説明

無線基地局装置、通信制御方法および通信制御プログラム

【課題】無線端末装置の移動動作を適切に制御することにより、通信の安定化を図ることが可能な無線基地局装置、通信制御方法および通信制御プログラムを提供する。
【解決手段】無線基地局装置101は、無線端末装置202が移動動作を行なうことにより複数の無線基地局装置と通信可能な通信システムにおいて、無線端末装置202との間で無線信号を送受信する。無線基地局装置101は、自己の無線基地局装置の形成するセルに在圏する無線端末装置202における無線信号の受信電力の、無線端末装置202の位置変化に対する変化度合いを示す端末電力情報を取得するための端末電力情報取得部22と、端末電力情報取得部22によって取得された端末電力情報に基づいて、自己の無線基地局装置から他の無線基地局装置への無線端末装置202の移動動作のタイミングを制御するための移動動作制御部12とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線基地局装置、通信制御方法および通信制御プログラムに関し、特に、無線端末装置が移動動作を行なうことにより複数の無線基地局装置と通信可能な通信システムにおける無線基地局装置、通信制御方法および通信制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動通信システムでは、半径数百メートルから数十キロメートルのセルすなわち無線端末装置が通信可能なエリアを形成する無線基地局装置(以下、マクロ基地局とも称する。)による通信サービスが提供されてきた。
【0003】
近年、移動通信サービスの加入者数の劇的な増加およびデータ通信による通信トラヒック量の増大から、より半径の小さいセルを形成することによって加入者および通信トラヒックを分散し、また、一定レベルの通信速度をユーザへ安定して提供することが望まれている。また、ビルの超高層化に伴う不感地対策のため、企業フロア内および一般家庭内への無線基地局装置の設置も望まれている。
【0004】
これらの要望と併せて、無線基地局装置で使用される種々のデバイスの処理能力が飛躍的に向上したことによって無線基地局装置の小型化が進み、このような小型化された基地局が注目を集めている。
【0005】
この小型基地局(以下、フェムト基地局とも称する。)が形成するフェムトセル(Femto Cell)の半径は10メートル前後と小さいため、フェムト基地局は、マクロ基地局が形成するマクロセル(Macro Cell)の圏外となりマクロ基地局の設置が困難な屋内および地下街等の場所で使用されることが考えられる。
【0006】
また、フェムト基地局は特定のエリアに多数設置されることから、フェムト基地局を直接コアネットワークに接続することは難しい。このため、特定のエリアに設置された多数のフェムト基地局を一旦、HeNB−GW等のゲートウェイ装置に接続し、フェムト基地局とコアネットワークとをHeNB−GW経由で接続することが考えられる。
【0007】
また、フェムト基地局に加えて、マクロ基地局をベースに、たとえば半径100メートルから200メートルのピコセルを形成するピコ基地局も開発されている。
【0008】
このようなフェムト基地局、ピコ基地局およびマクロ基地局が混在する通信システムであるヘテロジーニアスネットワークでは、たとえばマクロセル内に複数のフェムトセルまたはピコセルが形成される。このため、無線端末装置のハンドオーバが起こりやすくなり、また、ハンドオーバを行なう状況も複雑になることから、ハンドオーバのタイミングが早すぎたり、あるいは遅すぎたりするなど、不適切なハンドオーバ動作が行なわれる場合がある(たとえば、3GPP TR 36.902 V9.3.1 2011.3(非特許文献1)参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】3GPP TR 36.902 V9.3.1 2011.3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
非特許文献1に記載されるような不適切なハンドオーバ動作が行なわれると、通信システムにおいて、通信断および通信トラフィックの増大等、種々の問題が生じる。このような不適切なハンドオーバ動作を抑制し、良好な通信システムを構築する技術が望まれる。
【0011】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、無線端末装置の移動動作を適切に制御することにより、通信の安定化を図ることが可能な無線基地局装置、通信制御方法および通信制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる無線基地局装置は、無線端末装置が移動動作を行なうことにより複数の無線基地局装置と通信可能な通信システムにおいて、無線端末装置との間で無線信号を送受信するための無線基地局装置であって、自己の無線基地局装置の形成するセルに在圏する無線端末装置における上記無線信号の受信電力の、上記無線端末装置の位置変化に対する変化度合いを示す端末電力情報を取得するための端末電力情報取得部と、上記端末電力情報取得部によって取得された上記端末電力情報に基づいて、自己の無線基地局装置から他の無線基地局装置への無線端末装置の移動動作のタイミングを制御するための移動動作制御部とを備える。
【0013】
このような構成により、無線端末装置の位置変化に伴う受信状態の変化を用いて移動動作のタイミングを適切に制御することができるため、不適切な移動動作を抑制し、良好な通信システムを構築することができる。したがって、無線端末装置の移動動作を適切に制御することにより、通信の安定化を図ることができる。
【0014】
(2)好ましくは、上記移動動作制御部は、上記端末電力情報が示す上記変化度合いが大きい場合には、上記移動動作のタイミングが早まるように制御し、上記変化度合いが小さい場合には、上記移動動作のタイミングが遅くなるように制御する。
【0015】
このような構成により、移動動作のタイミングを制御するためのパラメータを適切に設定し、移動動作を最適化することができる。
【0016】
(3)好ましくは、上記移動動作制御部は、上記端末電力情報が示す上記変化度合いが大きい場合には、上記移動動作のタイミング制御幅を大きく設定し、上記変化度合いが小さい場合には、上記移動動作のタイミング制御幅を小さく設定する。
【0017】
このように、パラメータ調整のステップサイズを適応的に変えることにより、移動動作の最適化処理の収束速度および安定性を高めることができる。
【0018】
(4)好ましくは、上記端末電力情報取得部は、無線端末装置において、自己の無線基地局装置が送信する無線信号の受信品質を示す指標が所定値以下となる状態、または上記他の無線基地局装置が送信する無線信号の受信電力が所定値以上となる状態における上記変化度合いを示す端末電力情報を取得する。
【0019】
このような構成により、無線通信システムにおける適切な位置の上記変化度合いを用いて、移動動作のタイミングをより適切に制御することができる。
【0020】
(5)好ましくは、上記無線基地局装置は、さらに、自己の無線基地局装置と上記他の無線基地局装置との距離に基づいて上記変化度合いを推定するための端末電力推定部を備え、上記端末電力情報取得部は、上記端末電力推定部によって推定された上記変化度合いを上記端末電力情報として取得する。
【0021】
このような構成により、基地局間距離の大小に応じて無線端末装置の受信環境を適切に評価し、上記変化度合いをより正確に推定することができる。
【0022】
(6)より好ましくは、上記無線基地局装置は、さらに、上記他の無線基地局装置が送信する無線信号の送信電力と、上記他の無線基地局装置が送信する無線信号の、自己の無線基地局装置の形成するセルにおける受信電力との差に基づいて、自己の無線基地局装置と上記他の無線基地局装置との距離を推定するための基地局間距離推定部を備え、上記端末電力推定部は、上記基地局間距離推定部によって推定された上記距離に基づいて上記変化度合いを推定する。
【0023】
このように、他の無線基地局装置の無線信号の送信電力および自セルにおける当該無線信号の受信電力の差である下りパスロスを用いる構成により、基地局間距離をより正確に推定することができる。また、基地局間距離をユーザが予め無線基地局装置に設定する必要がなくなる。
【0024】
(7)好ましくは、上記無線基地局装置は、さらに、自己の無線基地局装置から送信される無線信号の送信電力と上記他の無線基地局装置から送信される無線信号の送信電力との差に基づいて上記変化度合いを推定するための端末電力推定部を備え、上記端末電力情報取得部は、上記端末電力推定部によって推定された上記変化度合いを上記端末電力情報として取得する。
【0025】
このような構成により、基地局間の送信電力差の大小に応じて無線端末装置の受信環境を適切に評価し、上記変化度合いをより正確に推定することができる。
【0026】
(8)好ましくは、上記無線基地局装置は、さらに、自己の無線基地局装置の形成するセルに在圏する無線端末装置の移動速度に基づいて上記変化度合いを推定するための端末電力推定部を備え、上記端末電力情報取得部は、上記端末電力推定部によって推定された上記変化度合いを上記端末電力情報として取得する。
【0027】
このような構成により、無線端末装置の移動速度の大小に応じて無線端末装置の受信環境を適切に評価し、上記変化度合いをより正確に推定することができる。
【0028】
(9)好ましくは、上記無線基地局装置は、さらに、上記他の無線基地局装置が送信する無線信号の送信電力と、上記他の無線基地局装置が送信する無線信号の、自己の無線基地局装置の形成するセルにおける受信電力との差の時間的な変化に基づいて上記変化度合いを推定するための端末電力推定部を備え、上記端末電力情報取得部は、上記端末電力推定部によって推定された上記変化度合いを上記端末電力情報として取得する。
【0029】
このような構成により、他の無線基地局装置の無線信号の送信電力および自セルにおける当該無線信号の受信電力の差である下りパスロスの時間変化の大小に応じて無線端末装置の受信環境を適切に評価し、上記変化度合いをより正確に推定することができる。
【0030】
(10)好ましくは、上記無線基地局装置は、さらに、自己の無線基地局装置の形成するセルに在圏する無線端末装置が送信する無線信号の送信電力と、自己の無線基地局装置における上記無線信号の受信電力との差の時間的な変化に基づいて上記変化度合いを推定するための端末電力推定部を備え、上記端末電力情報取得部は、上記端末電力推定部によって推定された上記変化度合いを上記端末電力情報として取得する。
【0031】
このような構成により、無線端末装置の無線信号の送信電力および自己の無線基地局装置における当該無線信号の受信電力の差である上りパスロスの時間変化の大小に応じて無線端末装置の受信環境を適切に評価し、上記変化度合いをより正確に推定することができる。
【0032】
(11)好ましくは、上記無線基地局装置は、さらに、自己の無線基地局装置の形成するセルに在圏する無線端末装置が送信する無線信号の周波数と、自己の無線基地局装置が受信した上記無線信号の周波数との差に基づいて上記変化度合いを推定するための端末電力推定部を備え、上記端末電力情報取得部は、上記端末電力推定部によって推定された上記変化度合いを上記端末電力情報として取得する。
【0033】
このような構成により、無線端末装置の無線信号の周波数および自己の無線基地局装置が受信した当該無線信号の周波数の差であるドップラーシフトの大小に応じて無線端末装置の受信環境を適切に評価し、上記変化度合いをより正確に推定することができる。
【0034】
(12)好ましくは、上記無線基地局装置は、さらに、無線端末装置における無線信号の受信電力の時間的な変化に基づいて上記変化度合いを推定するための端末電力推定部を備え、上記端末電力情報取得部は、上記端末電力推定部によって推定された上記変化度合いを上記端末電力情報として取得する。
【0035】
このような構成により、無線端末装置における無線信号の受信電力の時間的な変化であるシャドウィングの大小に応じて無線端末装置の受信環境を適切に評価し、上記変化度合いをより正確に推定することができる。
【0036】
(13)より好ましくは、上記端末電力推定部は、自己の無線基地局装置の形成するセルに在圏する無線端末装置における無線信号の受信電力の測定結果に基づいて上記受信電力の時間的な変化を取得する。
【0037】
このように、無線端末装置の測定結果を用いる構成により、当該無線端末装置におけるシャドウィングをより正確に推定することができる。
【0038】
(14)より好ましくは、上記端末電力推定部は、自己の無線基地局装置の形成するセルに在圏する複数の無線端末装置のうち、移動速度の大きい上記無線端末装置の上記受信電力の時間的な変化に基づいて上記変化度合いを推定する。
【0039】
このように、シャドウィングが大きくなりやすい無線端末装置を選択して受信環境を評価する構成により、上記変化度合いをより正確に推定することができる。
【0040】
(15)またこの発明の別の局面に係わる無線基地局装置は、無線端末装置が移動動作を行なうことにより複数の無線基地局装置と通信可能な通信システムにおいて、無線端末装置との間で無線信号を送受信するための無線基地局装置であって、自己の無線基地局装置と他の無線基地局装置との距離、自己の無線基地局装置および他の無線基地局装置から送信される無線信号の送信電力の差、自己の無線基地局装置の形成するセルに在圏する無線端末装置の移動速度、他の無線基地局装置が送信する無線信号の送信電力と、上記他の無線基地局装置が送信する無線信号の、自己の無線基地局装置の形成するセルにおける受信電力との差の時間的な変化、自己の無線基地局装置の形成するセルに在圏する無線端末装置が送信する無線信号の送信電力と、自己の無線基地局装置における上記無線信号の受信電力との差の時間的な変化、自己の無線基地局装置の形成するセルに在圏する無線端末装置が送信する無線信号の周波数と、自己の無線基地局装置が受信した上記無線信号の周波数との差、ならびに無線端末装置における無線信号の受信電力の時間的な変化のうち、少なくともいずれか1つの情報を取得するための情報取得部と、上記情報取得部によって取得された上記情報に基づいて、自己の無線基地局装置から上記他の無線基地局装置への無線端末装置の移動動作のタイミングを制御するための移動動作制御部とを備える。
【0041】
このような構成により、無線端末装置の受信環境を適切に評価し、移動動作のタイミングを適切に制御することができるため、不適切な移動動作を抑制し、良好な通信システムを構築することができる。したがって、無線端末装置の移動動作を適切に制御することにより、通信の安定化を図ることができる。
【0042】
(16)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる通信制御方法は、無線端末装置が移動動作を行なうことにより複数の無線基地局装置と通信可能な通信システムにおいて、無線端末装置との間で無線信号を送受信するための無線基地局装置における通信制御方法であって、自己の無線基地局装置の形成するセルに在圏する無線端末装置における上記無線信号の受信電力の、上記無線端末装置の位置変化に対する変化度合いを示す端末電力情報を取得するステップと、取得した上記端末電力情報に基づいて、自己の無線基地局装置から他の無線基地局装置への無線端末装置の移動動作のタイミングを制御するステップとを含む。
【0043】
このような構成により、無線端末装置の位置変化に伴う受信状態の変化を用いて移動動作のタイミングを適切に制御することができるため、不適切な移動動作を抑制し、良好な通信システムを構築することができる。したがって、無線端末装置の移動動作を適切に制御することにより、通信の安定化を図ることができる。
【0044】
(17)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる通信制御プログラムは、無線端末装置が移動動作を行なうことにより複数の無線基地局装置と通信可能な通信システムにおいて、無線端末装置との間で無線信号を送受信するための無線基地局装置における通信制御プログラムであって、コンピュータに、自己の無線基地局装置の形成するセルに在圏する無線端末装置における上記無線信号の受信電力の、上記無線端末装置の位置変化に対する変化度合いを示す端末電力情報を取得するステップと、取得した上記端末電力情報に基づいて、自己の無線基地局装置から他の無線基地局装置への無線端末装置の移動動作のタイミングを制御するステップとを実行させるためのプログラムである。
【0045】
