説明

無線映像配信システム、コンテンツビットレート制御方法及びコンテンツビットレート制御プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体

【課題】チューナ機器とディスプレー機器間の無線帯域に変動による映像停止及び画質劣化を防ぐ。
【解決手段】ディスプレー機器121のバッファ監視部126は、映像データを蓄積するバッファ124の使用状況を監視し、チューナ機器105に送信する。バッファ残時間推定部106は、バッファの使用状況情報に基づき、バッファ124内の映像データの残時間を推定する。無線帯域推定部104は、チューナ機器105とディスプレー機器121間の無線帯域を推定する。コンテンツビットレート制御部109は、推定された映像データの残時間と無線帯域とに基づき、ディスプレー機器121へ送信する映像データのコンテンツビットレートを制御し、コンテンツビットレート変換部110は映像データのコンテンツビットレートを変換して、該映像データをチューナ機器105からディスプレー機器121に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線映像配信システム、コンテンツビットレート制御方法及びコンテンツビットレート制御プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に係り、特に、チューナ機器とディスプレー機器が分離された無線映像配信システム、該システムにおけるコンテンツビットレート制御方法及びコンテンツビットレート制御プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビ受信機において、チューナ機器とディスプレー機器が分離され、チューナ機器からディスプレー機器へ映像データを無線で送信することが知られている。
また、映像バッファが空になるまでに要する時間を算出することが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2006−521035号公報
【特許文献2】特開2006−060802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図17に、課題を説明する模式図を示す。
チューナ機器は、所定のコンテンツビットレート1701で映像データをディスプレー機器に無線で送信する。ここで、コンテンツビットレート1701はコンテンツ自体のビットレートである。なお、実際には映像フレームごとにコンテンツ自体のビットレートが異なるが、ここでは簡単のため、全てのフレームで同じビットレートとして描いた。無線帯域変動1702は、チューナ機器とディスプレー機器間の無線LAN環境の帯域変動であり、例えば、ノイズや他の無線LANからの干渉、人の横切りやドアの開け閉め、電子レンジの使用などによる無線LAN帯域の変動を示す。映像バッファ残時間1703は、ディスプレー機器の映像バッファに蓄えられたデータの時間換算の量を示す。単位は、Byte(バイト)ではなくSec(秒又は時間)や映像フレーム数などである。例えば、30fps(frame per sec)なら15枚で0.5秒に相当する。
例えば、チューナ機器とディスプレー機器間の無線区間の帯域が減ることにより遅れが発生する(1704)。例えば、コンテンツ送信に映像再生時間以上の送信時間がかかる場合がある。一方、映像バッファからの映像出力は一定であるため、上記遅れによりディスプレー機器の映像バッファ内のデータは少なくなり、やがて映像バッファがバッファアンダーフロー1706となりデータがなくなって再生できなくなる場合がある(1705)。
なお、本明細書では特に、受信バッファのうち映像専用について注目し、映像バッファと呼ぶこともある。なお、音声や字幕など他のバッファでも同様のことが言える。
【0005】
図18に、従来技術及びその課題を説明する模式図を示す。
無線帯域幅の急激な低下が複数回発生する場合に、映像バッファのデータが枯渇することを防ぐために、無線帯域変動に合わせて、コンテンツのビットレートを調整することが知られている。
例えば、無線帯域変動1702に合わせてコンテンツビットレート1701を制御する(1801)。この技術では上述の遅れは解消されるが、帯域にあわせてコンテンツの単位時間あたりのデータ量(ビットレート)を減らしたため、急激な帯域変動に合わせて画質が劣化する(1802)。これは、見ている映像の画質が劣化するのがユーザに感知されてしまうこともある。
また、特許文献1の技術では、B、Pフレームを除外したり、1つおきのIフレームを除外することにより、フレーム落ちによるカクカク表示が生ずる場合がある。
本発明は、以上の点に鑑み、チューナ機器とディスプレー機器間の無線帯域に変動による映像停止及び画質劣化を防ぐ無線映像配信システム、コンテンツビットレート制御方法及びコンテンツビットレート制御プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することを目的とする。また、本発明は、例えば、部屋間の壁超え配信など無線LANの帯域幅に余裕がない状況において、無線帯域幅の急激な低下が複数回発生する場合にも、映像が停止したり、画像が大幅に劣化することを防ぐことを目的のひとつとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、クライアント(ディスプレー機器)の映像バッファ量および無線帯域の変動を監視し、映像バッファのデータ量を予測して、バッファアンダーフローおよび急激で大幅な画質劣化が発生しないように、コンテンツのビットレートを制御する。
本発明は、例えば、チューナ機器とディスプレー機器に分離されたテレビ受信機の機器間を無線LANで映像データ(MPEG2またはH.264のTSデータ)を送付するテレビ受信機において、
無線帯域を監視する手段と、
ディスプレー機器の映像バッファ量の受信手段と、
無線帯域の急激な低減の発生頻度および大きさと、映像バッファのデータ残量から換算される残時間を用いてコンテンツのビットレートの減少量を計算する手段と、
ビットレートを制御する手段と、
ビットレートを変換する手段と
を備えることを特徴とする。
上述のテレビ受信機において、OSD画像データを映像とは別に送付するテレビ受信機において、OSD画像のデータ量と頻度を監視する手段を備えてもよい。
【0007】
本発明の第1の解決手段によると、
所定のコンテンツビットレートの映像データを、無線帯域が変動する無線通信で送信する無線映像配信装置と、
前記無線映像配信装置から受信される映像データを蓄積し、該映像データを読み出して表示する無線映像受信装置と
を備え、
前記無線映像受信装置は、
映像データを蓄積するバッファと、
該バッファの使用状況を監視し、使用状況情報を含むフィードバック情報を前記無線映像配信装置に送信するバッファ監視部と
を有し、
前記無線映像配信装置は、
前記無線映像受信装置からの前記バッファの使用状況情報に基づき、前記バッファ内の映像データの残時間を推定するバッファ残時間推定部と、
前記無線映像配信装置と前記無線映像受信装置間の無線帯域を推定する無線帯域推定部と、
推定された映像データの残時間と無線帯域とに基づき、前記無線映像受信装置へ送信する映像データのコンテンツビットレートを制御するコンテンツビットレート制御部と、
