説明

無線通信システム、管理サーバ装置、無線通信リソース割当処理方法およびプログラム

【課題】同一エリアに対して通信サービスを提供する複数の無線通信装置を備える無線通信システムが、動的な周波数割当を適切に行って、通信サービスの品質低下を抑えつつ、周波数利用効率の向上を図ることができる。
【解決手段】使用率判定部210が無線通信ネットワークの通信量に基づいて周波数割当処理必要と判定した場合、あるいは、予測通信量判定部220が通信量予測に基づいて周波数割当処理必要と判定した場合、あるいは、中心性判定部230が通信量の分布に基づいて周波数割当処理必要と判定した場合、のみ、周波数割当部250が、周波数割当処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一エリアに対して通信サービスを提供する複数の無線通信装置を備える無線通信システム、これら無線通信装置の各々が使用可能な無線通信リソースの割当処理を行う管理サーバ装置、当該管理サーバ装置の行う無線通信リソース割当処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の無線通信ネットワークが同一エリアに対して通信サービスを提供する場合、ネットワーク間における干渉量を抑えるように、各ネットワークに対して利用可能な周波数を割り当てる必要がある。例えば、近年注目されている衛星/地上統合移動通信システム(STICS:Satellite/Terrestrial Integrated Mobile Communication Systems)では、携帯電話機が、衛星による無線通信ネットワーク(衛星携帯電話通信システムの提供する無線通信ネットワーク)と、地上の無線通信ネットワーク(地上携帯電話システムの提供する無線通信ネットワーク)とのいずれにも接続することができる。この衛星/地上統合移動通信システムにおいて、衛星による無線通信ネットワークと地上の無線通信ネットワークとの各々に対して異なる周波数を割り当てて、両者のネットワーク間における干渉量を抑える必要がある。
【0003】
図6は、衛星/地上統合移動通信システムのように、衛星による無線通信ネットワークと地上の無線通信ネットワークとが、同一エリアに対して通信サービスを提供する通信システムの構成例を示す図である。
同図において、携帯端末装置1101は、通信衛星1111、衛星ゲートウェイ(Gateway;GW)1112およびコアネットワーク(Core Network、基幹通信回線)1131経由でインターネット(Internet)1141に接続可能である。それと同時に、携帯端末装置1101は、基地局装置1121、基地局制御装置1122およびコアネットワーク1131経由でインターネット1141に接続可能である。
【0004】
ここで、通信衛星1111と基地局装置1121とが同一の周波数帯域を用いて携帯端末装置1101と通信を行うと、通信衛星1111の無線信号と基地局装置1121の無線信号とが干渉しあうおそれがある。かかる干渉を避けるため、通信衛星1111による無線通信ネットワークと、基地局装置1121による地上の無線通信ネットワークとの各々に対して利用可能な周波数を割り当てて、両者のネットワーク間における干渉量を抑える必要がある。
【0005】
周波数の割当方法の1つとして、周波数を固定的に割り当てる方法が考えられる。しかし、この周波数を固定的に割り当てる方法によると、通信状況(トラヒック)が変動した場合に周波数利用効率が低下して非効率となるおそれがある。特に、災害時などは、トラヒックが激しく変動することが予想され、固定的に割り当てられた周波数の数(チャンネル数)と、接続される呼の数とが不釣合いとなることが考えられる。例えば、通信衛星1111による無線通信ネットワークに対して呼要求が集中すると、地上の無線通信ネットワーク側には未使用チャンネルが多数存在するにもかかわらず、通信衛星1111による無線通信ネットワークにおいては呼数の上限に達して新たな呼を接続できなくなるおそれがある。
【0006】
そこで、非特許文献1では、動的に周波数を割り当てるダイナミックチャネル割り当て方式が示されている。
また、特許文献1では、マルチビーム無線通信システムの基地局が、信号品質が許容範囲外となるビームを検出すると、当該ビームに対して、より多くのリソース(周波数帯域等)を配分する方法が示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】梅比良正弘、他1名、「衛星/地上統合移動通信システムにおけるダイナミックチャネル割り当て方式の提案」、2010年電子情報通信学会ソサイエティ大会,B−3−22、2010年9月
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4428303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に示されるように、動的に周波数を割り当てることによって周波数利用効率の向上を図ることができるが、通信サービスの品質が低下してしまうおそれがある。
例えば、動的に周波数を割り当てることによって、既に通信を行っている携帯端末装置が利用可能な周波数も変更されることが考えられる。ここで、携帯端末装置にとって適切な周波数(干渉等が少なくS/N比の大きい信号を得られる周波数)は、当該携帯端末装置の位置や大気の状況等の通信環境によって異なる。ネットワークに比較的長時間接続している携帯端末装置に対しては、例えば携帯端末装置の測定する信号品質に基づいて、より適切な周波数を携帯端末装置に割り当てることが可能である。これに対して、動的に周波数を割り当てられた際のネットワークでは、充分な信号品質情報を取得しない状態で各携帯端末が利用可能な周波数を決定する必要が生じることが考えられる。あるいは、ネットワークに対して新たに割り当てられた周波数の中に、携帯端末装置にとって適切な周波数が含まれていない場合も有り得る。これらの場合、携帯端末装置の送受信信号に混入するノイズや干渉信号が増大してしまうなど、S/N比(Signal to Noise ratio)が低下してしまうおそれがある。すなわち、通信システムの提供する通信サービスの品質が低下してしまうおそれがある。
あるいは、地上の無線通信ネットワークの各セルにおける呼接続可能数が変化して、既に通信を行っている携帯端末装置に対するハンドオーバーができなくなってしまう場合もあり得る。
【0010】
非特許文献1では、動的に周波数を割り当てるダイナミックチャネル割り当て方式は示されているものの、かかる通信サービスの品質低下に対する対策は示されていない。
また、特許文献1では、基地局が各ビームに対してリソースの割り当てを行う方法は示されているものの、非特許文献1と同様、上述の通信サービスの品質低下に対する対策は示されていない。
【0011】
