説明

無線基地局装置

【課題】上り回線のトラフィック量の変動が大きい場合でも、効率的な送信制御を行う。
【解決手段】受信TFI値算出部102は、上り制御データである個別物理制御チャネル(DPCCH)のTFCIから受信TFI値を算出する。ATMセルトラフィック量算出部108は、受信TFI値算出部102により算出された受信TFI値と、復号パラメータ格納部103に格納されているトランスポート数およびTFI値に対するトランスポートサイズとトランスポートブロック数よりATMセル組み立て部104で生成される単位時間当たりのATMセル数をVC毎に算出する。優先セル制御部109は、ATMセルトラフィック量算出部108からの情報を用いて優先セル制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ATM(Asynchronous Transfer Mode)セルを伝送するためのATM伝送装置またはイーサネット(登録商標)フレームを伝送るためのイーサネット伝送装置に関し、特に、ATM伝送路またはIP(Internet Protocol)伝送路を介して上位装置と接続された無線基地局装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信システム等において、無線基地局装置と上位装置との間をATM伝送路で接続することが行われている。このような場合、ATM伝送路を有する無線基地局装置において、上りトラフィック量やサービスベアラによらず、上位装置の規定内で最大限にATMセルを効率的に送信することが求められている。
【0003】
このATM伝送路では、1本の物理的な通信路において複数の通信路が仮想的に割り当てられている。このように仮想的に割り当てられたチャンネルは、バーチャルチャネル(以下、VC(Virtual Channel)と略す。)と呼ばれている。この各VCを区別するために、それぞれのVCにはVCI(Virtual Channel Identifier:仮想チャネル識別子)が設けられている。
【0004】
このVCには特定の帯域が割り当てられ、各VCに対してそれぞれ複数のトランスポートチャネルを割り当てることができるようになっている。そのため、各トランスポートチャネルを識別する為にAAL2レイヤでCID(Channel ID)という識別子が設けられている。
【0005】
例えば、VCI=65というVCに、複数のトランスポートチャネルが割り当てられている場合の例を下記に示す。

VC(VCI=65)−トランスポートチャネル(CID=100)<音声>
−トランスポートチャネル(CID=101)<パケット>
−トランスポートチャネル(CID=200)<ISDN>

−トランスポートチャネル(CID=384)<パケット>

上記のようなトランスポートチャネル(音声、パケット、ISDN等)は、総称してベアラ(サービスベアラ)と呼ばれている。
【0006】
このようなシステムにおいて伝送されるATMセルには、リアルタイム性が必要となるセル(音声データや特定の制御データ等)やリアルタイム性が必要ではないセル(Webデータ等)があり、これらの両方のセルが装置内のバッファに同時に格納されている場合に、リアルタイム性が必要となるセルを優先して送信する優先セル送信制御が必要となる。
【0007】
この優先セル送信制御を行うセル送信制御装置としては様々な構成が提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。このような優先セル送信制御を行う従来の無線基地局装置の構成の一例を図6に示す。
【0008】
この従来の無線基地局装置は、図6に示されるように、受信データ復号処理部101と、受信TFI(Transport Format Indicator:トランスポートフォーマットインディケータ)値算出部102と、復号パラメータ格納部103と、ATMセル組み立て部104と、ATMセル送信制御部105と、セルバッファ部106と、シェーピング処理部107と、優先セル制御部909と、ATMパッケージ他メータ格納部111とから構成されている。そして、この従来の無線基地局装置は、ATM伝送路を介して上位装置と接続されている。
【0009】
受信TFI値算出部102は、上り制御データである個別物理制御チャネル(DPCCH)のTFCI(Transport-Format-Combination Indicator)から受信TFI値を算出する。
【0010】
受信データ復号処理部101は、上り受信データである個別物理データチャネル(DPDCH)を、受信TFI値算出部102から通知された受信TFI値に基づいてトランスポートチャネル毎に復号処理する。
【0011】
