説明

無線通信システム、方法および子機

【課題】 子機の消費電力を削減することができ、他の無線通信システムからの干渉にも強い無線通信システムを提供する。
【解決手段】 無線通信システム1は、子機間での通信機能を有する複数の子機2(AおよびB)と、子機との通信機能を有する親機3を備える。親機3は、他の無線通信システムからの干渉を受けたときに、子機2との無線通信に用いる通信チャネルの切換えを行う。子機2(A)は、通信チャネルの切換えが行われた後に、親機3との無線通信に用いられるべき現在の通信チャネルを示すチャネル情報を、通信チャネルの切換えが行われる前に親機3との無線通信に用いられていた以前の通信チャネルを用いて報知する。子機2(B)が、以前の通信チャネルを用いて、他の子機2(A)から報知されたチャネル情報を受信すると、親機3との無線通信に用いる通信チャネルが更新される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、子機間での通信機能を有する複数の子機と、子機との通信機能を有する親機で構成された無線通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、小型の無線機器(例えば、アクティブタグ)を用いて、無線機器を携帯する人物や無線機器を取り付けた物品の所在や移動経路を検知するシステム(例えば、アクティブタグシステム)が実用化されている。このようなシステムでは、無線機器が狭い範囲で繰り返し無線通信を行うことが必要とされる。そのため、特定小電力無線局などを無線機器として利用して、これらの無線機器により複数の通信チャネルを共用することが一般的である。
【0003】
複数の通信チャネルを共用する無線通信システムにおいて、特定小電力無線局を無線機器として利用する場合には、電波法上、親機(例えば、RFIDリーダライタ)と子機(例えば、アクティブRFIDタグ)との間で無線通信に使用する通信チャネルが、他のシステムからの干渉を受けないようにすることが要求される。
【0004】
そこで、従来、他システムからの干渉を受けないチャネルを選択して通信を行う方法として、無定位循環方式などが知られている(例えば、特許文献1参照)。この無定位循環方式では、受信機が通信に使用される可能性のある全チャネル(全候補チャネル)を時系列的に順次受信し、送信機がどのチャネルを使用して送信しても受信できるようにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3477454号公報(第4頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の無定位循環方式では、子機が全チャネル(例えば、20チャネル)を受信する必要があり、子機の消費電力が非常に大きく、また、全チャネルを受信をするのに非常に長い時間を要するという問題があった。特に、小型の子機(例えば、アクティブタグ)を用いたシステムでは、子機に搭載される電池も小型であり、消費電力削減の必要性が高い。そこで、消費電力削減のために、全チャネルのうちの一部のみ(例えば、5チャネルのみ)を受信することも考えられる。しかし、その場合には、他の無線通信システムからの干渉によって、そのチャネル(5チャネル)すべてが使用できなくなる状況もあり得る、つまり、他の無線通信システムからの干渉に弱いという問題があった。
【0007】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたもので、子機の消費電力を削減することができ、他の無線通信システムからの干渉にも強い無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の無線通信システムは、子機間での通信機能を有する複数の子機と、前記子機との通信機能を有する親機を備えた無線通信システムにおいて、前記親機は、他の無線通信システムからの干渉を受けたときに、前記子機との無線通信に用いる通信チャネルの切換えを行う通信チャネル切換部を備え、前記子機は、前記親機との無線通信に用いられるべき現在の通信チャネルを示すチャネル情報を、前記通信チャネルの切換えが行われる前に前記親機との無線通信に用いられていた以前の通信チャネルを用いて報知する報知部と、前記親機との無線通信に用いる通信チャネルを用いて、前記親機または他の子機から送信された情報を受信する受信部と、前記他の子機から報知された前記チャネル情報に基づいて、前記親機との無線通信に用いる通信チャネルを決定する通信チャネル決定部と、を備えた構成を有している。
【0009】
この構成により、親機の通信エリアの圏内に位置していたある子機(子機B)が、通信エリアの圏外へ出てしまった後に、親機が他のシステムから干渉を受けて子機との無線通信に用いる通信チャネルの切換え(周波数f1→周波数f2)を行った場合でも、他の子機(子機A)が通信エリアの圏内に残っていれば、その子機(子機A)から現在の通信チャネル(周波数f2)のチャネル情報が、以前の通信チャネル(周波数f1)を用いて報知される。したがって、通信エリアの圏外へ出てしまっていた子機(子機B)は、以前の通信チャネル(周波数f1)を用いたままでも、他の子機(子機A)から現在の通信チャネル(周波数f2)のチャネル情報を受け取ることができるので、親機との無線通信に用いる通信チャネルの更新(周波数f1→周波数f2)をすることにより、親機との無線通信を再開することができる。このように、本発明では、子機が親機の通信エリアの圏外へ出た後で、親機と子機との無線通信に使用する通信チャネルの切換えが行われた場合でも、その子機が親機の通信エリアの圏内に戻ったときに、親機とその子機との間で無線通信を行うことが可能になる。
【0010】
この場合、子機(子機A、B)は、親機との無線通信に用いる通信チャネルを用いて、親機または他の子機から送信された情報を受信していればよい。ここで、本発明における子機の消費電力について考えると、受信のための消費電力は、親機との無線通信に用いる通信チャネルが1チャネルである場合には「1受信分の消費電力」である。本発明では、チャネル情報を報知(送信)する必要がある。送信のための消費電力と受信のための消費電力が略等しいとすると、この報知(送信)のための消費電力は「1受信分の消費電力」である。したがって、本発明では、「2受信分の消費電力」が必要とされる。これに対して、従来の無定位循環方式では、通信チャネルが全部で20チャネルである場合には、「20受信分の消費電力」が必要である。仮に、消費電力削減のため、全チャネルのうちの一部のみ、例えば、5チャネルのみを受信することにしたとしても、従来の方式では「5受信分の消費電力」が必要である。このように、本発明では、子機の消費電力を大幅に削減することができる。
