説明

無線周波数識別システムのトランスポンダ用広帯域アンテナ

無線周波数識別システムのトランスポンダ用広帯域アンテナ構体(10)は、電子回路(16)に接続するための給電点(14)を有するループ共振子(12)と、このループ共振子(12)に電気的に接続され、且つ電気的に隔離した2つの脚部(20,22)を有するダイポール共振子(18)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線周波数識別システムのトランスポンダ用広帯域のアンテナに関する。
【0002】
本発明は、さらに、無線周波数識別システムのトランスポンダに関する。
【背景技術】
【0003】
無線周波数識別(RFID)システムは、典型的には、バッテリ又は電源ユニットによって附勢され、且つRFIDのトランスポンダ又はタグと通信することができる1つ以上のリーダを備えている。RFIDトランスポンダは、バッテリによって附勢されるアクティブタグとするか、又はリーダによって発生される高周波フィールドによって附勢されるパッシブタグとするか、又はリーダによって発生される高周波フィールドによって活性化され、且つ別の活性源としてバッテリを用いるセミアクティブ/パッシブタグとすることができる。RFIDトランスポンダは、データを格納し、且つリーダと通信するための電子回路と、RFIDトランスポンダを動作する周波数レンジに同調したアンテナとを少なくとも備えている。
【0004】
通常、RFIDトランスポンダを使用する非接触識別システムには、日本、米国、欧州(EU)などの種々の国で、異なる周波数レンジが提供されている。例えば、RFIDトランスポンダによく用いられるUHF(超高周波)帯は、米国では902〜928MHzの範囲に、EUでは863〜868MHzの範囲に位置付けられている。米国及びEUにて同じRFIDトランスポンダを使用するためには、約860MHz〜約930MHzの周波数レンジをカバーしなければならない。米国特許第6,891,466B2号は、このような広い周波数レンジをカバーするように設計されるアンテナを開示している。しかしながら、これに開示されているアンテナ構体は、2つのメタライゼーション化層又はワイヤからなる縦型共振子を必要とするパッチアンテナである。このようなアンテナ構体は、複雑であり、そのため高価である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上述の欠点を避けるために、無線周波数識別システムのトランスポンダ用広帯域アンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明による広帯域アンテナに、以下に規定するように特徴機構、即ち、
− 電子回路に接続するための給電点を有するループ共振子、及び
− 前記ループ共振子に電気的に接続され、且つ電気的に隔離した2つの脚部を有するダイポール共振子、
を設けて、本発明による広帯域のアンテナを特徴付けることができる。
【0007】
上記で規定した目的を達成するために、本発明によるトランスポンダでは、本発明によるアンテナと、該アンテナが前記給電点で接続する電子回路とを備えるような特徴機構を設ける。
【0008】
本発明による特徴機構は、アンテナの構造が比較的簡単になるという利点をもたらし、これにより、米国特許第6,891,466B2号から知られるアンテナ構体と比べて、抵コストで実現することができる。更に、本発明によるアンテナのインピーダンスは、RFIDトランスポンダの電子回路のインピーダンスを容易に適合させることができ、広い周波数レンジにわたってインピーダンスの整合を達成することができる。本発明によるアンテナは、アンテナの散乱パラメータS11の周波数スペクトラムにて電子回路インピーダンスに対するアンテナインピーダンス整合の改善を可能にする少なくとも2つの共振を達成するように設計することができる。ループ構体及びダイポール構体の組み合わせは別のパラメータを提示し、この別のパラメータにより、アンテナ及び電子回路のインピーダンス整合を改善するとともに、広い周波数レンジにわたって放射効率を最大にすることができる。従って、本発明によるアンテナは、米国におけるRFID動作に与えられる902〜928MHzのレンジ、及びEUにおけるRFID動作に与えられる902〜928MHzのレンジなどの広い周波数レンジで動作することができるRFIDトランスポンダを設計することができるようになる。
【0009】
好適例によれば、ループ共振子は、2つの電気ラインを備えることができ、各電気ラインの一端を電子回路に接続し、各電気ラインの他端をダイポール共振子の2つの電気的に隔離した脚部のそれぞれに結合するとともに、カップリングによって各電気ラインの他端を結合する。 ここで云う“カップリング”とは、ある種の電気的に有効な結合を意味する。このカップリングは、寸法を変更することによって電子回路インピーダンスに対するアンテナインピーダンスの整合、及びカップリングの電気的な動作を調整可能にするパラメータとなる。
