無線自動識別タグの位置を推定及び追跡するシステム並びに方法
1又は複数の無線自動識別(RFID)タグの位置を特定するシステム及び方法が提供される。照射されたRFIDタグの受信情報信号の位相差は、RFIDタグの位置を特定するために使用される。1又は複数のエキサイタは、RFIDタグを照射するように呼出信号を送信し、このエキサイタは、複数のアンテナを有し、2又は複数のアンテナを介して選択的に送信するように構成され、かつ1つのアンテナで受信するように構成される。同一RFIDタグの複数読み取りはまた、RFIDタグの位置の確率モデルを作成するように行われてもよい。拡張粒子フィルタは、正確なRFIDタグの位置を求めるために確率モデルに適用される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2008年4月14日に出願の米国仮特許出願第61/124,294号、及び2008年4月14日に出願の米国仮特許出願第61/044,904号の利益を主張するものであり、これら特許の開示は、本明細書にすべて記載されたのと同様に、参照により本明細書に援用するものとする。
【背景技術】
【0002】
本願は、受動(パッシブ)又は能動(アクティブ)センサの位置の推定及び追跡に関し、特に、フェーズド・アレイ・アンテナ・システム及び無線自動識別(RFID)システムを使用したセンサ及び/又はRFIDタグの位置の特定に関する。
【0003】
RFIDシステムは、通常、リーダ/質問機システムで処理される一組の固定又は可動RFIDタグを従来から含む。各センサは、受動又は能動、すなわち、電池付き又は電池なしとすることができる。従来のシステムでは、リーダ及びRFIDタグは、通常、近接していることが必要であるので、タグはリーダアンテナと近接して動作することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のRFIDシステムで利用できる送信距離は限定されているため、自動化された工場環境及び/又は室内無線環境での使用が限定される。そのようなシステムは、意図した動作範囲内であっても、干渉及び衝突のために信頼性が低い場合が多い。
【0005】
典型的なRFIDシステムはまた、領域の受信可能範囲を十分なものにするには、多数のベースステーションが必要とされるので、極端に広い領域を対象とするようには設計されない。これはきわめて高価であり、このため、法外な費用がかかることがある。また、使用率の高い領域、例えば、ドックドアを選択して受信可能領域を限定することにより、広い領域を補償すると犠牲が出る。さらに、そのようなシステムは、環境の規模及び空間の複雑さのために、多くの場合、RFIDの位置を正確に特定できない。したがって、当技術分野における上記の障害及び欠点を解決するRFIDシステムが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、RFIDタグ/センサの位置は、単一及び複数の読み取り点の両方を使用して求められる。
【0007】
一実施形態では、1又は複数の無線自動識別(RFID)タグの位置を特定する方法は、エキサイタ(exciter)により少なくとも1つのRFIDタグに照射するステップと、照射された少なくとも1つのRFIDタグから情報信号を複数の受信アンテナにより受信するステップと、複数の各受信アンテナで受信した少なくとも1つの被照射RFIDタグからの受信情報信号に対する位相微分を求めるステップと、受信情報信号の求めた位相微分に基づいて、少なくとも1つのRFIDタグの位置を特定するステップとを含む。また、一実施形態では、その方法は、位相微分対周波数微分の比に基づいて、少なくとも1つのRFIDの位置を特定することをさらに含む。
【0008】
別の実施形態では、1又は複数のRFIDの位置を特定するための無線自動識別(RFID)システムは、少なくとも1つのエキサイタ及びリーダを含む。少なくとも1つのエキサイタは、複数のアンテナを有し、複数のアンテナのうちの少なくとも2つのアンテナを介して呼出信号を選択的に送信し、少なくとも1つのRFIDタグから、複数のアンテナのうちの少なくとも2つのアンテナとは異なる、複数のアンテナのうちの1つのアンテナを介して、受信情報信号を選択的に受信するように構成される。リーダは、少なくとも1つのエキサイタと通信し、少なくとも1つのエキサイタを作動させるように構成される。リーダは、受信した情報信号の位相微分に基づいて、少なくとも1つのRFIDタグの位置を特定する。
【0009】
さらに別の実施形態によれば、1つ又は複数のFRIDの位置を特定する無線自動識別(RFID)システムは、少なくとも1つのRFIDタグ、アンテナアレイ、送信機及びリーダを含む。アンテナアレイは、少なくとも1つのRFIDタグに照射するように構成される。送信機は、アンテナアレイに接続され、アンテナアレイを作動させて、特定の時間枠及び特定の空間で、少なくとも1つのRFIDタグに対して繰り返し照射させるように構成される。リーダは、送信機と通信し、少なくとも1つのRFIDタグに繰り返し照射することにより受信した情報信号に基づいて、確率モデルを作成するように構成され、作成した確率モデルを粒子フィルタに適用して、適用した粒子フィルタの結果に基づいて、少なくとも1つのRFIDタグの位置を求める。
【0010】
さらなる実施形態では、1又は複数の無線自動識別(RFID)タグの位置を特定する方法は、幾何学的特徴を互いに共有するように、少なくとも1つの受信機及び少なくとも1つの送信機を配置するステップと、少なくとも1つの送信機によって照射された少なくとも1つのFRIDタグからの受信情報信号に基づいて、位置特定用測定値を求めるステップと、確率モデル及び求めた位置特定用測定値を利用して、少なくとも1つのRFIDタグの位置を推定するステップとを含む。
【0011】
説明した方法及びシステムをより完全に理解するために、ここで、添付の図面に関連してなされる以下の説明を参照するが、同じ参照番号は同じ部品を表す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の様々な態様に係る、エキサイタ呼出空間と同様の2つのリーダのためのTX及び受信可能領域を示す分散エキサイタ・アーキテクチャの概念図である。
【図2】図2は、本発明の様々な態様に係る、エキサイタ呼出空間と同様の2つのリーダのためのTX及び受信可能領域を示す分散エキサイタ・アーキテクチャの概念図である。
【図3】図3は、本発明の様々な態様に係る、エキサイタ呼出空間と同様の2つのリーダのためのTX及び受信可能領域を示す有線接続された(単一の)、分散エキサイタ・アーキテクチャ・システムの図である。
【図4】図4AからBは、本発明の様々な態様に係る、エキサイタ・レイアウト及び例示的な周波数プランを説明する図である。
【図5】図5は、本発明の様々な態様に係る、受信した信号から到着角度を推定するためのアルゴリズムを示す図である。
【図6】図6は、本発明の様々な態様に係る、RFIDタグ、干渉源及びリーダ(例えば、送信及び受信連鎖)を示すリーダシステムのブロック図である。
【図7】図7は、本発明の様々な態様に係る、アンテナアレイ、RF/IF、信号処理及びシンセサイザ・サブシステムを示すリーダのブロック図である。
【図8】図8は、本発明の様々な実施形態に係る、リーダアレイ及び単一励振点トポロジーを説明する図形表現である。
【図9】図9Aから9Cは、本発明の様々な実施形態に係る、RFIDタグの位置を求めるための楕円表現を提供する図形表現である。
【図10】図10は、本発明の様々な実施形態に係る、4ポート励振ノードのブロック図である。
【図11】図11は、本発明の様々な実施形態に係る、4ポート励振ノードの詳細なブロック図である。
【図12】図12は、本発明の様々な実施形態に係る、リーダの分散アレイ及び単一励振点トポロジーを説明する図形表現である。
【図13】図13AからDは、本発明の様々な実施形態に係る、シャンデリア構成における4ポート励振ノードを説明する図形表現である。
【図14】図14AからDは、本発明の様々な実施形態に係る、オフセット・リニアアレイ構成における4ポート励振ノードを説明する図形表現である。
【図15】図15AからFは、本発明の様々な実施形態に係る、6つの異なるRFIDタグの位置に対するオフセット・リニアアレイ構成における4ポート励振ノードを説明する図形表現である。
【図16】図16は、本発明の様々な実施形態に係る、任意の又は不規則な構成において、一般化された多ポート励振ノード、又はノードのアレイを説明する図形表現である。
【図17】図17は、本発明の様々な実施形態に係る、RFIDタグの位置を特定する粒子フィルタ位置処理のフローチャートである。
【図18】図18は、本発明の様々な態様に係る、リーダにより行われる位置推定処理の概要を示すフロー図である。
【図19】図19は、本発明の様々な態様に係る、リーダにより行われる位置推定処理の概要を示すフロー図である。
【図20】図20は、本発明の様々な態様に係る、2次元実装における単純化された4素子アレイを図解している。
【図21】図21は、本発明の様々な態様に係る、RFIDタグ及びアンテナを示すDOA解析のための解析セットアップを図解している。
【図22】図22は、本発明の様々な態様に係る、既知の手段を有する2次元ガウス密度とみなされる呼出空間及び2次元(x,y)ユークリッド空間の分散の図である。
【図23】図23は、本発明の様々な態様に係る、マルコフ連鎖仮定を説明する図である。
【図24】図24は、本発明の様々な態様に係る、逐次モンテカルロ法の一般的な形式のステップを示すフロー図である。
【図25】図25は、本発明の様々な態様に係る、RFIDタグ/センサの位置を探索するための一般解のステップを示すフロー図である。
【図26】図26は、本発明の様々な態様に係る、微分及び遺伝子展開処理のフローチャートである。
【図27】図27は、垂直方向にラックを並べた棚に保管された在庫品の自動恒久的な用途を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に図面を参照して、1つ又は複数の無線周波数識別(RFID)タグの位置を特定するシステム及び方法が説明される。そのシステムは、RFIDタグの位置に関する観測結果を得るために、送信機及び受信機の様々な幾何学的配置を利用する。その観測結果を、観測されたRFIDタグの位置の推定値を生成できる任意の各種推定器に供給することができる。
【0014】
RFIDシステムの送信機及び受信機の幾何学的配置は、システムがRFIDタグの位置を推定できる精度に影響を及ぼす。本発明の実施形態に係る様々なアーキテクチャが説明される。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のエキサイタ(exciter)は、RFIDタグに照射する呼出信号を送信し、反射した信号は、複数の受信機によって受信される。各受信機は独立した受信機とすることができ、及び/又は単一の受信機システム、もしくは多ポート・エキサイタ・システムに接続された、独立した受信機アンテナとすることができる。いくつかの実施形態では、多ポート・エキサイタ・システムは、エキサイタ及び受信機の両方として機能する。アンテナの1つは、呼出信号を送信するように選択的に構成され、残りのアンテナは、RFIDタグで後方散乱した信号を受信するように構成される。いくつかの実施形態では、多ポート・エキサイタは、RFIDタグからのデータを読み取る能力を有さず、単に、RFIDタグの位置を特定するのに役立つ観測を行う能力を有する。
【0015】
RFIDの後方散乱プロセスの不安定性のために、位置を推定するときに選択される観測可能量により、得られる推定値の精度が影響を受けることがある。様々な実施形態では、システムは、被照射RFIDタグからの後方散乱信号の位相差を観測する。いくつかの実施形態では、位相差は、範囲情報をもたらすために様々な送信周波数で観測される。位相差対周波数差の比は、群遅延とも呼ばれる。多くの実施形態では、システムは、様々なエキサイタが様々な呼出空間に照射したのに応答したRFIDタグの読み取り率を観測する。読み取り率は、タグが有した読み取られる機会の数に対する比としての、タグが読み取られた回数である。きわめて感度の高い受信機を利用するシステムでは、読み取り率は、RFIDからエキサイタまでの距離を示すと考えることができる。そのようなシステムでは、エキサイタによって作動された大多数のタグが読み取られる。したがって、読み取り率は、送信機によるRFIDタグの作動率をほぼ示す。
【0016】
下記にさらに説明するように、本発明の態様に従い、1又は複数の観測可能量に基づいて位置を推定するために、様々な技術を使用することができる。システムの複雑さと、所与の空間にRFIDタグが多数存在し得ることを考慮すると、RFIDタグの位置を統計学的にモデル化することにより、空間内のそれぞれのRFIDタグに対する正確な位置を推定することができる。したがって、様々な実施形態では、RFIDタグの多数の観測結果を使用して、確率分布モデルを作成する。1又は複数のアルゴリズム及び/又はフィルタを使用して、モデルをさらに精密にし、RFIDタグの位置を求める。いくつかの実施形態では、粒子フィルタを利用して確率分布モデルを作成し、これをさらに精密にする。他の実施形態では、種々の他の技術を使用して、観測可能量を使用して得られる位置推定をさらに精密にすることができる。
【0017】
(システム・アーキテクチャ)
所与の空間内のRFIDタグの位置を特定する能力は、RFIDタグに呼出信号を送信するのに使用されるアンテナと、RFIDタグで後方散乱した信号を受信するのに使用されるアンテナとの位置によってほぼ決まる。送信機能と受信機能とが切り離され、独立したエキサイタ及び受信機が、それらの機能を実行できる幾何学的配置を含む、様々な幾何学的配置を本発明の実施形態に従って使用することができる。
【0018】
「分散エキサイタ・ネットワークを使用したRFIDシステム(RFID Systems Using Distributed Exciter Network)」と題し、2007年3月23日に出願された、同時係属出願中の米国特許出願第12/054,331号明細書では、受動RFIDタグを処理する受信及び送信システムを分離することにより、RFIDシステムの性能及び容量が強化され、その特許の開示は、本明細書にすべて記載されたのと同様に、参照により援用される。この機能性は、RFIDタグ/センサの個体群を、図1〜2に示すように、一組の呼出空間(1−16、1−32、1−38、1−44、1−40、1−28、1−24、1−48、1−54、1−56)に分解することにより実現され、エキサイタは、各ターゲット呼出空間(1−18、1−34、1−36、1−46、1−42、1−30、1−26、1−58、1−52、1−50)ごとに置かれている。
【0019】
各呼出空間の大きさは、エキサイタからの総放射出力を制御することで調整することができる。一方、当然のことながら、RFIDシステムの放射出力は、通常、法規によって制限され、エキサイタの呼出範囲を、例えば、20〜30フィートに限定する。放射出力制御は、RFIDリーダ(1−2)のエキサイタ出力管理及びゲイン・コントローラ・サブシステム(3−18、3−30)を通して行われる。各呼出空間の大きさを調整するのに加えて、所望のレベルの指向性をもたらすように各エキサイタ送信アンテナのタイプを選択し、それによって、ターゲット呼出空間に向けたビーム幅を制御することで、システムの全体性能をさらに改善することができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、リーダは、ビームを形成できるフェーズド・アレイ・アンテナを含む。リーダ受信フェーズド・アレイ・アンテナ・ビーム(1−4)は、特定の呼出空間に集中する(1−17、1−21)ように、又は幅広いビーム(1−20)として形成することができる。分散エキサイタとも呼ばれる送信アンテナのネットワークは、有線(2−24、2−30、2−36、2−12、2−56)又は無線接続で制御することができる。コントローラからエキサイタへの送信「帰路信号」は、エキサイタ・モジュールからタグに出力される所望の波形を生成するのに必要な信号特性及びパラメータをすべて内包する。図1及び図2はまた、ローカル・エリア・ネットワーク(1−11、2−50)を介してリーダに接続されたRFIDアプリケーション管理及び演算サーバ(1−7、2−51)を示している。
【0021】
図3は、受信システム(3−2)、受信アンテナアレイ(3−4)、及び、一態様では、同軸ケーブル(3−10、3−9、3−16、3−22、3−26)を介してシステムに接続された分散エキサイタ(3−6、3−14、3−18、3−24、3−30)を示す分散エキサイタ/送信機RFIDシステムのレイアウトを示している。各エキサイタの呼出空間及び送信出力は、中央ユニット(3−2)によって制御される。図3では、様々な大きさのエキサイタ呼出空間(3−8、3−15、3−20、3−23、3−28)が示されている。受信アレイの全受信可能領域(3−11)も示されている。各呼出空間(3−8、3−14、3−20、3−23、3−28)は、受信アレイが対応可能なビーム数に応じて、順次か、又は同時に使用することができる。
【0022】
システム(3−2)内のコントローラ(3−30)は、各エキサイタが作動する時間、周波数、及び空間の大きさについて計画する。S/T/FDM(空間、時間、及び周波数分割多重化)用のスケジューラは、ターゲット呼出空間内のすべてのタグを読み取る確率を最大限にするために、最適化アルゴリズムを利用する。コントローラは、エキサイタごとの周波数チャネルの使用の予定を決めるのに、(規制上の要件を満たしながら)周波数ホッピングを利用することができる。図4A及び4Bは、エキサイタ・レイアウト(4−6)の例と、割り当てられた周波数チャネル(4−8)を示す時系列(4−4)とを示している。時系列(4−4)は、900MHzのISM帯域(4−10)で周波数ホッピングしたチャネライゼーションを示している。各時系列で、異なるホッピング・シーケンスにより、各作動中のエキサイタ(4−8)に対して、異なる、一連のランダム周波数が割り当てられる。図14に載せたアルゴリズムは、この動作を管理し、最適化する。スケジュールに従って様々なエキサイタが作動され、RFIDシステムは、RFIDタグに関する観測結果を収集することができる。多くの実施形態では、スケジュールは、観測結果の収集中に、多数のエキサイタによる干渉を防止する重要な役割を果たす。さらに下記に説明するように、スケジュールで様々な励振周波数を利用できることで、RFIDシステムが、様々なRFIDタグの群遅延に関する観測結果を収集できるようになる。
【0023】
再度図1を参照すると、無線エキサイタ・レイアウト及び展開システムが示されている。図示した実施形態では、2つのRFIDシステム(1−2、1−14)が設けられている。各システムは、独立した受信機(1−4、1−12)及び送信アンテナ(1−6、1−13)を有する。送信アンテナは、送信リンクをエキサイタに放射し、一方、受信アンテナは、各エキサイタの呼出空間内のタグから信号を受信する。一態様では、送信リンクは、エキサイタ識別(ID)番号、コマンド、制御及び管理の各情報等の追加情報を搬送する。図は、2つのシステムの受信可能領域(1−22、1−20)を示している。図に記載したように、システムは、受信呼出空間(1−24、1−48、1−28、1−40、1−54、1−56、1−44、1−16、1−32、1−38)に対応している。受信可能領域(1−22、1−20)間の重なった領域は、受信アレイのビーム形成と、エキサイタ動作の周波数又は時間との共同作用により管理される。2つのシステムは、図2の有線エキサイタ・システムと同様な方法でLAN(1−3、1−8、1−9)に接続され、無線エキサイタ管理サーバ(1−7)は、LANによって2つのシステム(1−2、1−14)と接続し、エキサイタの制御、命令、連係及び校正、さらには、呼出空間の最適化を含む、エキサイタの動作を制御する。
【0024】
(RFIDタグの呼出)
センサ又はFRIDタグは、一定の時間間隔の間に何度でも呼出を受けることができる。これらの各呼出に対して、アレイに作用を及ぼす信号を組み合わせて、RFIDタグによって送信された一連の符号を検出するための単一の(ビーム形成された)信号を形成することによって、RFIDタグに組み込まれたセンサデータ又は情報を検出することができる。各呼出期間は、帯状のRFIDタグからの複数の(例えば、RN16及びEPCパケットと呼ばれる2つの)パケットで通常構成される。これらのパケット内のペイロードは通常、一時アドレス(例えば、RN16タイプのパケット内の16ビット乱数)を含み、確認応答の後、次いで、タグは、その情報内容(例えば、電子製品コード(EPC))を含むパケットを転送することができる。
【0025】
各呼出期間中に、様々な周波数で多数のRFIDタグ呼出信号を送信することができる。様々な周波数を使用してタグに呼び出すことで、タグのさらなる観測により、受信信号の位相及び振幅軌跡を経時的に正確にモデル化し、信号の散乱を送信信号の多重反射で特性化することが可能になる。
【0026】
(呼出の使用により、位置の推定が可能になることの総括)
呼出期間中の処理作業には、それらに限定するものではないが、各アンテナ素子からの信号と基準信号との間の相対的位相差を評価し、そのような各アンテナ素子ごとの調整した位相遅延差に基づいて、各アンテナ素子からRFIDタグまでの相対範囲を導出することを含めることができる。次いで、各呼出期間の集合体を、「サンプル空間」を形成する単一のデータベースとして処理することにより、RFIDタグの位置の推定に対処することができる。複数の周波数で同じRFIDタグを読み取ることで、「順次測距」による信号源の範囲(タグから読み取り点までの距離)の推定が可能になることにも留意されたい。単一のリーダ(読み取り点)だけを使用する用途の場合、リーダシステムは、「三角測量をする」必要なく、位置を推定することができる。
