説明

無線端末、基地局、および無線通信方法

【課題】データ通信をしている以外の期間で端末側の消費電力を減らす。
【解決手段】本発明の一態様としての無線端末は、信号の送受信を行う基地局側無線通信部と、信号の送信を行う無線送信部とを有する基地局と通信する無線端末であって、端末側無線通信部と、無線受信部とを備える。前記端末側無線通信部は、前記基地局側無線通信部と通信する。前記無線受信部は、前記無線送信部から送信される信号を受信し、前記端末側無線通信部よりも低電力で動作する。前記無線端末は、前記端末側無線通信部への給電を停止している場合に前記無線受信部への給電を行い、前記基地局から送信される前記基地局の存在確認メッセージを前記無線受信部により予め定められた期間、受信しない場合には、前記存在確認メッセージを送信する基地局が前記無線受信部のカバレージエリア内に存在しなくなったことを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、無線端末、基地局、および無線通信方法に関し、特に無線端末の省電力化に関する。
【背景技術】
【0002】
無線LAN(Local Area Network)端末には、消費電力を抑えるための、パワーセーブモード(PSモード)が存在する。通常のモードでは、端末側は、常に無線LANの送受信用の電力がオンとなっており、いつでも無線通信が可能な状態である。PSモードでは、端末側は、送信データが無ければ、通信用の電力をオフにするが、アクセスポイントからのビーコンを受信し、自分当てのデータの有無を検出するために、ビーコン間隔、または複数のビーコン間隔で定期的に、受信用の電力をオンにする。ビーコンには、アクセスポイントに端末宛のデータが存在するかを示す情報が含まれており、端末はこれを検出してデータを受信する。これにより、PSモードは、ビーコンを受信する以外の電力が低い分だけ、通常のモードよりも消費電力が抑えるようにしている(参照、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4081679号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記PSモードを用いた方法でも、端末は、端末宛のデータがアクセスポイントにあるか否かに関わらず、ビーコンの受信のために定期的に受信用の電力をオンにし、電力を消費する。よって、長時間受信データが存在しない場合でも、端末側に電力供給が無ければ、電力を使い果たす。
【0005】
特許文献1では、アクセスポイントや移動端末に非接触で電力供給を行う電力供給信号を用いて、データ通信時以外は消費電力を削減する方法を提案しているが、距離が数mと短く、例えば無線LANを利用した電話サービスの利用は困難である。
【0006】
本発明の一側面は、データ通信をしている以外の期間で端末側の消費電力を減らすことを可能とした無線端末、基地局、および無線通信方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様としての無線端末は、信号の送受信を行う基地局側無線通信部と、信号の送信を行う無線送信部とを有する基地局と通信する無線端末であって、端末側無線通信部と、無線受信部とを備える。
【0008】
前記端末側無線通信部は、前記基地局側無線通信部と通信する。
【0009】
前記無線受信部は、前記無線送信部から送信される信号を受信し、前記端末側無線通信部よりも低電力で動作する。
【0010】
前記無線端末は、前記端末側無線通信部への給電を停止している場合に前記無線受信部への給電を行い、前記基地局から送信される前記基地局の存在確認メッセージを前記無線受信部により予め定められた期間、受信しない場合には、前記存在確認メッセージを送信する基地局が前記無線受信部のカバレージエリア内に存在しなくなったことを検出する。
【0011】
本発明の一態様としての基地局は、基地局側無線通信部と、無線送信部と、記憶部とを備える。
【0012】
前記基地局側無線通信部は、信号の送受信を行う。
【0013】
前記無線送信部は、前記基地局側無線通信部よりも低電力で動作し、信号を送信する。
【0014】
前記記憶部は、前記基地局側無線通信部で端末から、当該端末の省電力モードへの移行要求フレームを受信した場合に、前記端末が省電力モードであることを表す情報を保持する。
【0015】
