説明

無線周波信号のトラッキング方法

本発明は、受信機が比較的高速で移動するときに、送信機のトラックを維持し、送信機に同調し続ける方法に関する。高速で移動する輸送手段に運ばれた電子装置(10)は、ドップラー偏移によって周波数の偏移を受けうる。本発明は、電子装置(10)の加速度測定手段によって、そのようなドップラー偏移を考慮した方法を提供する。本発明は、特に、衛星の再トラッキングのパワーと時間を消費する、GPS受信機(20)などを含む電子装置(10)に利点がある。本発明は、更に、前記方法を実行するように構成された電子装置(10)とプロセッサ(30)に前記方法を実行させるように構成されたコンピュータプログラムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、受信手段を備える電子装置によって無線周波信号をトラッキングする方法において、前記無線周波信号は、1つ以上の周波数を持つ周波数帯で送信手段から送信され、前記無線周波信号のトラッキングは、前記受信手段内で前記周波数帯に同調することによって初期化される方法に関する。本発明は、更に、周波数帯に同調することによって受信無線周波信号に対して動作可能な受信手段と、加速度測定デバイスと、プロセッサとを備える電子装置に関する。更に、本発明は、プロセッサに本発明に係る方法を実行させるコンピュータプログラムコード手段を備えるコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
電磁場の周波数と波長は、相対的な動きによって影響されることがよく知られている。これはドップラー効果として知られている。電磁信号の送信機と受信機が互いに関連して移動している場合には、ドップラー効果は、受信信号の振動数と波長における変動を引き起こす場合がある。従って、送信機に同調した受信機は、ドップラー効果によって引き起こされた周波数偏移によって周波数が合わなくなりうる。これが問題となるのは、送信機と受信機の相対的な動きが非常に高速である場合に限られる。送信機は、例えば、地面の上に配置されたり、例えば、軌道上の衛星に配置されたりして、静止状態となりうる。しかしながら、衛星の速度は、比較的緩やかに通常は変化するため、ドップラー効果によって衛星から送信される信号の周波数偏移は、実質的に一定である。これに対し、例えば、飛行機、車又は高速の列車では、周波数又は周波数帯での送信機から、すなわち同調された、受信機トラッキング信号は、ドップラー効果のために高速又は高加速度によって送信機のトラッキングを失う場合がある。これは、送信機の再トラッキング又は受信機の送信機への再同調が比較的時間を浪費し及び/又は電力を消費しうるという点で、受信機のユーザにとって不利である。
【発明の開示】
【0003】
発明の概要
従って、本発明の目的は、送信機から送信されるトラッキング信号の改善された方法を提供し、この方法によって、受信機と送信機の相対的な動きにより再トラッキング又は受信機の再同調が必要とならないようにする。
【0004】
本目的は、最初の段落(opening paragraph)に係る方法が、前記電子装置内の加速度測定デバイスによって前記電子装置の加速度をモニタする工程と、前記モニタされた加速度に基づいて前記受信手段が同調された前記周波数帯を変更する工程と、を更に含むことを特徴とする場合に達成される。これにより、受信手段を含む電子装置は、受信手段と送信手段との間で相対的な運動又は相対的な運動における変化によって発生する受信無線周波信号のドップラー偏移を補うことができる。典型的には、受信機は、信号状態が不十分であるときに、周波数耐性(周波数幅)を狭くすること及び/又は信号処理時間を増加させることによって、これに対処するように構成されうる。前者によって、より少ないデータを処理するようにし、後者によって、より長い時間を与えて受信したデータを処理する。いずれの場合でも、受信機は、受信手段と送信手段との間の相対的な動きにおける素早い変化に非常に敏感である。受信手段の加速度をモニタする加速度測定デバイスを用い、モニタされた加速度に基づいて前記受信手段が同調された前記周波数帯を変更することは、信号状態が良くないときに、この感度の増加に特に有効である。なお、「加速度」という表現は、加速度がゼロの場合をも含むものとして用いられる。同様に、受信機が同調される周波数帯の変更が無くてもよい。例えば、加速度が実質的にゼロであるか又は所定の閾値以下である場合には、受信手段が同調される周波数帯が実質的に変化しないように、周波数帯の変更は同一(identity)である。
【0005】
好適には、本方法は、前記加速度測定デバイスでモニタされた前記電子装置の加速度に起因する前記周波数帯で受信した周波数における変化量を決定し、前記変化量が所定の閾値を超える場合だけ、前記受信手段が同調された前記周波数帯を変更する工程を実行する工程を更に含む。これによって、受信手段は、電子装置の速度又は加速度が、送信手段のトラッキングから離れることを防止するために再同調を要求するときだけ、再同調される。閾値は、周波数又は絶対周波数値(absolute frequency value)の割合として表すことができる。