【0027】
信号を処理することには、他の各アンテナ素子からの信号と基準信号との間の調整された位相差を導出し、各アンテナ素子で、RFIDタグからの受信信号の到着相対方向を導出することを含めることができる。複数の読み取り点での単一のRFIDタグからの信号の到着方向を使用して、RFIDタグ位置の推定をさらに改善することができる。これは、各読み取り点にある各アレイ要素で受信した信号から得られた到着情報の相対方向を組み合わせることで行うことができる。複数の呼出サイクル及びアレイを使用することにより、読み取り点の数量が時間的にそれぞれ多重化されて、タグの位置の推定が全体的にさらに改善される。
【0028】
複数の読み取り点を用いた反復作業には、タグの位置の確率分布を形成するために、複数の繰り返しから得られたRFIDタグ情報を組み合わせ、信号源から各アンテナ素子に至る信号の到着方向が多経路であることの影響を評価し、これを軽減するために、アルゴリズムを適用することを含めることができる。
【0029】
図5に示した、システム内で受信信号から到着角度を推定するアルゴリズムは、2007年6月28日に出願された、同時係属出願中の米国特許出願第11/770,712号明細書で対処されており、この特許の開示は、参照により上記に組み込むものとする。その出願では、各アンテナ素子からの受信信号の相対位相及び振幅を使用してAOA(到着角度)を推定するのに、タグからの各受信パケットからサンプリングした時間的に離散した信号を使用する方法が記載されている。図5に示したアルゴリズムは、アレイ入力(5−16)に対してFFT(5−14)を行い、続いて、相互スペクトルのマトリクス計算を行い(5−12)、分解処理し(5−10)、ビーム走査応答を計算する(5−8)。走査応答計算(5−8)には走査ベクトルデータ(5−6)を使用し、この走査ベクトルデータは、アレイ応答及び校正データベースを使用して生成され、調整される(5−2、5−7)。ビーム走査応答計算(5−8)は、相互スペクトルマトリクス(5−12)を変えることで、様々な方向に対して繰り返される。
【0030】
いくつかの難題の中で、アンテナアレイの無線回路で使用される電子部品に起因する実際上の難題に対処するために、各アンテナ素子を周期的に校正して、各アンテナ素子の相対位相及び振幅の不平衡と、そのそれぞれの同相及び直角位相成分とをなくす。校正は、1つ又は複数の試験信号に対して行われ、そのような不平衡を補償するように、各アンテナ素子によって受信される信号の処理を補正することができる。
【0031】
一実施形態では、エキサイタの位置が分からない場合か、又はエキサイタの位置が移動していないことを保証するために、位置推定作業の前か、その作業の中で何度か一連の校正作業を行って、エキサイタ又はダミーのRFIDタグの位置を求める。一実施形態では、エキサイタ又はダミーのRFIDタグの位置は、「実際の」RFIDタグの位置推定と同様なRFID受信システムによって求められる。
【0032】
一実施形態における無線自動識別システムのリーダは、アンテナアレイを使用して設けられる。送信チャネル(リーダとタグとの間の送信路)では、いくつかの物理アレイにわたって送信アンテナアレイを分散させることができる。分散された送信アンテナの場合、受信アンテナアレイは、分散されたアレイのアンテナ素子によって励振されたタグ信号から衝突エネルギを捕捉することができる。この手法は、空間多重化を使用して、単一のアンテナシステムと比べて帯域幅利用を大幅に強化することができる。アンテナアレイは、複数の周波数帯域に対応することができる。典型的なアレイ要素構成は、開口結合給電式タイル状パッチアンテナを含む。タイル状の構造は、2次元平面内にマトリクス状に配置された同一要素を含む。低ノイズ増幅器(LNA)は、システムの全体性能を高めるために、アンテナ素子自体に埋め込むことができる。
【0033】
送信アレイアンテナを使用する場合、ビーム形成を使用して、送信ビームを空間内の所望の位置に走査することができる。このビーム走査により、応答したタグから受信した信号間の衝突及び干渉が低減される。様々な送信方法を採用することができ、一例として、RFIDタグへの受信等方性電力を最大化し、一方で、最大電力量及び滞留時間に対する規約を満たす「空間ホッピング」パターンを放射するために、時間帯ごとに送信ビームフォーマ係数を更新することができる。
【0034】
定期的な校正を通じて、ビームフォーマは、(受信路用としてアンテナとアナログ/デジタル変換器(ADC)との間にある、及び送信路用としてデジタル/アナログ変換器(DAC)とアンテナとの間にある)前端部のRFマイクロ波装置の不整合及び不完全性、並びに独立した平行アレイ素子路で生じた無線周波数からベースバンドまでの位相及び振幅の不整合を補償することができる。
【0035】
ここで図6を参照すると、本発明の実施形態に係る、パレットに配置された多数の在庫品上に置かれた一群のRFIDタグを呼び出すRFIDリーダが示されている。RFIDシステムは、例示的な干渉体6−10からの干渉が存在する中で動作している。商品のパレット6−1は、RFID受動タグの付いた多数のケース又は物品を含む。アンテナ6−6からの送信呼出信号6−4は、パレット6−1に衝突する。各タグによって検出された信号エネルギに応答して、各タグは、送信呼出信号又はビーム6−4から受け取った電力を使用して、一連の情報を後方散乱させることができる。この環境では、干渉体6−10として図示した人工の又は自然の干渉があり得る。受信アンテナアレイ6−12は、タグからの後方散乱信号にビーム形成を施すので、タグからの受信電力は最大化され、干渉体6−10からアンテナ6−6が受け取る電力が最小化される。
【0036】
図7では、アンテナ・アレイ・サブシステム(17−1)、RF/IFサブシステム(17−2)、及び信号処理サブシステム(17−3)を含むリーダシステム(例えば、図6)の機能ブロック図が示されている。また、シンセサイザ・サブシステム(17−4)は、クロック周波数及び局部周波数をリーダシステムのRF/IFサブシステムに供給する。リーダシステムは、干渉のある中でパレット1−1上のRFIDタグに呼出をする(例えば、図1)。
【0037】
(アンテナの幾何学的配置)
RFIDシステムは、複数の送信アンテナ及び複数の受信アンテナを含むことができる。分散エキサイタ・アーキテクチャでは、複数の送信アンテナは、エキサイタのアンテナである。下記に説明するように、複数の受信アンテナは、RFID受信機のアンテナアレイ、及び/又は位置を推定する目的で観測を行うために切り換えられる多ポート・エキサイタのアンテナとすることができる。RFIDタグの位置を推定するために観測結果を収集する場合、エキサイタに対する及び互いに対する受信アンテナの数量及び位置は、個々の観測を行うことができる精度に大きく影響を及ぼすことができる。したがって、送信機及び受信機の幾何学的配置は、特定の位置の推定に精度を要求する用途に必要とされるアンテナの数量に影響を及ぼすことができる。
【0038】
(リニアアレイ)
ここで図8〜9Cを参照すると、単一エキサイタ18−3及びRFIDタグ18−2に関連するリーダアレイ18−1が示されている。リーダアレイは、4つの受信点を提供する4つのアンテナを含むリニアアレイである。各アンテナは、互いに対してオフセットしている。エキサイタは、リーダアレイから特定の距離d1に配置され、さらに、RFIDタグに対して特定の距離d2に配置されている。RFIDタグはまた、リーダアレイに対して特定の距離d3に配置されている。受信機アレイを使用した観測
【0039】
図9A〜9Cでは、本発明の実施形態に係る、RFID受信機システムからエキサイタまでの距離(d1)、エキサイタからRFIDタグでの距離(d2)、及びRFIDタグからRFID受信機システムに戻る距離(d3)の代用として、群遅延の校正された勾配を利用するRFIDタグの位置の観測が示されている。群遅延観測は下記にきわめて詳細に説明されるが、ここでは、送信アンテナ、RFIDタグ及び受信アンテナの間の経路長の推定値をもたらすものとみなすことができる。楕円は、2つの固定点までの距離の合計が一定であるような点の平面内の軌跡である。正確に言うと、上記は、リーダとエキサイタとの間の距離が既知であり(d1)、距離の合計d2+d3が既知である場合である。校正によって、我々は(星で記した)リーダと(ダイヤモンドで記した)エキサイタとの間の時間(距離)を求めることができる。我々は、時間の合計d1+d2+d3を求めることもできる。これら2つの距離測定(d1及びd1+d2+d3)を合わせると、タグは楕円18−4上のいずれかの位置になければならないと分かる。なお、2*d1=d1+d2+d3となって縮退する場合がある。これは、タグが、リーダとエキサイタとの間の線分上のどこかにあることを示し、正確には、この場合、そのどこかは求めることができない(説明するように、別のエキサイタがこの事例を解決する)。楕円の1つの焦点(この場合はリーダ)から出た線と楕円上の位置との交点の位置を求める式を導出することができる。
【0040】
図9Bでは、タグがリーダとエキサイタ1との間の線分上にある場合が示されている。これは、2d1=d1+d2+d3となった縮退の場合である。この場合に、エキサイタ1によるあり得るタグ位置の領域は、リーダとエキサイタ1との間の線分である。別のエキサイタであるエキサイタ2(18−4)がタグに照射できる場合、この事例は、焦点であるリーダ及びエキサイタ2の位置から予測される楕円(18−5)と、エキサイタ2及びタグからの距離である距離d22とリーダからエキサイタ2までの距離である距離d32とを合わせたものとの間の交点を見つけることで解決することができる。当然のことながら、この場合に、到着角度(AOA)情報は、タグ位置を求めるのに必要とされない。しかし、この角度は、前述の処理によりさらなる測定値として使用することができる。
【0041】
図9Cでは、エキサイタ1及びエキサイタ2による2つの非縮退位置予測が示されている。リーダから各受信エキサイタまでの距離である距離d11及び距離d12はともに、校正作業によって求めることができる。距離d21+d31及び距離d22+d32は、それぞれ左及び右の楕円を規定する。角度φ1、φ2から、リーダを出た線分が予測され、この線分と各楕円との交点はタグ位置を示す。示した角度φ1、φ2は、同じに見える。しかし、各角度は、それぞれエキサイタ1、2からの励振によって対象タグを読み取った結果得られた、独立した観測結果である。
【0042】
(多ポート・エキサイタの幾何学的配置)
エキサイタが分散したアーキテクチャは、RFIDシステム内で送信機能と受信機能を切り離し、エキサイタは、送信機能を行う役目を担う。このようにシステムを切り離す利点は、低価格なエキサイタを使用し、これを従来のRFID受信機システムよりも多くの位置に配置できることにあり、複数の位置にRFID受信機を設けた場合、通常ではコストが高くなりすぎる。いくつかの実施形態では、エキサイタは複数のポートを有するので、単一のエキサイタが、複数のアンテナ(すなわち、ポート)を使用して、RFIDタグを作動させることができる。多くの実施形態では、多ポート・エキサイタは、一部のアンテナを切り換えて、RFIDタグで後方散乱した信号を受信することができる。このようにアンテナの機能を切り換えることで、多ポート・エキサイタが、RFIDタグで後方散乱した信号の観測結果を収集することが可能になる。エキサイタは、RFID受信機で利用される複雑な復号回路の必要なしに、これらの観測を行うことができる。多ポート・エキサイタがRFIDタグに関する観測結果を収集するのを可能にすることで、位置推定で使用するための情報を収集するのに利用できる、RFIDシステム内の受信アンテナの数量が大幅に増える。さらに、多ポート・エキサイタのアンテナは通常、RFID受信機の直線アレイ内のアンテナよりも互いから離れて分散される。RFIDタグに関する観測結果を収集できる多ポート・エキサイタと、多ポート・エキサイタのアンテナの位置の様々な幾何学的配置とが以下にさらに説明される。
【0043】
ここで図10を参照すると、図10は、本発明の様々な実施形態に係る、4つのポート(4ポート・エキサイタ)を有する多ポート・エキサイタ又は励振ノード(eNode)のブロック図を示している。以下の説明の多くは、4つのポートを含む多ポート・エキサイタに関するが、本発明の実施形態によれば、任意の数量のポートを含む多ポート・エキサイタを利用することができる。4ポート・エキサイタは、1つ又は複数のアンテナ19−2を選択するための切替回路19−1を含む。アンテナの選択は、関連する送信回路19−4又は受信回路19−5を利用して、プロセッサ19−3によって制御される。送信回路は、RFID付近への、呼出及び校正信号等のすべての出力通信を扱う。受信回路は、呼び出されたRFIDからの応答データ等のすべての入力通信を扱う。受信回路は、切替回路を通じて、入力信号の受信用アンテナの1つを選択する。同様に、送信回路は、切替回路を通じて、出力信号の送信用アンテナの1つを選択する。ほとんどの場合、送信用に複数のアンテナが選択されて、最も多くのRFIDの近くに到達するための、また、本願全体にわたって説明しているように、RFIDの位置を素早くかつ正確に求めるための最大呼出範囲を保証する。
【0044】
図11は、本発明の様々な実施形態に係る、多ポート・エキサイタ又は励振ノード(eNode)の詳細ブロック図を示している。励振ノードは、RFIDからのデータを送受信するアンテナアレイを含む。アンテナアレイは、複数のアンテナ素子7−1〜7−4を含む。各アンテナ素子は、スイッチ(7−5)によって、アンテナ素子の1つ又は複数が送信し、残りのアンテナ素子が受信するように構成される。したがって、アンテナ素子7−1を介して受信した信号は、増幅器7−10に供給される。受信経路信号は、こうして増幅され(7−10)、帯域通過フィルタで処理され(7−14)、局部発振器(7−60)から供給されたベースバンド信号に直接混合される(7−20)。ベースバンド信号に受信した信号を混合するのに使用される搬送周波数は、送信側のRFに混合するのに使用される周波数(7−62)と同じである。次いで、受信ベースバンド信号は、ローパスフィルタで処理され(7−24)、増幅される(7−28)。信号は、受信機信号処理回路によってサンプリングされ、抽出位相と関連付けられ、復調され、復号される(7−70)。コマンド及び制御メッセージ(RFIDタグ関連データではない)は、制御回路によって復号される(7−74)。復号したコマンド及び制御メッセージに基づいて、プロセッサ(7−80)は、送信出力レベル校正(7−86)及び他の保守特性を制御する命令を出す。受信したRFIDデータは、異なるRFIDプロトコルの態様を満たすために、データエンコーダ及び変調器(7−31)に送られる。送信用のパケットは、アップコンバートされ(7−32)、帯域通過フィルタで処理され(7−36)、可変減衰され(7−42)、増幅される(7−44)。最後の帯域通過フィルタは、複数の(この場合は4つの)使用可能なアンテナの1つを通じて放射する前に、帯域外の放射要求が適用される(7−52)のを保証する。一実施形態では、同軸ケーブルが、周波数基準、DC電力及びコマンド制御を供給する。この実施形態では、局部発信器ブロック(7−62)は、同軸ケーブルで供給された周波数基準をスペクトル的に純化するフィルタと置き換えられる。
【0045】
ここで図12を参照すると、多ポート・エキサイタのアンテナが、読み取り点20−1、20−2、20−3で位相同期されたリーダの分散されたアレイ、及び単一のエキサイタ20−5として構成されて示されている。分散されたアレイ内のRFIDタグ20−4の配置も示されている。多ポート・エキサイタは、RFIDタグで後方散乱した信号を、読み取り点20−1、20−2、20−3に配置されたアンテナにより複数のポートで受信し、単一ポートを使用して、励振アンテナ20−5から呼出信号を送信するように構成されている。各読み取り点は、励振ノードから既知の距離にある。例えば、読み取り点1、2、3は、励振ノードに対して、それぞれ特定の距離d11、d21、d31だけ離間している。また、RFIDタグの各読み取り点1、2、3に対するそれぞれの距離d13、d23、d33は、RFIDタグの励振点に対する距離d22と同様に求めることができる(下記の群遅延の説明を参照のこと)。したがって、多ポート・エキサイタは、既知の読み取り点及び励振点の位置と共に、距離の合計d12+d13、d22+d23、d32+d33を利用して楕円を求めて、RFID位置に関する観測結果を収集することができる。到着情報のうちの角度は、RFIDタグの位置を特定するのに利用されない、すなわち必要でない。
【0046】
ここで図13〜16を参照すると、例示的な励振ノード又はeNode構成が示されている。例えば、図13A〜13Dでは、「シャンデリア」として構成された「4ポート」eNodeによって得られたRFIDタグの観測結果と、エキサイタとして機能する様々なポートとが示されている。シャンデリア構成では、各アンテナ素子は、互いから等距離に設定され、正方形形状に設定される。4ポートeNodeは、局部発振器を使用して又は外部基準によって、送信点と受信点との間の位相同期を維持する。図は上から見たものであり、4つのポートのうちの3つ(図13Aの21−1、21−2、及び21−3)が受信し、1つ(図13Aの21−5)が送信するように設定されたeNodeを示している。対象タグは、正方形(21−4)で示されている。各図において、3つの楕円が表示されている。各楕円は、1つの焦点として送信アンテナを共有し、もう1つの焦点として異なる受信アンテナを有する。3つの楕円の交点は、タグ位置の観測結果とみなすことができる。この交点がただ1つでない場合(ここには図示せず)、アンテナがタグを励振した情報を使用して、最も可能性の高い3方交点を特定することができる。一実施形態では、受信したタグ信号の位相は、プリアンブル・シーケンスとの相関から求められる。そのような手法は、「RFIDビーム形成システム(RFID Beam Forming System)」と題して2007年6月28日に出願された米国特許出願第11/770,712号明細書に記載されており、この特許の開示は、本明細書にすべて記載したのと同様に、参照により本明細書に援用するものとする。
【0047】
位置推定の観測を行うことができる場合の信頼度は、システム内のノイズに依存する。上記に概説した態様で観測結果を楕円の交点とする場合、観測結果の信頼度は、楕円が交差する点でそれらがほぼ平行になる程度によって評価することができる(例えば、図3Dを参照のこと)。楕円がほぼ平行である場合、位相ノイズのわずかな変動で、観測されたRFIDタグの位置が大きくオフセットすることがある。下記に説明するように、多ポート・エキサイタのアンテナの数量及び位置により、エキサイタを使用して行う位置観測の信頼度を大幅に高めることができる。
【0048】
図14A〜14Dでは、4ポートeNodeが「オフセットした直線アレイ」として構成されている。オフセットした直線アレイ構成では、アンテナ素子対が直線的に整列し、互いから等しく離れている。また、第1の対は、第2の対から設定した距離だけオフセットしている。オフセットした構成は、RFIDタグからの後方散乱信号により、RFIDのあり得る位置がただ1つだけである位置観測が可能になる領域の総パーセントを増やすのに使用される。図示するように、3つの楕円は、eNodeの4つのポートのそれぞれに対して配置され、楕円の交点はタグ位置を特定する。以下にさらに説明するように、3つの楕円からなる4組の観測結果のそれぞれは、粒子フィルタプロセスに送ることができ、タグの位置を特定するのに任意の1つの結果で十分である。
【0049】
図15A〜15Fは、オフセットした直線アレイとして構成された4ポートeNodeの別の例を提示し、1つ又は複数のRFIDタグの位置を特定するあり得る範囲を示している。この応用例のリーダを簡単にするために、アレイは単一の送信機構成で示されており、3つの楕円が描かれ、それらの交点が6つの異なるRFIDタグの位置を特定する。
【0050】
図16は、「不規則な」アレイを使用してRFIDタグの位置を特定する例を示している。このような構成では、アンテナ素子は疑似ランダムパターンに設定される。図示した例では、6つの総受信パッチ(21−1、21−2、21−3、21−6、21−7、21−8)と1つの送信パッチ(21−5)を使用して、RFIDタグ(21−4)の位置を特定する。群遅延に基づいて位置を解明するために、任意のアレイ構成を使用することもできる。
【0051】
(位置推定で使用される観測可能量)
RFIDタグからの後方散乱信号は、位置推定で使用できる様々な観測可能量をもたらす。送信及び受信アンテナの幾何学的配置に関する、上記に説明した距離の代用として使用される観測可能量は、群遅延の校正された勾配である。群遅延とは、様々な周波数で観測された位相差をいう。本発明の実施形態による、位置推定に群遅延を使用できる態様が以下に説明される。いくつかの実施形態では、読み取り率の観測が位置推定で使用される。RFIDタグの読み取り率は、通常、RFIDタグが読み取られた機会数に対する比としての、RFIDタグが読み取られた回数として説明できる。位置推定に利用できる他の観測可能量には、限定するものではないが、位相、位相定数の大きさ、読み取り率、搬送周波数、励振ノードインデックス(index)、及び受信アンテナインデックスがある。
【0052】
(観測可能量としての群遅延)