本発明は、上述の課題を解決することのできる無線通信システム、管理サーバ装置、周波数割当処理方法およびプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、本発明の一態様による無線通信システムは、同一エリアに対して通信サービスを提供する複数の無線通信装置と、前記複数の無線通信装置の各々が使用可能な無線通信リソースの割当処理を行う管理サーバ装置と、を具備し、前記管理サーバ装置は、前記複数の無線通信装置の各々における通信量に基づいて、前記複数の無線通信装置の各々が使用可能な無線通信リソースの割当処理の要否を判定する要否判定部と、前記要否判定部が、前記無線通信リソースの割当処理が必要と判定すると、前記無線通信リソースの割当処理を行うリソース割当部と、を具備することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一態様による管理サーバ装置は、同一エリアに対して通信サービスを提供する複数の無線通信装置の各々における通信量に基づいて、前記複数の無線通信装置の各々が使用可能な無線通信リソースの割当処理の要否を判定する要否判定部と、前記要否判定部が、前記無線通信リソースの割当処理が必要と判定すると、前記無線通信リソースの割当処理を行う周波数割当部と、を具備することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の一態様による無線通信リソース割当処理方法は、同一エリアに対して通信サービスを提供する複数の無線通信装置の各々が使用可能な無線通信リソースの割当処理を行う管理サーバ装置の無線通信リソース割当方法であって、前記複数の無線通信装置の各々における通信量に基づいて、前記複数の無線通信装置の各々が使用可能な無線通信リソースの割当処理の要否を判定する要否判定ステップと、前記要否判定ステップにて、前記無線通信リソースの割当処理が必要と判定すると、前記無線通信リソースの割当処理を行うリソース割当ステップと、を具備することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の一態様によるプログラムは、同一エリアに対して通信サービスを提供する複数の無線通信装置の各々が使用可能な無線通信リソースの割当処理を行う管理サーバ装置としてのコンピュータに、前記複数の無線通信装置の各々における通信量に基づいて、前記複数の無線通信装置の各々が使用可能な無線通信リソースの割当処理の要否を判定する要否判定ステップと、前記要否判定ステップにて、前記無線通信リソースの割当処理が必要と判定すると、前記無線通信リソースの割当処理を行うリソース割当ステップと、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、動的な周波数割当など、動的な無線通信リソース割当を適切に行って、通信サービスの品質低下を抑えつつ、無線通信リソース利用効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態における無線通信システムの概略構成例を示すブロック図である。
【図2】同実施形態における地上通信ネットワークと衛星通信ネットワークとのセル構成の例を示す図である。
【図3】同実施形態の地上通信ネットワークにおける通信量の分布の例を示す図である。
【図4】同実施形態の地上通信ネットワークにおける通信量の変化の例を示す図である。
【図5】同実施形態において、管理サーバ装置が行う動的な周波数割当処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】衛星による無線通信ネットワークと地上の無線通信ネットワークとが、同一エリアに対して通信サービスを提供する通信システムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態における無線通信システムの概略構成例を示すブロック図である。同図において、無線通信システム1は、携帯端末装置101と、通信衛星111と、衛星ゲートウェイ112と、基地局装置121と、基地局制御装置122と、コアネットワーク131と、管理サーバ装置200とを具備する。管理サーバ装置200は、要否判定部205と、周波数割当部(リソース割当部)250と、通信部260と、情報記憶部270とを具備する。要否判定部205は、使用率判定部210と、予測通信量判定部220と、中心性判定部230と、統合判定部240とを具備する。使用率判定部210は、使用率取得部211と、閾値判定部212とを具備する。予測通信量判定部220は、予測通信量取得部221と、閾値判定部222とを具備する。中心性判定部230は、中心点取得部231と、ずれ量取得部232と、閾値判定部233とを具備する。
また、基地局制御装置122と、衛星ゲートウェイ112と、管理サーバ装置200とがコアネットワーク131に接続され、コアネットワーク131は、インターネット141に接続されている。
【0019】
通信衛星111は、通信衛星111と携帯端末装置101との間の通信路であるサービスリンクと、通信衛星111と衛星ゲートウェイ112との間の通信路であるフィーダリンクとにおける通信を制御する。そして、通信衛星111は、サービスリンクとフィーダリンクとを用いて、携帯端末装置101から受信する通信データを衛星ゲートウェイ112に送信し、衛星ゲートウェイ112から送信される携帯端末装置101宛の通信データを当該携帯端末装置101に送信する。
【0020】
衛星ゲートウェイ112は、通信衛星111とコアネットワーク131との間に配備され、通信衛星111から受信する通信データをコアネットワーク131に送信し、コアネットワーク131から受信する通信データを通信衛星111に送信する。
また、衛星ゲートウェイ112は、通信衛星111を管理する。特に、衛星ゲートウェイ112は、管理サーバ装置200からの指示に従って、サービスリンクとフィーダリンクとにおいて通信衛星111が行う通信の制御に関する指示を通信衛星111に送信する。
【0021】
通信衛星111と衛星ゲートウェイ112とで衛星通信システムを構築して、通信衛星111による無線通信ネットワーク(以下では、「衛星通信ネットワーク」と称する)を形成し、衛星通信ネットワークに接続する携帯端末装置101に対して通信サービスを提供する。例えば、衛星通信ネットワークに接続する携帯端末装置101は、通信衛星111と衛星ゲートウェイ112とコアネットワーク131とを経由してインターネット141に接続できる。
【0022】
基地局装置121は、携帯端末装置101に対してアクセス回線を提供し、当該アクセス回線における通信を制御する。そして、基地局装置121は、携帯端末装置101から送信される通信データを基地局制御装置122に送信し、基地局制御装置122から送信される携帯端末装置101宛の通信データを当該携帯端末装置101に送信する。