復号パラメータ格納部103は、受信データ復号処理部101と受信TFI値算出部102が処理するためのパラメータとして、トランスポートチャネル数およびTFI値に対するトランスポートブロックサイズとトランスポートブロック数を格納している。
【0012】
ATMセル組み立て部104は、受信データ復号処理部101により復号された上りデータフレームのATMセル化を行う。
【0013】
このATMセル組み立て部104における上りデータフレームをATMセル化する際の処理を図7を参照して説明する。
【0014】
図7(a)に示されるように、受信データ復号処理部101からの152バイトの受信データフレーム112は、4つのATMセル127に変換される。また、各ATMセルは、図7(b)に示されるように、5バイトのATMヘッダ(AH)128と、3バイトのショートセルヘッダ129と、45バイトのショートセルペイロード130とから構成され、合計して53バイトの構成となっている。
【0015】
ATM伝送路パラメータ格納部111は、各VC毎に割り当てられた最大帯域の情報が格納されている。
【0016】
優先セル制御部909は、ATM伝送路パラメータ格納部111に格納されている各VC毎の最大帯域の比率の情報を優先セル制御を行うための情報としてATMセル送信制御部105に通知する。
【0017】
ATMセル送信制御部105は、優先セル制御部909からの情報に基づいて、ATMセル組み立て部104からのATMセルに対してVC毎の優先セル制御を行いATMセルを送信する。
【0018】
セルバッファ部106はATMセルを格納する。シェーピング処理部107は、ATM伝送路パラメータ格納部111に格納されている各VC毎に割り当てられた最大帯域に基づいて、ATMセル送信制御部105からのATMセルに対してシェーピング処理を行いATM伝送路に送信する。
【0019】
この従来の無線基地局装置では、ATM伝送路パラメータ格納部111に格納されているVC毎の最大帯域の比率による固定的な優先セル制御が行われていたために、実際の各VCのトラフィック量の比率が、設定された最大帯域の比率とかけ離れたものになった場合に効率的にシェーピング処理部107にATMセルを送信できない場合があった。
【0020】
従来の優先セル制御部909において行われる優先セル制御方法を図8に示す。
【0021】
従来の優先セル制御部909はATM伝送路パラメータ格納部111から通知された、各VCの最大帯域の比率をATMセル送信制御部105に通知しATMセル送信制御部105はその比率の高い順に優先セル制御を行っていた。
【0022】
例えば、図8に示した例では、VCA(VCI=AのVC)の最大帯域が10Mbps、VCB(VCI=BのVC)の最大帯域が5Mbps、VCC(VCI=CのVC)の最大帯域が20Mbps、VCD(VCI=DのVC)の最大帯域が8Mbps、VCE(VCI=EのVC)の最大帯域が12Mbpsに設定されているものとする。
【0023】
この場合に、VCA、VCB、VCC、VCD、VCEの単位時間当たりのATMセル数の上限値Amax、Bmax、Cmax、Dmax、Emaxは、それぞれ、この最大帯域の値から算出される。例えば、VCA(VCI=A)の場合についての単位時間(10ms)当たりのATMセル数の上限値は、1つのATMセルは53バイトであり、1バイトは8ビットであるため、下記のような式により算出される。
【0024】
10Mbps/(8×53×100)=235(セル/10ms)
この図8に示したような場合には、従来の無線基地局装置では、固定的に割り当てられた最大帯域の比率(10:5:20:8:12)に基づいて優先セル制御が行われる。
【0025】
このような従来の優先セル制御を行う無線基地局装置では、実際のトラフィック量が、割り当てられた最大帯域の比に近い場合には問題がないが、接続されているサービスベアラが音声やISDNのような固定的なデータ通信ではなく、パケット通信のような可変的なデータ通信が多く接続されている場合には問題が発生する。なぜなら、パケット通信はたくさんのトランスポートブロック数を持つ(たくさんのTFI値を持つ)ために、トランスポートブロック領域の変動が状況に応じて大きくなり、実際のトラフィック量が割り当てられた最大帯域の比に近いトラフィック量とはならない。そのため、このように固定的な優先セル制御では、効率的なATMセル送信制御が行われないことになる。
【0026】
また、将来的にE−DCH(Enhanced Data Channel)と呼ばれる上り伝送容量の大きなサービスを開始することが3GPP(3rd Generation Partnership Project)25.896において提案されており、上りトラフィック量の変動が大きな場合でも効率的な送信制御を行うことができる優先セル送信制御方法が要求される。
【特許文献1】特開2000−312205号公報
