力する。無線多重抽出回路A2は無線受信フレームデータ信号列a101に多重されている複数のPDHデータ信号列a201を抽出しクロスコネクト回路A5へ出力する。このときケーブル監視回路A7からケーブル障害が検出されていないときにはクロスコネクト回路A5はユーザ設定情報a1101に従って伝送路方向を切り替える。すなわち、クロスコネクト回路A5は無線多重抽出回路A2から入力される複数のPDHデータ信号列a201をユーザが指定する伝送路方向に切り替え、切り替え後の複数のPDHデータ信号列a501,a503,a504を出力する。
【0023】
図2は無線伝送装置A,B,C間を装置間ケーブル11,12,13を通して伝送するPDHデータ信号列の流れを示す要部のブロック図であり、この図を参照して無線伝送システムの動作を詳細に説明する。クロスコネクト回路A5において無線伝送路A8方向から伝送された複数のPDHデータ信号列a201のうち、ユーザ設定情報a1101により有線伝送路A10方向へ伝送するPDHデータ信号列は切り替え後の複数のPDHデータ信号列a504の指定したPDHデータ信号列に接続する。また、前記複数のPDHデータ信号列a201のうち、ユーザ設定情報a1101により無線伝送路A8,A9方向に伝送するPDHデータ信号列は切り替え後の複数のPDHデータ信号列a502,a503の指定したPDHデータ信号列に接続し、無線多重抽出回路A2,A3において無線送信フレームデータ信号列に多重後、変復調回路A1,A4において変調をおこなって無線伝送路A8,A9へ出力する。さらに、前記複数のPDHデータ信号列a201のうち、無線伝送装置Bの無線伝送路B8,B9方向に伝送する複数のPDHデータ信号列は装置間多重抽出回路A6に備えた装置AB間フレーム多重回路A61へ、無線伝送装置Cの無線伝送路C8,C9方向に伝送する複数のPDHデータ信号列は装置AC間フレーム多重回路A62へ出力する。
【0024】
ここで、図2及び図3(a)の太実線で示すように、装置間ケーブル11を経由して無線伝送装置Aから無線伝送装置Bに伝送を行う場合には、前記無線伝送装置B方向に伝送する複数のPDHデータ信号列は装置AB間フレーム多重回路A61で装置AB間フレームデータ信号列に多重後、装置間ケーブル11経由で無線伝送装置Bに伝送される。無線伝送装置Bは装置間多重抽出回路B6に備えた装置AB間フレーム抽出回路B61において装置AB間フレームデータ信号列a603に多重されている複数のPDHデータ信号列を抽出しクロスコネクト回路B5へ出力する。クロスコネクト回路B5は複数のPDHデータ信号列をユーザ設定情報b1101に従って切り替えることにより無線伝送路B8,B9もしくは有線伝送路B10方向へ伝送する。あるいは、クロスコネクト回路B5は無線伝送装置Bの自身の装置間多重抽出回路B6の装置BC間フレーム多重回路(図示せず)に伝送することも可能である。
【0025】
同様に図2及び図3(a)の破線で示すように、装置間ケーブル12を経由して無線伝送装置Aから無線伝送装置Cに伝送を行う場合には、無線伝送装置C方向に伝送する複数のPDHデータ信号列は装置AC間フレーム多重回路A62において装置AC間フレームデータ信号列に多重後、ケーブル12経由で無線伝送装置Cに伝送される。無線伝送装置Cは装置間多重抽出回路C6に備えた装置AC間フレーム抽出回路C61において装置AC間フレームデータ信号列a602に多重されている複数のPDHデータ信号列を抽出し、クロスコネクト回路C5へ出力する。クロスコネクト回路C5は複数のPDHデータ信号列をユーザ設定情報c1101に従って切り替えることにより無線伝送路C8,C9もしくは有線伝送路C10方向へ伝送する。あるいは、クロスコネクト回路C5は無線伝送装置Cの自身の装置間多重抽出回路C6の装置AC間フレーム多重回路C62に伝送することも可能である。
【0026】
このようにして無線伝送路A8から伝送された複数のPDHデータ信号列をユーザが指定した任意の無線、有線伝送路に伝送することが可能となる。無線伝送路A9及び有線伝送路A10から任意の無線伝送路、有線伝送路へ複数のPDHデータ信号列を伝送する動作も前述の無線伝送路A8から任意の無線伝送路、有線伝送路へ複数のPDHデータ信号列を伝送する動作と同様である。無線伝送装置A,B,Cは同じ構成のため任意の無線伝送路、有線伝送路間における複数のPDHデータ信号列の伝送が可能となる。特に、無線伝送装置A,B,C間においてはSDH信号に多重することなくPDHデータ信号列を伝送することで、PDHデータ信号列がSDH信号に収容可能な本数に制限されることもない。
【0027】
次に障害発生時の動作について説明する。図3(b)に示すように、今無線伝送装置AとBを接続する装置間ケーブル11に断線等の障害が生じたものとすると、無線伝送装置AとB間の伝送は不可能になる。このとき、無線伝送装置Aのケーブル監視回路A7と無線伝送装置Bのケーブル監視回路B7はそれぞれ装置間ケーブル11の断線を検出し、その障害情報をそれぞれクロスコネクト回路A5とクロスコネクト回路B5に出力し、各クロスコネクト回路A5,B5を切り替える。クロスコネクト回路A5は装置間多重抽出回路A6の装置AC間フレーム多重回路A62に接続し、クロスコネクタ回路B5は装置間多重抽出回路B6の装置BC間フレーム抽出回路B62に接続する。
