説明

無線情報通信システム

【課題】
GPSの電波を受信することができない屋内や、携帯電話の基地局が設置されていない携帯電話の通信圏外の場所でも、高精度に位置検出を可能にする。
【解決手段】
無線情報通信システム100は、通信エリア9内に移動可能に配置された複数の無線センサ1が発信した信号を中継可能な複数の中継器2と、この中継器が中継した信号を監視する監視装置3とを有し、IEEE802.15.4規格で通信するセンサーネットワークを備える。監視装置と無線または有線で分析装置4が接続されている。分析装置にはデータベースが付属している。無線センサが発信する信号は、その無線センサのID情報を含む。中継器は無線センサのIDとその無線センサから送信された信号の強度を識別可能である。分析装置は予めデータベースに記憶された無線センサのIDごとの情報から各無線センサの位置を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線情報通信システムに係り、特に網目状に中継器が配置され、IEEE802.15.4規格で通信するネットワークを有する無線情報通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動体の位置検出技術の例として、GPSを用いる方法や携帯電話を用いる方法が周知である。これらでは、位置情報を用いて、目的地までのルート検索を行うことが可能になっている。さらに最近では、近距離無線通信機能を持つセンサ(センサノード)を必要なところに複数配置してネットワークを形成し、センサ情報をノード間で伝搬させて情報通信するセンサネットワークも提案されている。この中には、IEEE(米国電気電子技術者協会)が標準化したIEEE802.15.4規格を、下位レイヤー(物理層とMAC層)の仕様としたZigBee(登録商標)を用いるものもある。
【0003】
センサーネットによる無線通信システムの例が、特許文献1に記載されている。この公報に記載の無線通信システムは、多数のセンサノードからのデータを収集するセンサーネットワークであり、広範囲からデータを収集できる。すなわち、無線通信システムは、2種類の無線通信方式が使用可能であり、無線基地局は第1の無線通信方式だけを、複数の第1ノードは第1、第2の両無線通信方式を、複数の第2ノードは第2の無線通信方式だけを使用可能である。第1の無線通信方式での接続区間数と第2の無線通信方式での接続区間数、取得された受信状態とに基づいて、接続先の上位ノードを選択している。
【0004】
【特許文献1】特開2005−184727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記GPSで現在位置から目的地までの最短ルートを検索する場合には、自分の現在位置を特定する必要があるが、屋内でGPSを使用する場合には、現在位置を特定することが困難である。また、携帯電話で同様のことを試みる場合には、測定精度が10m程度で、高精度な位置検出が困難である。さらに現状では、利用する場所が、基地局が設置されている場所に限られる。
【0006】
一方、上記特許文献1に記載のセンサーネットワークを利用した位置検出方法では、信号の受信強度または信号の受信タイミングを用いて位置を算出している。しかし、信号の受信強度は距離の二乗に反比例して低下することと、近距離であっても障害物があればそのために電波が減衰する恐れがあり、このような場合には位置検出精度が低下する。この不具合を解消するためには、センサーネットワークの中継器を、建物の天井等に設置する方法があるが、多くの中継器を天井に設置するには多額の費用を要し、設置場所が限られる。
【0007】
本発明は、上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は、GPSの電波を受信することができない屋内や、携帯電話の基地局が設置されていない携帯電話の通信圏外の場所でも、高精度に位置を検出することにある。また、従来は検索が困難な条件でも、目的地までの最適ルートを検索できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の特徴は、通信エリア内に移動可能に配置された複数の無線センサが発信した信号を中継可能な複数の中継器と、この中継器が中継した信号を監視する監視装置とを有し、IEEE802.15.4規格で通信するセンサーネットワークを備えた無線情報通信システムにおいて、監視装置と無線または有線で接続された分析装置と、この分析装置に付属するデータベースとを有し、無線センサが発信する信号はその無線センサのID情報を含み、前記中継器は前記無線センサのIDとその無線センサから送信された信号の強度を識別可能であり、分析装置は予めデータベースに記憶された無線センサのIDごとの情報から各無線センサの位置を検出するものである。