前記基地局は、前記端末が省電力モードであることを示す情報が前記記憶部に保持されている場合に、前記無線送信部から存在確認メッセージを前記端末に送信する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態に係る無線基地局の構成を示す図。
【図2】本発明の一実施の形態に係る無線端末の構成を示す図。
【図3】Association Requestフレーム形式を示す図。
【図4】ビーコンフレーム形式を示す図。
【図5】Associatin Responseフレーム形式を示す図。
【図6】基地局で管理するテーブルを示す図。
【図7】Traffic Indication Map(TIM)を示す図。
【図8】省電力リクエストフレーム形式を示す図。
【図9】省電力レスポンスフレーム形式を示す図。
【図10】データ到着メッセージ形式を示す図。
【図11】記憶部23の構成例を示す図。
【図12】第1の実施形態に係わる無線端末および基地局間のシーケンスを示す図。
【図13】第3の実施形態に係わる無線端末および基地局間のシーケンスを示す図。
【図14】図13のシーケンスの一部変更例を示す図。
【図15】第4の実施形態に係わる無線端末の動作を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
以下の説明では、データ通信用の無線として、無線LANを用いて説明するが、無線LANだけでなく、WiMAXや他の無線にも本発明は適用可能である。
【0019】
また以下では、本発明の省電力方式を行う状態を、「省電力モード」と呼び、無線LANの「PSモード」と区別する。省電力無線で用いられる無線は、無線LANよりも省電力であり、たとえば、送信ビット長が短く、誤り率が高く、利用される周波数帯は1種類であることを想定する。無線LANの「PSモード」「通常モード」はたとえば本発明の非省電力モードに相当する。
【0020】
図1に無線基地局の構成を示す。無線基地局1は内部にデータ処理部(移行要求フレーム受信部、通知フレーム送信部、ユーザデータ送信部)11、無線LAN処理部(基地局側無線通信部)12、省電力無線送信部(無線送信部)13を備える。データ処理部11は、有線のLAN14に接続され、LAN14に対するデータの送受信を行うとともに、無線基地局1の制御処理を行う。無線LAN送受信部12には無線LAN用のアンテナ15が接続され、省電力無線送信部13には省電力無線用のアンテナ16が接続されている。
【0021】
図2に無線端末の構成を示す。無線端末2は、省電力無線用電源(第2の電源)21、無線LAN用電源(第1の電源)22、記憶部23、識別子判別部24、無線LAN送受信部(端末側無線通信部)25、省電力無線受信部(無線受信部)26、無線端末の本発明に係わる部分の制御を行う制御部(第1の制御手段、第2の制御手段、移行要求フレーム送信部、省電力モード移行部、非省電力モード移行部)27を備える。本発明の通信処理部は、たとえば識別子判別部24の機能と制御部27の一機能とを有する。記憶部23は、例えば、MRAM等、不揮発でかつ高速な読み書きが可能で、何度も更新が可能なメモリである。無線LAN送受信部25には無線LAN用のアンテナ29が接続され、省電力無線受信部26には省電力無線用のアンテナ30が接続されている。無線LAN用電源22は無線LAN送受信部25に電力を供給し、省電力無線用電源21は省電力無線受信部26と識別子判別部24に電力を供給する。制御部27への電力は別途用意する電源から供給する。なお識別子判別部24への電力を省電力無線用電源21ではなく、別途設けた電源から供給してもよく、この場合識別子判別部24の機能を制御部27に組み込んでも良い。
【0022】
図12は、図1の無線基地局1と図2の無線端末2間で送受信されるメッセージ(制御データ)のシーケンスを示す図である。最初、無線端末2は、無線基地局1とリンクを確立していない状態にあり、このとき無線端末2では、無線LAN用電源22が起動し、省電力無線用電源21は停止している。
【0023】
無線基地局1の無線LAN送受信部12からは、定期的にビーコンが送信され、無線端末2の無線LAN送受信部25はビーコンを検出して無線基地局1を発見し、リンク確立を行う(A1〜A3)。なお図12では簡単のためビーコンの送信を1回のみ示しているが、実際には、以降のシーケンスA2〜A9の間も、定期的にビーコンを送信しているものとする。
【0024】