なお、本実施形態では、無線通信システム1は、複数の基地局装置121を具備する。そして、後述するように、無線通信システム1は、これら複数の基地局装置121のセルによってカバーされる領域において通信サービスを提供する。
【0023】
基地局制御装置122は、基地局装置121とコアネットワーク131との間に配備され、基地局装置121から受信する通信データをコアネットワーク131に送信し、コアネットワーク131から受信する通信データを基地局装置121に送信する。
また、基地局制御装置122は、基地局装置121を管理する。特に、基地局制御装置122は、管理サーバ装置200からの指示に従って、基地局装置121の行う上記アクセス回線における通信の制御に関する指示を基地局装置121に送信する。
【0024】
基地局装置121と基地局制御装置122とで地上通信システムを構築して、地上の無線通信ネットワーク(以下では、「地上通信ネットワーク」と称する)を形成し、地上通信ネットワークに接続する携帯端末装置101に対して通信サービスを提供する。例えば、地上通信ネットワークに接続する携帯端末装置101は、基地局装置121と基地局制御装置122とコアネットワーク131とを経由してインターネット141に接続できる。
【0025】
携帯端末装置101は、通信衛星111と基地局装置121とのいずれとも通信可能な無線通信機能を備える移動端末装置である。携帯端末装置101は、例えば携帯電話機であってもよいし、PDA(Personal Digital Assistant、個人情報端末)であってもよい。
【0026】
コアネットワーク131は、衛星通信システム(通信衛星111および衛星ゲートウェイ112)からインターネット141へのアクセスを中継し、また、地上通信システム(基地局装置121および基地局制御装置122)からインターネット141へのアクセスを中継する。また、コアネットワーク131は、地上通信システムと衛星通信システムを相互接続し、相互間の通信を中継する。
インターネット141は、多数のコンピュータネットワークがTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)を用いて接続された分散型ネットワークであり、サービス提供サーバを有してインターネットサービスを提供する。
【0027】
管理サーバ装置200は、衛星通信ネットワークおよび地上通信ネットワークにおける通信量(呼数)や周波数配置状況を監視し、その状況に応じて、衛星通信ネットワークと地上通信ネットワークとの各々が使用可能な周波数を割り当てる処理(以下では、「周波数割当処理」と称する)を行うサーバである。
なお、管理サーバ装置200の配置は、図1に示すコアネットワーク131に直接接続される位置に限らず、管理サーバ装置200が、地上通信システムと衛星通信システムの双方と通信可能な位置であればよい。例えば、管理サーバ装置200が、衛星通信システム内、地上通信システム内、あるいはインターネット141内に配備されていてもよい。
【0028】
要否判定部205は、周波数割当処理の要否を判定する。
使用率判定部210は、衛星通信ネットワークおよび地上通信ネットワークにおける現在の通信量に基づいて、周波数割当処理の要否を判定する。
使用率取得部211は、衛星通信ネットワークおよび地上通信ネットワークにおける現在の通信量を示す指標値として、現在の周波数使用率(割り当てられた全周波数に対する使用中の周波数の割合)を取得する。例えば、使用率取得部211は、通信部260を介して、衛星通信ネットワークにおいて使用中の周波数の数(以下、個々の周波数を「チャンネル」と称し、周波数の数を「チャンネル数」と称する)を衛星ゲートウェイ112から取得する。そして、使用率取得部211は、取得した使用中の周波数の数を、衛星通信ネットワークに割り当てられている周波数の数(全チャンネル数)で除算して、衛星通信ネットワークにおける現在の周波数使用率を取得する。同様に、使用率取得部211は、通信部260を介して、基地局制御装置122から地上通信ネットワークにおいて使用中のチャンネル数を取得する。そして、使用率取得部211は、取得した使用中のチャンネル数を、地上通信ネットワークに割り当てられているチャンネル数で除算して、地上通信ネットワークにおける現在の周波数使用率を取得する。
【0029】
閾値判定部212は、使用率取得部211の取得する現在の周波数使用率に基づいて、周波数割当処理の要否を判定する。具体的には、閾値判定部212は、衛星通信ネットワークまたは地上通信ネットワークのいずれかにおける現在の周波数使用率が、所定の閾値以上の場合は、周波数割当処理必要と判定し、閾値未満の場合は、周波数割当処理は不要と判定する。
【0030】
予測通信量判定部220は、衛星通信ネットワークおよび地上通信ネットワークにおける通信量の変化に基づいて、周波数割当処理の要否を判定する。
予測通信量取得部221は、衛星通信ネットワークおよび地上通信ネットワークにおける通信量の変化を示す指標値として、所定時間後における通信量予測値を算出する。具体的には、予測通信量取得部221は、後述するように、地上通信ネットワークまたは衛星通信ネットワークにおける通信量の履歴に基づいて通信量予測値を算出する。
閾値判定部222は、予測通信量取得部221の算出した通信量予測値が所定の閾値以上の場合に周波数割当処理必要と判定する。
【0031】
中心性判定部230は、地上通信ネットワークにおける通信量の分布に基づいて、周波数割当処理の要否を判定する。
中心点取得部231は、地上通信ネットワークにおける通信量分布情報を取得する。例えば、中心点取得部231は、後述するように、地上通信ネットワークにおける通信量分布情報として、媒介中心性(Betweenness Centrality)に基づく中心座標を算出する。
【0032】
ずれ量取得部232は、中心点取得部231の取得する通信量分布情報に基づいて、周波数割当の分布と通信量の分布とのずれの大きさを示すずれ量を取得する。例えば、ずれ量取得部232は、後述するように、中心点取得部231の算出する媒介中心性に基づく中心座標と、周波数割当における中心セルの中心座標とのずれ量を取得する。
閾値判定部233は、ずれ量取得部232の取得するずれ量に基づいて、周波数割当処理の要否を判定する。例えば、閾値判定部222は、ずれ量取得部232の取得するずれ量が所定の閾値以上の場合は、周波数割当処理必要と判定し、閾値未満の場合は、周波数割当処理不要と判定する。
【0033】
統合判定部240は、使用率判定部210と予測通信量判定部220と中心性判定部230とのそれぞれにおける周波数割当処理の要否の判定結果に基づいて、周波数割当処理の要否を判定する。具体的には、統合判定部240は、使用率判定部210と予測通信量判定部220と中心性判定部230とのいずれかが周波数割当処理必要と判定すると、周波数割当処理必要と判定し、使用率判定部210と予測通信量判定部220と中心性判定部230との全てが周波数割当処理不要と判定すると、周波数割当処理不要と判定する。