【0011】
また、本発明における子機が送受信をするのに要する時間について考えると、上記と同様に、親機との無線通信に用いる通信チャネルが1チャネルである場合には「1受信分の時間」である。本発明では、チャネル情報を報知(送信)する必要がある。送信に要する時間と受信に要する時間が略等しいとすると、この報知(送信)のために要する時間は「1受信分の時間」である。したがって、本発明では、「2受信分の時間」が必要とされる。これに対して、従来の無定位循環方式では、通信チャネルが全部で20チャネルである場合には、「20受信分の時間」が必要である。仮に、消費電力削減のため、全チャネルのうちの一部のみ、例えば、5チャネルのみを受信することにしたとしても、従来の方式では「5受信分の時間」が必要である。このように、本発明では、子機が送受信をするのに要する時間を大幅に短縮することができる。
【0012】
さらに、親機が他の無線通信システムから干渉をうけた場合を考えると、本発明では、通信チャネルが全部で20チャネルである場合には、20チャネルの中から子機との無線通信に使用する通信チャネルを選択することができる。他の無線通信システムからの干渉によって20チャネルすべてが使用できなくなる状況は考え難い。一方、従来の無定位循環方式では、子機の消費電力や送受信に要する時間を削減するために、全チャネルのうちの一部のみ、例えば、5チャネルのみを受信することにすると、他の無線通信システムからの干渉によって5チャネルすべてが使用できなくなる状況もあり得る。このように、本発明は、他の無線通信システムからの干渉に対して強い。
【0013】
また、本発明の無線通信システムでは、前記親機は、次に通信チャネルの切換えを行うときの切換え先の候補とされている通信チャネルを示す候補チャネル情報を、前記子機との無線通信に用いている通信チャネルを用いて送信する送信部を備え、前記報知部は、前記親機から送信された前記候補チャネル情報を、前記以前の通信チャネルを用いて報知し、前記受信部は、前記親機との無線通信に用いる通信チャネルを用いて、前記親機または他の子機から送信された情報を受信するとともに、前記候補チャネル情報に示された通信チャネルを用いて、前記親機または他の子機から送信された情報を受信する構成を有している。
【0014】
この構成により、親機の通信エリアの圏内に位置していたある子機(子機B)が、通信エリアの圏外へ出てしまった後に、親機が他のシステムから干渉を受けて子機との無線通信に用いる通信チャネルの切換え(周波数f1→周波数f2)を行った場合でも、その子機(子機B)は、以前の通信チャネル(周波数f1)だけでなく、候補チャネル情報に示された通信チャネル(周波数f2)でも、親機または他の子機から送信された情報を受信する。したがって、通信エリアの圏外へ出てしまっていた子機(子機B)が、再び通信エリアの圏内に戻ってきたときに、その子機(子機B)は、前記通信エリアの圏内に、以前の通信チャネル(周波数f1)を用いて現在の通信チャネル(周波数f2)のチャネル情報を報知する他の子機(子機A)が存在しない場合であっても,切換え後の通信チャネル(周波数f2)を用いて、親機との無線通信を行うことができる。
【0015】
また、この場合、親機が他のシステムから干渉を受けて通信チャネルの切換え(1度目の切換え:周波数f1→周波数f2)を行った後に、さらに親機が他のシステムから干渉を受けて通信チャネルの切換え(2度目の切換え:周波数f2→周波数f3)を行った場合でも、他の子機(子機A)が通信エリアの圏内に残っていれば、その子機(子機A)から現在の通信チャネル(周波数f3)のチャネル情報が、以前の通信チャネル(周波数f2)を用いて報知される。したがって、通信エリアの圏外へ出てしまっていた子機(子機B)は、候補チャネル情報に示された通信チャネル(周波数f2)で、他の子機(子機A)から現在の通信チャネル(周波数f3)のチャネル情報を受け取ることができるので、親機との無線通信に用いる通信チャネルの更新(周波数f1→周波数f3)をすることにより、親機との無線通信を再開することができる。
【0016】
また、本発明の無線通信システムでは、前記現在の通信チャネルを示すチャネル情報は、前記子機が前記現在の通信チャネルを用いて前記親機との無線通信を行った時刻または前記時刻からの経過時間を示す鮮度情報を含み、前記通信チャネル決定部は、前記親機との無線通信に用いる通信チャネルを、前記鮮度情報に基づいて定めた最新の通信チャネルに決定する構成を有している。
【0017】
この構成により、子機は、親機との無線通信に用いる通信チャネルを、最新の通信チャネルに更新することができる。最新の通信チャネルは、チャネル情報に含まれる鮮度情報に基づいて、子機がその通信チャネルを用いて親機との無線通信を行った時刻またはその時刻からの経過時間を比較することにより決定することができる。
【0018】
また、本発明の無線通信システムでは、前記現在の通信チャネルを示すチャネル情報は、前記親機が前記現在の通信チャネルを用いることを決定した時刻または前記時刻からの経過時間を示す鮮度情報を含み、前記通信チャネル決定部は、前記親機との無線通信に用いる通信チャネルを、前記鮮度情報に基づいて定めた最新の通信チャネルに決定する構成を有している。
【0019】
この構成により、子機は、親機との無線通信に用いる通信チャネルを、最新の通信チャネルに更新することができる。最新の通信チャネルは、チャネル情報に含まれる鮮度情報に基づいて、親機がその通信チャネルを用いることを決定した時刻またはその時刻からの経過時間を比較することにより決定することができるため、子機は現在時刻あるいは経過時間を計時する機能を備える必要がなく、回路規模および消費電力を小さくできる。
【0020】
また、本発明の無線通信システムでは、前記以前の通信チャネルは、前記通信チャネルの切換えが行われる直前に、前記親機が前記子機との無線通信に用いていた通信チャネルであり、前記親機は、前記以前の通信チャネルの情報を、前記子機との無線通信に用いている通信チャネルを用いて送信する第2送信部を備えた構成を有している。
【0021】
この構成により、親機が通信チャネルの切換えを行う直前に子機との無線通信に用いていた通信チャネルが、以前の通信チャネルとして使用される。そして、その通信チャネル(以前の通信チャネル)の情報が親機から子機へ送信される。子機は、親機から受信した通信チャネル(以前の通信チャネル)を用いて、現在の通信チャネルを示すチャネル情報を報知することができる。
【0022】