【0028】
これにより、無線伝送装置Aの装置AC間フレーム多重回路A62からのPDHデータ信号列は正常な装置間ケーブル12を経由して無線伝送装置Cの装置AC間フレーム抽出回路C61に伝送される。伝送された信号はクロスコネクト回路C5において自身の装置BC間フレーム多重回路C62に折り返され、ここから装置間ケーブル13により接続されている無線伝送装置Bの装置BC間フレーム抽出回路B62に伝送される。したがって、無線伝送装置Aの任意の無線、有線伝送路から無線伝送装置Bの任意の無線、有線伝送路へPDHデータ信号列を正常に伝送することが可能となる。
【0029】
このように、実施例1の無線伝送装置A,B,Cは装置間ケーブル11,12,13を経由する信号伝送の障害、ここでは各装置間ケーブル11,12,13の断線等の障害や、これら装置間ケーブルに接続される相手方の無線伝送装置における障害をケーブル監視回路A7,B7,C7により監視し、障害が生じたときにそれぞれのクロスコネクト回路A6,B6,C6により装置間ケーブル11,12,13につながる装置間多重抽出回路A5,B5,C5の接続状態、すなわち装置間多重抽出回路A5,B5,C5を構成している多重回路や抽出回路の相互接続や、これらと無線伝送路A8,A9,B8,B9,C8,C9や有線伝送路A10,B10,C10に対する接続を切り替えるので、障害が生じた装置間ケーブルとは異なる他の装置間ケーブルや無線伝送装置を経由して信号伝送を行うことができ、PDHデータ信号列の伝送を確保することができる。
【0030】
また、この無線伝送装置A,B,Cでは、装置間多重抽出回路A5,B5,C5の装置間フレーム多重回路でPDHデータ信号列を装置間フレームデータ信号列に多重して伝送し、伝送された装置間フレームデータ信号列を装置間多重抽出回路A5,B5,C5の装置間フレーム抽出回路でPDHデータ信号列を抽出することにより、図5に示したSDHデータ信号列に多重して伝送を行う従来技術のようにPDHデータ信号列がSDHデータ信号列の本数に制限されることがない。
【0031】
さらに、実施例1の無線伝送システムによれば、複数の無線伝送装置A,B,Cを接続する装置間ケーブル11,12,13をメッシュ状に配設していので、いずれかの無線伝送装置や装置間ケーブルに障害が生じても障害に無関係な装置間ケーブルや無線伝送装置を経由してのPDHデータ信号列の伝送が確保される。さらに、装置間ケーブルや無線伝送装置を必要に応じて増設した場合でも他の無線伝送装置や装置間ケーブルを変更する必要がなく、好適なシステムが自由に構築することができる。
【実施例2】
【0032】
図4は本発明の実施例2の無線伝送装置のブロック図であり、ここでは実施例1で説明した無線伝送装置Aに実施例2の構成を適用した構成を示している。無線伝送装置B,Cについては図示していないが同様の構成である。実施例2では、クロスコネクト回路A5と有線伝送路A10の間にSDH多重抽出回路A11とインタフェース回路A12を設けていることが特徴である。インタフェース回路A12は外部有線伝送路から入力されるSDH信号をSDHフレームデータ信号列に変換し、SDH多重抽出回路A11は前記SDHフレームデータ信号列から複数のPDHデータ信号列を抽出してクロスコネクト回路A5に出力する。また、SDH多重抽出回路A11においてクロスコネクト回路A5から入力される切り替え後の複数のPDHデータ信号列をSDHフレームデータ信号列に多重し、インタフェース回路A12でSDH信号に変換して有線伝送路A10へ出力する。
【0033】
このように、実施例2では、SDHフレームデータ信号列から複数のPDHデータ信号列を多重、分離する機能を設けることにより、任意の無線伝送路とSDHインタフェースを持つ有線伝送路間のPDHデータ信号列の伝送が可能となるという効果が得られる。各無線伝送装置A,B,Cを接続する装置間ケーブルにおける障害の発生に対しても各装置間でのPDHデータ信号列の伝送が可能であることは実施例1と同じである。
【0034】
なお、本発明において、以上説明した実施例では本発明の説明を簡略化するために3基の無線伝送装置A,B,Cで構成される無線伝送システムについて説明したが、4基以上の多数の無線伝送装置で構成される無線伝送システムについても本発明を同様に適用することができる。すなわち、多数の無線伝送装置を装置間ケーブルによりメッシュ状に接続し、各無線伝送装置に設けたケーブル障害監視回路により装置間ケーブルの障害を検出したときに、自装置のクロスコネクト回路により装置間多重抽出回路に対する接続状態を切り替えることにより、障害が生じた装置間ケーブルを迂回して目的の無線伝送装置へのPDH信号列の伝送を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施例1の無線伝送装置及び無線伝送システムの構成図である。
【図2】図1の要部の詳細ブロック図である。