このような構成により、無線端末装置の位置変化に伴う受信状態の変化を用いて移動動作のタイミングを適切に制御することができるため、不適切な移動動作を抑制し、良好な通信システムを構築することができる。したがって、無線端末装置の移動動作を適切に制御することにより、通信の安定化を図ることができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、無線端末装置の移動動作を適切に制御することにより、通信の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態に係る無線通信システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおけるハンドオーバ動作のシーケンスの一例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおいて、不適切なハンドオーバ動作(Too Late HO)が生じた状況の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおける、不適切なハンドオーバ動作(Too Late HO)およびその検出処理のシーケンスの一例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおいて、不適切なハンドオーバ動作(Too Early HO)が生じた状況の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおいて、不適切なハンドオーバ動作(Too Early HO)が生じた状況の一例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおける、不適切なハンドオーバ動作(Too Early HO)およびその検出処理のシーケンスの一例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおいて、不適切なハンドオーバ動作(HO to Wrong Cell)が生じた状況の一例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおける、不適切なハンドオーバ動作(HO to Wrong Cell)およびその検出処理のシーケンスの一例を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおける、無線端末装置の受信品質のシミュレーション結果を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおいて、無線端末装置が測定結果通知を送信するイベントA1を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおいて、無線端末装置が測定結果通知を送信するイベントA2を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおいて、無線端末装置が測定結果通知を送信するイベントA3を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおいて、無線端末装置が測定結果通知を送信するイベントA4を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおいて、無線端末装置が測定結果通知を送信するイベントA5を示す図である。
【図16】本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおいて、ヒステリシスHSの調整によるハンドオーバ動作のタイミング制御を示す図である。
【図17】本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおいて、TTTの調整によるハンドオーバ動作のタイミング制御を示す図である。
【図18】本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおいて、オフセットOSTの調整によるハンドオーバ動作のタイミング制御を示す図である。
【図19】本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおける、各位置の無線信号の受信電力の一例を示す図である。
【図20】本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおいて、ハンドオーバ動作のタイミングを制御するためのパラメータの他の例を説明するための図である。
【図21】本発明の実施の形態に係る無線基地局装置の構成を示す図である。
【図22】本発明の実施の形態に係る無線基地局装置における制御部の構成を示す図である。
【図23】基地局間距離による電力変化量の相違を説明するための図である。
【図24】本発明の実施の形態に係る無線基地局装置がハンドオーバ動作の最適化処理を行なう際の動作手順を定めたシーケンス図である。
【図25】基地局間の送信電力差による電力変化量の相違を説明するための図である。
【図26】本発明の実施の形態に係る無線基地局装置がハンドオーバ動作の最適化処理を行なう際の動作手順の他の例を定めたシーケンス図である。
【図27】本発明の実施の形態に係る無線基地局装置がハンドオーバ動作の最適化処理を行なう際の動作手順の他の例を定めたシーケンス図である。
【図28】本発明の実施の形態に係る無線基地局装置がハンドオーバ動作の最適化処理を行なう際の動作手順の他の例を定めたシーケンス図である。
【図29】本発明の実施の形態に係る無線基地局装置がハンドオーバ動作の最適化処理を行なう際の動作手順の他の例を定めたシーケンス図である。
【図30】本発明の実施の形態に係る無線基地局装置がハンドオーバ動作の最適化処理を行なう際の動作手順の他の例を定めたシーケンス図である。
【図31】本発明の実施の形態に係る無線基地局装置がハンドオーバ動作の最適化処理を行なう際の動作手順の他の例を定めたシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0049】
無線基地局装置は、自らの形成するセルおよび周辺セルについての情報、すなわち無線信号の周波数および周辺セルのID(identification)等を無線端末装置に通知する。無線端末装置は、無線基地局装置から通知された情報に基づいて、周辺セルの検出および測定を行なう。無線端末装置は、この測定結果に基づいて、周辺セルへの移動を開始する。ここで、無線端末装置の「移動」とは、ハンドオーバを意味することに加えて、アイドル状態の無線端末装置が今後通信を開始する、すなわち通話またはデータ通信を開始する際にどのセルを介して通信を行なうかを選択することを意味する。
【0050】
たとえば、無線端末装置が無線基地局装置と通信しているときには、無線端末装置の移動先は無線基地局装置またはコアネットワークにおける上位装置が決定する。また、たとえば、無線端末装置が無線基地局装置と通信していないときには、無線端末装置の移動先は無線端末装置が決定する。
【0051】
また、ハンドオーバとは、通話中またはデータ通信中の無線端末装置の通信相手となる無線基地局装置が切り替えられることを意味する。
【0052】
また、無線端末装置がセルに在圏している、とは、無線端末装置が、当該セルを形成する無線基地局装置を通信先として選択し、かつ当該無線基地局装置と通信可能な状態または通信中である状態を意味する。
【0053】
フェムトセルおよびアクセスモードは、3GPP(Third Generation Partnership Project) SPEC TS22.220において以下のように説明されている。すなわち、フェムト基地局は、無線インタフェースを介して接続されている無線端末装置を、IPバックホール(backhaul)を用いて、移動通信事業者網に接続する顧客構内装置である。
【0054】
また、フェムトセルのアクセスモードにおいて、クローズドアクセスモードのフェムト基地局は、関連するCSG(Closed Subscriber Group)メンバーにのみサービスを提供する。また、ハイブリッドモードのフェムト基地局は、関連するCSGメンバーおよびCSGノンメンバーにサービスを提供する。また、オープンアクセスモードのフェムト基地局は、通常の基地局として動作する。
【0055】
本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおいても、このような3GPPの定義を適用してもよい。
【0056】
また、上記定義と合わせて、あるいは別個に、以下のような定義を適用することも可能である。
【0057】
マクロ基地局およびピコ基地局は、事業者の管理下にあり、事業者と契約している無線基地局装置が通信可能な無線基地局装置である。また、マクロ基地局およびピコ基地局は、基本的に電源がオフになることはないと考えられる。
【0058】
また、フェムト基地局は、主に個人または法人の建物内に設置され、ユーザの事情により移動するまたは電源がオフとなる可能性がある無線基地局装置である。
【0059】
また、フェムト基地局は、オープン/ハイブリッド/クローズドのいずれかのアクセスモードで動作する。フェムト基地局は、クローズドアクセスモードで動作する場合には、登録済みのメンバー(端末)のみ接続可能となる。また、クローズドアクセスモードで動作する場合には、登録済みのメンバーにのみサービスを提供する。また、ハイブリッドモードで動作する場合には、登録済みのメンバー、および未登録のメンバーすなわちノンメンバーの両方にサービスを提供する。また、オープンアクセスモードで動作する場合には、マクロ基地局およびピコ基地局と同じ動作をする。
【0060】
[構成および基本動作]
図1は、本発明の実施の形態に係る無線通信システムの構成を示す図である。
【0061】
図1を参照して、無線通信システムは、たとえば3GPP(Third Generation Partnership Project)で規格化されたLTE(Long Term Evolution)に従う移動体通信システムであり、無線基地局装置101A,101Bを備える。図1では、2つの無線基地局装置を代表的に示しているが、さらに多数の無線基地局装置が設けられてもよい。
【0062】
無線基地局装置101A,101Bは、たとえばフェムト基地局、ピコ基地局またはマクロ基地局である。
【0063】
無線基地局装置101Aは、セルCAを形成し、セルCA内に存在する無線端末装置202と無線信号を送受信することにより、当該無線端末装置202と通信することが可能である。無線基地局装置101Bは、セルCBを形成し、セルCB内に存在する無線端末装置202と無線信号を送受信することにより、当該無線端末装置202と通信することが可能である。
【0064】
ここで、無線端末装置からコアネットワークへの方向を上り方向と称し、コアネットワークから無線端末装置への方向を下り方向と称する。
【0065】
本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおける無線基地局装置および無線端末装置は、以下の各シーケンスの各ステップを含むプログラムを図示しないメモリから読み出して実行する。このプログラムは、外部からインストールすることができる。このインストールされるプログラムは、たとえば記録媒体に格納された状態で流通する。
【0066】
図2は、本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおけるハンドオーバ動作のシーケンスの一例を示す図である。
【0067】
ここでは、図1に示すように、無線端末装置202が、セルCA内に位置し、無線基地局装置101Aと通信中である状態から、セルCAおよびセルCBの重複領域へ移動した場合を想定する。
【0068】
図2を参照して、まず、無線基地局装置101Aは、自己と通信中の無線端末装置202の測定対象となる周波数と、当該周波数の無線信号を送信する他の無線基地局装置とを設定する(ステップS1)。
【0069】
次に、無線基地局装置101Aは、設定した他の無線基地局装置から送信される無線信号の受信レベルを無線端末装置202に測定させるための測定開始要求(Measurement Configuration)を無線端末装置202へ送信する。この測定開始要求には、周辺セル情報、すなわち測定対象となる無線基地局装置のセルIDが含まれる。また、この測定開始要求には、各無線基地局装置の送信周波数が含まれる(ステップS2)。
【0070】
次に、無線端末装置202は、無線基地局装置101Aから測定開始要求を受信して、電力測定処理(Measurement)を開始する、すなわち受信した測定開始要求の示す周波数において、測定開始要求の示す無線基地局装置から送信される無線信号の受信電力を測定する(ステップS3)。
【0071】
次に、無線端末装置202は、この受信電力の測定結果を示す測定結果通知(Measurement Report)を無線基地局装置101Aへ送信する。たとえば、無線端末装置202は、受信電力の測定を定期的に行ない、無線基地局装置101Aとの通信状態が悪くなった場合、および無線基地局装置101A以外の他の無線基地局装置との通信状態が良くなった場合に、測定結果通知を無線基地局装置101Aへ送信する(ステップS4)。
【0072】
次に、無線基地局装置101Aは、無線端末装置202から受信した測定結果通知に基づいて、セルIDごとの測定結果を示す測定情報を取得し、図示しない記憶部に保存する(ステップS5)。
【0073】
次に、無線基地局装置101Aは、無線端末装置202から受信した測定結果通知に基づいて、当該無線端末装置202がハンドオーバすべきか否かを判断し、ハンドオーバすべきであると判断すると、周辺セル情報を参照してたとえば無線基地局装置101Bをハンドオーバ先として決定する(ステップS6)。
【0074】
次に、無線基地局装置101Aは、無線基地局装置101Bを示すハンドオーバ要求を上位装置へ送信する(ステップS7)。
【0075】
次に、上位装置は、無線基地局装置101Aからハンドオーバ要求を受信して、無線基地局装置101Bへ当該ハンドオーバ要求を送信する(ステップS8)。
【0076】
次に、無線基地局装置101Bは、上位装置からハンドオーバ要求を受信して、上位装置へ当該ハンドオーバ要求に対するハンドオーバ応答を送信する(ステップS9)。
【0077】
次に、上位装置は、無線基地局装置101Bからハンドオーバ応答を受信して、無線基地局装置101Aへハンドオーバ指示を送信する(ステップS10)。
【0078】
次に、無線基地局装置101Aは、上位装置からハンドオーバ指示を受信して、無線端末装置202へRRC(Radio Resource Control)コネクション再構成指示(RRC Connection Reconfiguration)を送信する(ステップS11)。
【0079】
次に、無線基地局装置101Aは、上位装置へ自己の通信状態等を示す状態通知を送信する(ステップS12)。
【0080】
次に、上位装置は、無線基地局装置101Aから状態通知を受信して、無線基地局装置101Bへ無線端末装置202との通信内容等を示す状態通知を送信する(ステップS13)。
【0081】
また、無線端末装置202および無線基地局装置101B間でRRCコネクションが確立されると、無線端末装置202は、無線基地局装置101BへRRCコネクション再構成完了通知(RRC Connection Reconfiguration Complete)を送信する(ステップS14)。
【0082】
次に、無線基地局装置101Bは、無線端末装置202からRRCコネクション再構成完了通知を受信して、上位装置へハンドオーバ完了通知を送信する(ステップS15)。
【0083】
次に、上位装置は、無線基地局装置101Bからハンドオーバ完了通知を受信して、端末情報解放指示を無線基地局装置101Aへ送信する(ステップS16)。
【0084】
次に、無線基地局装置101Aは、上位装置から端末情報解放指示を受信して、無線端末装置202に関する情報を解放し、上位装置へ端末情報解放完了通知を送信する(ステップS17)。
【0085】
[不適切なハンドオーバ動作の例]
以下、無線端末装置202と通信中の無線基地局装置またはハンドオーバ元の無線基地局装置をサービング基地局とも称し、ハンドオーバ先の無線基地局装置を周辺基地局とも称する。
【0086】
図3は、本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおいて、不適切なハンドオーバ動作(Too Late HO)が生じた状況の一例を示す図である。
【0087】
図4は、本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおける、不適切なハンドオーバ動作(Too Late HO)およびその検出処理のシーケンスの一例を示す図である。
【0088】
”Too Late HO”は、たとえば以下のような場合をいう。すなわち、ハンドオーバが始まる前、あるいはハンドオーバ処理の最中に、ハンドオーバ元の無線基地局装置について無線リンク断(RLF:Radio Link Failure)が発生し、かつハンドオーバ元の無線基地局装置以外の無線基地局装置に対する無線端末装置202の接続再確立が生じた場合である。