また、本発明の無線通信システムでは、前記親機との無線通信に用いる通信チャネルを用いて、前記受信部が前記親機または他の子機から送信された情報を受信する確率は、前記候補チャネル情報に示された通信チャネルを用いて、前記受信部が前記親機または他の子機から送信された情報を受信する確率より高くなるように設定されている構成を有している。
【0023】
この構成により、親機との無線通信に用いる通信チャネル(周波数f1)を用いて子機が親機や他の子機から情報を受信する確率のほうが、候補チャネル情報に示された通信チャネル(周波数f2)を用いて子機が親機や他の子機から情報を受信する確率よりも高くなるように設定される。例えば、親機との無線通信に用いる通信チャネル(周波数f1)を用いた受信が2回行われた後に、候補チャネル情報に示された通信チャネル(周波数f2)を用いた受信が1回行われる。このようにして、親機や他の子機からの情報を適切に受信することができる。
【0024】
また、本発明の無線通信システムでは、前記無線通信システムは、親機間での通信機能を有する複数の親機を備え、前記親機は、前記子機が次に無線通信を行う通信相手として予定されている他の親機が前記子機との無線通信に用いることを予定している通信チャネルを示す予定チャネル情報を、前記子機との無線通信に用いている通信チャネルを用いて送信する第3送信部を備え、前記報知部は、前記親機から送信された前記予定チャネル情報を、前記以前の通信チャネルを用いて報知し、前記受信部は、前記親機との無線通信に用いる通信チャネルを用いて、前記親機または他の子機から送信された情報を受信するとともに、前記予定チャネル情報に示された通信チャネルを用いて、前記親機または他の子機から送信された情報を受信する構成を有している。
【0025】
この構成により、ある親機(親機A)の通信エリアの圏内に位置していた子機が、その親機(親機A)の通信エリアの圏外へ出て、他の親機(親機B)の通信エリアの圏内に入った場合、一方の親機(親機A)が子機との無線通信に用いる通信チャネル(周波数f1)と他方の親機(親機B)が子機との無線通信に用いる通信チャネル(周波数f2)が異なっていたとしても、その子機は、一方の親機の通信チャネル(周波数f1)だけでなく、予定チャネル情報に示された通信チャネル(周波数f2)でも、親機または他の子機から送信された情報を受信することができる。したがって、二つの親機(親機AとB)の間を子機が移動するような場合であっても、その子機は、移動先の親機との無線通信を行うことができる。
【0026】
本発明の方法は、子機間での通信機能を有する複数の子機と、前記子機との通信機能を有する親機を備えた無線通信システムで用いられる方法であって、前記親機では、他の無線通信システムからの干渉を受けたときに、前記子機との無線通信に用いる通信チャネルの切換えが行われ、前記方法は、第1の子機が、前記親機との無線通信に用いられるべき現在の通信チャネルを示すチャネル情報を、前記通信チャネルの切換えが行われる前に前記親機との無線通信に用いられていた以前の通信チャネルを用いて報知することと、第2の子機が、前記親機との無線通信に用いる通信チャネルを用いて、前記親機または他の子機から送信された情報を受信することと、前記第2の子機が、前記他の子機から報知された前記チャネル情報に基づいて、前記親機との無線通信に用いる通信チャネルを決定することと、を含んでいる。
【0027】
この方法によっても、上記のシステムと同様、子機が親機の通信エリアの圏外へ出た後で、親機と子機との無線通信に使用する通信チャネルの切換えが行われた場合でも、その子機が親機の通信エリアの圏内に戻ったときに、親機とその子機との間で無線通信を行うことが可能になる。また、子機の消費電力を大幅に削減することができ、子機が送受信をするのに要する時間を大幅に短縮することができる。さらに、他の無線通信システムからの干渉に対して強い。
【0028】
本発明の子機は、無線通信システムで用いられる子機であって、前記無線通信システムには、子機間での通信機能を有する複数の前記子機と、前記子機との通信機能を有する親機が備えられており、前記親機では、他の無線通信システムからの干渉を受けたときに、前記子機との無線通信に用いる通信チャネルの切換えが行われ、前記子機は、前記親機との無線通信に用いられるべき現在の通信チャネルを示すチャネル情報を、前記通信チャネルの切換えが行われる前に前記親機との無線通信に用いられていた以前の通信チャネルを用いて報知する報知部と、前記親機との無線通信に用いる通信チャネルを用いて、前記親機または他の子機から送信された情報を受信する受信部と、前記他の子機から報知された前記チャネル情報に基づいて、前記親機との無線通信に用いる通信チャネルを決定する通信チャネル決定部と、を備えた構成を有している。
【0029】
この子機によっても、上記のシステムと同様、子機が親機の通信エリアの圏外へ出た後で、親機と子機との無線通信に使用する通信チャネルの切換えが行われた場合でも、その子機が親機の通信エリアの圏内に戻ったときに、親機とその子機との間で無線通信を行うことが可能になる。また、子機の消費電力を大幅に削減することができ、子機が送受信をするのに要する時間を大幅に短縮することができる。さらに、他の無線通信システムからの干渉に対して強い。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、子機の消費電力を削減することができ、他の無線通信システムからの干渉にも強いという効果を有する無線通信システムを提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態における無線通信システムの構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態における無線通信システムの一態様の説明図
【図3】本発明の実施の形態における無線通信システムの動作の説明図
【図4】本発明の実施の形態における無線通信システムの動作を説明するシーケンス図
【図5】本発明の実施の形態における無線通信システムの他の動作を説明するシーケンス図
【図6】本発明の実施の形態における無線通信システムの他の態様の説明図
【図7】本発明の実施の形態における無線通信システムの動作を説明するシーケンス図
【図8】本発明の実施の形態における親機の動作(通信チャネルの切換え)を説明するフロー図
【図9】本発明の実施の形態における親機の動作(子機との無線通信)を説明するフロー図
【図10】本発明の実施の形態における子機の動作(親機との無線通信、通信チャネルの更新)を説明するフロー図
【図11】本発明の実施の形態における子機の動作(報知情報の送信)を説明するフロー図
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態の無線通信システムについて、図面を用いて説明する。本実施の形態では、人物(子機を携帯する人物)や物品(子機を取り付けた物品)の所在や移動経路を検知するアクティブタグシステム等に用いられる無線通信システムの場合を例示する。