【0006】
好適には、本発明に係る方法は、前記電子装置内の前記受信手段は、UHF帯で信号を受信するように構成されていることを特徴とする。UHF帯は、衛星測位システムなどの特定の目的において非常に注目されている無線周波帯の一部である。
【0007】
本発明の方法は、受信手段が、例えば、GPS(全世界測位システム)、GLONASS(全世界衛星測位システム)、GNSS(全地球的航法衛星システム)/ガリレオ又は任意の他の現在又は将来の衛星ナビゲーションシステムなどの衛星測位システムの衛星からの測位信号を受信するように構成されているときに、特に利点がある。典型的には、衛星測位システムからのそのような位置信号は、地球の周りの軌道を回る衛星から送られる.更に、本発明の実施形態は、GPS衛星を参照して説明されるが、擬似衛星(pseudolites)又は衛星と擬似衛星との組みあわせを用いた測位システムにも適用されることが分かる。擬似衛星は、一般的にはGPS時間と連動して、L−band帯の搬送波信号で変調される従来の衛星を発信源としたGPS信号と同様の信号を送信する地上の送信機である。擬似衛星は、周回GPS衛星からのGPS信号が利用可能でない可能性がある、例えば、トンネル、鉱山、建物若しくは囲われた場所又はDGPS(衛星利用測位システム)などの測位信号の修正として役立ちうる。ここでは、「衛星」という表現は、擬似衛星又は擬似衛星と同等のものを含み、「GPS」という表現は、擬似衛星又は擬似衛星と同等のものからのGPSと同等の信号を含むことを意図している。衛星から受信された位置信号は、好適には、プロセッサ又はそれと同様のものによって、電子装置で処理される必要があることが分かる。
【0008】
好適には、本発明に係る方法において、前記受信手段が同調された前記周波数帯の前記変更は、前記周波数帯の周波数に係数を掛け算することである。これにより、簡単な方法で、受信手段が同調される周波数帯の変更を実行することができる。係数は、実験的に求めることができるが、計算によっても求めることができる。
【0009】
好適には、前記係数はドップラー偏移係数である。この係数は、例えば、受信手段と送信手段との間の相対速度の関数として又は受信手段の速度の関数として、周知の方法で計算することができる。電子装置の速度がゼロの場合には、ドップラー偏移係数は1に等しい。受信機が送信機に接近している場合には、静止した受信手段での送信信号の受信と比べて、受信機で受けた受信信号の周波数が増加し、その結果、ドップラー偏移係数は1以上となる。同様に、受信機が送信機から遠ざかっている場合には、ドップラー偏移係数は1(ただし、0以上である)よりも小さい。
【0010】
本発明の方法が、受信した測位信号によって前記電子装置の加速度を決定する工程と、前記受信した測位信号によって決定された前記加速度によって前記加速度測定デバイスの測定を較正する工程と、含む場合に、更に有利である。これにより、簡単な方法で加速度測定デバイスを較正する方法が具現される。
【0011】
本発明の好適な実施の形態によれば、本方法は、前記受信手段で受信した測位信号によって前記電子装置の加速度を決定する工程を更に含み、受信した測位信号によって決定された前記加速度及び前記加速度測定デバイスによってモニタされた前記較正に基づいて、前記受信手段が同調された前記周波数帯の前記変更が行われる。前記モニタされた加速度が前記決定された加速度と異なる場合には、前記変更は、前記決定された加速度又は前記モニタされた加速度のいずれかに基づいて、実行されうる。そのような場合の一例は、受信機が、例えば、アップデートされた時間データが電子装置の位置の変化を示すことが可能な移動通信網から、アップデート時間データを受信し、その結果として、所定の加速度で変化させる場合である。従って、電子装置は、電子装置の加速が実際に行われたか否かを特定し、電子装置は、受信手段がそれに応じて従って同調される周波数帯の変更を行うことができる。
【0012】
本発明は、更に、周波数帯に同調することによって受信無線周波信号に対して動作可能な受信手段と、加速度測定デバイスと、プロセッサとを備える電子装置であって、前記加速度測定デバイスは、前記電子装置の前記加速度をモニタするように構成され、前記プロセッサは、前記モニタされた加速度に基づいて前記受信手段が同調された前記周波数帯を変更するように構成されていることを特徴とする電子装置に関する。これにより、電子装置は、受信手段と送信手段との間の相対的な動きにおいて、相対的な動き又は変化によって引き起こされる無線周波信号のドップラー偏移を補償することができる。
【0013】
好適には、前記プロセッサは、前記加速度測定デバイスでモニタされた前記電子装置の加速度に起因する前記周波数帯で受信した周波数における変化量を決定するよう構成され、前記変化量が所定の閾値を超える場合だけ、前記受信手段が同調された前記周波数帯を変更する。これによって、受信手段は、電子装置の速度又は加速度が、送信手段のトラッキングから離れることを防止するために再同調を要求するときだけ、再同調される。閾値は、周波数又は絶対周波数値(absolute frequency value)の割合として表すことができる。