【0089】
”Too Late HO”の検出方法は、たとえば以下のようになる。すなわち、無線端末装置202が無線基地局装置101AについてRLFを起こした後に無線基地局装置101Bに対して無線リンクを再確立した場合、無線基地局装置101Bが無線基地局装置101Aに対してRLF通知を送信する。これにより、無線基地局装置101Aは”Too Late HO”を検出する。
【0090】
ここでは、図3に示すように、無線端末装置202は、セルCA内に位置し、無線基地局装置101Aと通信中である場合を想定する。
【0091】
図3および図4を参照して、まず、無線端末装置202は、各無線基地局装置から送信される無線信号の受信電力を測定し、測定した受信電力の測定結果を示す測定結果通知を無線基地局装置101Aへ送信する(ステップS51)。
【0092】
次に、無線基地局装置101Aは、無線端末装置202から受信した測定結果通知に基づいて、当該無線端末装置202のハンドオーバを行なうべきか否かを判断する。無線基地局装置101Aは、当該無線端末装置202のハンドオーバを行なうべきであると判断すると、周辺セル情報を参照してたとえば無線基地局装置101Bをハンドオーバ先として決定する(ステップS52)。
【0093】
次に、無線基地局装置101Aは、無線基地局装置101Bを示すハンドオーバ要求を、基地局間インタフェースであるX2インタフェース経由で無線基地局装置101Bへ送信する(ステップS53)。
【0094】
次に、無線基地局装置101Bは、無線基地局装置101Aからハンドオーバ要求を受信して、無線基地局装置101Aへ当該ハンドオーバ要求に対するハンドオーバ応答をX2インタフェース経由で送信する(ステップS54)。
【0095】
ここで、ネットワーク側のハンドオーバの準備中、すなわち無線基地局装置101Aおよび101Bが上記のようなハンドオーバのためのメッセージの送受信を行っている間に、無線端末装置202が、セルCAの圏外、かつセルCBの圏内に移動する(ステップS55)。
【0096】
この無線端末装置202の移動により、無線基地局装置101Aから送信されるハンドオーバを指示するためのRRCコネクション再構成指示(ステップS56)が無線端末装置202に届かなくなり、RLFが発生してしまう(ステップS57)。
【0097】
次に、無線端末装置202は、RLF発生を検出すると、無線信号の受信電力の測定等によって周辺の無線基地局装置の探索を行ない、探索した無線基地局装置101Bに再接続するために、RRCコネクション再確立要求(RRC Connection Reestablishment Request)を送信する(ステップS58)。
【0098】
次に、無線基地局装置101Bは、無線端末装置202からRRCコネクション再確立要求を受信して、RRCコネクション再確立応答を無線端末装置202へ送信する(ステップS59)。これにより、無線端末装置202および無線基地局装置101B間でRRCコネクションが確立される。
【0099】
次に、無線端末装置202は、無線基地局装置101BへRRCコネクション再確立完了通知(RRC Connection Reestablishment Complete)を送信する(ステップS60)。
【0100】
このRRCコネクション再確立完了通知は、たとえば”rlf-InfoAvailable”というパラメータを含む。無線端末装置202は、このパラメータを設定してRRCコネクション再確立完了通知を送信する。これにより、無線基地局装置101Bは、当該無線端末装置202についてRLFの発生があったことを認識する。無線基地局装置101Bは、RLFの詳細な情報を取得するため、端末情報要求(UE Information Request)を無線端末装置202へ送信する(ステップS61)。
【0101】
次に、無線端末装置202は、無線基地局装置101Bから端末情報要求を受信して、RLFレポートを含む端末情報応答(UE Information Response)を無線基地局装置101Bへ送信する(ステップS62)。RLFレポートは、RLFの発生した無線基地局装置のPCI(Physical Cell ID)、RRCコネクション再確立の発生した無線基地局装置のPCIおよびECGI(E- UTRAN Cell Global Identifier)ならびに自己の無線端末装置202のC−RNTI(Cell Radio Network Temporary Identifier)等を含む。ここでは、RLF発生のPCIは無線基地局装置101AのIDであり、RRCコネクション再確立発生のPCIおよびECGIは無線基地局装置101BのIDであり、C−RNTIは無線基地局装置101Aが付与したIDである。
【0102】
次に、無線基地局装置101Bは、無線端末装置202から受信したRLFレポートのPCIを参照することにより、無線基地局装置101AにおいてRLFが発生したことを認識する。そして、無線基地局装置101Bは、”Too Late HO”であることを通知するために、当該RLFレポートの内容を含むRLF通知(RLF INDICATION)をX2インタフェース経由で無線基地局装置101Aへ送信する(ステップS63)。
【0103】
次に、無線基地局装置101Aは、無線基地局装置101Bから受信したRLF通知のPCI、ECGIおよびC−RNTIを参照することにより、セルCBへの”Too Late HO”が発生したことを認識する(ステップS64)。
【0104】
次に、無線基地局装置101Aは、セルCBへの”Too Late HO”の発生が抑制されるように、ハンドオーバ動作の最適化処理を実行する(ステップS65)。
【0105】
図5および図6は、本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおいて、不適切なハンドオーバ動作(Too Early HO)が生じた状況の一例を示す図である。
【0106】
図5および図6を参照して、無線基地局装置101Bの形成するセルCBは、無線基地局装置101Bの設置エリアを含むセルCB1と、セルCA内に形成された、無線基地局装置101Bの設置エリアを含まないセルCB2とで構成される。
【0107】
図7は、本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおける、不適切なハンドオーバ動作(Too Early HO)およびその検出処理のシーケンスの一例を示す図である。
【0108】
”Too Early HO”は、たとえば以下のような場合をいう。すなわち、無線端末装置202がハンドオーバ先の無線基地局装置に対する接続を成功した後、RLFが短時間で発生し、かつ、ハンドオーバ元の無線基地局装置に対して、当該無線端末装置202の接続再確立が生じた場合である。
【0109】
”Too Early HO”の検出方法は、たとえば以下のようになる。すなわち、ハンドオーバ先の無線基地局装置101Bは、RLFレポートをハンドオーバ元の無線基地局装置101Aから受信した場合において、当該受信タイミングからさかのぼって所定時間内に、当該無線端末装置202の自己へのハンドオーバの完了による端末情報開放指示を無線基地局装置101Aへ送信していたときに、”Too Early HO”である旨を無線基地局装置101Aに通知する。
【0110】
ここで、無線基地局装置101Bは、上記所定時間を計測するために、タイマを用いる。これにより、無線基地局装置101Bは、RLFレポートを受信した場合において、自己の”Too Late HO”によってRLFが発生したのか、無線基地局装置101Aの”Too Early HO”によってRLFが発生したのかを判別することができる。
【0111】
ここでは、図5に示すように、無線端末装置202が、セルCA内に位置し、無線基地局装置101Aと通信中である状態から、セルCB2内へ移動した場合(ステップS70)を想定する。
【0112】
図5〜図7を参照して、まず、無線端末装置202は、無線基地局装置から送信される無線信号の受信電力を測定し、測定した受信電力の測定結果を示す測定結果通知を無線基地局装置101A(Source eNB, Serving eNB)へ送信する(ステップS71)。
【0113】
次に、無線基地局装置101Aは、無線端末装置202から受信した測定結果通知に基づいて、当該無線端末装置202のハンドオーバを行なうべきか否かを判断する。無線基地局装置101Aは、当該無線端末装置202のハンドオーバを行なうべきであると判断すると、周辺セル情報を参照してたとえば無線基地局装置101Bをハンドオーバ先として決定する(ステップS72)。
【0114】
次に、無線基地局装置101Aは、無線基地局装置101Bを示すハンドオーバ要求を、基地局間インタフェースであるX2インタフェース経由で無線基地局装置101Bへ送信する(ステップS73)。
【0115】
次に、無線基地局装置101Bは、無線基地局装置101Aからハンドオーバ要求を受信して、無線基地局装置101Aへ当該ハンドオーバ要求に対するハンドオーバ応答をX2インタフェース経由で送信する(ステップS74)。
【0116】
次に、無線基地局装置101Aは、無線基地局装置101Bからハンドオーバ応答を受信して、無線端末装置202へRRCコネクション再構成指示(RRC Connection Reconfiguration)を送信する(ステップS75)。
【0117】
次に、無線端末装置202および無線基地局装置101B間でRRCコネクションが確立されると、無線端末装置202は、RRCコネクション再構成完了通知(RRC Connection Reconfiguration Complete)を無線基地局装置101Bへ送信する(ステップS76)。
【0118】
次に、無線基地局装置101Bは、無線端末装置202からRRCコネクション再構成完了通知を受信して、端末情報解放指示を無線基地局装置101Aへ送信する(ステップS77)。
【0119】
また、無線基地局装置101Bは、無線端末装置202のセルCBにおける滞在時間を計測するために、タイマをスタートさせる(ステップS78)。
【0120】
次に、無線基地局装置101Aは、無線基地局装置101Bから端末情報解放指示を受信して、無線端末装置202に関する情報(UE Context)を解放する(ステップS79)。
【0121】
以上により、無線端末装置202の無線基地局装置101Aから無線端末装置101Bへのハンドオーバが完了する(ステップS80)。
【0122】
ここで、無線端末装置202が、測定結果通知(Measurement Report)を無線基地局装置101Bへ送信する前に、セルCBの圏外かつセルCAの圏内に移動する(ステップS81)。
【0123】
そうすると、無線端末装置202は、無線基地局装置101Bと通信できなくなることから、RLFが発生してしまう(ステップS83)。
【0124】
次に、無線端末装置202は、RLF発生を検出すると、無線信号の受信電力の測定等によって周辺の無線基地局装置の探索を行ない、探索した無線基地局装置101Aに再接続するために、RRCコネクション再確立要求(RRC Connection Reestablishment Request)を送信する(ステップS84)。
【0125】
次に、無線基地局装置101Aは、当該無線端末装置202に関する情報(UE Context)を解放済みであり、保持していないことから、当該無線端末装置202からのRRCコネクション再確立要求を受け入れることができず(ステップS85)、RRCコネクション再確立拒絶を当該無線端末装置202へ送信する(ステップS86)。
【0126】
次に、無線端末装置202は、RRCコネクション再確立拒絶を無線基地局装置101Aから受信すると、無線基地局装置101Aと通常の接続手順をスタートさせる(ステップS87)。
【0127】
すなわち、まず、無線端末装置202は、RRCコネクション要求(RRC Connection Request)を無線基地局装置101Aへ送信する(ステップS88)。
【0128】
次に、無線基地局装置101Aは、無線端末装置202からRRCコネクション要求を受信して、RRCコネクション情報(RRC Connection Setup)を無線端末装置202へ送信する(ステップS89)。
【0129】
次に、無線端末装置202は、無線基地局装置101AからRRCコネクション情報を受信して、RRCコネクション完了通知(RRC Connection Setup Complete)を送信する(ステップS90)。
【0130】
次に、無線基地局装置101Aは、無線端末装置202からRRCコネクション完了通知を受信して、セキュリティ情報(Security Mode Command)を無線端末装置202へ送信する(ステップS91)。
【0131】
次に、無線端末装置202は、無線基地局装置101Aからセキュリティ情報を受信して、セキュリティ完了通知(Security Mode Complete)を無線基地局装置101Aへ送信する(ステップS92)。
【0132】
次に、無線基地局装置101Aは、無線端末装置202へRRCコネクション再構成指示(RRC Connection Reconfiguration)を送信する(ステップS93)。
【0133】
次に、無線端末装置202および無線基地局装置101A間でRRCコネクションが確立されると、無線端末装置202は、無線基地局装置101AへRRCコネクション再構成完了通知(RRC Connection Reconfiguration Complete)を送信する(ステップS94)。
【0134】
ここで、RRCコネクション完了通知およびRRCコネクション再構成完了通知は、たとえば”rlf-InfoAvailable”というパラメータを含む。無線端末装置202は、このパラメータを設定してRRCコネクション完了通知およびRRCコネクション再構成完了通知を送信する。これにより、無線基地局装置101Aは、当該無線端末装置202についてRLFの発生があったことを認識する。無線基地局装置101Aは、RLFの詳細な情報を取得するため、端末情報要求(UE Information Request)を無線端末装置202へ送信する(ステップS95)。
【0135】
次に、無線端末装置202は、無線基地局装置101Aから端末情報要求を受信して、RLFレポートを含む端末情報応答(UE Information Response)を無線基地局装置101Aへ送信する(ステップS96)。RLFレポートは、RLFの発生した無線基地局装置のPCI、RRCコネクション再確立の発生した無線基地局装置のPCIおよびECGIならびに自己の無線端末装置202のC−RNTIを含む。ここでは、RLF発生のPCIは無線基地局装置101BのIDであり、RRCコネクション再確立発生のPCIおよびECGIは無線基地局装置101AのIDであり、C−RNTIは無線基地局装置101Bが付与したIDである。
【0136】
次に、無線基地局装置101Aは、無線端末装置202から受信したRLFレポートのPCIを参照することにより、無線基地局装置101BにおいてRLFが発生しことを認識し、セルCAへの”Too Late HO”が発生したと判断する(ステップS97)。
【0137】
次に、無線基地局装置101Aは、”Too Late HO”であることを通知するために、当該RLFレポートの内容を含むRLF通知(RLF INDICATION)をX2インタフェース経由で無線基地局装置101Bへ送信する(ステップS98)。
【0138】
次に、無線基地局装置101Bは、無線基地局装置101AからRLF通知を受信すると、スタートさせておいたタイマを確認し、タイマが動作している場合、すなわちタイマをスタートさせてから所定時間経過していない場合には、セルCAへの”Too Late HO”ではなく、セルCBへの”Too Early HO”であると判断する。なお、無線基地局装置101Bは、無線基地局装置101AからRLF通知を受信したときにタイマが動作していない場合、すなわちタイマをスタートさせてから上記所定時間経過している場合には、セルCAへの”Too Late HO”であると判断する。
【0139】
無線基地局装置101Bは、セルCBへの”Too Early HO”であると判断すると(ステップS99)、ハンドオーバレポートを無線基地局装置101Aへ送信する(ステップS100)。このハンドオーバレポートは、たとえば”Handover Report Type”というパラメータを含む。無線基地局装置101Bは、このパラメータを所定値に設定することにより、”Too Early HO”を無線基地局装置101Aに通知する。
【0140】