【0033】
本発明の実施の形態の無線通信システムの構成を、図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態の無線通信システムの構成を示すブロック図であり、図2は、無線通信システムの一態様を示す説明図である。図1および図2に示すように、無線通信システム1は、子機間での通信機能を有する複数の子機2と、子機2との通信機能を有する親機3を備えている。例えば、子機2は、配送物に貼り付けられるアクティブRFIDタグであり、親機3は、配送センタなどに設置されるRFIDリーダライタである。なお、図2では、説明の便宜上、1つの親機3と2つの子機2(子機AとB)のみが図示されているが、親機3や子機2の数がこれに限定されないことは勿論である。
【0034】
図1に示すように、親機3は、子機2(通信エリアの圏内に位置している子機2)との無線通信を行うための無線通信部4と、子機2に無線通信で送信する情報(送信情報)などを記憶するメモリ部5と、他の親機3との情報通信を行うための親機間通信部6を備えている。また、親機3は、他の無線通信システムからの干渉を受けたときに、その干渉レベルが閾値以上であるか否かを判定する干渉レベル判定部7と、干渉レベルが閾値以上であると判定された場合に、子機2との無線通信に用いる通信チャネルの切換えを行う通信チャネル切換部8を備えている。
【0035】
親機3のメモリ部5には、次に通信チャネルの切換えを行うときの切換え先の候補とされている通信チャネル(候補チャネルともいう)の情報が記憶される。また、この親機3のメモリ部5には、通信チャネルの切換えが行われる直前に、その親機3が子機2との無線通信に用いていた通信チャネル(以前の通信チャネル)の情報が記憶される。また、後述するように子機2が複数の親機間を移動する場合(図6参照)、この親機3のメモリ部5には、子機2が次に無線通信を行う通信相手として予定されている他の親機3が子機2との無線通信に用いることを予定している通信チャネル(予定チャネルともいう)の情報が記憶される。
【0036】
子機2は、親機3との無線通信を行うための無線通信部9と、他の子機2に報知を行うための報知部10と、他の子機2に報知する情報(報知情報)などを記憶するメモリ部11を備えている。また、子機2は、他の子機2から報知された情報に基づいて、親機3との無線通信に用いる通信チャネルを決定する通信チャネル決定部12を備えている。
【0037】
子機2のメモリ部11には、親機3との無線通信に用いられるべき通信チャネル(現在の通信チャネル)を示すチャネル情報が記憶される。また、子機2のメモリ部11には、親機3から送信された候補チャネルの情報(候補チャネル情報)や予定チャネルの情報(予定チャネル情報)が記憶される。報知部10は、通信チャネルの切換えが行われる前に親機3との無線通信に用いられていた通信チャネル(以前の通信チャネル)を用いて、これらの報知情報の報知を行う。
【0038】
子機2の無線通信部9は、親機3との無線通信に用いる通信チャネルを用いて、親機3や他の子機2から送信(または報知)された情報を受信する機能を備えている。また、子機2の無線通信部9は、候補チャネルや予定チャネルを用いて、親機3や他の子機2から送信(または報知)された情報を受信する機能を備えている。後述するように、親機3との無線通信に用いる通信チャネルを用いて受信をする確率のほうが、候補チャネルを用いて受信をする確率より高くなるように設定されてもよい。
【0039】
現在の通信チャネルを示すチャネル情報には、子機2が現在の通信チャネルを用いて親機3との無線通信を行った時刻またはその時刻からの経過時間を示す鮮度情報が含まれていてよい。または、現在の通信チャネルを示すチャネル情報には、親機3が現在の通信チャネルを用いることを決定した時刻またはその時刻からの経過時間を示す鮮度情報が含まれていてもよい。子機2の通信チャネル決定部12は、親機3との無線通信に用いる通信チャネルを、これらの鮮度情報に基づいて定めた最新の通信チャネルに決定する。
【0040】
以上のように構成された本実施の形態の無線通信システム1について、図面を参照してその動作を説明する。
【0041】
ここでは、まず、図2に示すように、ある子機2(子機B)が親機3の通信エリアの圏外へ出た後で、他の通信システムからの干渉を受けて、親機3と子機2との無線通信に使用する通信チャネルの切換えが行われ、その後、その子機2が親機3の通信エリアの圏内に戻った場合の動作について説明する。
【0042】
図3は、親機3の通信エリアの圏内に残っている子機2(子機A)と親機3の動作を説明する図である。図3に示すように、ある時刻t0において、親機3は、周波数f1という通信チャネルを用いて「以前の通信チャネル:周波数f0、候補チャネル:周波数f2」という送信情報を送信する。子機2は、周波数f1という通信チャネルで、親機3や他の子機2からの情報を受信する。すなわち、この場合、周波数f1が、親機3との無線通信に用いられるべき現在の通信チャネルである。この子機2は、周波数f2という候補チャネルでも、親機3や他の子機2からの情報を受信する。そして、子機2は、周波数f0(以前の通信チャネル)を用いて「現在の通信チャネル:周波数f1、候補チャネル:周波数f2」という報知情報を送信(報知)する。
【0043】
時刻t2において、他の通信システムから周波数f1で親機3が干渉を受けたとする。この場合、親機3は、子機2との無線通信に用いる通信チャネルを候補チャネル(周波数f2)に切り換える。そして、親機3は、周波数f2という通信チャネルを用いて「以前の通信チャネル:周波数f1、候補チャネル:周波数f3」という送信情報を送信する。子機2は、周波数f1と周波数f2いう通信チャネルで、親機3や他の子機2からの情報を受信している。そして、親機3から受信した「以前の通信チャネル:周波数f1、候補チャネル:周波数f3」という送信情報と、親機3が無線通信に用いた通信チャネル(周波数f2)の情報に基づいて、子機2は、親機3との無線通信に用いる通信チャネルの更新を行う。
【0044】
ただし、通信チャネルの更新には、ある程度の時間を要するため、この時点(時刻t2)では、子機2は、周波数f0を用いて「現在の通信チャネル:周波数f1、候補チャネル:周波数f2」という報知情報を送信(報知)する。通信チャネルの更新が完了した時刻t3になると、子機2は、周波数f1(以前の通信チャネル)を用いて「現在の通信チャネル:周波数f2、候補チャネル:周波数f3」という報知情報を送信(報知)するようになる。
【0045】
