説明

無線操縦ヘリコプタ玩具

【課題】 磁気力によりローターのブレード面を傾斜させるため、移動制御のための機構を簡単な構造にできるとともに安価に製造することが可能になる無線操縦ヘリコプタ玩具を提供する。
【解決手段】 機体11の上部側へ突出するよう取り付けられメインモータ36により回転駆動されるマストと、マストの上部にローターヘッド33を介してローターブレードのブレード面が傾斜可能に取り付けられたローター13と、機体11側に一端部側が回動可能に取り付けられ、他端部側がアクチュエータ41の駆動によりローターヘッド33側へ近接するようアーム44,44が設けられ、アーム44,44の端部及びローターヘッド33に取り付けられた磁石同士または磁石と強磁性体材料の間に生じる磁気力により、ローター13のブレード面を傾斜させるブレード傾斜機構16と、機体11に搭載されメインモータ36及びアクチュエータ41の動作を制御する受信機20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔操縦により移動制御を行うことができる無線操縦ヘリコプタ玩具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘリコプタの移動制御を行うには、機体に設けられたローターのブレード面を傾斜させることで、前後左右に移動することができるようになっている。このようなローターのブレード面を傾斜させるために、実際のヘリコプタにおいては、ローターとともに回転するスワッシュプレートにリンクを介してローターに連結させ、ブレード面を傾斜させる機構が採用されている。この種のスワッシュプレートによるローターのブレード面の傾斜機構は、ヘリコプタ玩具の移動制御にも採用されている。例えば、互いに逆方向へ回転する上下のロータヘッドが同軸上に設けられた同軸反転式ラジオコントロールヘリコプタにおいて、機体に設けたブレード傾動機構のスワッシュプレートに下側ロータヘッドのブレードを連結し、ブレードの回転面の傾きを制御するラジオコントロールヘリコプタに関する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−121798号公報(第3〜6ページ、図1〜7)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のスワッシュプレートの内側部は、回転するロータヘッドとリンクで接続されているため、常にロータヘッドと同回転で回転可能な構造で無ければならない。しかし、外側部はスワッシュプレートの傾きを制御するために機体フレームに取り付けられているアクチュエータとリンクで接続されているため、回転することはできない。そのため、スワッシュプレートの内側と外側にはボールベアリング等の高精度な部品を必要とし、構造も複雑になっている。また、アクチュエータからローターヘッドまでは全てリンクにより接続されているため、構造が非常に複雑になるとともに部品点数も多くなり、全体としてコスト高になるおそれがあった。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、移動制御のための機構を簡単な構造にできるとともに安価に製造することが可能になる無線操縦ヘリコプタ玩具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明にあっては、機体の上部側へ突出するよう取り付けられ該機体に搭載されたメインモータにより回転駆動されるマストと、該マストの上部にローターヘッドを介してローターブレードのブレード面が傾斜可能に取り付けられたローターと、前記機体側に一端部側が回動可能に取り付けられ、他端部側が前記機体に搭載されたアクチュエータの駆動により前記ローターヘッド側へ近接するようアームが設けられ、該アームの端部及び前記ローターヘッドに取り付けられた磁石同士または磁石と強磁性体材料の間に生じる磁気力により、前記ローターのブレード面を傾斜させるブレード傾斜機構と、前記機体に搭載され前記メインモータ及びアクチュエータの動作を制御する受信機とを備えたことを特徴とするものである。磁気力によりローターのブレード面を傾斜させるため、従来のスワッシュプレートによる傾斜機構が必要なくなり、移動制御のための機構を簡単な構造にできるとともに安価に製造することが可能になる。