【0010】
カップリングは、2つの電気ラインの短絡回路を形成する電気的接続とすることができる。このカップリングは、出力端保護したDC短絡回路とするか、又は換言すればループ共振子上で短絡回路を構成することができる2つのアンテナ接続を有する電子回路とするのが適している。
【0011】
しかしながら、出力端保護したDC短絡回路を有しない電子回路を使用する場合、カップリングを容量性結合構体又はコンデンサで形成することができる。従って、電子回路の2つのアンテナを接続するようなDC短絡回路を、ループ構体に含まれる容量結合又はコンデンサによって防止することができる。この容量結合又はコンデンサは、アンテナを介して送受信する高周波信号用の短絡回路とする必要があることに留意する。容量結合又はコンデンサは、電子回路のDC電源に悪影響となりうるDC短絡を防ぐのみにする必要がある。例えば、このコンデンサは、SMDデバイス、及び並んで又は上下に配置した2つのメタライゼーション化領域による容量結合として実現することができる。このカップリングは、 2つのメタライゼーション化領域の間隔などの設計パラメータによって変更することができるだけでなく、カップリングのセクションにてループ構体の2つの電気ライン間の材料を変えることによって変更することができる。例えば、カップリング構体は、カップリングを強化するために1より大きい値の所定の誘電率εを有する材料を備えることができる。
【0012】
また、電子回路の出力インピーダンスに対するアンテナインピーダンスの整合は、アンテナが少なくとも2つの共振帯を示し、これらの共振帯にてアンテナが電子回路に整合した状態となるように、ループ共振子の2つの電気ラインの寸法及び配置を選定することによって変更することができ、ここで、2つの共振帯の一方は第1周波数レンジにあり、2つの共振帯の他方は第1周波数レンジとは異なる第2周波数レンジにあるようにする。
【0013】
各電気ラインは、各電気ライン間の所定の容量などの所定の電気状態を達成するために、平行に配置するのが好適である。
【0014】
典型的には、電気ラインの各々は、所定の長さ及び幅を有し、双方の電気ラインは、所定の間隔で配置され、この所定の長さ、幅、及び間隔は、アンテナが少なくとも2つの共振帯を示し、これらの共振帯にてアンテナが電子回路に整合した状態となるように選定し、ここで、2つの共振帯の一方は第1周波数レンジにあり、2つの共振帯の他方は第1周波数レンジとは異なる第2周波数レンジにあるようにする。
【0015】
上述のように、カップリングは、アンテナのインピーダンスにも影響を及ぼすため、アンテナの所定のインピーダンスを達成するように適合させることができる所定の幅で電気的接続するのが好適である。
【0016】
また、ダイポール共振子の設計パラメータは、インピーダンスの整合を制御することができる。そこで、好適例によれば、ダイポール共振子の2つの脚部の所定のカップリングを達成するために、ダイポール共振子の電気的に隔離した2つの脚部を所定の長さで並行に配置するようにする。
【0017】
アンテナの生産は、双方の脚部をループ共振子の各電気ラインの所定の間隔に配置する場合に簡素化することができる。
【0018】
双方の脚部は、少なくともこれらを平行に配置した所定の長さの箇所では、ループ共振子の各電気ラインの幅と本来等しい第1の所定の幅を有することができる。
【0019】
高い放射効率でダイポール構体を形成するために、双方の脚部が、第1の所定の長さにわたって平行に配置している後方で、第2の所定の長さにわたって分岐し、且つ第2の所定の幅を有するようにする。
【0020】
アンテナの導電部分は、1以上の誘電率及び1以上の透磁率を有する基板に堆積するか、又は埋め込んだ、導電性のメタライゼーションとするのが好適である。
【0021】
本発明の別の態様によれば、上述した約860MHz〜約960MHzの周波数レンジに適合させたアンテナを備える無線周波数識別システムのトランスポンダに関する。
【0022】
本発明の上記の態様及び別の態様は、以下に説明する実施例から明らかになり、これらの例の実施例に関して説明する。
【0023】
以下、実施例を参照して本発明を詳細に記載する。 しかしながら、本発明は、これらの実施例に制限されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、同一及び同様の要素、及び機能的に同一又は同様な要素には、同一の参照番号を付して説明する。
【0025】