図18には、位置推定処理の一態様を説明するフローチャートが示されている。リーダが起動信号を所定のエキサイタに送信した(8−1)ときに処理が始まる。エキサイタは、エキサイタの送信場内のRFIDタグに照射する(呼出信号を送る)(8−2)。RFIDタグは、情報信号を送ることで応答し(8−3)、リーダがその信号の群遅延を求める(8−4)。RFID受信機システムは、RFIDタグに情報信号の周波数のみが異なる応答をさせ、システムは、様々な情報信号間の位相差を求める。位相差対周波数差の比率(すなわち、群遅延)を使用して、リーダはRFIDタグまでの距離を求める。一実施形態では、リーダはまた、総往復時間を求める(8−5)。下記に説明するように、群遅延を使用してRFIDタグまでの距離を求めることができる。なお、この処理全体にわたり、各システムに送られる信号は、周波数及び位相をロックされる。
【0053】
エキサイタのリーダからの位置が既知であれば、リーダでの受信したタグ信号の位相を測定する。異なるトーン周波数を使用する場合、異なる相対位相を測定する。往復遅延による、2つの異なる周波数での2つのトーンの測定した相対位相差は、次式によって周波数差に関連付けられる(エキサイタはリーダと一緒に配置されるとする)。
【数1】
上式で、Δφは相対位相差であり、Δfは周波数差であり、dは距離であり、cは光の速度である。トーン周波数f1での位相θ1は、2mπの多義性(ambiguity)で測定することができる。同様に、トーン周波数f2での位相は、2nπの多義性で測定することができる。位相差が2π未満でありさえすれば、2πを法とした測定値の位相差を使用して、Δfを所与として範囲dを求めることができる。これは、Δφが2π未満である限り真である。なお、予測される動作範囲を考慮して、適切な周波数分離を選択することで、条件を満たすことができる。2次元例の場合、範囲d及び方位角θから、タグ位置を求めることができる。当業者ならば、3次元への拡張が実現可能であり、企図されていると分かるであろう。エキサイタがリーダと一緒に配置されておらず、タグまでの距離がd1の場合、以下の式となる。
【数2】
【0054】
(観測可能量としての到着角度(AOA))
直線アンテナアレイといった特別な事例を含むシステムでは、複数の直線アレイからの到着角度(AOA)の観測結果を使用して、RFIDタグを三角測量することができる。さらに、単一の直線アレイからの、様々な周波数での複数の観測結果を使用して、RFIDタグを三角測量することができる。
【0055】
AOAを使用して位置を観測する技術の一例は、空間平滑化を有する多重信号分類(Multiple Signal Classification (MUSIC))アルゴリズムとして公知の技術群を基本とする。特に、表記を簡略化するために、我々は、順方向及び逆方向フィルタを備えたMUSICアルゴリズムを使用して、4要素直線アレイに適用される技術を検討する。当業者ならば、アルゴリズムの任意のアレイへの拡張が実現可能であり、企図されていると分かるであろう。
【0056】
それぞれが一定の距離、すなわち、λ/2だけ離れたM要素直線アレイのi番目の要素によって受信された信号ri(t)は次の式で与えられる。
【数3】
上式で、akはk番目の多経路信号の振幅であり、s1(t)は所望の信号であり、sk(t)(k=2,3,…,N)は多経路受信信号であり、θkはk番目の信号用のアンテナ照準に対するAOAの角度であり、n(t)は、付加ノイズ又は干渉である。同相及び直角位相成分、すなわち、In及びQnは、受信した信号ri(t)の実数部及び虚数部を表す。ベクトル表記では以下となる。
【数4】
上式で、θはアンテナ照準に対するAOAである。信号s(t)は所望の信号及び(N−1)多経路信号を含む。
【0057】
ここで図21を参照すると、複数のAOA測定を通じたRFIDタグ10−1の位置の特定が示されている。この2次元図において、2つのアレイアンテナ10−2、10−3の位置が既知の場合に、2つのAOA測定からタグ位置を求めることができる。特に、タグの位置(x,y)は次式から求めることができる。
【数5】
【0058】
ここで図20を参照すると、RFIDタグの位置を特定するその能力の点から、近距離場モードで作動するアレイアンテナRFIDシステムの一態様が示されている。簡略化した4要素アレイが、システムによって実施されるRFIDタグ位置特定の一例として2次元図で示されている。当業者ならば、2次元から3次元の任意のアレイへの拡張が実現可能であり、企図されていると分かるであろう。RFIDタグ位置特定技術は、特定の要素9−3と基準要素9−2との間の、到着信号又はプリアンブル信号の位相差9−1を測定することを基本とする。位相差9−1は、RFIDタグと2つのアレイ要素9−2、9−3との間の経路9−4、9−5の範囲差(r2°−r1°)に比例する。特に、範囲差は以下の式で与えられる。
【数6】
上式でfは、RFIDタグの搬送周波数である。x1、x2、x3、x4及び範囲差(r2−r1)、(r3−r1)、(r4−r1)から一義的に求めることができるRFIDタグの位置は、アレイ要素の既知の位置(xi,yi)及び測定した範囲差から、非常に効率的なアルゴリズムによって計算することができる。
【数7】
yi=0としても、一般性を失わない。この解は、範囲差を規定する双曲線の交点を見つけることに合わせて重みづけした線形最小二乗(LS)解に基づく。解の精度は、クラメールラオ限界(Cramer−Rao Bound、CRB)によって予測されるものに近づく。
【0059】
(観測可能量としての読み取り率)
読み取り率は、エキサイタの励振中に、RFIDタグが読み取られる可能性があった回数に対する、RFTDタグが読み取られた回数の比である。分散したエキサイタ・アーキテクチャを利用するシステムは、非常に高い受信感度を有することができるので、タグ読み取り率に影響及ぼす主要因は、送信機とタグとの間の経路損失である。したがって、読み取り率は、エキサイタに対するタグの位置と相関があると予測される。例えば、仮説領域Xaがエキサイタe1、e2から等距離に配置されたとすると、その場合に、仮説領域内に配置されたRFIDタグに対するそのそれぞれの読み取り率RRe1、RRe2は、等しいと予測される。読み取り率を求める場合、衝突がデータに影響を及ぼすことがある。通常、衝突を避けることと、衝突を回避するために設けられるスロット数が、システムの性能に大きく影響するほど多くならないようにすることとの間でバランスが取られる。
【0060】
励振回線マージンを使用して、タグが在庫領域xa内に配置された場合に、タグが所与の回数パーセント(読み取り率)で読み取られる可能性を表す確率質量関数(pmf)を作成する。読み取り率は、特定の時間間隔であり、同じ持続時間で達成する可能性のある総可能読み取り回数でこの量を除することである。読み取り率(RR)は、表記RReを使用してエキサイタ(ej)を添字として表される。前述の定義に基づいて、ガウスの確率質量関数上の点として確率を特定することが可能である。
【数8】
上式で、μ及びσは、励振電力、エキサイタから仮説領域への角度、エキサイタから仮説領域までの距離、エキサイタ放射パンターン及びタグ放射パターンに応じて求められる。なお、所与の位置でのRFIDタグを読み取る確率を求める前に、所与のエキサイタeに関連するすべての確率が次式のように正規化される。
【数9】
【0061】
下記にさらに説明するように、様々な推定器を利用して、仮説領域の位置を求め、様々な仮説領域内の観測可能なRFIDタグの位置推定値を得ることができる。
【0062】
(観測可能量を使用した位置推定)
ここで図19を参照すると、図18に示した作業が繰り返されている(8−7)。作業を繰り返すことにより、複数の読み取り点が生成される。これらの複数の読み取り、ひいては、RFIDタグの情報又は距離推定値を利用して、確率分布モデルが形成される(8−8)。RFIDタグの位置推定値を求めるために、アルゴリズムを選択し、これを適用することができる(8−9)。さらに、信頼レベル及び精度係数(accuracy factor)を求めることができる。アルゴリズムを適用した結果として、例えば、信号源から各アンテナ素子への信号の到着方向等の多経路の影響が明らかにされ、緩和される。様々な推定器が以下に説明される。
【0063】
(観測可能量から位置を特定するのに使用される推定器)
RFIDタグ位置を観測する際のノイズの影響は、推定器を使用して限定することができる。上記に概説した、任意の観測可能量を使用してRFIDタグ位置を推定するのに使用できるいくつかの異なる推定器が以下に説明される。
【0064】
(粒子フィルタを基本とした推定器)
図18に示す一実施形態では、位相、位相定数の大きさ、読み取り率、搬送周波数、励振ノードインデックス、受信パッチ・アンテナ・インデックス位相、及び/又は(観測可能量に関して前述の文で説明した)所与のタグ読み取りに関連する他の観測可能量が、粒子フィルタ(25−4)として公知のモンテカルロ仮説検定アルゴリズムに通される。一般化した3次元確率分布関数は連続的であり、そのため、複雑性が技術的に無限であるので、この分布の有限圧縮した記述が見出された。カルマンフィルタは、この一般分布の2次モーメント記述のみを提供する。無香(unscented)カルマンフィルタは、3次モーメントの複雑性に対して良好である。格子点仮説を考慮することも可能であり、一組の仮説が状態領域全体に及ばないようにし、より高い点密度に拡張することができる。しかし、これらは、局部尤度を表現するのに必要とされる仮説数がきわめて浪費的になることがある。
【0065】
粒子フィルタは、不均一な時間適応格子を使用する推定への適応的仮説手法である。状態空間の検定仮説を表す粒子は、前の状態分布に基づいて生成される。各観測に対して、所与の粒子が生成する尤度(状態可能性)でその観測が評価される。尤度の高い粒子は複製され、尤度の低い粒子は削除される。最後に、複製された粒子は、遺伝子突然変異又は焼き鈍しと同様に、状態空間内でわずかな量だけランダムに移動される。
【0066】
この位置推定問題の場合、粒子は(x,y,z)位置に対応し、オプションで
【数10】
速度に対応する。粒子フィルタ処理は、初期化プロセスとそれぞれ新たな測定で使用する反復プロセスセットとに分割することができる。最初の測定分布か、又は他の前の状態を使用して、シード粒子雲(seed particle cloud)を生成する。状態が有限範囲にわたって一様な分布の場合、これらの初期粒子は、格子から選択することができる。しかし、通常では、前の分布はより複雑であり、ランダム状態値が選択されて粒子セットがまかれる。
【0067】
時間更新プロセス(25−5)は、新たな観測(25−3)がシステムに入力されるたびに行われる。これは、粒子状態と、最後の更新からある程度の時間が経過しているという事実による動的不確定性との伝播に相当する。このステップは物理的プロセスによって進められ、決定論的であり、確率論的である。最後の更新からある程度時間量が経過したことを考慮すると、各粒子の現在の位置及び速度に対してある種の不確定性がある。各粒子を新たな位置及び新たな速度にランダムに移動させる。この処理に使用される分布は、環境及び粒子の現在の状態によって決まる。一例として、フォークリフト上を移動するタグの位置を推定したい場合、新たな速度は、各方向に1G以下の加速度で得ることができる速度に限定される。フォークリフトが有することができる速度の最大絶対値もある。時間更新プロセスは、原則的に正則化ステップから独立しているが、時間更新及び正則化は共に状態粒子にノイズを加えることから、実装に従う。
【0068】
次に、測定更新(25−6)プロセスが、新たな測定に基づいて、各粒子に対応する尤度を計算する。得られた尤度は、eNodeからタグまでとタグからアンテナ素子までとの距離間での予測された位相を所与として、各観測(例えば、位相ベクトル又は読み取り率の測定値)が対応する尤度から生成される。これらの確率は、一実施形態では、ガウス分布で評価することができ、このガウス分布は、観測が行われたときのアンテナの受信電力に依存し、さらに、推定した校正係数に関連する信頼性に依存する標準偏差を使用する。校正係数は、波の伝播に相当しない任意の影響を除去するために、各タグ読み取り測定で使用される。一実施形態では、励振点と受信パッチとの間の距離が公知の場合、各周波数の余分な位相回転を、「裏ルート(backchannel)の」波形又は励振点と一緒に配置された基準タグを使用した観測位相と比較して除去することができる(25−10)。各周波数において除去した余分な回転量は記録され、(電気的遅延等の)無線伝播に起因しない位相回転効果を補償するために、次の受信タグ測定位相データから「取り消される」。
【0069】
再サンプリングプロセス(25−7)は、粒子の尤度に基づく粒子の除去/複製を担う。これは、粒子の尤度によって生成される累積分布を取り出し、これを使用して新たな粒子を生成することによりなされる。粒子の尤度が高いほどその粒子がより多く複製される。粒子のクローンは、同じ位置及び速度を有する(言い換えると、それらは現時点で正確なクローンであり、次のステップ(正則化)では、注意深く選択された変化が加えられる)。
【0070】
粒子フィルタプロセスの最後のステップである正則化(25−8)は、測定尤度についての何らかの記憶の維持に関与する。粒子の以前の確率は、複製及び変更によって保存される。このように、高水準の粒子は複製される。正則化プロセスは、遺伝子突然変異又は焼き鈍し法と同様である。その目的は、粒子セット内のギャップを埋めるクローンを変動させることである。粒子フィルタの公知の問題の1つは、各点が少数の仮説に縮退する可能性にある。粒子雲が縮退した場合、仮説が少なすぎて将来の測定で検定できない。正則化プロセスは、そのランダム変動の導入によって、この問題を回避することを担う。
【0071】
結果は、最終的に、静的に集合したより高いレイヤに出力される(25−9)。このレイヤで、位置特定解の確率密度を経時的に計算することが可能である。通常、この最終的なレイヤ統計値の分散測定によって、最終的な解の品質を報告することができる。
【0072】
(ベイズ推定器)
一実施形態では、情報が引き出される、選択されたRFIDタグ用の信号は、複数のRFIDタグの他の1つの空間位置に対する、選択されたRFIDタグの空間位置に基づいて、複数のRFIDタグによる信号から選択することができる。すなわち、所与の呼出空間に対して、図3に示すように、また、一例として、呼出空間3−8が挙げられるように、タグの特定の個体群のみが照射される。タグの位置を推定する場合、AOA、励振ノードの位置及びセンサ又はタグの個体群の既知の位置、多経路伝播環境、測定周波数、並びにアレイ応答(ビームパターン)等のすべての利用可能な情報に基づいて、RFIDタグの位置の確率密度関数をモデル化するのにベイズ法が使用され、測定値及び他の任意の補助情報が、予測的(apriori)ベイズモデルにさらに導入される。一態様では、システムは、3次元ユークリッド空間(x,y,zの位置、すなわち、高さ、ロール、ヨー)内の位置を再帰的に推定する。
【0073】
各アンテナ素子で測定された(j番目のタグに対する)観測ベクトルYjtは、それぞれ実数及び複素数部分を有する、各アンテナ素子ごとの、離散的な複素数値の受信信号サンプルrt、又は等価物として同相及び直角位相成分In、Qnと、呼出空間ごとの、既知のエキサイタ位置(x、y、z)、ビームフォーマ係数a、信号対ノイズ比(SNR)推定、ゲイン設定α、ソフトメトリック(soft metric)、外部情報β(In、Qn)、及びパケット(例えば、RN16+EPCコード)とで構成される。使用されるモデル測定は時間t、Yjtの単一ベクトルである。観測されたL次元ベクトルYjtは、タグ位置の3次元ユークリッド空間をL次元観測可能ベクトルに写像する(R3→RL)ことで得られると仮定する。確率分布P(xjt|Yjt)を推定する様々な手法が再帰的に実施され、xjtは、3次元内のj番目のタグの位置座標である。この密度の条件付き期待値(すなわち、平均値E(x|Y))は、タグの位置又は等価物が、このシーケンスの推定と同形であることに相当する。
【0074】
ここで図22を参照すると、全体空間又はボリューム12−1に対して、リーダによって作動されたエキサイタは、12−4で図示したRFID位置推定を作成する。読み取りが複数回繰り返された場合の、複数のRFIDの位置推定が、12−5で図示されている。円錐のピーク部又は図心により、RFIDの位置が特定される。円錐の周囲部分により、特定された位置の精度又は確度が特定される。例えば、より急峻なピーク12−5aは、RFIDタグの非常に正確な位置を提示し、一方、より平坦なピーク12−5bは、RFIDタグのあまり正確でない推定位置を提示する。
【0075】
送信機/エキサイタ(11−2)の位置が既知の場合、タグ位置の推定問題を、12−1に示す立方体内のタグの位置を見つけることに変えることができる。仮説検定を利用して、各タグの位置に対して、立方体を12−2に示すようなより小さい立方体に量子化することができ、各位置は球体12−3として処理される。呼出空間内にあるタグの個体群の位置に関する確率分布は、2次元(x、y)ユークリッド空間で既知の平均及び分散を有する2次元ガウス密度とみなすことができる。円に投影された球体も、それぞれ、グラフ12−5に示すように、2次元(x、y)ユークリッド空間で既知の平均及び分散を有する2次元ガウス密度とみなすことができる。3次元ユークリッド空間の3次元球体12−3の場合、(x、y、z)次元の各点は、3次元ガウス密度に対応している。このように、後述する特定の種類のアルゴリズムに対して、そのアルゴリズムを、グラフ12−5で示したような既知の事前確率密度モデルで初期化することができる。
【0076】
ここで図23〜25を参照すると、RFIDタグの位置推定をさらに改良し、かつ/又はさらに正確にする例示的な処理及び定式化が提示されている。下記において、観察されたサンプル空間Ω={Yjt,∀t,j}が示されている。P(xjt|Yjt)は、過去のすべてのAOA測定に基づいた、時間tでの確率分布関数位置を表す。ベイズモデルは、再帰的推定p(xjt|θ)に対して確率的枠組みを提供し、ベクトルθ=(θj…θt)は、到着ベクトルの角度を規定する。
【0077】
室内伝播環境では、主要な信号の方向は、一部の例において、直接経路ではなく、反射した信号によることがある。この状況に対処して、信号源の実際の位置に関する誤った推定を回避する。タグの位置{xt;t∈N}、xt∈X(tは反復指数を表すこともある)は、初期分布がp(x0)でマルコフの関係P(xt|xt−1)の一次マルコフ過程としてモデル化される。観測された一連のタグ信号Y1∈Ωは、複素数及び実数値の測定結果をともに含むことができ、各アレイ要素に対してリーダで行われる推定が図23に示されている。
【0078】
j番目のタグからの観測ベクトルは、Yjt=(ytj,ytj−1,ytj−2,…,Yj0)で示され、各ytjはベクトルである。一態様でのP(xjt|Yjt)確率密度関数は、2つの段階、すなわち、予測段階及び更新段階で再帰的に得られる。xtを予測するのに使用される、時間ステップtでの事前確率密度関数(見やすくするために、jに依存する部分は除いている)は次式である。
【数11】
ベイズの法則による更新は次式である。
【数12】
上式で、P(yt|yt−1)=∫P(yt|xt)P(xt,|yt−1)dxtであり、初期状態はP(x0|Y0)である。式(8)は、P(xt|Yt)=WtP(xt|Yt−1,)とみなすことができ、重みは、次式によって定義される。
【数13】
【0079】
再帰的推定P(xjt|Yjt)のための複数の手法が、各種態様で提供される。図24は、逐次モンテカルロ法の一般形態の各ステップを示している。条件付き密度関数P(xjt|Yjt)は、繰り返しごとに更新され(14−1)、重みは、14−2で、前の重み値の(後で定義される)関数と、場合によっては(すぐに定義される)ランダムパラメータpとに基づいて更新される。予測ステップ14−3は、P(xjt+1|Yjt)を計算し、次いで、サンプル空間から新たなサンプルYjt+1を得ることを含む。この最後のステップは、リサンプリングと呼ばれる。
【0080】
1つのリサンプリング手法は、点状近似を用いて密度を評価することである。古典的モンテカルロ法を使用して、
【数14】
によるヒストグラム平均化を適用することでxtの経験分布が与えられ、この場合に、{x(i)}は、確率分布P(x)のランダム源から抽出される。一組の測定が行われるたびに、前の測定のそれぞれの尤度を推定することができる。
【0081】
様々な態様によれば、システムは、前に説明したように、複数の問題解決手段を利用する。図25は、RFIDタグ/センサの位置を見つける様々な態様による一般手法を示している。最初に複数の問題解決手段候補があり、各問題解決手段セット自体は、15−1で、Ωからサンプリングすることにより、15−2に示すように尤度を推定し、確率密度P(xjt+1|Yjt)を計算するために、多くの選択物の1つに適用される。棄却サンプリング、重要度サンプリング及びサンプリング・インポータンス・リサンプリング(SIR)、焼き鈍し、粒子フィルタ、並びに無香変換の各手法などの、15−3に示した様々な技術を使用することができる。これらの各技術は、経時的にリサンプリングする際に重みシーケンスを計算するのに、若干異なる手法を利用し、リサンプリングは、すべての事例でΩからN回復元することで行われる。
【0082】
(サンプリング・インポータンス・リサンプリング推定器)
再帰的SIR手法は、以下の通りに行われる。
1.t=0をセットし、M個のサンプルxio∈Ω(i=1,…,M)を得る。
2.重み更新:尤度の重みwi=P(yt|xjt)(i=1,…,M)を計算する。
3.