【0014】
好適には、前記電子装置内の前記受信手段は、衛星測位システムなどの特定の目的において非常に注目されている無線周波帯の一部であるUHF帯で信号を受信するように構成されている。
【0015】
本発明の電子装置の実施形態によれば、前記電子装置内の前記受信手段は、衛星からの測位信号を受信するように構成されている。好適には、前記電子装置内の受信手段は、GPS受信機、GLONASS受信機、GNSS/ガリレオ又受信機(以下「GPS受信機」という表現は、上記のリストのいずれかの受信機を含むことを意味する。)からなるリストから選択される。携帯型GPS受信機では、GPS受信機の任意の加速度をモニタする一体化された加速度測定手段を使用することがよく知られている。これは、GPS衛星からの信号が十分に得られない可能性がある、例えば、高い建物がある都市、山地などでGPS受信機の位置を決定するために用いられる。しかしながら、加速度測定手段と一体化されたこれらのGPS受信機は、加速度によってGPS衛星信号の受信周波数のドップラー偏移によって、GPS衛星信号のトラッキングを失う場合があるとい問題がある。従って、本発明の上述の実施形態は、加速度によってGPS受信機のGPS衛星信号を失うという上記の問題を解決するものである。典型的には、GPS受信機は、異なるいわゆるチャンネル、可能であれば異なる周波数で、一度に複数位置の衛星から信号を受信するように構成されている。従って、本発明の電子装置は、実質的に同時にそのような各チャンネルの周波数を変更するように構成されうる。
【0016】
他の好適な実施形態では、前記受信手段が同調された前記周波数帯の前記変更は、前記周波数帯の周波数に係数を掛け算することである。これにより、簡単な方法で受信手段が同調される周波数帯の変更を実行することができる。係数は、実験的に求めることができるが、計算によっても求めることができる。
【0017】
好適には、前記係数はドップラー偏移係数である。この係数は、例えば、受信手段と送信手段との間の相対速度の関数として又は受信手段の速度の関数として、周知の方法で計算することができる。電子装置の速度がゼロの場合には、ドップラー偏移係数は1に等しい。受信機が送信機に接近している場合には、静止した受信手段での送信信号の受信と比べて、受信機で受けた受信信号の周波数が増加し、その結果、ドップラー偏移係数は1以上となる。同様に、受信機が送信機から遠ざかっている場合には、ドップラー偏移係数は1(ただし、0以上である)よりも小さい。
【0018】
本発明の好適な実施形態では、前記受信手段で受信した測位信号によって前記電子装置の加速度を決定し、前記受信した測位信号によって決定された前記加速度及び前記加速度測定デバイスによってモニタされた前記加速度に基づいて前記周波数帯の前記変更を実行するように構成されている。これにより、簡単な方法で加速度測定デバイスを較正する方法を具現できる。
【0019】
本発明の他の好適な実施形態では、前記電子装置は、前記受信手段で受信した測位信号によって前記電子装置の加速度を決定する手段と、前記受信した測位信号によって決定された前記加速度及び前記加速度測定デバイスによってモニタされた前記加速度に基づいて前記周波数帯の前記変更を実行する手段と、を更に備える。前記モニタされた加速度が前記決定された加速度と異なる場合には、前記変更は、前記決定された加速度又は前記モニタされた加速度のいずれかに基づいて、実行されうる。そのような場合の一例は、受信機が、例えば、アップデートされた時間データが電子装置の位置の変化を示すことが可能な移動通信網から、アップデート時間データを受信し、その結果として、所定の加速度で変化させる場合である。従って、電子装置は、電子装置の加速が実際に行われたか否かを特定し、電子装置は、受信手段がそれに応じて従って同調される周波数帯の変更を行うことができる。
【0020】
本発明の他の好適な実施の形態では、前記電子装置は、携帯電話内に含まれている。これにより、拡張されたオプションを持つ携帯電話が具現できる。電子装置は、飛行機、車、ボートなどの乗り物に搭載可能な任意の電子装置、デバイス又は装置、高度自動機能電話、若しくは、携帯用GPS受信機などの携帯用機器/ポータブル機器(handheld/portable)、又は、移動無線端末、移動電話、ページャ、コミュニケータ(例えば、電子手帳、高度自動機能電話など)などのGPS受信機を備える任意の電子装置であってもよい。前記電子装置とコンピュータプログラムは、同じ理由で上述の方法と同じ利点を有する。更に、受信手段が1つの周波数帯に同調される場合、すなわち、一度に1つ以上のチャンネルに同行される場合には、これに本発明は限定されないが、前記方法は各周波数帯/チャンネルで実行されうる。
【0021】