前記無線映像受信装置へ送信する映像データのコンテンツビットレートを、前記コンテンツビットレート制御部で制御されるコンテンツビットレートに変換するコンテンツビットレート変換部と
を有する無線映像配信システムが提供される。
【0008】
本発明の第2の解決手段によると、
所定のコンテンツビットレートの映像データを、無線帯域が変動する無線通信で送信する無線映像配信装置と、無線映像配信装置から受信される映像データを蓄積し、該映像データを読み出して表示する無線映像受信装置とを備えた無線映像配信システムにおけるコンテンツビットレート制御方法であって、
映像データを蓄積する無線映像受信装置のバッファの使用状況を監視し、使用状況情報を含むフィードバック情報を無線映像配信装置に送信するステップと、
無線映像受信装置からのバッファの使用状況情報に基づき、バッファ内の映像データの残時間を推定するステップと、
無線映像配信装置と無線映像受信装置間の無線帯域を推定するステップと、
推定された映像データの残時間と無線帯域とに基づき、無線映像受信装置へ送信する映像データのコンテンツビットレートを制御するステップと、
映像データのコンテンツビットレートを、前記コンテンツビットレートを制御するステップで制御されるコンテンツビットレートに変換して、該映像データを無線映像配信装置から無線映像受信装置に送信するステップと
を含む前記コンテンツビットレート制御方法が提供される。
【0009】
本発明の第3の解決手段によると、
第1のコンピュータから、受信される映像データを蓄積し該映像データを読み出して表示する第2のコンピュータへ、所定のコンテンツビットレートの映像データを、無線帯域が変動する無線通信で送信するステップと、
第2のコンピュータから受信される、第2のコンピュータのバッファの使用状況情報に基づき、該バッファ内の映像データの残時間を推定するステップと、
前記無線通信の無線帯域を推定するステップと、
推定された映像データの残時間と無線帯域とに基づき、第2のコンピュータへ送信する映像データのコンテンツビットレートを制御するステップと、
映像データのコンテンツビットレートを、前記コンテンツビットレートを制御するステップで制御されるコンテンツビットレートに変換して、該映像データを第2のコンピュータに送信するステップと
を前記第1のコンピュータに実行させるためのコンテンツビットレート制御プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、チューナ機器とディスプレー機器間の無線帯域に変動による映像停止及び画質劣化を防ぐ無線映像配信システム、コンテンツビットレート制御方法及びコンテンツビットレート制御プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することができる。また、本発明によると、例えば、部屋間の壁超え配信など無線LANの帯域幅に余裕がない状況において、無線帯域幅の急激な低下が複数回発生する場合にも、映像が停止したり、画像が大幅に劣化することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】無線映像配信装置と無線映像受信装置を示した機能モジュール構成図(ブロック図)。
【図2】サーバシステムの構成図。
【図3】クライアントシステムの構成図。
【図4】推定された映像バッファ残時間と無線帯域の状態に応じたコンテンツビットレート制御方法の一例の説明図。
【図5】サーバのフィードバック情報の処理手順を示すフローチャート。
【図6】クライアントのフィードバック手順を示すフローチャート。
【図7】サーバによる無線帯域推定手順を示すフローチャート。
【図8】クライアントによる無線帯域監視手順を示すフローチャート。
【図9】サーバによる映像バッファ残時間の推定手順を示すフローチャート。
【図10】クライアントによる映像バッファ監視手順を示すフローチャート。
【図11】サーバによるコンテンツビットレート制御手順を示すフローチャート。
【図12】フィードバック情報のデータ構造の説明図。
【図13】帯域推定用ワークテーブルの説明図。
【図14】推定帯域幅データテーブルの説明図。
【図15】残時間データテーブルの説明図。
【図16】コンテンツビットレート履歴テーブルの説明図。
【図17】課題を説明する模式図。
【図18】従来技術及びその課題を説明する模式図。
【図19】本発明の効果を説明する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.第1の実施の形態
図1に、無線映像配信装置と無線映像受信装置を示した無線映像配信システム機能モジュール構成図(ブロック図)を示す。
無線映像配信システムは、無線映像配信装置(チューナ&ストレージ、映像配信部、サーバ)105と、無線映像受信装置(パネル、映像表示部、クライアント)121とを備える。無線映像配信装置105は、放送受信アンテナ101と、チューナ102と、映像バッファ残時間予測部103と、無線帯域推定部104と、映像バッファ残時間監視部(バッファ残時間推定部)106と、無線LANアンテナ107と、無線LANモジュール108と、コンテンツビットレート制御部109と、コンテンツビットレート変換部110と、録画再生部111と、HDD(録画データ保存部)112とを有する。無線映像受信装置121は、無線帯域監視部120と、映像表示パネル(ディスプレー)122と、デコーダ123と、映像バッファ124と、Demux部125と、映像バッファ監視部126と、無線LANモジュール127とを有する。
放送受信アンテナ101は、地デジやBSデジタルなどのアンテナである。チューナ102は、地デジやBSデジタルなどのチューナである。映像バッファ残時間予測部103は、映像バッファ残時間監視部106で得たパネル側の映像バッファ124の、所定時間経過後の残時間を予測する。例えば、データ送信後の時刻の映像フレーム数を予測する。無線帯域推定部104は、無線帯域監視部120と連携して、実際に送信できたデータ量から無線映像配信装置105と無線映像受信装置121間の無線帯域を監視する。映像バッファ残時間監視部106は、映像バッファ124の残時間を監視する。例えば、映像バッファ残時間監視部106は、映像バッファ124の残時間を求めるための情報(映像フレーム数等)を受信する。無線LANアンテナ107は、無線映像受信装置121に映像データを配信し、及び、無線映像受信装置121からフィードバック情報を受信するためのアンテナである。図のようにアドホック通信(直接通信)でもよいし、無線LANルータを介してもよい。無線LANモジュール108は、無線LANアンテナ107を介してデータを送受信するためのモジュールである。コンテンツレート制御部109は、コンテンツビットレートを指示してコンテンツレート変換110を制御する。コンテンツレート変換部110は、指示されたレートに従って、コンテンツのビットレートを変換する。録画再生部111は、録画時はチューナ102からコンテンツレート変換110を介したデータをHDD110へ保存する。また、録画再生部111は、再生時はHDD110のデータを読み出してコンテンツレート変換110へデータを送信する。HDD112は、録画データを保存する。
【0013】
