説明

無線基地局の筐体構造

【課題】筐体に設けられた機能部および保守部を覆うとともに、保守部のみを露出状態に保持することができ、また、保守部を保守する際に本体および蓋部のうちの一方から他方が脱落する虞がない無線基地局の筐体構造を提供する。
【解決手段】無線基地局は、底面が筐体保持側の取付面に対面する有底枠状の本体1と、本体1に収容されて本体開口から露出可能に配置された機能部3および保守部2と、機能部および保守部を蓋閉可能に本体1に連結された蓋部12とを有し、本体1が取付面に固定される。蓋部は、取付面と平行に本体に対して相対的に移動可能であるとともに、本体に対する蓋部の相対移動が規制手段であるストッパ10およびストッパ係合部材23により規制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末装置との間で無線通信を行う無線基地局の筐体構造、特にその機能部および保守部が蓋部により覆われた無線基地局の筐体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に携帯電話等の携帯端末装置と通信を行う無線基地局は、該装置の外殻を成す筐体が建屋の壁等の取付面(筐体保持側取付面)に取り付けられ、筐体内部から引き出されたケーブルが取付面に設けられた孔を通して取付面の裏側へ導かれる。
【0003】
例えば、ワイヤレスLANの基地局として機能する従来の無線基地局は、直方体形の箱状の筐体を有し、筐体の正面にアンテナが内蔵され、側面には設定スイッチ等の保守部およびアンテナ、LED等の機能部が配置されている。
【0004】
このような従来の無線基地局は、筐体の側面に保守部が設けられているため、誤操作する虞があり、その対策が求められている。
この誤操作対策として筐体の側面を所定の脱着可能なカバーで覆うことが提案されている。また、無線基地局に関するものではないが、装置本体の外部インタフェースコネクタ接続部を、ヒンジ連結で該本体に一体化した開閉カバーによって覆う構造も開示されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平6−283234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の装置の筐体をカバーで脱着可能に覆う構造は、不要な操作からスイッチ類等を守り得る効果はあるものの、設定スイッチを正規に操作する際にカバーが筐体から脱落する虞がある。
【0006】
また、筐体の側面を覆うカバーの脱落を防止するために、例えばヒンジ機構等でカバーを連結したものは、無線基地局の構造が複雑化して製造コトスが高くなるとともに、開放した状態でカバーに外力が加わると、ヒンジ部分が破損するという問題が指摘されている。
【0007】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、筐体に設けられた機能部および保守部を覆うとともに、保守部のみを露出状態に保持することができ、また、保守部を保守する際に本体および蓋部のうちの一方から他方が脱落する虞がない無線基地局の筐体構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、本体と、前記本体に収容された機能部および保守部と、前記機能部および前記保守部を露出可能に前記本体に連結された蓋部とを有し、前記本体および前記蓋部が取付面に固定される無線基地局の筐体構造であって、前記本体および前記蓋部が前記取付面に対して平行な方向に沿って相対的に移動可能であるとともに、前記本体および前記蓋部の相対移動を規制する規制手段を有し、前記規制手段が、前記保守部のみが露出する位置において前記蓋部および前記本体の相対移動を規制可能であることを特徴とする。
【0009】
このような本発明においては、本体に収容された機能部および保守部が蓋部により覆われるため、機能部および保守部が誤操作される虞がないとともに、規制手段により本体および蓋部の相対移動を規制可能であるため、保守部を保守する際に本体から蓋部が脱落する虞がないことになる。
また、本発明においては、本体および蓋部が複雑なヒンジ機構等で開閉するのではなく、取付面に対して平行に移動して開閉するので、構造が簡素となり、製造コストが低減される。ヒンジ機構を用いないことから、蓋部を開放したとき、外力によって蓋部の支持部が破損するといった危険が回避される。