【0009】
そしてこの特徴において、通信エリア内に信号発信器を固定して設け、無線センサはこの信号発信器が発信した信号を受信して中継器に送信するものであってもよく、分析装置は、複数の無線センサから送信された情報に基づいて無線センサの配置の集中度を判断して混雑度を区分した無線センサ情報マップを作成するものであってもよい。
【0010】
また上記特徴において、分析装置は、無線センサ情報マップに記載された一の無線センサの位置情報に基づいて、他の無線センサとの間に混雑部を回避した最短ルートを無線センサ情報マップに記載するものであってもよく、信号発信器を通信エリア内に複数個固定
配置し、この信号発信器はそれぞれ同一周期のパルスを発生し、無線センサはこのパルス
を受信して中継器に送信するものであってもよい。
【0011】
さらに上記いずれかの特徴において、無線センサは振動センサを有し、分析装置は、この振動センサの出力が所定出力より大きいときに無線センサの移動情報を有効とするものであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、GPSの電波を受信することができない屋内や、携帯電話の基地局が設置されていない携帯電話の通信圏外の場所であっても、位置検出および目的地までの最短ルート検索することができる。したがって、混雑する施設での混雑緩和や非常時の避難誘導、迷子の捜索に向かう場合に、移動時間を短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る無線情報通信システムのいくつかの実施例を、図面を用いて説明する。図1に、無線情報通信システム100の概念図を示す。なお、以下の説明においては、混雑した屋内施設に本無線情報通信システムの利用者がいる場合を例にとり、説明する。利用者は、屋内施設を移動しているものとする。
【0014】
対象とする屋内施設を通信エリア9内とするために、複数の中継器2が通信エリア9内に設置されている。中継器2は、IEEE802.15.4準拠の無線システムZigBee(登録商標)の中継器2である。複数の中継器2で無線メッシュネットワークが構築されている。中継器2は、利用者が有する無線センサ1の電波を受信する受信器と無線センサ1の電波をZigBeeに変換する変換回路とを備えている。
【0015】
中継器2は、屋内施設が備える各種機器の上や周りに壁などの障害物が少ない高い場所に配置されている。屋内施設に、中継器2を設置できる高い場所がなく、中継器2を設置困難な場合は、中継器2をバルーンに取り付けて、高い場所に位置させるのがよい。
【0016】
なお、屋内施設の天井には、信号発信器8を設置する。信号発信器8は、屋内施設内の全ての場所まで電波が届くような出力である。1個の信号発信器8では、屋内施設の隅々まで電波を届かせることが困難なときは、複数個の信号発信器8を、屋内施設を隈なくカバーするように配置する。信号発信器8を天井に設置することが困難な場合には、中継器2同様、信号発信器8をバルーンに取り付け、天井近くの高い場所に位置させる。
【0017】
例えば展示会や博覧会等では、聴衆である中継器2の通信エリア内を移動する参加者に、電池駆動の無線センサ1を会場入口で配布する。無線センサ1は、信号発信器8から送信される電波の強度測定装置1aと、周りに設置された複数の中継器2と通信できるだけの出力を有する無線送信器1bとを備えている。無線センサ1の通信方法として、ZigBeeや、微弱無線、特定省電力無線を用いる。
【0018】
このような無線センサ1を利用して、位置を検出するフローを、図2を用いて説明する。参加者が保持する無線センサ1は、信号発信器8から無線信号を受信して、その受信電波強度を測定する。そして、測定した受信電波の強度を、参加者の周りの通信圏内に設置された複数の中継器2に電波で送信する。
【0019】
参加者が保持する無線センサ1からの信号は、中継器2により受信される。その際、中継器2は、受信した信号を発信した無線センサ1の識別番号と無線センサ1の電波発信時間、信号発信器8の電波強度の情報も、一緒に受信する。中継器2は、さらに無線センサ1から送信される電波の強度を測定し、ネットワークとして形成された中継器2のネットワークを管理する監視装置3に、自己の識別番号とともに無線センサ1の送信電波強度を送信する。
【0020】