図4は、ある子機2(子機B)が親機3の通信エリアの圏外へ出た後で、他の通信システムからの干渉を受けて、親機3と子機2との無線通信に使用する通信チャネルの切換えが行われ、その後、その子機2が親機3の通信エリアの圏内に戻った場合に、親機3の通信エリアの圏内に残っている子機2(子機A)との子機間通信によって、その子機2(子機B)が親機3との無線通信を再開するときの動作を示すシーケンス図である。
【0046】
図4に示すように、まず、親機3は、周波数f1を用いて「以前の通信チャネル:周波数f0、候補チャネル:周波数f2」という送信情報を送信する(S10)。子機Aと子機Bは、周波数f1という通信チャネルで、親機3からの情報を受信する。そして、子機Bが親機3の通信エリアの圏外に出た後(S11)、他の通信システムから周波数f1で親機3が干渉を受けると(S12)、親機3は、子機2との無線通信に用いる通信チャネルを候補チャネル(周波数f2)に切り換える(S13)。
【0047】
そして、親機3は、周波数f2を用いて「以前の通信チャネル:周波数f1、候補チャネル:周波数f3」という送信情報を送信する(S14)。子機Aは、周波数f1と周波数f2いう通信チャネルで、親機3や他の子機2からの情報を受信している。したがって、子機Aは、親機3からの送信情報を受信することができる。一方、子機Bは、親機3の通信エリアの圏外に移動しているため、親機3からの送信情報を受信することはできない。
【0048】
子機Aは、親機3から受信した「以前の通信チャネル:周波数f1、候補チャネル:周波数f3」という送信情報と、親機3が無線通信に用いた通信チャネル(周波数f2)の情報に基づいて、親機3との無線通信に用いる通信チャネルを周波数f2に更新し(S15)、周波数f1(以前の通信チャネル)を用いて「現在の通信チャネル:周波数f2、候補チャネル:周波数f3」という報知情報を送信(報知)する(S16)。
【0049】
子機Bが、親機3の通信エリアの圏外ではあるものの、周波数f1と周波数f2いう通信チャネルで、他の子機2からの情報を受信している。したがって、子機Bが、子機Aとの子機間通信の通信エリアの圏内に位置している場合には、この子機Aからの報知情報を受信することができる。そして、その場合、子機Bは、子機Aから受信した「現在の通信チャネル:周波数f2、候補チャネル:周波数f3」という報知情報という情報に基づいて、親機3との無線通信に用いる通信チャネルを周波数f2に更新する(S17)。
【0050】
その後、子機Bが、親機3の通信エリアの圏内に戻った後(S18)、親機3が、周波数f2を用いて「以前の通信チャネル:周波数f1、候補チャネル:周波数f3」という送信情報を送信すると(S19)、子機Bは、周波数f2で、親機3からの情報を受信することができる。
【0051】
なお、上記のステップS16では、以前の通信チャネルとして周波数f1のみを用いて報知情報を送信(報知)する例について説明したが、周波数f1と周波数f0を用いて報知情報を送信してもよい。その場合、より新しい通信チャネル(周波数f1)で送信する確率を、古い通信チャネル(周波数f0)で送信する確率より高くしてもよい。例えば、周波数f1を用いた送信が2回行われた後に、周波数f0を用いた送信が1回行われてもよい。
【0052】
図5は、ある子機2が親機3の通信エリアの圏外へ出た後で、他の通信システムからの干渉を受けて、親機3と子機2との無線通信に使用する通信チャネルの切換えが行われ、その後、その子機2が親機3の通信エリアの圏内に戻った場合に、その子機2が、候補チャネルを用いて親機3との無線通信を行うときの動作を示すシーケンス図である。
【0053】
図5に示すように、まず、親機3は、周波数f1を用いて「以前の通信チャネル:周波数f0、候補チャネル:周波数f2」という送信情報を送信する(S20)。子機2は、周波数f1と周波数f2いう通信チャネルで、親機3からの情報を受信する(S21)。そして、子機2が親機3の通信エリアの圏外に出た後(S22)、他の通信システムから周波数f1で親機3が干渉を受けると(S23)、親機3は、子機2との無線通信に用いる通信チャネルを候補チャネル(周波数f2)に切り換える(S24)。
【0054】
そして、親機3は、周波数f2を用いて「以前の通信チャネル:周波数f1、候補チャネル:周波数f3」という送信情報を送信する(S25)。このとき、子機2は、親機3の通信エリアの圏外に移動しているため、親機3からの送信情報を受信することはできない。その後、子機2が、親機3の通信エリアの圏内に戻った後(S26)、親機3が、再度、周波数f2を用いて「以前の通信チャネル:周波数f1、候補チャネル:周波数f3」という送信情報を送信する(S27)。この場合、子機Bは、周波数f1と周波数f2で、親機3からの情報を受信しているので、親機3からの送信情報を受信することができる(S28)。
【0055】
なお、上記のステップS21やステップS28では、周波数f1(現在の通信チャネル)と周波数f2(候補チャネル)で受信を行うとのみ説明したが、現在の通信チャネル(周波数f1)で受信する確率を、候補チャネル(周波数f2)で受信する確率より高くしてもよい。例えば、現在の通信チャネル(周波数f1)を用いた受信が2回行われた後に、候補チャネル(周波数f2)を用いた受信が1回行われてもよい。
【0056】
また、上記の説明では、候補チャネルが1つの場合について説明したが、複数の候補チャネル(例えば、周波数f2と周波数f3)が設定されていてもよい。その場合、優先順位の高い候補チャネル(例えば、周波数f2)で受信する確率を、優先順位の低い候補チャネル(例えば、周波数f3)で受信する確率より高くしてもよい。例えば、周波数f2を用いた受信が2回行われた後に、周波数f1を用いた受信が1回行われてもよい。
【0057】
つぎに、図6に示すように、ある親機3(親機A)の通信エリアの圏内に位置していた子機2(子機Aと子機B)が、その親機3の通信エリアの圏外へ出て、他の親機3(親機B)の通信エリアの圏内に入る場合の動作について説明する。
【0058】
図7は、ある親機3(親機A)の通信エリアの圏内に位置していた子機2(子機Aと子機B)が、他の親機3(親機B)の通信エリアの圏内に移動した場合に、予定チャネルを用いて、移動先の親機3との無線通信を行うときの動作を示すシーケンス図である。
【0059】
図7に示すように、移動元の親機Aは、移動先の親機Bが子機2との無線通信に使用する予定チャネル(周波数f2)の情報を親機間通信によって取得し、その「予定チャネル:周波数f2」という送信情報を、周波数f1(親機Aが子機2との無線通信に使用する周波数)を用いて送信する(S30)。そうすると、子機2は、周波数f1と周波数f2で、親機3からの情報を受信する(S31)。