【特許文献2】特開2004−15504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
上述した従来の無線基地局装置では、各VC毎に予め一定の帯域を割り当てて優先セル制御を行っていたため、上り回線のトラフィック量の変動が大きい場合には、効率的な送信制御を行うことができないという問題点を有していた。
【0028】
本発明の目的は、上り回線のトラフィック量の変動が大きい場合でも、効率的な送信制御を行うことが可能な優先セル制御を行うことが可能な無線基地局装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記目的を達成するために、本発明の無線基地局装置は、ATM伝送路により上位装置と接続された無線基地局装置であって、
上り制御データである個別物理制御チャネルのTFCIから受信TFI値を算出する受信TFI値算出部と、
上り受信データである個別物理データチャネルを、前記受信TFI値算出部から通知された受信TFI値に基づいてトランスポートチャネル毎に復号処理する受信データ復号処理部と、
前記受信データ復号処理部と前記受信TFI値算出部が処理を行うためのパラメータとして、トランスポートチャネル数およびTFI値に対するトランスポートブロックサイズとトランスポートブロック数を格納している復号パラメータ格納部と、
前記受信データ復号処理部により復号された上りデータフレームのATMセル化を行うATMセル組み立て部と、
前記受信TFI値算出部により算出された受信TFI値と、前記復号パラメータ格納部に格納されているトランスポート数およびTFI値に対するトランスポートサイズとトランスポートブロック数より前記ATMセル組み立て部で生成される単位時間当たりのATMセル数をVC毎に算出するATMセルトラフィック量算出部と、
各VC毎に割り当てられた最大帯域の情報が格納されているATM伝送路パラメータ格納部と、
前記ATMセルトラフィック量算出部により算出された各VC毎の単位時間当たりのATMセル数の比率の情報を優先セル制御を行うための情報として出力する優先セル制御部と、
前記優先セル制御部からの情報に基づいて、前記ATMセル組み立て部からのATMセルに対してVC毎の優先セル制御を行うATMセル送信制御部と、
前記ATM伝送路パラメータ格納部に格納されている各VC毎に割り当てられた最大帯域に基づいて、前記ATMセル送信制御部からのATMセルに対してシェーピング処理を行ってATM伝送路に送信するシェーピング処理部とを有する。
【0030】
また、本発明の他の無線基地局装置では、優先セル制御部は、ATMセルトラフィック量算出部により算出された単位時間当たりのATMセル数の最大帯域に基づく単位時間当たりのATMセル数の上限値に対する割合を各VC毎に求め、該割合の比率の情報を優先セル制御を行うための情報として出力する。
【0031】
本発明によれば、受信TFI値算出部で得られるベアラ毎の上り受信TFI値と復号パラメータ格納部の情報を用いてATMセルトラフィック量算出部にて上りATMセルのトラフィック量をあらかじめ求めておき、このトラフィック量を優先セル制御部に通知してやることで、単位時間当たりの上りトラフィック量に応じて、ダイナミックにATMセル送信制御部105に優先制御することが可能となる。そのため、本発明の無線基地局における優先セル制御方法によれば、ATM伝送路パラメータ格納部の固定的パラメータでATMセル送信制御部を優先制御していた従来の優先セル制御方法よりもATMセルを効率的に送信することができる。そのため、セル遅延変動が小さくなり、特定VCのベアラのトラフィック量が増加しても輻輳状態が発生し難くなる。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように、本発明によれば、ATMセルトラフィック量算出部により単位時間当たりのATMセル数を各VC毎に算出して優先セル制御を行うようにしているので、上り回線のトラフィック量の変動が大きい場合でも、効率的な送信制御を行うことが可能になるという効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0034】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態における無線基地局装置の構成を示すブロック図である。図1において、図6中の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略するものとする。
【0035】
本実施形態の無線基地局装置は、図1に示されるように、受信データ復号処理部101と、受信TFI値算出部102と、復号パラメータ格納部103とATMセル組み立て部104とATMセル送信制御部105と、セルバッファ部106と、シェーピング処理部107とATMセルトラフィック量算出部108と、優先セル制御部109とから構成されている。