本説明と請求項において、「同調する」という表現は、受信機を周波数又は周波数帯に合わせる動作を含むことを意味し、「トラック(track)」という表現は、所望の周波数又は周波数帯で信号を実際に受信することを示すことを意味する。加速度測定デバイスは、加速度計、g−検出変換器(g−sensor)又は加速度が正確に決定可能な任意の他の手段であってもよい。「周波数帯」という表現は、1つの特定の周波数に加えて、隣接した周波数帯域(a band of adjacent frequencies)も含むことを意味する。「モニタされた加速度」という表現は、「電子装置の加速度測定デバイスによって決定された加速度」と同様の意味であり、「決定された加速度」という表現は、電子装置の受信手段によって受信された測位信号によって決定された電子装置の加速度と同様の意味である。
【0022】
「含む(comprise/comprises)」という表現が本明細書で用いられる場合には、言及された特徴、整数、工程又は構成要素を特定するときに用いられるが、1つ又は複数の他の特徴、整数、工程若しくは構成要素又はその組合せの存在又は付加を排除しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、図面を参照して、好適な実施の形態と関連して以下に詳細に説明する。
実施形態の詳細な説明
図1は、本発明の実施形態に係る方法100のフローチャートを示す図である。本方法は、ステップ110で始まる。ステップ120では、受信機は、ある周波数又は周波数帯域に同調される。これらの周波数又は周波数帯域は、予め定められたものであってもよいが、必ずしもその必要はない。従って、方法100は、所定の周波数で信号をトラックすること、及び/又は、周波数帯の信号を探すこと、並びに、所望の信号が送信される周波数にロックすることに適用されうる。上記の周波数は、無線周波数帯(radio frequency band)内の任意の周波数、すなわち約10〜約1011Hzの間の任意の周波数であってもよい。このような周波数の一例としては、88〜108MHzの間の周波数のFM無線信号(FM radio signals)、535〜1700kHzの間の周波数のAM無線信号(AM radio signals)、又は約1227MHz及び約1575MHzの周波数で送信されたGPS信号が挙げられる。典型的には、方法100のこのステップ120は、所望の周波数で信号がトラックされるまで、初めに1回又は数回行われるだけであり、その後、ステップ120は、受信機が同調される周波数又は周波数帯が変更されるごとに行われるだけある。
【0024】
方法100は、ステップ130に進む。ステップ130では、加速度測定デバイスが、受信機に接続されるか又は通信可能となっており、受信機の任意の加速度をモニタする。この受信機の加速のモニタリングは、受けた(experienced)ドップラー偏移の計算を可能とする。理論上、受信機が移動しているときはいつでも、このような受信周波数のドップラー偏移が発生するであろう。しかしながら、速度を超える受信機の速度になって初めて、ドップラー偏移は、受けた(experienced)受信周波数に影響を及ぼすだろう。それにもかかわらず、そのような速度は、飛行機(board of aeroplanes)、高速列車及び高速で運転している車で受けることがある。好適には、ステップ130は、継続的に又は非常に短い時間間隔で実行されるため、受信機の任意の加速をとらえて、考慮に入れることができる。
【0025】
方法100のステップ140では、受信機が同調される周波数帯は、受信した周波数又は周波数帯で受けたドップラー偏移に対応して変更される。この変更は、好適には、ある周波数で送信される所望の信号をトラックするために変更された周波数に受信機が同調されるように、受信機が同調される1つ又は複数の周波数に掛け算される係数(a factor)である。受信機が送信機に接近している場合には、受信機で受ける受信信号の周波数は、静止した受信機で受信した信号の受信状態(reception)と比べて増加され、その結果、上述の係数は1以上となる。同様に、受信機が送信機から遠ざかっている場合には、上述の係数は1よりも小さい。この係数は、例えば、相対論として周知の理論に従って計算されたドップラー偏移係数である。
【0026】
ステップ140における周波数帯の変更に続いて、所望の信号のトラックを維持するように方法100のステップ120が繰り返され、その後、好適には、受信機がONされるか又は受信機の動作が可能である限り、ステップ130及び140が再び実行される。従って、方法100は、受信機を備える電子装置の機能又はアプリケーションプログラムであってもよく、その機能はユーザの要求に応じてオン/オフされうる。しかしながら、受信機が移動することが予想されるときはいつでも、方法100の使用はパワーと時間の節約になるだろう。これは、受信機が、信号がトラックされる可能性がある周波数にドップラー偏移が影響を及ぼすときでさえ、ある周波数で送信される信号をトラックし続けるからである。方法100は、典型的には、受信機又はこの方法を実行する受信機の機能がオフされるときはいつでも、ステップ150で終了する。
【0027】