次に、無線基地局装置101Aは、無線基地局装置101Bから当該ハンドオーバレポートを受信して、セルCBへの”Too Early HO”が発生したことを認識し(ステップS101)、”Too Early HO”の発生が抑制されるように、ハンドオーバ動作の最適化処理を実行する(ステップS102)。
【0141】
図8は、本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおいて、不適切なハンドオーバ動作(HO to Wrong Cell)が生じた状況の一例を示す図である。
【0142】
図8を参照して、無線通信システムは、図1に示す無線通信システムと比べて、さらに、無線基地局装置101Cを備える。無線基地局装置101Cは、たとえばフェムト基地局、ピコ基地局またはマクロ基地局である。
【0143】
無線基地局装置101Cは、セルCCを形成し、セルCC内に存在する無線端末装置202と無線信号を送受信することにより、当該無線端末装置202と通信することが可能である。
【0144】
図9は、本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおける、不適切なハンドオーバ動作(HO to Wrong Cell)およびその検出処理のシーケンスの一例を示す図である。
【0145】
”HO to Wrong Cell”は、たとえば以下のような場合をいう。すなわち、無線端末装置202がハンドオーバ先の無線基地局装置との接続に成功した後、短時間でRLFが発生し、かつハンドオーバ元およびハンドオーバ先の無線基地局装置以外の無線基地局装置に対する、無線端末装置202の接続再確立が生じた場合である。
【0146】
”HO to Wrong Cell”の検出方法は、たとえば以下のようになる。すなわち、ハンドオーバ先の無線基地局装置101Bは、RLFレポートをハンドオーバ元の無線基地局装置101A以外の無線基地局装置101Cから受信した場合において、当該受信タイミングからさかのぼって所定時間内に、当該無線端末装置202の自己へのハンドオーバの完了による端末情報開放指示を無線基地局装置101Aへ送信していたときに、”HO to Wrong Cell”である旨を無線基地局装置101Aに通知する。
【0147】
ここで、無線基地局装置101Bは、上記所定時間を計測するために、タイマを用いる。これにより、無線基地局装置101Bは、RLFレポートを受信した場合において、自己の”Too Late HO”によってRLFが発生したのか、無線基地局装置101Aの”HO to Wrong Cell”によってRLFが発生したのかを判別することができる。
【0148】
ここでは、図8に示すように、無線端末装置202が、セルCA内に位置し、無線基地局装置101Aと通信中である状態から、仮想セルCBVおよびセルCAの重複領域へ移動した場合(ステップS110)を想定する。仮想セルCBVは、無線基地局装置101Aから無線基地局装置101Bへのハンドオーバを促進するために、パラメータであるオフセットOSTに従ってセルCBから拡大された仮想的なセルである。この場合、オフセットOSTは、無線基地局装置101Aの保持するパラメータである。
【0149】
図8および図9を参照して、まず、無線端末装置202は、無線基地局装置から送信される無線信号の受信電力を測定し、測定した受信電力の測定結果を示す測定結果通知を無線基地局装置101Aへ送信する(ステップS111)。
【0150】
次に、無線基地局装置101Aは、無線端末装置202から受信した測定結果通知に基づいて、当該無線端末装置202のハンドオーバを行なうべきか否かを判断する。無線基地局装置101Aは、当該無線端末装置202のハンドオーバを行なうべきであると判断すると、周辺セル情報を参照してたとえば無線基地局装置101Bをハンドオーバ先として決定する(ステップS112)。
【0151】
次に、無線基地局装置101Aは、無線基地局装置101Bを示すハンドオーバ要求を、基地局間インタフェースであるX2インタフェース経由で無線基地局装置101Bへ送信する(ステップS113)。
【0152】
次に、無線基地局装置101Bは、無線基地局装置101Aからハンドオーバ要求を受信して、無線基地局装置101Aへ当該ハンドオーバ要求に対するハンドオーバ応答をX2インタフェース経由で送信する(ステップS114)。
【0153】
次に、無線基地局装置101Aは、無線基地局装置101Bからハンドオーバ応答を受信して、無線端末装置202へRRCコネクション再構成指示(RRC Connection Reconfiguration)を送信する(ステップS115)。
【0154】
次に、無線端末装置202および無線基地局装置101B間でRRCコネクションが確立されると、無線端末装置202は、RRCコネクション再構成完了通知(RRC Connection Reconfiguration Complete)を無線基地局装置101Bへ送信する(ステップS116)。
【0155】
次に、無線基地局装置101Bは、無線端末装置202からRRCコネクション再構成完了通知を受信して、端末情報解放指示を無線基地局装置101Aへ送信する(ステップS117)。
【0156】
また、無線基地局装置101Bは、無線端末装置202のセルCBにおける滞在時間を計測するために、タイマをスタートさせる(ステップS118)。
【0157】
次に、無線基地局装置101Aは、無線基地局装置101Bから端末情報解放指示を受信して、無線端末装置202に関する情報(UE Context)を解放する(ステップS119)。
【0158】
以上により、無線端末装置202の無線基地局装置101Aから無線端末装置101Bへのハンドオーバが完了する(ステップS120)。
【0159】
ここで、無線端末装置202が、測定結果通知(Measurement Report)を無線基地局装置101Bへ送信する前に、セルCBの圏外、かつ仮想セルCBVおよびセルCCの圏内に移動する(ステップS121)。
【0160】
そうすると、無線端末装置202は、無線基地局装置101C(Other eNB)から送信される無線信号の干渉が大きく、無線基地局装置101Bと通信できなくなることから、RLFが発生してしまう(ステップS123)。
【0161】
次に、無線端末装置202は、RLF発生を検出すると、無線信号の受信電力の測定等によって周辺の無線基地局装置の探索を行なう。この場合、無線基地局装置101Cからの無線信号の受信電力が最大となることから、無線端末装置202は、探索した無線基地局装置101Cに再接続するために、RRCコネクション再確立要求(RRC Connection Reestablishment Request)を無線基地局装置101Cへ送信する(ステップS124)。
【0162】
次に、無線基地局装置101Cは、当該無線端末装置202に関する情報(UE Context)を保持していないことから、当該無線端末装置202からのRRCコネクション再確立要求を受け入れることができず(ステップS125)、RRCコネクション再確立拒絶を当該無線端末装置202へ送信する(ステップS126)。
【0163】
次に、無線端末装置202は、RRCコネクション再確立拒絶を無線基地局装置101Cから受信して、無線基地局装置101Cと通常の接続手順をスタートさせる(ステップS127)。
【0164】
すなわち、まず、無線端末装置202は、RRCコネクション要求(RRC Connection Request)を無線基地局装置101Cへ送信する(ステップS128)。
【0165】
次に、無線基地局装置101Cは、無線端末装置202からRRCコネクション要求を受信して、RRCコネクション情報(RRC Connection Setup)を無線端末装置202へ送信する(ステップS129)。
【0166】
次に、無線端末装置202は、無線基地局装置101CからRRCコネクション情報を受信して、RRCコネクション完了通知(RRC Connection Setup Complete)を送信する(ステップS130)。
【0167】
次に、無線基地局装置101Cは、無線端末装置202からRRCコネクション完了通知を受信して、セキュリティ情報(Security Mode Command)を無線端末装置202へ送信する(ステップS131)。
【0168】
次に、無線端末装置202は、無線基地局装置101Cからセキュリティ情報を受信して、セキュリティ完了通知(Security Mode Complete)を無線基地局装置101Cへ送信する(ステップS132)。
【0169】
次に、無線基地局装置101Cは、無線端末装置202へRRCコネクション再構成指示(RRC Connection Reconfiguration)を送信する(ステップS133)。
【0170】
次に、無線端末装置202および無線基地局装置101C間でRRCコネクションが確立されると、無線端末装置202は、無線基地局装置101CへRRCコネクション再構成完了通知(RRC Connection Reconfiguration Complete)を送信する(ステップS134)。
【0171】
ここで、RRCコネクション完了通知およびRRCコネクション再構成完了通知は、たとえば”rlf-InfoAvailable”というパラメータを含む。無線端末装置202は、このパラメータを設定してRRCコネクション完了通知およびRRCコネクション再構成完了通知を送信する。これにより、無線基地局装置101Cは、当該無線端末装置202についてRLFの発生があったことを認識する。無線基地局装置101Cは、RLFの詳細な情報を取得するため、端末情報要求(UE Information Request)を無線端末装置202へ送信する(ステップS135)。
【0172】
次に、無線端末装置202は、無線基地局装置101Cから端末情報要求を受信して、RLFレポートを含む端末情報応答(UE Information Response)を無線基地局装置101Cへ送信する(ステップS136)。RLFレポートは、RLFの発生した無線基地局装置のPCI、RRCコネクション再確立の発生した無線基地局装置のPCIおよびECGIならびに自己の無線端末装置202のC−RNTIを含む。ここでは、RLF発生のPCIは無線基地局装置101BのIDであり、RRCコネクション再確立発生のPCIおよびECGIは無線基地局装置101CのIDであり、C−RNTIは無線基地局装置101Bが付与したIDである。
【0173】
次に、無線基地局装置101Cは、無線端末装置202から受信したRLFレポートのPCIを参照することにより、無線基地局装置101BにおいてRLFが発生しことを認識し、セルCCへの”Too Late HO”が発生したと判断する(ステップS137)。
【0174】
次に、無線基地局装置101Cは、”Too Late HO”であることを通知するために、当該RLFレポートの内容を含むRLF通知(RLF INDICATION)をX2インタフェース経由で無線基地局装置101Bへ送信する(ステップS138)。
【0175】
次に、無線基地局装置101Bは、無線基地局装置101CからRLF通知を受信すると、スタートさせておいたタイマを確認し、タイマが動作している場合、すなわちタイマをスタートさせてから所定時間経過していない場合には、セルCCへの”Too Late HO”ではないと判断し、さらに、無線基地局装置101A以外の無線基地局装置101CからRLF通知を受信したことから、セルCBへの”Too Early HO”ではなく、セルCBへの”HO to Wrong Cell”であると判断する。なお、無線基地局装置101Bは、無線基地局装置101CからRLF通知を受信したときにタイマが動作していない場合、すなわちタイマをスタートさせてから上記所定時間経過している場合には、セルCCへの”Too Late HO”であると判断する。
【0176】
無線基地局装置101Bは、セルCBへの”HO to Wrong Cell”であると判断すると(ステップS139)、ハンドオーバレポートを無線基地局装置101Aへ送信する(ステップS140)。このハンドオーバレポートは、たとえば”Handover Report Type”というパラメータを含む。無線基地局装置101Bは、このパラメータを所定値に設定することにより、”HO to Wrong Cell”を無線基地局装置101Aに通知する。
【0177】
次に、無線基地局装置101Aは、無線基地局装置101Bから当該ハンドオーバレポートを受信して、セルCBへの”HO to Wrong Cell”が発生したことを認識し(ステップS141)、”HO to Wrong Cell”の発生が抑制されるように、ハンドオーバ動作の最適化処理を実行する(ステップS142)。
【0178】
以上のような”Too Late HO”、”Too Early HO”および”HO to Wrong Cell”の他に、不適切なハンドオーバ動作として”Ping Pong HO”がある。
【0179】
これは、ある無線端末装置について、2つの無線基地局装置が互いに他の無線基地局装置へのハンドオーバを判断する場合である。この”Ping Pong HO”が発生すると、無線端末装置および無線基地局装置間の接続が切断されることはないが、当該無線端末装置についてはハンドオーバ動作のための処理が繰り返され、通話およびデータ通信を行なうことができなくなり、また、上位ネットワーク側の負荷が増大してしまう。
【0180】
[ハンドオーバ動作の制御パラメータ]
図10は、本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおける、無線端末装置の受信品質のシミュレーション結果を示す図である。
【0181】
図10は、無線端末装置202が、時速30kmでピコ基地局付近を通過し、マクロ基地局付近を通過するまでの100秒間における無線端末装置202のRSSI(Received Signal Strength Indication)を示している。
【0182】
図10において、グラフG1およびG3は、マクロ基地局から送信される無線信号のRSSIを示し、グラフG2およびG4は、ピコ基地局から送信される無線信号のRSSIを示している。また、グラフG1およびG2は、シャドウィング、すなわち無線端末装置202および他の物体間の相対的な位置変化に起因する、当該無線端末装置202における無線信号の受信電力の時間的な変化を考慮したシミュレーション結果であり、グラフG3およびG4は、シャドウィングを考慮しないシミュレーション結果である。
【0183】
図10を参照して、無線端末装置202のピコ基地局からマクロ基地局へのハンドオーバの理想位置は、グラフの交点付近すなわち移動時間が約17秒となる位置である。しかしながら、実際には、無線端末装置202の未来の通信環境を無線通信システムにおいて把握することは困難であるため、各種測定結果等に基づいてハンドオーバ動作のタイミングを調整することにより、ハンドオーバ動作の最適化を図ることが重要である。
【0184】
また、移動時間が15秒から20秒の期間では、各無線基地局装置からの無線信号の強弱が入り組んでいるため、たとえば”Too Early HO”または”Ping Pong HO”が発生しやすくなる。また、移動時間が20秒となるタイミング付近では、ピコ基地局からの無線信号の受信電力が急に小さくなり、マクロ基地局からの無線信号の受信電力が急に大きくなり、SINR(Signal to Interference-plus-Noise Ratio)が急激に悪化するため、”Too Late HO”が発生しやすくなる。
【0185】
ここで、3GPPで規定されたハンドオーバの最適化を図るMRO(Mobility Robustness Optimization)の評価関数をY=MRO(X)とすると、Yは、たとえば”Too Late HO”の発生頻度、”Too Early HO”の発生頻度、”HO to Wrong Cell”の発生頻度、”Ping Pong HO”等の不必要なハンドオーバの発生頻度、またはRRCコネクション情報を送信した直後すなわち無線端末装置202が無線基地局装置に接続された直後のハンドオーバの発生頻度である。
【0186】
また、たとえば、Xは、電力測定処理(Measurement)用のパラメータであり、ヒステリシスHS:0dB〜+15dB、TTT(Time to Trigger):0ms〜5120ms、またはオフセットOST(Cell Individual Offset):−24dB〜+24dBである。あるいは、Xは、セル再選択処理用のパラメータである。
【0187】
たとえば、ヒステリシスHSおよびTTTは後述するイベントごとに設定可能であり、オフセットOSTはサービング基地局の形成するサービングセル、および周辺セルごとに設定可能であり、後述するギャップMGおよびフィルタリング係数αはサービングセルごとに設定可能である。
【0188】