無線帯域監視部120は、無線帯域に影響するパケット間隔を監視して、無線帯域推定部104へフィードバックする。映像表示パネル122は、受信した映像データを表示するディスプレーである。デコーダ123は、映像・音声・字幕等のデータをデコードし映像データを映像表示パネル122に出力する。映像バッファ124は、データを蓄積するバッファである。なお、説明の簡単のため、映像ES(Elemental Stream)データのバッファのみを示す。実際には全てのESのバッファがあってもよい。Demux部125は、TS(Transport Stream)データの分離部であり、TSから映像、音声、字幕等のESを分離する。映像バッファ監視部126は、映像バッファ124を監視して映像バッファ残時間監視部106に情報を送付する。無線LANモジュール127は、無線LANアンテナ107を介してデータを送受信するためのモジュールである。
図5は、サーバ105のフィードバック情報の処理手順を示すフローチャートである。図6は、クライアント121のフィードバック手順を示すフローチャートである。
サーバ105は、ステップ502、503、504を映像配信が終了するまで繰り返す(ステップ501)。ステップ502では、サーバ105は、映像データのデータパケットをクライアント121に送信する。本実施の形態では、一例として、データパケットを帯域推定用に流用する方法で記載している。例えば、データパケットに、無線帯域推定用であることを示すデータ(識別情報)とそのシーケンシャル番号を付加して送信する。これらの情報はクライアント121で抽出したあと取り除けるようにする。また、連続するパケットの送出間隔は後述する「無線帯域推定」(ステップ508)の指示に従う。初期値は予め定めておくことができる。サーバ105は、指示された帯域に応じたパケット間隔でデータを送出する。例えば、帯域が高ければパケット間隔を短くし、帯域が低ければ長くする。そのため単位時間の送信データ量が調整される。なお、データパケットを流用せずに帯域推定用の通常試験用パケットを送出してもよい。この場合には、通常のデータパケットとは別のパケットを生成して送信する。
【0014】
ここで、図6を参照し、クライアント121の処理について説明する。
クライアント121は、以下の各処理を映像配信が終了するまで繰り返す(ステップ601)。まず、クライアント121は、無線LANモジュール127でサーバ105からのパケットを受信する(ステップ602)。クライアント121(例えば、無線帯域監視部120)は、無線帯域監視を実行する(ステップ603)。例えば、クライアント121は、パケットのヘッダーの取り除き、映像バッファ124に格納する際に映像フレームの区切りを検出しフレームごとのデータ量を測定して無線帯域監視をする。ステップ603の詳細処理については図8を参照して後に詳細に説明する。
クライアント121(例えば、Demux部125)は、パケットのペイロードをDemux処理する(ステップ604)。パケットのペイロードに格納されているデータはTS(Transport Stream)のデータである。これを各ES(Elemental Stream、映像、音声、字幕、データ放送など)に分離するのがDemux処理である。クライアント121は、Demux出力を各ESのバッファへ振り分ける(ステップ605)。例えば、Demux処理の結果をESごとに用意されたバッファに格納する。なお、各バッファはリングバッファになっており、空きがあれば格納するが、空きがない場合にはバッファオーバーフローのエラーを発生させて異常処理を行う。例えば、データを捨てて通常動作に戻るなどの処理を行う。本実施の形態はこのエラーを極力発生させないための仕組みを提供する。
クライアント121は、映像バッファ124を監視する(ステップ606)。例えば、映像バッファ124内の映像フレーム数、残データ量などのバッファの使用状況情報を求める。ステップ606の詳細処理については図10を参照して後に詳細に説明する。クライアント121は、フィードバック情報のデータ構造にシーケンシャル番号および監視時刻を格納する(ステップ607)。
【0015】
図12に、フィードバック情報のデータ構造の説明図を示す。
フィードバック情報は、クライアント121からサーバ105へ送られる。図12は、通信データのペイロード部分のみを示す。フラグ1201は、例えば、番号、監視時刻、パケット間隔、バッファ残時間、バッファ残データ量のフィールドの有無を示すフラグである。例えば、フィールドの数に対応したビット数を備え、この例では5ビット分である。存在するデータにビットフィールドは1、存在しないデータのビットフィールドは0とする。番号1202は、クライアント121の帯域監視で発行されたシーケンシャル番号である。監視時刻1203は、クライアント121の帯域監視で発行された監視時刻である。パケット間隔1204は、測定されたパケット間隔時間である。映像フレーム数1205は、バッファ内に存在する映像フレーム数、枚数である。バッファ残データ量1206は、バッファ内に存在するデータのデータ量であり、単位はByteあるいはKByteなどである。
図6の説明に戻り、クライアント121は、フィードバック情報をサーバ105に送信する(ステップ608)。フィードバック情報は、例えば、シーケンシャル番号1202、監視時刻1203、パケット間隔時間1204、バッファ内映像フレーム数1205、バッファ残データ量1206等を含むことができる。観測できなかったデータは含めないでもよい。
図5に戻り、サーバ105における処理の説明に戻る。ステップ503では、サーバ105は、クライアント121からのフィードック情報を受信する。また、ステップ504では、サーバ105は、受信したフィードバック情報が異常かどうか判定する。例えば、フィードバック情報がデータ構造として壊れている場合や、シーケンシャル番号、監視時刻データが格納されていない場合に、サーバ105は異常と判定する。フィードバック情報が異常でない場合(ステップ504、No)、無線帯域推定処理(ステップ505)、フィードバック情報内に映像フレーム数・残データ量情報が存在するかの確認(ステップ506)、コンテンツビットレート制御(ステップ507)を実行する。また、フィードバック情報内に映像フレーム数と残データ量の情報が格納されている場合(ステップ506、Yes)、映像バッファ残時間推定を実行する(ステップ508)。
【0016】
無線帯域処理(ステップ505)では、例えば、フィードバック情報に含まれるパケット間隔情報に基づきサーバ101とクライアント121間の無線帯域を推定する。映像バッファ残時間推定(ステップ508)では、例えば、映像バッファ124の映像データの残時間を推定する。無線帯域推定処理(ステップ505)の手順を図7に、映像バッファ残時間推定(ステップ508)の手順を図9に示す。各処理は後に詳細に説明する。
図4に、推定された映像バッファ残時間と無線帯域の状態に応じたコンテンツビットレート制御方法の一例の説明図を示す。図11は、サーバによるコンテンツビットレート制御手順を示すフローチャートである。図4及び図11を参照して、ステップ507のコンテンツビットレート制御を詳細に説明する。
コンテンツレート制御部109は、図4の状態マトリックスにしたがって、コンテンツビットレート変換部110にビットレートの指示を出す。無線帯域Wは、上述の無線帯域推定(ステップ505)、より詳細には図7の帯域予測(ステップ713)で得られる。映像バッファ内の残時間T、映像バッファの上限時間U(C)は上述のステップ508(より詳細には、後述する図9の処理)で得られる。映像バッファの閾値時間Lはあらかじめ設定されることができる。
