説明

無線装置

【課題】周囲装置で発生する周期的なパルス性ノイズの影響を受けないで送受信ができる無線装置を提供する。
【解決手段】車室内の無線装置から、周期的パルス性ノイズを発生する車載装置への配線56のGND線54の電圧変動から周期的パルス性ノイズを含む第1の信号をノイズ検出部50で検出し、所定の第1周波数帯域の信号のみを通過させる第1帯域通過フィルタ60に入力する。また、検出用アンテナ20で受信した第2の信号を、無線通信用電波の周波数帯域以外の所定の第2周波数帯域の信号のみを通過させる第2帯域通過フィルタ70に入力する。2つのフィルタ60,70を通過した各信号を時系列で比較することにより、車室内ノイズの発生タイミングを特定し、その発生タイミングを、送信回路18を介して外部無線装置100へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周辺装置で発生する周期的なパルス性ノイズの影響を受けないで送受信ができる無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自家用車などの車室内には、ワイパー用のモータやエアコンのブロアモータなどのように、周期的にパルス性のノイズを発生する機器が存在する。このため、車載無線装置が外部の通信相手からの電波を受信するタイミングと、車室内で周期的に発生するパルス性ノイズの発生タイミングと、が重なると、車載無線装置で受信する受信波にノイズが重畳して正しく受信できないという現象が発生するという問題がある。
【0003】
この問題を解消するため、車室内にノイズ検出のための専用のアンテナ(ノイズ検出用アンテナ)を設置し、車載無線装置の電波の使用周波数帯域において、ノイズ検出用アンテナで受信した周波数帯域のノイズの干渉成分を推定し、その干渉成分を除去することで、希望する受信波を正しく受信できるようにした車載無線装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−225002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献1に記載の車載無線装置では、車載無線装置用アンテナ以外に新たにノイズ検出用アンテナを車室内に設置する必要がある。この場合、ノイズを効率よく除去するために、ノイズ検出用アンテナを、車室内ノイズを感度良く受信できる場所に設置する必要があるが、実装スペースや外観等の制約上アンテナ設置場所は限られてくる。その結果、アンテナの配置によっては、希望する受信波や車外のノイズも同時に受信してしまい、車室内ノイズを感度よく受信するのが困難になるという問題がある。
【0006】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたもので、周辺装置で発生する周期的なパルス性ノイズの影響を受けないで送受信ができる無線装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この欄においては、発明に対する理解を容易にするため、必要に応じて「発明を実施するための形態」欄において用いた符号を付すが、この符号によって請求の範囲を限定することを意味するものではない。
【0008】
上記「発明が解決しようとする課題」において述べた問題を解決するためになされた発明は、無線通信用電波を送受信するための無線通信用アンテナ(10)を備えた無線装置(2)であって、ノイズ検出手段(50)、タイミング検出手段(80)及び送信手段(9)を備えている。
【0009】
ノイズ検出手段(50)は、設置位置周囲で周期的に発生するパルス性ノイズを検出し、タイミング検出手段(80)は、ノイズ検出手段(50)で検出したパルス性ノイズの発生タイミングを検出する。また、送信手段(9)は、タイミング検出手段(80)で検出したパルス性ノイズの発生タイミングを外部へ送信する。
【0010】
このような無線装置(2)は、設置位置周囲で発生する周期的なパルス性ノイズの影響を受けないで送受信ができる。以下、その理由を説明する。
例えば、エアコンのブロアモータのように、周期的にパルス性ノイズを発生する周辺装置(40)が無線装置(2)周辺に存在する場合、そのモータなどで周期的に発生するパルス性ノイズによって無線装置(2)の受信が妨げられることがある。
【0011】
そこで、ノイズ検出手段(50)で、無線装置(2)周囲で周期的に発生するパルス性ノイズを検出し、タイミング検出手段(80)で、パルス性ノイズの発生タイミングを検出する。そして、検出した発生タイミングを送信手段(9)によって、外部へ送信する。