図4に、ビーコンのフレーム形式4を示す。このビーコンフレームは末尾に本発明用に省電力タグを追加したことを特徴とする。省電力タグ41は、タイプ、長さで構成され、長さの値は0である。省電力タグ41が付加された場合は、無線基地局1が本発明の省電力モードを可能であることを示す。省電力タグ41が付加されない場合は、本発明の省電力モードを利用しないことを示す。
【0025】
上述したように、無線基地局1は省電力タグを追加したビーコンを定期的に送信する(A1)。
【0026】
無線端末2の無線LAN送受信部12は、通信用のリンクを確立するために、無線LANを用いて無線基地局1へAssociation Requestフレームを送信する(A2)。リンク確立の際、本例では、無線端末2および基地局1間でPSモードの設定を行うとともに、及び省電力モード用の設定(省電力モードを利用可能か否かの設定)を行う。具体的には、無線端末が送信するAssociation RequestのListen Intervalフィールドの値に、PSモードの際に受信する、無線基地局が送信するビーコンの間隔を設定し、フレームの最後には、本発明の省電力タグを追加する。すなわち、フレームの最後には、必要に応じてVendor Specificタグの付加が可能であり、本実施形態ではVendor Specificタグとして、省電力タグをフレームの最後に追加する。
【0027】
図3に、本発明に省電力タグを追加したAssociation Requestのフレーム形式3を示す。省電力タグ31は、タイプ、長さで構成され、長さの値は0である。省電力タグ31が付加された場合は、無線端末2は本発明の省電力モードが可能であることを示す。省電力タグ31が付加されない場合は、本発明の省電力モードを利用しないことを示す。
【0028】
無線基地局1のデータ処理部11は、無線LAN送受信部12を介してAssociation Requestフレームを受信し、無線端末2にAssociation IDと呼ばれる識別子を割り当てるとともに、無線端末2をPSモードに設定し(B1)、無線LAN送受信部12から無線端末2へAssociation Responseを送信する(A3)。図5に、Assoiation Responseのフレーム形式5を示す。Association IDは、無線基地局1内でユニークな識別子で、たとえば16ビット範囲の1つ以上の値が割り当てられる。
【0029】
無線基地局1のデータ処理部11ではAssociation IDと無線端末2のMACアドレスと無線端末2のモードとを対応付けるテーブルを管理し、識別子を割り当てた無線端末2についてレコードを登録する。
【0030】
図6に、無線基地局1のデータ処理部11で管理しているテーブル6を示す。このテーブル6はMACアドレスと、Association IDと、モード(通常モード、PSモード、省電力モード)との対応を管理する。図6の例では、基地局1は、MACアドレスaa.bb.cc.dd.ee.ffの無線端末2と無線リンクを確立しており、Association IDとして0x0001を割り当て、モードとして省電力モードを設定している。また基地局1は、別の無線端末2とリンクを確立しており、Association IDとして0x0002を割り当て、別の無線端末2のMACアドレス(ここではab.cd.ef.11.22.33)と対応付け、モードとして通常モード(ノーマルモード)を設定している。また基地局1は、さらに別の無線端末2とリンクを確立しており、Association IDとして0x0003を割り当て、この無線端末2のMACアドレス(ここではac.bd.af.441.55.66)と対応付け、モードとしてPSモードを設定している。
【0031】
無線端末2の制御部27は、基地局1から無線LAN送受信部25を介してAssociation Responseを受信したら(A3)、Association IDを記憶部23へ保存し、自身をPSモードに設定する(C1)。PSモードでは、無線端末2側は、送信データが無ければ、通信用の電力(無線LAN用電源22)をオフにするが、自分当てのデータの有無を検出するために、ビーコン間隔、または複数のビーコン間隔で定期的に、無線LAN用電源22をオンにして、無線基地局1からのビーコンを受信する。ビーコンには、無線基地局に、どの端末宛のデータが受信されたかを示す情報である、Traffic Indication Message(TIM)が含まれており(図4参照)、無線端末はこれを検出してデータを受信する。
【0032】