監視装置3は、中継器2から送信された各種情報を無線で受信する。この受信情報には、無線センサ1が中継器2に送信した情報、および中継器2の識別番号、中継器2が測定した無線センサ1の電波強度の情報が含まれる。監視装置3は、中継器2からの受信情報を、無線センサ1および中継器2の情報を分析する分析装置4に送信する。ここで、監視装置3と分析装置4の間の通信には、LAN等の有線通信または無線通信を用いる。
【0021】
分析装置4には、データベース5が付設されている。データベース5には、予め展示場や博覧会等に使用される施設(通信エリア)9の地図、および中継器2の設置位置、信号発信器8の設置位置、無線センサ1の電波強度に対する無線センサ1と中継器2間の距離の関係式、信号発信器8の電波強度に対する信号発信器8と無線センサ1間の距離の関係式、等が入力されている。電波強度と距離の関係式は、電波の強度が距離の二乗に反比例することを用いて理論的に求めることが可能であるが、施設9内には電波の障害物や電波の反射物等があるので、実際に電波強度を測定して求めた値をデータベース5内に記憶することが望ましい。無線センサ1の位置は、図3に詳細を示す分析装置4が有する無線センサ位置算出部401で算出される。
【0022】
図4を用いて、中継器2が計測した無線センサ1の電波強度に基づいて、位置検出する方法を説明する。無線センサ1から送信された無線信号を、3個の中継器2が受信した場合を例にする。第1の中継器201が、無線センサ1からの信号を受信する。この信号には無線センサ1のID情報も含まれている。
【0023】
第1の中継器201は、受信電波が無線センサ1からのものであることを認識するとともに、その電波強度を測定する。これらの値は監視装置3を経由して分析装置4に送られる。分析装置4は予めデータベース5に記憶された電波強度と無線センサ1の位置関係の理論式または経験式から、第1の中継器201と無線センサ1の距離を求める。同様の手順で、第2の中継器202および第3の中継器203でも、無線センサ1の電波強度を計測し、監視装置3を経由して分析装置5に送る。分析装置4は、第2、第3の中継器202、203と無線センサ1との距離を、データベース5を参照して求める。
【0024】
各中継器201〜203とセンサ1との距離がスカラ量で求められているので、各中継器201〜203を中心として、求めた距離の大きさの円10を描く。作成された3個の円の重なる部分に、無線センサ1の存在エリア11が推定される。もちろん、この3個の円の作成は、分析装置4が計算で仮想的に求めるものであり、実際に作画するものではない。
【0025】
無線センサ1の位置検出の他の方法を、図5を用いて説明する。この図5に示す位置検出の例では、信号発信器8を用いて無線センサ1の位置を検出する。信号発信器8からは、連続または断続的に、同じ強度の電波が発信されている。無線センサ1は、信号発信器8からの無線信号を受信し、その信号強度を計測する。そしてこの計測した信号強度を、中継器2および監視装置3を経由して、分析装置4に送る。分析装置4は、データベースを5を参照して、無線センサ1と信号発生器との距離17を求める。
【0026】
ここで、データベース5には、信号発信器8と無線センサ1との間の距離17に対する信号強度の理論式または実験値が記憶されている。信号発信器8の取付け位置は、高さ方向も含めて3次元情報としてデータベースに記憶されている。無線センサ1が受信した信号発生器8の信号強度から、無線センサ1が位置する球面12が得られる。信号発生器8は天井15に備えられているので、その高さ16は既知である。無線センサ1を所有する参加者は床面14を歩行するものとすれば、信号発信器8からの電波の受信強度から求めた距離17の関係から、無線センサ1の存在エリア11が円で推定される。この無線センサの推定存在エリア11と球面12とから、無線センサ1の位置13が求められる。
【0027】
無線センサ1の位置を検出するために用いる距離の算出では、電波強度以外のものを用いても算出できる。その例を、図6に示す。図6では、電波強度の代わりにパルス波を用いて距離を測定している。パルス波を用いた距離測定装置60は、2個のパルス発生器181、182、パルス波受信部20、電波強度測定部21、パルス数をカウントするカウンタ22、パルス数で距離を算出する距離演算部23で構成される。
【0028】
第1のパルス発生器181とパルス受信部20の間の距離は10mであり、第2のパルス発生器182とパルス受信部20との距離は、第1のパルス発生器181より1mだけ長くなっている。パルス受信部20は、第1、第2のパルス発生器181、182が発生したパルスを、パルス発生と同時に受信開始する。そして、受信開始後1秒経ったら、受信を停止する。
【0029】