【0010】
また、本発明は、前記機能部に設けられて前記機能部の状況を報知するための発光部と、前記蓋部に設けられて前記発光部の光を外部から視認可能とするための導光孔とを有し、前記導光孔が前記蓋部および前記本体の相対移動方向に沿う長孔であることを特徴とする。
このような本発明においては、発光部の光を外部から視認可能とするための導光孔が長孔であるため、本体および蓋部の相対位置に関わらず機能部の状況を把握できることになる。
【0011】
さらに、本発明は、前記本体が底面を有する有底枠状であるとともに、前記底面が前記取付面に固定されることを特徴とする。
このような本発明においては、有底枠状の本体が取付面に固定されるため略板状の蓋部を採用でき、これにより構造を簡略化できることになる。
【0012】
そして、本発明は、前記機能部および前記保守部が前記蓋部で覆われる位置と、前記保守部のみが外部露出する位置とにおいて、前記本体および前記蓋部の相対位置を保持する保持手段が設けられることを特徴とする。
【0013】
この構成により、蓋部の保持手段が弾性構造となっているため、この保持手段を弾性変形させて蓋部の取り外しおよび開閉時の相対位置に規制ができる。しかも、保持手段の弾性度合いを選定することにより、蓋の取り外し易さおよび蓋の相対位置での保持強度を調整できる。
【発明の効果】
【0014】
上述のように本発明によれば、本体の保守部を蓋部の簡単な操作で覆うことができるので、誤操作を起こす虞がなくなり、保守部を保守する際に本体および蓋部のうちの一方から他方が脱落する虞がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る無線基地局の筐体構造の各種の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る筐体構造の分解斜視図、図2は図1のA部の拡大斜視図、図3は図1に示す筐体構造における導光部材の斜視図、図4は蓋部を保持する保持手段の変形例を示す斜視図である。
【0016】
(第1実施形態)
図1を参照すれば、筐体の本体1は浅底の直方体形の枠状部材で構成され、内部が左右二区分に仕切られており、その片側正面(前面)部分が設定スイッチ(図示省略)等が配置される保守部2となり、他の片側部分がアンテナ4や後述する導光部材5が配置される機能部3となっている。
保守部2と機能部3とを区分けする分離壁6に対して直角に伸びる両側部には逆L形のレール部7が形成され、また、分離壁6と反対側の機能部3の片端部の略中央付近にはストッパ差込み孔8をもつストッパ受け部9が形成されている。この第1実施形態では本体1の裏面部分が筐体保持側の取付面に取り付けられる。
【0017】
ストッパ受け部9のストッパ差込み孔8には、本体裏面側からL形のストッパ10が差し込まれ、かつ、止めネジ11によって本体1に固定される。ストッパ10の先端はストッパ差込み孔8から前面側へ所定長さで突出する。
【0018】
分離壁6に隣接した位置で機能部3内には、蓋部12の位置保持手段を構成する本体側弾性係止部13が形成されている。
弾性係止部13は、図1,図2に示す第1実施形態では、L形の部材14の前面の板面部分に蓋部12の開閉移動方向に沿って伸びる一対の切込み溝15が形成され、その両切込み溝15に挟まれた部分16が裏面側から前面側へ向って凸湾曲状に切り起された構成となっている。
【0019】
なお、本発明に係る弾性係止部13は、図1,図2の形態に限定されるものではなく、例えば図4に示す変形例のように、L形部材の板面部分がコ字状溝17として切り込まれ、このコ字状溝17に囲まれた部分16が裏面側から前面側へ向って凸湾曲状に突出され、これによって片持ち式の弾性係止部13を構成するようにしてもよい。
【0020】
透明材質の導光部材5は、全体として前面視で長方形を成し、その片側部に導光部5aが突出した形状を有している。本体1の機能部3にはしたストッパ受け部9に隣接してLED等の発光部20が設けられ、この発光部20に導光部材5の導光部5aが被さるように該導光部材5が配置される。
この状態で、導光部材5の一端部が本体1の片端部から外部に露出して第1露出部5bを構成し、また導光部材5の長方形前面部分が本体の前面に沿って蓋部の開閉移動方向に延在して第2露出部5cを構成する。
【0021】