ここでは、無線基地局装置は、無線端末装置202の上り送信負荷を軽減するために、測定結果通知(Measurement Report)を受信するとハンドオーバの判断を行なうものとする。すなわち、測定結果通知の送信タイミングとハンドオーバのタイミングとが対応するものとする。
【0189】
以下、測定結果通知を送信する各種イベントと電力測定処理のパラメータとの関係について説明する。
【0190】
図11は、本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおいて、無線端末装置が測定結果通知を送信するイベントA1を示す図である。図11において、横軸は時間であり、縦軸は無線端末装置202における無線信号の受信電力またはSINRであり、SVCはサービングセルの受信電力またはSINRすなわちサービング基地局が送信する無線信号の受信電力またはSINRである。
【0191】
図11を参照して、イベントA1では、閾値Thに対して正負の方向にヒステリシスHSが設定される。
【0192】
無線端末装置202は、サービングセルの受信電力またはSINRが(Th+HS)よりも大きくなると、レポートオン状態へ遷移する(タイミングT1)。
【0193】
そして、無線端末装置202は、受信電力またはSINRが(Th−HS)よりも大きい、という条件が満たされた状態でタイミングT1からTTT経過すると、測定結果通知を送信する(タイミングT2)。
【0194】
次に、無線端末装置202は、当該条件が満たされた状態でタイミングT2からTTT経過すると、測定結果通知を送信する(タイミングT3)。
【0195】
次に、無線端末装置202は、タイミングT3からTTT経過するまでに当該条件が満たされなくなると、測定結果通知を送信せず、レポートオフ状態へ遷移する(タイミングT4)。
【0196】
ここで、無線端末装置202は、レポートオン状態およびレポートオフ状態間の遷移とは無関係に、たとえば周期的に電力測定処理を行なっており、直近の測定結果を測定結果通知として送信する。また、たとえば、無線端末装置202は、受信電力およびSINRの各々について独立にレポートオン状態およびレポートオフ状態間の遷移を行なう。すなわち、無線端末装置202は、受信電力およびSINRの一方について条件を満たせば、測定結果通知を送信する。
【0197】
図12は、本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおいて、無線端末装置が測定結果通知を送信するイベントA2を示す図である。図の見方は図11と同様である。
【0198】
図12を参照して、イベントA2では、閾値Thに対して正負の方向にヒステリシスHSが設定される。
【0199】
無線端末装置202は、サービングセルの受信電力またはSINRが(Th−HS)よりも小さくなると、レポートオン状態へ遷移する(タイミングT11)。
【0200】
そして、無線端末装置202は、受信電力またはSINRが(Th+HS)よりも小さい、という条件が満たされた状態でタイミングT11からTTT経過すると、測定結果通知を送信する(タイミングT12)。
【0201】
次に、無線端末装置202は、当該条件が満たされた状態でタイミングT12からTTT経過すると、測定結果通知を送信する(タイミングT13)。
【0202】
次に、無線端末装置202は、タイミングT13からTTT経過するまでに当該条件が満たされなくなると、測定結果通知を送信せず、レポートオフ状態へ遷移する(タイミングT14)。
【0203】
図13は、本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおいて、無線端末装置が測定結果通知を送信するイベントA3を示す図である。図13において、横軸は時間であり、縦軸は無線端末装置202における無線信号の受信電力またはSINRであり、SVCはサービングセルの受信電力またはSINRであり、NBCは周辺セルの受信電力またはSINRすなわち周辺基地局が送信する無線信号の受信電力またはSINRである。
【0204】
図13を参照して、イベントA3では、サービングセルの受信電力またはSINRに対してオフセットOST1が正方向に設定されており、さらに、正負の方向にヒステリシスHSが設定される。また、周辺セルの受信電力またはSINRに対してオフセットOST2が正方向に設定される。
【0205】
無線端末装置202は、{(周辺セルの受信電力またはSINR)+OST2}が{(サービングセルの受信電力またはSINR)+OST1+HS}よりも大きくなると、レポートオン状態へ遷移する(タイミングT21)。
【0206】
そして、無線端末装置202は、{(周辺セルの受信電力またはSINR)+OST2}が{(サービングセルの受信電力またはSINR)+OST1−HS}よりも大きい、という条件が満たされた状態でタイミングT21からTTT経過すると、測定結果通知を送信する(タイミングT22)。
【0207】
次に、無線端末装置202は、当該条件が満たされた状態でタイミングT22からTTT経過すると、測定結果通知を送信する(タイミングT23)。
【0208】
次に、無線端末装置202は、タイミングT23からTTT経過するまでに当該条件が満たされなくなると、測定結果通知を送信せず、レポートオフ状態へ遷移する(タイミングT24)。
【0209】
図14は、本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおいて、無線端末装置が測定結果通知を送信するイベントA4を示す図である。図の見方は図13と同様である。
【0210】
図14を参照して、イベントA4では、周辺セルの受信電力またはSINRに対してオフセットOSTが正方向に設定されており、閾値Thに対して正負の方向にヒステリシスHSが設定される。
【0211】
無線端末装置202は、{(周辺セルの受信電力またはSINR)+OST}が(Th+HS)よりも大きくなると、レポートオン状態へ遷移する(タイミングT31)。
【0212】
そして、無線端末装置202は、{(周辺セルの受信電力またはSINR)+OST}が(Th−HS)よりも大きい、という条件が満たされた状態でタイミングT31からTTT経過すると、測定結果通知を送信する(タイミングT32)。
【0213】
次に、無線端末装置202は、当該条件が満たされた状態でタイミングT32からTTT経過すると、測定結果通知を送信する(タイミングT33)。
【0214】
次に、無線端末装置202は、タイミングT33からTTT経過するまでに当該条件が満たされなくなると、測定結果通知を送信せず、レポートオフ状態へ遷移する(タイミングT34)。
【0215】
図15は、本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおいて、無線端末装置が測定結果通知を送信するイベントA5を示す図である。図の見方は図13と同様である。
【0216】
図15を参照して、イベントA5では、周辺セルの受信電力またはSINRに対してオフセットOSTが正方向に設定されており、閾値Th1に対して正負の方向にヒステリシスHS1が設定されており、閾値Th2に対して正負の方向にヒステリシスHS2が設定される。
【0217】
無線端末装置202は、サービングセルの受信電力またはSINRが(Th1−HS1)よりも小さくなり、かつ{(周辺セルの受信電力またはSINR)+OST}が(Th2+HS2)よりも大きくなると、レポートオン状態へ遷移する(タイミングT41)。
【0218】
そして、無線端末装置202は、サービングセルの受信電力またはSINRが(Th1+HS1)よりも小さく、かつ{(周辺セルの受信電力またはSINR)+OST}が(Th2−HS2)よりも大きい、という条件が満たされた状態でタイミングT41からTTT経過すると、測定結果通知を送信する(タイミングT42)。
【0219】
次に、無線端末装置202は、タイミングT42からTTT経過するまでに当該条件が満たされなくなると、測定結果通知を送信せず、レポートオフ状態へ遷移する(タイミングT43)。
【0220】
以上のように、イベントA1〜A5で説明したパラメータ、すなわちヒステリシスHS、TTTおよびオフセットOSTを調整すれば、無線端末装置202のハンドオーバ動作のタイミングを制御することが可能である。
【0221】
図16は、本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおいて、ヒステリシスHSの調整によるハンドオーバ動作のタイミング制御を示す図である。図16は、イベントA3の場合を示す。
【0222】
図16を参照して、ヒステリシスHSをゼロに設定した場合には、タイミングT51においてレポ−トオン状態へ遷移し、タイミングT53において測定結果通知が送信され、タイミングT55においてレポートオフ状態へ遷移する。
【0223】
これに対して、ヒステリシスHSをゼロより大きく設定した場合には、タイミングT51より後のタイミングT52においてレポ−トオン状態へ遷移し、タイミングT53より後のタイミングT54において測定結果通知が送信され、タイミングT55より後のタイミングT56においてレポートオフ状態へ遷移する。
【0224】
すなわち、ヒステリシスHSを大きくすると、測定結果通知の送信タイミングすなわちハンドオーバ動作のタイミングを遅くすることができる。
【0225】
図17は、本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおいて、TTTの調整によるハンドオーバ動作のタイミング制御を示す図である。図17は、イベントA3の場合を示す。
【0226】
図17を参照して、TTTを小さく設定した場合には、タイミングT62において測定結果通知が送信される。
【0227】
これに対して、TTTを大きく設定した場合には、タイミングT61より後のタイミングT63において測定結果通知が送信される。
【0228】
すなわち、TTTを大きくすると、測定結果通知の送信タイミングすなわちハンドオーバ動作のタイミングを遅くすることができる。
【0229】
図18は、本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおいて、オフセットOSTの調整によるハンドオーバ動作のタイミング制御を示す図である。図18は、イベントA3の場合を示す。
【0230】
図18を参照して、オフセットOSTをゼロに設定した場合には、タイミングT71においてレポ−トオン状態へ遷移し、タイミングT73において測定結果通知が送信され、タイミングT75においてレポートオフ状態へ遷移する。
【0231】
これに対して、オフセットOSTをゼロより小さく設定した場合には、タイミングT71より後のタイミングT72においてレポ−トオン状態へ遷移し、タイミングT73より後のタイミングT74において測定結果通知が送信され、タイミングT75より後のタイミングT76においてレポートオフ状態へ遷移する。
【0232】
すなわち、オフセットOSTを小さくすると、測定結果通知の送信タイミングすなわちハンドオーバ動作のタイミングを遅くすることができる。
【0233】
以上のように、ヒステリシスHSを大きくするか、TTTを大きくするか、あるいはオフセットOSTを小さくすることにより、ハンドオーバ動作のタイミングが遅くなる。すなわち、無線端末装置202がサービング基地局に接続される時間が長くなることから、”Too Early HO”、”HO to Wrong Cell”および”Ping Pong HO”の発生頻度が減り、”Too Late HO”の発生頻度が増えることになる。
【0234】
ここで、ヒステリシスHS、TTTおよびオフセットOSTを調整する効果の違いについて考察する。
【0235】
いずれのパラメータを調整しても、ハンドオーバのタイミングを調整することができるが、これらの効果は、干渉を含む地形、および無線端末装置の移動速度等によって異なる。
【0236】
ヒステリシスHSおよびオフセットOSTを調整することは、セルを仮想的に大きくしたり小さくしたりして、ハンドオーバの行なわれる位置を調整することに相当する。たとえば、サービングセルのヒステリシスHSを大きくすることにより、無線信号の受信電力を大きく見せて、他セルへのハンドオーバが行なわれにくくする。また、周辺セルのオフセットOSTを負の値に設定することにより、周辺セルからの無線信号の受信電力を小さく見せて、他セルへのハンドオーバが行なわれにくくする。
【0237】
また、ヒステリシスHSおよびオフセットOSTは、無線端末装置の移動速度による影響を受けにくいパラメータである。
【0238】
図19は、本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおける、各位置の無線信号の受信電力の一例を示す図である。
【0239】
図19を参照して、受信電力が極大値となる位置P1,P3,P5では、ヒステリシスHSを調整することにより、ハンドオーバ動作のタイミングを調整することが好ましい。また、受信電力が極小値となる位置P2,P4,P6では、オフセットOSTを調整することにより、ハンドオーバ動作のタイミングを調整することが好ましい。
【0240】
一方、TTTは、ハンドオーバ動作のタイミングを時間領域で遅らせることが可能なパラメータである。TTTを調整する場合には、ハンドオーバ動作のタイミングが電波環境および地形に依存しない代わりに、ハンドオーバの行なわれる位置が無線端末装置202の移動速度によって大きく変わることになる。たとえば、TTTを大きく設定しすぎると、高速で移動する無線端末装置では、周囲の電波環境の変化が大きいため、ハンドオーバの失敗が生じやすくなる。
【0241】
図20は、本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおいて、ハンドオーバ動作のタイミングを制御するためのパラメータの他の例を説明するための図である。
【0242】
図20を参照して、無線端末装置202は、たとえばギャップMGの時間間隔で、無線基地局装置から送信される無線信号の受信電力を測定する。
【0243】
ギャップMGを大きくする場合には、より過去の受信電力がハンドオーバの判断に用いられることになるため、ハンドオーバ動作のタイミングが遅くなる。一方、ギャップMGを小さくする場合には、より最近の受信電力がハンドオーバの判断に用いられることになるため、ハンドオーバ動作のタイミングが早くなる。
【0244】
ギャップMGを小さくすることにより、より最近の受信電力に基づいた適切なハンドオーバを行なうことが可能となる。一方、ギャップMGを大きくすることにより、無線端末装置202の処理負荷を低減することができる。
【0245】
また、無線端末装置202は、たとえば、時刻(t−1)において測定した受信電力M(t−1)、時刻(t−1)より後の時刻tにおいて測定した受信電力M(t)およびフィルタリング係数αから、以下の式で表される受信電力MR(t)を算出する。
MR(t)=α×M(t−1)+(1−α)×M(t)
【0246】
無線端末装置202は、受信電力MR(t)を示す測定結果通知を無線基地局装置へ送信する。
【0247】
フィルタリング係数αを大きくする場合には、より過去の受信電力が測定結果通知に反映されることになるため、ハンドオーバ動作のタイミングが遅くなる。一方、フィルタリング係数αを小さくする場合には、より最近の受信電力が測定結果通知に反映されることになるため、ハンドオーバ動作のタイミングが早くなる。
【0248】
ここで、無線基地局装置から無線端末装置202へ送信される測定開始要求(Measurement Configuration)およびRRCコネクション再構成指示(RRC Connection Reconfiguration)には、たとえば、周辺セルごとにオフセットOSTが設定され、イベントA1〜A5のうちの少なくとも1つが設定され、設定イベントに対応するヒステリシスHSおよびTTTが設定される。また、測定開始要求には、サービングセルごとにギャップMGおよびフィルタリング係数αが設定される。
【0249】
[無線基地局装置]
図21は、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置の構成を示す図である。
図21を参照して、無線基地局装置101は、アンテナ91と、サーキュレータ92と、無線受信部93と、無線送信部94と、信号処理部95と、制御部98とを備える。信号処理部95は、受信信号処理部96と、送信信号処理部97とを含む。信号処理部95および制御部98は、CPU(Central Processing Unit)またはDSP(Digital Signal Processor)等によって実現される。
【0250】
サーキュレータ92は、アンテナ91において受信された無線端末装置202からの無線信号を無線受信部93へ出力し、また、無線送信部94から受けた無線信号をアンテナ91へ出力する。
【0251】