【0034】
周波数割当部250は、統合判定部240が周波数割当処理必要と判定すると、周波数割当処理を行う。
通信部260は、コアネットワーク131に接続され、衛星ゲートウェイ112および基地局制御装置122と通信を行う。特に、通信部260は、衛星ゲートウェイ112と基地局制御装置122とから、現在の通信量情報を取得する。また、通信部260は、周波数割当部250が周波数割当処理にて決定する周波数割当を衛星ゲートウェイ112と基地局制御装置122とに送信することにより、割り当てられた周波数を用いて通信を行うよう、衛星通信システムと地上通信システムとを制御する。
情報記憶部270は、使用率取得部211の取得する通信量の各時刻における履歴など、各種情報を記憶する。
【0035】
次に、図2を参照して、無線通信システム1におけるセル構成について説明する。
図2は、地上通信ネットワークと衛星通信ネットワークとのセル構成の例を示す図である。同図において、地上通信ネットワークは、セルA301、A302、A303、・・・の19個のセルによって領域A300をカバーし、当該領域A300において通信サービスを提供する。一方、衛星通信ネットワークは、セルA400において通信サービスを提供する。
【0036】
地上通信ネットワークのセルA301、A302、・・・と、衛星通信ネットワークのセルA400とは重なっており、地上通信ネットワークと衛星通信ネットワークとが同一の周波数を用いて通信を行うと互いの電波が干渉しあう。そこで、管理サーバ装置200が、それぞれのネットワークに対する周波数の割当を行う。
また、地上通信ネットワークの複数のセルにおいて、基地局装置121が同一周波数を用いて携帯端末装置101と通信を行うと、互いの電波が干渉しあうおそれがある。そこで、管理サーバ装置200が、それぞれのセルに対する周波数の割当を行う。
【0037】
次に、図3を参照して、中心点取得部231による、媒介中心性に基づく中心座標の取得について説明する。
図3は、図2のセル構成の地上通信ネットワークにおける通信量の分布の例を示す図である。同図において地上セルの各々に括弧で示す数字は、そのセル内において発生している通信量(例えば呼数。あるいは使用中のチャンネル数を用いてもよい)の例を示している。同図に示す例では、その通信量の分布が図に向かって左側に偏っている。
この分布に対し、中心点取得部231は、式(1)を用いて各セルの評価値を算出する。
【0038】
【数1】

【0039】
ここで、bは、セルkの評価値を示す。また、経路数gijは、セルiとセルjとの間の最短経路の数(通信量が存在しないセル、または通信量が一定閾値以下のセルに関しては隣接セルとのリンクが存在しないこととする)を示す。また、経路数gikjは、上述のセルiとセルjとの間の最短経路のうち、セルkを通過する経路の数を示している。ここで、セルiと、セルjと、セルkとは、いずれも図3の任意のセル(セルi≠セルj)である。
【0040】
例えば、セルA311とセルA351との間の最短経路として、セルA311とセルA351とを含めて5つのセルを通る6本の経路がある。このうちセルA332を通過する経路は、セルA321およびA341を通過する経路と、セルA321およびA342を通過する経路と、セルA322およびA341を通過する経路と、セルA322およびA342を通過する経路との4本の経路である。従って、セルi=セルA311、セルj=セルA351、セルk=セルA332においては、gikj/gij=4/6=2/3となる。
【0041】
中心点取得部231は、任意のセルi、セルj(セルi≠セルj)、セルk=セルA332について、gikj/gijを算出し、式(1)に示されるように、これらの合計値を算出してセルA332の評価値bA332とする。
同様にして、中心点取得部231は任意のセルkについて評価値bを算出し、算出した評価値の最も大きいセルを選択する。以下では、評価値の最も大きいセルを「媒介中心セル」とする。
【0042】
また、情報記憶部270は各セルの中心座標(例えば、緯度および経度で示される地理的中心の座標)を予め記憶しており、中心点取得部231は、媒介中心セルの中心座標を情報記憶部270から読み出してずれ量取得部232に出力する。以下では、この中心点取得部231がずれ量取得部232に出力する座標を「媒介中心性に基づく中心座標」と称し、媒介中心性に基づく中心座標の示す点を「媒介中心性に基づく中心点」と称する。
【0043】
なお、媒介中心セルが複数存在する場合、中心点取得部231は、例えば、各媒介中心セルの中心点(中心座標の示す点)との距離が最小となる点(例えば、媒介中心セルが2つ存在する場合は、これら媒介中心セルの中心点を結ぶ線分の中点)の座標を算出し、媒介中心性に基づく中心座標としてずれ量取得部232に出力する。
【0044】
ずれ量取得部232は、この媒介中心性に基づく中心座標と、周波数割当における中心セルとのずれ量を算出する。そして、閾値判定部233は、ずれ量取得部232が算出したずれ量の大きさに基づいて、周波数割当処理の要否を判定する。閾値判定部233が、周波数割当処理必要と判定すると、後述するように、周波数割当部250は周波数割当処理を行う。
【0045】
以上のように、中心点取得部231が、通信量が存在しないセル、または通信量が一定閾値以下のセルに関しては隣接セルとのリンクが存在しないこととして媒介中心セルを求めることにより、ネットワークにおける通信量の分布(偏り)を把握できる。例えば、中心点取得部231は、図3の例において、呼数が「0」のセルA313など、呼数が3以下のセルに関しては隣接セルとのリンクが存在しないこととして媒介中心セルを求める。これにより、図に向かって右側2列のセル及び図の最も下に位置するセルの、8個のセルが媒介中心セルの選択処理の対象から事実上除外され、通信量が図に向かって左側に偏っていることを示す結果を得られる。
【0046】
後述するように、この中心点取得部231の取得する通信量の分布(の中心を示す座標)と、周波数割当の中心(を示す座標)とのずれ量が大きい場合に、閾値判定部233が周波数割当処理必要と判定し、当該判定結果に基づいて周波数割当部250が周波数割当処理を行う。周波数割当部250が、通信量の分布に適合する周波数割当処理を行うことにより、周波数利用効率を高めることができる。
【0047】
次に、図4を参照して、予測通信量判定部220が行う、通信量の変化に基づく周波数割当処理の要否判定について説明する。
図4は、地上通信ネットワークにおける通信量の変化の例を示す図である。
同図において、時刻tは、現在の時刻(より正確には、地上通信ネットワークにおける最新の通信量の測定時刻)を示し、時刻t−1は、時刻tより所定時間T前の時刻を示す。ここで、所定時間Tは、予測通信量判定部220が、周波数割当処理の要否を判定する時間間隔として予め設定されている時間である。また、時刻tは、時刻tより所定時間T後の時刻を示す。ここで、所定時間Tは、周波数使用率を予測する時点の基準として予め設定されている時間である。