【0006】
請求項2に記載の発明にあっては、前記マストは、前記メインモータにより同軸上で互いに逆方向に回転駆動される上部マストと下部マストとを有し、前記ローターは、前記上部マストの上部に上部ローターヘッドを介して上部ローターブレードのブレード面が傾斜可能に取り付けられた上部ローター、及び前記下部マストの上部に下部ローターヘッドを介して下部ローターブレードのブレード面が傾斜可能に取り付けられた下部ローターを有し、前記ブレード傾斜機構は、前記下部ローターのブレード面を傾斜させるよう前記機体に設けられていることを特徴とするものである。同軸上で互いに逆方向に回転駆動する上部マストと下部マストとを有するヘリコプタ玩具において、移動制御の機構を簡単な構造にできるとともに安価に製造することが可能になる。
【0007】
請求項3に記載の発明にあっては、前記上部マストには、前記機体の飛行姿勢を制御するスタビライザーが前記上部ローターヘッドに連動するよう取り付けられていることを特徴とするものである。スタビライザーにより機体の姿勢を安定に保つことができる。
【0008】
請求項4に記載の発明にあっては、前記ブレード傾斜機構は、前記アクチュエータで駆動されるアームが前記マストの周囲に前後左右の4ヶ所に設けられていることを特徴とするものである。4ヶ所のマストで前後左右の方向制御を行うことができる。
【0009】
請求項5に記載の発明にあっては、前記機体の後部側には、テールパイプが取り付けられ、該テールパイプの端部にテールモータで駆動されるテールローターが取り付けられていることを特徴とするものである。テールローターにより機体反転を防止することができ、かつ機体の左右方向への制御ができる。
【0010】
請求項6に記載の発明にあっては、前記ブレード傾斜機構の前記ローターヘッドに取り付けられる磁石または強磁性体材料は、前記マストの回転中心を囲むリング状に形成されていることを特徴とするものである。ローターヘッドに取り付けられる磁石または強磁性体材料をリング状に形成することで、ローターブレードのブレード面の傾斜を確実に制御できる。
【発明の効果】
【0011】
機体の上部側へ突出するよう取り付けられ該機体に搭載されたメインモータにより回転駆動されるマストと、マストの上部にローターヘッドを介してローターブレードのブレード面が傾斜可能に取り付けられたローターと、機体側に一端部側が回動可能に取り付けられ、他端部側が機体に搭載されたアクチュエータの駆動によりローターヘッド側へ近接するようアームが設けられ、アームの端部及びローターヘッドに取り付けられた磁石同士または磁石と強磁性体材料の間に生じる磁気力により、ローターのブレード面を傾斜させるブレード傾斜機構と、機体に搭載されメインモータ及びアクチュエータの動作を制御する受信機とを備えることで、磁気力によりローターのブレード面を傾斜させるため、移動制御のための機構を簡単な構造にできるとともに安価に製造することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を図示の一実施形態により具体的に説明する。図1〜図5は本発明実施形態の無線操縦ヘリコプタ玩具を説明する図であり、図1は無線操縦ヘリコプタ玩具の全体構成を説明する斜視図、図2は無線操縦ヘリコプタ玩具のブレード傾斜機構を説明する斜視図、図3は無線操縦ヘリコプタ玩具のブレード傾斜機構を説明する側面図、図4は無線操縦ヘリコプタ玩具のブレード傾斜機構部分の斜視図、図5は無線操縦ヘリコプタ玩具の制御動作を説明するブロック図である。
【0013】
これらの図において、本実施形態の無線操縦ヘリコプタ玩具10は、機体11と、この機体11の上部に設けられた同軸上で互いに反対方向に回転する上部ローター12及び下部ローター13と、一方のローターと連動して回転する姿勢を安定に保つためのスタビライザー14と、機体11に搭載され上部ローター12及び下部ローター13並びにスタビライザー14を回転駆動する駆動部15と、機体11に搭載され下部ローター13のブレード面を傾斜させて移動方向の制御を行うブレード傾斜機構16と、機体11の後部側に取り付けられたテールローター17と、送信機19から送信される制御信号を受信して駆動部15、ブレード傾斜機構16及びテールローター17の動作を制御する機体11に搭載された受信機20と、各部へ電源を供給する機体11に搭載された電池18等とを備えている。
