説明

無線装置、及び無線受信方法

【課題】無線装置をユーザの専用機として取り扱う必要なく、各ユーザを個別に呼び出すことができるようにする技術を提供する。
【解決手段】無線装置において、ユーザが所持する無線タグから、該ユーザに固有の識別情報を受信する識別情報受信手段と、識別情報受信手段により識別情報を受信したとき、該受信した識別情報を記憶する記憶手段(ステップ63)と、無線で受信を行う無線受信手段と、無線受信手段により受信した受信信号において前記識別情報が指定されている場合、該指定された識別情報と、記憶手段に記憶されている最新の識別情報とが一致するか否かを判定する判定手段(ステップ65)と、判定手段による判定結果に応じ、該判定結果に係る受信信号に関連する出力を許容し又は阻止する出力許否手段(ステップ65、66)とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線により受信を行う無線装置、及び該無線装置における無線受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線機間におけるグループ呼出し等を可能とするプロトコルとして、フリートシンクという呼出し用のプロトコルが知られている。このプロトコルによれば、各無線機が属するグループを識別するためのグループID及び各無線機に固有の個別IDが各無線機に割り当てられる。そして、呼出しに際しては、グループIDや個別IDを指定することにより、特定の部署に属する者や、個々の相手を個別に呼び出すことができる(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2007−88791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述従来技術によれば、個別呼出しに使用される識別情報は、各無線機に固有の個別IDであり、その無線機のユーザに固有のものではない。したがって、無線機のユーザが変わった場合には、無線機に登録されている個別IDを、通常、専用ソフトウェアにより変更する必要がある。このため、無線機の個別IDをユーザと対応付けるためには事実上、各無線機は各ユーザの専用機とならざるを得ない。
【0005】
本発明の目的は、このような従来技術の問題点に鑑み、無線機をユーザの専用機として取り扱う必要なく、各ユーザを個別に呼び出すことができるようにする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するため、第1の発明に係る無線装置は、ユーザが所持する無線タグから、該ユーザに固有の識別情報を受信する識別情報受信手段と、前記識別情報受信手段により前記識別情報を受信したとき、該受信した識別情報を記憶する記憶手段と、無線で受信を行う無線受信手段と、前記無線受信手段により受信した受信信号において前記識別情報が指定されている場合、該指定された識別情報と、前記記憶手段に記憶されている最新の識別情報とが一致するか否かを判定する判定手段と、前記判定手段による判定結果に応じ、該判定結果に係る受信信号に基づく出力を許容し又は阻止する出力許否手段とを具備することを特徴とする。ここで、受信信号に基づく出力としては、呼出し音の出力や、受信信号を復調して得られるメッセージの表示や音声信号の出力が該当する。
【0007】
この構成において、無線装置は、ユーザが変更された場合には、識別情報受信手段により、変更後のユーザの無線タグから、該ユーザの識別情報を受信し、記憶することができる。つまり無線装置は、常に、それを実際に使用しているユーザの識別情報を保持することができる。そして無線装置は、無線受信手段による受信信号においていずれかのユーザの識別情報が指定されている場合、その識別情報と、記憶手段に記憶されている最新の識別情報とが一致するときにのみ、該受信信号に基づく出力を許容することができる。したがってユーザが、使用する無線装置を変更した場合でも、送信側は、そのユーザの識別情報を指定することにより、そのユーザを呼び出すことができる。
【0008】
第2の発明に係る無線装置は、第1発明において、前記無線タグは、前記識別情報を定期的に送信する能動型のものであることを特徴とすることを特徴とする。
【0009】
第3の発明に係る無線装置は、第1発明において、前記無線タグは、前記識別情報を、前記無線タグにおける所定の操作に応じて送信する能動型のものであることを特徴とする。
【0010】
第4の発明に係る無線装置は、第1発明において、前記無線タグは、前記無線装置における所定の操作に応じて前記識別情報受信手段により前記識別情報が読み取られる受動型のものであることを特徴とする。