図1は、アンテナ10及びRFIDの集積回路16が上に装着した電気的に絶縁する基板30を示している。基板30は、プラスチック、セラミック、埋め込みのセラミック粒子を有するプラスチックなどからなり、1以上の誘電率ε及び1以上の透磁率μrを有する。アンテナ10は、基板30に堆積するか、又は埋め込んだ、例えばCu,Au,Ag,Alなどの導電性のメタライゼーションとして実装することができる。このメタライゼーションは、エッチング、ミリング、プリンティング、インプリンティング、又はペースティングなどの既知の方法で構体化して、基板30に堆積させることができる。RFIDトランスポンダは、アンテナ10と、アンテナ10のいわゆる給電点14に接続されたRFID IC16とによって形成される。実際上、給電点14は、2つの小さな接続の脚部又はワイヤによって実現することができ、これらをRFID IC16に接続可能に設計する。給電点14へのRFID IC16の接続は、アキシャル、SMD、ボンディング、フリップチップなどの通常の方法で実装することができる。
【0026】
図1に示すアンテナ10は、RFID IC16に接続された前記給電点14を有するループ共振子12と、このループ共振子12に接続されたダイポール共振子18とを備える。ループ共振子12は、間隔dで平行に配置した長さがlの2つの電気ライン24及び26を備える対称のメタライゼーション構体によって実装される。電気ライン24及び26の各々は、幅Wを有する。電気ライン24及び26の一端は、RFID IC16がアンテナ10に電気的に接続される個所で、アンテナ10の給電点14を形成する。電気ライン24及び26の他端は、短絡回路28によって結合させて、2つの電気ライン24及び26の端部を電気的に接続する。短絡回路28は、幅W及び長さdを有する。
【0027】
ループ共振子12の電気ライン24及び26の各々は、アンテナ10のダイポール共振子18のそれぞれの脚部20及び22に電気的に接続する。従って、アンテナ10は、ループ共振子の電気ラインとダイポール共振子の脚部によって各々が形成される2つの部分を備え、これらの各部分は、アンテナの給電点から所定の距離の所で短絡回路28によって電気的に接続する。ダイポール共振子18の脚部20及び22は、所定の長さlにわたって平行に配置させる。各脚部20及び22は、平行に配置されているところでは幅Wを有する。脚部20及び22は、短絡回路28から間隔lのところで分岐する。さらに、脚部20及び22は、幅w及び長さlを有し、典型的なダイポールアンテナ構体を形成するように配置させている。
【0028】
図1に示す複合のアンテナ設計では、以下、更に詳細に説明するように、異なる周波数レンジで、RFIDトランスポンダを使用するように適合させた共振スペクトラムを有するアンテナインピーダンスを実現することができる。アンテナの典型的な入力パラメータは、アンテナの散乱パラメータS11及び複素インピーダンスantennaである。散乱パラメータS11は、負荷とソースとの間の反射の目安である。負荷整合している場合、反射は0である。散乱パラメータS11は、次のように規定することができる。
【0029】
11=kLog(|ガンマ|)
ガンマ=()/(0)
ここに、は、複素負荷インピーダンスであり、0は、複素ソースインピーダンスであり、電力の場合にはk=10であり、電圧又は電流の場合にはk=20である。
【0030】
図2は、図1に示すような構体で最適化したアンテナに対する周波数にわたる散乱パラメータS11の特性線と、複素インピーダンスantennaの実数部Rantenna及び虚数部Xantennaの特性線を示している。アンテナは、米国における約902〜約928MHzの周波数レンジと欧州における約863〜約868MHzの周波数レンジの双方(図2における斜線部分)で動作するように設計する。(15−j270)オームのRFID ICインピーダンスを、基準インピーダンスとして選定した。図2から分かるように、双方の周波数領域は、アンテナの特有の共振帯によってカバーされている。これは、効率的なRFIDトランスポンダに対する前提条件であるRFID ICに良好に採用することができる。
【0031】
アンテナの複合化は複数のパラメータを提供し、これらのパラメータは、アンテナの動作を変更し、且つ予め定められた状態にアンテナを適合させるのに用いることができる。特に、アンテナの以下の特性を最適化することができる。
− アンテナとRFID ICとの間の反射を最小にするために、RFID ICの出力インピーダンスに対するアンテナの入力インピーダンスの適合
− アンテナの放射効率の最大化
− アンテナとRFID ICとの間のできるだけ広帯域のインピーダンス整合
【0032】