パルス受信部20は、パルス発生器181、182からのパルス以外に、壁などで反射したパルスも受信する。電波強度測定部21では、電波強度が弱い反射パルスをフィルタリングして、有効な情報だけをカウンタ22へ送信する。次に、パルス波により距離を測定する方法を以下に説明する。電波の速度は、秒速約30万kmだから、1mの距離を電波が進む時間tは、式(1)となる。
【0030】
=1/(1×10) (s/m) …………(1)
第1のパルス発生器181とパルス受信部20の距離24を電波が進む時間tは、距離24が10mであるから、式(2)となる。
【0031】
=1/(1×10)×10=1/(1×10) (s)………(2)
第1のパルス発生器181のパルス発生開始と、パルス受信部20のパルス受信開始は、同時であるから、パルス受信部20に第1のパルス発生器181のパルスが到達するまでの時間tは、式(3)となる。
【0032】
=1/(1×10) (s)…………(3)
パルス受信部20は1秒間だけ受信するので、パルス受信部20がパルスを受信している時間tは、式(4)となる。
【0033】
=1−(1/1×10
=((1×10)−1)/(1×10) (s)…………(4)
一方、パルス発生器20の周波数を1GHzとすると、1秒当たりのパルス数Npは、式(5)となる
Np=1×10 (パルス/s)…………(5)
パルス受信器20が受信する、第1のパルス発生器181で発生したパルス数Nr1は、式(4)、(5)から次式(6)となる。
【0034】
r1=1×10×((1×10)−1)/(1×10
=(1×10−10)
=999999990 (パルス)…………(6)
また、第2のパルス発生器181とパルス受信部20の距離25を電波が進む時間tは、距離25が11mであるから、式(7)となる。
【0035】
=1/(1×10)×11
=11/(1×10) (s)…………(7)
第2のパルス発生器182のパルスがパルス受信部20に到達するまでの時間tは、式(8)となる。
【0036】
=11/(1×10) (s)…………(8)
パルス受信部20は1秒間だけしか受信しないので、パルス受信部20が第2のパルス発生器181からのパルスをパルスを受信している時間tは、式(9)となる。
【0037】
=1−(11/1×10
=((1×10)−11)/(1×10) (s)…………(9)
パルス受信器20が受信する第2のパルス発生器182で発生したパルスの数Nr2は、式(10)となる
r2=1×10×((1×10)−11)/(1×10
=1×10−11 (パルス)
=999999989 (パルス)…………(10)
第1のパルス発生器181と第2のパルス発生器182の距離の差である1mによるパルスの差ΔNは、式(6)、(10)から、式(11)で表される。
【0038】
ΔN=999999990−999999989
=1 (パルス)…………(11)
したがって、本方式のパルスによる距離計測では、1mの分解能を有している。さらにパルス発生器18の周波数を増大させれば、分解能は向上する。
【0039】
なお、中継器2と無線センサ1間の距離、および信号発信器8と無線センサ1間の距離の測定には、電波強度を用いる方法、パルス波を用いる方法、信号発信側が電波を発信した時間と電波受信側が電波を受信した時間の時間差による方法を用いることができる。さらに、電波を用いる代わりに光を用いて、光の発信受信の時間差による方法、電波の代わりに音を用いて、音の発信受信の時間差による方法なども、距離測定に使用できる。求めた無線センサの位置13の情報は、データベース5に保存される。
【0040】
次に通信エリア9内を移動する参加者について、移動情報を算出する方法を、図1のシステム構成図と図7の移動情報算出フロー図を用いて説明する。無線センサ1は、移動の有無を検出するのに用いる振動センサ101を有している。無線センサ1は、上記実施例に記載した位置検出方法に必要な情報に加えて、振動センサ101で測定した振動値を中継器2に送信する。上記実施例と同様に、無線センサ1からの情報は、分析装置4まで送信される。
【0041】
無線センサ1の移動速度と方向を、図3に示した分析装置4が有する無線センサ移動速度・方向算出部402が算出する。図8を用いて、無線センサ1の移動速度と方向の算出方法を説明する。時刻T1に、無線センサ1が位置Aに居たことが、上記実施例で示した位置検出方法により、求められているものとする。時刻T1から任意時間経過後の時刻T2に、無線センサ1が位置Bまで移動している。この位置Bも上記実施例の位置検出方法により求められる。
【0042】
したがって、位置Aから位置Bまでの移動距離26と移動方向27が判明し、時刻T1から時刻T2まで移動時間T3(=T2−T1)が既知であるから、無線センサ1の移動速度を算出できる。ここで、無線センサ1の移動情報は、データベース5に保存された、時刻T1、T2の無線センサ1の位置情報に基づいて算出する。算出した無線センサ1の移動情報は、データベース5に保存される。