【0011】
第5の発明に係る無線受信方法は、無線装置における無線受信方法であって、ユーザが所持する無線タグから、該ユーザに固有の識別情報を受信する識別情報受信工程と、前記識別情報受信工程において前記識別情報を受信したとき、該受信した識別情報を記憶する記憶工程と、無線で受信を行う無線受信工程と、前記無線受信工程により受信した受信信号において前記識別情報が指定されている場合、該指定された識別情報と、前記記憶手段に記憶されている最新の識別情報とが一致するか否かを判定する判定工程と、前記判定工程による判定結果に応じ、該判定結果に係る受信信号に基づく出力を許容し又は阻止する出力許否工程とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ユーザの無線タグからその識別情報を受信して記憶するとともに、無線受信手段により受信した受信信号において識別情報が指定されている場合には、その識別情報と、記憶している最新の識別情報とが一致するか否かに応じて、該受信信号に基づく出力の許否を判定するようにしたため、無線装置をユーザ専用のものとして扱う必要なく、各ユーザを個別に呼び出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明の一実施形態に係る無線通信システムの構成を示す。同図に示すように、このシステムは、微弱無線(ショートレンジラジオ)ビーコンを送信するアクティブ型のRFIDタグ1、この微弱無線ビーコンを受信するビーコン受信機2、ビーコン受信機2に接続された移動局無線機3、移動局無線機3との通信を行う他の移動局無線機4を備える。RFIDタグ1は移動局無線機3や4の各ユーザが所持し、各RFIDタグ1は、それを所持するユーザを識別するための個人IDを、IDビーコンとして定期的に送信するものである。
【0014】
図2はRFIDタグ1の構成を示すブロック図である。RFIDタグ1は、同図に示すように、搬送波を生成し、ビーコンデータにより変調を行う発振部11、発振部11からの変調された搬送波を増幅し、アンテナから出力する電力増幅部12、発振部11及び電力制御部12を制御する中央制御処理部13、中央制御処理部13による制御に用いられる制御情報を記憶する制御情報記憶部14を備える。
【0015】
制御情報記憶部14は、送信周波数、送信レベル、送信タイミング、送信内容等の制御情報を記憶する。中央制御処理部13は、制御情報記憶部14が記憶している制御情報に基づき、発振部11における搬送波の周波数、変調等の制御や、電力増幅部12の出力の制御を行い、サイクリックにビーコンの送信を行う。1サイクルにたとえば3回ずつビーコンの送信が行われる。より確実にビーコンの受信が行われるようにするためである。各回のビーコンデータの内容は同一であり、その内容にはRFIDタグ1を所持するユーザの個人IDが含まれる。
【0016】
図3はビーコン受信機2の構成を示すブロック図である。ビーコン受信機2は、同図に示すように、アンテナから入力される受信信号から所定の帯域を抽出する帯域フィルタ21、抽出された所定帯域の受信信号を増幅する高周波増幅部22、高周波増幅部22からの高周波を中間周波に変換し、検波を行う局部発振・検波部23、検波により得られた低周波信号を増幅する低周波増幅部24、及び低周波増幅部24からの信号を処理してビーコンデータを得るとともに、高周波増幅部22における増幅率の制御や、局部発振・検波部23における局部発振周波数の制御を行う中央制御処理部25を備える。
【0017】
図4は移動局無線機3の構成を示すブロック図である。移動局無線機3は、同図に示すように、無線機本体31、無線機本体31を制御する中央制御処理部32、及び中央制御処理部32に接続されたビーコン情報記憶部33を備える。中央制御処理部32はビーコン受信機2からのビーコンデータを受け取り、該ビーコンデータ中の個人IDを、ビーコン情報記憶部33に記憶する。記憶された個人IDは、個人IDを指定した呼出しに際して用いられる。
【0018】
図5は、ビーコン受信機2の中央処理制御部25による処理を示すフローチャートである。この処理においては、1サイクルで送信される各ビーコンデータのうち、受信できた最後のものがビーコンバッファに残るようにしてそのビーコンデータを取得し、これを移動局無線機3に供給するようにしている。すなわち、処理を開始すると中央処理制御部25は、まず、ステップ71においてビーコン受信機2を受信待機状態とし、ステップ72においてビーコンの受信の有無を判定する。ビーコンを受信したと判定した場合にはステップ73へ進み、得られたビーコンデータによってビーコンバッファを上書きし、さらにステップ74において送信待機タイマをリセットして、ステップ71に戻る。この送信待機タイマは、1サイクルの送信が終了し、そのサイクルについての無線機用データの供給を行うタイミングを判定するために用いられる。