【数15】
によって重みを正規化する。
4.リサンプリング:離散セット
【数16】
【数17】
からN回復元して、新たなセット
【数18】
、i=1,・・・,Nを生成する。
5.予測:各リサンプリング状態を単独でk回予測し、ここで
【数19】
、i=1,・・・,N、m=1,・・・,kである。
6.ステップ2に行き、t=t+1として繰り返す。
【0083】
何回か繰り返した後、ただ1つの候補状態ベクトル値が存在する縮退解を回避するために、エキサイタに近いRFIDタグの予測された位置を囲む既知の分布を使用して、リサンプリングステップを修正することができる。各座標の重要な関数として、密度の平均m及び分散σ2が、エキサイタの位置に修正項(エキサイタとエキサイタによって照射される最も遠いタグとの間の中間範囲)を加えたものに等しく、分散σ2が3次元ユークリッド空間内の楕円の直径の1つに等しい、独立して等しく分散されたガウス分布密度N(m,σ)が選択される。
【0084】
この場合に、重要度サンプリングは、提案分布q(xt|Yt)=q(xt|xjt−1,Yt)q(Xt−1|Yt−1)からサンプルを生成することで行われる。粒子雲の縮退を求めるこのバージョンでは、重要度サンプリング手法の相対効率は、重要サンプリング推定値の分散と、完全なモンテカルロシミュレーションが可能であった場合の推定値の分散との間の比と関連がある。その量は、
【数20】
により推定することができ、Nthreshは、リサンプリング手法が粒子セットに適用される、事前に選択された閾値である。
【0085】
(拡張粒子フィルタ推定器)
一実施形態では、拡張粒子フィルタ手法は、N個の入力又はサンプルの生成又は選択から始まる(t=0及び
【数21】
をセットし、q(xo|yo))からN個のサンプルxi0∈Ω(i=1,…,N)を得る)。次いで、各サンプル(i=1,…,N)に対する重みを次の関数に従って計算し、
【数22】
次の式に従って正規化する。
【数23】
【数24】
相対効率が前もって選択された閾値
【数25】
よりも大きい場合、リサンプリングをとばす。そうでなければ、離散セット
【数26】
【数27】
からN回復元して新たなセット
【数28】
、i=1,…,Nを生成することによりリサンプリングを行い、重みを
【数29】
にリセットする。次いで、状態又はリサンプリングした状態のそれぞれに対して、予測を独立的にk回行い、ここで、xjt+1∝q(xt+ι|xjt,Yt+l)(i=1,…,N、m=1,…,k)である。次いで、次のセット(t=t+1)に対して処理を繰り返し、新たなサンプルに対する重みを計算する。
【0086】
(メトロポリス−ヘイスティング・アルゴリズム推定器)
メトロポリス−ヘイスティング・アルゴリズムは、提案分布を使用してサンプルを生成する場合に、観測されたシーケンス及び推定に対してマルコフ連鎖モデルを使用し、候補サンプルzは、提案q(z|x)から抽出され、次式(p、q、πは異なる分布になる)によって与えられる確率で受理される。
【数30】
マルコフ連鎖が新たなデータセットに移ったときに、候補は、受理されるか、又は棄却され、棄却物は、状態空間内の現在のデータ点でマルコフ連鎖から離れる。π(x)=p(x|y)が選択された場合、受理確率は、次式のように単純になる。
【数31】
メトロポリス−ヘイスティング・アルゴリズムは、下記の通りに要約される。
1.t=0をセットし、x0をランダムに又は確定的に選択する。
2.z〜q(z|xt)及びu〜U(0,1)をサンプリングする。
3.受理確率を計算する:α(x,z)。
4.予測:u≦a(x,z)ならば、新たなサンプルxt+1=zを受理し、そうでなければxt+1=xtとする。
5.ステップ2に行き、t=t+1として繰り返す。
ステップ4において、システムの状態に対してエネルギ又は適合度関数を導入する統計力学的手法を採用することにより、この場合に、点を表すxtの位相空間内の確率密度がe−βE(Xt)に比例し、ここで、β=1/kTであり、Tは、ケルビン絶対温度であり、kは、ボルツマン定数1.38×10−23J/ケルビンである。1つの状態から別の状態への遷移によるエネルギ又は適合度の改良は、エネルギが各反復で低減されるような2つのエネルギ状態の差、すなわち、ΔE=E(xt+1)−E(xt)で特性化することができる、すなわち、状態の遷移確率は、
【数32】
であり、ここで、
【数33】
である。初期状態T0≫Tn<Tn−1<Tn−2で、各反復においてデータセットに対してTn<Tn−1<Tn−2となるように、さらなる制限が適用されて温度Tを単調減少させる場合に、非周期的で既約のマルコフ連鎖の状態に従う特性を有する解の位相空間の軌跡を利用することにより、解がほぼ最適な推定値に収束することが予測される。
【0087】
(無香変換推定器)
無香変換は、FRIDタグの位置を推定する他の手法である。共分散マトリクス
【数34】
(ここで、
【数35】
は、ランダム変数xの平均値を表す)を定義することにより、N次元ランダム変数の分布を平均及び共分散を用いて近似する問題に対処する。アフィン変換
【数36】
が定義され、この場合に、
【数37】
は、特性
【数38】
を有するXのマトリクス平方根である。したがって、無香変換手法は、以下の通りに要約される。
1.初期化
【数39】
2.定義
【数40】
3.時間更新
【数41】
4.重み更新
【数42】
λは、複合スケーリングファクタであり、na=nx+nv+nn、Qはプロセスノイズ共分散である。Rは、測定ノイズ共分散マトリクスである。
【0088】
(微分展開に基づく推定器)
RFIDタグ位置の発見を最適化する別のレイヤでは、あり得る解の(単一解ではなくて)個体群から始める。最初の個体群は、可能な限り広いエキサイタ領域の空間にわたるように考慮して選択される。一態様では、ランダムな位置すべてに対して均一な確率分布が最初に利用される。予備解が利用可能な場合、最初の個体群は、正規分布したランダム偏差を基準解xnominalに加えることにより生成されることが多い。微分展開(DE)は、試験的なパラメータベクトルを生成する手法を提供する。DEは、2つの個体群要素間の重みづけした差分ベクトルを第3の要素に加えることにより、新たなパラメータベクトルを生成する。得られたベクトルが所定の個体群要素よりも低い目的関数値をもたらした場合、新たに生成されるベクトルが、次の生成時に比較されて、そのベクトルに取って代わる。ベクトルの比較は、上記の生成プロセスの一部とすることができるが、そうでなくてもよい。さらに、最良のパラメータベクトルxBest,Gは、最小化プロセス中に形成される進展の流れを維持するために、生成Gごとに評価される。ランダム偏差を生成するのに、個体群から距離及び方向情報を抽出することにより、収束解が得られる。試験ベクトルは、各生成
【数43】
ごとに導入され、r1、r2、r3は、1とLとの間でランダムに選択され、Lは、引き続いて起こる生成数であり、展開全体にわたる固定パラメータであり、μは、1つの生成から他の生成への差分変化のステップサイズを制御する。この処理は、図26に要約されており、16−1で、可能解個体群から始めて、次いで、16−2で、ある種の適合度計算を行い、16−3で、個体群を選別及び変更し、16−3で停止規則をチェックする。
【0089】
(蟻の巣(ant colony)最適化を基本とした推定器)
他の様々な実施形態では、解の個体群を考慮し、いくつかの選択されたメトリックによって各解の可能性を更新することで、他の非線形確率的最適化アルゴリズムが利用される。頻繁に使用され、蟻の巣最適化と呼ばれ、フェロモンと呼ばれるメトリックは、次式によって定義される。
【数44】
反復tのとき、(次の1つの解ではなくて)N個の可能解と次のk個の解とを考慮し、初期条件τij←(1−p)τij、∀(i,j)∈Aで解メトリックτij←τij+Δτkをセットして、解の確率jを計算する。Nkiは、i番目の反復のk番目の解の近傍にある解の個数を示す。このように、起こり得る縮退問題が、解空間で複数の解を同時に考慮することにより、アルゴリズムレベルで回避される。これは、各解を平面グラフ内の単一の点とみなし、ここで説明した解メトリックによってグラフ内の最良経路を見つけることにより、上記のアルゴリズムのいずれかに適用することができる。この手法は、いわゆる「遺伝子プログラミング」又は「蟻の巣最適化」と同様である。
【0090】
(停止規則)
様々な態様によれば、提示された手法には、停止規則の形態又はタイプに関する特定の制約が何らない。ここで簡潔にするために、いくつかの異なる停止規則が、本発明の様々な態様に従って使用される通りに提示される。ここで、距離は計算されたd(xt,xt+1)、例えば、|xt−xt+1|であり、d(xt,xt+1)≪εの場合、アルゴリズムは停止される。吸引領域は、A={xt,d(xt,x*)≪ε}によって定義され、x*は最適解を示し、εは小さい正数である。メトロポリス−ヘイスティング法等の離散マルコフ連鎖手法を利用するアルゴリズムの場合、吸引領域に達するように、遮蔽のない状態空間の一部が最小化される。この手法では、Ωの各状態を訪問するのに計数が使用され、そのため、状態を訪問するたびに計数が増分される。停止規則は、
【数45】
となり、さらに、距離基準が満たされるようなものとされる。
【0091】
(垂直方向にラックを並べた棚用途での位置推定)
本発明の最後の用途が図27に示されている。図は、在庫品を保管するのに使用される、一連の隣接する、垂直方向にラックを並べた棚を詳細に示している。そのような棚は通常、在庫品を保管する倉庫内にある。現状技術では、在庫品は、多くの場合バーコード読み取り装置を用いて、棚の1つの部分から他方に移動しながら、物品の一続きの識別名を棚のx、y、z位置と共に記録することにより、手動で計数しなければならない。対照的に、本明細書全体にわたって、様々な実施形態で説明したRFID位置特定システムは、機械又は人間が1つの領域から次の領域に移動することなく、棚に保管された物品に関する状態を連続して知らせることができる。これは、一実施形態において、通路間の領域の高い位置に、無線励振点を規則正しく動かないように配置することにより達成される。粒子位置特定手法と共に、励振出力制御及び/又はエキサイタ当たりのRFIDタグの読み取り率を利用して、垂直方向にラックを並べた保管等の事例で物品の位置を特定することができる。特に、エキサイタ当たりの、及び励振出力レベル当たりのRFIDタグの読み取り率により、RFIDタグの位置を特定するためのz方向の次元の情報が得られる。一方、当然のことながら、商品の垂直位置(z)が既知の定数として事前に分かっている、垂直方向にラックを並べた保管の特別な例として、(商品の床置きとしても知られる)床高さでの保管もある。当然のことながら、物品同士を単に重ねて置いた場合、やはり、垂直方向にラックを並べた保管の特別な場合となる。この場合に、物理的な棚が「Z方向」の次元で物品を分離することはなく、正確に言えば、物品の高さが重ねた順番によって線引きされる。
【0092】
上記の説明は、本発明の具体的な実施形態を多く含むが、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではなく、むしろ本発明の一実施形態の例として解釈すべきである。したがって、本発明の範囲は、例示した実施形態ではなくて、添付の特許請求の範囲及びそれの均等物によって確定されるべきである。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2008年4月14日に出願の米国仮特許出願第61/124,294号、及び2008年4月14日に出願の米国仮特許出願第61/044,904号の利益を主張するものであり、これら特許の開示は、本明細書にすべて記載されたのと同様に、参照により本明細書に援用するものとする。
【背景技術】
【0002】
本願は、受動(パッシブ)又は能動(アクティブ)センサの位置の推定及び追跡に関し、特に、フェーズド・アレイ・アンテナ・システム及び無線自動識別(RFID)システムを使用したセンサ及び/又はRFIDタグの位置の特定に関する。
【0003】
RFIDシステムは、通常、リーダ/質問機システムで処理される一組の固定又は可動RFIDタグを従来から含む。各センサは、受動又は能動、すなわち、電池付き又は電池なしとすることができる。従来のシステムでは、リーダ及びRFIDタグは、通常、近接していることが必要であるので、タグはリーダアンテナと近接して動作することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のRFIDシステムで利用できる送信距離は限定されているため、自動化された工場環境及び/又は室内無線環境での使用が限定される。そのようなシステムは、意図した動作範囲内であっても、干渉及び衝突のために信頼性が低い場合が多い。
【0005】
典型的なRFIDシステムはまた、領域の受信可能範囲を十分なものにするには、多数のベースステーションが必要とされるので、極端に広い領域を対象とするようには設計されない。これはきわめて高価であり、このため、法外な費用がかかることがある。また、使用率の高い領域、例えば、ドックドアを選択して受信可能領域を限定することにより、広い領域を補償すると犠牲が出る。さらに、そのようなシステムは、環境の規模及び空間の複雑さのために、多くの場合、RFIDの位置を正確に特定できない。したがって、当技術分野における上記の障害及び欠点を解決するRFIDシステムが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、RFIDタグ/センサの位置は、単一及び複数の読み取り点の両方を使用して求められる。
【0007】
一実施形態では、1又は複数の無線自動識別(RFID)タグの位置を特定する方法は、エキサイタ(exciter)により少なくとも1つのRFIDタグに照射するステップと、照射された少なくとも1つのRFIDタグから情報信号を複数の受信アンテナにより受信するステップと、複数の各受信アンテナで受信した少なくとも1つの被照射RFIDタグからの受信情報信号に対する位相微分を求めるステップと、受信情報信号の求めた位相微分に基づいて、少なくとも1つのRFIDタグの位置を特定するステップとを含む。また、一実施形態では、その方法は、位相微分対周波数微分の比に基づいて、少なくとも1つのRFIDの位置を特定することをさらに含む。
【0008】
別の実施形態では、1又は複数のRFIDの位置を特定するための無線自動識別(RFID)システムは、少なくとも1つのエキサイタ及びリーダを含む。少なくとも1つのエキサイタは、複数のアンテナを有し、複数のアンテナのうちの少なくとも2つのアンテナを介して呼出信号を選択的に送信し、少なくとも1つのRFIDタグから、複数のアンテナのうちの少なくとも2つのアンテナとは異なる、複数のアンテナのうちの1つのアンテナを介して、受信情報信号を選択的に受信するように構成される。リーダは、少なくとも1つのエキサイタと通信し、少なくとも1つのエキサイタを作動させるように構成される。リーダは、受信した情報信号の位相微分に基づいて、少なくとも1つのRFIDタグの位置を特定する。
【0009】
さらに別の実施形態によれば、1つ又は複数のFRIDの位置を特定する無線自動識別(RFID)システムは、少なくとも1つのRFIDタグ、アンテナアレイ、送信機及びリーダを含む。アンテナアレイは、少なくとも1つのRFIDタグに照射するように構成される。送信機は、アンテナアレイに接続され、アンテナアレイを作動させて、特定の時間枠及び特定の空間で、少なくとも1つのRFIDタグに対して繰り返し照射させるように構成される。リーダは、送信機と通信し、少なくとも1つのRFIDタグに繰り返し照射することにより受信した情報信号に基づいて、確率モデルを作成するように構成され、作成した確率モデルを粒子フィルタに適用して、適用した粒子フィルタの結果に基づいて、少なくとも1つのRFIDタグの位置を求める。
【0010】
さらなる実施形態では、1又は複数の無線自動識別(RFID)タグの位置を特定する方法は、幾何学的特徴を互いに共有するように、少なくとも1つの受信機及び少なくとも1つの送信機を配置するステップと、少なくとも1つの送信機によって照射された少なくとも1つのFRIDタグからの受信情報信号に基づいて、位置特定用測定値を求めるステップと、確率モデル及び求めた位置特定用測定値を利用して、少なくとも1つのRFIDタグの位置を推定するステップとを含む。
【0011】
説明した方法及びシステムをより完全に理解するために、ここで、添付の図面に関連してなされる以下の説明を参照するが、同じ参照番号は同じ部品を表す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の様々な態様に係る、エキサイタ呼出空間と同様の2つのリーダのためのTX及び受信可能領域を示す分散エキサイタ・アーキテクチャの概念図である。
【図2】図2は、本発明の様々な態様に係る、エキサイタ呼出空間と同様の2つのリーダのためのTX及び受信可能領域を示す分散エキサイタ・アーキテクチャの概念図である。
【図3】図3は、本発明の様々な態様に係る、エキサイタ呼出空間と同様の2つのリーダのためのTX及び受信可能領域を示す有線接続された(単一の)、分散エキサイタ・アーキテクチャ・システムの図である。
【図4】図4AからBは、本発明の様々な態様に係る、エキサイタ・レイアウト及び例示的な周波数プランを説明する図である。
【図5】図5は、本発明の様々な態様に係る、受信した信号から到着角度を推定するためのアルゴリズムを示す図である。
【図6】図6は、本発明の様々な態様に係る、RFIDタグ、干渉源及びリーダ(例えば、送信及び受信連鎖)を示すリーダシステムのブロック図である。
【図7】図7は、本発明の様々な態様に係る、アンテナアレイ、RF/IF、信号処理及びシンセサイザ・サブシステムを示すリーダのブロック図である。
【図8】図8は、本発明の様々な実施形態に係る、リーダアレイ及び単一励振点トポロジーを説明する図形表現である。
【図9】図9Aから9Cは、本発明の様々な実施形態に係る、RFIDタグの位置を求めるための楕円表現を提供する図形表現である。
【図10】図10は、本発明の様々な実施形態に係る、4ポート励振ノードのブロック図である。
【図11】図11は、本発明の様々な実施形態に係る、4ポート励振ノードの詳細なブロック図である。
【図12】図12は、本発明の様々な実施形態に係る、リーダの分散アレイ及び単一励振点トポロジーを説明する図形表現である。
【図13】図13AからDは、本発明の様々な実施形態に係る、シャンデリア構成における4ポート励振ノードを説明する図形表現である。
【図14】図14AからDは、本発明の様々な実施形態に係る、オフセット・リニアアレイ構成における4ポート励振ノードを説明する図形表現である。
【図15】図15AからFは、本発明の様々な実施形態に係る、6つの異なるRFIDタグの位置に対するオフセット・リニアアレイ構成における4ポート励振ノードを説明する図形表現である。