【0014】
機体11は、上記の各部を搭載するプラスチック等の材料からなるヘリコプタを模した任意の形状に形成され、下部には安定した状態で着地できるように着地部材21が設けられている。
【0015】
上部ローター12は、駆動部15により回転駆動される上部マスト23の上端部側に傾斜可能に取り付けられる上部ローターヘッド25と、この上部ローターヘッド25の両端部側に取り付けられた一対の上部ローターブレード26,26とを有する。上部ローターヘッド25は、上部マスト23の外径よりやや大きいほぼ矩形リング状に形成され、この上部マスト23の上端部側において回転軸心と直交する方向に設けられた駆動軸27の両端部に傾斜可能に取付けられている。上部ローターブレード26,26は、駆動軸27の軸心方向に沿って上部ローターヘッド25の両端部側に取り付けられ、上部マスト23により回転駆動されたとき浮上力を発生するようになっている。
【0016】
スタビライザー14は、上部ローター12の下部側の上部マスト23に取り付けたスタビライザーヘッド28と、このスタビライザーヘッド28の両端面に取り付けられた一対のスタビライザーシャフト29,29及びそれらスタビライザーシャフトの端部側にそれぞれ取り付けられたウェイト30,30と、スタビライザーヘッド28と上部ローターヘッド25とが連動するよう取り付けたスタビライザーリンク32とを有する。スタビライザーヘッド28は、上部マスト23の外径よりやや大きいほぼ矩形リング状に形成されている。このスタビライザーヘッド28は、上部ローターヘッド25の下部側において上部マスト23の回転軸心と直交する方向に貫通するように設けられた軸31の両端部に傾斜可能に取付けられている。また、スタビライザー14は、そのスタビライザーシャフト29,29の取り付け方向と、上部ローター12の上部ローターブレード26,26の取り付け方向との間の交差角度が、例えば、30〜90度程度の傾斜角度になるように取り付けられている。すなわち、スタビライザー14は、ウェイト30,30とスタビライザーシャフト29,29がスタビライザーヘッド28とともに軸31を中心に一定方向に傾斜したとき、この傾斜に伴いスタビライザーリンク32を介して上部ローターヘッド25が駆動軸27を中心にして連動して傾斜し、上部ローターブレード26,26の面が同じ方向に傾斜するようになっている。
【0017】
下部ローター13は、駆動部15により回転駆動される下部マスト24の上端部側に傾斜可能に取り付けられた下部ローターヘッド33と、この下部ローターヘッド33の両端部側に取り付けられた一対の下部ローターブレード34,34とを有する。下部ローターヘッド33は、中心部が下部マスト24の外径よりやや大きいほぼ矩形リング状に形成され、下部マスト24の上端部側において回転軸心と直交する方向に設けられた駆動軸22の両端部に傾斜可能に取り付けられている。また、下部ローターヘッド33は、一対の下部ローターブレード34,34が取り付けられていない両端面側が下側に突出された取り付け部35、35が形成され、これら取り付け部35,35の下端部には、磁気に吸着する小片からなる強磁性体材料49,49が取り付けられている。この下部ローターヘッド33の駆動軸22の軸心を中心とする傾斜角度は、後に詳細に説明するように強磁性体材料49,49が磁気力により吸引されてもブレード傾斜機構16に当接しないようになっている。下部ローターブレード34,34は、駆動軸22の軸心方向に沿って下部ローターヘッド33の両端部側に取り付けられ、下部マスト24により回転駆動されたとき浮上力を発生するようになっている。
【0018】
上部マスト23は、上部ローター12及びスタビライザー14が取り付けられる上部側がやや太い軸部に形成され、下部側が細い軸部に形成されている。下部マスト24は、ほぼパイプ状に形成され、そのパイプ内に上部ローター12の下部側の細い軸部が回転可能に挿通されている。これらの上部マスト23及び下部マスト24は、機体11の中央上部から内部に貫通するように取り付けられ、駆動部15によりそれぞれ互いに反対方向に同一速度で回転駆動されるようになっている。