図7に、TIMの形式を示す。TIMはElement ID、Length、DTIM Count、DTIM Period、Partial Virtual Bitmapで構成されている。Element IDは、5、LengthはTIMの値の長さ、DTIM CountはDTIM(Delivery Traffic Indication Message)が最後に送信されてからの番号を示す。DTIMとは、ブロードキャストデータやマルチキャストデータが無線基地局1に存在する場合に、ビーコンに含まれて無線端末2へ通知するパラメータで、Partial Virtual Bitmapに含まれる。例えば、DTIM Count値がゼロの場合は、DTIMが送信されていることを示す。DTIM Periodは、無線基地局1がDTIMを送信するビーコンの間隔である。Partial Virtual Bitmapは、無線端末宛のデータが無線基地局1へ届いた場合に利用される。例えば、Association IDが1の無線端末2へデータが届いた場合には、Partial Virtual Bitmapの1ビット目の値が1となる。複数の無線端末2へデータが届いた場合には、それぞれのAssociation IDの値に対応するビット目の値が1となる。ゼロビット目は、ブロードキャストやマルチキャストメッセージが届いた場合に1となる。
【0033】
なお、無線端末2が、PSモードから通常のモードに変更したい場合には、制御部27により、無線LAN送受信部25から無線基地局1へ、パワーマネジメントビットを0にしたデータフレームを送信する。また通常のモードからPSモードに変更する場合には、制御部27により、無線LAN送受信部25から無線基地局1へ、フレームコントロールフィールドのフラグにある、パワーマネジメントビットを1にしたデータフレームを送信する。これにより、無線基地局1のデータ処理部11は無線端末2がPSモードになったことを検出する。
【0034】
ここで、無線端末2が、本発明の省電力モードに変更する場合には、制御部27により、無線LAN送受信部25から省電力リクエストメッセージ8を無線基地局1へ送信する(A4)。
【0035】
図8に省電力リクエストメッセージ8のフレーム形式を示す。Frame Control(フレームコントロール)フィールドは、バージョン、タイプ、サブタイプ、フラグで構成されている。タイプの値は制御フレームを表す1であり、サブタイプは、省電力リクエストメッセージを表す固有の値である。例えば、IEEE802.11標準ではReservedとなって無視されている値を用いることも可能である。フレームコントロールフィールドのフラグにある、パワーマネジメントビットを1にすることで、これから省電力モードに入ることを示す。なおフレームコントロールフィールドは無線LANで用いられる各種のフレームに共通に付加されるものである。パワーマネジメントビットを1にした省電力リクエストメッセージは、本発明の省電力モードへの移行を要求する移行要求フレームに相当する。
【0036】
無線基地局1のデータ処理部11は、無線LAN送受信部12を介して省電力リクエストメッセージ8を受信すると、この省電力リクエストメッセージ8を送信した無線端末のモードをテーブル6において省電力モードへ更新し(B2)、省電力レスポンスメッセージ9を、無線LAN送受信部12を介して無線端末2へ送信する(A5)。
【0037】
図9に省電力レスポンスメッセージ9のフレーム形式を示す。Frame Controlのタイプは制御フレームを表す1で、サブタイプは、例えばIEEE802.11標準ではReservedとなっている値2を用いる。Status Codeの値は、省電力モードが成功した場合は、成功を表す値である0、失敗であれば1を値とする。成功を表す0が設定された省電力レスポンスメッセージ9はたとえば本発明の省電力モードへの移行を許可する許可フレームに相当する。
【0038】
無線端末2の制御部27は、無線LAN送受信部25を介して省電力レスポンスメッセージ9を受信すると、リンク接続をしている無線基地局1と通信するために必要なパラメータを記憶部23に保存し、無線LAN用電源22をオフにし、省電力無線用電源21をオンにすることで、省電力モードへ移行する(C2)。記憶部23に保存するパラメータは、例えば、無線基地局1のBSSID、ESSID、チャンネル番号、暗号化に用いる鍵等である。なお、パラメータの記憶は、これより前、たとえばAssociation Responseフレームを受けた時点で行ってもよい。