無線受信部93は、サーキュレータ92から受けた無線信号をベースバンド信号またはIF(Intermediate Frequency)信号に周波数変換し、この周波数変換した信号をデジタル信号に変換して受信信号処理部96へ出力する。
【0252】
受信信号処理部96は、無線受信部93から受けたデジタル信号に対してCDMA(Code Division Multiple Access)方式における逆拡散等の信号処理を行ない、この信号処理後のデジタル信号の一部または全部を所定のフレームフォーマットに変換してコアネットワーク側へ送信する。
【0253】
送信信号処理部97は、コアネットワーク側から受信した通信データを所定のフレームフォーマットに変換した通信データまたは自ら生成した通信データに対してOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)方式におけるIFFT(Inverse Fast Fourier Transform)等の信号処理を行ない、この信号処理後のデジタル信号を無線送信部94へ出力する。
【0254】
無線送信部94は、送信信号処理部97から受けたデジタル信号をアナログ信号に変換し、変換したアナログ信号を無線信号に周波数変換してサーキュレータ92へ出力する。
【0255】
制御部98は、無線基地局装置101における各ユニットおよびコアネットワークとの間で各種情報をやり取りする。
【0256】
図22は、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置における制御部の構成を示す図である。
【0257】
図22を参照して、制御部98は、端末電力情報取得部11と、ハンドオーバ制御部(移動動作制御部)12と、端末電力推定部13と、基地局測定部14と、端末測定結果取得部15と、基地局間距離推定部16とを含む。
【0258】
端末電力情報取得部11は、自己の無線基地局装置の形成するセルに在圏する無線端末装置202における無線信号の受信電力の、無線端末装置202の位置変化に対する変化度合い(以下、電力変化量PCとも称する。)を示す端末電力情報を取得する。なお、この変化度合いは、「大きい」「小さい」等の程度表現であってもよいし、数値表現であってもよい。
【0259】
ここで、無線通信システム301におけるいずれの位置の電力変化量PCを取得すべきかを考えた場合、端末電力情報取得部11は、無線端末装置202において、自己の無線基地局装置が送信する無線信号の受信品質を示す指標、たとえばSINRが所定値以下となる状態における電力変化量PCを取得する構成が好ましい。あるいは、端末電力情報取得部11は、無線端末装置202において、他の無線基地局装置が送信する無線信号の受信電力が所定値以上となる状態における電力変化量PCを示す端末電力情報を取得する構成が好ましい。
【0260】
ハンドオーバ制御部12は、端末電力情報取得部11によって取得された端末電力情報に基づいて、自己の無線基地局装置から他の無線基地局装置への無線端末装置202のハンドオーバ動作のタイミングを制御する。
【0261】
より詳細には、ハンドオーバ制御部12は、端末電力情報が示す電力変化量PCが大きい場合には、ハンドオーバ動作のタイミングが早まるように制御し、電力変化量PCが小さい場合には、ハンドオーバ動作のタイミングが遅くなるように制御する。
【0262】
また、ハンドオーバ制御部12は、端末電力情報が示す電力変化量PCが大きい場合には、ハンドオーバ動作のタイミング制御幅すなわちパラメータの変更幅を大きく設定し、電力変化量PCが小さい場合には、ハンドオーバ動作のタイミング制御幅を小さく設定する。
【0263】
ハンドオーバ制御部12は、設定したパラメータを示す制御情報を送信信号処理部97へ出力する。
【0264】
送信信号処理部97は、ハンドオーバ制御部12から受けた制御情報の示すパラメータを通信データに含め、無線送信部94へ出力する。
【0265】
基地局測定部14は、無線受信部93が受信した無線信号に基づいて、無線端末装置202から受信した無線信号の受信電力および周波数、ならびに他の無線基地局装置が送信した無線信号の受信電力等を測定する。
【0266】
基地局間距離推定部16は、他の無線基地局装置が送信する無線信号の送信電力と、他の無線基地局装置が送信する無線信号の、自己の無線基地局装置の形成するセルにおける受信電力との差である下りパスロスに基づいて、自己の無線基地局装置と他の無線基地局装置との基地局間距離Rを推定する。
【0267】
ここで、端末測定結果取得部15は、受信信号処理部96の信号処理結果を用いて、無線端末装置202が送信した測定結果通知を取得する。
【0268】
基地局間距離推定部16は、たとえば端末測定結果取得部15の取得した測定結果通知を参照することにより、自己の無線基地局装置の形成するセルにおける他の無線基地局装置からの無線信号の受信電力を取得する。なお、基地局間距離推定部16は、測定結果通知の示す受信電力の代わりに、自己の無線基地局装置のセル半径が小さい場合には、基地局測定部14が測定した他の無線基地局装置からの無線信号の受信電力を取得する構成であってもよい。
【0269】
端末電力推定部13は、基地局間距離推定部16によって推定された基地局間距離Rに基づいて電力変化量PCを推定する。
【0270】
端末電力情報取得部11は、端末電力推定部13によって推定された電力変化量PCを端末電力情報として取得する。
【0271】
あるいは、端末電力推定部13は、自己の無線基地局装置および他の無線基地局装置から送信される無線信号の送信電力差PDに基づいて電力変化量PCを推定する。
【0272】
あるいは、端末電力推定部13は、自己の無線基地局装置の形成するセルに在圏する無線端末装置202の移動速度に基づいて電力変化量PCを推定する。ここで、無線端末装置202の移動速度とは、無線端末装置202の物理的な移動速度、たとえば時速[km/h]を意味する。
【0273】
あるいは、端末電力推定部13は、他の無線基地局装置が送信する無線信号の送信電力と、他の無線基地局装置が送信する無線信号の、自己の無線基地局装置の形成するセルにおける受信電力との差である下りパスロスの時間的な変化に基づいて電力変化量PCを推定する。
【0274】
あるいは、端末電力推定部13は、自己の無線基地局装置の形成するセルに在圏する無線端末装置202が送信する無線信号の送信電力と、自己の無線基地局装置における無線信号の受信電力との差である上りパスロスの時間的な変化に基づいて電力変化量PCを推定する。
【0275】
あるいは、端末電力推定部13は、自己の無線基地局装置の形成するセルに在圏する無線端末装置202が送信する無線信号の周波数と、自己の無線基地局装置が受信した無線信号の周波数との差であるドップラーシフトに基づいて電力変化量PCを推定する。
【0276】
あるいは、端末電力推定部13は、無線端末装置202における無線信号の受信電力の時間的な変化であるシャドウィングに基づいて電力変化量PCを推定する。
【0277】
たとえば、端末電力推定部13は、端末測定結果取得部15の取得した測定結果通知を参照することにより、自己の無線基地局装置の形成するセルに在圏する無線端末装置202における無線信号の受信電力の測定結果に基づいて受信電力の時間的な変化を取得する。
【0278】
また、たとえば、端末電力推定部13は、自己の無線基地局装置の形成するセルに在圏する複数の無線端末装置202のうち、移動速度の大きい無線端末装置202の受信電力の時間的な変化に基づいて電力変化量PCを推定する。
【0279】
[ハンドオーバ動作の最適化処理]
次に、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置がハンドオーバ動作の最適化処理を行なう際の動作について詳細に説明する。
【0280】
ここでは、一例として、フェムト基地局による、自己からマクロ基地局への無線端末装置202のハンドオーバ動作のタイミング制御について説明するが、基地局の種別は本例に限定するものではなく、他の組み合わせであってもよい。
【0281】
図23は、基地局間距離による電力変化量の相違を説明するための図である。図23において、横軸は無線端末装置202の位置であり、縦軸は無線端末装置202における無線信号の受信電力である。
【0282】
図23を参照して、セルC1〜C3の送信電力は等しい。この場合、ピーク位置が距離D1離れたセルC1およびセルC2のセルエッジCEG1では、ピーク位置が距離D1より大きい距離D2離れたセルC1およびセルC3のセルエッジCEG2と比べて、電力変化量PCが大きくなる。
【0283】
本発明の実施の形態に係る無線基地局装置では、たとえばこの関係を利用してパラメータ調整を行なう。
【0284】
図24は、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置がハンドオーバ動作の最適化処理を行なう際の動作手順を定めたシーケンス図である。
【0285】
図24を参照して、まず、無線端末装置202は、各無線基地局装置から送信される無線信号の受信電力を測定し、測定した受信電力の測定結果を示す測定結果通知をフェムト基地局へ送信する(ステップS161)。
【0286】
次に、フェムト基地局は、無線端末装置202から受信した測定結果通知により、自己が送信する無線信号の、当該無線端末装置202における受信電力を取得する(ステップS162)。
【0287】
次に、フェムト基地局は、マクロ基地局の無線信号の送信電力を取得する。たとえば、フェムト基地局は、マクロ基地局から受信した報知情報に含まれる送信電力値を取得するか、あるいはユーザが事前に設定した送信電力値を取得する(ステップS163)。
【0288】
次に、フェムト基地局は、マクロ基地局の無線信号の送信電力および無線端末装置202における当該無線信号の受信電力の差である下りパスロスを求める。そして、フェムト基地局は、下りパスロスに基づいて自己とマクロ基地局との基地局間距離Rを算出する(ステップS164)。
【0289】
ここで、フェムト基地局は、たとえば以下の式で表わされる式を用いて、基地局間距離Rを算出する。
パスロス=128.1+37.6log10(R)
【0290】
次に、フェムト基地局は、自己の形成するフェムトセルとマクロセルとのセルエッジにおける電力変化量PCを推測する。たとえば、フェムト基地局は、基地局間距離Rが所定の閾値より大きい場合には電力変化量PCが小さいと判断し、基地局間距離Rが所定の閾値より小さい場合には電力変化量PCが大きいと判断する(ステップS165)。
【0291】
次に、フェムト基地局は、推測した電力変化量PCの大小に応じてハンドオーバ動作のパラメータを設定する。たとえば、フェムト基地局は、電力変化量PCが小さい場合には、ハンドオーバ動作のタイミングが遅くなるようにパラメータを設定する。具体的には、ヒステリシスHSを大きくするか、TTTを大きくするか、オフセットOSTを小さくするか、ギャップMGを大きくするか、あるいはフィルタリング係数αを大きくする。一方、フェムト基地局は、電力変化量PCが大きい場合には、ハンドオーバ動作のタイミングが早くなるようにパラメータを設定する。具体的には、ヒステリシスHSを小さくするか、TTTを小さくするか、オフセットOSTを大きくするか、ギャップMGを小さくするか、あるいはフィルタリング係数αを小さくする(ステップS166)。
【0292】
次に、フェムト基地局は、新たに設定したパラメータを含めてRRCコネクション再構成指示(RRC Connection Reconfiguration)を無線端末装置202へ送信する。なお、RRCコネクション再構成指示の送信先となる無線端末装置202は、上記測定結果通知の送信元の無線端末装置202に限らず、フェムト基地局の形成するセルに在圏する無線端末装置202であればよい(ステップS167)。
【0293】
次に、無線端末装置202は、フェムト基地局から受信したRRCコネクション再構成指示が示す新たな設定パラメータに従い、各無線基地局装置から送信される無線信号の受信電力の測定および測定結果通知の送信を行なう(ステップS168)。また、無線通信システムにおいて、通常の運用が行なわれる(ステップS169)。
【0294】
次に、フェムト基地局は、”Too Late HO”、”Too Early HO”、”HO to Wrong Cell”または”Ping Pong HO”の異常ハンドオーバを検出すると(ステップS170でYES)、検出した異常ハンドオーバの発生頻度を更新する(ステップS171)。
【0295】
次に、フェムト基地局は、”Too Early HO”の発生頻度EF、”HO to Wrong Cell”の発生頻度WFまたは”Ping Pong HO”の発生頻度PFが、所定の閾値ThE、ThWまたはThPよりも大きい場合には(ステップS172でYES)、ハンドオーバ動作のタイミングが遅くなるようにパラメータを設定するとともに、推測した電力変化量PCの大小に応じてパラメータの制御幅すなわちステップサイズを設定する。たとえば、フェムト基地局は、電力変化量PCが小さい場合にはステップサイズを小さく設定し、電力変化量PCが大きい場合にはステップサイズを大きく設定する。
【0296】
一方、フェムト基地局は、発生頻度EF、発生頻度WFまたは発生頻度PFが、所定の閾値ThE、ThWまたはThPよりも小さい場合であって(ステップS172でNO)、”Too Late HO”の発生頻度LFが所定の閾値ThLよりも大きいときには(ステップS174でYES)、ハンドオーバ動作のタイミングが早くなるようにパラメータを設定するとともに、推測した電力変化量PCの大小に応じてパラメータの制御幅すなわちステップサイズを設定する。たとえば、フェムト基地局は、電力変化量PCが小さい場合にはステップサイズを小さく設定し、電力変化量PCが大きい場合にはステップサイズを大きく設定する。
【0297】
次に、フェムト基地局は、新たに設定したパラメータを含めてRRCコネクション再構成指示(RRC Connection Reconfiguration)を無線端末装置202へ送信する。なお、RRCコネクション再構成指示の送信先となる無線端末装置202は、上記測定結果通知の送信元の無線端末装置202に限らず、フェムト基地局の形成するセルに在圏する無線端末装置202であればよい(ステップS176)。
【0298】
次に、無線端末装置202は、フェムト基地局から受信したRRCコネクション再構成指示が示す新たな設定パラメータに従い、各無線基地局装置から送信される無線信号の受信電力の測定および測定結果通知の送信を行なう(ステップS177)。そして、無線通信システムにおいて、通常の運用が行なわれる(ステップS178)。
【0299】
以降、異常ハンドオーバが検出されるたびにパラメータの変更判断および設定処理が繰り返され、ハンドオーバ動作が最適化される。
【0300】
図25は、基地局間の送信電力差による電力変化量の相違を説明するための図である。図の見方は図23と同様である。
【0301】
図25を参照して、セルC1およびセルC2間の距離とセルC1およびセルC4間の距離とは等しい。この場合、送信電力差がPWであるセルC1およびセルC4のセルエッジCEG3では、送信電力差がゼロであるセルC1およびセルC2のセルエッジCEG1と比べて、電力変化量PCが大きくなる。
【0302】
本発明の実施の形態に係る無線基地局装置では、たとえばこの関係を利用してパラメータ調整を行なう。
【0303】
図26は、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置がハンドオーバ動作の最適化処理を行なう際の動作手順の他の例を定めたシーケンス図である。
【0304】
図26を参照して、まず、フェムト基地局は、マクロ基地局の無線信号の送信電力を取得する。たとえば、フェムト基地局は、マクロ基地局から受信した報知情報に含まれる送信電力値を取得するか、あるいはユーザが事前に設定した送信電力値を取得する(ステップS181)。
【0305】
次に、フェムト基地局は、自己の送信電力およびマクロ基地局の送信電力の差である送信電力差PDを求める(ステップS182)。
【0306】
次に、フェムト基地局は、自己の形成するフェムトセルとマクロセルとのセルエッジにおける電力変化量PCを推測する。たとえば、フェムト基地局は、送信電力差PDが所定の閾値より小さい場合には電力変化量PCが小さいと判断し、送信電力差PDが所定の閾値より大きい場合には電力変化量PCが大きいと判断する(ステップS183)。
【0307】
以降の動作(ステップS184〜S196)は、図24に示すシーケンス図における動作(ステップS166〜S178)と同様であるため、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
【0308】
なお、フェムト基地局は、基地局間距離Rおよび送信電力差PDの両方を用いて電力変化量PCを求めてもよい。たとえば、電力変化量PCを示す評価関数J(|R|、|PD|)=|PD|+C/|R|を用いる方法が考えられる。ただし、Cは定数である。