図4の状態マトリクスは、縦方向に推定された無線帯域Wの状態を示し、横方向に推定された映像バッファ残時間Tの状態を示す。無線帯域の状態は、コンテンツビットレートCが無線帯域W以下の場合(401)と、コンテンツビットレートCが無線帯域Wより大きい場合(402)とでわかれる。例えば、コンテンツビットレートCが無線帯域W以下の場合(401)は、無線帯域に余裕がある状態であり、一方、コンテンツビットレートCが無線帯域Wより大きい場合(402)は、そのコンテンツビットレートCのデータを遅延なしに送信することができない状態である。
推定された映像バッファ残時間Tの状態は、推定された映像バッファ残時間Tが映像バッファの閾値時間Lより小さい場合(403)と、推定された映像バッファ残時間Tが映像バッファの閾値時間L以上でかつ映像バッファの上限時間U(C)より小さい場合(404)と、推定された映像バッファ残時間Tが映像バッファの上限時間U(C)以上の場合(405)とでわかれる。無線帯域の状態と、推定された映像バッファ残時間の状態との組み合わせにより定まる状態を406〜411で示す。
【0017】
コンテンツレート制御部109は、まず、無線帯域の状態を判定する(ステップ1101)。例えば、図4の状態401か状態402かを判定する。なお、コンテンツビットレートCの初期値は変更前のコンテンツのビットレートとする。また、コンテンツレート制御部109は、映像バッファの状態を判定する(ステップ1102)。例えば、図4の状態403、404、405のいずれであるか判定する。なお、ステップ1101と1102の順序は逆でもよい。
コンテンツレート制御部109は、ステップ1101と1102の判定結果から、図4の406〜411の状態を判定する(ステップ1103)。各状態では、コンテンツビットレートを以下のように制御する。
状態406:ビットレートCはそのままで送信(ステップ1105)。
状態407:ビットレートCをオリジナルまで戻しながら送信(ステップ1108)。例えば、ビットレートCは元のレート(例えば初期値)に戻ったか判定し、コンテンツビットレートCを元のレートに戻るまで徐々に増大させ、戻ったらそのまま維持する(ステップ1108、1111、1112)。
状態408:送信停止(ステップ1107)。例えば、バッファーオーバーフローエラーを発行して送信を停止する。
状態409:ビットレートCを減らして送信(Tの減少が止まるまでCを徐々に減らす)(ステップ1106)。
状態410:ビットレートCをオリジナルのままで送信(ステップ1109)。
状態411:送信停止(ステップ1110)。例えば、バッファーオーバーフローエラーを発行して送信を停止する。
【0018】
コンテンツレート制御部109は、コンテンツビットレート変換部110へ、状態に応じたコンテンツビットレートを指示する(ステップ1104)。
状態遷移の例を説明すると、通常の状態は、例えば状態407である。このとき、コンテンツビットレートはオリジナルのままである。ここで、サーバ105とクライアント121間の無線帯域の状態が悪化すると状態410に遷移する。状態410では、コンテンツビットレートCは変えず、オリジナルのままで送信する。状態410では無線帯域が小さいため、データ送信の遅延がおき、映像バッファ残時間は減っていく。映像バッファ残時間Tが閾値時間Lを下回ると、状態409に遷移し、ビットレートCを映像バッファ残時間Tの減少が止まるまで徐々に減らして、映像データを送信する。
無線帯域が回復すると、状態406に遷移する。状態406では、減らしたビットレートCはそのままで送信する。ここではコンテンツビットレートを減らして送信しているので、映像バッファ124から出力され表示される単位時間あたりのフレーム数に比べて、映像バッファ124に書き込む単位時間あたりのフレーム数が増えるので、映像バッファ残時間は増えていく。映像バッファ残時間が閾値時間L以上になると、状態407に遷移し、ビットレートCをオリジナルまで徐々に戻しながら、映像データを送信する。
【0019】
(無線帯域推定)
図13に、帯域推定用ワークテーブルの説明図を示す。
帯域推定用ワークテーブルは、例えば、無線帯域推定部104に記憶される。無線帯域推定部104は、フィードバック情報から各情報を抽出して本テーブルに格納する。帯域推定用ワークテーブルは、シーケンシャル番号1301と、監視時刻1302と、パケット間隔1303とが対応して記憶される。
番号1301は、クライアント121の無線帯域監視部120が発行したシーケンシャル番号であり、フィードバック情報から抽出される。順序乱れや抜けが検出できる。監視時刻1302は、クライアント121の無線帯域監視部120が発行した監視時刻であり、フィードバック情報から抽出される。フィードバック情報の伝送遅延の測定ができる。パケット間隔1303は、クライアント121の無線帯域監視部120が観測したパケット間隔時間であり、フィードバック情報から抽出される。間隔の変化が検出できる。帯域推定用ワークテーブルは、受信したフィードバック情報を蓄積する(1304)。なお、帯域幅が推定できると古いデータから破棄する。
図14に、推定帯域幅データテーブルの説明図を示す。
推定帯域幅データテーブルは、例えば、無線帯域推定部104に記憶される。無線帯域推定部104は、帯域推定用ワークテーブルを用いて推定した帯域幅を本テーブルに格納して、サーバ側に蓄積する。推定帯域幅データテーブルは、推定時刻1401と、推定帯域幅1402とが対応して記憶される。
推定時刻1401は、帯域推定が完了した時刻を示す。推定帯域幅1402は、例えばPathLoad法などで推定した帯域を格納する。帯域の変化や帯域減衰の頻度・減衰間隔からデータ送信タイミングでの帯域が推定される。推定帯域幅データテーブルは、推定した帯域幅を蓄積する(1403)。なお、帯域変化や帯域減衰・減衰間隔の算出に用いない古いデータから適宜破棄する。
【0020】
図7は、サーバによる無線帯域推定手順を示すフローチャートである。図7は、図5の無線帯域推定(ステップ508)の詳細フローである。
まず、図7のフローを説明する。本手順は繰り返し呼ばれる度に内部状態を少しずつ遷移させることで処理を進める。状態遷移は「推定休止(初期状態)」→「推定開始」→「推定中」→「推定休止」であり、これを一定間隔や必要に応じて繰り返す。帯域推定は以下の公知の手法(Pathload、PathChirp、IGI等)を用いることができる。
・「Pathload」−Manish Jain、Constantinos Dovrolis−2002
・「PathChirp」−Vinay Ribeiro、Rudolf Riedi、Richard Baraniuk、Jiri Navratil、Les Cottrell−2003
・「IGI(Initial Gap Increasing)」−Ningning Hu、Peter Steenkiste−2003
なお、これに限らず適宜の帯域推定の手法を用いてもよい。
【0021】
本手順はこのうち、Pathloadを例にして手順を示す。下記手法では通常試験用パケットを送信して帯域推定を行うが、実際に送信するデータを用いて推定することで、推定処理を行いながらデータ送信も行うことができる。