【0019】
ステップ72においてビーコンを受信しなかったと判定した場合にはステップ75へ進み、ビーコンバッファが空であるかどうかを判定する。空であると判定した場合にはステップ71に戻る。空ではないと判定した場合にはステップ76へ進み、送信待機タイマがオーバフローしたかどうかを判定する。オーバフローしていないと判定した場合にはステップ71へ戻る。オーバフローしたと判定した場合には、ステップ77へ進み、ビーコンバッファの内容を、移動局無線機3に供給する。この後、ステップ78においてビーコンバッファの内容を破棄し、ステップ71に戻る。
【0020】
図6は移動局無線機3における中央制御部32による処理の一部を示すフローチャートである。受信待機状態において処理を開始すると、ステップ61において終了と判定されない場合には、ステップ62へ進み、ビーコン受信機2からのビーコンデータの受信の有無を判定する。このビーコンデータは、図5のステップ77において供給されるものである。ビーコンデータの受信がないと判定した場合にはステップ61へ戻る。ビーコンデータの受信があったと判定した場合にはステップ63へ進み、ビーコンデータ中の個人IDをビーコン情報記憶部31において上書きして記憶する。
【0021】
次に、ステップ64において、個人IDを指定したメッセージを伴う呼出しがあったかどうかを判定する。なお、メッセージ送受用のプロトコルとしては、たとえば、上述のフリートシンクが用いられる。この呼出しがなかったと判定した場合にはステップ61へ戻る。この呼出しがあったと判定した場合にはステップ65へ進み、その個人IDと、ビーコン情報記憶部31に記憶されている個人IDとが一致するかどうかを判定する。一致しないと判定した場合にはステップ61へ戻る。一致すると判定した場合にはステップ66へ進み、呼出し音の出力や、引き続く受信信号に基づく音声やメッセージの出力を許容する。これによりユーザは呼出しに対する応答が可能となり、その後の通信を行うことができる。その後ステップ61へ戻る。ステップ61において、電源オフ等のために終了と判定された場合には、図6の処理を終了する。
【0022】
これによれば、移動局無線機3を使用するユーザの個人IDが定期的にビーコン情報記憶部33において上書きされるので(ステップ63)、ユーザが変わった場合には、変更後のユーザの個人IDがビーコン情報記憶部31において記憶されることになる。したがって、移動局無線機3は常に、それを使用中のユーザの個人IDをビーコン情報記憶部31において有することになる。
【0023】
この状況において、個人IDを指定したメッセージを伴う呼出しがあった場合、その個人IDと、記憶されている個人IDとが一致するときにのみ、音声やメッセージの出力が行われる(ステップ64〜66)。すなわち、その個人IDに対応するユーザが所持する移動局無線機3のみがその呼出しに応答することができる。
【0024】
本実施形態によれば、移動局無線機3は、常に、それを使用中のユーザの個人IDを保持することができるので、他の移動局無線機4からは、所望のユーザの個人IDを指定して呼出しを行うことにより、そのユーザが使用中の移動局無線機3を呼び出すことができる。つまり、所望のユーザがどの移動局無線機3を使用中であっても、そのユーザを呼び出すことができる。このような個人IDを指定した呼出しは、移動局無線機3や4において、各ユーザとその個人IDとの対応テーブルを保持しておき、呼び出したいユーザの選択を受け入れることにより、容易に行うことができる。
【0025】
したがって、各移動局無線機3は、従来のように個別IDによるユーザの呼出しを可能にする目的で各ユーザの専用機とする必要はなくなり、各ユーザ間で共用することができる。したがって、日々の始業・終業時における各移動局無線機3の集配やメンテナンス、機種変更による移動局無線機3の入替え作業等を効率的に行うことができる。
【0026】
また、ビーコン情報記憶部33として、従来の個別呼出し用の個別IDを記憶している領域の全部又は一部を用いることにより、個別呼出しを、個人IDを指定した呼出しとして行うことができる。つまり、従来の個別呼出しの機能を利用し、移動局無線機に固有の個別IDを指定した呼出しに代えて、ユーザに固有の個人IDを指定した呼出しを行い、そのユーザが現在使用中の移動局無線機3を呼び出すことができる。
【0027】