【0043】
無線センサ1の移動距離26が短いと、測定誤差の範囲か実際に移動しているかの判別が困難になる。この場合、無線センサ1が有する振動センサ101を用いて、実際に無線センサ1が移動しているのか否かを判断する。すなわち、振動センサ101が検出した振動加速度や振幅が大きい場合は移動しているものと判断し、それらの値が小さければノイズとして振動センサ1は停止しているものと判断する。これにより、高精度に無線センサ1を有する参加者の移動情報が得られる。
【0044】
次に、本無線通信システムを用いて、不明者等を捜索または救助する方法を、図9以下を用いて説明する。初めに、屋内や比較的狭い屋外における救助方法を説明する。本無線通信システムを利用した救助方法では、無線センサ情報マップ50を用いる。無線センサ情報マップ50は、図3に示した分析装置4が備える無線センサ情報マップ作成部404で作成される。無線センサ情報マップ50は、無線センサ1の所持者が、どこにどれくらいの人数いるかを示す図であり、通信エリア9内の混雑情報を示すものである。
【0045】
以下の例では、救助員34や捜索者35が、通信エリア9内にいる不明者を捜索する場合に、無線センサ情報マップ50を使用している。不明者も救助員34や捜索者35も無線センサ1を有しているものとする。図9に、無線センサ情報マップ50の一例を示す。初めに、上記実施例に示した位置検出方法で、多数の無線センサ1、1、…の位置を求める。求めた無線センサ1、1、…の位置は、データベース5が有する地図上に記載される。図8を用いて説明した移動情報の算出方法により、各無線センサ1の移動速度と移動方向を、矢印の大きさと方向で地図上に記載する。
【0046】
通信エリア9内の単位面積当たりの無線センサ1の数と無線センサ1の移動速度に基づいて、地図上を色分けする。図9では、単位面積当たりの無線センサ1の数が多く、無線センサ1の移動速度が遅いほど濃い色付けとなっており、この濃い部分が混雑していることを示している。これにより、無線センサ情報マップ50が作成される。作成された無線センサ情報マップ50は、図3に示した分析装置4が有する情報送信部405から情報表示器6に送信される。
【0047】
無線センサ情報マップ50が作成されたので、捜索者35や救助員34は無線センサ情報マップ50を用いて、最短のルートで、不明者や移動困難者の救助に向かう。その際、分析装置4が最短ルートを指示する。この最短ルートの作成方法について、図9に示した無線センサ情報マップ50と図10に示した最短ルート作成フローを用いて、説明する。
【0048】
最短ルートを作成するときは、図3に示した分析装置4が有する最短ルート作成部403が、最短ルートを作成する。捜索者34や救助員36が所持する無線センサ1には、情報表示器6が付属している。情報表示器6は、携帯電話のメールに類する情報を受信可能であり、情報表示器6の液晶ディスプレイには、地図の画像を表示可能である。この救助員34や捜索者35が有する無線センサ1は、目的地を入力する目的地入力部102も有している。
【0049】
無線センサ情報マップ50は、救助員34や捜索者35の情報表示器6に送信される。救助員34や捜索者35は、情報表示器6から無線センサ情報マップ50を確認できる。無線センサ情報マップ50を確認したら、救助員34や捜索者35は目的地を、自己の無線センサ1に入力する。
【0050】
目的地情報は、救助員34や捜索者35の無線センサ1の識別番号とともに、分析装置4へ送信される。分析装置4では、目的地を入力した救助員34や捜索者35の無線センサ1の位置と目的地から、図9に示す無線センサ1の混雑部(色の濃い部分)を避けた最短ルート31を作成する。そして、この最短ルート31を無線センサ情報マップ50に記載する。最短ルートが表示された無線センサ情報マップ50は、分析装置4が有する情報送信部405から、救助員34や捜索者35が所持する情報表示器6に送信される。
【0051】
屋内施設または比較的狭い屋外施設内における不明者の捜索方法を、より具体的に、図11に示した捜索フロー図を用いて説明する。迷子を捜索する場合である。屋内施設または比較的狭い屋外施設内は、通信エリア50として、無線通信が可能になっている。分析装置4に付属するデータベース5には、この屋内施設または比較的狭い屋外施設を利用する利用者の情報が、無線センサ1の所持者情報として、予め入力されている。一方、迷子を捜索する保護者等の捜索者の無線センサ1には、目的者(迷子のID)を入力できる目的者入力部104が設けられている。