まず、無線帯域推定部104が、無線帯域推定の状態を判断する(ステップ701、702)。状態が推定休止であれば(ステップ701、Yes)、本フローの処理を終了する(ステップ705)。また、状態が推定開始であれば(ステップ702、Yes)、ステップ706及び707を実行する。なお、推定休止から推定開始への状態遷移は本手順の外部でなされる。例えば、タイマーで1秒ごとに、あるいは、映像配信開始直後の場合に、状態をチェックして推定休止であれば推定開始に変更する処理がなされるものとする。
ステップ706では、無線帯域推定部104は、帯域推定の上限と下限を設定する。なお、推定開始時は、上限は無線モジュール108の物理的な上限限界、下限は0に設定する。また、ステップ707で、無線帯域推定部104は、状態を「推定中」へ遷移する。なお、状態は適宜の記憶部に記憶されることができる。
無線帯域推定部104は、設定された上限と下限の中間値をデータパケット送信部(無線LANモジュール108)へ指示する。例えば、無線帯域推定部104は、帯域推定の上限と下限の中間値を算出し、図5の「データパケットの送信」(ステップ502)で用いるための推定候補の帯域として指示する。無線LANモジュール108は上述のステップ502において、指示された帯域に応じたパケット間隔でデータを送出する。すなわち、帯域が高ければパケット間隔は短くなり、低ければ長くなる。そのため単位時間の送信データ量が調整される。
無線帯域推定部104は、クライアント121からのフィードバック情報にパケット間隔情報が存在するか判断する(ステップ704)。フィードバック情報のパケット間隔情報1204のフィールドにデータが存在する場合(ステップ704、Yes)、以下の処理を実行する。
【0022】
無線帯域推定部104は、受信したフィードバック情報のパケット間隔情報(1204)と監視時刻情報(1203)とシーケンシャル番号(1202)を、図13に示す帯域推定用ワークテーブルに蓄積する(ステップ708)。無線帯域推定部104は、パケット間隔の判定を行う(ステップ709)。例えば、無線帯域推定部104は、パケット間隔が前回のデータ(シーケンシャル番号がひとつ前のデータ)に比べて減少しているか、増大しているか、指定された許容誤差範囲内で一致しているか(差が許容誤差範囲内か)を判定する。無線帯域推定部104は、パケット間隔が減少していれば、無線帯域に余裕があることを示すため、ステップ703で採用した中間値を新たな下限として設定する(ステップ710)。一方、無線帯域推定部104は、パケット間隔が増大していれば、無線帯域が不足していることを示すため、ステップ703で採用した中間値を新たな上限として設定する(ステップ711)。
無線帯域推定部104は、パケット間隔が許容誤差範囲内で一致したとき(ステップ709)、単位時間の送信データ量を推定された帯域とし、推定帯域幅データテーブル(図14)に推定された帯域(推定帯域幅)1402と現時点の時刻(推定時刻)1401を格納する(ステップ712)。この際、帯域推定用ワークテーブル(図13)の古いデータは適宜破棄してもよい。無線帯域推定部104は、推定帯域幅データテーブル(図14)に蓄積されたデータを用いて、時刻の未来方向へ外挿してパケットがクライアント121に送信される時点での無線帯域を予測する(ステップ713)。なお、予測の手法は適宜の手法を用いることができる。これにより図4の「制御方法」における、推定された無線帯域Wが得られる。なお、ステップ713の処理を省略して、ステップ712で推定された帯域を無線帯域Wとしてもよい。無線帯域推定部104は、推定が完了したため、状態を「推定休止」へ遷移する(ステップ714)。
【0023】
図8は、クライアント121による無線帯域監視手順を示すフローチャートである。サーバ105とクライアント121の無線帯域推定手順は連携する。図8は、図6の無線帯域監視(ステップ603)の詳細フローである。
無線帯域監視部120は、無線帯域監視用に送付されたパケットを受信すると、パケットのシーケンシャル番号、受信時刻を記録する(ステップ801)。無線帯域監視部120は、連続する前回のパケットが存在するか判定する(ステップ802)。連続するパケットの判定は例えば、受信したパケット内のシーケンシャル番号と、格納しておいたシーケンシャル番号が連続することで判定できる。パケット順序の入れ替えが発生した場合は正常の順序で扱い、一定時間にパケットが到着しなかった場合には無線帯域監視用パケットの欠落として扱う。連続する前回のパケットがなければ、本処理を終了する。
無線帯域監視部120は、パケット間隔時間の算出する(ステップ803)。例えば、連続する2つのパケットにおいて、前回のパケット受信時刻と今回のパケット受信時刻の差を算出し、パケット間隔時間とする。無線帯域監視部120は、フィードバック情報のデータ構造にパケット間隔時間を格納する。例えば、図12のデータ構造のパケット間隔フィールド1204にデータを格納し、フラグ1201の該当ビットを立てる。なお、フィードバック情報は、クライアント121からサーバ105へ送信される(例えば、上述のステップ608)。
【0024】
(映像バッファの残時間推定)
図15に、残時間データテーブルの説明図を示す。
残時間データテーブルは、サーバ105側で蓄積される。例えば、映像バッファ残時間監視部106や映像バッファ残時間予測部103に記憶されることができる。各情報は、クライアント121からのフィードバック情報から抽出して本テーブルに格納される。必ずしもフィードバック情報に含まれているとは限らないので、存在するときだけ格納する。
番号1501は、クライアント121の無線帯域監視部120が発行したシーケンシャル番号である。順序乱れや抜けが検出できる。監視時刻1502は、クライアント121の無線帯域監視部120が発行した監視時刻である。フィードバック情報から抽出される。バッファ残時間1503は、フィードバック情報から抽出されたバッファ内映像フレーム数×1フレームあたりの時間(例えば1/30)で求められる。バッファ残データ量1504は、映像バッファ124内に存在するデータ量であり、フィードバック情報から抽出される。なお、残時間データの蓄積1505は、古いデータから破棄され、リングバッファになっている。
図10は、クライアント121による映像バッファ監視手順を示すフローチャートである。
図6の映像バッファ監視処理(ステップ606)の詳細フローである。例えば、映像バッファ監視部126が、映像バッファ124内の映像フレーム数とバッファ残データ量を求め、フィードバック情報に格納するフローチャートである。
まず、映像バッファ監視部126は、初期設定する(ステップ1001)。例えば、映像フレーム数を0に設定する。映像バッファ監視部126は、映像バッファ124をスキャンし、映像バッファ124内の映像データをサーチする(ステップ1002)。例えば、映像ES用のバッファ124をスキャンする。バッファを全て処理するまで繰り返す。スキャン中に映像バッファ監視部126は、映像フレーム(I、P、Bフレーム)を検出する。映像フレーム(I、P、Bフレーム)を検出すると、フレームごとの詳細な監視ができる。あるいは、シーケンスヘッダ(Iフレームのみ)を検出すると、GOP(Group of Pictures、15フレームの映像単位、0.5秒分)ごとの比較的大雑把な監視ができる。何を検出するかは予め定めておくことができる。映像バッファ監視部126は、映像フレームが検出されるたびにカウントアップして映像フレーム数を計数する(ステップ1006)。