【0048】
また、通信量xt-1、xは、それぞれ時刻t−1、tにおける、地上通信ネットワークで使用中のチャンネル数を、地上通信ネットワークに現在割り当てられているチャンネル数で除算した値(地上通信ネットワークにおける通信量の相対値)を示す。また、通信量a×T+xは、時刻tにおける通信量(相対値)の予測値である。また、閾値Lmaxは、閾値判定部222が用いる判定閾値である。
【0049】
まず、予測通信量取得部221は、現在(時刻tにおける)使用中のチャンネル数と、所定時間T前(時刻t−1)に使用中のチャンネル数とを情報記憶部270から読み出し、地上通信ネットワークに現在割り当てられているチャンネル数で除算して、それぞれの時刻における通信量の相対値x、xt-1を算出する。通信量の相対値を用いるのは、閾値判定部233の行う閾値判定において、固定値の閾値を使用可能とするためである。
次に、予測通信量取得部221は、算出した通信量xとxt-1とを式(2)に代入して、周波数使用率の変化率atを算出する。
【0050】
【数2】

【0051】
次に、閾値判定部222は、予測通信量取得部221が求めた変化率atに基づいて、この変化率のまま通信量が推移した場合に、所定時間T2以内に通信量が通信規制レベル(地上通信システムが新たな呼を接続不可とする通信量)を超えるか否かを判定(予測)する。具体的には、式(3)が成立する場合、閾値判定部222は、通信量が通信規制レベルを超えると判定する。
【0052】
【数3】

【0053】
一方、式(3)が成立しない場合、すなわち、式(4)が成立する場合、閾値判定部222は、通信量が通信規制レベルを超えないと判定する。
【0054】
【数4】

【0055】
通信量が通信規制レベルを超えると判定(予測)される場合、通信量が通信規制レベルを超える前に周波数割当処理を行うことで、通信規制を回避できる可能性がある。例えば、地上通信ネットワークの通信量が通信規制レベルを超えると予測され、かつ、衛星通信ネットワークの周波数使用率に余裕がある(未使用の周波数が比較的多数ある)場合、周波数割当部250は、衛星通信ネットワークに割り当てるチャンネル数を減らし、その分、地上通信ネットワークに割り当てるチャンネル数を増やす。これにより、地上通信ネットワークにおける通信量が増加しても通信規制がかからないようにし得る。
そこで、後述するように、通信量が通信規制レベルを超えると予測通信量判定部220が判定すると、周波数割当部250は、周波数割当処理を行う。
【0056】
なお、閾値Lmaxは、通信規制レベルと同じ値、あるいは、通信規制レベルよりもやや小さい値に予め設定されている。例えば、通信規制レベルが100パーセント(すなわち、割り当てられた全ての周波数を携帯端末装置101との通信に使用可能)である場合に、閾値Lmaxを、100パーセントに設定してもよいし、95パーセントに設定してもよい。
閾値Lmaxを通信規制レベルと同じ値に設定することにより、周波数使用率が規制レベルを超えそうか否かの判定を、より厳密に行うことができ、周波数割当処理の発生頻度を低減させることができる。
一方、閾値Lmaxを通信規制レベルよりも小さい値に設定することにより、早めに周波数割当処理を行うことができる。従って、周波数使用率が急に大きくなった場合でも、予め周波数割当処理を行うことで通信規制がかからないようにし得る。
【0057】
なお、予測通信量判定部220は、衛星通信ネットワークに関しても、同様に周波数割当処理の要否を判定する。そして、通信量が通信規制レベルを超えると予測通信量判定部220が判定すると、周波数割当部250は、周波数割当処理を行う。この場合、周波数割当部250は、地上通信ネットワークの周波数使用率に余裕があれば、地上通信ネットワークに割り当てるチャンネル数を減らし、その分、衛星通信ネットワークに割り当てるチャンネル数を増やす。これにより、衛星通信ネットワークにおける通信量が増加しても通信規制がかからないようにし得る。
【0058】
次に、図5を参照して、管理サーバ装置200の動作について説明する。
図5は、管理サーバ装置200が行う動的な周波数割当処理(衛星通信ネットワークおよび地上通信ネットワークが通信サービスを提供している状態で、周波数の再割当を行う処理)の処理手順を示すフローチャートである。管理サーバ装置200は、起動すると同図の処理を開始する。
【0059】
ステップS101において、通信部260は、衛星通信ネットワークにおける現在の通信量(使用中のチャンネル数)の情報を、衛星ゲートウェイ112から取得し、地上通信ネットワークにおける現在の通信量の情報と、現在の通信量の分布の情報(例えばセル毎の呼数の情報)とを、基地局制御装置122から取得する。通信部260は、取得した現在の通信量の情報を使用率取得部211に出力し、現在の通信量の分布の情報を中心点取得部231に出力する。
【0060】
ステップS102〜S103において、使用率判定部210は、衛星通信ネットワークおよび地上通信ネットワークにおける現在の通信量に基づいて、周波数割当処理の要否を判定する。
ステップS102において、使用率取得部211は、ステップS101で通信部260から出力される、衛星通信ネットワークおよび地上通信ネットワークにおける現在使用中のチャンネル数を示す情報を取得し、取得した情報を、情報記憶部270の記憶する通信量の履歴情報に書き加える。また、使用率取得部211は、衛星通信ネットワーク、地上通信ネットワークのそれぞれについて、現在使用中のチャンネル数を、割り当てられているチャンネル数で除算して、周波数使用率を取得(算出)する。
【0061】
ステップS103において、閾値判定部212は、ステップS102で使用率取得部211から出力される現在の周波数使用率に基づいて、周波数割当処理の要否を判定する。具体的には、閾値判定部212は、現在の周波数使用率が、所定の閾値以上の場合は周波数割当処理必要と判定し、閾値未満の場合は周波数割当処理不要と判定する。周波数割当処理必要と判定した場合(ステップS103:YES)、ステップS109に進み、不要と判定した場合(ステップS103:NO)、ステップS104に進む。
【0062】
なお、閾値判定部212が用いる閾値は、図4で説明した、予測通信量判定部220が用いる閾値Lmaxと同様、通信規制レベルと同じ値に予め設定された閾値であってもよいし、通信規制レベルよりもやや小さい値に予め設定された閾値であってもよい。
閾値を通信規制レベルと同じ値に設定することにより、周波数割当処理の要否判定を、より厳密に行うことができ、周波数割当処理の発生頻度を低減させることができる。