【0012】
すると、外部にある送受信機において、本無線装置(2)から送信されるパルス性ノイズの発生タイミングを受信すれば、どのタイミングで本無線装置(2)が電波を正常に受信できない状態となるのかが分かる。
【0013】
そこで、外部にある外部無線装置(100)において、パルス性ノイズの発生タイミング(送信手段(9)から送信された発生タイミング)以外の時間帯に電波を送信すれば、本無線装置(2)では、電波を正常に受信することができる。
【0014】
つまり、周囲で発生する周期的なパルス性ノイズの影響を受けないで送受信ができる無線装置(2)とすることができる。
なお、ここで「ノイズ」とは、電気的信号における電気的なノイズを意味している。
【0015】
ところで、周辺装置(40)が周期的にパルス性のノイズを発生するタイミングを検出するには、種々の方法が考えられる。
例えば、周辺装置(40)が車両(30)のワイパーのようにトリガ信号を受けて作動するものであれば、請求項2に記載のように、周辺装置(40)を作動させるためのトリガ信号に基づいてパルス性ノイズの発生タイミングを検出すればよい。
【0016】
そこで、ノイズ検出手段(50)によって、周辺装置(40)を作動させるためのトリガ信号を検出し、タイミング検出手段(80)では、ノイズ検出手段(50)で検出したトリガ信号に基づいてパルス性ノイズの発生タイミングを検出するようにすると、容易、かつ、簡易な構成でパルス性ノイズの発生タイミングを検出することができる。
【0017】
また、請求項3に記載のように、ノイズ検出手段(50)は、周辺装置(40)で発生するパルス性ノイズを信号として測定する測定手段(52,54)を備え、タイミング検出手段(80)は、ノイズ検出手段(50)の測定手段(52,54)で測定した信号の大きさが所定の閾値を超えた場合にパルス性ノイズとして判定し、パルス性ノイズと判定した信号の周期に基づいてパルス性ノイズの発生タイミングを検出するようにしてもよい。
【0018】
また、周辺装置(40)が車両(30)に搭載された車載装置(40)である場合、発生するパルス性ノイズを信号として測定するには、請求項4に記載のように、ノイズ検出手段(50)は、測定手段(52,54)として、車両(30)の車室(32)内に設置され、車室(32)内で発生する第1の信号を検出するための導線(54)を備え、さらに、導線(54)で検出した第1の信号のうち車両(30)の車体により車両(30)外部から到来するノイズに対してシールドされる所定の第1周波数帯域の信号を通過させる第1帯域通過フィルタ(60)を備え、タイミング検出手段(80)は、第1帯域通過フィルタ(60)を通過した第1の信号の大きさが所定の閾値を超えた場合にパルス性ノイズと判定し、パルス性ノイズと判定した第1の信号の周期に基づいてパルス性ノイズの発生タイミングを検出するようにするとよい。
【0019】
このようにすると、車両(30)内で発生する第1の信号を車室(32)内に導線(54)を設置するだけで容易に検出できる。
また、第1帯域通過フィルタ(60)によって、車室(32)内で検出した第1の信号のうち、車体により車両(30)外部から到来するノイズに対してシールドされる所定の第1周波数帯域の信号のみを通過させるので、車室(32)外から車室(32)内に侵入してくる信号以外の車室(32)内で発生した信号のみのタイミングを検出することができる。
【0020】
また、請求項5に記載のように、ノイズ検出手段(50)は、導線(54)として、周期的にパルス性ノイズを発生する車載装置(40)への配線(56)に並列に配設したGND線(54)を用い、GND線(54)の端部を、電流検出用のシャント抵抗(58)を介して、車両(30)の車体に接続し、シャント抵抗(58)の両端の電圧を検出することにより周期的に発生するパルス性ノイズを検出するようにすると、無線装置(2)を容易、かつ、簡易に構成することができる。
【0021】
ところで、車両(30)に搭載されている車載装置(40)から発生するパルス性ノイズが、車載されている無線装置(2)の車室(32)内の配線(56)に混入し、無線装置(2)の無線通信用アンテナ(10)まで到達して、無線装置(2)の送受信を妨げる場合がある。
【0022】
そこで、請求項6に記載のように、無線通信用電波の周波数帯域以外の周波数帯域で電波を受信可能な、車両(30)の車室(32)外部に設置された検出用アンテナ(20)と、検出用アンテナ(20)で受信した第2の信号のうち、無線通信用電波の周波数帯域以外の所定の第2周波数帯域の信号のみを通過させる第2帯域通過フィルタ(70)と、を備え、タイミング検出手段(80)は、第1帯域通過フィルタ(60)を通過した第1の信号及び第2帯域通過フィルタ(70)を通過した第2の信号に基づいて、車載装置(40)で発生し、車室(32)内において、無線通信用アンテナ(10)までの配線(56)に混入し、無線通信用アンテナ(10)まで到達するパルス性ノイズの発生タイミングを特定するようにするとよい。