【0019】
駆動部15は、上部マスト23及び下部マスト24の下部側の機体11に配置されており、メインモーター36と、ピニオン37と、同じ歯数の下部メインギア38及び上部メインギア39と、互いに反対方向に同じ速度で回転する反転用ギア対40とを有する。メインモーター36は、機体11に駆動軸を上方に向けて取り付けられ、この駆動軸にピニオン37が取り付けられている。下部メインギア38は、上部マスト23の下部側の細い軸部の下端部側に取り付けられ、上部メインギア39は、下部マスト24の下端部側に取り付けられている。下部メインギア38は、メインモーター36で回転駆動されるピニオン37に噛合わされている。また、下部メインギア38は、反転用ギア対40の一方の歯車に噛合わされ、この反転用ギア対40の他方の歯車は、上部メインギア39に噛合わされている。すなわち、メインモーター36による回転力は、ピニオン37を介して下部メインギア38に伝達され、また、この下部メインギア38から反転用ギア対40を介して下部メインギア38に伝達され、それぞれ上部マスト23及び下部マスト24が互いに反対方向に回転駆動するようになっている。
【0020】
ブレード傾斜機構16は、下部マスト24の上端部側に傾斜可能に取り付けられた下部ローターヘッド33を介して、下部ローターブレード34,34面を磁気力により傾斜させて移動制御を行う機構であり、アクチュエータ41と、回動板42と、一対のアーム支持部43,43と、アーム44,44と、リンク45,46,47と、磁石48,48とを有する。アクチュエータ41は、下部ローター13の下部側の機体11前部側に、駆動軸を水平方向に向けて取り付けられている。このアクチュエータ41の駆動軸に回動板42が取り付けられている。また、アーム支持部43,43は、下部マスト24の下部側を挟んだ機体11の前後にそれぞれ取り付けられている。それぞれのアーム支持部43,43には、例えば、棒状に形成されたアーム44、44の一端部が回動自在に取り付けられ、他端部側が上方の下部ローターヘッド33の下部側に向けられている。これらのアーム44、44の上方に向けられた他端部には、それぞれ磁石48,48が取り付けられている。アクチュエータ41の駆動軸に取り付けられた回動板42と、一方の前側のアーム44との間は、リンク45で連結されている。また、前側のアーム44と、後側のアーム44との間は、リンク46,47で連結されている。このブレード傾斜機構16は、アクチュエータ41により回転板42を回動させ、リンク45,46,47を介して、アーム支持部43,43を支持点として、アーム44,44を回動させるようになっている。すなわち、アクチュエータ41の駆動により、前側のアーム44をやや傾斜した中立位置から回動させて、磁石48を下部ローターヘッド33の取り付け部35の強磁性体材料49側に近接させ、磁気力により吸引して、下部ローターヘッド33を回動させて下部ローターブレード34,34の面を前側に傾斜させる。また、逆に後側のアーム44をやや傾斜した中立位置から回動させて、磁石48を下部ローターヘッド33の取り付け部35の強磁性体材料49に近接させ、磁気力により吸引して下部ローターヘッド33を回動させて、下部ローターブレード34,34の面を後側に傾斜させるようになっている。アーム44,44が、両方ともやや傾斜した中立位置にあるときには、磁気力が働かない位置にあり、下部ローターヘッド33を回動させることがない。また、一方のアーム44が中立位置から下部ローターヘッド33の下部側に近い位置に回動したときには磁気力が働くが、他方のアーム44は中立位置からさらに傾斜して磁気力が働かない位置に回動する。さらに、下部ローターヘッド33は、一定角度以上傾斜しないようになっているため、いずれの磁石48,48が強磁性体材料49,49に近接しても当接することなく下部マスト24とともに回転するようになっている。
【0021】