【0052】
施設内で迷子を捜索する場合、捜索者は自己の無線センサ1の目的者入力部104を用いて、目的者の情報である迷子のID他を入力する。入力された目的者情報と無線センサ1の識別番号は、中継器2や監視装置3を経由して分析装置4へ送信される。分析装置4は、送信された目的情報から、データベース5を参照して目的者の無線センサ1を特定し、その後目的者の無線センサ1の位置を捜索し、無線センサ情報マップ50に記載する。
【0053】
それとともに、分析装置4は上記最短ルート作成方法を用いて、目的者の無線センサ1までの最短ルートを作成する。そして、最短ルートを無線センサ情報マップ50に記載する。作成された無線センサ情報マップ50は、捜索者35の無線センサ1が有する情報表示器6に送信されて、目的者の位置を視覚的に確認できるようにする。
【0054】
ところで迷子の場合、迷子になった子供は常時移動する恐れがある。このような場合で
も、上記した移動速度と移動方向の分析方法を用いて情報表示器6に表示すれば、捜索者35は視覚的に移動方向を確認できる。また、移動情報は逐次捜索者34に配信されるので、効率的に迷子を発見できる。
【0055】
迷子の場合とは異なり、展示会等では立入禁止区域が通信エリア9内に複数箇所設けられることがある。このような状況で、無線センサ1を所持している者が立入禁止区域に入場したときは、警告の意味をも含めて、誤って立ち入った者に情報表示器6から移動方向や移動ルートを指示することができる。通信エリア9である施設外に移動した場合にも、同様に、情報表示器6に警告を表示できる。
【0056】
屋内施設のように比較的狭い施設で、火災や地震等の非常事態が発生したときに、避難誘導する場合にも、本無線通信システムを利用できる。図12に、非常時の非難誘導フロー図を示す。施設内で火災等が発生すると、施設管理者36は避難命令を発令する。上述した最短ルート作成方法を用いて、各無線センサ1の所持者について、目的地を各無線センサ1の保持者から最も近い非常口として、最短ルートを分析装置4が作成する。その場合、分析装置4は混雑が集中するのを回避する避難ルートを作成する。
【0057】
そして、老人や子供、非常口から遠い場所にいる無線センサ1の保持者を優先するために、無線センサ1の所持者の情報表示器6に、無線センサ情報マップ50と最短避難ルートを優先的に送信する。無線センサ1の所持者は、情報表示器6に表示された最短避難ルート情報に従って避難することより、短時間で避難することができる。
【0058】
上記実施例では、不明者や迷子者が展示会やデパート等の屋内または比較的狭い屋外にいる場合を想定している。不明者または遭難者が通信エリア9内ではあるが屋外等にいる場合については、図8ないし図10に加え、図13に示した異常時の救援フロー図を併用して、救援する様子を以下に説明する。不明者または遭難者が無線センサ1を所持しており、異常の発生に伴って、無線センサ1に付属した警報スイッチ103を投入する。
【0059】
図4に示したような位置検出方法を用いて、不明者または遭難者等の異常発生者の位置を分析装置4が検出する。その際、異常発生者の無線センサ1からは、警報と無線センサ1の識別番号が、少なくとも1台の中継器2および監視装置3を経て分析装置4へ送信される。分析装置4では、警報を発した無線センサ1の位置を特定し、図9に示したような無線センサ情報マップ50に記載する。
【0060】
一方、救助員34や捜索者35も警報スイッチ103付きの無線センサ1を保持してい
るので、捜索を開始する位置で警報スイッチ103を投入する。この警報は、中継器2および監視装置3を介して、分析装置4に送信される。分析装置4は、救助員34が警報を発した場所を特定した後、上記最短ルート作成方法を用いて異常発生者の無線センサ1までの最短ルートを作成し、無線センサ情報マップ50に記載する。
【0061】
救助員34や捜索者35の無線センサ1は、情報表示器6を備えているので、無線センサ情報マップ50を救助員34や捜索者35の情報表示器6に送信する。救助員34や捜索者35は、捜索または救助活動に入ったら、警報スイッチ103を連続または断続的に投入して、自己の位置を刻々分析装置4で解析してもらい、自己の無線センサに表示させる。それとともに、分析装置4は最短ルートからの偏差を送信する。これにより救助員34または捜索者35は進路を修正しながら、異常発生者の無線センサ1位置まで、ほぼ最短ルートで到達できる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明に係る無線情報通信システムの概要を示す模式図。
【図2】位置検出方法を説明する図。