【0025】
なお、映像フレーム数を計数する別の方法として、上述のようにスキャンする以外にも映像フレーム検出を、ステップ605のDemuxから各ESへ振り分ける際に行うことで、メモリアクセスを減らして高速化することが可能である。
また、映像バッファ監視部126は、映像データ量を計数する(ステップ1003)。本実施の形態のように、映像ES専用のリングバッファの場合、データの先頭ポインタと最後尾ポインタの位置からデータ量が算出できる。映像バッファ監視部126は、フィードバック情報に、映像フレーム数1205と映像データ量(バッファ残データ量)1206を格納する(ステップ1004)。なお、フィードバック情報は、クライアント121からサーバ105へ送信される(例えば、上述のステップ608)。
図9は、サーバ105による映像バッファ残時間の推定手順を示すフローチャートである。図5の映像バッファ残時間推定処理(ステップ508)の詳細フローである。
映像バッファ残時間監視部106は、フィードバック情報の映像フレーム数および残データ量を読出す(ステップ901)。例えば、フィードバック情報を受信した際にパケットから抽出してもよいし、フィードバック情報を記憶しておき、適宜のタイミングで読み出してもよい。映像バッファ残時間監視部106は、映像フレーム数から映像再生の残時間を算出する(ステップ902)。例えば、「残時間(秒)=映像フレーム数/一秒当たりのフレーム数」で算出する。映像バッファ残時間監視部106は、残時間および残データ量を残時間データテーブルに蓄積する(ステップ903)。例えば、残時間データテーブル(図15)に、フィードバック情報から抽出したシーケンシャル番号1501、監視時刻1502とともに、バッファ残時間1503およびバッファ残データ量1504を格納する。なお、残時間データテーブルはリングバッファになっており、古いデータは破棄(上書き)される。
【0026】
映像バッファ残時間予測部103は、残時間(T)および残データ量を予測する(ステップ904)。例えば、受信されるフィードバック情報は受信した時点で過去のデータとなっており、現時点およびデータ送信するまでに時間がかかる場合には未来の時点の残時間および残データ量を予測する必要がある。この予測のために、図15の残時間データテーブルに蓄積されたデータを用い、監視時刻1502から未来に対して外挿することで予測を行う。また、フィードバック情報の実データと以前の予測データにずれがあった場合には、今回の予測の際にそのずれを加味することで予測性能を高めることも可能である。なお、複数のデータから未来の時点の予測値を求めるには、適宜の手法を用いてもよい。
映像バッファ残時間予測部103は、映像バッファの上限時間U(C)を算出する(ステップ905)。上限時間U(C)は、既に映像バッファに蓄積されたデータと、これからコンテンツビットレートCで送信され蓄積されるデータとの兼ね合いで、以下の(式1)に従って決定される。
U(C)=L+(A−R)/C (式1)
ここで、L:残時間(s)、A:バッファ全容量(MByte)、R:残データ量(MByte)、C:現時点のコンテンツビットレート(MByte/s)である。
映像バッファ残時間予測部103、映像バッファ残時間監視部106は、求められた各データを適宜の記憶部に記憶する。
なお、2画面表示など、複数画面を同時にパネル122に表示する場合には、例えば、バッファ124は、表示される各映像データ毎の領域を有し、映像データごとに残時間を求めてもよい。また、求められた映像データごとの残時間のうち、最小のものを用いるようにしてもよいし、最大のものを用いるようにしてもよい。最小のものを用いる場合は、2画面表示の停止・画質劣化を防ぐことができ、最大のものを用いる場合は、2画面表示の継続はできなくても少なくともひとつの映像を再生し、その映像の画質劣化を防ぐことができる。
【0027】
(コンテンツビットレートの記憶)
図16に、コンテンツビットレート履歴テーブルの説明図を示す。
コンテンツビットレート履歴テーブルは、例えば、コンテンツレート制御部109又はコンテンツレート変換部110に記憶される。コンテンツビットレート履歴テーブルは、変換時刻1601と、ビットレート1602が格納される。変換時刻1601は、コンテンツビットレートを変換した時刻である。ビットレート1602は、コンテンツレート制御部109で決定されたコンテンツビットレートの値、又は、コンテンツレート変換部110で変換したコンテンツビットレートの値(例えば、Mbpsなど)である。コンテンツビットレートデータの蓄積1603は、古いデータから破棄され、リングバッファになっている。
【0028】
(効果の例)
図19に、本実施の形態の効果を説明する模式図を示す。
上述の通り、サーバ105は、コンテンツビットレート1701を、無線帯域の状態と映像バッファ量からバッファアンダーフロー抑制するビットレートに制御する(1901)。従って、画質の劣化は少ない(1902)。無線帯域変動1702に直接合わせるのではなく、映像バッファの残時間に余裕がある間は少しだけビットレートを減らして画質劣化を抑える。ビットレート減少をする前に発生した遅れは、ビットレート制御してから徐々に緩和(復活)してゆく(1903)。これに伴い、映像バッファ残時間1703も徐々に回復する(1904)。
【0029】
2.第2の実施の形態
第1の実施の形態におけるサーバ105及びクライアント121は、セットトップボックス(STB)やPCなどで構成されることもできる。サーバ105及びクライアント121での各処理は、上述の第1の実施の形態と同様である。これらの各処理はプロセッサ(処理部)208、307が実行する。また、プロセッサにより実行されるためのプログラム及び上述の各テーブルが、例えば内部記憶部211、310などの記憶部に記憶される。このプログラムは、記録媒体、ネットワークなどからインストール/アップデートされることができる。
図2に、サーバシステムの構成図を示す。
サーバ201は、例えば、ファームウェアアップデート可能なSTB、あるいはPCを用いることができる。また、このようなサーバ201に、上述の第1の実施の形態の処理を行うためのソフトウェア、プログラムをインストールし、プロセッサがソフトウェアを実行することで第1の実施の形態の機能を実現する。ソフトウェアのインストール/アップデート方法は、例えば次の3つがある。
(1)記録メディア経由
(2)インターネット/イントラネット経由によるダウンロード
(3)放送ダウンロード(通常のTVも対象)
サーバ201は、例えば、デジタル放送受信チューナ搭載PC、あるいはファームウェアアップデート可能なデジタル放送受信機器である。
サーバ201は、例えば、プロセッサ208と、記憶部211と、デジタル放送受信モジュール212と、無線LANアンテナ205と、MAC/RF206と、内部バス204を有する、また、サーバ201は、ビデオ・サウンドモジュール202と、ディスプレーとスピーカ203と、通信インタフェース207と、メディア制御部209と、揮発性メモリ210とをさらに有してもよい。
【0030】