上述したように、本発明によるアンテナは、2つの特有の共振帯を含む。双方の共振帯の周波数レンジは、RFID ICの出力インピーダンスに対する最適のインピーダンス整合を、所定の周波数レンジ、例えば米国における約902〜約928MHzの周波数レンジ、及び欧州における約863〜約868MHzの周波数レンジの範囲内で達成することができるように適合させることができる。本発明による図1に示すアンテナ設計の複合化、及びこれらに接続した複合カップリング機構の故に、通常、アンテナの一部の寸法などのアンテナの単一設計パラメータの変更で、アンテナの周波数スペクトルにかなり影響を与えることができる。原理上、複合カップリング機構は、以下の2つの個数に減らすことができる。
− パラメータl,w,dによって規定されるループ共振子構体R1、及び
− パラメータl,l,w,w,dによって規定されるダイポール共振子構体R2
【0033】
別の重要なパラメータは、カップリング又は短絡回路の幅w、及び/又は長さdである。
【0034】
ループ共振子構体R1は、導電トラックのループとみなすことができ、ダイポール共振子構体R2は、集積インピーダンス整合を有するダイポールアンテナとみなすことができる。本発明によるこれら2つの構体の新規で進歩性のある組み合わせ、並びに双方の構体の結合の仕方によって、広い周波数レンジにてRFIDトランスポンダを動作させるのに適切な共振スペクトラムを達成することができる。
【0035】
本発明は、RFIDトランスポンダを、RFIDシステムに提供される少なくとも2つの周波数レンジをカバーする広い周波数レンジで動作させることができるという利点がある。更に、本発明は、低コストで実現することができ、且つ本発明の実施例によるアンテナの実施態様で動作する電気機器に対する、DC短絡回路構体を必要としない。
【0036】
上述したように、RFID ICの出力インピーダンスに対するアンテナインピーダンスの整合は、ループ共振子とダイポール共振子の結合などのアンテナの所定の設計パラメータ、並びに、幅、長さ及び間隔などのアンテナの構体の寸法を適合させることによって制御することができる。以下のように、アンテナインピーダンス及びその周波数スペクトラムに影響を及ぼす値l,w,d,l,w,l,wなどの所定のパラメータを変えることによる影響を、約800MHz〜約1GHzの周波数レンジにわたる、散乱パラメータS11の特性線と、アンテナインピーダンスantennaの実数部Rantenna及び虚数部Xantennaの特性線とを示す線図について詳細に説明する。
【0037】
第1パラメータとして、短絡回路28の幅wを、0.2mm、0.5mm及び0.8mmに変更した。図3は、約800MHz〜約1GHzの周波数レンジにわたる、散乱パラメータS11の特性線と、アンテナインピーダンスantennaの実数部Rantenna及び虚数部Xantennaの特性線とを示す。実数部Rantennaの最大の周波数は、ほぼ一定であることが分かる。しかしながら、実数部Rantennaの振幅はかなり変化する。同時に、虚数部Xantennaは、わずかな影響しか受けないので、アンテナインピーダンスへの影響も小さい。従って、短絡回路28の幅wは、アンテナインピーダンスantennaの実数部Rantennaを適合させるのに用いることができる。
【0038】
図3は、メタライゼーションを広くするほど、共振周波数が近接し(即ち、換言すればΔfが減少し)、メタライゼーションの幅を減少させるほど、Δfが増大することも示していることに留意すべきである。
【0039】
次に、ループ共振子の電気ライン24及び26の長さlを、33.5mm、31.5mm、及び35.5mmに変更した。図4は、約800MHz〜約1GHzの周波数レンジにわたる、散乱パラメータS11の特性線と、アンテナインピーダンスantennaの実数部Rantenna及び虚数部Xantennaの特性線とを示す。この場合も、実数部Rantennaの最大の周波数は、ほぼ一定であり、実数部Rantennaの振幅はかなり変化する。図3と対比するに、虚数部Xantennaが、かなり変わり、また、共振周波数もシフトする。
【0040】
図5は、ダイポール共振子18の脚部20及び22の平行部分の長さlの変更の影響を示している。長さlを、37.0mm、35.0mm及び39.0mmに変更した。図3及び4を対比するに、実数部Rantennaの最大の周波数はかなり変化するも、実数部Rantennaの振幅はほぼ一定のままでいる。虚数部Xantennaは、高い又は低い周波数の方に移動する。
【0041】
図6は、ダイポール共振子18の分岐した脚部の幅wの変更の影響を示している。幅wを、1.0mm、2.0mm及び0.05mmに変更した。この全ての変更にて、実数部Rantennaの最大の周波数及び振幅は、かなり変化する。これにより、インピーダンスの高い方の共振周波数の位置がかなり変更することになる。また、虚数部Xantennaの位置及び振幅も変わる。従って、幅wを変えることによって、アンテナインピーダンスの共振周波数をかなり変えることができる。
【0042】