図2は、本発明の他の実施形態に係る他の方法200のフローチャートを示す図である。方法200のステップの一部は、上述した方法100のステップの一部と同じである。これらのステップは、ごく簡潔に説明する。
【0028】
方法200は、ステップ210で始まる。ステップ220では、受信機は、ある周波数又は周波数帯域に同調される。これらの周波数又は周波数帯域は、予め定められたものであってもよいが、必ずしもその必要はない。従って、方法200は、所定の周波数で信号をトラックすること、及び/又は、周波数帯の信号を探すこと、並びに、所望の信号が送信される周波数にロックすることに適用されうる。上記の周波数は、無線周波数帯(radio frequency band)内の任意の周波数であってもよい。典型的には、方法200のこのステップ220は、所望の周波数で信号がトラックされるまで、初めに1回又は数回行われるだけであり、その後、ステップ220は、受信機が同調される周波数又は周波数帯が変更されるごとに行われるだけある。
【0029】
方法200は、ステップ230に進む。ステップ230では、図1に関して上述したように、加速度測定デバイスが、受信機に接続されるか又は通信可能となっており、受信機の任意の加速度をモニタする。好適には、ステップ130は、継続的に又は非常に短い時間間隔で実行されるため、受信機の任意の加速をとらえて、考慮に入れることができる。
【0030】
方法200のステップ240では、受信機の加速度又は速度によって、受信機が同調される受信機からの送信信号の周波数の任意の変動が決定される。ステップ250では、ステップ240で決される周波数変動が閾値と比較される。周波数変動が上述の閾値と等しいか又はこれを超える場合には、方法200のフローは、ステップ260に進み、そうでなければフローはステップ230に戻る。ステップ260では、受信機が同調される周波数帯は、方法100のステップ140に関して上述したように、受信した周波数又は周波数帯で受けたドップラー偏移に対応して変更される。
【0031】
ステップ260における周波数帯の変更に続いて、所望の信号のトラックを維持するように方法200のステップ220が繰り返され、その後、好適には、受信機がONされるか又は受信機の動作が可能である限り、その後のステップを継続する。従って、方法200は、受信機を備える電子装置の機能又はアプリケーションプログラムであってもよく、その機能はユーザの要求に応じてオン/オフされうる。しかしながら、受信機が移動することが予想されるときはいつでも、方法200の使用はパワーと時間の節約になるだろう。これは、受信機が、信号がトラックされる可能性がある周波数にドップラー偏移が影響を及ぼすときでさえ、ある周波数で送信される信号をトラックし続けるからである。方法100は、典型的には、受信機又はこの方法を実行する受信機の機能がオフされるときはいつでも、ステップ270で終了する。
【0032】
図3は、本発明に係る方法を実行するように構成された例示的な電子装置10を示す図である。電子装置10は、GPS受信機20と、プロセッサ30と、加速度計40と、ディスプレイ50とを備える。本説明では、GPS受信機が使用されたが、GLONASS、GNSS/ガリレオ(Galileo)又は任意の他の現在又は将来の衛星ナビゲーションシステムなどのナビゲーション衛星システムからの測位信号の任意の受信機を用いることができる。電子装置10は、飛行機、車、ボートなどの乗り物に搭載可能な任意の電子装置、デバイス又は装置、高度自動機能電話、若しくは、携帯用GPS受信機などの携帯用機器/ポータブル機器(handheld/portable)、又は、移動無線端末、移動電話、ページャ、コミュニケータ(例えば、電子手帳、高度自動機能電話など)などのGPS受信機を備える移動局であってもよい。図3は、本発明を説明するために必要である電子装置10の構成要素を示しているだけである。
【0033】
GPS受信機20は、GPSの衛星からのGPS信号の受信を実行するように構成されている。衛星からの民間のGPS信号は、典型的には、1575.42MHzの周波数で送信されるため、受信機は、GPS信号を受信するためにこの周波数に同調される。しかしながら、GPS受信機は、GPS信号が送信される任意の周波数に同調されうる。
【0034】
典型的なGPS信号は、3つの異なるタイプの情報を含む。すなわち、疑似乱数コード(a pseudorandom code)、衛星の軌道データ(ephemeris data)及び暦データ(almanac data)である。擬似乱数コードは、信号を送信する衛星を特定する識別コードである。GPSで各衛星によって継続的に送信される衛星の軌道データは、衛星の状態(status of the satellite)及び現在の日時を含む。信号のこの部分は、受信機の位置を決定するために必要とされる。最後に、暦データは、1日を通して任意の時間における各GPS衛星の位置情報を含む。各衛星は、本システムにおけるその衛星と他の全ての衛星に対し、軌道の情報を示す暦データを送信する。
【0035】