一方、閾値を通信規制レベルよりも小さい値に設定することにより、早めに周波数割当処理を行うことができる。これにより、周波数割当処理を行っている間の通信規制や、次回の判定(例えば、図4の時刻T経過後)までの間に通信量が閾値を超えることによって行われる通信規制を回避し得る。
【0063】
ステップS104〜S105において、予測通信量判定部220は、図4で説明したように、衛星通信ネットワークおよび地上通信ネットワークにおける通信量の変化に基づいて、周波数割当処理の要否を判定する。
ステップS104において、予測通信量取得部221は、情報記憶部270が記憶する通信量の履歴から、直近の通信量(図4で説明した時刻tにおける通信量x)と、所定の時間T前の通信量(時刻t−1における通信量xt-1)とを読み出し、これらの通信量を式(2)に代入して通信量の変化率aを算出し、閾値判定部222に出力する。閾値判定部222は、予測通信量取得部221から出力される通信量の変化率aに基づいて、所定の時間T後の通信量予想値(時刻tにおける通信量予想値a×T+x)を算出する。
【0064】
ステップS105において、閾値判定部222は、ステップS104で算出した通信量予想値に基づいて、周波数割当処理の要否を判定する。具体的には、閾値判定部222は、通信量予想値が、所定の閾値Lmax以上の場合は周波数割当処理必要と判定し、閾値Lmax未満の場合は周波数割当処理不要と判定する。周波数割当処理必要と判定した場合(ステップS105:YES)、ステップS109に進み、不要と判定した場合(ステップS105:NO)、ステップS106に進む。
【0065】
ステップS106〜S108において、中心性判定部230は、地上通信ネットワークにおける通信量の分布に基づいて、周波数割当処理の要否を判定する。
ステップS106において、中心点取得部231は、ステップS101で通信部260から出力される、現在の通信量の分布の情報に基づいて、図3で説明したように、地上通信ネットワークにおける媒介中心性に基づく中心座標を求め、ずれ量取得部232に出力する。
【0066】
ステップS107において、ずれ量取得部232は、ステップS106で中心性判定部230から出力される媒介中心性に基づく中心座標と、周波数割当における中心セルの中心座標とのずれ量を算出し、閾値判定部233に出力する。
ここで、ずれ量取得部232は、例えば次のようにして、周波数割当における中心セルの座標を取得する。まず、周波数割当部250が周波数割当処理を行う際に、中心性判定部230の取得する媒介中心セルを周波数割当における中心セルとして、この中心セルに近いセルほど多くのチャンネル数を割り当てるようにする。また、中心性判定部230は中心セルを示す情報(例えばセルの識別番号)を情報記憶部270に書き込んでおく。そして、ずれ量取得部は、情報記憶部270から中心セルを示す情報を読み出し、この中心セルの座標を情報記憶部270から読み出すことによって、周波数割当における中心セルの座標を取得する。
【0067】
ステップS108において、閾値判定部233は、ステップS107でずれ量取得部232から出力されるずれ量に基づいて、周波数割当処理の要否を判定する。具体的には、閾値判定部222は、ずれ量取得部232から出力されるずれ量が、所定の閾値以上の場合は周波数割当処理必要と判定し、閾値未満の場合は周波数割当処理不要と判定する。周波数割当処理必要と判定した場合(ステップS108:YES)、ステップS109に進む。一方、不要と判定した場合(ステップS108:NO)、ステップS101に戻り、所定時間T後に図5の処理を繰り返す。
【0068】
ステップS109において、周波数割当部250は、周波数割当処理を行う。既に衛星通信ネットワークと地上通信ネットワークとに周波数が割り当てられている場合は、周波数割当部250は、周波数の再割当を行う処理、すなわち割り当てられている周波数を必要に応じて変更する処理として周波数割当処理を行う。具体的には、周波数割当部250は、地上通信ネットワークと衛星通信ネットワークとのそれぞれで使用可能な周波数の割当配分(チャンネル数)や配置(周波数)を変更する。
【0069】
ここで、周波数割当部250の行う周波数割当方法としては、衛星通信ネットワークにおける無線信号と、地上通信ネットワークにおける無線信号との間の干渉量を小さくし、周波数利用効率を大きくするように周波数の割当を決定する様々な方法を用いることができる。例えば、周波数割当部250は、通信量の分布に基づいて、線形計画法を用いて、干渉量を抑えつつ周波数利用効率を高めることが可能な、衛星通信ネットワークと地上通信ネットワークに対する周波数配分を決定し変更する。
【0070】
また、周波数割当部250は、ステップS109の周波数割当処理において、地上通信ネットワークの各セルに対して周波数の割当を行う。その際、周波数割当部250は、上述したように、ステップ106の処理において中心点取得部231が取得する媒介中心セルを、周波数割当における中心セルとして、この中心セルに近いセルほど多くのチャンネル数を割り当てるようにする。また、中心性判定部230は中心セルを示す情報(例えばセルの識別番号)を情報記憶部270に書き込んでおく。
【0071】
このように、周波数割当部250が媒介中心セルに近いセルほど多くのチャンネル数を割り当てることにより、通信量の多いセルに多くの周波数が割り当られると期待できる。この点で、周波数利用効率の向上を図ることができる。
【0072】
なお、ステップS102〜S103と、S104〜S105と、S106〜S108との処理の順序は、図5に示す順序に限らない。例えば、要否判定部205が、ステップS102〜S103と、S104〜S105と、S106〜S108とを並列に実行するようにしてもよいし、図5に示す以外の順序で実行するようにしてもよい。
【0073】
なお、ステップS103における状態遷移は、例えば、閾値判定部212が、判定結果を統合判定部240に出力し、当該判定結果に基づいて統合判定部240が予測通信量判定部220または周波数割当部250に以後の処理を行わせることによって行う。同様に、ステップS105における状態遷移も、例えば、閾値判定部222が、判定結果を統合判定部240に出力し、当該判定結果に基づいて統合判定部240が状態遷移を実行する。ステップS107における状態遷移も、例えば、閾値判定部233が、判定結果を統合判定部240に出力し、当該判定結果に基づいて統合判定部240が状態遷移を実行する。
【0074】
以上のように、使用率判定部210が、現在の通信量に基づいて周波数割当処理が必要と判定した場合に(ステップS102〜S103)、周波数割当部250が、周波数割当処理を行う(ステップS109)ことにより、通信規制の発生を抑制するように衛星通信システムと地上通信システムとを制御し得る。通信規制の発生を抑制する制御は、例えば、地上通信ネットワークにおいて呼数が上限に近づいており(通信量が判定閾値を超えており)、衛星通信ネットワークにおいてチャンネル数に余裕がある場合に、衛星通信ネットワークに割り当てるチャンネル数を減らし、その分を地上通信ネットワークに割り当てるチャンネル数を増やすことによって行う。