【0036】
本実施形態の無線基地局装置は、図6に示した従来の無線基地局装置に対して、優先セル制御部909が優先セル制御部109に置き換えられ、ATMセルトラフィック量算出部108が新たに設けられた構成となっている。
【0037】
本実施形態の無線基地局装置では、ATMセルトラフィック量算出部108と、このATMセルトラフィック量算出部108からの情報を用いて優先セル制御を行う優先セル制御部109とにより、実際のトラフィック量が予め設定された最大帯域の比率になっていない場合でもATMセルを効率的に送信することができるようになる。
【0038】
ATMセルトラフィック量算出部108は、受信TFI値算出部102により算出された受信TFI値と、復号パラメータ格納部103に格納されているトランスポート数およびTFI値に対するトランスポートサイズとトランスポートブロック数よりATMセル組み立て部104で生成される単位時間当たりのATMセル数をVC毎に算出する。
【0039】
本実施形態における優先セル制御部109は、ATMセルトラフィック量算出部108により算出された単位時間当たりのVC毎のATMセル数と、ATM伝送路パラメータ格納部111に格納されている各VC毎の最大帯域の情報からATM優先セル制御を行うための情報を生成してATMセル送信制御部105に通知する。
【0040】
次に、本実施形態の無線基地局装置の動作を図面を参照して詳細に説明する。以下では、本実施形態の主要部であるATMセルトラフィック量算出部108と優先セル制御部109の動作を中心に説明する。
【0041】
先ず、ATMセルトラフィック量算出部108の動作原理とATMセル数の求め方を図2と図3を用いて説明する。
【0042】
先ず、受信TFI値算出部102により受信TFI値が算出される(ステップ201)。この動作については従来の無線基地局装置と同様のため、その説明は省略する。
【0043】
そして、本実施形態におけるATMセルトラフィック量算出部108は、(1)受信TFI値、(2)トランスポートチャネル数、(3)TFI値に対するトランスポートサイズとトランスポートブロック数、の情報に基づいて、単位時間当たりのATMセル数をVC毎に算出する(ステップ202)。
【0044】
最後に、優先セル制御部109では、ATMセルトラフィック量算出部108により算出された単位時間当たりのATMセル数に基づいて優先セル制御が行われる(ステップ203)。
【0045】
図3に、3GPP 25.427に規定されている、受信データ復号処理部101から受信されるデータフォーマット112を示す。
【0046】
このデータフォーマット112では、ヘッダCRC(Cyclic Redundancy Check)、PT(Payload Type:ペイロードタイプ)、CFN(Connection Frame Number:コネクションフレームナンバー)領域113とQE(Quality Estimate:品質指標)領域116と、Spare Extension(予備)〜ペイロードCRC(Payload CRC)領域118はそれぞれ2バイト、1バイト、3バイトの合計6バイトの固定サイズである。
【0047】
TFI領域114は復号パラメータにより可変サイズであり、トランスポートブロック領域115とCRCI(CRC指標)領域117は復号パラメータ及び受信TFI算出部102から通知される受信TFI値毎に可変サイズとなる。
【0048】
可変サイズとなる部分の算出方法は、受信TFI値算出部102からの受信TFI値と復号パラメータ格納部103のトランスポートチャネル数と受信TFI値に対するトランスポートブロックサイズとトランスポートブロック数を用いて算出する。ベアラ毎に算出した単位時間当たりのATMセル数は優先セル制御部109に通知される。
【0049】
これらの動作について図4に具体的なパラメータを用いて説明する。具体例として復号パラメータ及び受信TFI値は、トランスポートチャネル数を2、トランスポートチャネル1の受信TFI値のトランスポートブロックサイズを234ビット、トランスポートブロック数を1、トランスポートチャネル2の受信TFI値のトランスポートブロックサイズを456ビット、トランスポートブロック数を2とする。
【0050】
このパラメータを用いてATMセル数を算出するとデータフレームの固定サイズは6バイト、トランスポートチャネル数2であるからTFI領域は2バイト、トランスポートブロック領域115は、トランスポートチャネル1のトランスポートブロックサイズは234ビットであるから234÷8=29.25を整数に切り上げて30バイトでトランスポートブロック数1であるので30×1=30バイトかつトランスポートチャネル2のトランスポートチャネルブロックサイズは456ビットであるから456÷8=57を整数に切り上げて57バイトでトランスポートブロック数2であるので57×2=114バイトとなる。