【0309】
すなわち、基地局間距離Rが大きくなると評価関数Jの値すなわち電力変化量PCが小さくなり、送信電力差PDが大きくなると評価関数Jの値すなわち電力変化量PCが大きくなる。
【0310】
図27は、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置がハンドオーバ動作の最適化処理を行なう際の動作手順の他の例を定めたシーケンス図である。
【0311】
図27を参照して、まず、フェムト基地局は、自己の形成するセルにおける無線端末装置202の滞在時間を取得する(ステップS201)。
【0312】
次に、フェムト基地局は、自己の無線信号の送信電力に基づいて、自己の形成するセルの半径を求める(ステップS202)。
【0313】
次に、フェムト基地局は、無線端末装置202の滞在時間および自己のセル半径から無線端末装置202の移動速度を求める。具体的には、(セル半径/滞在時間)を算出して移動速度を求めることができる(ステップS203)。
【0314】
次に、フェムト基地局は、自己の形成するフェムトセルとマクロセルとのセルエッジにおける電力変化量PCを推測する。たとえば、フェムト基地局は、求めた移動速度が所定の閾値より小さい場合には電力変化量PCが小さいと判断し、求めた移動速度が所定の閾値より大きい場合には電力変化量PCが大きいと判断する(ステップS204)。
【0315】
以降の動作(ステップS205〜S217)は、図24に示すシーケンス図における動作(ステップS166〜S178)と同様であるため、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
【0316】
なお、移動速度は、自セルにおける複数の無線端末装置202の情報を用いてもよい。たとえば、各無線端末装置202のうち、最大の移動速度を用いてもよいし、各無線端末装置202の移動速度の平均値を用いてもよい。
【0317】
また、無線端末装置202の移動速度は、無線端末装置202の位置情報から求めてもよい。たとえば、GPS(Global Positioning System)を利用することが可能である。
【0318】
あるいは、3GPPで規定されたLPP(LTE Positioning Protocol)を利用することが可能である。すなわち、ダウンリンクLPPにおいて、まず、3つ以上の無線基地局装置からLPP専用の信号を送信する。次に、無線端末装置202において各無線基地局装置からの当該信号の受信タイミングの差を算出し、サービング基地局に算出結果を通知する。次に、サービング基地局は、通知された受信タイミングの差に基づいて無線端末装置202の位置を推定する。
【0319】
また、アップリンクLPPにおいて、まず、無線端末装置202がLPP専用の信号を送信する。次に、各無線基地局装置において、当該信号の受信タイミングを算出する。次に、各無線基地局装置の上位装置が、各無線基地局装置において算出された受信タイミングを取得し、これらのタイミング差に基づいて無線端末装置202の位置を推定する。
【0320】
図28は、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置がハンドオーバ動作の最適化処理を行なう際の動作手順の他の例を定めたシーケンス図である。
【0321】
図28を参照して、まず、無線端末装置202は、各無線基地局装置から送信される無線信号の受信電力を測定し、測定した受信電力の測定結果を示す測定結果通知をフェムト基地局へ送信する(ステップS221)。
【0322】
次に、フェムト基地局は、無線端末装置202から受信した測定結果通知により、自己が送信する無線信号の、当該無線端末装置202における受信電力を取得する(ステップS222)。
【0323】
次に、フェムト基地局は、自己の送信電力および取得した無線端末装置202における受信電力の差である下りパスロスを求める。さらに、フェムト基地局は、異なるタイミングにおける上記受信電力を複数取得し、下りパスロスの時間的な変動量を算出する(ステップS223)。
【0324】
ここで、上記変動量は、無線端末装置202が時刻(t−1)において測定した受信電力に基づくパスロスPL(t−1)、および時刻(t−1)より後の時刻tにおいて測定した受信電力に基づくパスロスPL(t)を用いて、以下の期待値Eとして表される。
E[|PL(t)−PL(t−1)|2
【0325】
次に、フェムト基地局は、自己の形成するフェムトセルとマクロセルとのセルエッジにおける電力変化量PCを推測する。たとえば、フェムト基地局は、求めたパスロス変動量が所定の閾値より小さい場合には電力変化量PCが小さいと判断し、求めたパスロス変動量が所定の閾値より大きい場合には電力変化量PCが大きいと判断する(ステップS224)。
【0326】
以降の動作(ステップS225〜S237)は、図24に示すシーケンス図における動作(ステップS166〜S178)と同様であるため、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
【0327】
図29は、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置がハンドオーバ動作の最適化処理を行なう際の動作手順の他の例を定めたシーケンス図である。
【0328】
図29を参照して、まず、フェムト基地局は、自己の形成するセルに在圏する無線端末装置202の無線信号の送信電力、および自己における当該無線端末装置202からの無線信号の受信電力を取得する。そして、フェムト基地局は、これらの送信電力および受信電力の差である上りパスロスを求める。さらに、フェムト基地局は、異なるタイミングにおける上記受信電力を複数取得し、上りパスロスの時間的な変動量を算出する(ステップS241)。
【0329】
ここで、上記変動量は、フェムト基地局が時刻(t−1)において測定した受信電力に基づくパスロスPL(t−1)、および時刻(t−1)より後の時刻tにおいて測定した受信電力に基づくパスロスPL(t)を用いて、以下の期待値Eとして表される。
E[|PL(t)−PL(t−1)|2
【0330】
次に、フェムト基地局は、自己の形成するフェムトセルとマクロセルとのセルエッジにおける電力変化量PCを推測する。たとえば、フェムト基地局は、求めたパスロス変動量が所定の閾値より小さい場合には電力変化量PCが小さいと判断し、求めたパスロス変動量が所定の閾値より大きい場合には電力変化量PCが大きいと判断する(ステップS242)。
【0331】
以降の動作(ステップS243〜S255)は、図24に示すシーケンス図における動作(ステップS166〜S178)と同様であるため、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
【0332】
図30は、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置がハンドオーバ動作の最適化処理を行なう際の動作手順の他の例を定めたシーケンス図である。
【0333】
図30を参照して、まず、フェムト基地局は、自己の形成するセルに在圏する無線端末装置202が送信する無線信号の周波数を取得する(ステップS261)。
【0334】
次に、フェムト基地局は、自己が設定したアップリンクの周波数、すなわち上記無線端末装置202が送信する無線信号の周波数と、測定した周波数との差であるドップラーシフトを算出する(ステップS262)。
【0335】
ここで、無線端末装置202が静止している場合にはドップラーシフトはゼロとなり、無線端末装置202の移動速度が大きくなるにつれてドップラーシフトは大きくなる。
【0336】
次に、フェムト基地局は、自己の形成するフェムトセルとマクロセルとのセルエッジにおける電力変化量PCを推測する。たとえば、フェムト基地局は、求めたドップラーシフトが所定の閾値より小さい場合には電力変化量PCが小さいと判断し、求めたドップラーシフトが所定の閾値より大きい場合には電力変化量PCが大きいと判断する(ステップS263)。
【0337】
以降の動作(ステップS264〜S276)は、図24に示すシーケンス図における動作(ステップS166〜S178)と同様であるため、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
【0338】
図31は、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置がハンドオーバ動作の最適化処理を行なう際の動作手順の他の例を定めたシーケンス図である。
【0339】
図31を参照して、まず、無線端末装置202は、各無線基地局装置から送信される無線信号の受信電力を測定し、測定した受信電力の測定結果を示す測定結果通知をフェムト基地局へ送信する(ステップS281)。
【0340】
次に、フェムト基地局は、無線端末装置202から受信した測定結果通知により、自己または他の無線基地局装置が送信する無線信号の、当該無線端末装置202における受信電力を取得する。さらに、フェムト基地局は、異なるタイミングにおける上記受信電力を複数取得し、無線端末装置202における無線信号の受信電力の時間的な変動量を算出する。フェムト基地局は、この変動量から、シャドウィングの大小を判断する(ステップS282)。
【0341】
ここで、上記変動量は、無線端末装置202が時刻(t−1)において測定した受信電力M(t−1)、および時刻(t−1)より後の時刻tにおいて測定した受信電力M(t)を用いて、以下の期待値Eとして表される。
E[|M(t)−M(t−1)|2
【0342】
なお、フェムト基地局は、複数の無線端末装置202からの測定結果通知を用いてもよい。たとえば、複数の無線端末装置202のうち、変動量の大きいものを用いてもよいし、複数の無線端末装置202の変動量を平均する等の統計処理を行ったものを用いてもよいし、ランダムに抽出した1または複数の無線端末装置202の変動量を用いてもよいし、測定結果通知に含まれる無線端末装置202の移動速度のパラメータを参照して、移動速度の大きい無線端末装置202の変動量を用いてもよい。また、これらの算出方法を組み合わせてもよい。
【0343】
次に、フェムト基地局は、自己の形成するフェムトセルとマクロセルとのセルエッジにおける電力変化量PCを推測する。たとえば、フェムト基地局は、求めたシャドウィングが小さい場合には電力変化量PCが小さいと判断し、求めたシャドウィングが大きい場合には電力変化量PCが大きいと判断する(ステップS283)。
【0344】
以降の動作(ステップS284〜S296)は、図24に示すシーケンス図における動作(ステップS166〜S178)と同様であるため、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
【0345】
ところで、非特許文献1に記載されるような不適切なハンドオーバ動作が行なわれると、通信システムにおいて、通信断および通信トラフィックの増大等、種々の問題が生じる。
【0346】
これに対して、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置では、端末電力情報取得部11は、自己の無線基地局装置の形成するセルに在圏する無線端末装置202における無線信号の受信電力の、無線端末装置202の位置変化に対する変化度合いを示す端末電力情報を取得する。そして、ハンドオーバ制御部12は、端末電力情報取得部11によって取得された端末電力情報に基づいて、自己の無線基地局装置から他の無線基地局装置への無線端末装置202のハンドオーバ動作のタイミングを制御する。
【0347】
このような構成により、無線端末装置202の位置変化に伴う受信状態の変化を用いてハンドオーバ動作のタイミングを適切に制御することができるため、不適切なハンドオーバ動作を抑制し、良好な通信システムを構築することができる。
【0348】
したがって、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置では、無線端末装置のハンドオーバ動作を適切に制御することにより、通信の安定化を図ることができる。
【0349】
また、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置では、ハンドオーバ制御部12は、端末電力情報が示す上記変化度合いが大きい場合には、ハンドオーバ動作のタイミングが早まるように制御し、上記変化度合いが小さい場合には、ハンドオーバ動作のタイミングが遅くなるように制御する。
【0350】
このような構成により、ハンドオーバ動作のタイミングを制御するためのパラメータを適切に設定し、ハンドオーバ動作を最適化することができる。
【0351】
”Too Early HO”、”HO to Wrong Cell”および”Ping Pong HO”のパラメータ調整と”Too Late HO”のパラメータ調整とは、互いにトレードオフの関係にある。すなわち、”Too Early HO”、”HO to Wrong Cell”および”Ping Pong HO”を生じにくくするためのパラメータ変更は、”Too Late HO”を生じやすくなるパラメータ変更となる場合があり、”Too Late HO”を生じにくくするためのパラメータ変更は、”Too Early HO”、”HO to Wrong Cell”および”Ping Pong HO”を生じやすくなるパラメータ変更となる場合がある。すなわち、電波環境によっては、パラメータ調整が収束しない場合がある。
【0352】
そこで、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置では、ハンドオーバ制御部12は、端末電力情報が示す上記変化度合いが大きい場合には、ハンドオーバ動作のタイミング制御幅を大きく設定し、上記変化度合いが小さい場合には、ハンドオーバ動作のタイミング制御幅を小さく設定する。
【0353】
このように、パラメータ調整のステップサイズを適応的に変えることにより、ハンドオーバ動作の最適化処理の収束速度および安定性を高めることができる。
【0354】
また、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置では、端末電力情報取得部11は、無線端末装置202において、自己の無線基地局装置が送信する無線信号の受信品質を示す指標が所定値以下となる状態、または他の無線基地局装置が送信する無線信号の受信電力が所定値以上となる状態における上記変化度合いを示す端末電力情報を取得する。
【0355】
このような構成により、無線通信システムにおける適切な位置の電力変化量PCを用いて、ハンドオーバ動作のタイミングをより適切に制御することができる。
【0356】
また、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置では、端末電力推定部13は、自己の無線基地局装置と他の無線基地局装置との距離に基づいて上記変化度合いを推定する。
【0357】
このような構成により、基地局間距離の大小に応じて無線端末装置202の受信環境を適切に評価し、電力変化量PCをより正確に推定することができる。
【0358】
また、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置では、基地局間距離推定部16は、他の無線基地局装置が送信する無線信号の送信電力と、他の無線基地局装置が送信する無線信号の、自己の無線基地局装置の形成するセルにおける受信電力との差に基づいて、自己の無線基地局装置と他の無線基地局装置との距離を推定する。そして、端末電力推定部13は、基地局間距離推定部16によって推定された距離に基づいて上記変化度合いを推定する。
【0359】
このように、他の無線基地局装置の無線信号の送信電力および自セルにおける当該無線信号の受信電力の差である下りパスロスを用いる構成により、基地局間距離Rをより正確に推定することができる。また、基地局間距離Rをユーザが予め無線基地局装置に設定する必要がなくなる。
【0360】
また、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置では、端末電力推定部13は、自己の無線基地局装置から送信される無線信号の送信電力と他の無線基地局装置から送信される無線信号の送信電力との差に基づいて上記変化度合いを推定する。
【0361】
このような構成により、基地局間の送信電力差の大小に応じて無線端末装置202の受信環境を適切に評価し、電力変化量PCをより正確に推定することができる。
【0362】
また、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置では、端末電力推定部13は、自己の無線基地局装置の形成するセルに在圏する無線端末装置202の移動速度に基づいて上記変化度合いを推定する。