【図16】図16は、本発明の様々な実施形態に係る、任意の又は不規則な構成において、一般化された多ポート励振ノード、又はノードのアレイを説明する図形表現である。
【図17】図17は、本発明の様々な実施形態に係る、RFIDタグの位置を特定する粒子フィルタ位置処理のフローチャートである。
【図18】図18は、本発明の様々な態様に係る、リーダにより行われる位置推定処理の概要を示すフロー図である。
【図19】図19は、本発明の様々な態様に係る、リーダにより行われる位置推定処理の概要を示すフロー図である。
【図20】図20は、本発明の様々な態様に係る、2次元実装における単純化された4素子アレイを図解している。
【図21】図21は、本発明の様々な態様に係る、RFIDタグ及びアンテナを示すDOA解析のための解析セットアップを図解している。
【図22】図22は、本発明の様々な態様に係る、既知の手段を有する2次元ガウス密度とみなされる呼出空間及び2次元(x,y)ユークリッド空間の分散の図である。
【図23】図23は、本発明の様々な態様に係る、マルコフ連鎖仮定を説明する図である。
【図24】図24は、本発明の様々な態様に係る、逐次モンテカルロ法の一般的な形式のステップを示すフロー図である。
【図25】図25は、本発明の様々な態様に係る、RFIDタグ/センサの位置を探索するための一般解のステップを示すフロー図である。
【図26】図26は、本発明の様々な態様に係る、微分及び遺伝子展開処理のフローチャートである。
【図27】図27は、垂直方向にラックを並べた棚に保管された在庫品の自動恒久的な用途を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に図面を参照して、1つ又は複数の無線周波数識別(RFID)タグの位置を特定するシステム及び方法が説明される。そのシステムは、RFIDタグの位置に関する観測結果を得るために、送信機及び受信機の様々な幾何学的配置を利用する。その観測結果を、観測されたRFIDタグの位置の推定値を生成できる任意の各種推定器に供給することができる。
【0014】
RFIDシステムの送信機及び受信機の幾何学的配置は、システムがRFIDタグの位置を推定できる精度に影響を及ぼす。本発明の実施形態に係る様々なアーキテクチャが説明される。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のエキサイタ(exciter)は、RFIDタグに照射する呼出信号を送信し、反射した信号は、複数の受信機によって受信される。各受信機は独立した受信機とすることができ、及び/又は単一の受信機システム、もしくは多ポート・エキサイタ・システムに接続された、独立した受信機アンテナとすることができる。いくつかの実施形態では、多ポート・エキサイタ・システムは、エキサイタ及び受信機の両方として機能する。アンテナの1つは、呼出信号を送信するように選択的に構成され、残りのアンテナは、RFIDタグで後方散乱した信号を受信するように構成される。いくつかの実施形態では、多ポート・エキサイタは、RFIDタグからのデータを読み取る能力を有さず、単に、RFIDタグの位置を特定するのに役立つ観測を行う能力を有する。
【0015】
RFIDの後方散乱プロセスの不安定性のために、位置を推定するときに選択される観測可能量により、得られる推定値の精度が影響を受けることがある。様々な実施形態では、システムは、被照射RFIDタグからの後方散乱信号の位相差を観測する。いくつかの実施形態では、位相差は、範囲情報をもたらすために様々な送信周波数で観測される。位相差対周波数差の比は、群遅延とも呼ばれる。多くの実施形態では、システムは、様々なエキサイタが様々な呼出空間に照射したのに応答したRFIDタグの読み取り率を観測する。読み取り率は、タグが有した読み取られる機会の数に対する比としての、タグが読み取られた回数である。きわめて感度の高い受信機を利用するシステムでは、読み取り率は、RFIDからエキサイタまでの距離を示すと考えることができる。そのようなシステムでは、エキサイタによって作動された大多数のタグが読み取られる。したがって、読み取り率は、送信機によるRFIDタグの作動率をほぼ示す。
【0016】
下記にさらに説明するように、本発明の態様に従い、1又は複数の観測可能量に基づいて位置を推定するために、様々な技術を使用することができる。システムの複雑さと、所与の空間にRFIDタグが多数存在し得ることを考慮すると、RFIDタグの位置を統計学的にモデル化することにより、空間内のそれぞれのRFIDタグに対する正確な位置を推定することができる。したがって、様々な実施形態では、RFIDタグの多数の観測結果を使用して、確率分布モデルを作成する。1又は複数のアルゴリズム及び/又はフィルタを使用して、モデルをさらに精密にし、RFIDタグの位置を求める。いくつかの実施形態では、粒子フィルタを利用して確率分布モデルを作成し、これをさらに精密にする。他の実施形態では、種々の他の技術を使用して、観測可能量を使用して得られる位置推定をさらに精密にすることができる。
【0017】
(システム・アーキテクチャ)
所与の空間内のRFIDタグの位置を特定する能力は、RFIDタグに呼出信号を送信するのに使用されるアンテナと、RFIDタグで後方散乱した信号を受信するのに使用されるアンテナとの位置によってほぼ決まる。送信機能と受信機能とが切り離され、独立したエキサイタ及び受信機が、それらの機能を実行できる幾何学的配置を含む、様々な幾何学的配置を本発明の実施形態に従って使用することができる。
【0018】
「分散エキサイタ・ネットワークを使用したRFIDシステム(RFID Systems Using Distributed Exciter Network)」と題し、2007年3月23日に出願された、同時係属出願中の米国特許出願第12/054,331号明細書では、受動RFIDタグを処理する受信及び送信システムを分離することにより、RFIDシステムの性能及び容量が強化され、その特許の開示は、本明細書にすべて記載されたのと同様に、参照により援用される。この機能性は、RFIDタグ/センサの個体群を、図1〜2に示すように、一組の呼出空間(1−16、1−32、1−38、1−44、1−40、1−28、1−24、1−48、1−54、1−56)に分解することにより実現され、エキサイタは、各ターゲット呼出空間(1−18、1−34、1−36、1−46、1−42、1−30、1−26、1−58、1−52、1−50)ごとに置かれている。
【0019】
各呼出空間の大きさは、エキサイタからの総放射出力を制御することで調整することができる。一方、当然のことながら、RFIDシステムの放射出力は、通常、法規によって制限され、エキサイタの呼出範囲を、例えば、20〜30フィートに限定する。放射出力制御は、RFIDリーダ(1−2)のエキサイタ出力管理及びゲイン・コントローラ・サブシステム(3−18、3−30)を通して行われる。各呼出空間の大きさを調整するのに加えて、所望のレベルの指向性をもたらすように各エキサイタ送信アンテナのタイプを選択し、それによって、ターゲット呼出空間に向けたビーム幅を制御することで、システムの全体性能をさらに改善することができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、リーダは、ビームを形成できるフェーズド・アレイ・アンテナを含む。リーダ受信フェーズド・アレイ・アンテナ・ビーム(1−4)は、特定の呼出空間に集中する(1−17、1−21)ように、又は幅広いビーム(1−20)として形成することができる。分散エキサイタとも呼ばれる送信アンテナのネットワークは、有線(2−24、2−30、2−36、2−12、2−56)又は無線接続で制御することができる。コントローラからエキサイタへの送信「帰路信号」は、エキサイタ・モジュールからタグに出力される所望の波形を生成するのに必要な信号特性及びパラメータをすべて内包する。図1及び図2はまた、ローカル・エリア・ネットワーク(1−11、2−50)を介してリーダに接続されたRFIDアプリケーション管理及び演算サーバ(1−7、2−51)を示している。
【0021】
図3は、受信システム(3−2)、受信アンテナアレイ(3−4)、及び、一態様では、同軸ケーブル(3−10、3−9、3−16、3−22、3−26)を介してシステムに接続された分散エキサイタ(3−6、3−14、3−18、3−24、3−30)を示す分散エキサイタ/送信機RFIDシステムのレイアウトを示している。各エキサイタの呼出空間及び送信出力は、中央ユニット(3−2)によって制御される。図3では、様々な大きさのエキサイタ呼出空間(3−8、3−15、3−20、3−23、3−28)が示されている。受信アレイの全受信可能領域(3−11)も示されている。各呼出空間(3−8、3−14、3−20、3−23、3−28)は、受信アレイが対応可能なビーム数に応じて、順次か、又は同時に使用することができる。
【0022】
システム(3−2)内のコントローラ(3−30)は、各エキサイタが作動する時間、周波数、及び空間の大きさについて計画する。S/T/FDM(空間、時間、及び周波数分割多重化)用のスケジューラは、ターゲット呼出空間内のすべてのタグを読み取る確率を最大限にするために、最適化アルゴリズムを利用する。コントローラは、エキサイタごとの周波数チャネルの使用の予定を決めるのに、(規制上の要件を満たしながら)周波数ホッピングを利用することができる。図4A及び4Bは、エキサイタ・レイアウト(4−6)の例と、割り当てられた周波数チャネル(4−8)を示す時系列(4−4)とを示している。時系列(4−4)は、900MHzのISM帯域(4−10)で周波数ホッピングしたチャネライゼーションを示している。各時系列で、異なるホッピング・シーケンスにより、各作動中のエキサイタ(4−8)に対して、異なる、一連のランダム周波数が割り当てられる。図14に載せたアルゴリズムは、この動作を管理し、最適化する。スケジュールに従って様々なエキサイタが作動され、RFIDシステムは、RFIDタグに関する観測結果を収集することができる。多くの実施形態では、スケジュールは、観測結果の収集中に、多数のエキサイタによる干渉を防止する重要な役割を果たす。さらに下記に説明するように、スケジュールで様々な励振周波数を利用できることで、RFIDシステムが、様々なRFIDタグの群遅延に関する観測結果を収集できるようになる。
【0023】
再度図1を参照すると、無線エキサイタ・レイアウト及び展開システムが示されている。図示した実施形態では、2つのRFIDシステム(1−2、1−14)が設けられている。各システムは、独立した受信機(1−4、1−12)及び送信アンテナ(1−6、1−13)を有する。送信アンテナは、送信リンクをエキサイタに放射し、一方、受信アンテナは、各エキサイタの呼出空間内のタグから信号を受信する。一態様では、送信リンクは、エキサイタ識別(ID)番号、コマンド、制御及び管理の各情報等の追加情報を搬送する。図は、2つのシステムの受信可能領域(1−22、1−20)を示している。図に記載したように、システムは、受信呼出空間(1−24、1−48、1−28、1−40、1−54、1−56、1−44、1−16、1−32、1−38)に対応している。受信可能領域(1−22、1−20)間の重なった領域は、受信アレイのビーム形成と、エキサイタ動作の周波数又は時間との共同作用により管理される。2つのシステムは、図2の有線エキサイタ・システムと同様な方法でLAN(1−3、1−8、1−9)に接続され、無線エキサイタ管理サーバ(1−7)は、LANによって2つのシステム(1−2、1−14)と接続し、エキサイタの制御、命令、連係及び校正、さらには、呼出空間の最適化を含む、エキサイタの動作を制御する。
【0024】
(RFIDタグの呼出)
センサ又はFRIDタグは、一定の時間間隔の間に何度でも呼出を受けることができる。これらの各呼出に対して、アレイに作用を及ぼす信号を組み合わせて、RFIDタグによって送信された一連の符号を検出するための単一の(ビーム形成された)信号を形成することによって、RFIDタグに組み込まれたセンサデータ又は情報を検出することができる。各呼出期間は、帯状のRFIDタグからの複数の(例えば、RN16及びEPCパケットと呼ばれる2つの)パケットで通常構成される。これらのパケット内のペイロードは通常、一時アドレス(例えば、RN16タイプのパケット内の16ビット乱数)を含み、確認応答の後、次いで、タグは、その情報内容(例えば、電子製品コード(EPC))を含むパケットを転送することができる。
【0025】
各呼出期間中に、様々な周波数で多数のRFIDタグ呼出信号を送信することができる。様々な周波数を使用してタグに呼び出すことで、タグのさらなる観測により、受信信号の位相及び振幅軌跡を経時的に正確にモデル化し、信号の散乱を送信信号の多重反射で特性化することが可能になる。
【0026】
(呼出の使用により、位置の推定が可能になることの総括)
呼出期間中の処理作業には、それらに限定するものではないが、各アンテナ素子からの信号と基準信号との間の相対的位相差を評価し、そのような各アンテナ素子ごとの調整した位相遅延差に基づいて、各アンテナ素子からRFIDタグまでの相対範囲を導出することを含めることができる。次いで、各呼出期間の集合体を、「サンプル空間」を形成する単一のデータベースとして処理することにより、RFIDタグの位置の推定に対処することができる。複数の周波数で同じRFIDタグを読み取ることで、「順次測距」による信号源の範囲(タグから読み取り点までの距離)の推定が可能になることにも留意されたい。単一のリーダ(読み取り点)だけを使用する用途の場合、リーダシステムは、「三角測量をする」必要なく、位置を推定することができる。
【0027】
信号を処理することには、他の各アンテナ素子からの信号と基準信号との間の調整された位相差を導出し、各アンテナ素子で、RFIDタグからの受信信号の到着相対方向を導出することを含めることができる。複数の読み取り点での単一のRFIDタグからの信号の到着方向を使用して、RFIDタグ位置の推定をさらに改善することができる。これは、各読み取り点にある各アレイ要素で受信した信号から得られた到着情報の相対方向を組み合わせることで行うことができる。複数の呼出サイクル及びアレイを使用することにより、読み取り点の数量が時間的にそれぞれ多重化されて、タグの位置の推定が全体的にさらに改善される。
【0028】
複数の読み取り点を用いた反復作業には、タグの位置の確率分布を形成するために、複数の繰り返しから得られたRFIDタグ情報を組み合わせ、信号源から各アンテナ素子に至る信号の到着方向が多経路であることの影響を評価し、これを軽減するために、アルゴリズムを適用することを含めることができる。
【0029】
図5に示した、システム内で受信信号から到着角度を推定するアルゴリズムは、2007年6月28日に出願された、同時係属出願中の米国特許出願第11/770,712号明細書で対処されており、この特許の開示は、参照により上記に組み込むものとする。その出願では、各アンテナ素子からの受信信号の相対位相及び振幅を使用してAOA(到着角度)を推定するのに、タグからの各受信パケットからサンプリングした時間的に離散した信号を使用する方法が記載されている。図5に示したアルゴリズムは、アレイ入力(5−16)に対してFFT(5−14)を行い、続いて、相互スペクトルのマトリクス計算を行い(5−12)、分解処理し(5−10)、ビーム走査応答を計算する(5−8)。走査応答計算(5−8)には走査ベクトルデータ(5−6)を使用し、この走査ベクトルデータは、アレイ応答及び校正データベースを使用して生成され、調整される(5−2、5−7)。ビーム走査応答計算(5−8)は、相互スペクトルマトリクス(5−12)を変えることで、様々な方向に対して繰り返される。
【0030】
いくつかの難題の中で、アンテナアレイの無線回路で使用される電子部品に起因する実際上の難題に対処するために、各アンテナ素子を周期的に校正して、各アンテナ素子の相対位相及び振幅の不平衡と、そのそれぞれの同相及び直角位相成分とをなくす。校正は、1つ又は複数の試験信号に対して行われ、そのような不平衡を補償するように、各アンテナ素子によって受信される信号の処理を補正することができる。
【0031】
一実施形態では、エキサイタの位置が分からない場合か、又はエキサイタの位置が移動していないことを保証するために、位置推定作業の前か、その作業の中で何度か一連の校正作業を行って、エキサイタ又はダミーのRFIDタグの位置を求める。一実施形態では、エキサイタ又はダミーのRFIDタグの位置は、「実際の」RFIDタグの位置推定と同様なRFID受信システムによって求められる。
【0032】
一実施形態における無線自動識別システムのリーダは、アンテナアレイを使用して設けられる。送信チャネル(リーダとタグとの間の送信路)では、いくつかの物理アレイにわたって送信アンテナアレイを分散させることができる。分散された送信アンテナの場合、受信アンテナアレイは、分散されたアレイのアンテナ素子によって励振されたタグ信号から衝突エネルギを捕捉することができる。この手法は、空間多重化を使用して、単一のアンテナシステムと比べて帯域幅利用を大幅に強化することができる。アンテナアレイは、複数の周波数帯域に対応することができる。典型的なアレイ要素構成は、開口結合給電式タイル状パッチアンテナを含む。タイル状の構造は、2次元平面内にマトリクス状に配置された同一要素を含む。低ノイズ増幅器(LNA)は、システムの全体性能を高めるために、アンテナ素子自体に埋め込むことができる。
【0033】
送信アレイアンテナを使用する場合、ビーム形成を使用して、送信ビームを空間内の所望の位置に走査することができる。このビーム走査により、応答したタグから受信した信号間の衝突及び干渉が低減される。様々な送信方法を採用することができ、一例として、RFIDタグへの受信等方性電力を最大化し、一方で、最大電力量及び滞留時間に対する規約を満たす「空間ホッピング」パターンを放射するために、時間帯ごとに送信ビームフォーマ係数を更新することができる。
【0034】
定期的な校正を通じて、ビームフォーマは、(受信路用としてアンテナとアナログ/デジタル変換器(ADC)との間にある、及び送信路用としてデジタル/アナログ変換器(DAC)とアンテナとの間にある)前端部のRFマイクロ波装置の不整合及び不完全性、並びに独立した平行アレイ素子路で生じた無線周波数からベースバンドまでの位相及び振幅の不整合を補償することができる。
【0035】
ここで図6を参照すると、本発明の実施形態に係る、パレットに配置された多数の在庫品上に置かれた一群のRFIDタグを呼び出すRFIDリーダが示されている。RFIDシステムは、例示的な干渉体6−10からの干渉が存在する中で動作している。商品のパレット6−1は、RFID受動タグの付いた多数のケース又は物品を含む。アンテナ6−6からの送信呼出信号6−4は、パレット6−1に衝突する。各タグによって検出された信号エネルギに応答して、各タグは、送信呼出信号又はビーム6−4から受け取った電力を使用して、一連の情報を後方散乱させることができる。この環境では、干渉体6−10として図示した人工の又は自然の干渉があり得る。受信アンテナアレイ6−12は、タグからの後方散乱信号にビーム形成を施すので、タグからの受信電力は最大化され、干渉体6−10からアンテナ6−6が受け取る電力が最小化される。