【0060】
その後、子機2が親機Aの通信エリアの圏外に出て(S32)、親機Bの通信エリアの圏内に入る(S33)。親機Bは、さらに次の移動先の親機3(図示せず)が子機2との無線通信に使用する予定チャネル(周波数f3)の情報を親機間通信によって取得し、その「予定チャネル:周波数f3」という送信情報、周波数f2(親機Bが子機2との無線通信に使用する周波数)を用いて送信する(S34)。この場合、子機2は、周波数f1と周波数f2で、親機3からの情報を受信しているので、親機Bからの送信情報を受信することができる。
【0061】
なお、この場合、子機2(子機Aや子機B)が親機Aの通信エリアの圏外に出て親機Bの通信エリアの圏内に入るまでの間、つまり、子機2が親機間を移動している間に、これらの子機2(子機Aと子機B)の間で子機間通信が行われ、鮮度情報に基づいた通信チャネルの更新が行われる。したがって、これらの子機2の中に、親機3との無線通信に用いる通信チャネルが古い子機2が含まれていたとしても、他の子機2とともに親機間を移動している間に、親機3との無線通信に用いる通信チャネルが、最新の通信チャネルに更新(統一)される。
【0062】
続いて、本実施の形態の無線通信システム1を構成する親機3と子機2について、図面を参照しながらその動作を説明する。
【0063】
図8は、本実施の形態における親機3の動作(通信チャネルの切換え)を説明するフロー図である。通信チャネルの切換えは、所定の時間間隔で実行される。図8に示すように、親機3が通信チャネルの切換えを実行するときには、まず、他のシステムからの干渉レベルを測定し(S40)、その干渉レベルが閾値以上であるか否かを判定する(S41)。干渉レベルが閾値以上であった場合には、全チャネルの中から候補チャネルの探索を行い(S42)、他のシステムからの干渉を受けないような通信チャネルへ切換えを行う(S43)。
【0064】
図9は、本実施の形態における親機3の動作(子機2との無線通信)を説明するフロー図である。子機2との無線通信は、所定の時間間隔で実行される。図9に示すように、親機3が子機2との無線通信を実行するときには、まず、通信エリアの圏内に位置している子機2に向けてビーコン信号の送信を行い(S50)、子機2からの応答信号の受信の有無を判定する(S51)。そして、子機2からの応答信号を受信した場合には、子機2との無線通信を開始する(S52)。
【0065】
図10は、本実施の形態における子機2の動作(親機3との無線通信、通信チャネルの更新)を説明するフロー図である。親機3との無線通信や通信チャネルの更新は、所定の時間間隔で実行される。図10に示すように、子機2が親機3との無線通信や通信チャネルの更新を行うときには、まず、親機3との無線通信に使用する通信チャネルを決定し(S60)、その通信チャネルで親機3や他の子機2からの受信に成功したか否かの判定を行う(S61)。
【0066】
受信に失敗した場合には、親機3との無線通信に使用する通信チャネルとして次の候補があるか否かを判定する(S62)。次の候補がある場合には、再度、親機3との無線通信に使用する通信チャネルを決定し(S60)、その通信チャネルで親機3や他の子機2からの受信に成功したか否かの判定を行う(S61)。
【0067】
受信に成功した場合には、その受信した情報の種別が、親機3からのビーコン信号であるか他の子機2からの報知情報であるかの判定を行う(S63)。受信した情報が親機3からのビーコン信号であった場合には、その親機3に対して応答信号を送信し(S64)、親機3との無線通信を開始する(S65)。受信した情報が他の子機2からの報知情報であった場合には、報知情報に含まれる鮮度情報に基づいて、その情報が最新の情報(自装置の情報より新しい情報)であるかを判定する(S66)。最新の情報であると判定された場合には、子機2は、通信チャネルの更新を行う(S67)。
【0068】
図11は、本実施の形態における子機2の動作(報知情報の送信)を説明するフロー図である。報知情報の送信は、所定の時間間隔で実行される。図11に示すように、子機2が報知情報の送信を実行するときには、まず、報知情報の送信(報知)に使用する通信チャネルを決定し(S70)、その通信チャネルを用いて報知情報の送信(報知)を行う(S71)。
【0069】
このような本実施の形態の無線通信システム1によれば、子機2の消費電力を削減することができ、他の無線通信システムからの干渉にも強くすることができる。
【0070】
すなわち、本実施の形態では、親機3の通信エリアの圏内に位置していたある子機2(子機B)が、通信エリアの圏外へ出てしまった後に、親機3が他のシステムから干渉を受けて子機2との無線通信に用いる通信チャネルの切換え(周波数f1→周波数f2)を行った場合でも、他の子機2(子機A)が通信エリアの圏内に残っていれば、その子機2(子機A)から現在の通信チャネル(周波数f2)のチャネル情報が、以前の通信チャネル(周波数f1)を用いて報知される。したがって、通信エリアの圏外へ出てしまっていた子機2(子機B)は、以前の通信チャネル(周波数f1)を用いたままでも、他の子機2(子機A)から現在の通信チャネル(周波数f2)のチャネル情報を受け取ることができるので、親機3との無線通信に用いる通信チャネルの更新(周波数f1→周波数f2)をすることにより、親機3との無線通信を再開することができる。このように、本実施の形態では、子機2が親機3の通信エリアの圏外へ出た後で、親機3と子機2との無線通信に使用する通信チャネルの切換えが行われた場合でも、その子機2が親機3の通信エリアの圏内に戻ったときに、親機3とその子機2との間で無線通信を行うことが可能になる。
【0071】
この場合、子機2(子機A、B)は、親機3との無線通信に用いる通信チャネルを用いて、親機3または他の子機2から送信された情報を受信していればよい。ここで、本実施の形態における子機2の消費電力について考えると、受信のための消費電力は、親機3との無線通信に用いる通信チャネルが1チャネルである場合には「1受信分の消費電力」である。本実施の形態では、チャネル情報を報知(送信)する必要がある。送信のための消費電力と受信のための消費電力が略等しいとすると、この報知(送信)のための消費電力は「1受信分の消費電力」である。したがって、本実施の形態では、「2受信分の消費電力」が必要とされる。これに対して、従来の無定位循環方式では、通信チャネルが全部で20チャネルである場合には、「20受信分の消費電力」が必要である。仮に、消費電力削減のため、全チャネルのうちの一部のみ、例えば、5チャネルのみを受信することにしたとしても、従来の方式では「5受信分の消費電力」が必要である。このように、本実施の形態では、子機2の消費電力を大幅に削減することができる。