また、ビーコン情報記憶部33として、従来の個別呼出し用の個別IDを記憶する領域以外の領域を用いることにより、個別IDを指定した呼出し、及び個人IDを指定した呼出しを、必要に応じて使い分けることができる。すなわち、無線ネットワーク内に存在する移動局無線機3や4と、ユーザとを別個に管理することができる。それにより、移動局無線機3や4についての設備としての管理を行うこともできる。
【0028】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されることなく、適宜変形して実施することができる。たとえば上述においては、RFIDタグ1として、定期的にビーコンを送信するものを用いているが、この代わりに、ボタンの押下等に応じて個人IDを送信するものを用いてもよい。
【0029】
また、上述においては、RFIDタグ1として、能動型のものを用いているが、この代わりに受動型のものを用いるようにしてもよい。この場合、ビーコン受信機2や移動局無線機3におけるボタンの押下等に応じ、ビーコン受信機2により、RFIDタグ1の個人IDが読み取られることになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係る無線通信システムの構成を示す図である。
【図2】図1のシステムにおけるビーコン送信機の構成を示すブロック図である。
【図3】図1のシステムにおけるビーコン受信機の構成を示すブロック図である。
【図4】図1のシステムにおける移動局無線機の構成を示すブロック図である。
【図5】図1のシステムにおけるビーコン受信機の中央処理制御部による処理を示すフローチャートである。
【図6】図1のシステムにおける移動局無線機における中央制御部による処理の一部を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0031】
1:RFIDタグ、2:ビーコン受信機、3:移動局無線機、4:移動局無線機、11:発振部、12:電力増幅部、13:中央制御処理部、14:制御情報記憶部、21:帯域フィルタ、22:高周波増幅部、23:局部発振・検波部、24:低周波増幅部、25:中央制御処理部、31:無線機本体、32:中央制御処理部、33:ビーコン情報記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが所持する無線タグから、該ユーザに固有の識別情報を受信する識別情報受信手段と、
前記識別情報受信手段により前記識別情報を受信したとき、該受信した識別情報を記憶する記憶手段と、
無線で受信を行う無線受信手段と、
前記無線受信手段により受信した受信信号において前記識別情報が指定されている場合、該指定された識別情報と、前記記憶手段に記憶されている最新の識別情報とが一致するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段による判定結果に応じ、該判定結果に係る受信信号に基づく出力を許容し又は阻止する出力許否手段とを具備することを特徴とする無線装置。
【請求項2】
前記無線タグは、前記識別情報を定期的に送信する能動型のものであることを特徴とする請求項1に記載の無線装置。
【請求項3】
前記無線タグは、前記識別情報を、前記無線タグにおける所定の操作に応じて送信する能動型のものであることを特徴とする請求項1に記載の無線装置。
【請求項4】
前記無線タグは、前記無線装置における所定の操作に応じて前記識別情報受信手段により前記識別情報が読み取られる受動型のものであることを特徴とする請求項1に記載の無線装置。
【請求項5】
無線装置における無線受信方法であって、
ユーザが所持する無線タグから、該ユーザに固有の識別情報を受信する識別情報受信工程と、
前記識別情報受信工程において前記識別情報を受信したとき、該受信した識別情報を記憶する記憶工程と、
無線で受信を行う無線受信工程と、
前記無線受信工程により受信した受信信号において前記識別情報が指定されている場合、該指定された識別情報と、前記記憶工程により記憶されている最新の識別情報とが一致するか否かを判定する判定工程と、
前記判定工程による判定結果に応じ、該判定結果に係る受信信号に基づく出力を許容し又は阻止する出力許否工程とを具備することを特徴とする無線受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−232057(P2009−232057A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73609(P2008−73609)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】