【0039】
無線LAN用電源22がオフにされことで、無線LAN送受信部25への電力供給が無くなり、また省電力無線用電源21がオンにされることで、省電力無線受信部26へ電力が供給される。無線LAN送受信部25よりも省電力無線受信部26の方が少ない電力消費量である。そのために、無線LANのPSモードよりも、本発明の省電力モードの方が小さい消費電力で済む。省電力無線用電源21から識別子判別部24に電力を供給する場合もこの値は十分小さいため、全体として小さい消費電力で済む。
【0040】
無線基地局1のデータ処理部11は、無線LAN送受信部12を介して省電力レスポンスメッセージ9を送信した後、LAN14からデータ処理部11にユーザデータが受信された場合、テーブル6を参照し、もしこのユーザデータの宛先が省電力モードの無線端末2でないとき(通常モードまたはPSモードの無線端末のとき)は、通常のIEEE802.11の動作を行う。もし省電力モードの無線端末2であり、ユーザデータがユニキャストまたはブロードキャストのときまたはマルチキャストで無線端末2がマルチキャストのグループに属しているときは、省電力無線送信部13から、本実施形態で新たに定義したデータ到着メッセージ100を送信する(A6)。もデータ到着メッセージ100は本発明の無線端末2宛のユーザデータが存在することを通知する通知フレームの一例に相当する。
【0041】
図10にデータ到着メッセージ100を示す。データ到着メッセージ100はBSSID、Length、Partial Virtual Bitmapで構成されている。BSSIDの値は無線基地局1のBSSID、LengthはPartial Virtual Bitmapの長さ、Partial Virtual Bitmapの内容は、IEEE802.11同様、無線端末2のAssociation IDと同じビット番目が1であるビットマップである。このとき、省電力無線の特性により、誤り率が高く、長いビット列を送受信できない場合は、Partial Virtual Bitmapを圧縮し、または短いビット長になるようなハッシュ値を用いることも可能である。または、誤り率が高いことを考慮し、パリティビットを設けることも可能である。
【0042】
省電力モード中の無線端末2は、無線基地局1からのデータ着信メッセージ100のみを受信可能な状態である。無線端末2においてデータ着信メッセージ100を受信した場合、データ着信メッセージ100は省電力無線受信部26にて処理がされ、識別子判別部24へ送られる。
【0043】
識別子判別部24では、データ着信メッセージ100に自分宛の情報が含まれているかを判別する。記憶部23からBSSIDの値とAssociation IDの値を読み込み、データ着信メッセージ100の値と同一か否かを判別し、もし違っていたら何も行わない。もし同一であるか、ブロードキャストメッセージであるか、メンバであるマルチキャストメッセージである場合、識別子判別部24は、無線LAN用電源22をオンする。
【0044】
無線LAN用電源22をオンすると、無線LAN送受信部25は記憶部23から必要な無線LANのパラメータを読み込み、再び無線基地局1へ省電力リクエストフレーム8を送信する(A7)。この際、省電力リクエストフレーム8のフレームコントロールのフラグの、パワーマネジメントビットをゼロにし、これにより省電力モードから通常のモードに復活することを通知する。
【0045】
無線基地局1のデータ処理部11は、無線LAN送受信部12を介して省電力リクエストフレーム8を無線端末2から受信すると、テーブル6を参照し、該当するレコードのモード(フレームを送った無線端末2のモード)を省電力モードから通常モードに更新する(B3)。そして、データ処理部11は、省電力レスポンスフレーム9を、無線LAN送受信部12を介して無線端末2へ、送信する(A8)。このとき省電力レスポンスフレーム9のStatus Codeの値は成功を表すゼロである。この後、無線基地局1のデータ処理部11は、無線端末2宛のデータ(ユーザデータ)を、無線LAN送受信部12を介して送信する(A9)。
【0046】
無線端末2の制御部27は、ステップA9において無線LAN送受信部25を介して省電力レスポンスフレーム9を受信したら、無線基地局1における通常モードへの変更が成功したことを認識し、省電力無線用電源21をオフして、省電力無線受信部26への電源供給を終了し、これにより通常モードへ移行する(C3)。