【0072】
また、本実施の形態における子機2が送受信をするのに要する時間について考えると、上記と同様に、親機3との無線通信に用いる通信チャネルが1チャネルである場合には「1受信分の時間」である。本実施の形態では、チャネル情報を報知(送信)する必要がある。送信に要する時間と受信に要する時間が略等しいとすると、この報知(送信)のために要する時間は「1受信分の時間」である。したがって、本実施の形態では、「2受信分の時間」が必要とされる。これに対して、従来の無定位循環方式では、通信チャネルが全部で20チャネルである場合には、「20受信分の時間」が必要である。仮に、消費電力削減のため、全チャネルのうちの一部のみ、例えば、5チャネルのみを受信することにしたとしても、従来の方式では「5受信分の時間」が必要である。このように、本実施の形態では、子機2が送受信をするのに要する時間を大幅に短縮することができる。
【0073】
さらに、親機3が他の無線通信システムから干渉をうけた場合を考えると、本実施の形態では、通信チャネルが全部で20チャネルである場合には、20チャネルの中から子機2との無線通信に使用する通信チャネルを選択することができる。他の無線通信システムからの干渉によって20チャネルすべてが使用できなくなる状況は考え難い。一方、従来の無定位循環方式では、子機2の消費電力や送受信に要する時間を削減するために、全チャネルのうちの一部のみ、例えば、5チャネルのみを受信することにすると、他の無線通信システムからの干渉によって5チャネルすべてが使用できなくなる状況もあり得る。このように、本実施の形態は、他の無線通信システムからの干渉に対して強い。
【0074】
また、本実施の形態では、親機3の通信エリアの圏内に位置していたある子機2(子機B)が、通信エリアの圏外へ出てしまった後に、親機3が他のシステムから干渉を受けて子機2との無線通信に用いる通信チャネルの切換え(周波数f1→周波数f2)を行った場合でも、その子機2(子機B)は、以前の通信チャネル(周波数f1)だけでなく、候補チャネル情報に示された通信チャネル(周波数f2)でも、親機3または他の子機2から送信された情報を受信する。したがって、通信エリアの圏外へ出てしまっていた子機2(子機B)が、再び通信エリアの圏内に戻ってきたときに、その子機2(子機B)は、切換え後の通信チャネル(周波数f2)を用いて、親機3との無線通信を行うことができる。
【0075】
また、この場合、親機3が他のシステムから干渉を受けて通信チャネルの切換え(1度目の切換え:周波数f1→周波数f2)を行った後に、さらに親機3が他のシステムから干渉を受けて通信チャネルの切換え(2度目の切換え:周波数f2→周波数f3)を行った場合でも、他の子機2(子機A)が通信エリアの圏内に残っていれば、その子機2(子機A)から現在の通信チャネル(周波数f3)のチャネル情報が、以前の通信チャネル(周波数f2)を用いて報知される。したがって、通信エリアの圏外へ出てしまっていた子機2(子機B)は、候補チャネル情報に示された通信チャネル(周波数f2)で、他の子機2(子機A)から現在の通信チャネル(周波数f3)のチャネル情報を受け取ることができるので、親機3との無線通信に用いる通信チャネルの更新(周波数f1→周波数f3)をすることにより、親機3との無線通信を再開することができる。
【0076】
また、本実施の形態では、子機2は、親機3との無線通信に用いる通信チャネルを、最新の通信チャネルに更新することができる。最新の通信チャネルは、チャネル情報に含まれる鮮度情報に基づいて、子機2がその通信チャネルを用いて親機3との無線通信を行った時刻またはその時刻からの経過時間を比較することにより決定することができる。
【0077】
また、本実施の形態では、子機2は、親機3との無線通信に用いる通信チャネルを、最新の通信チャネルに更新することができる。最新の通信チャネルは、チャネル情報に含まれる鮮度情報に基づいて、親機3がその通信チャネルを用いることを決定した時刻またはその時刻からの経過時間を比較することにより決定することができるため、子機は現在時刻あるいは経過時間を計時する機能を備える必要がなく、回路規模および消費電力を小さくできる。
【0078】
また、本実施の形態では、親機3が通信チャネルの切換えを行う直前に子機2との無線通信に用いていた通信チャネルが、以前の通信チャネルとして使用される。そして、その通信チャネル(以前の通信チャネル)の情報が親機3から子機2へ送信される。子機2は、親機3から受信した通信チャネル(以前の通信チャネル)を用いて、現在の通信チャネルを示すチャネル情報を報知することができる。
【0079】
また、本実施の形態では、親機3との無線通信に用いる通信チャネル(周波数f1)を用いて子機2が親機3や他の子機2から情報を受信する確率のほうが、候補チャネル情報に示された通信チャネル(周波数f2)を用いて子機2が親機3や他の子機2から情報を受信する確率よりも高くなるように設定される。例えば、親機3との無線通信に用いる通信チャネル(周波数f1)を用いた受信が2回行われた後に、候補チャネル情報に示された通信チャネル(周波数f2)を用いた受信が1回行われる。このようにして、親機3や他の子機2からの情報を適切に受信することができる。
【0080】
また、本実施の形態では、ある親機3(親機A)の通信エリアの圏内に位置していた子機2が、その親機3(親機A)の通信エリアの圏外へ出て、他の親機3(親機B)の通信エリアの圏内に入った場合、一方の親機3(親機A)が子機2との無線通信に用いる通信チャネル(周波数f1)と他方の親機3(親機B)が子機2との無線通信に用いる通信チャネル(周波数f2)が異なっていたとしても、その子機2は、一方の親機3の通信チャネル(周波数f1)だけでなく、予定チャネル情報に示された通信チャネル(周波数f2)でも、親機3または他の子機2から送信された情報を受信することができる。したがって、二つの親機3(親機AとB)の間を子機2が移動するような場合であっても、その子機2は、移動先の親機3との無線通信を行うことができる。
【0081】
以上、本発明の実施の形態を例示により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上のように、本発明にかかる無線通信システムは、子機の消費電力を削減することができ、他の無線通信システムからの干渉にも強いという効果を有し、人物(子機を携帯する人物)や物品(子機を取り付けた物品)の所在や移動経路を検知するアクティブタグシステム等として有用である。
【符号の説明】
【0083】
1 無線通信システム
2 子機
3 親機
4 無線通信部
5 メモリ部
6 親機間通信部
7 干渉レベル判定部
8 通信チャネル切換部