【0051】
これら算出した結果をすべて加算すると6バイト+2バイト+30バイト+114バイト+1バイト=153バイトとなり、ショートセルにデータを多重するとATMセルは153バイト÷45バイト=3.4となりこのベアラのATMセル数は4セルとなる。これを数式で表すと、下記のようになる。
【0052】
【数1】

【0053】
DFS:受信データフレームサイズ
TCH:トランスポートチャネル数
TBNn:トランスポートチャネルnのトランスポートブロック数
TBSn:トランスポートチャネルnのトランスポートブロックサイズ数
R(A):数値Aを最も近い整数に切り上げる。例えば、R(7.123)=8となる。
【0054】
このATMセル数を各ベアラ(音声、ISDN、パケット通信等)毎に算出することで、ATMセルトラフィック量算出部108は、ATMセル組み立て部104からATMセル送信制御部105に流れる各VC単位毎のトラフィック量を算出することができ、それを優先セル制御部109に通知する。
【0055】
次に、本実施形態における優先セル制御部109により行われる優先セル制御方法を図4を参照して説明する。本実施形態の優先セル制御部109では、2つの優先セル制御方法を用いることができる。
【0056】
1つめの優先セル制御方法はATMセルトラフィック量算出部108から通知される単位時間あたりの各VC毎のATMセル数の比率に基づいて優先制御を行う方法である。
【0057】
この場合、優先セル制御部109は、ATMセルトラフィック量算出部108により算出された各VC毎の単位時間当たりのATMセル数の比率の情報を優先セル制御を行うための情報としてATMセル送信制御部105に出力する。
【0058】
つまり、VCA(VCI=A)の単位時間当たりのATMセル数をAt、VCB(VCI=B)の単位時間当たりのATMセル数をBt、VCC(VCI=C)の単位時間当たりのATMセル数をCt、VCD(VCI=D)の単位時間当たりのATMセル数をDt、VCE(VCI=E)の単位時間当たりのATMセル数をEtとした場合、優先セル制御部109は、At:Bt:Ct:Dt:Etの比率で優先制御を行うことにより実際に測定されたトラフィック量に適した優先制御がATMセル送信制御部105に対して行われる。
【0059】
2つめの優先セル制御方法は、各VC毎に設定されている最大帯域に対する実際に測定されたトラフィック量の、予め設定されている最大帯域におけるトラフィック量の割合を算出し、この割合の各VCにおける比率に応じて優先制御を行う方法である。
【0060】
この場合、優先セル制御部109は、ATMセルトラフィック量算出部108により算出された単位時間当たりのATMセル数の、最大帯域に基づく単位時間当たりのATMセル数の上限値に対する割合を各VC毎に求め、この割合の比率の情報を優先セル制御を行うための情報としてATMセル送信制御部105に出力する。
【0061】
つまり、優先セル制御部109は、At/Amax:Bt/Bmax:Ct/Cmax:Dt/Dmax:Et/Emaxの比率で優先制御が行われるようにATMセル送信制御部105に通知する。
【0062】
なお、ここでAmax、Bmax、Cmax、Dmax、Emaxは、それぞれ、VCA、VCB、VCC、VCD、VCEに対して設定されている最大帯域により算出される単位時間当たりのATMセル数の上限値である。
【0063】
上記で説明した1つめの優先セル制御方法は、実際のトラフィック量に応じた効率的なATMセル送信を実現することができ、2つめの優先セル制御方法は、各VC毎の最大帯域の比率と実際のトラフィック量の各VC毎の比率とが一致しない場合でも輻輳状態をできるだけ発生させないための方法である。
【0064】
例えば、VCB(VCI=B)の最大帯域が5Mbpsであるとすると、単位時間10ms当たりのATMセル数の上限値Bmaxは117セル/10msとなる。この場合、VCBの単位時間10ms当たりの実際のATMセル数Btが100セル/10msであったとする。そして、VCC(VCI=C)の最大帯域が20Mbpsであるとすると、単位時間10ms当たりのATMセル数の上限値Cmaxは471セル/10msとなる。この場合、VCCの単位時間10ms当たりの実際のATMセル数Ctが100セル/10msであったとする。
【0065】
従来の優先セル制御方法では、Bmax<CmaxであるためVCCのATMセルを優先的に送信することになるが、本実施形態の優先セル制御方法では、(Bt/Bmax)>(Ct/Cmax)であることによりVCBのATMセルが優先的に送信される。つまり、実際に使用されている帯域が、設定されている最大帯域に近く余裕の少ないVCのATMセルを優先して送信することにより、輻輳状態の発生をできるだけ防ぐことが可能となる。