【0023】
このようにすると、車室(32)内で周期的に発生し、無線通信用アンテナ(10)に到達するパルス性ノイズの発生タイミングを特定することができる。以下その理由を説明する。
【0024】
車両(30)の外部及び内部で発生するノイズには、図6に示すように、車両(30)外部で発生して受信されるパルス性ノイズ(以下、外来ノイズとも呼ぶ)、車室(32)で周期的に発生して、ハーネスなどの車両(30)の配線(56)を介して無線通信用アンテナ(10)にまで到達するパルス性ノイズ及び車室(32)内(32)で発生し、配線(56)に混入するが、無線通信用アンテナ(10)にまでは到達しないパルス性ノイズがある。
【0025】
したがって、配線(56)によって伝送される信号(第1の信号)は、それらの3種類のノイズが混入した信号となる。
そこで、ノイズ検出手段(50)で受信した第1の信号を、車体(34)により車両(30)外部から到来するノイズに対してシールドされる所定の第1周波数帯域の信号のみを通過させるフィルタを通すと、外来ノイズが除去され、車室内ノイズとその発生時刻が特定できる。
【0026】
さらに、車室内ノイズの中から、車室(32)外に設置された無線通信用アンテナ(10)までは到達しない車室内ノイズを除去すると、車室内ノイズのうち無線通信用アンテナ(10)に到達して、無線通信用アンテナ(10)における送受信を阻害するノイズのみを検出することができる。
【0027】
そこで、車室(32)外に設置された無線通信用アンテナ(10)までは達しない車室内ノイズを除去するために、検出用アンテナ(20)で受信した第2の信号を用いる。つまり、パルス性ノイズの周波数分布は広いため、無線装置(2)のために使用される希望する周波数帯域以外の周波数帯域で受信することで、車室(32)外に設置された無線通信用アンテナ(10)でパルス性ノイズが受信されているか否かを判定することはできる。
【0028】
つまり、希望する周波数帯域以外の周波数帯域で電波を受信することにより、パルス性ノイズの受信電力などの性質は分からないものの、パルス性ノイズの有無及びパルス性ノイズを受信した時刻は分かる。
【0029】
一方、希望する周波数帯域で電波を受信すると、パルス性ノイズと共に希望波も受信していしまい、パルス性ノイズの有無が分からない。
そこで、受信周波数帯域が広く、無線通信用電波の周波数帯域の電波を受信可能な検出用アンテナ(20)(例えば、ラジオ・TV検出用アンテナなど)で受信した第2の信号を第2帯域通過フィルタ(70)通過させて、無線装置(2)のために使用される電波の周波数帯域以外の第2周波数帯域で受信することで、外来ノイズ及び車室内ノイズのうち無線通信用アンテナ(10)に到達する車室内ノイズが受信されているか否か及びその時刻が特定できる。
【0030】
したがって、第1帯域通過フィルタ(60)を通過させた第1の信号と第2帯域通過フィルタ(70)を通過させた第2の信号とに基づいて、車室内ノイズのうち無線通信用アンテナ(10)に到達する車室内ノイズのみを特定するとともに、その発生時刻を特定することができる。
【0031】
換言すれば、外来ノイズ及び車室内ノイズのうち無線通信用アンテナ(10)に到達しない車室内ノイズを除去することができることとなる。
また、請求項7に記載のように、タイミング検出手段(80)は、第1帯域通過フィルタ(60)を通過した第1の信号及び第2帯域通過フィルタ(70)を通過した第2の信号を時系列上で乗算し、その値が所定の値を超えた信号を、周期的にパルス性ノイズを発生する車載装置(40)で発生し、車室(32)内において無線通信用アンテナ(10)までの配線(56)に混入して、無線通信用アンテナ(10)まで到達するパルス性ノイズの発生タイミングを特定するようにするとよい。
【0032】
このようにすれば、第1帯域通過フィルタ(60)を通過させた第1の信号と第2帯域通過フィルタ(70)を通過させた第2の信号とを時系列上で乗算し、その値が所定の値を超えた信号を、周期的にパルス性ノイズを発生する車載装置(40)で発生し、無線装置(2)から無線通信用アンテナ(10)までの配線(56)に混入して、無線通信用アンテナ(10)まで到達する車室内ノイズとする。
【0033】