【図3】図1に示した無線情報通信システムが備える分析装置の一実施例のブロック図。
【図4】図1に示した無線情報通信システムが備える無線センサにより位置検出するのを説明する図。
【図5】図1に示した無線情報通信システムが備える信号発信器により位置検出するのを説明する図。
【図6】図1に示した無線情報通信システムがパルス波を用いて距離を測定するのを説明する図。
【図7】移動速度と方向の算出を説明する図。
【図8】図1に示した無線情報通信システムが備える無線センサにより移動速度と方向を算出するのを説明する図。
【図9】図1に示した無線情報通信システムが備える無線センサの配置の一例を示す図。
【図10】図1に示した無線情報通信システムが最短ルートを作成するのを説明する図。
【図11】図1に示した無線情報通信システムにより、捜索処置するのを説明する図。
【図12】図1に示した無線情報通信システムにより、非難誘導するのを説明する図。
【図13】図1に示した無線情報通信システムにより、異常時に救援処置するのを説明する図。
【符号の説明】
【0063】
1…無線センサ、2…中継器、3…監視装置、4…分析装置、5…データベース、6…情報表示器、7…モニタ、8…信号発信器、9…通信エリア、10…各中継器が推定する無線センサの範囲、11…無線センサの推定範囲、12…信号発生器が推定する無線センサの範囲、13…無線センサの位置、14…床、15…天井、16…信号発信器の高さ、17…信号発振器と無線センサ間の距離、18…パルス発生器、19…パルス、20…パルス受信部、21…電波強度測定部、22…カウンタ、23…距離演算部、24、25…電波の進む時間、26…移動距離、27…移動方向、28…壁、29…大混雑域、30…小混雑域、31…最短ルート、32…移動速度および方向、33…目的地、34…救助員、35…捜索者、36…施設管理者、100…無線情報通信システム、101…振動センサ、102…目的地入力部、103…警報スイッチ、104…目的者入力部、191、192…パルス、201〜203…中継器、401…無線センサ位置検出部、402…無線センサ移動速度・方向算出部、403…最短ルート作成部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信エリア内に移動可能に配置された複数の無線センサが発信した信号を中継可能な複数の中継器と、この中継器が中継した信号を監視する監視装置とを有し、IEEE802.15.4規格で通信するセンサーネットワークを備えた無線情報通信システムにおいて、前記監視装置と無線または有線で接続された分析装置と、この分析装置に付属するデータベースとを有し、前記無線センサが発信する信号はその無線センサのID情報を含み、前記中継器は前記無線センサのIDとその無線センサから送信された信号の強度を識別可能であり、前記分析装置は予めデータベースに記憶された無線センサのIDごとの情報から各無線センサの位置を検出することを特徴とする無線情報通信システム。
【請求項2】
通信エリア内に信号発信器を固定して設け、前記無線センサはこの信号発信器が発信した信号を受信して中継器に送信することを特徴とする請求項1に記載の無線情報通信システム。
【請求項3】
前記分析装置は、複数の無線センサから送信された情報に基づいて無線センサの配置の集中度を判断して混雑度を区分した無線センサ情報マップを作成することを特徴とする請求項1に記載の無線情報通信システム。
【請求項4】
前記分析装置は、前記無線センサ情報マップに記載された一の無線センサの位置情報に基づいて、他の無線センサとの間に混雑部を回避した最短ルートを無線センサ情報マップに記載することを特徴とする請求項3に記載の無線情報通信システム。
【請求項5】
前記信号発信器を通信エリア内に複数個固定配置し、この信号発信器はそれぞれ同一周期のパルスを発生し、前記無線センサはこのパルスを受信して前記中継器に送信することを特徴とする請求項2に記載の無線情報通信システム。
【請求項6】
前記無線センサは振動センサを有し、前記分析装置は、この振動センサの出力が所定出力より大きいときに前記無線センサの移動情報を有効とすることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の無線情報通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−44394(P2009−44394A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206474(P2007−206474)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】