電子装置10のブロック30は、プロセッサである。プロセッサ30の関数の一部が、ブロック32、34、36及び38に示されている。ブロック32では、上述した異なるタイプのデータが取り出される(extracted)ように、受信したGPS信号が処理される。
【0036】
GPS信号の暦データがGPSの衛星の軌道に関する情報を含むとき、プロセッサ30は、ブロック34内で、処理されたGPS信号を用いて、それがGPS送信を受ける衛星を自動トラックする。従って、ブロック34で実行されるトラッキングはブロック32で使用され、GPS受信機20内のGPS信号の実際の受信に再度影響を及ぼす。処理されたGPS信号とそのトラッキングは、電子装置10の位置計算のためにブロック36で使用される。3つ以上の衛星からの信号がGPS受信機によって受信されると、GPS受信機の位置は、高精度に、典型的には、5−15メートル以内に決定されうる。電子装置10の位置が一旦決定されると、プロセッサ30は、速度、加速、ベアリング、旅行距離(trip distance)などに関する他の情報を計算することができる。ブロック36で計算された位置は、緯度、経度、アドレス又は地図として、電子装置10のディスプレイ50上に表示されうる。
【0037】
更に、電子装置10は、加速度計40、好適には、3軸加速度計を含む。ブロック36で実行される位置計算を支援するために加速度計40を使用することがよく知られている。この場合、GPS信号の受信は、例えば、茂った葉や高い建物がある都会の環境において遮られる。これは、カルマンフィルター38と関連付けて以下に詳細に説明される。従って、GPS受信機20が正確な位置計算を実行するための十分な信号を受信することができないときは、加速度計40からの情報は、電子装置10の位置で変更を計算するためにを使用されうる。本発明によれば、加速度計40の測定値がブロック34で実行されるトラッキングにも使用されることができ、その結果、従来のトラッキング方法は、GPS信号が受信されうる1つ又は複数の周波数での任意のシフトを取るために、上述した方法100又は200によって補うことができるように考慮に入れられる。最終的には、加速度計40は、受信したGPS信号に基づいて、図3のブロック34から加速度計40への矢印によって示された、電子装置10の位置、速度及び/又は加速度の決定によって較正されうる。
【0038】
ブロック38は、上述したトラッキング及び位置計算を実行するための手法、すなわちカルマンフィルターによる手法を示す。カルマンフィルターは、1セットの数式、すなわち最適再帰データ処理アルゴリズム(optimal recursive data processing algorithm)である。カルマンフィルターは、システムの過去、現在および将来の状態の推定をサポートする。カルマンフィルター38は、三次元の位置、三次元の速度及び三次元の加速度に対応する内部変数を有する。
【0039】
三次元の位置だけがカルマンフィルターに入力されるGPS信号に基づいた従来の位置測定の解決策(solution)では、カルマンフィルターが速度と加速に対する解決策を生み出している。次いで、カルマンフィルターは、時間に対する解決策を整える(smooth)ために速度と加速度で統合される。
【0040】
図3の電子装置10のカルマンフィルター38では、上述の値の1つに関する情報、すなわち加速度の値が、加速度計40からの付加的な情報で補われうる。このように、加速度計40からの付加的な情報は、GPSシステムからの入力がないときでも、カルマンフィルターの処理を継続させることができる。加速度の値は、以下のように変更されうる。

= Ax,old・(1-λ)+λ・a
= Ay,old・(1-λ)+λ・a
= Az,old・(1-λ)+λ・a

ここで、A、A、Aは、それぞれユークリッド座標系のx、y、z軸を示し、Ax、old、Ay、old、Az、oldは、それぞれx、y、z軸の方向における加速度の値を示し、a、a、aは、それぞれ加速度計で測定されたx、y、z軸の方向における加速度を示し、λは、0と1の間の係数を示す。
【0041】
上述したように、本発明の利点の1つは、トラッキング方法の信頼性及び帯域幅を改善するために、加速度計からのデータがトラッキング方法の入力として用いられうる、という点にある。必要に応じて、増加したトラッキング帯域幅は、結局は増加した信号感度(signal sensitivity)との引換えになりうる。
【0042】
更に図3を参照すると、衛星からの位置信号を受信するように構成された受信手段、例えば、移動電話に含まれるGPS受信機20を備える電子装置が一例として示されている。電子装置はまた、電子装置の基準時間を決定する時計(不図示)を備える。この基準時間は、ブロック32でのGPS信号の処理に用いられる。電子装置10が移動電話調整(mobile telephone adjustments)に含まれると、電子装置に関する時間情報及び/又は周波数情報が、例えば、基準時間及び/又は基準周波数のアップデートとして、移動通信ネットワークの上の電子装置に送信されうる。
【0043】