なお、この実施形態においては、同軸芯で互いに反対方向に回転する上部ローター12及び下部ローター13が設けられているため、機体11の反転を防ぐためにテールローター17を回転させる必要がないが、機体11の後部から水平に延出されたテールパイプ49の端部に設けられたテール部50にテールローター17が回転可能に取り付けられている。このテールローター17は、機体11の後部に設けられたテールモータ51の回転力が、テールパイプ49内に設けた駆動軸、テール部50内に設けられた傘歯車等を介して伝達されるようになっている。このテールローター17をテールモータ51で正転または逆転させることで、機体11を上部マスト23及び下部マスト24の軸心を中心に回動させて左右方向への動作制御ができるようにしている。
【0022】
受信機20は、アンテナ61と、送信機19から送信されてくる電波による制御信号を受信する受信回路62と、この受信回路62で受信した信号に基づいて制御信号を生成する制御回路63と、この制御回路63の制御信号に基づいてメインモータ36及びテールモータ51を駆動するためのモータ駆動回路64、及びアクチュエータ41を駆動するアクチュエータ駆動回路65等とから構成され、機体11等に操作可能に取り付けた電源スイッチ66により電池18からの電力が受信回路62、制御回路63、モータ駆動回路64及びアクチュエータ駆動回路65へ供給されるようになっている。また、送信機19は、上昇降下あるいは前進後退等の方向制御用のコントロールレバー等を有するコントロール部52と、このコントロール部52の操作に応じた制御信号を生成する信号生成回路53と、この信号生成回路53で生成される制御信号を電波としてアンテナ57から送信する送信回路54等とから構成され、電源スイッチ56により電池55から電力が信号生成回路53及び送信回路54に供給されるようになっている。
【0023】
上記構成の無線操縦ヘリコプタ玩具10の動作を説明する。まず、電源スイッチ66をオンするとともに、機体11を着地部材21により水平な部分に設置させることで、離陸できる状態にする。次に、送信機19の電源スイッチ56をオンし、コントロール部52のコントロールレバーを操作すると、その操作に基づく制御信号が信号生成回路53で生成され、送信回路54からアンテナ57を介して制御信号が電波として送信される。送信機19から送信された制御信号は、無線操縦ヘリコプタ玩具10の機体11に設けられた受信機20のアンテナ61を介して受信回路62で受信される。受信回路62で受信された送信機19からの制御信号は、制御回路63に伝達されて出力信号が生成され、この出力信号がモータ駆動回路64に出力され、このモータ駆動回路64でモータ駆動信号が生成され、そのモータ駆動信号に基づいてメインモータ36あるいはテールモータ51が回転を開始する。メインモータ36の回転力は、ピニオン37から下部メインギア38を介して上側マスト23へ伝達され、また、下部メインギア38から反転用ギア対40、上部メインギア39を介して下部マスト24へ伝達されて、それぞれ上部ローター12と下部ローター13とが同じ回転数で互いに反対方向に回転するよう駆動される。これにより、それぞれの上部ローター12の上部ローターヘッド25に取り付けられた上部ローターブレード26,26、及び下部ローター13の下部ローターヘッド33に取り付けられた下部ローターブレード34,34が回転して機体11が上昇飛行を行う。このとき、上部ローター12と下部ローター13とが同じ回転速度で互いに反対方向に回転するため、それぞれの機体11に加わる反動トルクが相殺され、機体11が回転することなく上昇する。また、上部マスト23に取り付けたスタビライザー14は、上部ローター12とスタビライザーリンク32を介して連結されているため、スタビライザーシャフト29,29が水平姿勢で回転しているときには、ウェイト30,30の遠心力でその水平姿勢を維持するよう安定した動作を継続する。また、何らかの原因によりスタビライザーシャフト29,29が水平姿勢から傾斜したときには、スタビライザーリンク32を介して上部ローターブレード26,26の面が同じ方向に傾斜するよう作用し、ウェイト30,30の遠心力によって自動的に、上部ローターブレード26,26の面を水平に維持しようとする作用が生じる。したがって、機体11の姿勢を維持して安定して動作させることができる。