側壁をもつ枠形の蓋部12は、その移動方向に沿う両側部裏側にL形のレール係合部21が形成され、この係合部21が本体1の逆L形のレール部7と係合して該本体1に対してスライド(開閉移動)するようになっている。
蓋部12には本体1の導光部材5に対峙する位置で、その移動方向に沿って伸びる長溝状の導光孔22が形成されている。導光孔22には透明部材(図5,図7の符号31)が埋め込まれている。
【0022】
蓋部12の裏面には、その略中央位置から開き方向にやや寄った位置に、本体1のストッパ10と接当するストッパ係合部材23が形成されている。
また、同様に蓋部12の裏面には、その略中央位置から若干蓋閉方向に寄った位置に、波形の第1段差部24が形成され、さらに蓋閉方向片端部近くの位置に第2凸状段差部25が形成されている。この第1段差部24と第2段差部25、および本体1の弾性係止部13によって第1実施形態の保持手段が構成される。
【0023】
第1段差部24は、蓋部12の全閉状態で本体1の弾性係止部13と係合し、蓋部12の全開状態、つまり機能部3を蓋閉し、かつ、保守部2を開放した状態で第2段差部25が本体1の弾性係止部13と係合するようになっている。
【0024】
図5および図7は、それぞれ本体1に対して蓋部12を全閉にした状態の筐体正面(前面)の斜視図および蓋部1を全開にして保守部2を開放した状態の筐体正面の斜視図である。
また、図6は図5のA−A線に沿う断面図、図8は図7のB−B線に沿う断面図である。蓋部12を全閉状態とした時には、前述したように第1波形の段差部24の中間凹部が本体1の弾性係止部13と係合するとともに、蓋部12の開蓋方向片端部27が本体1の保守部端部26に接当して蓋部12の閉止時位置が定まる。この状態は通常稼働時の状態であり、配線ケーブルのみが筐体から露出しており、コネクタ接続部や設定スイッチ類は蓋部に覆われて外部に露出しない。またこの時、機能部3の状況は発光部の光が導光部材を介して導光孔22から視認される。
【0025】
図7,図8を参照すれば、筐体保守、点検時には蓋部12を開方向に操作して蓋部裏面のストッパ係合部23が本体1のストッパ受け部のストッパ10に当接するまで開くと、第2段差部25が本体1の弾性係止部13と係合して蓋部全体が安定姿勢で全開となり、蓋部12は本体1から抜け出ることはなく、保守部2のみが筐体正面から露出し、Ethernet(登録商標)配線や電源配線、その他各種設定の点検、保守作業を行い得る状態となる。また、機能部3の発光部の光が長孔の導光孔22から視認できる。
【0026】
蓋部12を完全に本体1から抜き取るときは、ストッパ10の止めネジ11を外してストッパ10をストッパ受け部9から抜き取り、本体1の弾性係止部13の弾性変形を利用して蓋部12を開蓋方向へ強制移動させることで蓋部12の抜き取りが可能となる。
【0027】
(第2実施形態)
図9は、本発明の第2実施形態に係る筐体構造の斜視図であり、本体1を蓋部12から引き出した状態で示してある。
この第2実施形態では、片側部が開放された枠形の蓋部12が筐体保持側の取付面に固定され、機能部3および保守部2を有する箱状の本体1が蓋部12に挿入されることで本体1が蓋閉されるうになっている。
【0028】
蓋部12はその正面板の両側に本体の挿抜方向に平行な側壁12aを有し、また、開放側の片側部と反対側の側部12bが閉塞されている。平行な側壁12aの取付面に対峙する蓋部の側縁はL片に曲折されてレール部28が形成されている。本体1の機能部3に配置された発光部20に対応した位置で、蓋部12の正面板に、本体の挿抜方向に伸長した導光孔22が形成されている。
【0029】
図1の第1実施形態と同様に、本体1の機能部3には、発光部20の他にアンテナ4、保持手段の弾性係止部13等が設けられ、保守部2には設定スイッチや引出しケーブル等が配置され、また、蓋部12の正面板裏側には、本体機能部の保持手段と係合して本体1の全閉時位置および保守部露出時位置を保持する突起(図示省略)が形成されている。この構成は図1の第1実施形態の場合と同様である。
また、本体1を蓋部12に挿入したとき、不慮の振動その他の原因で本体1が蓋部12から抜け出るのを防止するために、本体1と蓋部12との間にストッパ手段が設けられる。ストッパ手段としては、例えば蓋部の開放側端部の正面板に挿抜自在のストッパ片を設け、本体の挿入後、このストッパ片が本体の引出し側の端部に接当する構造が採用可能である。
【0030】
この第2実施形態の場合は、本体1が取付面に固定されていないので、ケーブルを外して本体1のみを他場所へ移して修理、改造等をするのに有利である。