そうすれば、車室内ノイズのうち無線通信用アンテナ(10)に到達する車室内ノイズのみを特定するとともに、その発生時刻を特定することができる。つまり、パルス性ノイズの発生タイミングを特定することができる。
【0034】
ところで、検出用アンテナ(20)が設置されていない場合や検出用アンテナ(20)で受信可能な電波の周波数帯域が狭く、ノイズを受信できないような場合には、請求項8に記載のようにすればよい。
【0035】
すなわち、無線通信用アンテナ(10)で受信した第3の信号のうち、無線通信用電波の周波数帯域以外の所定の第2周波数帯域の信号のみを通過させる第2帯域通過フィルタ(70)を備え、タイミング検出手段(80)は、第1帯域通過フィルタ(60)を通過した第1の信号及び前記第2帯域通過フィルタ(70)を通過した第3の信号を時系列上で乗算し、その値が所定の値を超えた信号を、周期的にパルス性ノイズを発生する車載装置(40)で発生し、無線装置(2)から無線通信用アンテナ(10)までの配線(56)に混入して、無線通信用アンテナ(10)まで到達する車室内ノイズとして、その発生タイミングを特定するのである。
【0036】
このようにすれば、無線通信用アンテナ(10)で受信可能な電波の周波数帯域が広い場合には、検出用アンテナ(20)を用いることなく、車室(32)内で発生し無線通信用アンテナ(10)まで到達する周期的なパルス性ノイズの発生タイミングを特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】無線通信システムの概略の構成を示すブロック図である。
【図2】車室内において車室内ノイズを発生する車載装置への配線(ハーネス)のGND線の電圧変動から周期的パルス性ノイズを検出するための原理を説明する図である。
【図3】GND線から車室内ノイズを検出するための構成を示す図である。
【図4】タイミング検出部において、車室内ノイズを検出する方法の説明図である。
【図5】パルス性ノイズの周波数特性を示す図である。
【図6】実際の車両において発生するノイズの様子を示す図である。
【図7】第2実施形態における無線通信システムの概略の構成を示すブロック図である。
【図8】第3実施形態における無線通信システムの概略の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明が適用された実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0039】
[第1実施形態]
(無線通信システム1の構成)
図1は、本発明が適用された無線通信システム1の概略の構成を示すブロック図である。また、図2は、車室32内において車室内ノイズを発生する車載装置40への配線(ハーネス)56に並列に配設したGND線54の電圧変動から周期的パルス性ノイズを検出するための原理を説明する図であり、図3は、GND線54から車室内ノイズを検出するための構成を示す図である。
【0040】
図1に示すように、無線通信システム1は、車載無線装置2及び外部無線装置100を備えている。また、車載無線装置2は、ノイズ発生タイミング特定装置3及び送受信部9を備えている。
【0041】
(ノイズ発生タイミング特定装置3の構成)
ノイズ発生タイミング特定装置3は、ノイズ検出部50、第1帯域通過フィルタ60、第2帯域通過フィルタ70及びタイミング検出部80を備えている。また、ノイズ発生タイミング特定装置3(の第2帯域通過フィルタ70)には、検出用アンテナ20が接続されている。
【0042】
ノイズ検出部50は、ノイズ測定部52とGND線54とを備えており、図2に示すように、車室32内に設置されている車載無線装置2から、周期的にパルス性ノイズを発生する車載装置40への配線(ハーネス)56に並列に配設したGND線54に流れる電流の変動から周期的パルス性ノイズを検出する。
【0043】
GND線54は、図2に示すように、配線56に近接して、並列に配設されたGND配線である。
ノイズ測定部52の構成は、図3に示すようになっている。つまり、車載無線装置2内部において、GND線54の端部を電流検出用のシャント抵抗58の一端に接続し、シャント抵抗58の他端を車載無線装置2の筐体に接続する。また、筐体を車両30の車体34(車体GND)に接続する。
【0044】
そして、シャント抵抗58の両端の電圧を検出することによって周期的パルス性ノイズを電圧値として検出することができるようになっている。このようにして検出できる周期的なパルス性ノイズを車室内ノイズと呼ぶ。
【0045】