最後に、長さl及びlを有するメタライゼーション間の間隔dの変更の影響を、図7に示す。この間隔を、4.0mm、3.5mm、及び4.5mmに変更した。変更の影響は、幅wの変更(図6)と同様である。この全ての変更にて、実数部Rantennaの立ち下がりエッジが一定になることに留意する。従って、アンテナインピーダンスの低い方の共振周波数の位置は、高い方の共振周波数の位置よりも一層影響を受ける。
【0043】
上記の説明は、本発明によるアンテナの所定のパラメータの変更がどのように周波数にわたってアンテナインピーダンスの特性線に影響を及ぼすかを示しており、従って、パラメータ変更を、RFID ICなどの電子回路の出力インピーダンスに対するアンテナインピーダンスの整合を適合させるのに用いることができる。しかしながら、図2〜7に示す線図は、本発明の所定の実施例の模範的な特性線を単に示したにすぎず、図示の特性線及び寸法例に、本発明の範囲を制限するものではないことに留意するべきである。
【0044】
図8は、図1に示したアンテナとは異なる設計を有する別のアンテナ10を示す。主な相違点は、ループ共振子12及びダイポール共振子18の寸法である。ループ共振子12は、ダイポール共振子18に対して本来平行に配置されるように形成する。更に、ダイポール共振子18の脚部20及び22の平行な部分を含む、ループ共振子12とダイポール共振子18との間の接続構体32は、図1に示すアンテナと比較してかなり縮小する。このアンテナは、図1に示すアンテナと同様な電気的動作をするが、材料が少なくて済むように、寸法を小さくすることができ、より高いグレードの小型化を達成することができる。これは、潜在的な用途の数を増加させることになる。
【0045】
図9は、図8のアンテナの模範的な実施例の場合の、約800MHz〜約1GHzの周波数レンジにわたる、散乱パラメータS11の特性線と、アンテナインピーダンスantennaの実数部Rantenna及び虚数部Xantennaの特性線とを示す。同図から分かるように、共振スペクトラムは、比較的広く、且つ欧州及び米国におけるRFIDの動作用に与えられる周波数帯をカバーしている。
【0046】
本発明は、データ伝送にとって広い周波数レンジをカバーするように、RFIDトランスポンダ用のアンテナのインピーダンスをRFIDの電子回路の出力インピーダンスに適合させることができるという利点を有する。特に、アンテナ素子の寸法などの多数の設計パラメータを、アンテナインピーダンスの適合のために変更することができる。更に、本発明によるアンテナは、比較的簡単な構体を有するので、アンテナを低コストで生産することができ、単に1つの層を必要とするのみである。更に、アンテナを極めて小さい基板に実装し得るように寸法決めすることができる。
【0047】
上述の実施例は、本発明を制限することなく例証したものであり、当業者であれば、請求の範囲から逸脱することなく、多くの別の実施例を設計することできることは明らかである。“含む(備える)”という用語は、請求の範囲に記載以外の要素又はステップの存在を除外するものではない。単数で扱う各要素は、このような要素の複数の存在を除外するものではない。本発明は、幾つかの異なる要素を備えるハードウェアによって、及び/又は、適切にプログラムされたプロセッサによって実現することができる。幾つかの手段を備えるデバイスの請求項では、これらの幾つかの手段をハードウェアの同一アイテムによって実現することができる。或る構成要素が互いに異なる従属請求項で繰り返されるという単なる事実は、これらの構成要素の組み合わせを有利に用いることができないことを示すものではない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明によるRFIDトランスポンダ用のアンテナの第1の実施例を示す図である。
【図2】本発明によるRFIDトランスポンダの最適化したアンテナの散乱パラメータS11、及びインピーダンスの実数部及び虚数部の周波数の特性線を示す図である。
【図3】ループ共振子の電気ラインのカップリングの幅wの関数として、本発明によるRFIDトランスポンダの最適化したアンテナの散乱パラメータS11、及びインピーダンスの実数部及び虚数部の周波数の特性線を示す図である。
【図4】ループ共振子の電気ラインのカップリングの長さlの関数として、本発明によるRFIDトランスポンダの最適化したアンテナの散乱パラメータS11、及びインピーダンスの実数部及び虚数部の周波数の特性線を示す図である。
【図5】ダイポール共振子の脚部の部分の長さlの関数として、本発明によるRFIDトランスポンダの最適化したアンテナの散乱パラメータS11、及びインピーダンスの実数部及び虚数部の周波数の特性線を示す図である。
【図6】ダイポール共振子の脚部の部分の幅wの関数として、本発明によるRFIDトランスポンダの最適化したアンテナの散乱パラメータS11、及びインピーダンスの実数部及び虚数部の周波数の特性線を示す図である。