【図3】実施例1の動作を説明するブロック図である。
【図4】実施例2の無線伝送装置のブロック図である。
【図5】従来の無線伝送装置の一例のブロック図である。
【符号の説明】
【0036】
A〜F 無線伝送装置
A1,B1,C1 変復調回路
A2,B2,C2 無線多重抽出回路
A3,B3,C3 無線多重抽出回路
A4,B4,C4 変復調回路
A5,B5,C5 クロスコネクト回路
A6,B6,C6 装置間多重抽出回路
A7,B7,C7 ケーブル監視回路
A8,B8,C8 無線伝送路
A9,B9,C9 無線伝送路
A10,B10,C10 有線伝送路
11,12,13 装置間ケーブル



【特許請求の範囲】
【請求項1】
PDH(Plesiochronous Digital Hierarchy )データ信号列を無線フレームデータ信号列に多重、分離して伝送する無線伝送装置において、前記PDHデータ信号列を他の無線伝送装置との間で伝送するための装置間ケーブルの接続状態を切り替えるためのクロスコネクト回路と、前記装置間ケーブルを経由する信号伝送の障害を検出するケーブル監視回路とを備え、前記クロスコネクト回路は前記ケーブル監視回路から出力される障害情報に基づいて前記装置間ケーブルの接続状態を切り替え可能にしたことを特徴とする無線伝送装置。
【請求項2】
PDHデータ信号列を無線フレームデータ信号列に多重、分離して伝送する無線系回路を備える無線伝送装置において、装置間ケーブルを介して他の無線伝送装置に接続され、PDHデータ信号列の装置間フレーム多重と抽出を行う装置間多重抽出回路と、設定情報に基づいて前記装置間多重抽出回路に対する接続状態を切り替えるクロスコネクト回路と、前記装置間ケーブルを経由しての信号伝送の障害を検出するケーブル監視回路とを備え、前記クロスコネクト回路は前記ケーブル監視回路から出力される障害情報に基づいて前記装置間フレーム多重抽出回路の接続を切り替え可能にしたことを特徴とする無線伝送装置。
【請求項3】
前記装置間多重抽出回路は前記PDHデータ信号の装置間フレーム多重を行う装置間フレーム多重回路と装置間フレーム抽出を行う装置間フレーム抽出回路を備え、前記クロスコネクト回路はこれら装置間フレーム多重回路と装置間フレーム抽出回路を選択して前記装置間ケーブル及び前記無線系回路に接続することを特徴とする請求項2に記載の無線伝送装置。
【請求項4】
前記クロスコネクト回路は、前記ケーブル監視回路からの障害情報に基づいて障害のある装置間ケーブルを障害のない装置間ケーブルに切り替えて接続することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の無線伝送装置。
【請求項5】
前記クロスコネクト回路はPDHデータ信号列を伝送する有線伝送路に接続されていることを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載の無線伝送装置。
【請求項6】
前記クロスコネクト回路は前記装置間多重抽出回路を前記無線系回路と有線伝送路の少なくとも一方を選択して接続することを特徴とする請求項5に記載の無線伝送装置。
【請求項7】
前記クロスコネクタ回路と前記有線伝送路との間にSDH(Synchronous Digital Hierarchy) 信号をSDHフレームデータ信号列に変換するインタフェース回路と、SDHフレームデータ信号列に対してPDHデータ信号列を多重抽出するSDH多重抽出回路を備えることを特徴とする請求項5又は6に記載の無線伝送装置。
【請求項8】
前記ケーブル監視回路は、装置間ケーブルの断線等のケーブル自体の障害と、当該装置間ケーブルに接続される他の無線伝送装置の障害の少なくとも一方を検出して障害情報を出力することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の無線伝送装置。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれかに記載の無線伝送装置を複数基備え、これら複数基の無線伝送装置をメッシュ状に配設した装置間ケーブルにより相互に接続し、いずれかの装置間ケーブルを経由して前記PDHデータ信号列の伝送が不能になったときに、当該装置間ケーブルを迂回する他の装置間ケーブル及びこれに接続される他の無線伝送装置を経由して前記PDHデータ信号列の伝送を行うようにしたことを特徴とする無線伝送システム。
【請求項10】
前記他の無線伝送装置は1つの装置間ケーブルを経由して伝送されるPDHデータ信号列を自装置のクロスコネクト回路において折り返し、他の装置間ケーブルを経由して別の無線伝送装置に伝送することを特徴とする請求項9に記載の無線伝送システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−219684(P2008−219684A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−56561(P2007−56561)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】