第1帯域通過フィルタ60は、ノイズ検出部50で受信した第1の信号のうち、車体34により、車両30外部から到来するノイズに対してシールドされる所定の第1周波数帯域の信号のみを通過させるフィルタである。
【0046】
第2帯域通過フィルタ70は、検出用アンテナ20で受信した第2の信号のうち、無線通信用電波の周波数帯域以外の所定の第2周波数帯域の信号のみを通過させるフィルタである。
【0047】
ここで所定の第2周波数帯域とは、無線通信用電波の周波数帯域以外の周波数帯域で、かつ、検出用アンテナ20が本来受信すべき電波の周波数帯域(例えば、車室32内で視聴する、AMラジオ放送、FMラジオ放送或いはTV放送などの放送に用いられる電波の周波数帯域)以外の周波数帯域を意味している。
【0048】
タイミング検出部80は、第1帯域通過フィルタ60を通過した第1の信号及び第2帯域通過フィルタ70を通過した第2の信号を時系列で比較することにより、無線通信用アンテナ10に混入する、周期的にパルス性ノイズを発生する車載装置40からのノイズの周期を特定し、特定した周期及び時刻からノイズの発生タイミングを特定する。
【0049】
検出用アンテナ20は、無線通信用電波の周波数帯域を含み、かつ、無線通信用電波よりも広い周波数帯域の電波を受信可能なアンテナである。
具体的には、車室32内で視聴する、AMラジオ放送、FMラジオ放送或いはTV放送などの放送に用いられる周波数帯域の電波を受信するためのアンテナであり、車体34に取り付けられたロッド型アンテナ或いはフロントガラスやリアガラスに埋め込まれた導体線アンテナなどである。
【0050】
ここで、タイミング検出部80において、車室内ノイズの発生タイミングを検出する方法について、図4及び図5に基づいて説明する。図4は、タイミング検出部80において、車室内ノイズを検出する方法の説明図であり、図5は、パルス性ノイズの周波数特性を示す図である。
【0051】
検出用アンテナ20で受信した第2の信号のうち第2帯域通過フィルタ70を通過した信号は、無線通信用電波の周波数帯域以外の周波数帯域(第2周波数帯域)の信号となり、図4(a)中に、A,B,C(以下、ノイズA、ノイズB、ノイズCと呼ぶ)で示すようなノイズとなる。
【0052】
なお、本第1実施形態では、特定したいパルス性ノイズを上記「ノイズA」、「ノイズB」としたが、特定したいノイズは、これに限定されるものではない。
ここで、検出用アンテナ20で受信した第2の信号に含まれるパルス性ノイズの周波数分布は、図5に示すように広いため、車載無線装置2のために使用される電波の周波数帯域以外の周波数帯域で受信することで、パルス性ノイズが受信されているか否かを判定することはできる。
【0053】
つまり、車載無線装置2で使用される電波の周波数帯域以外の周波数帯域で電波を受信することにより、パルス性ノイズの受信電力などの性質は分からないものの、パルス性ノイズの有無及びパルス性ノイズを受信した時刻は分かる。
【0054】
一方、希望する周波数帯域で電波を受信すると、パルス性ノイズと共に希望波も受信していしまい、パルス性ノイズの有無が分からない。
そこで、受信周波数帯域が広く、無線通信用電波の周波数帯域の電波を受信可能な検出用アンテナ20(ラジオ・TV検出用アンテナなど)で受信した第2の信号を第2帯域通過フィルタ70通過させて、車載無線装置2のために使用される受信波以外の周波数帯域(第2周波数帯域)で受信することで、外来ノイズ及び車室内ノイズのうち無線通信用アンテナ10に到達する車室内ノイズが受信されているか否か及びその時刻が特定できる。
【0055】
ここで、図4(a)において、ノイズA,Bは、車室内ノイズであって、ハーネス56を介して、車体34外部に搭載されたアンテナ(無線通信用アンテナ10、検出用アンテナ20)にまで到達するノイズを示している。
【0056】
また、ノイズCは、車両30外部からのノイズ(以下、「外来ノイズ」ともよぶ)を示している。なお、この段階では、ノイズA,B,Cが外来ノイズであるのか、車室内ノイズであるのかは判定できない。
【0057】
そこで、前述のように、ハーネス56にGND線54を並列に配設することで、ハーネス56に重畳する車室内ノイズを検出する。
この車室内ノイズには、図4(b)に示すように、ノイズA、Bの他にノイズDが含まれる。このノイズDは、車室内ノイズであるが、車体34外部に搭載されたアンテナまでは到達しないノイズである。実際の車両30において発生するノイズの様子を図6に示す。
【0058】
このように、ハーネス56には、車室32内で発生した車室内ノイズ(ノイズA,B,D)に加えて、外来ノイズ(ノイズC)も重畳するため、車室内ノイズを検出するためには、外来ノイズを排除する必要がある。