ビデオ・サウンドモジュール202は、例えば、映像および音声の出力(HDMI等)機能を備える。ディスプレーとスピーカ203は、受信した映像データ、音声データを出力する。内部バス204は、例えばPCの場合、PCI−Express等である。無線LANアンテナ205は、無線LAN経由でデータを送受信するためのアンテナである。なお、無線LANアンテナ205は、例えばIEEE802.11n方式の場合、アンテナが3本以上となる場合がある。MAC/RF206は、無線LANモジュールである。MAC/RF206は、入手したファームウェアを無線LAN経由でクライアントへ送付してもよい。通信インタフェース207は、例えばEthernetカード等であり、Webサイトからファームウェアを入手してインストール/アップデートが可能である。プロセッサ208は、例えば、PCの場合のCPUや、STBの場合のマイコンである。メディア制御部209は、例えば、インタフェースとしてはUSBやSATA等であり、ドライブとしてはCD、DVD、BD、SDカード等である。メディア制御部209がメディアにインストール/アップデート用のファームウェアを保存して、そこから読み込むことによってもプログラムの導入/更新が可能である。
揮発性メモリ210は、例えばRAMである。内蔵記憶部211は、例えば、PCの場合のHDDや、STBの場合のFlashROMなどの不揮発メモリである。デジタル放送受信モジュール212は、図示の例では、サーバ201に内蔵した構成として記したが、USBによる外付けの構成でもよい。デジタル放送受信モジュール212は、放送ダウンロードとしてファームウェアを取得し、インストール/アップデートすることが可能である。デジタル放送受信アンテナ213は、例えば同軸ケーブルを経由して、デジタル放送受信モジュール212と接続される。
【0031】
図3に、クライアントシステムの構成図を示す。
クライアント301では、例えば、ファームウェアアップデート可能なSTB、あるいはPCを用いることができる。また、ソフトウェアのインストール/アップデート方法は、上述と同様に例えば次の3つがある。
(1)記録メディア経由
(2)インターネット/イントラネット経由によるダウンロード
(3)放送ダウンロード(通常のTVも対象)
クライアント301は、例えば、PC、あるいはファームウェアアップデート可能なインターネット端末あるいはDLNAプレーヤである。
クライアント301は、例えばプロセッサ307と、記憶部310と、無線LANアンテナ304と、MAC/RF305と、ビデオ・サウンドモジュール311と、ディスプレーとスピーカ302と、内部バス303を有する、また、クライアント301は、通信インタフェース306と、メディア制御部308と、揮発性メモリ309とをさらに有してもよい。
ディスプレーとスピーカ302は、受信した映像データ、音声データを出力する。内部バス303は、例えばPCの場合、PCI−Express等である。無線LANアンテナ304は、無線LAN経由でデータを送受信するためのアンテナである。なお、無線LANアンテナ304は、例えばIEEE802.11n方式の場合、アンテナが3本以上となる場合がある。MAC/RF305は、無線LANモジュールである。MAC/RF305は、ファームウェアを無線LAN経由でサーバ201から入手してもよい。通信インタフェース306は、例えばEthernetカード等(Ethernetは登録商標)である。プロセッサ307は、例えば、PCの場合のCPUや、STBの場合のマイコンである。メディア制御308は、例えば、インタフェースとしてはUSBやSATA等であり、ドライブとしてはCD、DVD、BD、SDカード等である。揮発性メモリ309は、例えばRAMである。内蔵記憶部310は、例えばPCの場合のHDDや、STBの場合のFlashROMなどの不揮発メモリである。ビデオ・サウンドモジュール311は、映像および音声の出力(HDMI等)機能を備える。
【0032】
例えば、サーバ(第1のコンピュータ)201から、受信される映像データを蓄積し該映像データを読み出して表示するクライアント(第2のコンピュータ)301へ、所定のコンテンツビットレートの映像データを、無線帯域が変動する無線通信で送信するステップと、
クライアント301から受信される、クライアント301のバッファ(例えば、内部記憶部310の映像データを蓄積する領域)の使用状況情報に基づき、該バッファ内の映像データの残時間を推定するステップと、
前記無線通信の無線帯域を推定するステップと、
推定された映像データの残時間と無線帯域とに基づき、クライアント301へ送信する映像データのコンテンツビットレートを制御するステップと、
映像データのコンテンツビットレートを、前記コンテンツビットレートを制御するステップで制御されるコンテンツビットレートに変換して、該映像データをクライアント301に送信するステップと
を前記サーバ201に実行させるためのコンテンツビットレート制御プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体により、上記コンテンツビットレート制御プログラムがサーバ201にインストールされることができる。
【0033】
3.付記
本発明のコンテンツビットレート制御方法は、その各手順をコンピュータに実行させるためのコンテンツビットレート制御プログラム、コンテンツビットレート制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体、そのプログラムを含みコンピュータの内部メモリにロード可能なプログラム製品、そのプログラムを含むサーバ等のコンピュータ、等により提供されることができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、例えば、チューナ機器とディスプレー機器で無線を介して映像データを送付するテレビ受像機などに利用可能である。
【符号の説明】
【0035】
101 放送受信アンテナ
102 チューナ
103 映像バッファ残時間予測部
104 無線帯域推定部
105 チューナ&ストレージ(映像配信部、サーバ)
106 映像バッファ残時間監視部
107 無線LANアンテナ
108 無線LANモジュール
109 コンテンツレート制御部
110 コンテンツレート変換部
111 録画再生部
112 HDD(録画データ保存部)
120 無線帯域監視部
121 パネル(映像表示部、クライアント)
122 映像表示パネル(ディスプレー)
123 デコーダ
124 映像バッファ
125 Demux(TSデータ(Transport Stream)の分離部
126 映像バッファ監視
127 無線LANモジュール
201 サーバ
202 ビデオ・サウンドモジュール
203 ディスプレー・スピーカ
204 内部バス
205 無線LANアンテナ
206 MAC/RF
207 通信インタフェース
208 プロセッサ
209 メディア制御部
210 揮発性メモリ
211 記憶部
212 デジタル放送受信モジュール
301 クライアント
302 ディスプレー・スピーカ
303 内部バス
304 無線LANアンテナ
305 MAC/RF
306 通信インタフェース
307 プロセッサ
308 メディア制御部
309 揮発性メモリ
310 記憶部
311 ビデオ・サウンドモジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のコンテンツビットレートの映像データを、無線帯域が変動する無線通信で送信する無線映像配信装置と、
前記無線映像配信装置から受信される映像データを蓄積し、該映像データを読み出して表示する無線映像受信装置と