このような調整は、GPS信号によって決定される電子装置の位置が信号の受信時間に依存するという点において、電子装置10の位置のアップデートを生じさせ、その結果、その速度と加速度の変動が示されうる。しかしながら、電子装置10が加速度計40を備えるため、速度/加速度のそのような調整は、加速度計によって実行される電子装置のモニタされた加速度と比較されうる。従って、電子装置は、2つの場合を区別することができる、すなわち、移動通信ネットワークを介して受信した時間情報のアップデートが電子装置10の位置及び/又は速度及び/又は加速度の計算された変化を生じさせる場合と、加速度計が電子装置の加速度をモニタする場合である。衛星のトラッキングは以下に説明される2つの場合で異なった影響を及ぼすため、これは有利であるが、これまではこの2つの場合を互いに区別することができなかった。
【0044】
前者の場合では、電子装置の基準時間又は基準周波数のアップデートによって、GPS受信機20は全ての衛星のとトラックを失うことになりうる。しかしながら、加速度計40が、電子装置10の特別な又は突然の変更又は変動が生じたことを何ら示さない場合には、アップデートのために電子装置10が基準周波数又は基準時間の変更の対象となっていることが分かるであろう。この場合、全ての衛星からの信号は、未知であるが同じ量の変化があると強く推定される。従って、チャンネルを同調することによって、衛星の再トラッキングを最適化されることができる。ここでは、衛星からの信号が最も起こりそうな周波数偏移によって受信される。例えば、最初のチャンネルの周波数は30Hz上げることができ、2番目のチャンネルは、30Hz下げることができ、3番目のチャンネルは60Hz上げることができる。これにより、受信機は、少なくとも1つのチャンネルで衛星を高速にトラックし、この周波数偏移の衛星が特定される可能性がある。この特定された周波数偏移は、全てのチャンネルに対して同じであるべきであるため(この場合、受信機は実質的には加速していない)、残りのGPS受信機20は、特定された周波数偏移によって、GPS受信機20のチャンネルが同調された周波数に調整することによって再トラックすることができる。従って、衛星を再トラックするために費やされる時間とパワーは、実質的に減少されうる。2つの場合の後者では、周波数偏移が結果としてドップラー効果によって引き起こされるという点で、上述した周波数帯の調節が使用されうる。
【0045】
上述した例は、記載した再トラッキングの間、すなわち受信手段が1番目のチャンネルが再トラックされるまで衛星のトラックを見失って、発生した加速度、そしてそのためにドップラー効果によって受信した周波数における対応する変化に対する残りのチャンネルの再トラックを補完する時間の間に、加速度のトラッキングを継続することによって強化されうる。更に、受信手段20のチャンネルに再トラッキングは、Ephemerisデータの情報を使用することによって、衛星の移動によるドップラー効果を考慮して含むことができる。
【0046】
上述した例は一例に過ぎず、通信手段を備える任意の移動局が使用されうるのと同様に、GPS受信機の他の適当な多重通信トラッキングデバイスが使用されうる点に注意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る方法のフローチャートを示す図である。
【図2】図2は、本発明の他の実施の形態に係る他の方法のフローチャートを示す図である。
【図3】図3は、本発明の方法を実行するように構成された例示的な電子装置を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信手段を備える電子装置によって無線周波信号をトラッキングする方法において、前記無線周波信号は、1つ以上の周波数を持つ周波数帯で送信手段から送信され、前記無線周波信号のトラッキングは、前記受信手段内で前記周波数帯に同調することによって初期化されるトラッキング方法であって、
前記電子装置内の加速度測定デバイスによって前記電子装置の加速度をモニタする工程(130;230)と、
前記モニタされた加速度に基づいて前記受信手段が同調された前記周波数帯を変更する工程(140;260)と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記加速度測定デバイスでモニタされた前記電子装置の加速度に起因する前記周波数帯で受信した周波数における変化量を決定し(240)、前記変化量が所定の閾値を超える場合だけ、前記受信手段が同調された前記周波数帯を変更する工程を実行する工程を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電子装置内の前記受信手段は、UHF帯で信号を受信するように構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記電子装置内の前記受信手段は、衛星からの測位信号を受信するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記受信手段が同調された前記周波数帯の前記変更は、前記周波数帯の周波数に係数を掛け算することであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記係数は、ドップラー偏移係数であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