【図7】ループ共振子の電気ラインのカップリングの長さdの関数として、本発明によるRFIDトランスポンダの最適化したアンテナの散乱パラメータS11、及びインピーダンスの実数部及び虚数部の周波数の特性線を示す図である。
【図8】本発明によるRFIDトランスポンダ用のアンテナの第2の実施例を示す図である。
【図9】本発明によるRFIDトランスポンダの最適化したアンテナの散乱パラメータS11、及びインピーダンスの実数部及び虚数部の周波数の特性線を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線周波数識別システムのトランスポンダ用の広帯域アンテナであって、
電子回路に接続するための給電点を有するループ共振子と、
前記ループ共振子に電気的に接続され、且つ電気的に隔離した2つの脚部を有するダイポール共振子と、
を備える、広帯域アンテナ。
【請求項2】
前記ループ共振子は、2つの電気ラインを備え、
各電気ラインの一端は、前記電子回路に接続するために設けられ、
各電気ラインの他端は、前記ダイポール共振子の電気的に隔離した2つの脚部にそれぞれ結合され、
カップリングによって2つの電気ラインの他端を結合する、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記カップリングは、前記2つの電気ラインの短絡回路を形成する電気的接続である、請求項2に記載のアンテナ。
【請求項4】
前記カップリングは、容量性結合構体である、請求項2に記載のアンテナ。
【請求項5】
前記カップリングは、コンデンサによって形成される、請求項2に記載のアンテナ。
【請求項6】
前記2つの電気ラインの寸法及び配置は、前記アンテナが少なくとも2つの共振帯を示し、これらの共振帯にて前記アンテナが前記電子回路に整合した状態となるように選定され、前記2つの共振帯の一方は第1周波数レンジ内にあり、前記2つの共振帯の他方は前記第1周波数レンジとは異なる第2周波数レンジ内にある、請求項2に記載のアンテナ。
【請求項7】
前記2つの電気ラインは、平行に配置されている、請求項2に記載のアンテナ。
【請求項8】
前記電気ラインの各々は、所定の長さ及び幅を有し、双方の前記電気ラインは、所定の間隔で配置され、前記所定の長さ、幅、及び間隔は、前記アンテナが少なくとも2つの共振帯を示し、これらの共振帯にて前記アンテナが前記電子回路に整合した状態となるように選定され、前記2つの共振帯の一方は第1周波数レンジ内にあり、前記2つの共振帯の他方は前記第1周波数レンジとは異なる第2周波数レンジ内にある、請求項7に記載のアンテナ。
【請求項9】
前記カップリングは、所定の幅を有する電気的接続である、請求項8に記載のアンテナ。
【請求項10】
前記ダイポール共振子の電気的に隔離した2つの脚部は、所定の長さにわたって平行に配置されている、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項11】
前記2つの脚部の双方は、前記ループ共振子の各電気ラインと同じ所定の間隔で配置されている、請求項10に記載のアンテナ。
【請求項12】
前記2つの脚部の双方は、これらを平行に配置した少なくとも前記所定の長さの箇所では、前記ループ共振子の各電気ラインの幅と本来等しい第1の所定の幅を有する、請求項10又は11に記載のアンテナ。
【請求項13】
前記双方の脚部が、前記第1の所定の長さにわたって平行に配置されている後方で、第2の所定の長さにわたって分岐し、且つ第2の所定の幅を有する、請求項10、11又は12に記載のアンテナ。
【請求項14】
前記アンテナの導電部分は、1以上の誘電率及び1以上の透磁率を有する基板に堆積するか、又は埋め込んだ、導電性のメタライゼーションである、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載のアンテナと、前記アンテナの給電点に接続される電子回路とを備える無線周波数識別システムのトランスポンダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−516413(P2009−516413A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539583(P2008−539583)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【国際出願番号】PCT/IB2006/054160
【国際公開番号】WO2007/054900
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(507219491)エヌエックスピー ビー ヴィ (657)
【Fターム(参考)】