【0024】
次に、所定の高さの空中に上昇した後、ブレード傾斜機構16による機体11の移動制御の動作を説明する。まず、送信機19から前進の操作により制御信号を送信すると、受信機20が前進の制御信号を受信して、アクチュエータ駆動回路65からアクチュエータ41へ前進の信号が送信される。このアクチュエータ41は、前進の信号を受信すると、回転板42が駆動され、リンク45を介して前側のアーム44が中立位置から回動して、磁石48を下部ローターヘッド33の取り付け部35の強磁性体材料49側に近接させ、磁気力により吸引して、下部ローターヘッド33を回動させ、下部ローターブレード34,34の面を前側に傾斜させる。この下部ローターブレード34,34の面の前側への傾斜により機体11は前進する。同様にして、送信機19から後退の操作により制御信号を送信すると、回転板42が駆動され、リンク45,46,47を介して後側のアーム44が中立位置から回動して、磁石48を下部ローターヘッド33の取り付け部35の強磁性体材料49側に近接させ、磁気力により吸引して、下部ローターヘッド33を回動させ、下部ローターブレード34,34の面を後側に傾斜させる。この下部ローターブレード34,34の面の後側への傾斜により機体11は後退する。本実施形態では、テールローター17をテールモータ51で正転または逆転させることで、上部マスト23及び下部マスト24の回転軸心を中心にして機体11を左右へ向けることで移動方向を左右に制御することができる。
【0025】
以上説明した通り、本発明実施形態の無線操縦ヘリコプタ玩具10では、下部マスト24に回転駆動される下部ローター13の下部ローターブレード34,34の面を、機体11に取り付けられたブレード傾斜機構16により磁気力を利用して吸引することで移動方向へ傾斜させるため、従来のような複雑な構造のスワッシュプレートやリンクを必要とせず、簡単な構造にできるとともに安価に製造することが可能になる。
【0026】
上記実施形態の無線操縦ヘリコプタ玩具10では、ブレード傾斜機構16により前後に移動方向を制御することができるが、同様の機構で磁気力を利用して下部ローター13の下部ローターブレード34,34の面を左右に傾斜させるブレード傾斜機構を機体11に追加して設けるようにすれば、左右への移動方向を制御することができる。また、この実施形態では、下部ローターヘッド33の取り付け部35、35に強磁性体材料49,49を取り付け、ブレード傾斜機構16のアーム44,44の端部に磁石48,48を取り付けた例を説明したが、少なくとも磁気力により吸引されるものであれば、いずれを強磁性体材料または磁石であってもよく、さらに両方とも磁石であってもよい。さらに、下部ローターヘッド33の下部側に取り付けられる強磁性体材料または磁石は、小片でなくリング状に形成されたものでもよい。
【0027】
さらに、本実施形態では、同軸芯で互いに反対方向に回転する上部ローター12及び下部ローター13を有する機構のヘリコプタ玩具に関して説明したが、他の実施形態として、メインモータで一方の方向に駆動される1つのローターに同様の機構を有するブレード傾斜機構16を機体に取り付け、テールローター17を回転駆動する機構の無線操縦ヘリコプタ玩具に適用することもできる。また、テールモータ51は、テール部50に取り付けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
遠隔操縦により移動制御を行うことができる無線操縦ヘリコプタ玩具に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明実施形態の無線操縦ヘリコプタ玩具の全体構成を説明する斜視図である。
【図2】本発明実施形態の無線操縦ヘリコプタ玩具のブレード傾斜機構を説明する斜視図である。
【図3】本発明実施形態の無線操縦ヘリコプタ玩具のブレード傾斜機構を説明する側面図である。
【図4】本発明実施形態の無線操縦ヘリコプタ玩具のブレード傾斜機構部分の斜視図である。
【図5】本発明実施形態の無線操縦ヘリコプタ玩具の制御動作を説明するブロック図である
【符号の説明】
【0030】
10 無線操縦ヘリコプタ玩具
11 機体
12 上部ローター
13 下部ローター