【0075】
また、予測通信量判定部220が、通信量予測値に基づいて周波数割当処理が必要と判定した場合に(ステップS104〜S105)、周波数割当部250が、周波数割当処理を行う(ステップS109)ことにより、通信規制の発生を抑制するように衛星通信システムと地上通信システムとを制御し得る。上記と同様、通信規制の発生を抑制する制御は、例えば、地上通信ネットワークにおいて呼数が上限に近づいており(通信量が判定閾値を超えており)、衛星通信ネットワークにおいてチャンネル数に余裕がある場合に、衛星通信ネットワークに割り当てるチャンネル数を減らし、その分を地上通信ネットワークに割り当てるチャンネル数を増やすことによって行う。
【0076】
また、中心性判定部230が、地上通信ネットワークにおける通信量の分布に基づいて周波数割当処理が必要と判定した場合に(ステップS106〜S108)、周波数割当部250が、周波数割当処理を行う(ステップS109)ことにより、地上通信ネットワークの各セルのうち通信量の多いセルに多くの周波数を割り当てることができる。これによって、通信規制の発生を抑制するように地上通信システムを制御し得る。
【0077】
また、使用率判定部210または予測通信量判定部220または中心性判定部230のいずれかが周波数割当処理必要と判定した場合のみ周波数割当部250が、周波数割当処理を行うことにより、周波数割当処理を行う頻度を抑えることができる。
ここで、周波数割当部250が、動的に周波数を割り当てる(地上通信ネットワークと衛星通信ネットワークとに割り当てている周波数を変更する)ことによって周波数利用効率の向上を図ることができるが、通信サービスの品質が低下してしまうおそれがある。
【0078】
例えば、周波数割当部250が、動的に周波数を割り当てることによって、既に通信を行っている携帯端末装置101が利用可能な周波数も変更されることが考えられる。ここで、携帯端末装置101にとって適切な周波数(干渉等が少なくS/N比の大きい信号を得られる周波数)は、当該携帯端末装置101の位置や大気の状況等の通信環境によって異なる。地上通信ネットワークや衛星通信ネットワークに比較的長時間接続している携帯端末装置101に対しては、例えば携帯端末装置101の測定する信号品質に基づいて、基地局制御装置122や衛星ゲートウェイ112が、より適切な周波数を割り当てることが可能である。これに対して、動的に周波数を割り当てられた際の地上通信ネットワークや衛星通信ネットワークでは、充分な信号品質情報を取得しない状態で、基地局制御装置122や衛星ゲートウェイ112が、各携帯端末101の利用可能な周波数を決定する必要が生じることが考えられる。あるいは、地上通信ネットワークまたは衛星通信ネットワークに対して新たに割り当てられた周波数の中に、ある携帯端末装置101にとって適切な周波数が含まれていない場合も有りうる。これらの場合、携帯端末装置101の送受信信号に混入するノイズや干渉信号が増大してしまうなど、S/N比が低下してしまうおそれがある。すなわち、無線通信システム1の提供する通信サービスの品質が低下してしまうおそれがある。
あるいは、地上通信ネットワークの各セルにおける呼接続可能数が変化して、既に通信を行っている携帯端末装置に対するハンドオーバーができなくなってしまう場合もあり得る。
【0079】
周波数割当部250が周波数割当処理を行う頻度を抑えることにより、これらの通信サービス品質低下を抑える(発生頻度を減少させる)ことができる。通信サービスの品質低下を抑えることにより、既に通信中の携帯端末装置101のユーザへの影響を少なくすることができる。
【0080】
以上のように、使用率判定部210と予測通信量判定部220と中心性判定部230との周波数割当処理の要否判定結果に基づいて統合判定部240が周波数割当処理必要と判定した場合のみ周波数割当部250が周波数割当処理を行うことにより、必要なタイミングで動的な周波数割当処理を適切に行うことができる。これにより、通信サービスの品質低下を抑えつつ、周波数利用効率の向上を図って通信規制の発生を抑制することができる。
これにより、例えば災害時などトラヒックの分布(通信量の分布)が大きく変動する場合には、動的な周波数割当処理を行って周波数利用効率の向上を図り、一方、トラヒックの分布の変動が少ない場合には、動的な周波数割当処理を抑制して通信サービスの品質低下を抑えることができる。
【0081】
なお、以上では、管理サーバ装置200が周波数の割当を行う場合について説明したが、管理サーバ装置200が、周波数以外の無線通信リソースを割り当てるようにしてもよい。例えば、衛星通信システムと地上通信システムとが、時分割方式の通信を行っている場合に、管理サーバ装置200が、衛星通信システムと地上通信システムとの各々が通信可能な時刻を割り当てるようにしてもよい。
【0082】
なお、無線通信システム1が具備する管理サーバ装置200の数は、図1に示す1台に限らない。例えば、無線通信システム1が、図2の領域A300を、複数のセル毎など複数の管理エリアに分割し、エリア数と同数の管理サーバ装置200を具備して分散処理にて各管理エリアを管理するようにしてもよい。この場合、管理サーバ装置200はいずれかの管理エリアに対応付けられ、他の管理サーバ装置200と協調しながら対応付けられた管理エリアの各セルに、使用可能な周波数を割り当てる。
このように、無線通信システム1が複数の管理サーバ装置200を具備して分散処理によって周波数割当処理を行うことにより、管理サーバ装置1台あたりの負荷を抑えることができる。
【0083】
なお、中心性判定部230が、上述したBetweenness Centrality以外のCentralityに基づいて周波数割当処理の要否を判定するようにしてもよい。例えば、中心性判定部230が、Centralityとして、Entropy-based Centrality、またはDegree Centrality、またはCloseness Centrality、またはEignevector Centralityのいずれかを算出し、算出したCentralityに基づいて周波数割当処理の要否を判定するようにしてもよい。
中心性判定部230が用いるCentralityに応じて、例えば、計算量が少なく、管理サーバ装置200の負荷を抑えかつ高速に周波数割当処理の要否を判定できる、あるいは、計算量は多いものの、通信量の分布をより的確に示す中心座標を得ることができ、より適切に周波数割当処理を行うことができるなどの効果を得る事ができる。このように、中心性判定部230が用いるCentralityを選択することによって得られる効果を選択できる点で、無線通信システム1に柔軟性を持たせることができる。
【0084】