【0036】
図7では、アンテナ・アレイ・サブシステム(17−1)、RF/IFサブシステム(17−2)、及び信号処理サブシステム(17−3)を含むリーダシステム(例えば、図6)の機能ブロック図が示されている。また、シンセサイザ・サブシステム(17−4)は、クロック周波数及び局部周波数をリーダシステムのRF/IFサブシステムに供給する。リーダシステムは、干渉のある中でパレット1−1上のRFIDタグに呼出をする(例えば、図1)。
【0037】
(アンテナの幾何学的配置)
RFIDシステムは、複数の送信アンテナ及び複数の受信アンテナを含むことができる。分散エキサイタ・アーキテクチャでは、複数の送信アンテナは、エキサイタのアンテナである。下記に説明するように、複数の受信アンテナは、RFID受信機のアンテナアレイ、及び/又は位置を推定する目的で観測を行うために切り換えられる多ポート・エキサイタのアンテナとすることができる。RFIDタグの位置を推定するために観測結果を収集する場合、エキサイタに対する及び互いに対する受信アンテナの数量及び位置は、個々の観測を行うことができる精度に大きく影響を及ぼすことができる。したがって、送信機及び受信機の幾何学的配置は、特定の位置の推定に精度を要求する用途に必要とされるアンテナの数量に影響を及ぼすことができる。
【0038】
(リニアアレイ)
ここで図8〜9Cを参照すると、単一エキサイタ18−3及びRFIDタグ18−2に関連するリーダアレイ18−1が示されている。リーダアレイは、4つの受信点を提供する4つのアンテナを含むリニアアレイである。各アンテナは、互いに対してオフセットしている。エキサイタは、リーダアレイから特定の距離d1に配置され、さらに、RFIDタグに対して特定の距離d2に配置されている。RFIDタグはまた、リーダアレイに対して特定の距離d3に配置されている。受信機アレイを使用した観測
【0039】
図9A〜9Cでは、本発明の実施形態に係る、RFID受信機システムからエキサイタまでの距離(d1)、エキサイタからRFIDタグでの距離(d2)、及びRFIDタグからRFID受信機システムに戻る距離(d3)の代用として、群遅延の校正された勾配を利用するRFIDタグの位置の観測が示されている。群遅延観測は下記にきわめて詳細に説明されるが、ここでは、送信アンテナ、RFIDタグ及び受信アンテナの間の経路長の推定値をもたらすものとみなすことができる。楕円は、2つの固定点までの距離の合計が一定であるような点の平面内の軌跡である。正確に言うと、上記は、リーダとエキサイタとの間の距離が既知であり(d1)、距離の合計d2+d3が既知である場合である。校正によって、我々は(星で記した)リーダと(ダイヤモンドで記した)エキサイタとの間の時間(距離)を求めることができる。我々は、時間の合計d1+d2+d3を求めることもできる。これら2つの距離測定(d1及びd1+d2+d3)を合わせると、タグは楕円18−4上のいずれかの位置になければならないと分かる。なお、2*d1=d1+d2+d3となって縮退する場合がある。これは、タグが、リーダとエキサイタとの間の線分上のどこかにあることを示し、正確には、この場合、そのどこかは求めることができない(説明するように、別のエキサイタがこの事例を解決する)。楕円の1つの焦点(この場合はリーダ)から出た線と楕円上の位置との交点の位置を求める式を導出することができる。
【0040】
図9Bでは、タグがリーダとエキサイタ1との間の線分上にある場合が示されている。これは、2d1=d1+d2+d3となった縮退の場合である。この場合に、エキサイタ1によるあり得るタグ位置の領域は、リーダとエキサイタ1との間の線分である。別のエキサイタであるエキサイタ2(18−4)がタグに照射できる場合、この事例は、焦点であるリーダ及びエキサイタ2の位置から予測される楕円(18−5)と、エキサイタ2及びタグからの距離である距離d22とリーダからエキサイタ2までの距離である距離d32とを合わせたものとの間の交点を見つけることで解決することができる。当然のことながら、この場合に、到着角度(AOA)情報は、タグ位置を求めるのに必要とされない。しかし、この角度は、前述の処理によりさらなる測定値として使用することができる。
【0041】
図9Cでは、エキサイタ1及びエキサイタ2による2つの非縮退位置予測が示されている。リーダから各受信エキサイタまでの距離である距離d11及び距離d12はともに、校正作業によって求めることができる。距離d21+d31及び距離d22+d32は、それぞれ左及び右の楕円を規定する。角度φ1、φ2から、リーダを出た線分が予測され、この線分と各楕円との交点はタグ位置を示す。示した角度φ1、φ2は、同じに見える。しかし、各角度は、それぞれエキサイタ1、2からの励振によって対象タグを読み取った結果得られた、独立した観測結果である。
【0042】
(多ポート・エキサイタの幾何学的配置)
エキサイタが分散したアーキテクチャは、RFIDシステム内で送信機能と受信機能を切り離し、エキサイタは、送信機能を行う役目を担う。このようにシステムを切り離す利点は、低価格なエキサイタを使用し、これを従来のRFID受信機システムよりも多くの位置に配置できることにあり、複数の位置にRFID受信機を設けた場合、通常ではコストが高くなりすぎる。いくつかの実施形態では、エキサイタは複数のポートを有するので、単一のエキサイタが、複数のアンテナ(すなわち、ポート)を使用して、RFIDタグを作動させることができる。多くの実施形態では、多ポート・エキサイタは、一部のアンテナを切り換えて、RFIDタグで後方散乱した信号を受信することができる。このようにアンテナの機能を切り換えることで、多ポート・エキサイタが、RFIDタグで後方散乱した信号の観測結果を収集することが可能になる。エキサイタは、RFID受信機で利用される複雑な復号回路の必要なしに、これらの観測を行うことができる。多ポート・エキサイタがRFIDタグに関する観測結果を収集するのを可能にすることで、位置推定で使用するための情報を収集するのに利用できる、RFIDシステム内の受信アンテナの数量が大幅に増える。さらに、多ポート・エキサイタのアンテナは通常、RFID受信機の直線アレイ内のアンテナよりも互いから離れて分散される。RFIDタグに関する観測結果を収集できる多ポート・エキサイタと、多ポート・エキサイタのアンテナの位置の様々な幾何学的配置とが以下にさらに説明される。
【0043】
ここで図10を参照すると、図10は、本発明の様々な実施形態に係る、4つのポート(4ポート・エキサイタ)を有する多ポート・エキサイタ又は励振ノード(eNode)のブロック図を示している。以下の説明の多くは、4つのポートを含む多ポート・エキサイタに関するが、本発明の実施形態によれば、任意の数量のポートを含む多ポート・エキサイタを利用することができる。4ポート・エキサイタは、1つ又は複数のアンテナ19−2を選択するための切替回路19−1を含む。アンテナの選択は、関連する送信回路19−4又は受信回路19−5を利用して、プロセッサ19−3によって制御される。送信回路は、RFID付近への、呼出及び校正信号等のすべての出力通信を扱う。受信回路は、呼び出されたRFIDからの応答データ等のすべての入力通信を扱う。受信回路は、切替回路を通じて、入力信号の受信用アンテナの1つを選択する。同様に、送信回路は、切替回路を通じて、出力信号の送信用アンテナの1つを選択する。ほとんどの場合、送信用に複数のアンテナが選択されて、最も多くのRFIDの近くに到達するための、また、本願全体にわたって説明しているように、RFIDの位置を素早くかつ正確に求めるための最大呼出範囲を保証する。
【0044】
図11は、本発明の様々な実施形態に係る、多ポート・エキサイタ又は励振ノード(eNode)の詳細ブロック図を示している。励振ノードは、RFIDからのデータを送受信するアンテナアレイを含む。アンテナアレイは、複数のアンテナ素子7−1〜7−4を含む。各アンテナ素子は、スイッチ(7−5)によって、アンテナ素子の1つ又は複数が送信し、残りのアンテナ素子が受信するように構成される。したがって、アンテナ素子7−1を介して受信した信号は、増幅器7−10に供給される。受信経路信号は、こうして増幅され(7−10)、帯域通過フィルタで処理され(7−14)、局部発振器(7−60)から供給されたベースバンド信号に直接混合される(7−20)。ベースバンド信号に受信した信号を混合するのに使用される搬送周波数は、送信側のRFに混合するのに使用される周波数(7−62)と同じである。次いで、受信ベースバンド信号は、ローパスフィルタで処理され(7−24)、増幅される(7−28)。信号は、受信機信号処理回路によってサンプリングされ、抽出位相と関連付けられ、復調され、復号される(7−70)。コマンド及び制御メッセージ(RFIDタグ関連データではない)は、制御回路によって復号される(7−74)。復号したコマンド及び制御メッセージに基づいて、プロセッサ(7−80)は、送信出力レベル校正(7−86)及び他の保守特性を制御する命令を出す。受信したRFIDデータは、異なるRFIDプロトコルの態様を満たすために、データエンコーダ及び変調器(7−31)に送られる。送信用のパケットは、アップコンバートされ(7−32)、帯域通過フィルタで処理され(7−36)、可変減衰され(7−42)、増幅される(7−44)。最後の帯域通過フィルタは、複数の(この場合は4つの)使用可能なアンテナの1つを通じて放射する前に、帯域外の放射要求が適用される(7−52)のを保証する。一実施形態では、同軸ケーブルが、周波数基準、DC電力及びコマンド制御を供給する。この実施形態では、局部発信器ブロック(7−62)は、同軸ケーブルで供給された周波数基準をスペクトル的に純化するフィルタと置き換えられる。
【0045】
ここで図12を参照すると、多ポート・エキサイタのアンテナが、読み取り点20−1、20−2、20−3で位相同期されたリーダの分散されたアレイ、及び単一のエキサイタ20−5として構成されて示されている。分散されたアレイ内のRFIDタグ20−4の配置も示されている。多ポート・エキサイタは、RFIDタグで後方散乱した信号を、読み取り点20−1、20−2、20−3に配置されたアンテナにより複数のポートで受信し、単一ポートを使用して、励振アンテナ20−5から呼出信号を送信するように構成されている。各読み取り点は、励振ノードから既知の距離にある。例えば、読み取り点1、2、3は、励振ノードに対して、それぞれ特定の距離d11、d21、d31だけ離間している。また、RFIDタグの各読み取り点1、2、3に対するそれぞれの距離d13、d23、d33は、RFIDタグの励振点に対する距離d22と同様に求めることができる(下記の群遅延の説明を参照のこと)。したがって、多ポート・エキサイタは、既知の読み取り点及び励振点の位置と共に、距離の合計d12+d13、d22+d23、d32+d33を利用して楕円を求めて、RFID位置に関する観測結果を収集することができる。到着情報のうちの角度は、RFIDタグの位置を特定するのに利用されない、すなわち必要でない。
【0046】
ここで図13〜16を参照すると、例示的な励振ノード又はeNode構成が示されている。例えば、図13A〜13Dでは、「シャンデリア」として構成された「4ポート」eNodeによって得られたRFIDタグの観測結果と、エキサイタとして機能する様々なポートとが示されている。シャンデリア構成では、各アンテナ素子は、互いから等距離に設定され、正方形形状に設定される。4ポートeNodeは、局部発振器を使用して又は外部基準によって、送信点と受信点との間の位相同期を維持する。図は上から見たものであり、4つのポートのうちの3つ(図13Aの21−1、21−2、及び21−3)が受信し、1つ(図13Aの21−5)が送信するように設定されたeNodeを示している。対象タグは、正方形(21−4)で示されている。各図において、3つの楕円が表示されている。各楕円は、1つの焦点として送信アンテナを共有し、もう1つの焦点として異なる受信アンテナを有する。3つの楕円の交点は、タグ位置の観測結果とみなすことができる。この交点がただ1つでない場合(ここには図示せず)、アンテナがタグを励振した情報を使用して、最も可能性の高い3方交点を特定することができる。一実施形態では、受信したタグ信号の位相は、プリアンブル・シーケンスとの相関から求められる。そのような手法は、「RFIDビーム形成システム(RFID Beam Forming System)」と題して2007年6月28日に出願された米国特許出願第11/770,712号明細書に記載されており、この特許の開示は、本明細書にすべて記載したのと同様に、参照により本明細書に援用するものとする。
【0047】
位置推定の観測を行うことができる場合の信頼度は、システム内のノイズに依存する。上記に概説した態様で観測結果を楕円の交点とする場合、観測結果の信頼度は、楕円が交差する点でそれらがほぼ平行になる程度によって評価することができる(例えば、図3Dを参照のこと)。楕円がほぼ平行である場合、位相ノイズのわずかな変動で、観測されたRFIDタグの位置が大きくオフセットすることがある。下記に説明するように、多ポート・エキサイタのアンテナの数量及び位置により、エキサイタを使用して行う位置観測の信頼度を大幅に高めることができる。
【0048】
図14A〜14Dでは、4ポートeNodeが「オフセットした直線アレイ」として構成されている。オフセットした直線アレイ構成では、アンテナ素子対が直線的に整列し、互いから等しく離れている。また、第1の対は、第2の対から設定した距離だけオフセットしている。オフセットした構成は、RFIDタグからの後方散乱信号により、RFIDのあり得る位置がただ1つだけである位置観測が可能になる領域の総パーセントを増やすのに使用される。図示するように、3つの楕円は、eNodeの4つのポートのそれぞれに対して配置され、楕円の交点はタグ位置を特定する。以下にさらに説明するように、3つの楕円からなる4組の観測結果のそれぞれは、粒子フィルタプロセスに送ることができ、タグの位置を特定するのに任意の1つの結果で十分である。
【0049】
図15A〜15Fは、オフセットした直線アレイとして構成された4ポートeNodeの別の例を提示し、1つ又は複数のRFIDタグの位置を特定するあり得る範囲を示している。この応用例のリーダを簡単にするために、アレイは単一の送信機構成で示されており、3つの楕円が描かれ、それらの交点が6つの異なるRFIDタグの位置を特定する。
【0050】
図16は、「不規則な」アレイを使用してRFIDタグの位置を特定する例を示している。このような構成では、アンテナ素子は疑似ランダムパターンに設定される。図示した例では、6つの総受信パッチ(21−1、21−2、21−3、21−6、21−7、21−8)と1つの送信パッチ(21−5)を使用して、RFIDタグ(21−4)の位置を特定する。群遅延に基づいて位置を解明するために、任意のアレイ構成を使用することもできる。
【0051】
(位置推定で使用される観測可能量)
RFIDタグからの後方散乱信号は、位置推定で使用できる様々な観測可能量をもたらす。送信及び受信アンテナの幾何学的配置に関する、上記に説明した距離の代用として使用される観測可能量は、群遅延の校正された勾配である。群遅延とは、様々な周波数で観測された位相差をいう。本発明の実施形態による、位置推定に群遅延を使用できる態様が以下に説明される。いくつかの実施形態では、読み取り率の観測が位置推定で使用される。RFIDタグの読み取り率は、通常、RFIDタグが読み取られた機会数に対する比としての、RFIDタグが読み取られた回数として説明できる。位置推定に利用できる他の観測可能量には、限定するものではないが、位相、位相定数の大きさ、読み取り率、搬送周波数、励振ノードインデックス(index)、及び受信アンテナインデックスがある。
【0052】
(観測可能量としての群遅延)
図18には、位置推定処理の一態様を説明するフローチャートが示されている。リーダが起動信号を所定のエキサイタに送信した(8−1)ときに処理が始まる。エキサイタは、エキサイタの送信場内のRFIDタグに照射する(呼出信号を送る)(8−2)。RFIDタグは、情報信号を送ることで応答し(8−3)、リーダがその信号の群遅延を求める(8−4)。RFID受信機システムは、RFIDタグに情報信号の周波数のみが異なる応答をさせ、システムは、様々な情報信号間の位相差を求める。位相差対周波数差の比率(すなわち、群遅延)を使用して、リーダはRFIDタグまでの距離を求める。一実施形態では、リーダはまた、総往復時間を求める(8−5)。下記に説明するように、群遅延を使用してRFIDタグまでの距離を求めることができる。なお、この処理全体にわたり、各システムに送られる信号は、周波数及び位相をロックされる。
【0053】
エキサイタのリーダからの位置が既知であれば、リーダでの受信したタグ信号の位相を測定する。異なるトーン周波数を使用する場合、異なる相対位相を測定する。往復遅延による、2つの異なる周波数での2つのトーンの測定した相対位相差は、次式によって周波数差に関連付けられる(エキサイタはリーダと一緒に配置されるとする)。
【数1】
上式で、Δφは相対位相差であり、Δfは周波数差であり、dは距離であり、cは光の速度である。トーン周波数f1での位相θ1は、2mπの多義性(ambiguity)で測定することができる。同様に、トーン周波数f2での位相は、2nπの多義性で測定することができる。位相差が2π未満でありさえすれば、2πを法とした測定値の位相差を使用して、Δfを所与として範囲dを求めることができる。これは、Δφが2π未満である限り真である。なお、予測される動作範囲を考慮して、適切な周波数分離を選択することで、条件を満たすことができる。2次元例の場合、範囲d及び方位角θから、タグ位置を求めることができる。当業者ならば、3次元への拡張が実現可能であり、企図されていると分かるであろう。エキサイタがリーダと一緒に配置されておらず、タグまでの距離がd1の場合、以下の式となる。
【数2】
【0054】
(観測可能量としての到着角度(AOA))
直線アンテナアレイといった特別な事例を含むシステムでは、複数の直線アレイからの到着角度(AOA)の観測結果を使用して、RFIDタグを三角測量することができる。さらに、単一の直線アレイからの、様々な周波数での複数の観測結果を使用して、RFIDタグを三角測量することができる。
【0055】
AOAを使用して位置を観測する技術の一例は、空間平滑化を有する多重信号分類(Multiple Signal Classification (MUSIC))アルゴリズムとして公知の技術群を基本とする。特に、表記を簡略化するために、我々は、順方向及び逆方向フィルタを備えたMUSICアルゴリズムを使用して、4要素直線アレイに適用される技術を検討する。当業者ならば、アルゴリズムの任意のアレイへの拡張が実現可能であり、企図されていると分かるであろう。