14 スタビライザー
15 駆動部
16 ブレード傾斜機構
17 テールローター
18 電池
19 送信機
20 受信機
21 着地部材
22 駆動軸
23 上部マスト
24 下部マスト
25 上部ローターヘッド
26 上部ローターブレード
27 駆動軸
28 スタビライザーヘッド
29 スタビライザーシャフト
30 ウェイト
31 軸
32 スタビライザーリンク
33 下部ローターヘッド
34 下部ローターブレード
35 取り付け部
36 メインモーター
37 ピニオン
38 下部メインギア
39 上部メインギア
40 反転用ギア対
41 アクチュエータ
42 回動板
43 アーム支持部
44 アーム
45,46,47 リンク
48 磁石
49 強磁性体材料
50 テール部
51 テールモータ
52 コントロール部
53 信号生成回路
54 送信回路
55 電池
56 電源スイッチ
61 アンテナ
62 受信回路
63 制御回路
64 モータ駆動回路
65 アクチュエータ駆動回路
66 電源スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の上部側へ突出するよう取り付けられ該機体に搭載されたメインモータにより回転駆動されるマストと、該マストの上部にローターヘッドを介してローターブレードのブレード面が傾斜可能に取り付けられたローターと、前記機体側に一端部側が回動可能に取り付けられ、他端部側が前記機体に搭載されたアクチュエータの駆動により前記ローターヘッド側へ近接するようアームが設けられ、該アームの端部及び前記ローターヘッドに取り付けられた磁石同士または磁石と強磁性体材料の間に生じる磁気力により、前記ローターのブレード面を傾斜させるブレード傾斜機構と、前記機体に搭載され前記メインモータ及びアクチュエータの動作を制御する受信機とを備えたことを特徴とする無線操縦ヘリコプタ玩具。
【請求項2】
前記マストは、前記メインモータにより同軸上で互いに逆方向に回転駆動される上部マストと下部マストとを有し、前記ローターは、前記上部マストの上部に上部ローターヘッドを介して上部ローターブレードのブレード面が傾斜可能に取り付けられた上部ローター、及び前記下部マストの上部に下部ローターヘッドを介して下部ローターブレードのブレード面が傾斜可能に取り付けられた下部ローターを有し、前記ブレード傾斜機構は、前記下部ローターのブレード面を傾斜させるよう前記機体に設けられていることを特徴とする請求項1記載の無線操縦ヘリコプタ玩具。
【請求項3】
前記上部マストには、前記機体の飛行姿勢を制御するスタビライザーが前記上部ローターヘッドに連動するよう取り付けられていることを特徴とする請求項2記載の無線操縦ヘリコプタ玩具。
【請求項4】
前記ブレード傾斜機構は、前記アクチュエータで駆動されるアームが前記マストの周囲に前後左右の4ヶ所に設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の無線操縦ヘリコプタ玩具。
【請求項5】
前記機体の後部側には、テールパイプが取り付けられ、該テールパイプの端部にテールモータで駆動されるテールローターが取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の無線操縦ヘリコプタ玩具。
【請求項6】
前記ブレード傾斜機構の前記ローターヘッドに取り付けられる磁石または強磁性体材料は、前記マストの回転中心を囲むリング状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の無線操縦ヘリコプタ玩具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−130200(P2007−130200A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−325577(P2005−325577)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(390027889)大陽工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】