【0066】
本実施形態では受信TFI値算出部102で得られるベアラ毎の上り受信TFI値と復号パラメータ格納部103の情報を用いてATMセルトラフィック量算出部108にて上りATMセルのトラフィック量をあらかじめ求めておき、このトラフィック量を優先セル制御部109に通知してやることで、単位時間当たりの上りトラフィック量に応じて、ダイナミックにATMセル送信制御部105に優先制御することができる。このことによりATM伝送路パラメータ格納部111の固定的パラメータでATMセル送信制御部105を優先制御していた従来の優先セル制御方法よりもATMセルを効率的に送信することができる。そのため、セル遅延変動が小さくなり、特定VCのベアラのトラフィック量が増加しても輻輳状態が発生し難くなる。
【0067】
尚、本実施形態ではATMセルトラフィック量算出部105で、単位時間当たりのATMセル数を算出しているが、この単位時間当たりの設定値を変更できることにより、さらに柔軟な優先セル制御を行うことができる。
【0068】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態の無線基地局装置について説明する。
【0069】
上記第1の実施形態では、ATM伝送装置に対して本発明を適用した場合を用いて説明したが、本発明の第2の実施形態では、イーサネット(Ethernet)伝送装置に対して本発明を適用した場合を用いて説明する。
【0070】
図5は本発明の第2の実施形態における無線基地局装置の構成を示すブロック図である。図5において、図1中の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略するものとする。
【0071】
本実施形態の無線基地局装置は、図5に示されるように、受信データ復号処理部101と、受信TFI値算出部102と、復号パラメータ格納部103と、フレーム組み立て部144と、フレームトラフィック量算出部145と、フレームバッファ部146と、フレーム送信制御部147と、優先フレーム制御部148と、IP伝送路パラメータ格納部150と、シェーピング処理部151とから構成されている。また、本実施形態の無線基地局装置は、IP伝送路を介して上位装置と接続されている。
【0072】
本実施形態の無線基地局装置では、図7に示したようなATMセル化をイーサネットフレーム化に変更して同様な処理が行われる。本実施形態の無線基地局装置は、図1に示した第1の実施形態の無線基地局装置に対して、ATMセル組み立て部104、ATMセルトラフィック量算出部108、ATMセル送信制御部105、セルバッファ部106と、優先セル制御部109と、シェーピング処理部107と、ATM伝送路パラメータ格納部111が、それぞれ、受信復号データのイーサネットフレームを組み立てるフレーム組み立て部144と、受信TFI値算出部102の受信TFI値と復号パラメータ格納部103からイーサネットフレームのトラフィック量を算出するフレームトラフィック量算出部145と、優先フレーム制御部148からの情報に応じて送信制御を施すフレーム送信制御部147と、イーサネットフレームを格納するフレームバッファ部146と、優先フレーム制御部148と、イーサネットフレームデータを必要に応じて平滑化するシェーピング処理部151と、上位装置からのイーサネット伝送路パラメータを格納するIP伝送路パラメータ格納部150とに置き換わった構成である。
【0073】
本実施形態の無線基地局装置における優先セル制御の動作は、図1に示した第1の実施形態の無線基地局装置において、ATMセルがイーサネットフレームに置き換わったものであり、その基本的な動作は同様であるため詳細な説明については省略する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1の実施形態の無線基地局装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の無線基地局装置における優先セル制御を説明するためのフローチャートである。
【図3】受信データ復号処理部101から受信されるデータフォーマット112を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における優先セル制御方法を説明するための図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の無線基地局装置の構成を示すブロック図である。
【図6】従来の無線基地局装置の構成を示すブロック図である。
【図7】上りデータフレームをATMセル化する際の処理を説明するための図である。