を備え、
前記無線映像受信装置は、
映像データを蓄積するバッファと、
該バッファの使用状況を監視し、使用状況情報を含むフィードバック情報を前記無線映像配信装置に送信するバッファ監視部と
を有し、
前記無線映像配信装置は、
前記無線映像受信装置からの前記バッファの使用状況情報に基づき、前記バッファ内の映像データの残時間を推定するバッファ残時間推定部と、
前記無線映像配信装置と前記無線映像受信装置間の無線帯域を推定する無線帯域推定部と、
推定された映像データの残時間と無線帯域とに基づき、前記無線映像受信装置へ送信する映像データのコンテンツビットレートを制御するコンテンツビットレート制御部と、
前記無線映像受信装置へ送信する映像データのコンテンツビットレートを、前記コンテンツビットレート制御部で制御されるコンテンツビットレートに変換するコンテンツビットレート変換部と
を有する無線映像配信システム。
【請求項2】
前記バッファの使用状況情報は、前記バッファ内にある映像フレーム数であり、
前記バッファ残時間推定部は、映像フレーム数と、フレーム1枚当たりの時間とに基づき、残時間前記バッファ内の映像データの残時間を推定する請求項1に記載の無線映像配信システム。
【請求項3】
前記コンテンツビットレート制御部は、
推定された無線帯域が、コンテンツビットレートより小さく、かつ、推定された映像データの残時間が予め定められた閾値以上の場合、コンテンツビットレートを変更せず、
推定された無線帯域が、コンテンツビットレートより小さく、かつ、推定された映像データの残時間が前記閾値より小さい場合、該コンテンツビットレートを減少する請求項1に記載の無線映像配信システム。
【請求項4】
前記コンテンツビットレート制御部は、
推定された無線帯域が、コンテンツビットレート以上であり、かつ、推定された映像データの残時間が前記閾値以上の場合、該コンテンツビットレートを初期値まで戻す請求項3に記載の無線映像配信システム。
【請求項5】
前記コンテンツビットレート制御部は、
推定された無線帯域が、コンテンツビットレート以上であり、かつ、推定された映像データの残時間が前記閾値より小さい場合は、コンテンツビットレートを変更しない請求項3に記載の無線映像配信システム。
【請求項6】
前記コンテンツビットレート制御部は、
推定された無線帯域が、コンテンツビットレートより小さく、かつ、推定された映像データの残時間が予め定められた閾値以上の場合、コンテンツビットレートを変更せず、
推定された無線帯域が、コンテンツビットレートより小さく、かつ、推定された映像データの残時間が前記閾値より小さい場合、該コンテンツビットレートを減少し、
推定された無線帯域が、コンテンツビットレート以上であり、かつ、推定された映像データの残時間が前記閾値以上の場合、該コンテンツビットレートを初期値まで戻し、又は、コンテンツビットレートを変更せず、
推定された無線帯域が、コンテンツビットレート以上であり、かつ、推定された映像データの残時間が前記閾値より小さい場合は、コンテンツビットレートを変更しない請求項1に記載の無線映像配信システム。
【請求項7】
前記コンテンツビットレート制御部は、
推定された映像データの残時間が、前記バッファに記憶できる映像データの上限時間を超える場合、映像データの送信を停止する請求項1に記載の無線映像配信システム。
【請求項8】
前記バッファ残時間推定部は、
推定された映像データの残時間と、予め定められた前記バッファの容量と、現時点のコンテンツビットレートで映像データを送信した場合に蓄積されるデータ量とに基づき、前記バッファの上限時間を求める請求項7に記載の無線映像配信システム。
【請求項9】
前記バッファ残時間推定部は、次式により前記バッファの上限時間U(C)を求める請求項6に記載の無線映像配信システム。
U(C)=L+(A−R)/C
ここで、L:バッファの残時間(秒)、A:バッファの容量(バイト)、R:残データ量(バイト)、C:現時点のコンテンツビットレート(バイト/秒)。
【請求項10】
前記無線映像配信装置は、
前記バッファ残時間推定部が推定した映像データの残時間を時刻に対応して記憶した蓄積データに基づき、所定時間後の前記バッファ内の映像データの残時間を推定するバッファ残時間予測部
をさらに有する請求項1に記載の無線映像配信システム。
【請求項11】
前記無線帯域推定部は、
前記無線映像受信装置が前記無線映像配信装置から受信するパケットのパケット間隔に基づき、無線帯域を推定する請求項1に記載の無線映像配信システム。
【請求項12】
前記無線帯域推定部は、
推定された無線帯域を時刻に対応して記憶した第2の蓄積データに基づき、所定時間後の無線帯域を予測する請求項1に記載の無線映像配信システム。
【請求項13】
前記無線映像配信装置は、
放送される前記映像データをアンテナを介して受信するためのチューナ部
をさらに有する請求項1に記載の無線映像配信システム。
【請求項14】
所定のコンテンツビットレートの映像データを、無線帯域が変動する無線通信で送信する無線映像配信装置と、無線映像配信装置から受信される映像データを蓄積し、該映像データを読み出して表示する無線映像受信装置とを備えた無線映像配信システムにおけるコンテンツビットレート制御方法であって、
映像データを蓄積する無線映像受信装置のバッファの使用状況を監視し、使用状況情報を含むフィードバック情報を無線映像配信装置に送信するステップと、
無線映像受信装置からのバッファの使用状況情報に基づき、バッファ内の映像データの残時間を推定するステップと、
無線映像配信装置と無線映像受信装置間の無線帯域を推定するステップと、
推定された映像データの残時間と無線帯域とに基づき、無線映像受信装置へ送信する映像データのコンテンツビットレートを制御するステップと、
映像データのコンテンツビットレートを、前記コンテンツビットレートを制御するステップで制御されるコンテンツビットレートに変換して、該映像データを無線映像配信装置から無線映像受信装置に送信するステップと
を含む前記コンテンツビットレート制御方法。
【請求項15】
第1のコンピュータから、受信される映像データを蓄積し該映像データを読み出して表示する第2のコンピュータへ、所定のコンテンツビットレートの映像データを、無線帯域が変動する無線通信で送信するステップと、
第2のコンピュータから受信される、第2のコンピュータのバッファの使用状況情報に基づき、該バッファ内の映像データの残時間を推定するステップと、
前記無線通信の無線帯域を推定するステップと、
推定された映像データの残時間と無線帯域とに基づき、第2のコンピュータへ送信する映像データのコンテンツビットレートを制御するステップと、
映像データのコンテンツビットレートを、前記コンテンツビットレートを制御するステップで制御されるコンテンツビットレートに変換して、該映像データを第2のコンピュータに送信するステップと
を前記第1のコンピュータに実行させるためのコンテンツビットレート制御プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−9904(P2011−9904A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149490(P2009−149490)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】