【0059】
そこで、特定の周波数帯域(第1周波数帯域)では車両30の車体34が車両30外部から到来するノイズに対してシールドとして作用し、外来ノイズは車室内まで届かなくなる現象を利用する。
【0060】
つまり、ハーネス56で受信したノイズを、車体34で車両30外部から到来するノイズに対してシールドされる周波数帯域に制限する第1帯域通過フィルタに通過させることで、外来ノイズを排除して車室内ノイズだけを抽出する。
【0061】
すると、ハーネス56で受信された第2の信号から外来ノイズC(図4(b)に破線で示す)が消去されるとともに、車室内ノイズであって、車体34外部に搭載されたアンテナまで到達するノイズA,B及び車室内ノイズであるが、車体34外部に搭載されたアンテナまでは到達しないノイズDが残る。
【0062】
ここで、図4(a)に示す検出用アンテナ20で受信した第2の信号に、図4(b)に示す信号を時系列上で掛け合わせる、つまり、同時刻において、ノイズレベルを掛け合わせると、外来ノイズC及び、車体34外部に搭載されたアンテナ、つまり無線通信用アンテナ10に到達しない車室内ノイズDは消去されて、車室32内から無線通信用アンテナ10に到達するノイズA,Bだけを検出できるのである。
【0063】
また、タイミング検出部80におけるノイズの周期の特定は、ノイズ検出部50において検出した車室内ノイズ(図4(c)中のノイズA、B)のうち、ノイズレベルの等しいノイズA及びノイズBそれぞれの時間間隔を計測することによって行う。
【0064】
このようにしてノイズA,Bの周期と発生する時刻からノイズA,Bが発生するタイミング(次にノイズA,Bが発生する予想時刻)を特定し、特定したタイミングを、後述する送受信部9の送信回路18を介して外部無線装置100へ送信する。
【0065】
(送受信部9の構成)
送受信部9は、無線通信用アンテナ10、送受共有器12、第3帯域通過フィルタ14、受信回路16及び送信回路18を備えている。
【0066】
無線通信用アンテナ10は、ITSシステムなどで行われる車車間通信や路車間通信、或いは、自動車電話などの通信に用いられるアンテナであって、ロッド型アンテナ或いはフロントガラスやリアガラスに埋め込まれた導体線アンテナなどである。
【0067】
送受共有器12は、無線通信用アンテナ10を受信回路16と送信回路18とで共有して使用するための装置であり、反射素子を用いたものやサーキュレータなどである。
第3帯域通過フィルタ14は、無線通信用アンテナ10で受信した第3の信号のうち、車載無線装置2で本来使用する無線通信用電波の周波数帯域のみの信号を通過させるフィルタである。
【0068】
受信回路16は、第3帯域通過フィルタ14を通過した信号を入力し、映像信号や音声信号或いはデータとして出力する回路である。
送信回路18は、データなどを無線通信用の電波に変換して無線通信用アンテナ10を介して出力するための回路である。また、送信回路18は、ノイズ発生タイミング特定装置3で特定した車室32内で周期的に発生するパルス性ノイズの発生タイミングを、無線通信用アンテナ10を介して外部へ送信する。
【0069】
(外部無線装置100の構成)
外部無線装置100は、送受信用アンテナ110、送信機112、受信機114及び信号処理部120を備えている。
【0070】
受信機114は、車載無線装置2から送信されるノイズの発生タイミングを、送受信用アンテナ110を介して受信する。
送信機112は、車載無線装置2に対してデータ等を電波信号として送信するための送信機である。
【0071】
信号処理部120は、受信機114で受信した、車載無線装置2から送信されるノイズの発生タイミング以外のタイミングでデータ等を送信機112から送受信用アンテナ110を介して送信させる。
【0072】
(無線通信システム1の特徴)
以上に説明した無線通信システム1では、ノイズ発生タイミング特定装置3において、車室32内で周期的に発生し、無線通信用アンテナ10まで到達するパルス性ノイズの発生タイミングを特定することができる。
【0073】
そして、その発生タイミングを、無線通信用アンテナ10を介して、送信回路18により外部へ送信している。したがって、外部無線装置100の受信機114で、発生タイミングを受信し、そのノイズが発生しないタイミングで必要な無線通信を行うようにすれば、車室32内で発生する周期的なパルス性ノイズの影響を全く受けることなく、無線通信を行うことができる。
【0074】
[第2実施形態]
次に、図7に基づいて、第1実施形態のノイズ発生タイミング特定装置3において、検出用アンテナ20を用いないようにした第2実施形態について説明する。図7は、第2実施形態における無線通信システム1の概略の構成を示すブロック図である。