【0047】
なお本例では、省電力モードから通常モードへ移行してユーザデータを受信する例を示したが、PSモードへ移行してユーザデータを受信するようにしてもよい。無線端末2は上記省電力リクエスト8を送ったことにより前記無線基地局1からユーザデータを受信することから、省電力リクエスト8は本発明のユーザデータの取得要求フレームの一形態に相当する。
【0048】
以上に説明したように、本実施形態によれば、無線端末が通信を行わない間には、省電力であることを特徴とするもう一つの無線を用いて、省電力化を図ることができる。従って、無線端末のバッテリ消費を抑えるため、無線端末の駆動期間の長期化が可能となる。
【0049】
(第2の実施形態)
図2の無線端末2における記憶部23は、DRAMのように揮発性で、常に電源がオンである必要があるものでもかまわないが、さらに省電力の効果をあげるために、図11のように、保存する情報によって最適なメモリに分割されていても良い。図11に示す記憶部23は、内部が、識別子記憶部23a(第2の記憶部)、無線LANパラメータ記憶部23b(第1の記憶部)に分かれている。この場合、識別子記憶部23aに用いられるメモリ、無線LANパラメータ記憶部23bに用いられるメモリは共にMRAMのような、不揮発性で、何度でも書き換えが可能であるメモリである。
【0050】
このような構成の記憶部23を用いた場合、通常モード(またはPSモード)により省電力無線用電源21がオフになっている場合では、識別子記憶部23aは電源供給がされておらず、無線LANパラメータ記憶部23bのみが、無線LAN用電源22により、電源供給されている。無線基地局1とリンク接続された状態では、無線LANパラメータ記憶部23bへ無線LAN通信に必要なパラメータが保存される。通常モード(またはPSモード)から省電力モードになる場合、無線基地局1から省電力レスポンスが受信され、省電力モードのリクエストが成功したことが判断されると、省電力無線用電源21をオンし、識別子記憶部23aへ電力供給を行い、識別子記憶部23aへ無線基地局のBSSIDとAssociation IDを記憶し、無線LAN用電源22をオフし、無線LANパラメータ記憶部23bの電力供給を止める。
【0051】
無線基地局1からのデータ到着メッセージ100(図10参照)を受信した場合では、識別子判別部24は識別子記憶部23aからBSSIDとAssociation IDを読み込み、読み込んだ値が、該メッセージ内の情報と同一か否かを判定する。
【0052】
省電力モードから通常モード(またはPSモード)へ戻る場合、無線端末2が無線LAN用電源22をオンすると、無線LANパラメータ記憶部23bへ電源が供給される。同様に電源が供給された無線LAN送受信部25は無線LANパラメータ記憶部23bから必要なパラメータを読み込み、再び無線基地局1と無線LANによる通信を開始する。通常モード(PSモード)に戻ったら、省電力用無線用電源21をオフすることで、識別子記憶部23aは再び電源供給が止まる。
【0053】
以上のように、本実施形態によれば省電力効果をさらに高めることが可能になる。
【0054】
(第3の実施形態)
第1の実施形態では、無線端末2は、省電力モード時に無線基地局1へ自分宛のデータが受信されたことを省電力無線により検出し、通常モードに戻ってデータを受信したが(A5〜A9)、この後、再び省電力モードになる場合は、より単純な方法により高速に動作するような実施が可能である。本実施形態に係わるシーケンスを図13に示す。ステップA6より後のシーケンスが図12と異なっている。
【0055】
例えば、識別子判別部24が、ステップA6で自分宛のデータが無線基地局1にあることを検出すると、無線LAN用電源22をオンし(C4)、無線LAN送受信部25、無線LANパラメータ記憶部23bへ電源を供給し、無線LAN送受信部25は無線LANパラメータ記憶部23bから必要な無線LANのパラメータを読み込む。この際、省電力無線用電源21はオンにしたままとする。そして、無線基地局1へは、省電力リクエストフレーム8ではなく、IEEE802.11標準で用いるPS−Pollメッセージ(取得要求フレーム)を送信し(A10)、無線基地局1からユーザデータを受信する(A11)。データ受信後は、再び省電力モードに移行するために、無線LAN用電源22をオフし(C5)、無線LAN送受信部25と無線LANパラメータ記憶部23bの電源供給を止め、省電力無線受信部26と識別子記憶部23a、識別子判別部24への電源供給のみを行い、無線基地局1からのデータ到着メッセージ100を待つ。