【図8】従来の優先セル制御方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0075】
101 受信データ復号処理部
102 受信TFI値算出部
103 復号パラメータ格納部
104 ATMセル組み立て部
105 ATMセル送信制御部
106 セルバッファ部
107 シェーピング処理部
108 ATMセルトラフィック量算出部
109 優先セル制御部
111 ATM伝送路パラメータ格納部
112 受信データフレーム
113 ヘッダCRC、PT、CFN領域
114 TFI領域
115 トランスポートブロック領域115
116 QE領域
117 CRCI領域
118 Spare Extension(予備)〜ペイロードCRC領域
127 ATMセル
128 ATMヘッダ(AH)
129 ショートセルヘッダ(SH)
130 ショートセルペイロード
144 イーサネットフレーム組み立て部
145 イーサネットフレームトラフィック算出部
146 フレームバッファ部
147 イーサネットフレーム送信制御部
148 優先フレーム制御部
150 イーサネットIP伝送路パラメータ格納部
151 シェーピング処理部
909 優先セル制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ATM伝送路により上位装置と接続された無線基地局装置であって、
上り制御データである個別物理制御チャネルのTFCIから受信TFI値を算出する受信TFI値算出部と、
上り受信データである個別物理データチャネルを、前記受信TFI値算出部から通知された受信TFI値に基づいてトランスポートチャネル毎に復号処理する受信データ復号処理部と、
前記受信データ復号処理部と前記受信TFI値算出部が処理を行うためのパラメータとして、トランスポートチャネル数およびTFI値に対するトランスポートブロックサイズとトランスポートブロック数を格納している復号パラメータ格納部と、
前記受信データ復号処理部により復号された上りデータフレームのATMセル化を行うATMセル組み立て部と、
前記受信TFI値算出部により算出された受信TFI値と、前記復号パラメータ格納部に格納されているトランスポート数およびTFI値に対するトランスポートサイズとトランスポートブロック数より前記ATMセル組み立て部で生成される単位時間当たりのATMセル数をVC毎に算出するATMセルトラフィック量算出部と、
各VC毎に割り当てられた最大帯域の情報が格納されているATM伝送路パラメータ格納部と、
前記ATMセルトラフィック量算出部により算出された各VC毎の単位時間当たりのATMセル数の比率の情報を優先セル制御を行うための情報として出力する優先セル制御部と、
前記優先セル制御部からの情報に基づいて、前記ATMセル組み立て部からのATMセルに対してVC毎の優先セル制御を行うATMセル送信制御部と、
前記ATM伝送路パラメータ格納部に格納されている各VC毎に割り当てられた最大帯域に基づいて、前記ATMセル送信制御部からのATMセルに対してシェーピング処理を行ってATM伝送路に送信するシェーピング処理部と、
を有する無線基地局装置。
【請求項2】
ATM伝送路により上位装置と接続された無線基地局装置であって、
上り制御データである個別物理制御チャネルのTFCIから受信TFI値を算出する受信TFI値算出部と、
上り受信データである個別物理データチャネルを、前記受信TFI値算出部から通知された受信TFI値に基づいてトランスポートチャネル毎に復号処理する受信データ復号処理部と、
前記受信データ復号処理部と前記受信TFI値算出部が処理を行うためのパラメータとして、トランスポートチャネル数およびTFI値に対するトランスポートブロックサイズとトランスポートブロック数を格納している復号パラメータ格納部と、
前記受信データ復号処理部により復号された上りデータフレームのATMセル化を行うATMセル組み立て部と、
前記受信TFI値算出部により算出された受信TFI値と、前記復号パラメータ格納部に格納されているトランスポート数およびTFI値に対するトランスポートサイズとトランスポートブロック数より前記ATMセル組み立て部で生成される単位時間当たりのATMセル数をVC毎に算出するATMセルトラフィック量算出部と、
各VC毎に割り当てられた最大帯域の情報が格納されているATM伝送路パラメータ格納部と、
前記ATMセルトラフィック量算出部により算出された単位時間当たりのATMセル数の、最大帯域に基づく単位時間当たりのATMセル数の上限値に対する割合を各VC毎に求め、該割合の比率の情報を優先セル制御を行うための情報として出力する優先セル制御部と、
前記優先セル制御部からの情報に基づいて、前記ATMセル組み立て部からのATMセルに対してVC毎の優先セル制御を行うATMセル送信制御部と、