【0075】
第2実施形態では、ノイズ発生タイミング特定装置5以外の構成は、第1実施形態におけるもの同じであるので、同じ構成品には同じ符号を付し、その説明を省略する。
第2実施形態におけるノイズ発生タイミング特定装置5は、検出用アンテナ20の代わりに、無線通信用アンテナ10で第3の信号を受信する。そして、無線通信用アンテナ10で受信した第3の信号を、無線通信用電波の周波数帯域以外の所定の第2周波数帯域の信号のみを通過させる第2帯域通過フィルタ70に通過させる。
【0076】
タイミング検出部80は、第1帯域通過フィルタ60を通過した第1の信号及び第2帯域通過フィルタ70を通過した第3の信号から、無線通信用アンテナ10に混入する周期的にパルス性ノイズを発生する車載装置40からのノイズの発生タイミングを特定する。
【0077】
このように、検出用アンテナ20の代わりに、無線通信用アンテナ10を用いても、無線通信用アンテナ10で受信可能な電波の周波数帯域が広い場合には、検出用アンテナ20を用いることなく、第1実施形態におけるノイズ発生タイミング特定装置3と同様に車室32内で発生し、無線通信用アンテナ10まで到達する周期的なパルス性ノイズの発生タイミングを特定することができる。
[第3実施形態]
次に、図8に基づき、ノイズの発生タイミングを、周辺装置40を作動させるためのトリガ信号から検出するノイズ発生タイミング特定装置7を用いた第3実施形態における無線通信システム1について説明する。図8は、第3実施形態における無線通信システム1の概略の構成を示すブロック図である。
【0078】
第3実施形態では、ノイズ発生タイミング特定装置7以外の構成は、第1実施形態におけるもの同じであるので、同じ構成品には同じ符号を付し、その説明を省略する。
第3実施形態におけるノイズ発生タイミング特定装置7では、図8に示すように、ノイズ検出部50において、周辺装置40を作動させるためのトリガ信号を検出する。
【0079】
具体的には、ノイズ検出部50には図示しない、2入力のコンパレータが内蔵されており、一方の入力端子には、基準電圧が入力され、他方の入力端子に、周辺装置40からのトリガ信号ラインが入力されている。
【0080】
そして、トリガ信号ラインの信号が基準電圧を超えたときに、ノイズ検出部50にトリガ信号が入力された、つまり、パルス性ノイズが検出されたとして、そのトリガ信号をタイミング検出部80に出力する。
【0081】
タイミング検出部80では、ノイズ検出部50で検出したトリガ信号に基づいて、つまり、ノイズ検出部50から出力されるトリガ信号をパルス性ノイズの発生タイミングとして検出する。
【0082】
このようにすると、周辺装置40を作動させるトリガ信号に基づいてパルス性ノイズの発生タイミングを検出できるので、容易、かつ、簡易な構成でパルス性ノイズの発生タイミングを検出することができる。
【0083】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
【0084】
例えば、上記実施形態では、車室内ノイズを電圧として検出するためにシャント抵抗58を用いたが、他の方法、例えば、トランスなどを用いてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1…無線通信システム、2…車載無線装置、3,5,7…ノイズ発生タイミング特定装置、9…送受信部、10…無線通信用アンテナ、12…送受共有器、14…第3帯域通過フィルタ、16…受信回路、18…送信回路、20…検出用アンテナ、30…車両、32…車室、34…車体、40…車載装置(周辺装置)、50…ノイズ検出部、52…ノイズ測定部、54…GND線、56…ハーネス(配線)、58…シャント抵抗、60…第1帯域通過フィルタ、70…第2帯域通過フィルタ、80…タイミング検出部、100…外部無線装置、110…送受信用アンテナ、112…送信機、114…受信機、120…信号処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信用電波を送受信するための無線通信用アンテナを備えた無線装置であって、
設置位置周囲で周期的に発生するパルス性ノイズを検出するノイズ検出手段と、
前記ノイズ検出手段で検出した前記パルス性ノイズの発生タイミングを検出するタイミング検出手段と、
前記タイミング検出手段で検出した前記パルス性ノイズの発生タイミングを外部へ送信する送信手段と、