【0056】
一方、PS−Pollを受信した無線基地局1は、標準的な方式を用いて、対応する無線端末2へユーザデータを送信する(A11)。再び省電力モード中の無線端末2へのユーザデータがLAN14または他の無線端末から受信された場合、省電力無線を用いてデータ到着メッセージを送信する。
【0057】
無線端末2が、PS−Pollを用いてユーザデータを受信した結果、通常モードになる必要が生じた場合、図13のシーケンスの一部を図14のように変更することも可能である。すなわち、ステップA11でユーザデータを受信した後、無線LAN用電源22をオフにせず、省電力リクエストフレーム8を、パワーマネジメントビットをゼロにして無線基地局1へ送信し(A12)、無線基地局1からの省電力レスポンスフレーム9が成功であれば(A13)、省電力無線用電源をオフにし(C6)、そのまま通常モードになることも可能である。
【0058】
この場合、無線基地局1は、省電力リクエストフレーム8を受信したら、テーブル6を参照し、該当する無線端末2のモードを省電力モードから通常モードへ更新する(B4)。
【0059】
以上のように、本実施形態によればユーザデータ受信後、所望のモードに高速に遷移することが可能になる。
【0060】
(第4の実施形態)
無線端末2が省電力モード中に移動するなどして、無線基地局1から離れ無線基地局1からの省電力無線を受信できなくなった場合を検出するために、無線基地局1のデータ処理部11は、省電力無線送受信部13を介して定期的に空のデータ到着メッセージ100(存在確認メッセージ)を送信することも可能である。
【0061】
空のデータ到着メッセージとは、無線基地局1に全くデータが到着していない場合でも、無線基地局1が省電力モード中の無線端末2へ、無線基地局1の省電力無線のカバレージエリアから外へ出ていないことを通知するための役割を担うメッセージである。空のデータ到着メッセージは、データ到着メッセージ100(図10参照)と形式は同じだが、BSSIDのみを送信する。空のデータ到着メッセージを受信した無線端末2は、該メッセージを識別子判別部24へ送るが、LengthやPartial Virtual Bitmapが存在しないため、何も行わない。
【0062】
無線基地局1は空のデータ到着メッセージまたは、データ到着メッセージの間隔は、固定であってもよいしまたは設定可能であってもよい。固定の場合は、例えばビーコン間隔と同じである。設定可能である場合では、無線基地局1で予め設定し、ビーコンにメッセージの間隔を付加することが可能である。その場合、たとえば、Vendor Specificタグを用いて、メッセージの間隔を無線端末2に通知することで実現が可能である。
【0063】
図15は本実施形態に係わる無線端末2の動作を説明するフローチャートである。
【0064】
無線端末2の識別子判別部24は、データ到着メッセージ100が予め分かっている間隔で受信されたか否かを判断する(S1)。当該予め分かっている間隔で受信されたときは処理を終了し(S1のYES)、この間隔で受信されなくなったときは(S1のNO)、無線端末2が無線基地局1の省電力無線のカバレージエリアから外へ移動したと判定し、一旦無線LAN用電源22をオンして無線LAN送受信部25へ電源を供給し(S2)、無線LAN送受信部25を用いてスキャンを行う(S3)。もし今までリンク接続していた無線基地局1が発見された場合には(S4のYES)、省電力無線のカバレージエリアから外へ出たと判定し、たとえばPSモードに切り替えるための処理を行う(S5)。もし発見されなかった場合には、例えば他に接続可能な無線基地局へリンク接続し、適切なモードへ移行する(S6)。
【0065】
無線基地局1はもしデータ到着メッセージ100を送信しても、受信したデータの宛て先である無線端末2からPS−Pollまたは省電力リクエストフレーム8を受信しなかった場合、あるタイムアウト時間が経ったら、データ処理部11は、あきらめてデータを消去する。タイムアウト時間は、例えばAssociation RequestのListen Intervalにあらかじめ設定を行うか、Association RequestフレームのVendor Specificタグに新たにタイムアウト値を付加して送信することにより設定が可能である。
【0066】