受信した測位信号によって前記電子装置の加速度を決定する工程と、
前記受信した測位信号によって決定された前記加速度によって前記加速度測定デバイスの測定を較正する工程と、
を更に含むことを特徴とする請求項3乃至請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記受信手段で受信した測位信号によって前記電子装置の加速度を決定する工程を更に含み、
受信した測位信号によって決定された前記加速度及び前記加速度測定デバイスによってモニタされた前記較正に基づいて、前記受信手段が同調された前記周波数帯の前記変更が行われることを特徴とする請求項4乃至請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
周波数帯に同調することによって受信無線周波信号に対して動作可能な受信手段(20)と、加速度測定デバイス(40)と、プロセッサ(30)とを備える電子装置(10)であって、
前記加速度測定デバイス(40)は、前記電子装置(10)の前記加速度をモニタするように構成され、
前記プロセッサ(30)は、前記モニタされた加速度に基づいて前記受信手段が同調された前記周波数帯を変更するように構成されていることを特徴とする電子装置(10)。
【請求項10】
前記プロセッサ(30)は、前記加速度測定デバイス(40)でモニタされた前記電子装置(10)の加速度に起因する前記周波数帯で受信した周波数における変化量を決定するよう構成され、前記変化量が所定の閾値を超える場合だけ、前記受信手段が同調された前記周波数帯を変更することを特徴とする請求項9に記載の電子装置(10)。
【請求項11】
前記電子装置(10)内の前記受信手段(20)は、UHF帯で信号を受信するように構成されていることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の電子装置(10)。
【請求項12】
前記電子装置(10)内の前記受信手段(20)は、衛星からの測位信号を受信するように構成されていることを特徴とする請求項9乃至請求項11のいずれか1項に記載の電子装置(10)。
【請求項13】
前記電子装置内の前記受信手段(20)は、GPS受信機、GLONASS受信機及びGNSS/ガリレオ受信機からなるリストから選択されることを特徴とする請求項12に記載の電子装置(10)。
【請求項14】
前記受信手段(20)が同調された前記周波数帯の前記変更は、前記周波数帯の周波数に係数を掛け算することであることを特徴とする請求項9乃至請求項13のいずれか1項に記載の電子装置(10)。
【請求項15】
前記係数は、ドップラー偏移係数であることを特徴とする請求項14に記載の電子装置(10)。
【請求項16】
前記受信手段で受信した測位信号によって前記電子装置の加速度を決定する手段と、
前記受信した測位信号によって決定された前記加速度及び前記加速度測定デバイスによってモニタされた前記加速度に基づいて前記周波数帯の前記変更を実行する手段と、
を更に備えることを特徴とする請求項9乃至請求項15のいずれか1項に記載の電子装置(10)。
【請求項17】
前記電子装置(10)は、受信した測位信号によってその加速度を決定するように構成され、かつ、前記受信した測位信号によって決定された前記加速度に基づいて、前記加速度測定デバイスを較正するように構成されていることを特徴とする請求項9乃至請求項16のいずれか1項に記載の電子装置(10)。
【請求項18】
前記電子装置は、携帯電話内に含まれていることを特徴とする請求項9乃至請求項17のいずれか1項に記載の電子装置(10)。
【請求項19】
プロセッサに請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の方法を実行させるコンピュータプログラムコード手段を備えるコンピュータプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2007−535839(P2007−535839A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−502241(P2007−502241)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【国際出願番号】PCT/EP2005/002266
【国際公開番号】WO2005/085895
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(502087507)ソニー エリクソン モバイル コミュニケーションズ, エービー (823)
【Fターム(参考)】