【0056】
それぞれが一定の距離、すなわち、λ/2だけ離れたM要素直線アレイのi番目の要素によって受信された信号ri(t)は次の式で与えられる。
【数3】
上式で、akはk番目の多経路信号の振幅であり、s1(t)は所望の信号であり、sk(t)(k=2,3,…,N)は多経路受信信号であり、θkはk番目の信号用のアンテナ照準に対するAOAの角度であり、n(t)は、付加ノイズ又は干渉である。同相及び直角位相成分、すなわち、In及びQnは、受信した信号ri(t)の実数部及び虚数部を表す。ベクトル表記では以下となる。
【数4】
上式で、θはアンテナ照準に対するAOAである。信号s(t)は所望の信号及び(N−1)多経路信号を含む。
【0057】
ここで図21を参照すると、複数のAOA測定を通じたRFIDタグ10−1の位置の特定が示されている。この2次元図において、2つのアレイアンテナ10−2、10−3の位置が既知の場合に、2つのAOA測定からタグ位置を求めることができる。特に、タグの位置(x,y)は次式から求めることができる。
【数5】
【0058】
ここで図20を参照すると、RFIDタグの位置を特定するその能力の点から、近距離場モードで作動するアレイアンテナRFIDシステムの一態様が示されている。簡略化した4要素アレイが、システムによって実施されるRFIDタグ位置特定の一例として2次元図で示されている。当業者ならば、2次元から3次元の任意のアレイへの拡張が実現可能であり、企図されていると分かるであろう。RFIDタグ位置特定技術は、特定の要素9−3と基準要素9−2との間の、到着信号又はプリアンブル信号の位相差9−1を測定することを基本とする。位相差9−1は、RFIDタグと2つのアレイ要素9−2、9−3との間の経路9−4、9−5の範囲差(r2°−r1°)に比例する。特に、範囲差は以下の式で与えられる。
【数6】
上式でfは、RFIDタグの搬送周波数である。x1、x2、x3、x4及び範囲差(r2−r1)、(r3−r1)、(r4−r1)から一義的に求めることができるRFIDタグの位置は、アレイ要素の既知の位置(xi,yi)及び測定した範囲差から、非常に効率的なアルゴリズムによって計算することができる。
【数7】
yi=0としても、一般性を失わない。この解は、範囲差を規定する双曲線の交点を見つけることに合わせて重みづけした線形最小二乗(LS)解に基づく。解の精度は、クラメールラオ限界(Cramer−Rao Bound、CRB)によって予測されるものに近づく。
【0059】
(観測可能量としての読み取り率)
読み取り率は、エキサイタの励振中に、RFIDタグが読み取られる可能性があった回数に対する、RFTDタグが読み取られた回数の比である。分散したエキサイタ・アーキテクチャを利用するシステムは、非常に高い受信感度を有することができるので、タグ読み取り率に影響及ぼす主要因は、送信機とタグとの間の経路損失である。したがって、読み取り率は、エキサイタに対するタグの位置と相関があると予測される。例えば、仮説領域Xaがエキサイタe1、e2から等距離に配置されたとすると、その場合に、仮説領域内に配置されたRFIDタグに対するそのそれぞれの読み取り率RRe1、RRe2は、等しいと予測される。読み取り率を求める場合、衝突がデータに影響を及ぼすことがある。通常、衝突を避けることと、衝突を回避するために設けられるスロット数が、システムの性能に大きく影響するほど多くならないようにすることとの間でバランスが取られる。
【0060】
励振回線マージンを使用して、タグが在庫領域xa内に配置された場合に、タグが所与の回数パーセント(読み取り率)で読み取られる可能性を表す確率質量関数(pmf)を作成する。読み取り率は、特定の時間間隔であり、同じ持続時間で達成する可能性のある総可能読み取り回数でこの量を除することである。読み取り率(RR)は、表記RReを使用してエキサイタ(ej)を添字として表される。前述の定義に基づいて、ガウスの確率質量関数上の点として確率を特定することが可能である。
【数8】
上式で、μ及びσは、励振電力、エキサイタから仮説領域への角度、エキサイタから仮説領域までの距離、エキサイタ放射パンターン及びタグ放射パターンに応じて求められる。なお、所与の位置でのRFIDタグを読み取る確率を求める前に、所与のエキサイタeに関連するすべての確率が次式のように正規化される。
【数9】
【0061】
下記にさらに説明するように、様々な推定器を利用して、仮説領域の位置を求め、様々な仮説領域内の観測可能なRFIDタグの位置推定値を得ることができる。
【0062】
(観測可能量を使用した位置推定)
ここで図19を参照すると、図18に示した作業が繰り返されている(8−7)。作業を繰り返すことにより、複数の読み取り点が生成される。これらの複数の読み取り、ひいては、RFIDタグの情報又は距離推定値を利用して、確率分布モデルが形成される(8−8)。RFIDタグの位置推定値を求めるために、アルゴリズムを選択し、これを適用することができる(8−9)。さらに、信頼レベル及び精度係数(accuracy factor)を求めることができる。アルゴリズムを適用した結果として、例えば、信号源から各アンテナ素子への信号の到着方向等の多経路の影響が明らかにされ、緩和される。様々な推定器が以下に説明される。
【0063】
(観測可能量から位置を特定するのに使用される推定器)
RFIDタグ位置を観測する際のノイズの影響は、推定器を使用して限定することができる。上記に概説した、任意の観測可能量を使用してRFIDタグ位置を推定するのに使用できるいくつかの異なる推定器が以下に説明される。
【0064】
(粒子フィルタを基本とした推定器)
図18に示す一実施形態では、位相、位相定数の大きさ、読み取り率、搬送周波数、励振ノードインデックス、受信パッチ・アンテナ・インデックス位相、及び/又は(観測可能量に関して前述の文で説明した)所与のタグ読み取りに関連する他の観測可能量が、粒子フィルタ(25−4)として公知のモンテカルロ仮説検定アルゴリズムに通される。一般化した3次元確率分布関数は連続的であり、そのため、複雑性が技術的に無限であるので、この分布の有限圧縮した記述が見出された。カルマンフィルタは、この一般分布の2次モーメント記述のみを提供する。無香(unscented)カルマンフィルタは、3次モーメントの複雑性に対して良好である。格子点仮説を考慮することも可能であり、一組の仮説が状態領域全体に及ばないようにし、より高い点密度に拡張することができる。しかし、これらは、局部尤度を表現するのに必要とされる仮説数がきわめて浪費的になることがある。
【0065】
粒子フィルタは、不均一な時間適応格子を使用する推定への適応的仮説手法である。状態空間の検定仮説を表す粒子は、前の状態分布に基づいて生成される。各観測に対して、所与の粒子が生成する尤度(状態可能性)でその観測が評価される。尤度の高い粒子は複製され、尤度の低い粒子は削除される。最後に、複製された粒子は、遺伝子突然変異又は焼き鈍しと同様に、状態空間内でわずかな量だけランダムに移動される。
【0066】
この位置推定問題の場合、粒子は(x,y,z)位置に対応し、オプションで
【数10】
速度に対応する。粒子フィルタ処理は、初期化プロセスとそれぞれ新たな測定で使用する反復プロセスセットとに分割することができる。最初の測定分布か、又は他の前の状態を使用して、シード粒子雲(seed particle cloud)を生成する。状態が有限範囲にわたって一様な分布の場合、これらの初期粒子は、格子から選択することができる。しかし、通常では、前の分布はより複雑であり、ランダム状態値が選択されて粒子セットがまかれる。
【0067】
時間更新プロセス(25−5)は、新たな観測(25−3)がシステムに入力されるたびに行われる。これは、粒子状態と、最後の更新からある程度の時間が経過しているという事実による動的不確定性との伝播に相当する。このステップは物理的プロセスによって進められ、決定論的であり、確率論的である。最後の更新からある程度時間量が経過したことを考慮すると、各粒子の現在の位置及び速度に対してある種の不確定性がある。各粒子を新たな位置及び新たな速度にランダムに移動させる。この処理に使用される分布は、環境及び粒子の現在の状態によって決まる。一例として、フォークリフト上を移動するタグの位置を推定したい場合、新たな速度は、各方向に1G以下の加速度で得ることができる速度に限定される。フォークリフトが有することができる速度の最大絶対値もある。時間更新プロセスは、原則的に正則化ステップから独立しているが、時間更新及び正則化は共に状態粒子にノイズを加えることから、実装に従う。
【0068】
次に、測定更新(25−6)プロセスが、新たな測定に基づいて、各粒子に対応する尤度を計算する。得られた尤度は、eNodeからタグまでとタグからアンテナ素子までとの距離間での予測された位相を所与として、各観測(例えば、位相ベクトル又は読み取り率の測定値)が対応する尤度から生成される。これらの確率は、一実施形態では、ガウス分布で評価することができ、このガウス分布は、観測が行われたときのアンテナの受信電力に依存し、さらに、推定した校正係数に関連する信頼性に依存する標準偏差を使用する。校正係数は、波の伝播に相当しない任意の影響を除去するために、各タグ読み取り測定で使用される。一実施形態では、励振点と受信パッチとの間の距離が公知の場合、各周波数の余分な位相回転を、「裏ルート(backchannel)の」波形又は励振点と一緒に配置された基準タグを使用した観測位相と比較して除去することができる(25−10)。各周波数において除去した余分な回転量は記録され、(電気的遅延等の)無線伝播に起因しない位相回転効果を補償するために、次の受信タグ測定位相データから「取り消される」。
【0069】
再サンプリングプロセス(25−7)は、粒子の尤度に基づく粒子の除去/複製を担う。これは、粒子の尤度によって生成される累積分布を取り出し、これを使用して新たな粒子を生成することによりなされる。粒子の尤度が高いほどその粒子がより多く複製される。粒子のクローンは、同じ位置及び速度を有する(言い換えると、それらは現時点で正確なクローンであり、次のステップ(正則化)では、注意深く選択された変化が加えられる)。
【0070】
粒子フィルタプロセスの最後のステップである正則化(25−8)は、測定尤度についての何らかの記憶の維持に関与する。粒子の以前の確率は、複製及び変更によって保存される。このように、高水準の粒子は複製される。正則化プロセスは、遺伝子突然変異又は焼き鈍し法と同様である。その目的は、粒子セット内のギャップを埋めるクローンを変動させることである。粒子フィルタの公知の問題の1つは、各点が少数の仮説に縮退する可能性にある。粒子雲が縮退した場合、仮説が少なすぎて将来の測定で検定できない。正則化プロセスは、そのランダム変動の導入によって、この問題を回避することを担う。
【0071】
結果は、最終的に、静的に集合したより高いレイヤに出力される(25−9)。このレイヤで、位置特定解の確率密度を経時的に計算することが可能である。通常、この最終的なレイヤ統計値の分散測定によって、最終的な解の品質を報告することができる。
【0072】
(ベイズ推定器)
一実施形態では、情報が引き出される、選択されたRFIDタグ用の信号は、複数のRFIDタグの他の1つの空間位置に対する、選択されたRFIDタグの空間位置に基づいて、複数のRFIDタグによる信号から選択することができる。すなわち、所与の呼出空間に対して、図3に示すように、また、一例として、呼出空間3−8が挙げられるように、タグの特定の個体群のみが照射される。タグの位置を推定する場合、AOA、励振ノードの位置及びセンサ又はタグの個体群の既知の位置、多経路伝播環境、測定周波数、並びにアレイ応答(ビームパターン)等のすべての利用可能な情報に基づいて、RFIDタグの位置の確率密度関数をモデル化するのにベイズ法が使用され、測定値及び他の任意の補助情報が、予測的(apriori)ベイズモデルにさらに導入される。一態様では、システムは、3次元ユークリッド空間(x,y,zの位置、すなわち、高さ、ロール、ヨー)内の位置を再帰的に推定する。
【0073】
各アンテナ素子で測定された(j番目のタグに対する)観測ベクトルYjtは、それぞれ実数及び複素数部分を有する、各アンテナ素子ごとの、離散的な複素数値の受信信号サンプルrt、又は等価物として同相及び直角位相成分In、Qnと、呼出空間ごとの、既知のエキサイタ位置(x、y、z)、ビームフォーマ係数a、信号対ノイズ比(SNR)推定、ゲイン設定α、ソフトメトリック(soft metric)、外部情報β(In、Qn)、及びパケット(例えば、RN16+EPCコード)とで構成される。使用されるモデル測定は時間t、Yjtの単一ベクトルである。観測されたL次元ベクトルYjtは、タグ位置の3次元ユークリッド空間をL次元観測可能ベクトルに写像する(R3→RL)ことで得られると仮定する。確率分布P(xjt|Yjt)を推定する様々な手法が再帰的に実施され、xjtは、3次元内のj番目のタグの位置座標である。この密度の条件付き期待値(すなわち、平均値E(x|Y))は、タグの位置又は等価物が、このシーケンスの推定と同形であることに相当する。
【0074】
ここで図22を参照すると、全体空間又はボリューム12−1に対して、リーダによって作動されたエキサイタは、12−4で図示したRFID位置推定を作成する。読み取りが複数回繰り返された場合の、複数のRFIDの位置推定が、12−5で図示されている。円錐のピーク部又は図心により、RFIDの位置が特定される。円錐の周囲部分により、特定された位置の精度又は確度が特定される。例えば、より急峻なピーク12−5aは、RFIDタグの非常に正確な位置を提示し、一方、より平坦なピーク12−5bは、RFIDタグのあまり正確でない推定位置を提示する。
【0075】
送信機/エキサイタ(11−2)の位置が既知の場合、タグ位置の推定問題を、12−1に示す立方体内のタグの位置を見つけることに変えることができる。仮説検定を利用して、各タグの位置に対して、立方体を12−2に示すようなより小さい立方体に量子化することができ、各位置は球体12−3として処理される。呼出空間内にあるタグの個体群の位置に関する確率分布は、2次元(x、y)ユークリッド空間で既知の平均及び分散を有する2次元ガウス密度とみなすことができる。円に投影された球体も、それぞれ、グラフ12−5に示すように、2次元(x、y)ユークリッド空間で既知の平均及び分散を有する2次元ガウス密度とみなすことができる。3次元ユークリッド空間の3次元球体12−3の場合、(x、y、z)次元の各点は、3次元ガウス密度に対応している。このように、後述する特定の種類のアルゴリズムに対して、そのアルゴリズムを、グラフ12−5で示したような既知の事前確率密度モデルで初期化することができる。
【0076】
ここで図23〜25を参照すると、RFIDタグの位置推定をさらに改良し、かつ/又はさらに正確にする例示的な処理及び定式化が提示されている。下記において、観察されたサンプル空間Ω={Yjt,∀t,j}が示されている。P(xjt|Yjt)は、過去のすべてのAOA測定に基づいた、時間tでの確率分布関数位置を表す。ベイズモデルは、再帰的推定p(xjt|θ)に対して確率的枠組みを提供し、ベクトルθ=(θj…θt)は、到着ベクトルの角度を規定する。
【0077】
室内伝播環境では、主要な信号の方向は、一部の例において、直接経路ではなく、反射した信号によることがある。この状況に対処して、信号源の実際の位置に関する誤った推定を回避する。タグの位置{xt;t∈N}、xt∈X(tは反復指数を表すこともある)は、初期分布がp(x0)でマルコフの関係P(xt|xt−1)の一次マルコフ過程としてモデル化される。観測された一連のタグ信号Y1∈Ωは、複素数及び実数値の測定結果をともに含むことができ、各アレイ要素に対してリーダで行われる推定が図23に示されている。
【0078】
j番目のタグからの観測ベクトルは、Yjt=(ytj,ytj−1,ytj−2,…,Yj0)で示され、各ytjはベクトルである。一態様でのP(xjt|Yjt)確率密度関数は、2つの段階、すなわち、予測段階及び更新段階で再帰的に得られる。xtを予測するのに使用される、時間ステップtでの事前確率密度関数(見やすくするために、jに依存する部分は除いている)は次式である。
【数11】
ベイズの法則による更新は次式である。
【数12】
上式で、P(yt|yt−1)=∫P(yt|xt)P(xt,|yt−1)dxtであり、初期状態はP(x0|Y0)である。式(8)は、P(xt|Yt)=WtP(xt|Yt−1,)とみなすことができ、重みは、次式によって定義される。
【数13】
【0079】
再帰的推定P(xjt|Yjt)のための複数の手法が、各種態様で提供される。図24は、逐次モンテカルロ法の一般形態の各ステップを示している。条件付き密度関数P(xjt|Yjt)は、繰り返しごとに更新され(14−1)、重みは、14−2で、前の重み値の(後で定義される)関数と、場合によっては(すぐに定義される)ランダムパラメータpとに基づいて更新される。予測ステップ14−3は、P(xjt+1|Yjt)を計算し、次いで、サンプル空間から新たなサンプルYjt+1を得ることを含む。この最後のステップは、リサンプリングと呼ばれる。
【0080】
1つのリサンプリング手法は、点状近似を用いて密度を評価することである。古典的モンテカルロ法を使用して、
【数14】
によるヒストグラム平均化を適用することでxtの経験分布が与えられ、この場合に、{x(i)}は、確率分布P(x)のランダム源から抽出される。一組の測定が行われるたびに、前の測定のそれぞれの尤度を推定することができる。
【0081】
様々な態様によれば、システムは、前に説明したように、複数の問題解決手段を利用する。図25は、RFIDタグ/センサの位置を見つける様々な態様による一般手法を示している。最初に複数の問題解決手段候補があり、各問題解決手段セット自体は、15−1で、Ωからサンプリングすることにより、15−2に示すように尤度を推定し、確率密度P(xjt+1|Yjt)を計算するために、多くの選択物の1つに適用される。棄却サンプリング、重要度サンプリング及びサンプリング・インポータンス・リサンプリング(SIR)、焼き鈍し、粒子フィルタ、並びに無香変換の各手法などの、15−3に示した様々な技術を使用することができる。これらの各技術は、経時的にリサンプリングする際に重みシーケンスを計算するのに、若干異なる手法を利用し、リサンプリングは、すべての事例でΩからN回復元することで行われる。
【0082】
(サンプリング・インポータンス・リサンプリング推定器)
再帰的SIR手法は、以下の通りに行われる。
1.t=0をセットし、M個のサンプルxio∈Ω(i=1,…,M)を得る。
2.重み更新:尤度の重みwi=P(yt|xjt)(i=1,…,M)を計算する。
3.