以上に説明した第1〜第4の実施形態は、全てのIEEE802.11標準機能と独立して動作するため、標準的な無線LAN端末と、本発明の無線端末2と、標準的な無線LAN基地局と、本発明の無線基地局1は共存が可能で、互換性が保たれる。さらに、無線LANのセキュリティ機能などの有り無しに関わらず、本発明は独立して動作する。
【符号の説明】
【0067】
1 無線基地局
11 データ処理部
12 無線LAN送受信部
13 省電力無線送信部
14:LAN
15:無線LAN用アンテナ
16:省電力用アンテナ
2 無線端末
21 省電力無線用電源
22 無線LAN用電源
23 記憶部
23a 識別子記憶部
23b 無線LANパラメータ記憶部
24 識別子判別部
25 無線LAN送受信部
26 省電力無線受信部
29:無線LAN用アンテナ
30:省電力用アンテナ
3 Association Requestフレーム
4 ビーコンフレーム
5 Association Responseフレーム
6 テーブル
7 Traffic Indication Map(TIM)
8 省電力リクエストフレーム
9 省電力レスポンスフレーム
10 データ到着メッセージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号の送受信を行う基地局側無線通信部と、信号の送信を行う無線送信部とを有する基地局と通信する無線端末であって、
前記基地局側無線通信部と通信する端末側無線通信部と
前記無線送信部から送信される信号を受信し、前記端末側無線通信部よりも低電力で動作する無線受信部と、を備え、
前記端末側無線通信部への給電を停止している場合に前記無線受信部への給電を行い、
前記基地局から送信される前記基地局の存在確認メッセージを前記無線受信部により予め定められた期間、受信しない場合には、前記存在確認メッセージを送信する基地局が前記無線受信部のカバレージエリア内に存在しなくなったことを検出する、ことを特徴とする無線端末。
【請求項2】
前記存在確認メッセージを送信する基地局が前記無線受信部のカバレージエリア内に存在しなくなったことを検出した場合に、前記端末側無線通信部への給電を行うことを特徴とする請求項1に記載の無線端末。
【請求項3】
信号の送受信を行う基地局側無線通信部と、信号の送信を行う無線送信部とを有する基地局と通信する無線端末が行う無線通信方法であって、
前記基地局側無線通信部と通信する端末側無線通信部への給電を停止している場合に、前記無線送信部から送信される信号を受信する、前記端末側無線通信部よりも低電力で動作する無線受信部への給電を行い、
前記基地局から送信される前記基地局の存在確認メッセージを前記無線受信部により予め定められた期間、受信しない場合には、前記存在確認メッセージを送信する基地局が前記無線受信部のカバレージエリア内に存在しなくなったことを検出する、ことを特徴とする無線通信方法。
【請求項4】
信号の送受信を行う基地局側無線通信部と、
前記基地局側無線通信部よりも低電力で動作し、信号を送信する無線送信部と、
前記基地局側無線通信部で端末から、当該端末の省電力モードへの移行要求フレームを受信した場合に、前記端末が省電力モードであることを表す情報を保持する記憶部と、
を備え、
前記端末が省電力モードであることを示す情報が前記記憶部に保持されている場合に、前記無線送信部から存在確認メッセージを前記端末に送信する、ことを特徴とする基地局。
【請求項5】
基地局が行う無線通信方法であって、
端末から、当該端末の省電力モードへの移行要求フレームを、基地局側無線通信部で受信した場合に、前記端末が省電力モードであることを表す情報を記憶部に保持し、
前記端末が省電力モードであることを示す情報が前記記憶部に保持されている場合に、前記基地局側無線通信部よりも低電力で動作する無線送信部から存在確認メッセージを前記端末に送信する、ことを特徴とする無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−257340(P2012−257340A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−220168(P2012−220168)
【出願日】平成24年10月2日(2012.10.2)
【分割の表示】特願2008−299938(P2008−299938)の分割
【原出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】