なお、統合判定部240が、周波数割当処理必要と判定するタイミングは、上述した、使用率判定部210と予測通信量判定部220と中心性判定部230とのいずれかが周波数割当処理必要と判定したタイミングに限らない。例えば、使用率判定部210と予測通信量判定部220と中心性判定部230との全てが周波数割当処理必要と判定した場合に、統合判定部240が周波数割当処理必要と判定するようにしてもよい。あるいは、使用率判定部210と予測通信量判定部220と中心性判定部230とのうち2つ以上が周波数割当処理必要と判定した場合に、統合判定部240が周波数割当処理必要と判定するようにしてもよい。
このように、統合判定部240が周波数割当処理の要否を厳格に判定する、すなわち、統合判定部240が周波数割当処理必要と判定する頻度を減らすことにより、周波数割当部250が周波数割当処理を行う頻度を抑えて、通信サービス品質低下を抑えることができる。
【0085】
なお、管理サーバ装置200の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0086】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0087】
1 無線通信システム
101 携帯端末装置101
111 通信衛星
112 衛星ゲートウェイ
121 基地局装置
122 基地局制御装置
131 コアネットワーク
141 インターネット
200 管理サーバ装置
205 要否判定部
250 周波数割当部
210 使用率判定部
211 使用率取得部
212 閾値判定部
220 予測通信量判定部
221 予測通信量取得部
222 閾値判定部
230 中心性判定部
231 中心点取得部
232 ずれ量取得部
233 閾値判定部
240 統合判定部
260 通信部
270 情報記憶部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一エリアに対して通信サービスを提供する複数の無線通信装置と、
前記複数の無線通信装置の各々が使用可能な無線通信リソースの割当処理を行う管理サーバ装置と、
を具備し、
前記管理サーバ装置は、
前記複数の無線通信装置の各々における通信量に基づいて、前記複数の無線通信装置の各々が使用可能な無線通信リソースの割当処理の要否を判定する要否判定部と、
前記要否判定部が、前記無線通信リソースの割当処理が必要と判定すると、前記無線通信リソースの割当処理を行うリソース割当部と、
を具備する
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記要否判定部は、前記無線通信装置が形成する無線通信ネットワークにおける通信量の履歴に基づいて通信量予測値を算出し、算出した通信量予測値が所定の閾値以上の場合に前記無線通信装置が使用可能な無線通信リソースの割当処理が必要と判定する予測通信量判定部を具備することを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記要否判定部は、前記無線通信装置が形成する無線通信ネットワークにおける通信量の分布に基づいて前記無線通信装置が使用可能な無線通信リソースの割当処理の要否を判定する中心性判定部を具備することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
同一エリアに対して通信サービスを提供する複数の無線通信装置の各々における通信量に基づいて、前記複数の無線通信装置の各々が使用可能な無線通信リソースの割当処理の要否を判定する要否判定部と、
前記要否判定部が、前記無線通信リソースの割当処理が必要と判定すると、前記無線通信リソースの割当処理を行う周波数割当部と、
を具備することを特徴とする管理サーバ装置。
【請求項5】
前記要否判定部は、前記無線通信装置が形成する無線通信ネットワークにおける通信量の履歴に基づいて通信量予測値を算出し、算出した通信量予測値が所定の閾値以上の場合に前記無線通信装置が使用可能な無線通信リソースの割当処理が必要と判定する予測通信量判定部を具備することを特徴とする請求項4に記載の管理サーバ装置。
【請求項6】
前記要否判定部は、前記無線通信装置が形成する無線通信ネットワークにおける通信量の分布に基づいて前記無線通信装置が使用可能な無線通信リソースの割当処理の要否を判定する中心性判定部を具備することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の管理サーバ装置。
【請求項7】
同一エリアに対して通信サービスを提供する複数の無線通信装置の各々が使用可能な無線通信リソースの割当処理を行う管理サーバ装置の無線通信リソース割当方法であって、
前記複数の無線通信装置の各々における通信量に基づいて、前記複数の無線通信装置の各々が使用可能な無線通信リソースの割当処理の要否を判定する要否判定ステップと、
前記要否判定ステップにて、前記無線通信リソースの割当処理が必要と判定すると、前記無線通信リソースの割当処理を行うリソース割当ステップと、
を具備することを特徴とする無線通信リソース割当処理方法。
【請求項8】
前記要否判定ステップは、前記無線通信装置が形成する無線通信ネットワークにおける通信量の履歴に基づいて通信量予測値を算出し、算出した通信量予測値が所定の閾値以上の場合に前記無線通信装置が使用可能な無線通信リソースの割当処理が必要と判定する予測通信量判定ステップを具備することを特徴とする請求項7に記載の無線通信リソース割当処理方法。
【請求項9】
前記要否判定ステップは、前記無線通信装置が形成する無線通信ネットワークにおける通信量の分布に基づいて前記無線通信装置が使用可能な無線通信リソースの割当処理の要否を判定する中心性判定ステップを具備することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の無線通信リソース割当処理方法。
【請求項10】
同一エリアに対して通信サービスを提供する複数の無線通信装置の各々が使用可能な無線通信リソースの割当処理を行う管理サーバ装置としてのコンピュータに、
前記複数の無線通信装置の各々における通信量に基づいて、前記複数の無線通信装置の各々が使用可能な無線通信リソースの割当処理の要否を判定する要否判定ステップと、
前記要否判定ステップにて、前記無線通信リソースの割当処理が必要と判定すると、前記無線通信リソースの割当処理を行うリソース割当ステップと、
を実行させるためのプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−142672(P2012−142672A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292092(P2010−292092)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】