【数15】
によって重みを正規化する。
4.リサンプリング:離散セット
【数16】
【数17】
からN回復元して、新たなセット
【数18】
、i=1,・・・,Nを生成する。
5.予測:各リサンプリング状態を単独でk回予測し、ここで
【数19】
、i=1,・・・,N、m=1,・・・,kである。
6.ステップ2に行き、t=t+1として繰り返す。
【0083】
何回か繰り返した後、ただ1つの候補状態ベクトル値が存在する縮退解を回避するために、エキサイタに近いRFIDタグの予測された位置を囲む既知の分布を使用して、リサンプリングステップを修正することができる。各座標の重要な関数として、密度の平均m及び分散σ2が、エキサイタの位置に修正項(エキサイタとエキサイタによって照射される最も遠いタグとの間の中間範囲)を加えたものに等しく、分散σ2が3次元ユークリッド空間内の楕円の直径の1つに等しい、独立して等しく分散されたガウス分布密度N(m,σ)が選択される。
【0084】
この場合に、重要度サンプリングは、提案分布q(xt|Yt)=q(xt|xjt−1,Yt)q(Xt−1|Yt−1)からサンプルを生成することで行われる。粒子雲の縮退を求めるこのバージョンでは、重要度サンプリング手法の相対効率は、重要サンプリング推定値の分散と、完全なモンテカルロシミュレーションが可能であった場合の推定値の分散との間の比と関連がある。その量は、
【数20】
により推定することができ、Nthreshは、リサンプリング手法が粒子セットに適用される、事前に選択された閾値である。
【0085】
(拡張粒子フィルタ推定器)
一実施形態では、拡張粒子フィルタ手法は、N個の入力又はサンプルの生成又は選択から始まる(t=0及び
【数21】
をセットし、q(xo|yo))からN個のサンプルxi0∈Ω(i=1,…,N)を得る)。次いで、各サンプル(i=1,…,N)に対する重みを次の関数に従って計算し、
【数22】
次の式に従って正規化する。
【数23】
【数24】
相対効率が前もって選択された閾値
【数25】
よりも大きい場合、リサンプリングをとばす。そうでなければ、離散セット
【数26】
【数27】
からN回復元して新たなセット
【数28】
、i=1,…,Nを生成することによりリサンプリングを行い、重みを
【数29】
にリセットする。次いで、状態又はリサンプリングした状態のそれぞれに対して、予測を独立的にk回行い、ここで、xjt+1∝q(xt+ι|xjt,Yt+l)(i=1,…,N、m=1,…,k)である。次いで、次のセット(t=t+1)に対して処理を繰り返し、新たなサンプルに対する重みを計算する。
【0086】
(メトロポリス−ヘイスティング・アルゴリズム推定器)
メトロポリス−ヘイスティング・アルゴリズムは、提案分布を使用してサンプルを生成する場合に、観測されたシーケンス及び推定に対してマルコフ連鎖モデルを使用し、候補サンプルzは、提案q(z|x)から抽出され、次式(p、q、πは異なる分布になる)によって与えられる確率で受理される。
【数30】
マルコフ連鎖が新たなデータセットに移ったときに、候補は、受理されるか、又は棄却され、棄却物は、状態空間内の現在のデータ点でマルコフ連鎖から離れる。π(x)=p(x|y)が選択された場合、受理確率は、次式のように単純になる。
【数31】
メトロポリス−ヘイスティング・アルゴリズムは、下記の通りに要約される。
1.t=0をセットし、x0をランダムに又は確定的に選択する。
2.z〜q(z|xt)及びu〜U(0,1)をサンプリングする。
3.受理確率を計算する:α(x,z)。
4.予測:u≦a(x,z)ならば、新たなサンプルxt+1=zを受理し、そうでなければxt+1=xtとする。
5.ステップ2に行き、t=t+1として繰り返す。
ステップ4において、システムの状態に対してエネルギ又は適合度関数を導入する統計力学的手法を採用することにより、この場合に、点を表すxtの位相空間内の確率密度がe−βE(Xt)に比例し、ここで、β=1/kTであり、Tは、ケルビン絶対温度であり、kは、ボルツマン定数1.38×10−23J/ケルビンである。1つの状態から別の状態への遷移によるエネルギ又は適合度の改良は、エネルギが各反復で低減されるような2つのエネルギ状態の差、すなわち、ΔE=E(xt+1)−E(xt)で特性化することができる、すなわち、状態の遷移確率は、
【数32】
であり、ここで、
【数33】
である。初期状態T0≫Tn<Tn−1<Tn−2で、各反復においてデータセットに対してTn<Tn−1<Tn−2となるように、さらなる制限が適用されて温度Tを単調減少させる場合に、非周期的で既約のマルコフ連鎖の状態に従う特性を有する解の位相空間の軌跡を利用することにより、解がほぼ最適な推定値に収束することが予測される。
【0087】
(無香変換推定器)
無香変換は、FRIDタグの位置を推定する他の手法である。共分散マトリクス
【数34】
(ここで、
【数35】
は、ランダム変数xの平均値を表す)を定義することにより、N次元ランダム変数の分布を平均及び共分散を用いて近似する問題に対処する。アフィン変換
【数36】
が定義され、この場合に、
【数37】
は、特性
【数38】
を有するXのマトリクス平方根である。したがって、無香変換手法は、以下の通りに要約される。
1.初期化
【数39】
2.定義
【数40】
3.時間更新
【数41】
4.重み更新
【数42】
λは、複合スケーリングファクタであり、na=nx+nv+nn、Qはプロセスノイズ共分散である。Rは、測定ノイズ共分散マトリクスである。
【0088】
(微分展開に基づく推定器)
RFIDタグ位置の発見を最適化する別のレイヤでは、あり得る解の(単一解ではなくて)個体群から始める。最初の個体群は、可能な限り広いエキサイタ領域の空間にわたるように考慮して選択される。一態様では、ランダムな位置すべてに対して均一な確率分布が最初に利用される。予備解が利用可能な場合、最初の個体群は、正規分布したランダム偏差を基準解xnominalに加えることにより生成されることが多い。微分展開(DE)は、試験的なパラメータベクトルを生成する手法を提供する。DEは、2つの個体群要素間の重みづけした差分ベクトルを第3の要素に加えることにより、新たなパラメータベクトルを生成する。得られたベクトルが所定の個体群要素よりも低い目的関数値をもたらした場合、新たに生成されるベクトルが、次の生成時に比較されて、そのベクトルに取って代わる。ベクトルの比較は、上記の生成プロセスの一部とすることができるが、そうでなくてもよい。さらに、最良のパラメータベクトルxBest,Gは、最小化プロセス中に形成される進展の流れを維持するために、生成Gごとに評価される。ランダム偏差を生成するのに、個体群から距離及び方向情報を抽出することにより、収束解が得られる。試験ベクトルは、各生成
【数43】
ごとに導入され、r1、r2、r3は、1とLとの間でランダムに選択され、Lは、引き続いて起こる生成数であり、展開全体にわたる固定パラメータであり、μは、1つの生成から他の生成への差分変化のステップサイズを制御する。この処理は、図26に要約されており、16−1で、可能解個体群から始めて、次いで、16−2で、ある種の適合度計算を行い、16−3で、個体群を選別及び変更し、16−3で停止規則をチェックする。
【0089】
(蟻の巣(ant colony)最適化を基本とした推定器)
他の様々な実施形態では、解の個体群を考慮し、いくつかの選択されたメトリックによって各解の可能性を更新することで、他の非線形確率的最適化アルゴリズムが利用される。頻繁に使用され、蟻の巣最適化と呼ばれ、フェロモンと呼ばれるメトリックは、次式によって定義される。
【数44】
反復tのとき、(次の1つの解ではなくて)N個の可能解と次のk個の解とを考慮し、初期条件τij←(1−p)τij、∀(i,j)∈Aで解メトリックτij←τij+Δτkをセットして、解の確率jを計算する。Nkiは、i番目の反復のk番目の解の近傍にある解の個数を示す。このように、起こり得る縮退問題が、解空間で複数の解を同時に考慮することにより、アルゴリズムレベルで回避される。これは、各解を平面グラフ内の単一の点とみなし、ここで説明した解メトリックによってグラフ内の最良経路を見つけることにより、上記のアルゴリズムのいずれかに適用することができる。この手法は、いわゆる「遺伝子プログラミング」又は「蟻の巣最適化」と同様である。
【0090】
(停止規則)
様々な態様によれば、提示された手法には、停止規則の形態又はタイプに関する特定の制約が何らない。ここで簡潔にするために、いくつかの異なる停止規則が、本発明の様々な態様に従って使用される通りに提示される。ここで、距離は計算されたd(xt,xt+1)、例えば、|xt−xt+1|であり、d(xt,xt+1)≪εの場合、アルゴリズムは停止される。吸引領域は、A={xt,d(xt,x*)≪ε}によって定義され、x*は最適解を示し、εは小さい正数である。メトロポリス−ヘイスティング法等の離散マルコフ連鎖手法を利用するアルゴリズムの場合、吸引領域に達するように、遮蔽のない状態空間の一部が最小化される。この手法では、Ωの各状態を訪問するのに計数が使用され、そのため、状態を訪問するたびに計数が増分される。停止規則は、
【数45】
となり、さらに、距離基準が満たされるようなものとされる。
【0091】
(垂直方向にラックを並べた棚用途での位置推定)
本発明の最後の用途が図27に示されている。図は、在庫品を保管するのに使用される、一連の隣接する、垂直方向にラックを並べた棚を詳細に示している。そのような棚は通常、在庫品を保管する倉庫内にある。現状技術では、在庫品は、多くの場合バーコード読み取り装置を用いて、棚の1つの部分から他方に移動しながら、物品の一続きの識別名を棚のx、y、z位置と共に記録することにより、手動で計数しなければならない。対照的に、本明細書全体にわたって、様々な実施形態で説明したRFID位置特定システムは、機械又は人間が1つの領域から次の領域に移動することなく、棚に保管された物品に関する状態を連続して知らせることができる。これは、一実施形態において、通路間の領域の高い位置に、無線励振点を規則正しく動かないように配置することにより達成される。粒子位置特定手法と共に、励振出力制御及び/又はエキサイタ当たりのRFIDタグの読み取り率を利用して、垂直方向にラックを並べた保管等の事例で物品の位置を特定することができる。特に、エキサイタ当たりの、及び励振出力レベル当たりのRFIDタグの読み取り率により、RFIDタグの位置を特定するためのz方向の次元の情報が得られる。一方、当然のことながら、商品の垂直位置(z)が既知の定数として事前に分かっている、垂直方向にラックを並べた保管の特別な例として、(商品の床置きとしても知られる)床高さでの保管もある。当然のことながら、物品同士を単に重ねて置いた場合、やはり、垂直方向にラックを並べた保管の特別な場合となる。この場合に、物理的な棚が「Z方向」の次元で物品を分離することはなく、正確に言えば、物品の高さが重ねた順番によって線引きされる。
【0092】
上記の説明は、本発明の具体的な実施形態を多く含むが、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではなく、むしろ本発明の一実施形態の例として解釈すべきである。したがって、本発明の範囲は、例示した実施形態ではなくて、添付の特許請求の範囲及びそれの均等物によって確定されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数の無線自動識別(RFID)タグの位置を特定する方法であって、
エキサイタにより少なくとも1つのRFIDタグに照射するステップと、
照射された前記少なくとも1つのRFIDタグから情報信号を複数の受信アンテナにより受信するステップと、
前記複数の受信アンテナそれぞれで受信した、照射された前記少なくとも1つのRFIDタグからの受信情報信号に対する位相微分を求めるステップと、
求めた前記受信情報信号の位相微分に基づいて、前記少なくとも1つのRFIDタグの位置を特定するステップとを含む方法。
【請求項2】
リーダからエキサイタへ作動信号を送信するステップをさらに含み、前記リーダ及び前記エキサイタは、共通の幾何学的特徴を互いに共有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
共有される共通の幾何学的特徴は、楕円であり、リーダ及び前記エキサイタは、前記楕円の焦点である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つのRFIDタグの位置を特定するステップは、前記受信情報信号の周波数微分に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのRFIDタグの位置を特定するステップは、位相微分対周波数微分の比に基づく、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのRFIDタグの位置を特定するステップは、前記受信情報信号の読み取り率微分に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
1又は複数のRFIDタグの位置を特定するための無線自動識別(RFID)システムであって、
複数のアンテナを有する少なくとも1つのエキサイタであって、前記複数のアンテナのうちの少なくとも2つのアンテナを介して呼出信号を選択的に送信するように構成され、かつ前記少なくとも1つのRFIDタグから、前記複数のアンテナのうちの少なくとも2つのアンテナとは異なる、前記複数のアンテナのうちの1つのアンテナを介して、受信情報信号を選択的に受信するように構成される、エキサイタと、
前記少なくとも1つのエキサイタと通信し、前記少なくとも1つのエキサイタを起動させるように構成され、前記受信情報信号の位相微分に基づいて、前記少なくとも1つのRFIDタグの位置を特定するリーダとを含むシステム。
【請求項8】
前記複数のアンテナは、均一なパターンで配置される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記複数のアンテナは、互いに等距離に配置される、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記複数のアンテナのうちの少なくとも2つのアンテナは、前記少なくとも1つのRFIDタグの存在しうる位置の軌跡を特定する、略楕円の焦点に配置される、請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
前記複数のアンテナは、対になって配置され、各アンテナ対は、前記少なくとも1つのRFIDタグの存在しうる位置の軌跡を特定する略楕円の焦点であり、前記各アンテナ対は、前記略楕円それぞれの重複が最小化されるように配置される、請求項7に記載のシステム。
【請求項12】
前記複数のアンテナは、前記少なくとも1つのエキサイタの周囲に配置され、前記複数のアンテナそれぞれの位置は、互いに異なっている、請求項7に記載のシステム。
【請求項13】
前記エキサイタは、基準信号を前記受信情報信号と混合するためにキャリア周波数を用いる、請求項7に記載のシステム。
【請求項14】
前記基準信号は、パイロット信号及びプリアンブル信号である、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
1又は複数のRFIDタグの位置を特定するための無線自動識別(RFID)システムであって、
少なくとも1つのRFIDタグと、
前記少なくとも1つのRFIDタグに照射するように構成されるアンテナアレイと、
前記アンテナアレイに接続され、前記アンテナアレイを作動させて、特定の時間枠及び特定の空間で、前記少なくとも1つのRFIDタグに対して繰り返し照射させるように構成される送信機と、
前記送信機と通信し、前記少なくとも1つのRFIDタグに繰り返し照射して、受信した受信情報信号に基づいて確率モデルを作成するように構成され、作成した前記確率モデルを粒子フィルタに適用して、適用した前記粒子フィルタの結果に基づいて前記少なくとも1つのRFIDタグの位置を求めるリーダとを含むシステム。
【請求項16】
さらに前記粒子フィルタは、各照射に基づいて、前記少なくとも1つのRFIDタグの各位置情報の重みを計算する、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
さらに前記粒子フィルタは、計算された前記重みを正規化する、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記粒子フィルタは、前記受信情報信号の位相微分に基づいて、RFIDタグ位置の尤度を求める、請求項15に記載のシステム。
【請求項19】
前記粒子フィルタは、前記受信情報信号の観測読み取り率に基づいて、RFIDタグ位置の尤度を求める、請求項15に記載のシステム。
【請求項20】
前記粒子フィルタは、高い尤度位置情報を複製及びランダム化し、前記少なくとも1つのRFIDタグの低い尤度位置情報を棄却する、請求項16に記載のシステム。
【請求項21】
さらに前記リーダは、前記少なくとも1つのRFIDタグの移動に基づいて、オフセットを加えるように構成される、請求項15に記載のシステム。
【請求項22】
1又は複数の無線自動識別(RFID)タグの位置を特定する方法であって、
幾何学的特徴を互いに共有するように、少なくとも1つの受信機及び少なくとも1つの送信機を配置するステップと、
前記少なくとも1つの送信機によって照射された前記少なくとも1つのFRIDタグからの受信情報信号に基づいて、位置特定用測定値を求めるステップと、
確率モデル及び求めた前記位置特定用測定値を利用して、前記少なくとも1つのRFIDタグの位置を推定するステップとを含む方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つの受信機及び前記少なくとも1つの送信機を配置するステップは、前記少なくとも1つのRFIDタグの存在しうる位置の軌跡を特定する略楕円を形成し、かつ前記少なくとも1つのRFIDタグに照射するように、前記少なくとも1つの送信機から特定距離に前記少なくとも1つの受信機を配置するステップをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記位置特定用測定値を求めるステップは、周波数微分に対する位相微分の比率に基づいて、前記少なくとも1つの送信機から前記少なくとも1つの受信機への距離を求めるステップをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記位置特定用測定値を求めるステップは、読み取り率微分に基づいて、前記少なくとも1つの送信機から前記少なくとも1つの受信機への距離を求めるステップをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1つのRFIDタグの位置を推定するステップは、逐次モンテカルロ処理又は粒子フィルタを用いる、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
粒子フィルタは、前記受信情報信号の観測読み取り率に基づいて、RFIDタグ位置の尤度を求める、請求項25に記載の方法。
【請求項1】
1又は複数の無線自動識別(RFID)タグの位置を特定する方法であって、
エキサイタにより少なくとも1つのRFIDタグに照射するステップと、
照射された前記少なくとも1つのRFIDタグから情報信号を複数の受信アンテナにより受信するステップと、
前記複数の受信アンテナそれぞれで受信した、照射された前記少なくとも1つのRFIDタグからの受信情報信号に対する位相微分を求めるステップと、
求めた前記受信情報信号の位相微分に基づいて、前記少なくとも1つのRFIDタグの位置を特定するステップとを含む方法。
【請求項2】
リーダからエキサイタへ作動信号を送信するステップをさらに含み、前記リーダ及び前記エキサイタは、共通の幾何学的特徴を互いに共有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
共有される共通の幾何学的特徴は、楕円であり、リーダ及び前記エキサイタは、前記楕円の焦点である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つのRFIDタグの位置を特定するステップは、前記受信情報信号の周波数微分に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのRFIDタグの位置を特定するステップは、位相微分対周波数微分の比に基づく、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのRFIDタグの位置を特定するステップは、前記受信情報信号の読み取り率微分に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
1又は複数のRFIDタグの位置を特定するための無線自動識別(RFID)システムであって、
複数のアンテナを有する少なくとも1つのエキサイタであって、前記複数のアンテナのうちの少なくとも2つのアンテナを介して呼出信号を選択的に送信するように構成され、かつ前記少なくとも1つのRFIDタグから、前記複数のアンテナのうちの少なくとも2つのアンテナとは異なる、前記複数のアンテナのうちの1つのアンテナを介して、受信情報信号を選択的に受信するように構成される、エキサイタと、
前記少なくとも1つのエキサイタと通信し、前記少なくとも1つのエキサイタを起動させるように構成され、前記受信情報信号の位相微分に基づいて、前記少なくとも1つのRFIDタグの位置を特定するリーダとを含むシステム。
【請求項8】
前記複数のアンテナは、均一なパターンで配置される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記複数のアンテナは、互いに等距離に配置される、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記複数のアンテナのうちの少なくとも2つのアンテナは、前記少なくとも1つのRFIDタグの存在しうる位置の軌跡を特定する、略楕円の焦点に配置される、請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
前記複数のアンテナは、対になって配置され、各アンテナ対は、前記少なくとも1つのRFIDタグの存在しうる位置の軌跡を特定する略楕円の焦点であり、前記各アンテナ対は、前記略楕円それぞれの重複が最小化されるように配置される、請求項7に記載のシステム。
【請求項12】
前記複数のアンテナは、前記少なくとも1つのエキサイタの周囲に配置され、前記複数のアンテナそれぞれの位置は、互いに異なっている、請求項7に記載のシステム。
【請求項13】
前記エキサイタは、基準信号を前記受信情報信号と混合するためにキャリア周波数を用いる、請求項7に記載のシステム。
【請求項14】
前記基準信号は、パイロット信号及びプリアンブル信号である、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
1又は複数のRFIDタグの位置を特定するための無線自動識別(RFID)システムであって、
少なくとも1つのRFIDタグと、
前記少なくとも1つのRFIDタグに照射するように構成されるアンテナアレイと、
前記アンテナアレイに接続され、前記アンテナアレイを作動させて、特定の時間枠及び特定の空間で、前記少なくとも1つのRFIDタグに対して繰り返し照射させるように構成される送信機と、
前記送信機と通信し、前記少なくとも1つのRFIDタグに繰り返し照射して、受信した受信情報信号に基づいて確率モデルを作成するように構成され、作成した前記確率モデルを粒子フィルタに適用して、適用した前記粒子フィルタの結果に基づいて前記少なくとも1つのRFIDタグの位置を求めるリーダとを含むシステム。
【請求項16】
さらに前記粒子フィルタは、各照射に基づいて、前記少なくとも1つのRFIDタグの各位置情報の重みを計算する、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
さらに前記粒子フィルタは、計算された前記重みを正規化する、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記粒子フィルタは、前記受信情報信号の位相微分に基づいて、RFIDタグ位置の尤度を求める、請求項15に記載のシステム。
【請求項19】
前記粒子フィルタは、前記受信情報信号の観測読み取り率に基づいて、RFIDタグ位置の尤度を求める、請求項15に記載のシステム。
【請求項20】
前記粒子フィルタは、高い尤度位置情報を複製及びランダム化し、前記少なくとも1つのRFIDタグの低い尤度位置情報を棄却する、請求項16に記載のシステム。
【請求項21】
さらに前記リーダは、前記少なくとも1つのRFIDタグの移動に基づいて、オフセットを加えるように構成される、請求項15に記載のシステム。
【請求項22】
1又は複数の無線自動識別(RFID)タグの位置を特定する方法であって、
幾何学的特徴を互いに共有するように、少なくとも1つの受信機及び少なくとも1つの送信機を配置するステップと、
前記少なくとも1つの送信機によって照射された前記少なくとも1つのFRIDタグからの受信情報信号に基づいて、位置特定用測定値を求めるステップと、
確率モデル及び求めた前記位置特定用測定値を利用して、前記少なくとも1つのRFIDタグの位置を推定するステップとを含む方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つの受信機及び前記少なくとも1つの送信機を配置するステップは、前記少なくとも1つのRFIDタグの存在しうる位置の軌跡を特定する略楕円を形成し、かつ前記少なくとも1つのRFIDタグに照射するように、前記少なくとも1つの送信機から特定距離に前記少なくとも1つの受信機を配置するステップをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記位置特定用測定値を求めるステップは、周波数微分に対する位相微分の比率に基づいて、前記少なくとも1つの送信機から前記少なくとも1つの受信機への距離を求めるステップをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記位置特定用測定値を求めるステップは、読み取り率微分に基づいて、前記少なくとも1つの送信機から前記少なくとも1つの受信機への距離を求めるステップをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1つのRFIDタグの位置を推定するステップは、逐次モンテカルロ処理又は粒子フィルタを用いる、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
粒子フィルタは、前記受信情報信号の観測読み取り率に基づいて、RFIDタグ位置の尤度を求める、請求項25に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図15D】
【図15E】
【図15F】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図15D】
【図15E】
【図15F】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公表番号】特表2011−520097(P2011−520097A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504244(P2011−504244)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/040584
【国際公開番号】WO2009/151778
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(509193832)モジクス, インコーポレイティッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/040584
【国際公開番号】WO2009/151778
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(509193832)モジクス, インコーポレイティッド (4)
【Fターム(参考)】
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