9 無線通信部
10 報知部
11 メモリ部
12 通信チャネル決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
子機間での通信機能を有する複数の子機と、前記子機との通信機能を有する親機を備えた無線通信システムにおいて、
前記親機は、
他の無線通信システムからの干渉を受けたときに、前記子機との無線通信に用いる通信チャネルの切換えを行う通信チャネル切換部を備え、
前記子機は、
前記親機との無線通信に用いられるべき現在の通信チャネルを示すチャネル情報を、前記通信チャネルの切換えが行われる前に前記親機との無線通信に用いられていた以前の通信チャネルを用いて報知する報知部と、
前記親機との無線通信に用いる通信チャネルを用いて、前記親機または他の子機から送信された情報を受信する受信部と、
前記他の子機から報知された前記チャネル情報に基づいて、前記親機との無線通信に用いる通信チャネルを決定する通信チャネル決定部と、
を備えたことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記親機は、次に通信チャネルの切換えを行うときの切換え先の候補とされている通信チャネルを示す候補チャネル情報を、前記子機との無線通信に用いている通信チャネルを用いて送信する送信部を備え、
前記報知部は、前記親機から送信された前記候補チャネル情報を、前記以前の通信チャネルを用いて報知し、
前記受信部は、前記親機との無線通信に用いる通信チャネルを用いて、前記親機または他の子機から送信された情報を受信するとともに、前記候補チャネル情報に示された通信チャネルを用いて、前記親機または他の子機から送信された情報を受信することを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記現在の通信チャネルを示すチャネル情報は、前記子機が前記現在の通信チャネルを用いて前記親機との無線通信を行った時刻または前記時刻からの経過時間を示す鮮度情報を含み、
前記通信チャネル決定部は、前記親機との無線通信に用いる通信チャネルを、前記鮮度情報に基づいて定めた最新の通信チャネルに決定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記現在の通信チャネルを示すチャネル情報は、前記親機が前記現在の通信チャネルを用いることを決定した時刻または前記時刻からの経過時間を示す鮮度情報を含み、
前記通信チャネル決定部は、前記親機との無線通信に用いる通信チャネルを、前記鮮度情報に基づいて定めた最新の通信チャネルに決定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記以前の通信チャネルは、前記通信チャネルの切換えが行われる直前に、前記親機が前記子機との無線通信に用いていた通信チャネルであり、
前記親機は、前記以前の通信チャネルの情報を、前記子機との無線通信に用いている通信チャネルを用いて送信する第2送信部を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記親機との無線通信に用いる通信チャネルを用いて、前記受信部が前記親機または他の子機から送信された情報を受信する確率は、前記候補チャネル情報に示された通信チャネルを用いて、前記受信部が前記親機または他の子機から送信された情報を受信する確率より高くなるように設定されていることを特徴とする請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項7】
前記無線通信システムは、親機間での通信機能を有する複数の親機を備え、
前記親機は、前記子機が次に無線通信を行う通信相手として予定されている他の親機が前記子機との無線通信に用いることを予定している通信チャネルを示す予定チャネル情報を、前記子機との無線通信に用いている通信チャネルを用いて送信する第3送信部を備え、
前記報知部は、前記親機から送信された前記予定チャネル情報を、前記以前の通信チャネルを用いて報知し、
前記受信部は、前記親機との無線通信に用いる通信チャネルを用いて、前記親機または他の子機から送信された情報を受信するとともに、前記予定チャネル情報に示された通信チャネルを用いて、前記親機または他の子機から送信された情報を受信することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項8】
子機間での通信機能を有する複数の子機と、前記子機との通信機能を有する親機を備えた無線通信システムで用いられる方法であって、
前記親機では、他の無線通信システムからの干渉を受けたときに、前記子機との無線通信に用いる通信チャネルの切換えが行われ、
前記方法は、
第1の子機が、前記親機との無線通信に用いられるべき現在の通信チャネルを示すチャネル情報を、前記通信チャネルの切換えが行われる前に前記親機との無線通信に用いられていた以前の通信チャネルを用いて報知することと、
第2の子機が、前記親機との無線通信に用いる通信チャネルを用いて、前記親機または他の子機から送信された情報を受信することと、
前記第2の子機が、前記他の子機から報知された前記チャネル情報に基づいて、前記親機との無線通信に用いる通信チャネルを決定することと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
無線通信システムで用いられる子機であって、
前記無線通信システムには、子機間での通信機能を有する複数の前記子機と、前記子機との通信機能を有する親機が備えられており、
前記親機では、他の無線通信システムからの干渉を受けたときに、前記子機との無線通信に用いる通信チャネルの切換えが行われ、
前記子機は、
前記親機との無線通信に用いられるべき現在の通信チャネルを示すチャネル情報を、前記通信チャネルの切換えが行われる前に前記親機との無線通信に用いられていた以前の通信チャネルを用いて報知する報知部と、
前記親機との無線通信に用いる通信チャネルを用いて、前記親機または他の子機から送信された情報を受信する受信部と、
前記他の子機から報知された前記チャネル情報に基づいて、前記親機との無線通信に用いる通信チャネルを決定する通信チャネル決定部と、
を備えたことを特徴とする子機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−4951(P2012−4951A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139539(P2010−139539)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】