【0031】
(第3実施形態)
図10は本発明の第3実施形態を示す概略的な斜視図である。この場合は本体1が第1実施形態と同様に筐体保持側の取付面に固定されるが、本体1に被さる蓋部12は図示の如く隅部が本体1に支持ピン30を介して枢着され、この支持ピン30のまわりに、かつ取付面と平行な方向に、回動して本体1を開蓋するように構成されている。
蓋部12の回動動作は本体1の保守部のみが露出する位置と、機能部および保守部が露出する全開位置とで位置保持がなされるようになっている。また、全閉状態で不用意に蓋部が開いてしまわないように蓋部12と本体1との間に適当なストッパ手段が設けられる。
【0032】
蓋部12には支持ピン30を中心とした円弧状の導光孔22が形成され、この導光孔22を通して本体1の機能部に設けた発光部の光が視認される。この構成により、蓋部12の回動位置に拘わらず、常に導光孔22からの光により機能部の状況が把握できる。
【0033】
第3実施形態の場合は、蓋部12と本体1が直線方向に相対移動するスペースがないような場合にも有効であり、また、レールのような蓋部のガイド手段が不要であるため、一層コスト低減が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1実施形態に係る筐体構造の分解斜視図である。
【図2】図1のA部の拡大斜視図である。
【図3】図1に示す筐体構造における導光部材の斜視図である。
【図4】蓋部を保持する保持手段の変形例を示す図2に類似した斜視図である。
【図5】本体に対して蓋部を全閉にした状態の筐体正面(前面)の斜視図である。
【図6】図5のA−A線に沿う断面図である。
【図7】蓋部を全開にして保守部を開放した状態の筐体正面の斜視図である。
【図8】図7のB−B線に沿う断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る筐体構造の斜視図である。
【図10】本発明の第3実施形態を示す概略的な斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
1 本体
2 保守部
3 機能部
5 導光部材
7 レール部
8 ストッパ差込み孔
10 ストッパ
12 蓋部
13 弾性係止部
20 発光部
22 導光孔
23 ストッパ係合部材
24 第1段差部
25 第2段差部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、前記本体に収容された機能部および保守部と、前記機能部および前記保守部を露出可能に前記本体に連結された蓋部とを有し、
前記本体および前記蓋部が取付面に固定される無線基地局の筐体構造であって、
前記本体および前記蓋部が前記取付面に対して平行な方向に沿って相対的に移動可能であるとともに、前記本体および前記蓋部の相対移動を規制する規制手段を有し、
前記規制手段が、前記保守部のみが露出する位置において前記蓋部および前記本体の相対移動を規制可能であることを特徴とする無線基地局の筐体構造。
【請求項2】
前記機能部に設けられて前記機能部の状況を報知するための発光部と、前記蓋部に設けられて前記発光部の光を外部から視認可能とするための導光孔とを有し、
前記導光孔が前記蓋部および前記本体の相対移動方向に沿う長孔であることを特徴とする請求項1に記載の無線基地局の筐体構造。
【請求項3】
前記本体が底面を有する有底枠状であるとともに、前記底面が前記取付面に固定されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無線基地局の筐体構造。
【請求項4】
前記機能部および前記保守部が前記蓋部で覆われる位置と、前記保守部のみが外部露出する位置とにおいて、前記蓋部と前記本体の相対位置を保持する保持手段が設けられることを特徴とする請求項1ないし請求項3のうちいずれかに記載の無線基地局の筐体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−73839(P2007−73839A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−260957(P2005−260957)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】