前記ATM伝送路パラメータ格納部に格納されている各VC毎に割り当てられた最大帯域に基づいて、前記ATMセル送信制御部からのATMセルに対してシェーピング処理を行ってATM伝送路に送信するシェーピング処理部と、
を有する無線基地局装置。
【請求項3】
IP伝送路により上位装置と接続された無線基地局装置であって、
上り制御データである個別物理制御チャネルのTFCIから受信TFI値を算出する受信TFI値算出部と、
上り受信データである個別物理データチャネルを、前記受信TFI値算出部から通知された受信TFI値に基づいてトランスポートチャネル毎に復号処理する受信データ復号処理部と、
前記受信データ復号処理部と前記受信TFI値算出部が処理を行うためのパラメータとして、トランスポートチャネル数およびTFI値に対するトランスポートブロックサイズとトランスポートブロック数を格納している復号パラメータ格納部と、
前記受信データ復号処理部により復号された上りデータフレームのイーサネットフレーム化を行うフレーム組み立て部と、
前記受信TFI値算出部により算出された受信TFI値と、前記復号パラメータ格納部に格納されているトランスポート数およびTFI値に対するトランスポートサイズとトランスポートブロック数より前記フレーム組み立て部で生成される単位時間当たりのイーサネットフレーム数をVC毎に算出するフレームトラフィック量算出部と、
各VC毎に割り当てられた最大帯域の情報が格納されているIP伝送路パラメータ格納部と、
前記フレームトラフィック量算出部により算出された各VC毎の単位時間当たりのフレーム数の比率の情報を優先フレーム制御を行うための情報として出力する優先フレーム制御部と、
前記優先フレーム制御部からの情報に基づいて、前記フレーム組み立て部からのイーサネットフレームに対してVC毎の優先フレーム制御を行うフレーム送信制御部と、
前記IP伝送路パラメータ格納部に格納されている各VC毎に割り当てられた最大帯域に基づいて、前記フレーム送信制御部からのイーサネットフレームに対してシェーピング処理を行ってIP伝送路に送信するシェーピング処理部と、
を有する無線基地局装置。
【請求項4】
IP伝送路により上位装置と接続された無線基地局装置であって、
上り制御データである個別物理制御チャネルのTFCIから受信TFI値を算出する受信TFI値算出部と、
上り受信データである個別物理データチャネルを、前記受信TFI値算出部から通知された受信TFI値に基づいてトランスポートチャネル毎に復号処理する受信データ復号処理部と、
前記受信データ復号処理部と前記受信TFI値算出部が処理を行うためのパラメータとして、トランスポートチャネル数およびTFI値に対するトランスポートブロックサイズとトランスポートブロック数を格納している復号パラメータ格納部と、
前記受信データ復号処理部により復号された上りデータフレームのイーサネットフレーム化を行うフレーム組み立て部と、
前記受信TFI値算出部により算出された受信TFI値と、前記復号パラメータ格納部に格納されているトランスポート数およびTFI値に対するトランスポートサイズとトランスポートブロック数より前記フレーム組み立て部で生成される単位時間当たりのイーサネットフレーム数をVC毎に算出するフレームトラフィック量算出部と、
各VC毎に割り当てられた最大帯域の情報が格納されているIP伝送路パラメータ格納部と、
前記フレームトラフィック量算出部により算出された各VC毎の単位時間当たりのフレーム数の比率の情報を優先フレーム制御を行うための情報として出力する優先フレーム制御部と、
前記フレームトラフィック量算出部により算出された単位時間当たりのフレーム数の、最大帯域に基づく単位時間当たりのフレーム数の上限値に対する割合を各VC毎に求め、該割合の比率の情報を優先フレーム制御を行うための情報として出力する優先フレーム制御部と、
前記優先フレーム制御部からの情報に基づいて、前記フレーム組み立て部からのイーサネットフレームに対してVC毎の優先フレーム制御を行うフレーム送信制御部と、
前記IP伝送路パラメータ格納部に格納されている各VC毎に割り当てられた最大帯域に基づいて、前記フレーム送信制御部からのイーサネットフレームに対してシェーピング処理を行ってIP伝送路に送信するシェーピング処理部と、
を有する無線基地局装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−74656(P2007−74656A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−262313(P2005−262313)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ETHERNET
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】