【0363】
このような構成により、無線端末装置202の移動速度の大小に応じて無線端末装置202の受信環境を適切に評価し、電力変化量PCをより正確に推定することができる。
【0364】
また、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置では、端末電力推定部13は、他の無線基地局装置が送信する無線信号の送信電力と、他の無線基地局装置が送信する無線信号の、自己の無線基地局装置の形成するセルにおける受信電力との差の時間的な変化に基づいて上記変化度合いを推定する。
【0365】
このような構成により、他の無線基地局装置の無線信号の送信電力および自セルにおける当該無線信号の受信電力の差である下りパスロスの時間変化の大小に応じて無線端末装置202の受信環境を適切に評価し、電力変化量PCをより正確に推定することができる。
【0366】
また、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置では、端末電力推定部13は、自己の無線基地局装置の形成するセルに在圏する無線端末装置202が送信する無線信号の送信電力と、自己の無線基地局装置における無線信号の受信電力との差の時間的な変化に基づいて上記変化度合いを推定する。
【0367】
このような構成により、無線端末装置202の無線信号の送信電力および自己の無線基地局装置における当該無線信号の受信電力の差である上りパスロスの時間変化の大小に応じて無線端末装置202の受信環境を適切に評価し、電力変化量PCをより正確に推定することができる。
【0368】
また、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置では、端末電力推定部13は、自己の無線基地局装置の形成するセルに在圏する無線端末装置202が送信する無線信号の周波数と、自己の無線基地局装置が受信した無線信号の周波数との差に基づいて上記変化度合いを推定する。
【0369】
このような構成により、無線端末装置202の無線信号の周波数および自己の無線基地局装置が受信した当該無線信号の周波数の差であるドップラーシフトの大小に応じて無線端末装置202の受信環境を適切に評価し、電力変化量PCをより正確に推定することができる。
【0370】
また、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置では、端末電力推定部13は、無線端末装置202における無線信号の受信電力の時間的な変化に基づいて上記変化度合いを推定する。
【0371】
このような構成により、無線端末装置202におけるシャドウィングの大小に応じて無線端末装置202の受信環境を適切に評価し、電力変化量PCをより正確に推定することができる。
【0372】
また、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置では、端末電力推定部13は、自己の無線基地局装置の形成するセルに在圏する無線端末装置202における無線信号の受信電力の測定結果に基づいて受信電力の時間的な変化を取得する。
【0373】
このように、無線端末装置202の測定結果を用いる構成により、当該無線端末装置202におけるシャドウィングをより正確に推定することができる。
【0374】
また、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置では、端末電力推定部13は、自己の無線基地局装置の形成するセルに在圏する複数の無線端末装置202のうち、移動速度の大きい無線端末装置202の受信電力の時間的な変化に基づいて上記変化度合いを推定する。
【0375】
このように、シャドウィングが大きくなりやすい無線端末装置202を選択して受信環境を評価する構成により、電力変化量PCをより正確に推定することができる。
【0376】
なお、本発明の実施の形態では、無線端末装置のハンドオーバ動作について具体的な説明を行なったが、無線基地局装置と通信中の無線端末装置が行なう基地局間移動(セル間移動)動作であるハンドオーバに限らず、アイドル状態の無線端末装置が行なう基地局間移動(セル間移動)動作についても、本発明は適用される。すなわち、本発明の実施の形態において、「ハンドオーバ」を「移動」に置き換えた構成および動作についても、本発明は適用される。
【0377】
また、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置では、制御部98は、無線端末装置202の電力変化量PCを推測する構成であるとしたが、これに限定するものではない。制御部98は、電力変化量PCを推測する構成に限らず、他の装置が推測等した結果を取得する構成であってもよい。
【0378】
また、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置は、基地局間距離R、送信電力差PD、無線端末装置202の移動速度、パスロス、ドップラーシフトおよびシャドウィングを自ら算出する構成であるとしたが、これに限定するものではなく、他の装置が演算した結果を取得する構成であってもよい。
【0379】
また、本発明の実施の形態に係る無線基地局装置では、制御部98は、電力変化量PCに基づいてハンドオーバ動作のタイミングを制御する構成であるとしたが、これに限定するものではなく、以下のような構成であってもよい。すなわち、制御部98は、電力変化量PCを用いず、自己の無線基地局装置と他の無線基地局装置との距離、自己の無線基地局装置および他の無線基地局装置から送信される無線信号の送信電力の差、自己の無線基地局装置の形成するセルに在圏する無線端末装置202の移動速度、他の無線基地局装置が送信する無線信号の送信電力と、他の無線基地局装置が送信する無線信号の、自己の無線基地局装置の形成するセルにおける受信電力との差の時間的な変化、自己の無線基地局装置の形成するセルに在圏する無線端末装置202が送信する無線信号の送信電力と、自己の無線基地局装置における無線信号の受信電力との差の時間的な変化、自己の無線基地局装置の形成するセルに在圏する無線端末装置202が送信する無線信号の周波数と、自己の無線基地局装置が受信した無線信号の周波数との差、ならびに無線端末装置202における無線信号の受信電力の時間的な変化のうち、少なくともいずれか1つの情報を取得する。そして、制御部98は、取得した情報に基づいてハンドオーバ動作のタイミング制御を行なう。
【0380】
このような構成であっても、無線端末装置202の受信環境を適切に評価し、ハンドオーバ動作のタイミングを適切に制御することができるため、不適切なハンドオーバ動作を抑制し、良好な通信システムを構築することができる。したがって、無線端末装置のハンドオーバ動作を適切に制御することにより、通信の安定化を図ることができる。
【0381】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0382】
11 端末電力情報取得部
12 ハンドオーバ制御部(移動動作制御部)
13 端末電力推定部
14 基地局測定部
15 端末測定結果取得部
16 基地局間距離推定部
91 アンテナ
92 サーキュレータ
93 無線受信部
94 無線送信部
95 信号処理部
96 受信信号処理部
97 送信信号処理部
98 制御部
101A,101B,101C 無線基地局装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線端末装置が移動動作を行なうことにより複数の無線基地局装置と通信可能な通信システムにおいて、無線端末装置との間で無線信号を送受信するための無線基地局装置であって、
自己の無線基地局装置の形成するセルに在圏する無線端末装置における前記無線信号の受信電力の、前記無線端末装置の位置変化に対する変化度合いを示す端末電力情報を取得するための端末電力情報取得部と、
前記端末電力情報取得部によって取得された前記端末電力情報に基づいて、自己の無線基地局装置から他の無線基地局装置への無線端末装置の移動動作のタイミングを制御するための移動動作制御部とを備える、無線基地局装置。
【請求項2】
前記移動動作制御部は、前記端末電力情報が示す前記変化度合いが大きい場合には、前記移動動作のタイミングが早まるように制御し、前記変化度合いが小さい場合には、前記移動動作のタイミングが遅くなるように制御する、請求項1に記載の無線基地局装置。
【請求項3】
前記移動動作制御部は、前記端末電力情報が示す前記変化度合いが大きい場合には、前記移動動作のタイミング制御幅を大きく設定し、前記変化度合いが小さい場合には、前記移動動作のタイミング制御幅を小さく設定する、請求項1または請求項2に記載の無線基地局装置。
【請求項4】
前記端末電力情報取得部は、無線端末装置において、自己の無線基地局装置が送信する無線信号の受信品質を示す指標が所定値以下となる状態、または前記他の無線基地局装置が送信する無線信号の受信電力が所定値以上となる状態における前記変化度合いを示す端末電力情報を取得する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の無線基地局装置。
【請求項5】
前記無線基地局装置は、さらに、
自己の無線基地局装置と前記他の無線基地局装置との距離に基づいて前記変化度合いを推定するための端末電力推定部を備え、
前記端末電力情報取得部は、前記端末電力推定部によって推定された前記変化度合いを前記端末電力情報として取得する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の無線基地局装置。
【請求項6】
前記無線基地局装置は、さらに、
前記他の無線基地局装置が送信する無線信号の送信電力と、前記他の無線基地局装置が送信する無線信号の、自己の無線基地局装置の形成するセルにおける受信電力との差に基づいて、自己の無線基地局装置と前記他の無線基地局装置との距離を推定するための基地局間距離推定部を備え、
前記端末電力推定部は、前記基地局間距離推定部によって推定された前記距離に基づいて前記変化度合いを推定する、請求項5に記載の無線基地局装置。
【請求項7】
前記無線基地局装置は、さらに、
自己の無線基地局装置から送信される無線信号の送信電力と前記他の無線基地局装置から送信される無線信号の送信電力との差に基づいて前記変化度合いを推定するための端末電力推定部を備え、
前記端末電力情報取得部は、前記端末電力推定部によって推定された前記変化度合いを前記端末電力情報として取得する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の無線基地局装置。
【請求項8】
前記無線基地局装置は、さらに、
自己の無線基地局装置の形成するセルに在圏する無線端末装置の移動速度に基づいて前記変化度合いを推定するための端末電力推定部を備え、
前記端末電力情報取得部は、前記端末電力推定部によって推定された前記変化度合いを前記端末電力情報として取得する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の無線基地局装置。
【請求項9】
前記無線基地局装置は、さらに、
前記他の無線基地局装置が送信する無線信号の送信電力と、前記他の無線基地局装置が送信する無線信号の、自己の無線基地局装置の形成するセルにおける受信電力との差の時間的な変化に基づいて前記変化度合いを推定するための端末電力推定部を備え、
前記端末電力情報取得部は、前記端末電力推定部によって推定された前記変化度合いを前記端末電力情報として取得する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の無線基地局装置。
【請求項10】
前記無線基地局装置は、さらに、
自己の無線基地局装置の形成するセルに在圏する無線端末装置が送信する無線信号の送信電力と、自己の無線基地局装置における前記無線信号の受信電力との差の時間的な変化に基づいて前記変化度合いを推定するための端末電力推定部を備え、
前記端末電力情報取得部は、前記端末電力推定部によって推定された前記変化度合いを前記端末電力情報として取得する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の無線基地局装置。
【請求項11】
前記無線基地局装置は、さらに、
自己の無線基地局装置の形成するセルに在圏する無線端末装置が送信する無線信号の周波数と、自己の無線基地局装置が受信した前記無線信号の周波数との差に基づいて前記変化度合いを推定するための端末電力推定部を備え、
前記端末電力情報取得部は、前記端末電力推定部によって推定された前記変化度合いを前記端末電力情報として取得する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の無線基地局装置。
【請求項12】
前記無線基地局装置は、さらに、
無線端末装置における無線信号の受信電力の時間的な変化に基づいて前記変化度合いを推定するための端末電力推定部を備え、
前記端末電力情報取得部は、前記端末電力推定部によって推定された前記変化度合いを前記端末電力情報として取得する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の無線基地局装置。
【請求項13】
前記端末電力推定部は、自己の無線基地局装置の形成するセルに在圏する無線端末装置における無線信号の受信電力の測定結果に基づいて前記受信電力の時間的な変化を取得する、請求項12に記載の無線基地局装置。
【請求項14】
前記端末電力推定部は、自己の無線基地局装置の形成するセルに在圏する複数の無線端末装置のうち、移動速度の大きい前記無線端末装置の前記受信電力の時間的な変化に基づいて前記変化度合いを推定する、請求項12または請求項13に記載の無線基地局装置。
【請求項15】
無線端末装置が移動動作を行なうことにより複数の無線基地局装置と通信可能な通信システムにおいて、無線端末装置との間で無線信号を送受信するための無線基地局装置であって、
自己の無線基地局装置と他の無線基地局装置との距離、自己の無線基地局装置および他の無線基地局装置から送信される無線信号の送信電力の差、自己の無線基地局装置の形成するセルに在圏する無線端末装置の移動速度、他の無線基地局装置が送信する無線信号の送信電力と、前記他の無線基地局装置が送信する無線信号の、自己の無線基地局装置の形成するセルにおける受信電力との差の時間的な変化、自己の無線基地局装置の形成するセルに在圏する無線端末装置が送信する無線信号の送信電力と、自己の無線基地局装置における前記無線信号の受信電力との差の時間的な変化、自己の無線基地局装置の形成するセルに在圏する無線端末装置が送信する無線信号の周波数と、自己の無線基地局装置が受信した前記無線信号の周波数との差、ならびに無線端末装置における無線信号の受信電力の時間的な変化のうち、少なくともいずれか1つの情報を取得するための情報取得部と、
前記情報取得部によって取得された前記情報に基づいて、自己の無線基地局装置から前記他の無線基地局装置への無線端末装置の移動動作のタイミングを制御するための移動動作制御部とを備える、無線基地局装置。
【請求項16】
無線端末装置が移動動作を行なうことにより複数の無線基地局装置と通信可能な通信システムにおいて、無線端末装置との間で無線信号を送受信するための無線基地局装置における通信制御方法であって、
自己の無線基地局装置の形成するセルに在圏する無線端末装置における前記無線信号の受信電力の、前記無線端末装置の位置変化に対する変化度合いを示す端末電力情報を取得するステップと、
取得した前記端末電力情報に基づいて、自己の無線基地局装置から他の無線基地局装置への無線端末装置の移動動作のタイミングを制御するステップとを含む、通信制御方法。
【請求項17】
無線端末装置が移動動作を行なうことにより複数の無線基地局装置と通信可能な通信システムにおいて、無線端末装置との間で無線信号を送受信するための無線基地局装置における通信制御プログラムであって、コンピュータに、
自己の無線基地局装置の形成するセルに在圏する無線端末装置における前記無線信号の受信電力の、前記無線端末装置の位置変化に対する変化度合いを示す端末電力情報を取得するステップと、
取得した前記端末電力情報に基づいて、自己の無線基地局装置から他の無線基地局装置への無線端末装置の移動動作のタイミングを制御するステップとを実行させるための、通信制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2013−58826(P2013−58826A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194664(P2011−194664)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】