を備えたことを特徴とする無線装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線装置において、
前記ノイズ検出手段は、
前記周辺装置を作動させるためのトリガ信号を検出し、
前記タイミング検出手段は、
前記ノイズ検出手段で検出したトリガ信号に基づいて前記パルス性ノイズの発生タイミングを検出することを特徴とする無線装置。
【請求項3】
請求項1に記載の無線装置において、
前記ノイズ検出手段は、
前記周辺装置で発生するパルス性ノイズを信号として測定する測定手段を備え、
前記タイミング検出手段は、
前記ノイズ検出手段の前記測定手段で測定した信号の大きさが所定の閾値を超えた場合にパルス性ノイズとして判定し、
該パルス性ノイズと判定した信号の周期に基づいて前記パルス性ノイズの発生タイミングを検出することを特徴とする無線装置。
【請求項4】
請求項3に記載の無線装置において、
前記周辺装置は、車両に搭載された車載装置であり、
前記ノイズ検出手段は、
前記測定手段として、前記車両の車室内に設置され、前記車室内で発生する第1の信号を検出するための導線を備え、
さらに、前記導線で検出した第1の信号のうち前記車両の車体によりシールドされる所定の第1周波数帯域の信号を通過させる第1帯域通過フィルタを備え、
前記タイミング検出手段は、
前記第1帯域通過フィルタを通過した前記第1の信号の大きさが所定の閾値を超えた場合にパルス性ノイズと判定し、
該パルス性ノイズと判定した第1の信号の周期に基づいて前記パルス性ノイズの発生タイミングを検出することを特徴とする無線装置。
【請求項5】
請求項4に記載の無線装置において、
ノイズ検出手段は、
前記導線として、前記周期的にパルス性ノイズを発生する前記車載装置への配線に並列に配設したGND線を用い、
前記GND線の端部を、電流検出用のシャント抵抗を介して、前記車両の車体に接続し、前記シャント抵抗の両端の電圧を検出することにより前記周期的に発生するパルス性ノイズを検出することを特徴とする無線装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の無線装置において、
前記無線通信用電波の周波数帯域以外の周波数帯域で電波を受信可能な、前記車両の車室外部に設置された検出用アンテナと、
前記検出用アンテナで受信した前記第2の信号のうち、無線通信用電波の周波数帯域以外の所定の第2周波数帯域の信号のみを通過させる第2帯域通過フィルタと、
を備え、
前記タイミング検出手段は、
前記第1の信号の大きさに代えて、前記第1帯域通過フィルタを通過した前記第1の信号及び前記第2帯域通過フィルタを通過した前記第2の信号に基づいて、前記車載装置で発生し、前記車室内において、前記無線通信用アンテナまでの配線に混入し、前記無線通信用アンテナまで到達するパルス性ノイズの発生タイミングを特定することを特徴とする無線装置。
【請求項7】
請求項6に記載の無線装置において、
前記タイミング検出手段は、
前記第1帯域通過フィルタを通過した前記第1の電気号及び前記第2帯域通過フィルタを通過した前記第2の信号を時系列上で乗算し、その値が所定の値を超えた信号を、前記周期的にパルス性ノイズを発生する前記車載装置で発生し、前記車室内において前記無線通信用アンテナまでの配線に混入して、前記無線通信用アンテナまで到達するパルス性ノイズの発生タイミングを特定することを特徴とする無線装置。
【請求項8】
請求項4に記載の無線装置において、
前記無線通信用アンテナで受信した第3の信号のうち、前記無線通信用電波の周波数帯域以外の所定の第2周波数帯域の信号のみを通過させる第2帯域通過フィルタを備え、
前記タイミング検出手段は、
前記第1帯域通過フィルタを通過した第1の信号及び前記第2帯域通過フィルタを通過した前記第3の信号を時系列上で乗算し、その値が所定の値を超えた信号を、前記周期的にパルス性ノイズを発生する前記車載装置で発生し、前記無線装置から前記無線通信用アンテナまでの配線に混入して、前記無線通信用アンテナまで到達する車室内ノイズとして、その発生タイミングを特定することを特徴とする無線装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図3】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−239136(P2012−239136A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108391(P2011−108391)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】